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2018年11月の記事は以下のとおりです。

DR-100mk2のLCDも交換出来た

  • 2018/11/29 14:17
  • カテゴリー:make:

 さて,先日DR-100m3を買って満足という話をしましたが,DR-100mk2のLCDを修理して使う選択肢も捨ててはいません。

 LCDに横線が入ってしまってもPCMレコーダとして機能するわけですし,捨てるのはちょっと考えられません。ですがこのままでも実質使えないわけですから,なんとかしないと思うのもこれまた自然な流れです。

 ただ,mk3を買って満足の私には緊急度は低く,いつまでにないと困るという時間的制約もなければ,最悪壊れてもいいやと思うくらいの緩さが,アマチュアの流離らしいなと思います。こういうのは楽しいものです。

 ドライバICがガラスから浮いていたりしないかなあと考えてぐいぐい押してみたり,熱をかけて溶着を試みたり,透明電極の切れ目を補修できないかと擦ってみたりと悪あがきをしますが,当然のことながら事態を悪化させただけで終わってしまい,完全に表示が出なくなってしまいました。

 うーん,全く表示がでないと,もうどうにも使い物にならん。

 ここに至って,私から我慢して使うという選択肢が消えてなくなり,LCDを交換するという事でしか,DR-100mk2を復活させられないことになりました。

 とはいえ,前途は多難。前回も書きましたがLCDは特注がほとんどで同じ物が普通のお店で買えたりはしません。

 互換性のあるものを探そうにも,LCDの動作電圧,接続インターフェース,ドライバICの種類の違い,ソフトの互換性,パネルごとに違う設定の最適値の違い,透過率,サイズ,コネクタの形状と,同じ物は1つとしてないといっていいくらいです。

 例えば,同じドライバICだったとしても,そのドライバから出ている信号がすべて外部に出ているとは限らず,せっかくドライバICがI2C,SPI,4bitパラレルに対応しているのに,コネクタに来ているのはI2Cだけとか,そういうことがあります。

 信号も同じなのに,LCD駆動電圧の昇圧方法のオプションの違いで,最適なパラメータが違ってきて,そのままでは真っ黒とか,そういうこともあります。

 実際,同じような品種だろうとソフトを流用してうまくいかなかったという例はいくらでもあり,まさに死屍累々。パラメータを少し修正すれば済む場合も多いのですが,今回のようにファームウェアをいじれない場合はもうお手上げです。

 とまあ,取りかかる前からお手上げなんですが,先の見えない遙かな地平にこぎ出して,私がようやく見つけたのがaitendoのLCDでした。

 まず。mk2のLCDの品種からLCD単体の仕様を探します。全く同じ品名ではないのですが,形状や大きさ,ピン配置からこれだろうと思うものが見つかりました。案外,完全なカスタム品種ではないのかも知れません。

 そしてこのLCDに搭載されているドライバISを探ります。するとサムスンのものと判明。これに互換性のあるドライバICは幸いにも多いです。

 今度はこうしたカスタムLCDが何故か流れてくるお店を片っ端から探します。これまた幸いなことに,aitendoで,一回り小さいが同じピクセル数,同じドライバ,同じインターフェース,同じ電源電圧のものが見つかりました。

 とはいえ,ピンの数や配置は全然違います。あくまで4線式SPIというだけで,昇圧回路の構成も異なる可能性が高いです。

 ドライバICのコマンドを見比べて見るとこれは大丈夫。

 1つ400円ほどの安いLCD(実は何度か特価されてもっと安いときもあったらしい)ですので,壊す気でためしてみましょう。

 このLCDの仕様書を見て,電源周りのコンデンサを直接フレキに付けていきます。これで電源関係は配線完了です。オリジナルのLCDはV1からV5まで電圧が外に出てきていて,それぞれにコンデンサがぶら下がっていました。

 次はSPI関連の配線,そして3.3VとGNDを細いポリウレタン線で引っ張り出し,DR-100mk2の基板に仮にハンダ付けします。

 ワクワクして電源を入れますが,全く表示が出ません。

 やっぱりダメか・・・と思ったのですが,とりあえず配線ミスを調べたところ,SPIの配線が入れ替わっているのが発覚。これを修正すると,なんとまあ綺麗に表示が出たじゃありませんか。

 

20181129141833.jpg

 あとはもう勢いです。古いLCDとバックライト部を分離し,LCDを交換します。やや小さいので光が漏れないようにテープで遮光し,フレキをうまくたたんで基板に取り付けます。よし,問題なし。

