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2015年08月の記事は以下のとおりです。

MSG2170をめぐるすっきりしない結論

  • 2015/08/31 15:40
  • カテゴリー:make:

 MSG2170ですが,注文したクリックなしのロータリーエンコーダが届きましたので,早速取り付けてみました。

 作業そのものはとても簡単で,動作を確認すると一応動いているようです。これで1周48パルスという高分解能なロータリーエンコーダとして動作します。

 問題がないわけではなく,まずA相とB相のパルスが立ち上がる(下がる)タイミングが等しくない(と思われる)ため,偶数から奇数への変化角度と,奇数から偶数への変化角度が異なります。

 気にならないと言えば気になりませんが,ロータリーエンコーダだけで微調整を行うようなシーンでは,数字の変化にムラがあるように見えますから,やりにくいです。

 しかし,もう面倒ですからこのままとします。48パルス/1周ですから,ざっと大まかな調整に使うつまみで,微調整はキーで行うということにしないといけませんから,割り切ります。というか,これにそこまで時間を使えません。

 先にハンドソープでしっかり洗浄したフレームでパネルをしっかり固定し,ゴム足などを組み付けた筐体の上下のフタを取り付けて,一応完成です。

 早速,ステレオモジュレータの調整をして,その素性を見てみましょう。

 FMステレオの方式をここでくどくど述べませんが,パイロット信号の位相がきちんとあっていないと,セパレーションが悪化します。そこで,ステレオモジュレータでは必ず位相合わせの作法があります。

 MSDG2170では,オシロスコープをX-Yモードにしておき,X入力に背面のPILOT OUTを,Y入力に正面のOUTPUTを繋ぎます。

 そして説明書にあるように,まずはパイロット信号だけを出力して,オシロスコープに出てきた楕円が,左上から右下に向かう斜めの一直線になるように,SCOPE PHASINGという背面のツマミを回します。

 次に,L-R(SUB)信号を出力してやると,蝶が羽を広げたような絵が出てきますので,これが二重にならず,また中央部が菱形ではなく点になるように,PILOT PHASEを回します。

 作業を一通り進めてみましたが,幸いなことにSCOPE PHASINGも綺麗に一直線になりましたし,その後のPILOT PHASEも,菱形が点になるくらいに追い込めました。

 実は,これまで使っていたVP-7635Aでは,こんな風に綺麗にならなかったのです。最初のSCOPE PHASINGはそれなりに出来たのですが,肝心のPILOT PHASEが全然ダメで,菱形が点になりません。つまり,パイロット信号と出力信号の位相差が小さく出来ないということで,最終的にチャンネルセパレーションの悪化に繋がっていたはずです。

 VP-7635Aでも55dB程のセパレーションが測定出来ているので,ここからさらに追い込めたMSG2170は,これ以上の性能を持っているはずだと,私はワクワクしました。

 さて,一度電源を切り,VP-7635Aを入れ替えます。VP-7635Aはすべての操作がボタンで行え,マイコンを内蔵していないので,1つのボタンに複数機能の割り当てがあるケースはほんの僅かです。

 これはこれでとても楽ちんで,気に入っていたのですが,基本性能に疑問符がついていることもあるし,せっかくMSG2170を割高な価格で手に入れたのですから,ここはVP-7635Aに引退して頂く事にしましょう。

 接続はとても簡単です。MSG2170のOUTPUTをVP-8191Aの外部入力に繋ぐだけです。
 

 設定は,MSG2170が本来DARCエンコーダですので,なかなか項目も多く面倒です。しかも,VP-7635Aと違ってマイコン制御(68000で制御しています)ですから,階層化されていて使いにくく,多機能化によって増えた設定項目を整理するためとはいえ,私はあまり歓迎できません。

 私は,DARCエンコーダとしての機能は使いませんので,L-MSKに関する設定はすべてOFFか無視です。大事なのはMAINメニューとSTEREOメニューです。

 STEREOメニューでは,出力を90%,パイロット信号を10%にします。これ,人によっては出力を100%にするようなのですが,出力とパイロット信号の合計が100%になるように設定しないといけません。パイロット信号は10%と決まっていますので,出力は90%にすることになります。

 DARCエンコーダとして使う場合には,L-MSKが10%ですので,パイロット10%とあわせると20%,よって出力は80%に設定します。

 MAINメニューで大事なところは,出力レベルです。VP-8191Aの外部入力は,変調度が100%になるようなレベルで突っ込んで上げる必要があります。誤差は±2%ということですが,この範囲が直感的に分かるように,OVERとUNDERのLEDが装備されており,この2つが消えている状態になるよう,MSG2170の出力レベルを調整します。

 私の場合,出力信号をMAIN(L+Rですね)で6.5Vp-pに設定するとうまくいきました。

 この状態でVP-8191Aを83MHz,75kHz変調,出力90dBにしてKT-1100Dに繋ぐと,ちゃんとステレオ受信しています。とりあえずMSG2170は動いているようです。

 ここで,KT-1100Dの調整をやり直します。全開は真夏のクソ熱いときにやりましたので,涼しい時にやる方が気分がいいです。

 フロントエンドは概ね全体の調整から動いてません。DCC基板も問題なさそうでしたが,ミスでVRを触ってしまい,調整をやり直す羽目になりました。

 そして,注目のMPXの調整です。

 ・・・うーん。

 どうも期待外れです。セパレーションを調整しても,54dBくらいで頭打ちになるんです。おかしい。だってVP-7635Aでもこのくらいの数字で,VP-7635Aよりも位相が揃っているはずのMSG2170が,同じ程度問いのは腑に落ちません。

