おかしなテレコンと古いストロボ
- 2006/09/29 15:43
- カテゴリー:散財
先日,行きつけの中古カメラ屋を定期巡回した際,いつものようにジャックを見つけて買って帰りました。今回の戦利品は2つ。
・ニコン AFテレコンバータTC-16A
どうやらテレコンバータがまとまって入荷したようで,いろんな種類のものが純正・非純正を問わず転がっていました。どれも安価です。
私が目についたのは,ニコンの純正で,AFレンズと同じデザインの,比較的新しそうに見えたTC-16Aという品種です。価格は3500円。
AFテレコンバータと書かれているところから,AF対応であることが推測できるので,ますます好都合です。しかし不思議なことに,マスターレンズ側のマウントに,電気接点が全く見あたりません。ボディ側にはあるんですけどね。後で気が付いたのですが,AF駆動用のカップラーも出てません。
それでもニコン純正です。というのも,テレコンバータは安いものと高いもので,全然画質が違うという事を体感したからです。テレコンバータはマスターレンズの欠点も拡大しますが,それを出来るだけ押さえるために複雑なレンズ構成を取ったり,特殊なガラスを使う事があります。
その分高価になるため,数千円で手に入るケンコーのテレコンバータと,数万円の純正品とでは,全然画質が異なるわけです。
だけど,必ず画質の劣化が起こるテレコンバータに,数万円も出せません。それで純正品を買うことはしませんでした。所詮私にとっては面白いおもちゃに過ぎない存在でした。
それが3500円ですからね。1.6倍という倍率も適度です。そこで買うことにしました。
TC-16Aを調べてみたのですが,googleで調べてみてもなかなか引っかかりません。もちろん現行ではないのでニコンのHPにも全く見あたりません。
わずかにヒットした情報を総合すると,どうもマニュアルのニッコールレンズを,AFレンズとして使用するアダプタらしいのです。
発売時期はF-501と同じといいますから,もう20年くらい前ですか。当時,全くAFレンズのラインナップがなく,大量に出回っていたMFレンズをこのテレコンバータで一気にAF化するというのが狙いだったようです。
AF化するために,テレコンバータのレンズ群をモーターで駆動するようになっています。当然焦点距離も変わってしまうので,AFアダプタとは言わず,テレコンバータと呼んだのでしょう。
これで辻褄が合います。電気接点がレンズ側にないのは,そこにつくのがマニュアルフォーカスのレンズだから。AFカップラーがないのも,同じ理由。テレコンバータの下部が膨らんでいるのは,そこに駆動用モーターが仕掛けてあるから。
ほほー,なかなか面白いなと思った瞬間,現行のボディにはほとんど使えないという情報も引っかかりました。AFにならないだけではなく,シャッターが切れないらしいのです。全く使えないというわけです。
F4というカメラは,市場に出ているニッコールレンズを,最も多く許容するボディとしてここ数年マニアから再評価されていますが,こうしたマニアの遊び道具としてTC-16Aも利用されているようで,それ以外の使われ方を見ることはほとんどありませんでした。
そんな中,D200では動かなくても,D2Hでは動いたという報告が見つかりました。これは幸い。D2HはデジタルワールドのF4になれるでしょうか。
試してみます。CarlZeissのPlanar50mm/F1.4ZFがAFになったら面白そうでしょ。早速やってみましょう。
予想通り,D2Hはこのレンズをきちんと認識しました。1.6倍した焦点距離に絞り値を設定して,Ai連動も済ませます。
シャッターボタンを半押しすると,ものすごい速度でAFが合焦します。言うなればインナーフォーカス方式ですし,レンズの移動量も小さいので,高速なのは理屈通りではありますが,超音波モーターを内蔵するDX Nikkor18-200mmに比べてもかなり高速という結果には驚きました。
ところが,ちょっとアンダーです。そういえば集めた情報の中に,「F1.8より明るいレンズはテレコンバータ自身が絞りになってしまうので,F1.8より絞って使え」とありました。なるほど,前玉をのぞき込むと,テレコンバータが光路をふさいでいるのがわかります。
そこで露出補正をするとよいとのこと。私の場合+0.3位で,適正な露出になってくれました。
いろいろ試して見ます。Ai-Nikkor45mm/F2.8PなんかもAFで使えると面白いですね。誰もが試してみたくなる超望遠の世界だと,私の持ってるレンズで最も焦点距離の長いものは300mm/F4ですので,テレコンバータで480mm相当,これをD2Hに使うとさらに1.5倍で720mm!
