先日,なにげなくDR-100mk2(TASCAMのPCMレコーダ)の電源を入れてみたら,なんとLCDの真ん中に線が入っています。4ドット程度の太さの線がスパーっと消えてしまっているのですが,おかげで肝心なレベルメータが見えなくなっていたりと,実用上問題大ありという感じです。
ちょっと叩いたりゆすったり,電池を入れ替えたりしてもやっぱりだめで,これはもうLCDが死んだという判断をするしかありません。
うーん,DR-100mk2って一応プロ用じゃなかったですかね。こんな低い信頼性だとは思いませんでしたから,がっかりです。
ここで私には2つの選択肢があります。
1つは修理をすることです。メーカーに修理を出すのも手ですが,お金も時間もかかるので面倒です。
もう1つは後継機種を買うことです。DR-100mk3はかなり良い機種に仕上がっていて,私も新発売時に買い換えを検討した事がありますが,使用頻度を考えると当時の価格で5万円もする物を簡単に買うというわけにはいきませんでした。
まずは修理を考えてみましょうか・・・
一番確実なのは,同じLCDに交換することです。しかし,LCDはカスタム品がほとんどで,全く同じLCDはまず入手できないでしょう。
そうすると別のDR-100から外して取り付けるという方法が考えられますが,実はDR-100系は中古もそれなりの値段が付くので,これも簡単に実行出来ません。
修理については融通が利くことで知られるTEACですから,部品だけ分けて下さいと相談が出来る可能性も高いのですが,それにしても1000円や2000円で済むとも思えず,これも簡単な方法ではありません。
なら,多少のサイズ違いには目を瞑り,互換性のありそうなLCDを手に入れて無理矢理取り付ける事になるのですが,もともとのLCDの詳細が不明なので,互換性もクソもありません。
ということで,自力で修理するという作戦はなかなか難しそうです。
とりあえずaitendoで,似たようなサイズ,互換性のあるLCDドライバを搭載したLCDを見つけたのでこれを手配しましたが,これについては後日。
今回は,DR-100mk3への買い換えについての話です。
私がDR-100mk2を買った時の金額は36000円くらいで,一時期27000円くらいまで下がっていたことを考えると,随分高いと思ったものですが,それでもこの機能と性能で36000円なら許せると,当時一番安い値段を出していた店で買いました。
DR-100mk3は登場時こそ5万円でしたが,今は4万円を割る価格が出ていて,これなら購入可能だと,買うことにしました。
ヨドバシが最安値だったのでポチりました。翌日には届いたのですが,ここでまさかに初期不良。
録音をする時に,入力レベルを調整するツマミを回しても,録音レベルが思ったように変化しないのです。
+方向に回してやると,ふいにレベルが0.5ほど上がりますが,回し続けると0.5ほど下がっていて,ちっとも値が増えません。
-方向も同様で,これはロータリエンコーダの不良っぽい挙動です。
翌日ヨドバシに電話をして交換してもらう事にしたのですが,なかなか電話も繋がらないし,大変でした。レンズの時にはすぐに交換に応じてくれたのに,今回は明らかな不良なのに一々メーカーに確認してからとか,手続きもあれこれと指示があったりして,やや面倒でした。
果たして交換してもらった新しいDR-100mk3は問題なく動き,やはり初期不良だったのだなと思った次第です。でも,入力レベルのロータリエンコーダは壊れやすいのかもしれませんから,気を付けないといけません。
ということで,軽くインプレションです。
・大きさ,重さ,質感,見た目
大きさは旧来のDR-100系とほぼ同じで,手に馴染みますし違和感もありません,これは狙ってやったことでしょうから当たり前として,軽くなったなあという印象と,底面の質感が変わったり,デコボコがついたりしたことで,軽快な感じを受けました。
画面が大きくなったことがとにかく目を引きますが,それでもたくさんの情報がちりばめられていて視認性は良くありません。もう少し整理出来なかったのかなあという気もします。
バックライトの色はアンバーから白に変わりました。個人的にはアンバーは見やすく格好いいので白にする必要性を感じませんでしたが,これはこれで悪くはありません。