 今度は筐体です。これが一番大変でした。

 LCDが小さくなったので,そのままでは表示エリアから外が見えてしまいます。ですから一回り小さい枠を目隠しとして用意する必要があります。

 いろいろ手を考えましたが,結局マスキングテープで範囲を区切り,上ケースの窓の枠を黒の塗料で塗りつぶすことにしました。ガンダムカラーエアブラシシステムが今回も大活躍です。

 マスキングが少なかったり,せっかく塗った塗装が剥がれたりと何度か失敗しましたがなんとか決着をつけ,無事に組み立て完了。

 まさか,ここまでうまくいくとは思いませんでした。というか,こんなチャレンジをしようなどと,普通はバカらしくて思わないでしょう。

 しかし,期せずしてDR-100mk2も使える状態になってしまいました。案外安く修理が出来たのもうれしいですが,それ以上に自分の工夫が功を奏して,ここまでうまくいったことがうれしく,その意味での愛着が加算されたような感じです。

 この手のLCDは,自分でソフトを書く人にしか縁がないと思っていましたが,案外こうした用途にも使える事を知って,私も勉強になりました。

 

DR-100mk3を買った

  • 2018/11/28 15:31
  • カテゴリー:散財

 先日,なにげなくDR-100mk2(TASCAMのPCMレコーダ)の電源を入れてみたら,なんとLCDの真ん中に線が入っています。4ドット程度の太さの線がスパーっと消えてしまっているのですが,おかげで肝心なレベルメータが見えなくなっていたりと,実用上問題大ありという感じです。

 ちょっと叩いたりゆすったり,電池を入れ替えたりしてもやっぱりだめで,これはもうLCDが死んだという判断をするしかありません。

 うーん,DR-100mk2って一応プロ用じゃなかったですかね。こんな低い信頼性だとは思いませんでしたから,がっかりです。

 ここで私には2つの選択肢があります。

 1つは修理をすることです。メーカーに修理を出すのも手ですが,お金も時間もかかるので面倒です。

 もう1つは後継機種を買うことです。DR-100mk3はかなり良い機種に仕上がっていて,私も新発売時に買い換えを検討した事がありますが,使用頻度を考えると当時の価格で5万円もする物を簡単に買うというわけにはいきませんでした。

 まずは修理を考えてみましょうか・・・

 一番確実なのは,同じLCDに交換することです。しかし,LCDはカスタム品がほとんどで,全く同じLCDはまず入手できないでしょう。

 そうすると別のDR-100から外して取り付けるという方法が考えられますが,実はDR-100系は中古もそれなりの値段が付くので,これも簡単に実行出来ません。

 修理については融通が利くことで知られるTEACですから,部品だけ分けて下さいと相談が出来る可能性も高いのですが,それにしても1000円や2000円で済むとも思えず,これも簡単な方法ではありません。

 なら,多少のサイズ違いには目を瞑り,互換性のありそうなLCDを手に入れて無理矢理取り付ける事になるのですが,もともとのLCDの詳細が不明なので,互換性もクソもありません。

 ということで,自力で修理するという作戦はなかなか難しそうです。

 とりあえずaitendoで,似たようなサイズ,互換性のあるLCDドライバを搭載したLCDを見つけたのでこれを手配しましたが,これについては後日。

 今回は,DR-100mk3への買い換えについての話です。

 私がDR-100mk2を買った時の金額は36000円くらいで,一時期27000円くらいまで下がっていたことを考えると,随分高いと思ったものですが,それでもこの機能と性能で36000円なら許せると,当時一番安い値段を出していた店で買いました。

 DR-100mk3は登場時こそ5万円でしたが,今は4万円を割る価格が出ていて,これなら購入可能だと,買うことにしました。

 ヨドバシが最安値だったのでポチりました。翌日には届いたのですが,ここでまさかに初期不良。

 録音をする時に,入力レベルを調整するツマミを回しても,録音レベルが思ったように変化しないのです。

 +方向に回してやると,ふいにレベルが0.5ほど上がりますが,回し続けると0.5ほど下がっていて,ちっとも値が増えません。

 -方向も同様で,これはロータリエンコーダの不良っぽい挙動です。

 翌日ヨドバシに電話をして交換してもらう事にしたのですが,なかなか電話も繋がらないし,大変でした。レンズの時にはすぐに交換に応じてくれたのに,今回は明らかな不良なのに一々メーカーに確認してからとか,手続きもあれこれと指示があったりして,やや面倒でした。

 果たして交換してもらった新しいDR-100mk3は問題なく動き,やはり初期不良だったのだなと思った次第です。でも,入力レベルのロータリエンコーダは壊れやすいのかもしれませんから,気を付けないといけません。