 もしかするとKT-1100Dが54dB程度だということでしょうか。いや,KT-1100Dは,うまく調整すると70dBのセパレーションをたたき出すはずです。せめて60dBくらいになってくれないと・・・

 ということで,あわててF-757を持ってきました。こいつはVP-7635Aでも58dBくらいの測定値が得られています。MSG2170ではどうだったかというと,ほとんど同じ値,58dBでした。

 ここから得られる結論は,KT-1100Dのチャンネルセパレーションは54dBしかないということ,VP-7635Aは60dB近いセパレーションを持っていたこと,MSG2170は少なくともVP-7635Aと同じ程度の力があるということ,です。

 あー,もったいない。じゃVP-7635Aのままでよかったじゃないか。

 それにしても,KT-1100Dですよ。いきなり測定もしないで部品を交換しまくったので,最初からどこか壊れていたのかも知れませんし,間違った部品に交換されたものもあったかも知れません,元に戻そうにも,古い部品は捨ててしまったし,回路図もありません。お手上げです。

 まあ,そんなことを言っていても仕方がありません。出来るだけいい数字に調整して終わりにしましょう。で,調整した結果が,以下です。

  WIDE
歪率 MONO:0.0165% L:0.126% R:0.129%
セパレーション L->R:54.78dB R->L:54.12dB
S/N MONO:73.1dB L:64.7dB R:64.7dB

 NARROW
歪率 MONO:0.033% L:0.134% R:0.136%
セパレーション L->R:52.2dB R->L:50.5dB
S/N MONO:73.6dB L:64.6dB R:64.6dB

 参考までに,全開の測定値が以下です。

  WIDE
歪率 MONO:0.025% L:0.12% R:0.12%
セパレーション L->R:53.7dB R->L:53.6dB
S/N MONO:72dB L:63.2dB R:63.2dB
キャリアリーク 67.3dB

 NARROW
歪率 MONO:0.035% L:0.12% R:0.12%
セパレーション L->R:50.2dB R->L:50.3dB
S/N MONO:72dB L:63.2dB R:63.2dB


 なんかあれですね,モノラル時の歪率が0.016%と大幅に改善したことと,S/Nが全体的に1dB程改善している以外は,すべて悪化しています。悪化といってもほとんど誤差のようなものでしょうから,要するにMSG2170で調整しても,KT-1100Dの実力は変わらなかったということになります。

 なんかがっかりです。

 がっかりしながら,KT-1100Dのフタを閉じて,電源を入れて様子を見ることにしました。かなりの発熱があり,機内温度が上昇することが分かっていたからです。

 1時間ほどしてから,セパレーションをもう一度測定してみると,なんと33dB。20dB近くも悪化しているではありませんか。出力に電圧計を繋いで,出力の出ていない方のチャネルの出力を見ていると,54dBのセパレーションが出ているときの出力が1.4mV程度(20*log(1.4/665)=53.5dB)なのに,今はその10倍ほど出ています。(20*log(14/665)=33.5dB)

 あわててフタを開けてみると,すーっと出力電圧が下がっていきます。1.4mVに下がるには時間がかかりますが,どんどんセパレーションの値も改善していきます。

 フタを閉じれば,またどんどん悪化していきます。いやはや,こんなに温度変化があるものなんですか?

 いくらなんでもこれはひどいということで,あちこち部品を触っていたら,C100(だと思う)の1uF-50Vの電解コンデンサを指で触ると,セパレーションが急激に悪くなることを発見しました。

 そこで,このコンデンサを同じ1uFのフィルムに交換しますが,指で触って変化することはなくなっても,温度による変動は相変わらずです。

 こうなったら,十分内部を暖めて,この状態で調整をするしかないと考えたのですが,なにせフタを開けるとすぐに温度が下がってしまうので。何度か繰り返してようやく,2時間放置しても54dB程度になるように調整出来ました。

 しかし,これでは,セパレーションが最良点になるまでに1時間以上かかってしまう上,電源投入時には30dB程度とラジカセ並みになってしまうのが大問題です。それに,なんどか試していると,40dBくらいでとまってしまい,そこから下がっていかないこともありました。

 さらに,筐体をポンポンと叩くと,セパレーションが悪化します。叩いた衝撃で無音のチャンネルになにか信号が出てくるようです。

 コイルの振動ならやむを得ないかと思ったのですが,検波基板についているC19という電解コンデンサを指で弾くと出てくることが判明。しかし,これを対策するわけにもいかず,とりあえずこのままです。

 また,値が下がらないときにDCC基板の裏側を触ると下がったこともありました。

 いずれにせよ,故障していると考えた方がいいのかも知れません。
 
 うーん,どうしたものか。すっきりしない結論になり,私もなんだか消化不良で気持ち悪いです。


 

MSG2170のレストア

  • 2015/08/28 13:42
  • カテゴリー:散財

 先日,KT-1100Dと言うFMチューナーをレストアした話を書いた際に,FMステレオエンコーダの調子が良くないということを書きました。

 VP-7635Aというエンコーダですが,どうもパイロット信号の位相を完全に調整出来ないのです。位相を調整しきれないという事は,FMチューナーのセパレーションを最適な位置に持ってこれないという事を意味していて,もはや測定器として疑問符がついている状態です。

