スタンバイ電流が極端に多いPC-1251
- 2023/05/28 12:33
- カテゴリー:マニアックなおはなし, make:
私が所有するPC-1251のうち,最後に入手した,最も程度の悪い(ゆえに常用機)の電池が切れてしまいました。
まあ,電池が切れることそのものは普通の事なのですが,その電池の減りが随分早いのです。修理してまだ2ヶ月ほど,その間ほとんど使っていないわけで,それでこれだけ早く電池が切れてしまうと,1年間に6回も電池を交換しなければならなくなります。
これはおかしいと調べてみると,スタンバイ電流がやっぱり120uAと大きな値を示しています。正常なPC-1251は大体20uAから多くても30uAくらいですから,これはやはり多すぎます。
動作そのものに問題はないので,どこかにリークしているのでしょう。これはなかなか厄介です。
ちょっと難しい修理になるだろうと思いつつ分解します。目処を立てたのは,LCD周りです。このPC-1251は,付けっぱなしになっていたCE-125のNi-Cd電池の液漏れと,ケースからの謎の液体の染み出し(おそらく可塑剤)によって「汁まみれ」になっていて,かなり基板にも被害が出ていた個体です。LCDも水没に近い状態になっていて,基板の金メッキも剥がれていました。LCDを交換した時もなかなか上手く表示が出てこず,散々苦労した覚えがあります。
圧電ブザーを外して分解,この段階でスタンバイ電流は少し減って60uAから80uA程度。続けてLCDを取り外し,導電ゴムを交換します。古いものは粘り気が出ていて,もしかしたら絶縁不良からリークが出ているかも知れないと思ったからです。しかし結果はNG。交換してもスタンバイ電流は減りません。しかもまた表示不良です。いやー,困った。
導電ゴムはこのままオリジナルを使うこととし,今度はLCDとベゼルを固定する両面テープの厚みを稼ぐために,テープを貼ることにしました。両面テープは剥がしてあるので,その分だけ厚みが減っています。なので,よく似た厚さのテープを貼って厚みを調整するわけです。
もともと基板は薄く,しかもベークの安い両面基板です。ここに液体が染み込んでいるので厚紙みたいにふにゃふにゃになっていますから,ベゼルを無理に固定すると,基板がたわんで端子が浮いてしまいます。
なんどか調整を行って取り付け完了。一応表示は出るようになりました。(後述しますが,時間が経過すると表示が乱れたりする問題が後になって出てきました。)
さて,スタンバイ電流が多い理由はLCDではなかったわけで,ここからがリーク探しの旅になります。次に疑ったのは基板の不良です。電解液によるレアショートが原因になることが多いので,まずは目視です。しかし,見た限り金メッキの腐食箇所も大丈夫そうです。
さらにチェックを進めます。テスターで手当たり次第に抵抗値を見ていきます。ここで1MΩ以下になっている箇所が見つかったら,回路図と照合してその値が正しいかどうかを確認していきます。すると,拡張コネクタの隣り合う端子の両端の抵抗が1MΩ以下になっている箇所が見つかりました。
コネクタの外観は問題ないのですが,実はこのコネクタには液体が染み込んでいて,CE-150側のコネクタはレアショートしていて,プリンタが動かなくなっていました。本体側のコネクタも内部でショートしているのではかいかと思います。
そこでコネクタを基板から取り外して再度抵抗値を測定,やはり1MΩ以下になっています。IPAにつけ込んで揺すると,青いサビがポロポロと出てきました。コイツが端子間をショートさせていたんでしょう。
洗浄後に抵抗値を測定すると,600MΩ以上。これで絶縁は保たれました。このコネクタを外した状態で本体のスタンバイ電流を測定すると40uAから60uAくらいで,少し減っています。これが原因だったことは間違いなさそうです。
これで組み上げて再度測定したところ,なぜか80uAから100uAに増えていました。スタンバイ電流は不安定なのでこれくらいは増えるかもなあと思ったのですが,冷静に考えると100uAならやはり数ヶ月しか電池が持ちません。他の個体が20uAから30uAですので,まだどこかおかしいはずです。
そして問題がまだ2つあります。10分ほどすると表示がおかしくなる問題と,メモリが化けるもんです。短いプログラムは問題ないのですが,大きなプログラム,特にマシン語をロードすると暴走します。
前者はベゼルのカシメを少しずつ緩めてなんとか解決しました。2つ目はメモリ基板とメイン基板を繋ぐ導電ゴムを面倒くさがらずにその都度アルコールで拭くことと,内部のフレームをきちんと取り付け,かつ圧電ブザーの配線を上手く取り回して,部品で挟んでしまわないようにすることで,メモリ基板を浮かないように取り付けることで,なんとか解決しました。これ,なかなか大変です。
ROMのアドレスと低位のRAMアドレスがきちんと繋がっていれば,とりあえずマシンは起動します。しかし,高位のアドレスへのアクセスが発生すると暴走するわけですから,とりあえず起動しました,ではダメなのです。
メモリ基板の取り付け方でもスタンバイ電流が変わります。メモリのエラーが出るときは多めですし,上手く取り付けられた時などは20uA程度まで下げる事が出来たりしますが,こういう時はメモリエラーは出ません。アドレスが浮いたりするんでしょう。
スタンバイ電流が30uAくらいになってきたので,いよいよ本格的に組み上げます。しかし,最終チェックで60uAから80uAに戻ります。一晩経つと100uAを越えているので,絶望的な気分になりました。
スタンバイ電流が増えたときの差分を冷静に考えると,圧電ブザーを取り付けたのが差になっています。もしやと思い,圧電ブザーを付けたり外したりすると,やはりスタンバイ電流が大きく変わります。
さらに元々の圧電ブザーの直流抵抗を測定すると,数百キロΩと異常に低い値です。正常なものは無限大でなければなりません。
たぶんこれが原因です。新品の圧電ブザーに交換するとスタンバイ電流は20uA程度になりました。この後,メモリチェックも完了,ようやく修理が完了しました。
結果として,リークはコネクタのレアショートと,圧電ブザーの不良でした。基板やLCDには問題がなかったということになります。どちらも単純な構造の部品ですし,寿命はないようなもので,壊れてしまうことも想像しなければ,壊れた後に何が起こるかは,接触不良や音が出ない程度の想像はできても,スタンバイ電流が増えるという事まで想像出来る人は少ないでしょう。そもそも圧電ブザーって壊れるんですねぇ。
今回も苦労しました。液漏れが本体のあらゆる箇所を蝕むという,恐ろしい病気のような元凶になっていることをまざまざを見せつけられました。多くのポケコンがこうした深刻な事情で故障しているkとをを考えると,修理など一筋縄ではいかず,結局修理出来ていないまま使われているものや市場に流れているものも多いのではないでしょうか。
世の中には,ジャンクのポケコンを修理して売って小遣い稼ぎをする人がいるようですが,彼らがここまできちんと見ているとは思えませんし,仮に見ていたとしても修理出来るだけのスキルを多くの人が持っているとも思えません。
もし,ポケコンが欲しいなら,やっぱり自分で修理出来るだけの技術を持つことが重要だなあと思いました。