 ということで,軽くインプレションです。


・大きさ,重さ,質感,見た目

 大きさは旧来のDR-100系とほぼ同じで,手に馴染みますし違和感もありません,これは狙ってやったことでしょうから当たり前として,軽くなったなあという印象と,底面の質感が変わったり,デコボコがついたりしたことで,軽快な感じを受けました。

 画面が大きくなったことがとにかく目を引きますが,それでもたくさんの情報がちりばめられていて視認性は良くありません。もう少し整理出来なかったのかなあという気もします。

 バックライトの色はアンバーから白に変わりました。個人的にはアンバーは見やすく格好いいので白にする必要性を感じませんでしたが,これはこれで悪くはありません。

 ボタン類はより華奢になった感じがします。特にジョグダイアルは奥に引っ込みグラグラするようになりましたし,ダイアル中央のボタンもふにゃふにゃでよくありません。

 これも質感を悪くしている要因だとは思いますが,だからといって全然ダメというものでもないので,耐久性だけしっかり考えられていれば,私は構わないと思います。


・使い勝手

 使い勝手は大きく改善しました。すでにDR-100mk2を使う気になりません。

(1)入力レベルの調整

 mk2ではアナログのボリュームによって左右のレベルを別々に調整することが出来たのですが,これは便利なようで案外面倒でした。1つは,左右のレベルが外側と内側の同軸上に割り当てられているため,左右が同じレベルになっているかどうかはボリュームという部品の精度に依存してしまうことです。

 いやいや大した差ではない,というのが大半の意見だとは思いますが,これ,フェイドアウトを行うと,左右で音が消えるまでに時間差が出ます。フェイドアウト時の時間差を気にするか,それとも定常時の左右のレベル差を気にするかという問題になるのですが,私はどっちも許せません。

 もう1つはどちらか一方を固定し,もう片側だけ調整したいときに,固定したい方も一緒に動いてしまうことです。これも結構いやなもので,結局の所左右別々にレベルの調整をすることなど,最初から想定していないんじゃないかと思ったくらいです。

 まだあります。ツマミには数字が刻まれてはいますが,アッテネート量が書かれているわけではありません。あくまで目安です。それに再現性も乏しく,5と6の間,では正確な調整は出来ません。

 mk3ではここが改善され,本物のアナログボリュームではなく,ロータリエンコーダに変わりました。そして実際のアッテネートはデジタル制御で行われます。数字はどうもアッテネート量で表示されているようで,左右独立か同時かはメカ的なスイッチによって機能を切り替えることが出来ます。(このメカスイッチが実にいいです)

 さすがにデジタル制御のアッテネータだけに左右のばらつきは小さく,リニアリティも問題がありません。フェイドアウトも綺麗に決まりますし,左右のレベル差も全域でほぼないと言っていいでしょう。

 で,前述のように私はこの部分の不良を掴まされたわけです。良品が届いてからは快適で,私はここが一番うれしい改良でした。


(2)高速レスポンス

 システムが新規になり,CPUも高速化したおかげで,何をするにもキビキビ動くようになりました。DR-100mk2もレスポンスはよかったのですが,さらにレスポンスは上がっていて快適です。

 高速と言えば,起動から操作可能になるまでの時間も短くなり,かつ安定するようになりました。特に大容量カード使用時の待ち時間が大幅に減って,かつ容量に依存しなくなりました。

 mk2ではカード容量が大きくなると操作可能までの時間が倍々に増えてしまい,容量と使い勝手のバランスを探る面倒がありましたが,mk3では32GBでも同じ速度で立ち上がります。

 しかもmk2では同じ容量でもカードによって起動時間が違いました。mk3ではこれもなくなっており,どんなカードでも安心して使う事が出来ます。

(3)ストップボタンがへこんでいること

 これもよい改良です。やはりSTOPとRECは特別なボタンです。

(4)底面にスイッチがなくなったこと

 地味ですがこれも改善された点です。裏側にあったスイッチの操作性の悪さは言うまでもなく,今どうなっているかがわからず,気が付かないままに予期しない設定になっていることもmk2ではありました。そもそも底面に操作系を置くのが間違いだと思っていた私には,当然の改善です。

(5)Li-ion電池が内蔵に,単三が横から入れる仕組みに変わったこと

 Li-ion電池は充電器が必要な場合くらいしか取り外し出来る必要がなく,はめ殺しにして大容量化したことは正解です。加えて単三電池を底面から入れるのではなく,横から入れることが出来るようになったことも大きく操作性を改善しています。

 電源に関して言えば,mk2がDCジャックだったものがmicroUSBに変わったので,どこでもAC駆動が出来るようになりました。単三はコンビニで買えて,USBはそこら辺にいくらでもあります。