 もっとも,測定値は疑わしいとはいえ,この状態でも最善の場所に調整をすることでそこそこのレベルに追い込む事が出来ますから,これで我慢するというのも,1つの手でした。

 しかし,やっぱりダメですね。気になってしまいます。

 どうせ手に入れるなら,高性能なものをということで,セパレーションに70dB以上というスペックを誇る,目黒のMSG2170という機種を,ずっと探していました。

 この機種,2000年代中頃まで販売されていたもので,そんなに古くさい測定器ではないのですが,もともと「見えるラジオ」と呼ばれたFM多重放送が受信可能なラジオの設計や調整に使う測定器で,正しくはDARCエンコーダというのですが,オプションでステレオエンコーダが搭載可能で,このエンコーダの性能が飛び抜けているのです。

 ですが,すでに見えるラジオはサービスも終了しており,FM多重放送を受信出来るラジオの設計や製造も,もう行われていません。各社がこぞって発売を開始した時期に,どうもこの機種は大量導入されたようで,今ちょうど中古市場にたくさん出てきています。

 ところで後継機であるMSG2173や2174は,コストダウンのためか,ユーザーがそこまで必要ないと考えたのか,スペックが落とされており,手に入れやすい高性能なエンコーダとしては,MSG2170は貴重な存在です。

 これを何度かオークションで手に入れようとしたのですが,高価だったりして逃してきました。しかし先日,ようやく手に入れる事ができました。

 正直言って,程度が今ひとつで,値段も高めでした。私は必要ないからいいですが,付属している見えるラジオのデータ作成用ソフトもついておらず,実は少し後悔しています。

 ぶつけた傷も大きいものがありますし,背面の足も少し曲がっています。BNCコネクタはことごとく錆びており,困ったのはデータエントリー用のロータリーエンコーダの調子が悪く,ミスカウントが多発していることです。

 ということで,肝心な生成された信号の質の確認はまだまだ出来ず,分解が必要なレストアから始めることになりました。

(1)バックアップ用電池の交換

 MSG2170に定番トラブルは,設定内容を覚えてくれないというものです。これは単純にSRAMのバックアップ電池が切れているのが理由で,まずはこれを交換しておく事にします。

 幸い私のものは電池が切れている様子はないのですが,予防的な措置として,タブで直接基板にハンダ付けされているコイン型リチウム電池を取り外し,CR2032用の電池ケースに交換し,今後電池が切れても簡単に交換出来るようにして置きます。

 MSG2170のバックアップ電池は,実は2つ装備されています。CPUの乗った基板は2階建てになっていて,それぞれに電池がありますので,両方とも交換します。私の場合,メイン基板側は3.0Vほど,漢字ROMののったサブ基板の電池が2.9V程になっていました。ICの刻印から,2002年頃に作られたもののようで,10年ちょっとならまだ大丈夫というのも道理です。

 この作業はとても簡単で,さくさくと終わりました。起動も問題なし,ちゃんとバックアップも行われています。メモリのクリアを行って,初期化をしたところで作業完了です。


(2)ロータリーエンコーダの不調

 このMSG2170のツマミって,なんとまあアルミの削り出しなんですね。すごい重量感ですし,ひんやりとした感触は非常に趣味的な魅力にあふれていますが,測定器らしくなく,このツマミだけ浮いているように思ってしまいます。

 それはともかく,これが動かないと操作に支障も出ますから,直したいところです。

 ロータリーエンコーダは,よく知られているように,絶対値を出力するアブソリュート型と,90度位相のずれた2つの出力からパルスが出るインクリメンタル型の2つがあります。

 インクリメンタル型の場合,精度や耐久性がそれ程要求されず,民生機器の操作パネルに取り付けられる様なものには,コストが重視されて機械式が主流です。

 どんな機器にもマイコンが入っていること,もちろん安くなったことで,わかりやすくて操作しやすいロータリーエンコーダは,電子レンジにしろ洗濯機にしろオーディオにしろ,本当に多くの機器に導入されています。

 ただ,この機械式のロータリーエンコーダは,良く壊れるんです。なんでこんなに壊れるのかなと思うくらい,壊れます。多くの場合騙し騙し使えるし,キーで代用できたりするので気にされない事も多いと思いますが,カウントしない,一気に3つ4つ進む,増やしているのに減っている,とか,まあイライラすることこの上なしです。

 それで交換を考えたのですが,手元に秋月で手に入れた,200円の古いロータリーエンコーダがありますので,これに変えて見る事にします。まあ,仮にロータリーエンコーダの不良が原因でなくても,回転の感触が悪いので,これは交換しておきたいところです。

 古いものを基板から外しますが,2階建てになっている操作基板の,奥側の基板に取り付けられたロータリーエンコーダは,長いシャフトが手前の基板の穴を通してパネルに出てきます。こんな長いシャフトのロータリーエンコーダは,ちょっと手に入りません。

 そこで,手前側の基板に開いた穴に,エンコーダを直接ネジ止めし,配線は別に行う方法で取り付けて見ました。シャフトの長さは問題く,ちょうどよい長さになり,ツマミも綺麗に取り付けできます。