ボタン類はより華奢になった感じがします。特にジョグダイアルは奥に引っ込みグラグラするようになりましたし,ダイアル中央のボタンもふにゃふにゃでよくありません。
これも質感を悪くしている要因だとは思いますが,だからといって全然ダメというものでもないので,耐久性だけしっかり考えられていれば,私は構わないと思います。
・使い勝手
使い勝手は大きく改善しました。すでにDR-100mk2を使う気になりません。
(1)入力レベルの調整
mk2ではアナログのボリュームによって左右のレベルを別々に調整することが出来たのですが,これは便利なようで案外面倒でした。1つは,左右のレベルが外側と内側の同軸上に割り当てられているため,左右が同じレベルになっているかどうかはボリュームという部品の精度に依存してしまうことです。
いやいや大した差ではない,というのが大半の意見だとは思いますが,これ,フェイドアウトを行うと,左右で音が消えるまでに時間差が出ます。フェイドアウト時の時間差を気にするか,それとも定常時の左右のレベル差を気にするかという問題になるのですが,私はどっちも許せません。
もう1つはどちらか一方を固定し,もう片側だけ調整したいときに,固定したい方も一緒に動いてしまうことです。これも結構いやなもので,結局の所左右別々にレベルの調整をすることなど,最初から想定していないんじゃないかと思ったくらいです。
まだあります。ツマミには数字が刻まれてはいますが,アッテネート量が書かれているわけではありません。あくまで目安です。それに再現性も乏しく,5と6の間,では正確な調整は出来ません。
mk3ではここが改善され,本物のアナログボリュームではなく,ロータリエンコーダに変わりました。そして実際のアッテネートはデジタル制御で行われます。数字はどうもアッテネート量で表示されているようで,左右独立か同時かはメカ的なスイッチによって機能を切り替えることが出来ます。(このメカスイッチが実にいいです)
さすがにデジタル制御のアッテネータだけに左右のばらつきは小さく,リニアリティも問題がありません。フェイドアウトも綺麗に決まりますし,左右のレベル差も全域でほぼないと言っていいでしょう。
で,前述のように私はこの部分の不良を掴まされたわけです。良品が届いてからは快適で,私はここが一番うれしい改良でした。
(2)高速レスポンス
システムが新規になり,CPUも高速化したおかげで,何をするにもキビキビ動くようになりました。DR-100mk2もレスポンスはよかったのですが,さらにレスポンスは上がっていて快適です。
高速と言えば,起動から操作可能になるまでの時間も短くなり,かつ安定するようになりました。特に大容量カード使用時の待ち時間が大幅に減って,かつ容量に依存しなくなりました。
mk2ではカード容量が大きくなると操作可能までの時間が倍々に増えてしまい,容量と使い勝手のバランスを探る面倒がありましたが,mk3では32GBでも同じ速度で立ち上がります。
しかもmk2では同じ容量でもカードによって起動時間が違いました。mk3ではこれもなくなっており,どんなカードでも安心して使う事が出来ます。
(3)ストップボタンがへこんでいること
これもよい改良です。やはりSTOPとRECは特別なボタンです。
(4)底面にスイッチがなくなったこと
地味ですがこれも改善された点です。裏側にあったスイッチの操作性の悪さは言うまでもなく,今どうなっているかがわからず,気が付かないままに予期しない設定になっていることもmk2ではありました。そもそも底面に操作系を置くのが間違いだと思っていた私には,当然の改善です。
(5)Li-ion電池が内蔵に,単三が横から入れる仕組みに変わったこと
Li-ion電池は充電器が必要な場合くらいしか取り外し出来る必要がなく,はめ殺しにして大容量化したことは正解です。加えて単三電池を底面から入れるのではなく,横から入れることが出来るようになったことも大きく操作性を改善しています。
電源に関して言えば,mk2がDCジャックだったものがmicroUSBに変わったので,どこでもAC駆動が出来るようになりました。単三はコンビニで買えて,USBはそこら辺にいくらでもあります。
(6)XLR端子が6.5ミリTRSに対応したこと