(6)XLR端子が6.5ミリTRSに対応したこと

 最近は普通になってきた6.5ミリのTRSによるバランス入力に対応してくれました。XLRへの対応は必須だとは思いますが,電子楽器の出力にもTRSが使われる世の中ですし,ここに普通のTSのプラグを差し込めばアンバランスのライン入力になってくれたりする(未確認)ので,非常に便利なのです。

(7)SDカードを横から入れる仕組みにしたこと

 これもmk2からの大きな改善です。mk2では左右のマイクの間,ちょうど頭の部分にSDカードのスロットがありました。これ,カードの交換をするのにいちいちウインドスクリーンを外さないといけないんですよ。

 こう考えてみると,mk2まではかなり無理して詰め込んだことで,操作性が犠牲になっていたんだなあと思います。mk3ではうまく整理されているので,使い勝手が全然違ってきます。

(8)頭部のジャックにはマイク録音に関係しないものが配置されたこと

 頭部の配置に関連しますが,ウインドスクリーンを付けたり外したりというのは面倒な話で,mk3ではマイク録音に関係ない端子を頭部に配置してあります。ライン入力とデジタル入力です。なるほどこれならウインドスクリーンは使いません。

(9)LEDのレベルメータが付いたこと

 これは大きいですよ。LCDにレベルメータがでているじゃないというなかれ。LCDはバックライトが消えているので,良く見えないのです。暗い所ではバックライトを点灯させられない状況も発生しますし,そもそもバックライトは電池を食います。

 ならOVERだけでもいいんじゃないのと言う声もあるでしょうが,それでも不足です。録音中はちゃんと入力が来ているかどうか気になるもので,しかもそれが適正であるかどうかをいつも知りたいものです。

 OVERのLEDが点灯すれば,確かに入力は来ているとわかりますが,その時にはすでにレベルオーバーで録音失敗です。失敗したことを知る事よりも,今うまくいっていることを知りたいという欲求には応えてくれません。

 mk3では,OVER以下に2レベルのLEDが付いています。なんらかの入力が来ていれば一番低いLEDが点灯しますし,真ん中が点灯すれば適正,OVERが点灯すればNGという具合に,少ないLEDで的確に状況を捉えることができます。

 LEDで言えば,録音LEDが底面から見える場所に来たこともうれしいですね。

(10)ワイアードリモコンに対応していること

 WiFiやBluetoothで繋ぐ方法もあるのでしょうが,信頼性の観点からワイアードが一番です。mk2では赤外線にも対応していましたが,結局使い物にならない赤外線を外し,ワイアードに絞ったのは偉いと思います。

 ついでいうと,mk2に付属のリモコンRC-10は赤外線のリモコンですが,受光部がついた枠をはめ込むと,ここから伸びたケーブルによってワイアードリモコンになります。mk3はこの状態のRC-10に対応しているので,わざわざ買い足す必要がありません。

(11)フォーマットが早い

 これも大きいです。SDカードのフォーマットにかかる時間が激減しました。クイックフォーマットではmk2とそんなに変わりませんが,フルフォーマットでの差は顕著で,mk2は電池が切れてしまってSDカードが死んだこともあったくらいです。

 mk3では早く終わるので,本当ににフルフォーマットなのかと心配になるほどです。


・音質

 音質は,まだレビューできるほど使い込んでいないのでなんとも言えませんが,DR-100mk2に比べて生々しさが増したように思います。これは私の好みです。

 また,192kHz/24bitに対応したことで,48kHz/16bitでも余裕が感じられ,DR-100mk2のような48kHzがベースとなったモデルとは一線を画しています。

 音のあたりも自然で柔らかく,しかし全帯域でのスピード感も揃っていて,このあたりはDR-100mk2と比較しないとわからないかもしれません。ただ,DR-100mk2が長時間の録音ではちょっと疲れてしまったことを考えると,これがmk3でどれくらい楽になるかが,今から楽しみではあります。


・まとめ

 DR-100mk2からの買い換えは予定しておらず,LCDの故障がなければmk3を使う事もなかったと思いますが,さすがに現行の最新機種,生まれながらにハイレゾの録音機の余裕は想像以上で,DR-100mk2のような無理をしていない感じがとても馴染みます。

 買い換えて良かったと思います。

1700円のデジタルテスタも較正してみよう

  • 2018/11/21 10:30
  • カテゴリー:make:

 較正失敗による大ピンチをなんとか乗り越えたDL2050,Errで使い物にならなかったFLUKE 101の復活,そして新しいFLUKE 101やアナログテスタも含めた,測定結果の統一と,なかなか今回の測定器祭りは良い結果に繋がっているのですが,最後の仕上げとして先日中国から届いたばかりの新鋭機,ZT109も較正を試みます。