 配線も済ませて動かしてみますが,どうもおかしな動きです。配線を間違えたのかも知れないと適当に入れ替えてみたら,それらしい動きをします。(よく調べてみると,最初についていたアルプス製のロータリーエンコーダは真ん中がコモンでしたが,秋月のものは右端がコモンでした)

 それらしい動きをしているように思ったのですが,よく見てみると,1クリックで2カウントします。クリックの途中で1つカウントしますので,そこで無理に止めれば良いのですが,それはあまりに使い勝手が悪すぎます。

 うーん,なんかおかしい。

 ロータリーエンコーダなんて,クリックのありなしと,1回転でいくつパルスが出るかくらいの違いしかなくて,とりあえず動くと思っていたのに,そういうものでもなさそうです。

 これは,もしかすると回路の故障かも知れないと思い始めましたが,このままでは使い物にならないので,元のロータリーエンコーダに戻します。とはいえ,ただ戻すだけでは芸がないので,ロータリーエンコーダを分解し,内部を清掃してから戻すことにします。

 ロータリーエンコーダを分解して内部を軽く掃除して組み立て直すのですが,固定している金属製の爪が壊れてしまったので,引っかかりが小さく,ちょっと不安があります。でも,もうこれで進めるしかありません。

 仮組をしてみると,以前よりもミスカウントが減っています。やっぱりロータリーエンコーダの不良だったんだなあと納得して,正式な交換作業をスタートさせます。

 交換した秋月のロータリーエンコーダを取り外し,元のロータリーエンコーダを基板にハンダ付けして組み立て直すときに,悲劇が起きました。基板の表と裏を間違えてしまい,このままでは組み立てられません。もう一度ロータリーエンコーダを外して,裏表を逆にして取り付けねばなりません。

 かなり眠くなっていた私は,作業が乱暴になっていたんでしょうね。なかなか基板から外すことが出来ずに,ロータリーエンコーダを壊してしまいました。さらに,基板のパターンも剥がしてしまうという,大失態です。

 落ち込んでも仕方がありません。壊れたロータリーエンコーダをもう一度修理しますが,金属の爪が完全になくなっているので,もう固定できません。それを承知で基板に取り付けます。

 ようやく組み立てが終わって動作をさせてみますが,かなりミスカウントが減っているとは言え,やっぱり動作がおかしく,このままではちょっと使えない感じです。

 もう力尽きて寝ることにしますが,その前に,オリジナルと秋月のものとの,クリック数の違いを確かめてみると,オリジナルは30,秋月のものは24です。

 秋月のサイトを見ていると,今売っているものはすべて24クリックです。一方,大阪の共立電子を見てみると,30クリックというのがあるのですが,ここにパルス数は15と,ちょっと気になる事が書いてありました。

 クリック数と,パルス数は,同じとは限らないんですね。これは大発見です。

 さらに調べてみると,秋月のものは1回転あたり24パルスで24クリックであるという記述を見つけました。

 気になって,アルプスのサイトにある,製品情報を見ていると,1回転あたり15パルスで30クリックの製品は確かに存在し,それはA相とB相それぞれの確定部分,厳密に言えばA相とB相が同じレベルになっているところがクリック安定点になっています。

 一方1回転あたり24パルスで24クリックの製品を見てみると,B相の立ち上がりおよび立ち下がりのところでクリックが出るようになっていて,クリック安定点でB相の状態が規定できないと注意書きまでしてあるのです。

 これで説明がつきました。

 オリジナルは,1回転で15パルスが出るロータリーエンコーダですが,クリックはその倍の30クリックが出るもので,このセットは1クリックごとに,つまりA相かB相のいずれかが変化したところ,つまり0.5パルスで,1カウントされるように作られています,

 ところが,交換した1回転あたり24パルスで24クリックのロータリーエンコーダでは,1回転で出るパルスは24もあるのに,クリックは24しかありません。つまり,1つのクリックで2つのA相とB相の変化点が存在し,その度にカウントされるので,1クリックで2つカウントされてしまうのです。

 そうなると,もう15パルス30クリックのものを買うしかありませんが,30カウントではちょっと分解能が荒くて,グルグルツマミを回さないといけないのも面倒くさく,24クリックのロータリーエンコーダの快適さを知ってしまうと,元に戻すのも惜しいです。

 そこで,クリックのないロータリーエンコーダを使えばいいんじゃないのかと思い至り,そういうものを探したら,あったあった秋月にありました。

 実は,手元にある秋月のロータリーエンコーダを分解し,内部のバネを取り外す改造を行うと,クリック無しになることが分かっています。しかし,分解というのも信頼性を下げますし,もともとこのロータリーエンコーダは,時計のキットについていたものですから,出来れば元に戻しておきたいところでもあります。

 そこで,早速秋月に部品を注文です。余計なものも一杯買ってしまった(カーボン抵抗全種類詰め合わせ5700円を買ったのが失敗だったかも)ので,高くついてしまったのは内緒ですが,これに交換してみましょう。

 部品が届くのは週末です。うまく交換が出来て,操作フィーリングが向上することを期待したいと思います。

 そうそう,発生信号が高品質である事も確かめないといけないです。

 

結局FE103Enに交換した

  • 2015/08/26 12:58
  • カテゴリー:make:

 ということで,捨てるにはあまりに惜しい出来となった,ステレオ誌別冊ムックの付録,バックロードホーンのエンクロージャキット。どうしたものかと考えていたのですが,ここはやっぱり毒を食らわば皿までと,FE103Enを買うことにしました。