試してみましたが,室内ではどこにも合焦させることが出来ませんでした・・・
画質の劣化も思ったほどなく,おもちゃとしては最高でしょう。なにしろたくさんあるマニュアルレンズが1.6倍の頂点距離になったあげくAF化されるわけですから,D2Hと一緒に持ち歩くとなにかと便利に使えそうです。
・ペンタックス オートストロボAF160
中古カメラの世界においてストロボは,純正の多機能ストロボ以外,ゴミ扱いされる傾向にあります。ところがそのカメラとストロボの多機能化が進む昨今,現行の一眼レフの機能を生かし切るストロボは現行のストロボだけに限られるのが現状で,一世代前のストロボでさえ,現行機種に取り付けると,ただの外光式オートストロボとしてしか動いてくれません。
中には外光式オートに対応しないストロボもあったりして,もうこうなるとほとんど専用品です。
となると,中古のストロボというのは,外光式オートストロボとして使うことが前提となってしまいますし,そうなるとメーカーや新旧に関係がなくなり,最大光量を表すガイドナンバーくらいしか選ぶところがありません。
そんなですから,ストロボの中古はゴミ扱いで,どれも安価です。もっとも,新品でも外光式オートの汎用ストロボは,メーカーを問わず安いのですが・・・
電池が単三2本くらいで,小さく,ガイドナンバーも内蔵より少し大きいくらいの小型ストロボが欲しいなあと思っていたのですが,今回見つけたのがペンタックスのAF160というものです。ガイドナンバーは16,価格は300円。動かなくても文句の言えない価格です。
接点を見るとシンクロ接点とチャージ完了の接点くらいしか見あたらず,TTL調光やら通信用やらという最近のにぎやかさはありません。プラスチックの変色具合やフィルム感度の表記がASAであるところ,PENTAXのロゴや会社名が「ASAHI OPT.」と書かれているところを見ると,25年くらいは経過しているのではないかと思います。
PENTAXのHPに奇跡的に存在したこのストロボも取説を見てみると,やはりMEsuperやMXなどが対応機種として書かれています。MEsuperが1979年の発売ですから,今からざっと27年も前のストロボですか・・・
それはともかく300円です。滅多に壊れるものでもないし,安いのはちょうどいいと思ってお金を払います。
特にコメントの書かれたシールも貼られてない割に,300円というのは気になったのでしょうか,店員さんが電池を入れて動作チェックをしています。とりあえず発光することは確かめられたのですが,オートモードがおかしいとのこと。理由は周囲の明るさによって変わるはずのチャージ時間に全く変化がないことでした。
外光式オートは,周囲が明るければ発光時間が短く制御されるので,次の発光に必要なチャージにかかる時間が短くなるというのが常識です。ところがこのストロボはそうはならないので,オートはダメだというのです。
これは使い物になりません。やめようかとも思ったのですが,光るという事だけでも十分300円の価値があるだろうということで,そのまま買うことにしました。まあ大阪だったらまけてくれたか,ただにしてくれたかも知れません。
家に帰って確認をしてみます。満充電のNi-HM電池で8秒ほどかかるチャージ時間は,周囲の明るさによって全く変化しません。マニュアルモードのフル発光でも,蛍光灯の下でも同じです。発光時間は,なんとなく変わっているように思うのですが,おそらく気のせいでしょう。
D2Hに取り付けてテスト撮影です。むむ,やはり白飛びしてます。明るいところでも暗いところでも白飛びしているということは,やはりフル発光しているというだろうと推測し,故障と断定。
そうと決まれば分解です。
なかなか分解しにくい構造だったのですが,コンデンサに気をつけて(先日サムライの分解で感電しましたしね),ばらしてみました。
オートが動作しないのですから,調光回路周辺の故障でしょう。半導体は壊れにくいですが,フォトトランジスタはまだ新しい部品でもあり,ちょっと外してテストします。すると一応明るさによって反応している様子です。ここは壊れてないと判断。
次にコンデンサですが,電解コンデンサは目視で液漏れや破裂,膨張などもありません。フィルム系のコンデンサはシーメンスのポリカーボネートコンデンサが使われていましたが,これも調べてみると問題なし。
すると抵抗ですね。このストロボの抵抗にはソリッド抵抗が使われています。誤差は10%品というあたり,時代を感じさせます。ソリッド抵抗は私の印象では信頼性が低く,故障の原因となっていますので,調べてみます。