 実はこれもFLUKE 101と同様,較正の方法がよく分かっていません。海外の掲示板でそれらしい記事を見たと思ったら質問だけで回答がなかったりと,較正を行うことにたどり着けないので,較正データをバックアップした上で試行錯誤を試みました。

 これもおそらくですが,世界で最初にZT109の較正に成功したアマチュアではないかと思います。

 では早速その方法を,といきたいところですが,その前に見つけた改造記事があって,これがとても参考になったので私も改造を行います。

 やっている改造は,ZT109の電源の強化と,基準電圧の品質向上です。書いてしまうと全然違うことをやっているようですが,実は同じ事を対策しています。

 まず電源の強化ですが,このままだとノイズが多いのだそうです。そこで電源ラインに0.1uFと1uF,そして10uFのセラミックを追加します。

 次に基準電圧ですがの品質向上ですが,電圧リファレンスIC(ICL8069)の出力に入るコンデンサが,このICのデータシートの推奨値に全然足りないらしく,これをデータシート通りにするため,0.1uFから4.7uFのセラミックに交換します。,

 本当は電源ラインの電解コンデンサを低ESR品に交換することも書いてあるのですが,私の手元にあいにく100uFの小型で低ESR品などなく,これはあきらめました。

 やった人は,これで34401Aなみになったよと書いていましたが,電源のノイズを取って精度が向上するというのもちょっと考えにくく,私の場合は案の定結果になにも変化はありませんでした。ただ,小さい電圧の測定ではその精度や安定度に差があると思いますし,理にかなった改造なので,これはぜひやっておきたい改造です。

 さて,ここまでやってから,較正を行います。

(1)まず裏蓋をあける。基板をむき出しにしたまま電源を入れることが出来る構造なので,FLUKE 101のように外部電源を用意しなくて良い。

(2)基板の右上にあるJP1をハンダでショート。これでCALモードに入る準備が出来た。

(3)おもむろにロータリスイッチを回して電源を入れる。

(4)セルフチェックが走ったあと,画面になにやら数字が出るがADCの読み取り値らしく,無視してよい。その後ほっとくとErrが出るが,これも気にしなくて良いが,Errが出てしまうと先に進めないので,右側のSELボタンをErrが出る前に押して,CALモードに入る。

(5)較正したいファンクションを選ぶ。ここではDC電圧を較正する。

(6)左側のRANGEボタンでレンジを選ぶ。FLUKE 101と違って,各レンジで較正を行う必要がある。

(7)さて,ここからが肝心。ZT109に入ってるチップのDTM0660は,各レンジでの較正値を選べるようになっていて,基準となる電圧にあわせて調整が出来る。データシートにあるリファレンス回路では,その較正値をボタンで選べるようになっているが,ZT109はボタンが足りない。

(8)SELボタンを押すと,較正値が下がっていく。例えば,10Vレンジだと,9,8,7,6・・・と言う具合に,較正値が1Vずつ減っていく。

(9)そしてこれがミソなんだが,SELボタンを「長押し」すると,今度は1Vずつ増える。

(10)例えば5.000Vを用意し,10Vレンジを調整する場合,SELボタンを使って5.000Vを選んでやる。こうすると自動的に入力された電圧を5.000Vとしてプリセットしてくれる。

(11)同様に他のレンジでもやる。100Vレンジでも30Vくらいで較正すれば,とりあえず使いものになる結果が得られる。

(12)他のファンクションでも同じだと思うが,私はDC電圧以外に較正する必要性を感じなかったので,ここで較正を終了。電源を切ってJP1を切り離し,電源を再投入する。

 これで,較正は終わりです。

 うまく言葉に出来ない部分もあるのですが,EEPROMのバックアップをきちんと取ってから試行錯誤をやってください。しばらく触っているとわかると思います。

 さて,こうして較正を行った結果です。

2.501V -0.65mV -0.025982851%
5.003V -0.02mV -0.000399759%
7.506V 1.46mV 0.019454890%
10.00V -5.33mV -0.053271606%
 
 おお,さすが5Vでの値はこれ以上ないくらいの一致を見ています。また,10Vまでが同一のレンジだということで,7.500Vでも高い精度を誇っています。10Vについては,まあこんなものだと思います。

 このテスタは10000カウントですし,10Vは小数点以下2桁しか出ませんので,10mV単位です。ですからこのテスタでは10.005Vの電圧を測定すると,10.00Vと10.01Vのどちらかになるのが正常ですから,誤差の割合を見ることにあまり意味はないのかも知れません。