 土曜日の午前中に注文,日曜日の昼過ぎには届きました。もはや自分で買い物に行くのが,バカバカしくなってしまいます。お値段は約5300円だったと思います。

 かくいう私,フォステクスが好きな割には,フォステクスのユニットを買うのは始めてです。先日書きましたが,なにせ木工が下手で,エンクロージャをわざわざ作っても,残念な結果にしかならないことがわかっていますから,ユニットだけ買っても仕方がないことを,痛いほど知っています。

 普通,大人になると賢くなるものですが,私の場合,若い頃の方が賢かったようです・・・


 そんなこんなで,手元に届いたFE103Enは,しっかり重たく,クリーム色のコーンが実にさわやかで,とてもいい音がしそうです。

 もうすぐ4歳になる娘に「スピーカー一緒に作るか」と声をかけると,ぴょんぴょん走り回って,作る作ると大喜びです。黄色が良かったけど茶色の絵の具しかなかったんでしょ?次は黄色にしようねと,先日色塗りをしたときの会話を覚えています。

 リビングにP1000を取り付け済みのエンクロージャを2つと,箱に入ったままのFE103Enを持ってきます。あとはプラスドライバーです。新聞を広げて,エンクロージャを置いて作業開始です。

 娘は興味深そうに,私のやっていることを見ています。エンクロージャは出来上がっていますから,「作る」といっても,交換作業だけです。

 4つのネジを外します。しかしP1000はニスのせいでくっついていて,外れません。娘に「ありゃ~」と言いながら外れないと言うと,娘もおどけて,困ったようなリアクションを真似しています。面白いですねえ。

 四苦八苦していると,ピリ,という音がして,ユニットが緩みました。これで外れそうです。娘も大げさに喜んでいます。でも,P1000のフレームの跡が残っています。

 ユニットを外して,配線を外す作業を,娘も注意深く見ています。不思議とやりたいとは言い出しません。ようやくエンクロージャを分離したP1000を床に置きましたが,娘が持ちたいというのでいいよというと,右手でがしっと掴んでいます。

 ああああああー,エッジに親指がーーーー!

 それはこうやって持ってよ,と教えると,教えたとおりに持ってくれます。重たいでしょうというと,余計に頑張って持ち上げようとします。

 そして外したビスを,スピーカーのマグネットのくっつけて「おもろいでしょ」というと,目をきらきらさせて「やりたい」と言い出しました。ちょっと遊んでもらいました。

 危ないからこっちに貸して,片付けるから,というと,あっさりとスピーカーを渡してくれました。
 
 次はFE103Enの取付です。マグネット径が大きくなっているので取り付けにくかったのですが,無事にケーブルを取り付けて位置決めをし,新しいビスで締め付けます。残念ながら,P1000のフレームの形状とFE103Enの形状が異なるため,P1000のフレームの跡はFE103Enでは隠れませんでした。

 ビス留めをします。今回はワッシャも入っていましたが,娘はこのワッシャに興味があるようで「これはなに」と聞いてきます。

 私はウソをつくのが嫌ですし,適当にごまかすのも嫌なので,これはワッシャというのだとと言いました。そしてビスに通して使うのだと,偉そうに説明をしました。

 なんとか1つ目が完成し,次は2つ目です。

 2つ目は簡単に外れて,交換もスムーズです。位置決めもさくっと進みました。娘は私の作業を見たり,ネジとワッシャで遊んでいます。

 ここで,参加意識を持ってもらう作戦に出ます。「じゃ,ネジにワッシャを通して渡してよ」とお願いすると,わかったと,目を輝かせて通したものを,手渡ししてくれます。

 ばっちりばっちりとお礼を言って,これをぎゅぎゅっと回してユニットを固定していきます。結局2本ほどしか用意してもらえなかったんですが,それでも「完成したよ」というと,わーいと一緒に喜んでくれました。

 じゃ早速音を出すか,とリビングのCM1をどけて,このスピーカーにつなぎ替えます。CM1に比べて小振りで,威圧感が少ないですし,色もCM1に比べて濃いので,リビングがスッキリします。むき出しのFE103Enも綺麗ですし,見た目はこっちの方が楽しいですね。

 そして音を出します。

 うーん,確かにP1000に比べれば,高音もスッキリ出ますし,ボーカルの定位もよいです。アンプのと相性は良さそうで,無難になっているのは分かるのですが,どうも,低音が不足していて,CM1に比べるまでもなく,今ひとつだとわかります。

 しかし,ならしていくうちに,なんだかとても心地よくなってきました。CM1はとてもストレートなモニタースピーカーですから,情報量も多く,誇張がありません。

 ですから,いい音だなと思う反面で,結構疲れるというのと,やっぱりアンプの性能差がよく出てきてしまうんだなと思いました。

 このFE103Enバックロードホーンは,CM1よりも帯域が狭く,まあラジカセに毛が生えた程度な感じがしますが,1時間ほど慣らしていくと元気で明るく,さわやかな音になってきたように思います。耳が慣れたんでしょうね。

 情報量は確かに少ないのですが,各々の楽器の定位はしっかりしているし,動きません。ボーカルには奥行きもツヤもありますし,派手さはないけどとても溌剌としてて,とても好ましいです。