最近は普通になってきた6.5ミリのTRSによるバランス入力に対応してくれました。XLRへの対応は必須だとは思いますが,電子楽器の出力にもTRSが使われる世の中ですし,ここに普通のTSのプラグを差し込めばアンバランスのライン入力になってくれたりする(未確認)ので,非常に便利なのです。
(7)SDカードを横から入れる仕組みにしたこと
これもmk2からの大きな改善です。mk2では左右のマイクの間,ちょうど頭の部分にSDカードのスロットがありました。これ,カードの交換をするのにいちいちウインドスクリーンを外さないといけないんですよ。
こう考えてみると,mk2まではかなり無理して詰め込んだことで,操作性が犠牲になっていたんだなあと思います。mk3ではうまく整理されているので,使い勝手が全然違ってきます。
(8)頭部のジャックにはマイク録音に関係しないものが配置されたこと
頭部の配置に関連しますが,ウインドスクリーンを付けたり外したりというのは面倒な話で,mk3ではマイク録音に関係ない端子を頭部に配置してあります。ライン入力とデジタル入力です。なるほどこれならウインドスクリーンは使いません。
(9)LEDのレベルメータが付いたこと
これは大きいですよ。LCDにレベルメータがでているじゃないというなかれ。LCDはバックライトが消えているので,良く見えないのです。暗い所ではバックライトを点灯させられない状況も発生しますし,そもそもバックライトは電池を食います。
ならOVERだけでもいいんじゃないのと言う声もあるでしょうが,それでも不足です。録音中はちゃんと入力が来ているかどうか気になるもので,しかもそれが適正であるかどうかをいつも知りたいものです。
OVERのLEDが点灯すれば,確かに入力は来ているとわかりますが,その時にはすでにレベルオーバーで録音失敗です。失敗したことを知る事よりも,今うまくいっていることを知りたいという欲求には応えてくれません。
mk3では,OVER以下に2レベルのLEDが付いています。なんらかの入力が来ていれば一番低いLEDが点灯しますし,真ん中が点灯すれば適正,OVERが点灯すればNGという具合に,少ないLEDで的確に状況を捉えることができます。
LEDで言えば,録音LEDが底面から見える場所に来たこともうれしいですね。
(10)ワイアードリモコンに対応していること
WiFiやBluetoothで繋ぐ方法もあるのでしょうが,信頼性の観点からワイアードが一番です。mk2では赤外線にも対応していましたが,結局使い物にならない赤外線を外し,ワイアードに絞ったのは偉いと思います。
ついでいうと,mk2に付属のリモコンRC-10は赤外線のリモコンですが,受光部がついた枠をはめ込むと,ここから伸びたケーブルによってワイアードリモコンになります。mk3はこの状態のRC-10に対応しているので,わざわざ買い足す必要がありません。
(11)フォーマットが早い
これも大きいです。SDカードのフォーマットにかかる時間が激減しました。クイックフォーマットではmk2とそんなに変わりませんが,フルフォーマットでの差は顕著で,mk2は電池が切れてしまってSDカードが死んだこともあったくらいです。
mk3では早く終わるので,本当ににフルフォーマットなのかと心配になるほどです。
・音質
音質は,まだレビューできるほど使い込んでいないのでなんとも言えませんが,DR-100mk2に比べて生々しさが増したように思います。これは私の好みです。
また,192kHz/24bitに対応したことで,48kHz/16bitでも余裕が感じられ,DR-100mk2のような48kHzがベースとなったモデルとは一線を画しています。
音のあたりも自然で柔らかく,しかし全帯域でのスピード感も揃っていて,このあたりはDR-100mk2と比較しないとわからないかもしれません。ただ,DR-100mk2が長時間の録音ではちょっと疲れてしまったことを考えると,これがmk3でどれくらい楽になるかが,今から楽しみではあります。
・まとめ
DR-100mk2からの買い換えは予定しておらず,LCDの故障がなければmk3を使う事もなかったと思いますが,さすがに現行の最新機種,生まれながらにハイレゾの録音機の余裕は想像以上で,DR-100mk2のような無理をしていない感じがとても馴染みます。
買い換えて良かったと思います。