 ちなみに,較正前の値が以下なのですが,全体的にばちっとあっているのがわかります。

2.500V -1.65mV -0.065956469%
4.999V -4.02mV -0.080351468%
7.500V -4.54mV -0.060496713%
10.00V -5.33mV -0.053271606%

 抵抗や電流も一応スペックに入っているので,変に較正を自分でやらない方がいいと考えておいたわけですが,DC電圧だけはこの結果を得たいがために,頑張って見ました。

 この数字を見ると,やって良かったなあと思います。これで,34401A,DL2050,2台のFLUKE 101,そしてZT109,アナログテスタが揃いました。気分がいいです。

 残念なのは,他のテスタについては,今のところあきらめるしかないということです。

 3.5桁のテスタはそもそも較正なんかしなくてもきちんと値を出してくれます。これがズレてしまうようなテスタはすでに較正など不可能なほどおかしくなっています。

 P-10も調整したいですが,これは内部の犯行低抵抗を回してもうまく調整が出来ません。なにかうまい方法があるんでしょうが,もう探す気も起きません。

 そもそも,家の中にテスタがゴロゴロしている状態というのも妙なストレスが溜まります。なんとかせねば。

 

Errの出ているFLUKE 101を修理

  • 2018/11/20 13:09
  • カテゴリー:make:

 秋です。測定器の秋です。

 アナログテスタをきっかけに,これまでにDL2050の較正が済みました。あきらめていたこれらの較正が出来た事で,一気に壁を突き破った感があります。

 DL2050の較正は,較正データを記録したEEPROMを直接いじるという方法を導入し,満足いく結果を得ました。この方法は,きっと他にも役立つはずです。

 というわけで,M68000のマニュアルに書かれた名文句"Break Away from the Past"を思い出しながら,これまでに頓挫したテーマに再度挑むことにしました。

 そう,FULKE 101の復活です。

 FLUKE 101は2014年に購入したもので,6000円程度で買える最も安いFLUKEです。最小限度の機能に絞り込んであり,見た目もとてもかわいらしいテスタです。でもそこはFLUKEらしく,作りはしっかりしていますし,内部もきちんと作られていて,安全面も偽りなしです。なによりFLUKE原理主義者を(ギリギリ)黙らせるそのご威光が最大の価値です。

 ところが,私にいわせると実力は今ひとつで,仕様そのものも中国製の安い測定器と同程度ですし,実力もその範囲にとりあえず入っているという感じです。FLUKE原理主義者が「あれは中華FULKEだ」と他のモデルとは区別したい気持ちもわからなくはありません。

 個人的にも,他のFLUKEだと較正方法が公開されているのに101(と106,107)は公開されていないところが,他とは完全に異なるポリシーを感じていて,良くも悪くも異母兄弟っぽい感じがするなあと思っていました。

 なにより,ここ2年ほど起動時にErrと出てきて,数パーセントの誤差が出るようになってしまい,もう使い物にならなくなっていたために,1700円の中国製テスタを買いましたが,もはやこれで十分に101の代わりはこなせます。

 ですが,このまま101を捨てておしまいにするのももったいないので,なんとか復活出来ないかと考えるのも,また自然な発想です。DL2050のように,正しいEEPROMの値を書き込んでやればきっと復活するはず,そう考えるととにもかくにも,手が動き始めました。

 まず,Errと出てしまう101からEEPROMを外します。24AA024という2kbitのI2CタイプのEEPROMが入っています。これを外し,AKI-PICで読み込みます。0xFFだらけでまともなデータが出てきませんから,やはりデータが壊れているのでしょう。

 先頭だけ0x00になっているので,ここを0xFFにするだけでエラーは出なくなりそうな気がしますが,それはぐっと我慢して,EEPROMそのものの物理的な破損がないかを確かめるため,いろいろなデータを書いて確認をします。

 結果,EEPROMは壊れていないことがはっきりしました。

 それならデータを正しいものにすれば問題は解決しそうで,誰か101のEEPROMデータをインターネットの海に放流していないかを調べてみますが,そういう違法行為をする人はいません。ほっとしました。

 なら,101に使われているチップのデータシートを探し出し,これにデータに関する記述がないかを調べるのが良さそうです。しかしこれも玉砕。そもそも101のチップがなにかも不明でした。きっとカスタムでしょう。

 そうなると,考えられる手段は1つ。もう1台101を買って,これからデータを吸い出し,書き込むことです。これなら違法性はありません。もう1台という所に抵抗がありますが,今は5000円くらいで買えるということもあり,修理代が5000円と考えたらまあ許せるだろうと,ポチりました。