 なんといっても聴き疲れしません。いつまでも聞いていたいという気持ちがするのと,アンプの悪いところがウソのように見えなくなります。まあ,それだけ情報量が少ないということでしょうが・・・

 バックロードホーンらしい音になっているのかといえばそうではないと思いますし,FE103Enの本当の能力を発揮できているかといえば,全然そんなことはないでしょう。でも,リビングにはこんな感じの音がふさわしいんだなあと,気が付きました。CM1で聞いていたら,やっぱり楽しくないのですよ,リビングでは。

 お,娘も踊りまくっています。楽しそうです。夕食を作っている嫁さんの所に走って行って,自分が作った事をアピールしています。

 てなわけで,うちのリビングは,CM1からFE103Enバックロードホーンに変わりました。小型でスケール感もありませんが,リビングにはぴったりです。昨日特に好印象だったのは,カーペンタースであったことを,書いておこうと思います。

 もし,私が中学生くらいで,この音を手に入れていたら,きっとその後のオーディオとの向き合い方は変わっていたんじゃないかと思います。お金をかけることだけがすべてではないし,お金をかけなくても,これだけの音が手に入ったんだろうと思いますが,そうした出会いも運だったというのも,また認めざるを得ません。

 思えば,私が使っていたオンキョーのS-4000というスピーカーも,大きいだけで今ひとつなスピーカーでした。それでも頑張って慣らしていたのですが,定位も悪く,レンジも狭く,大きさから来る安定感だけが取り柄だったように思います。

 私が始めて手に入れたHiFiスピーカーがこれでしたから,これがいいものか悪いものかは,わかりません。しかし,FE103Enを聞いてみれば,明らかににFE103Enの方がいいとわかります。

 ああ,苦手でも,FEシリーズで自作を1回やっておくべきだった・・・

 さて,そうするとCM1をどうするか,です。これはやっぱり元の検討部屋に戻すべきでしょう。そうすると,PE101をどうするかという問題が出ますが,まあそれはおいおい考えましょう。

 CM1はならしにくい,CM1はモニターだ,CM1は楽しくない,という意見に対して,認めた上で「それがどうした」と居直っていた私でしたが,ようやくにしてその意味が分かった気がします。

 

はじめてバックロードホーンを作った

  • 2015/08/25 07:54
  • カテゴリー:make:

 最後のネタですが,すでに毎年恒例となった感のある,ステレオ誌のスピーカーの付録です。

 さすがの私も,毎年彼らに付き合うほどスピーカー作りが好きなわけではないのですが,今年はその祭りに参加してみました。

 スピーカー工作というのは,まさに夏休みの工作らしく,子供でも大人でも楽しめるもので,かつ実用性もあるものですが,そうはいっても数が必要なものではないですし,それなりにかさばるものですから,作ったあとどうするかを考えると,ちょっと頭が痛くなります。

 そういう理由で,スピーカー工作を避けてきた私ですが,今回は付録のスピーカーにあわせて用意された,エンクロージャーのキットが大変興味深く,これなら作って見る価値があると思ったのです。

 それは,側面がA4サイズのバックロードホーンのエンクロージャです。

 私は,バックロードホーンには昔から興味があるのですが,ある程度の大きさがないとダメだろうし,なにかとクセも強そう(だから市販品にほとんど存在しない)だと思っていて,なかなか手を出せずにいました。

 ただ,私が今の道に入るきっかけの1つになった,叔父が自作したスピーカーがバックロードホーンだったこともあり,いつかは自分の耳でその性格を確かめてみたいものだと思っていました。

 とにかく小さいものでないと置く場所もないし,ということで,数年前にはブックシェルフくらいの大きさの,小型のバックロードホーンのエンクロージャを,見よう見まねで設計まではしたのですが,なにせ木工が昔から下手だった私の事,実際に作ることまでせずに来てしまいました。

 それが,今回はキットになっています。価格も5000円未満です。

 ということで,私はこのキットと,せっかくだから付録のスピーカーも手に入れるため,雑誌の方も手に入れました。木工はほとんどやらないので,木工ボンドと水性ウレタンニスも用意しました。

 木工なんて中学生の時以来じゃないでしょうか。

 付録のユニットはフォステクスのP1000で,全く同じ物ではないとはいえ,1500円程度で市販されている10cmのフルレンジです。付録ですからそんなに期待してはいませんが,このご時世に,1500円くらいでちゃんとしたHiFi用のスピーカーを用意してくれているというのは,大変うれしいことです。1980年代には,フォステクスをはじめ,テクニクス,コーラル,パイオニアと,ユニットもいろいろ選べたんですが・・・

 ちょうど東京は真夏日の連続記録を更新中という酷暑の真っ最中でしたが,夜中に汗をタオルでふきふき,組み立てていきます。

 他でも紹介されているように,切り出されたMDFボードの加工精度は高く,あまり余計な事を考えなくても,普通に木工ボンドで接着すれば完成します。ただ,バックロード本は内部に細かい仕切りがありますから,これが傾いたりしないように,直角だけは意識して組み立てないといけません。

 そのために,組み立て方としてクラフトテープで固定しながらの作業が紹介されていました。私は手持ちの関係でマスキングテープを使いましたが,これでも十分です。

 誤算だったのは,板に押された数字のスタンプが消えないことでしょうか。私はてっきり,消しゴムで消えるんだろうと思っていたのですが,残念ながら紙やすりで削るしかないようです。