おおむね大丈夫だったのですが,10MΩという高抵抗については1MΩほどの抵抗しか示しません。しかも安定しないので,これが壊れていると判断して交換です。
あいにく手持ちには10MΩなどありません。そこで4.7MΩを2つ直列にして代用します。テスターでは9.7MΩを示していますので,まあよいでしょう。
バラックのまま発光テストを行います。すごいですね,ストロボって最大で3A以上の電流が流れるんですね。チャージが進むと徐々に減っていきますが,最初電源器の保護回路が働いてしまって,どこかショートさせたんじゃないかと焦りました。
テスト発光させると爆音と共に発光します。センサを覆って暗くすると,明らかに爆音が大きくなり,発光量も増加しているように感じます。ただ,チャージ時間にはあまり変化がないような印象です。よく分かりませんが,抵抗がおかしかったのは事実ですし,直っているんじゃないかと期待して組み立てることにします。
その前に,センサを覆う透明プラスチックの板が曇っていたので磨いて(それでもあまり綺麗にならなかった),組み立てます。コンデンサを抵抗で放電させて安全に注意しながら作業を進めます。
組み上がってからテスト発光。問題はないようです。しかし,やっぱりチャージ時間は相変わらず8秒で一定です。
やっぱりダメだったんだなあと,D2Hでテスト撮影をします。
心なしか白飛びの程度が改善されているようですが,比べてみて分かる程度の差です。ただ,明るいところでも暗いところでも,同じ程度の白飛び具合であることに,実は調光されているのではないのか,と考え始めました。
適正露出にするために,カメラ側のISO感度を下げて試そうとしたその時,私は自らの過ちに気が付きました。ISO感度の設定が,400になっています。
D2Hは標準が200です。そのつもりで絞りを合わせていたのですが,感度が400になっていたのであれば,オーバーになり白飛びが起こるのは無理もありません。ISO200に設定し直し,再度撮影すると,なんと適正露出になりました。
明るいところでも,暗いところでも,ほとんど同じ明るさです。試しにマニュアルモードでフル発光してみると,ほとんど画面が真っ白になってしまいました。
ははは,オートモードは最初から動いていたようです。
まあ,おかしかった抵抗を交換したことで分解した価値はあるのですが,もっと気をつけて確かめるべきでした。
しかしそうなると,チャージ時間の疑問が残ります。
調べてみると,ストロボの調光方式には,バイパス方式(もしくは並列方式)と直列方式の2つがあるそうです。
バイパス方式は,キセノン管と並列に別の放電管(これをクエンチ管というそうです)を用意してやり,積分された光量に応じた発光停止のタイミングで,クエンチ管をトリガして放電させる方式です。
一方の直列方式はキセノン管に直列にサイリスタを入れ,積分された光量に応じた発光停止のタイミングで回路を切断する方式です。(サイリスタってよく分からないのですが,トリガをかけると導通し,回路を遮断するまで導通状態を保つ素子じゃなかったでしたっけ?なんでトリガ回路で回路が切断できるのかわかりません・・・)
前者は安く簡単なのですが,発光量に関係なくコンデンサは空っぽになるので,チャージはいつも長時間かかります。
後者は複雑でコストがかかるのですが,発光量によって消費されるエネルギーが変わりますから,発光量が少なければチャージは使った分だけで済み,短時間で完了します。発光量によってチャージ時間も変化します。
ここが重要なのですが,最近はチャージ時間が短くて済み,電池も長持ちする直列方式が主流で,バイパス方式はほとんど見あたらないようなのです。
今回のストロボもサイリスタが2つほど使われていましたので,私はてっきり直列方式だと思っていたのですが,確かに放電管も存在しました。オートモードではこれも青白く光っています。
ということは,間違いなくバイパス方式ですね。これで全部辻褄が合います。
恐るべしはこのカメラ屋の値付けです。他のストロボが1000円程度だったにもかかわらず,このストロボだけ300円だったのです。きちんとバイパス方式であることを見抜いて根付けしていたに違いありません。むむむ,恐るべし。
まあ,店員さん自らもだまされてしまうほど高度なテクだったわけですが,さすがは生き馬の目を抜く中古カメラ業界。うかうかしてるとお陀仏です。
それはともかく,一応小型ストロボが手に入ったので,使い道を考えたいところです。ES2にも似合いますが,出来ればCLEに使えるといいですね。CLEはストロボを動作させることは出来ないのですが,ちょっと手を加えて駆動できないかと思案中です。
とまあ,こんなわけで,またくだらないものが増えてしまったのでした・・・