 韓国語の純正ホログラムが貼られた怪しげな新しい101が届き,一通り動作確認をしてから早速分解して,EEPROMを摘出します。

 読み出してデータを保存,壊れた101のデータと比較すると,なるほど完全に壊れています。

 読み出したEEPROMはすぐに買ったばかりの本体に戻し,動作を確認します。

 続けて,古いEEPROMに新しいデータを書き込み,壊れた101に戻します。

 すると,Errは出なくなりました。予想通りですが,うれしいですね。

 これでとりあえず故障から復活したのですが,それでも誤差が大きすぎて使いものにはなりません。そうなると,EEPROMからデータを直接書き換えるか,真面目に較正をするかのどっちかになります。

 まあ,EEPROMのデータは残してあるので,適当に較正をやっても復活出来ますから,試行錯誤をやってみましょう。

 結果を先に書くと,うまく較正ができたのです。

 少なくとも私はこの情報を探し出すことが出来なかったので,ひょっとしたら世界で最初に101の較正方法を公開した記事になるかも知れません。

(1)電池を外し,奥にある「Calibration Seal」を剥がす。

(2)ミノムシクリップで電池を繋ぐ。電池を入れてしまうと,電池の奥にあるチェックランドに当たれなくなる。お奨めは外部に電池ボックスを用意し,ここから3Vを引っ張ってくること。

(3)101の電源を入れる。較正したいモードにスイッチを回す。ここでは直流電圧にする。

(4)電池ボックスの奥にあるS3というランドを,数秒間ショートする。

(5)ピーッと音がして,稲妻マークが出る。これがCALモード。

(6)さて,ここからが肝心。101はオートレンジという事もあり,通常のテスタのように各レンジで較正を行う必要はなく,なんと4.5Vだけを合わせれば,他のレンジもすべて合う。

(7)ということで,34401Aで4.50000Vにあわせた電源を繋ぎ,この状態でHOLDボタンを押す。ピーと音がなって,4.500という表示になるはず。これで較正完了。

(8)他のレンジの電圧も確認し,問題ないことを確認して,電源をOFF。これでCALモードから抜ける。

 私はやっていませんが,おそらく他のレンジでも同様のはずです。とはいえ,どの電圧(抵抗値)で較正を行うのかはやっていないのでわかりませんが,それは各自試してみて下さい。私はDC電圧だけ合っていれば,あとはそれなりでも構いません。

 結果,私がきちんと確認出来る50mVくらいから,30Vくらいまでの間は,ほぼ34401Aと同じ値が得られるようになりました。これはすごい安心感ですよ。

 そこで,新しい101も同様の方法で較正しました。これで,34401Aを基準に,2台の101とDL2050,アナログテスタが一致するようになりました。


 では早速,高齢の精度を調べてみます。

 いつものように,基準電圧発生器を使います。製造元で製造時に測定された値は,

2.50165V
5.00302V
7.50454V
10.00533V

 です。

 まずは,新しい101を較正した結果です。

2.501V -0.65mV -0.025982851%
5.003V -0.02mV -0.000399759%
7.50V -4.54mV -0.060496713%
10.00V -5.33mV -0.053271606%

 続けて,古い101を較正した結果です。

2.501V -0.65mV -0.025982851%
5.003V -0.02mV -0.000399759%
7.49V -14.54mV -0.193749384%
9.99V -15.33mV -0.153218335%


 まず,4.5Vで較正を行った結果として,5Vでの精度は素晴らしいです。6Vまでのレンジであれば,この2つの101は同じ結果を出すと考えて差し支えないでしょう。

 問題なのは,レンジが60Vに切り替わってからの誤差で,新しいものは比較的まともですが,古いものはあまり良い精度ではありません。

 これは外部にある分圧抵抗の誤差が見えているんだろうなと思うのですが,それでも0.2%以内ですから全く問題ないと割り切ってよいでしょう。

 つまるところ,分圧抵抗の誤差をある範囲に入れることは出来れば,相対誤差はこの抵抗の誤差で決まり,絶対誤差については,ある1つのレンジをきちんとあわせ込めばその相対誤差範囲にすべて入ってくるという考え方です。

 ただ,較正というのは分圧抵抗の誤差も較正されるべきと私は考えているので,どれか1つを合わせて後は抵抗の誤差の実力で,というのは,いわばリファレンス電圧を合わせただけともいえ,なんとも中途半端な感じがあります。(そのかわり校正作業は楽ちんなわけですが)