 組み立てそのものは問題なく,さくさくと進んだのですが大変だったのは塗装です。MDFですから塗装しないとちょっと格好悪く,いろいろ考えた末に,随分と使いやすくなっているという,水性ウレタンニスを使う事にしました。

 木目のビニルシートを貼ることも,奮発して突き板を貼ることも考えましたが,どっちにしても買いに行かないといけませんし,夏休みの工作っぽいのは,やはりベタベタと厚塗りをした,ニスで仕上げることです。

 組み立てたエンクロージャをmサンダーで研いで表面を滑らかにします。といってもMDFですから,そんなに気合いを入れる必要はありません。

 そしてニスを塗ります。この水性ウレタンニスは,私は始めてつかいますので,どうも勝手が分かりません。大きめの刷毛でベタベタ塗ったところ,刷毛のムラが強烈についてしまい,さながら木目のようです。いかにも不細工で,これはいけません。

 何度か重ね塗りをしてから,今度は400番のサンドペーパーで磨き,表面を滑らかにします。そして軽く,仕上げ塗りをしようという作戦です。

 ただ,細かいカスがいっぱい出てあたりを汚すのは間違いないし,目詰まりしてすぐにサンドペーパーがダメになるのは目に見えているので,ここは意を決して風呂場で水研ぎです。

 茶色いカスが水に溶け,それはそれはひどいことになってしまったのですが,スポンジで擦れば落ちる汚れですから,気にせず磨いていきます。途中,嫁さんと娘に見つかり,「ありゃー」と嘆かれることもありましたが,なんとか作業を終了。

 良く乾かしてから,水で薄めたニスで仕上げ塗りです。この薄めるという話は非常に重要で,乾きが早いとムラになりがちです。水で薄めて,乾く時間を遅くしてやると,表面がすーっと滑らかに広がってくれます。

 そして完成。おかしいなあ,まるで木目のような模様が出ています。

 ぱっと見ると,なかなか味のある仕上がりです。決して上手ではないのですが,これはこれでありだなと,思いました。

 実はこの塗装の前に,問題が1つ残っていました。スピーカーのターミナルが外れてしまったのを,どうするかです。

 側板を接着する前に,ユニットとターミナルを繋ぐ配線をして,通した穴をホットメルトで埋めたのですが,ターミナルをネジ止めせず磨いていたら,抜けてしまったのです。

 少し余裕を見て長めに配線しておけば問題はなかったのですが,うっかりギリギリにしてあったので,抜けた配線をターミナルに差込直すことが出来ません。最悪ハンダ付けで配線を延長するかなと思っていたのですが,それもうまくいかずに,困っていました。

 そこで,ホットメルトを剥がして,長さを調整することにしたんですが,失敗すると取り返しがつきません。慎重に作業を進めると,うまく2cmほど,後ろ側に引っ張ることができました。

 めでたくターミナルもユニットも取り付けることが出来て,これで音が出せるようになりました。

 早速音を出します。

 ・・・うーん,なんだか,期待外れです。完全なかまぼこ形で,中音域だけしか聞こえてきません。まずなんといっても,高音がさっぱり出てこず,まるでラジカセの音のようです。

 低音についても,伸びる伸びないという話以前に,全然出ていません。開口部に耳を近づけると,なるほどボンボンと低音が出ているのがわかりますし,バスレフのような弾むような音ではなく,迫力はないとは言えホーンスピーカーらしいズドーンとした音の傾向があるのはわかります。

 しかし,帯域と量が足りません。バスドラムの音がポンポンと言っています。ベースも良く聞こえません。

 でも,フルレンジならではの定位の良さはさすがで,ボーカルは真ん中にばちっとはまって,動きません。人の声は心地いいです。

 元のパイオニアのフルレンジに戻すと,とてもいい音です。高域も低域も伸びているし,定位も抜群です。

 これはもう,ユニットの性能差だなと思い,このバックロードホーンを常用するのは,あきらめました。

 10cmのユニットをもっといいものに交換するとよいように思います。数年前のステレオ誌の付録にあった,スキャンスピークの10cmフルレンジをとりあえず取り付けるのもいいんですが,せっかくですからフォステクスのFE103Enなんかを取り付ければ,きっと満足のいくスピーカーが出来そうです。

 でも,2本買うと12000円ですからね。ちょっと考え込んでしまいます。

 エンクロージャそのものは,なかなか良く出来ましたから,これは継続検討です。
 
 ところで,この検討で改めて感心したのが,同じステレオの付録についてきたデジタルアンプ,LXA-OT1の素性の良さです。

 実は,リビングにあるCM1の音が物足りないのは,もしかするとDENONのアンプが悪いんじゃないか,と思っていり,かつてボーカルの再現性や定位感が感動的だったことの理由は,ひょっとしてLXA-OT1が良いものであったから,ではないかと最近思っています。

 LXA-OT1で今回のバックロードホーンのエンクロージャも試して見ましたが,やはりボーカルは素晴らしく,定位感もよいのです。パイオニアのスピーカーに変えてもその傾向は同じで,実に心地よいのはやっぱりLXA-OT1のおかげじゃないかと思っています。