 ついでにいうと,古い101の較正データはAC電圧は抵抗では新しい101の較正データがそのまま入っていますから,まったくあてになりません。事実,AC100を測定してみると1V程ズレていました。1%ほどの違いがあるという事ですので,これは結構大きいです。

 ただ,DC電圧で使うことがほとんどですし,それがこの精度で揃ったわけですから,これで誤差や精度を気にせず使う事が出来そうです。

 さて,2台の101がこのレベルで揃い,34410AやDL2050とも違いがなくなってくると,先日購入したZT109もこの精度が出るようにしたいですよね。

 チップセットこそわかっているのですが,較正の方法は相変わらず不明なまま,これで多機能な中華DMMをどこまで追い込めるのか・・・続きは後日。

新しいデジタルテスタは1700円

 アナログテスタを新調し,アナログテスタの再評価の波が来ている私ですが,そうはいっても普段使いはやはり便利なデジタルテスタです。

 長く秋月のP-10が活躍していた普段使いの主役を,フルークの101が担うことを期待されたものの,購入時点で大きな誤差があり,そのうちエラーで数%の誤差を出すという「故障」に見舞われ,再びP-10が老骨にむち打って私の要求に応えてくれていたんですが,それももう限界。

 正統後継者であるP-16は精度はいいんですが反応が遅く,どうしたものかとおもっていたところ,フルークの100シリーズのそっくりさんが安価に売られていることを知りました。どうも数年前からあるようです。

 形こそそっくりですが,画面は大きく,基本スペックは100シリーズと同じ感じです。それで値段はとっても安く,6000カウントのもので2000円程度です。

 2000円ならダメでも悔しくないじゃないですか。

 ということで,一度は購入手続きをしたんですが,同じシリーズでなんと9999カウント(10000カウントっていうんじゃないんですかね,こういう場合)のものが,実質1700円で売られているのを見つけました。中国からの配送なので時間はかかりますし,不安も大きいですが,この安さには抗えません。

 いろいろ調べてみましたが,どうもZOTECという会社のZT109という製品のOEMのようです。この値段で,この性能で本当に10000カウントなのか?と心配でしたが,10日ほどかかってようやく届きました。

 そう,4000カウントや6000カウントのテスタは,安価で高性能なチップが出回っているのですが,10000カウントってどうなんでしょうね?

 で,早速見てみるのですが,画面は大きく見やすいですし,大きさも使いやすくて,このあたりは期待通りです。

 しかし,質感はいまいちです。スイッチのクリックの感触は悪くはないのですが,そこはやっぱりフルークは良く出来ていて,これに比べると見劣りします。

 ケースにもバリがあり,手にひっかかります。

 中をあけてみると,部品同士の距離を確保していないとか基板の切り欠きや抜きがなく,高圧での安全性への配慮は,さすがにフルークにはかないません。CATIIやCATIIIなんてのは,たぶん嘘でしょう。

 それでもレスポンスはいいし,かわいらしいのも確かです。繰り返しますが1700円です。

 さて,精度をみてみましょう。いつもの基準電圧発生器を引っ張り出し,これを測定してみます。

 数年経過して電圧も狂っているでしょうし,34401Aも較正をしました。以前のようにこの基準電圧発生器を信用していいかどうかは議論の余地がありますが,10000カウントのテスタを見るくらいなら,十分使えるはずです。

 で,全然意味のない数字になってしまうのですが,この基準電圧発生器の電圧が全く変わっていないと仮定し,そこからの差分を見てみることにします。

 参考までに,この標準電圧発生器の,製造元での実測値を書いておきます。

2.50165V
5.00302V
7.50454V
10.00533V

 で,今回のテスタの実測値です。

2.500V -1.65mV -0.065956469%
4.999V -4.02mV -0.080351468%
7.500V -4.54mV -0.060496713%
10.00V -5.33mV -0.053271606%

 おお,これはなかなか。

 誤差が0.1%以下になっているのがうれしいです。

 4桁だと2.50165Vは2.502Vと表示されるとうれしいわけで,そこまではさすがに望み薄でしたが,それでも誤差は2.5Vに対してわずか1.65mVです。それに,そもそもこの基準電圧発生器の数年前の出力電圧値がこの値であるという保証もありません。

 10000カウントですから,8Vや9Vが小数点以下3桁まで出てくれます。それが0.06%の実力だというのですから,十分に高精度だといってよいでしょう。繰り返しますが,1700円ですよ,これ。

 周波数や抵抗も実用上問題はないし,電流は少し少なめに出ますがそれでも1%程度と十分です。それと矩形波の発振出力が用意されていて,50Hzから5Khzまで,それなりの精度の周波数が出てくれます。ちょっとした実験には使えそうです。

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