実体顕微鏡を買う

  • 2015/08/24 13:15
  • カテゴリー:散財

 実体顕微鏡なるものが,世の中にはあります。

 何を今さらというなかれ,浅学ゆえ私は,少し前まで知りませんでした。顕微鏡など,小学校でタマネギの皮をみた,あの顕微鏡くらいしか知らないのです。

 もちろん,お医者さんにいったりすると,両目で見るような顕微鏡も置いてあったりしますし,デジタルカメラがついている顕微鏡もあったりしますが,それはそれ,顕微鏡のバリエーションの1つだと思っていたのです。

 それが,まさか実体顕微鏡なんて立派な名前がついているなんて。

 私ももう年齢が年齢なので,小さいものが見えにくくなっています。昔なら得意の肉眼でどんな細かいハンダ付けも出来たし,どんな小さなクラックやブリッジも見逃さない自信があったものですが,今はもう全然だめです。

 潔く老眼鏡という手もあるのですが,それよりはもっと根本的な対策として,その「実体顕微鏡」の導入を検討したのです。ほら,そこはあれですよ,ハルちゃんみたいな若い人でも実体顕微鏡が欲しくなるんですから。

 実体顕微鏡の定義は,両目で見ることの出来る顕微鏡であることなのですが,同じ画像を両目で見るのではなく,左右の光路がちゃんと独立していて,ちゃんと視差があることが重要です。

 こうして,左右で視差があると,凹凸が立体的に見えるわけですね。だから実体顕微鏡といいます。

 思うに,普通の顕微鏡というのは,見たいものを薄くスライスし,光を透過させて拡大して見ます。薄くスライスしてスライドガラスにのせて,カバーガラスをかけます。この段階ですでに凹凸などなくなっていますから,両目の視差を利用する価値はなくなっています。

 この手の顕微鏡を生物顕微鏡というそうなのですが,実体顕微鏡の特徴として,倍率は20倍から40倍程度であるということ,下から透過させた光を見るのではなく,上から反射させた光をみるということ,見たいものとレンズの間がとても広く,顕微鏡を見ながらの作業が容易であること,があります。

 要するに,顕微鏡といいつつも,両目で見る虫眼鏡くらいに考えた方がよさそうです。

 ただ,実体顕微鏡には大きなメリットがあります。もちろん立体に見えることもそうですし,顕微鏡を見ながら作業がしやすいこともそうなのですが,プレパラートを作る必要がないということも大きいでしょう。

 普通の顕微鏡は,標本を薄くスライスし,ガラスで挟むという準備が必要です。スライス出来ないものはアウトですし,プレパラートを作る用意も環境もなかったら,そこでアウトです。

 実体顕微鏡なら,なにも準備することなく,いきなり標本を拡大して見ることができます。ゆえに,山や川,海などのフィールワークで威力を発揮します。

 考えてみると,電子顕微鏡は内部を真空にしないといけないし,標本をいきなり見る事が出来る顕微鏡は実体顕微鏡だけということになります。

 こんな顕微鏡ですから,きっと専門的で高いのだろうと思っていたら,なんと1万円ちょっとからある事がわかりました。それも中国製のへんな輸入品ではなく,ケンコーやビクセンと言った,日本の光学機器メーカーの製品です。

 まあ,光学機器というのは値段相応なものですから,1万円の顕微鏡は1万円なりのものですが,あるとないとでは大違いですから,これはぜひ手に入れなければなりません。

 調べてみると,どうもビクセンのものがよさそうです。SL-30という形式のものですが,定番品らしく,ヨドバシやビックでも普通に在庫があります。

 善は急げ,会社の帰りに寄り道して,買って帰りました。14070円でした。

 私が買ったものは長期の不良在庫だったようで,箱は色褪せていて,おまけに入っていた鉱物標本は粉々になっていました。他の部分には問題がないので,こういうことは大目に見ます。

 安い中国製のものなどは,左右で視力差があった場合に補正出来ないことがあるのですが,このSL-30はこれも配慮されていて,左右で独立で視度調整ができます。まあ矯正視力で観察すればいいだけの話で,実用上はなにも問題ないと思いますが,私のように裸眼で左右にちょっとした視力差がある人間にはありがたいものです。

 ワーキングディスタンスは50mmと十分,倍率は30倍と,ちょっと難しい倍率です。しかし小型でかわいらしく,ライトもアームの途中に差し込むLEDペンライトで,明るさも角度もばっちりです。

 左右の接眼レンズの間隔を調整し,早速覗き込んできます。

 しかし,なかなか視野にきちんと入ってきません。油断していると,左右どちらかが真っ暗になってしまいます。

 問題なのは,片側が真っ暗になっても,もう片側はちゃんと見えているので,気が付きにくいのです。立体的に見えず,左右別の絵に見えることもありますし,なんかぺったり平面的だなあと思っていたら,実は片側が見えてなかったとか,そういうことが良くおこります。

 もしかすると,高価なものはこのあたりが良く出来ているのかも知れません。また。100倍くらいまでのズームがついているLCD搭載の顕微鏡も3万円半ばで売っていますから,そっちの方がよかったのかも知れません。

 しかし,慣れてくると,まあ面白いこと。レーザーマーキングしたICの型番が手に取るように見えます。別に立体で見えないといけないものでなければ,片目で見てもよいわけですし,あんまり意地になることもありません。

 ブリッジもクラックも簡単に見つかりますし,ピンセットの先端がこんなに大きく見えるなんてのもちょっと感動的です。

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