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2014年08月の記事は以下のとおりです。

周波数カウンタの改造と失敗

  • 2014/08/19 14:47
  • カテゴリー:make:

 夏はどういうわけだか,測定機関系をいじりたくなるようです。先日のTCXO搭載で実用レベルに至った周波数カウンタを,さらにアップグレードしようと画策したのですが,今回はその顛末です。先に結論を書くと,失敗に終わっていて,元に戻してしまいました。


(1)測定周波数の上限をアップ

 秋月のキットがベースになっているこの周波数カウンタは,その測定周波数の上限が2.4GHzです。これは,プリスケーラに富士通のMB506を使ったキットであるからですが,1/1024分周されるがゆえに,精度も1/1000になってしまいます。

 8桁のカウンタであることを考えると,1/1000ですので10GHzまでカウント出来るとその性能を生かせるわけですが,2.4GHzではちょっと寂しいですね。

 ということで,近頃の半導体でさくっと10GHzのプリスケーラが作れないかと調べてみたところ,秋月にありましたよ,8GHzのGaAsプリスケーラが。

 HMC434というのが,そのICです。1/8専用のGaAsプリスケーラで,8GHzまで動作します。面実装品とはいえ,そんなに小さいわけではないので,十分アマチュアの工作に使えます。価格は600円というこの手のICとしては安いです。

 しかし,このICには問題もあり,低い周波数が苦手です。一応動作可能な周波数の下限は200MHzとなっていますし,動作範囲としては1GHzから8GHzで使ってね,とあります。

 1/10のプリスケーラを使えば,70MHzあたりまでは測定出来る実力があるので,そこから1GHzまでの間は測定出来ない範囲となってしまうわけで,これは高周波専用のカウンタでもない限り,ちょっと厳しいですね。

 MB506の場合,10MHzから2.4GHzまで,一応動作するわけですから,結局どの範囲の周波数を測定したいのかによってくるような気がします。

 まあしかし,200MHzが下限と言いながらも,実際には10MHzあたりから動いてくれたりするかもなあと,淡い期待を抱きつつ,HMC434を買ってみました。

 計画としては,8GHzが入ってきた時のHMC434の出力は,分周後でも1GHzです。当然直接カウント出来ないので,これをMB506に突っ込みます。そして,HMC434とMB506の組み合わせで1/1024になるように,MB506の設定を変更し,1/256にします。

 2.4GHzプリスケーラ基板を改造し,HMC434を取り付けます。このICは3.3Vで動作するので,3.3VのLDOも取り付けます。

 さて,結果ですが,うちには136MHz以上を発生させることの出来る信号源がないことに気が付きました・・・

 いろいろ調べてみると,一応136MHzでは動作しているようです。これ以下の周波数でどこまでカウント出来るか見てみると,85MHzくらいからなら,なんとかカウント出来ているようです。

 しかし,感度という点で言えばもうボロボロで,低すぎるとカウント出来ず,高すぎると高調波をカウントしてしまいます。だから,ある範囲の入力電圧のみ正しい値を返してくるのです。これでは測定器にはなりません。

 きっと500MHzや1GHzなら問題のない動作をするのでしょうが,今度は実装面での問題があり,例えば4GHzとか5GHzでちゃんと動作するのかどうかはあやしいです。

 電源のノイズが大きいのでコンデンサで押さえ込んだりして,かなり特性を改善したのですが,それでも低い周波数では使いものにならず,かといって高い周波数はそもそも信号源もないという状況においては,私にはデメリットしかないと判断し,もとの2.4GHzのプリスケーラに戻しました。


(2)1/10プリスケーラ動作時の小数点移動

 1/10のプリスケーラを搭載し,10MHz以上の周波数の測定を行えるようにしたのはいいのですが,小数点の移動を行う機能までは搭載しなかったので,頭の中で移動させて読む必要がありました。

 別にそれでも不自由はなかったのですが,やっぱりすっきりしないので,小数点を1つ隣に動かす仕組みを考えてみました。

 ICM7216Bは7セグメントLEDをダイナミックドライブする機能を持っています。だから小数点の点灯した桁を検出し,隣を点灯させるようにスイッチすればよいだけだと簡単に考えたのです。

 実際に74HC157をつかって試したところ,どうもうまく動きません。ここで恥ずかしいミスをしていたのですが,冷静に考えると,この方法では小数点の点灯している桁をそのまま隣に動かすだけですので,小数点以外のすべてのセグメントも一緒に隣にいってしまうのですね。あーばかばかしい。

 ダイナミックドライブ用に,LED基板上ですべて繋がっている小数点をバラバラにして個別に制御をかけるような回路にしないといけないのですが,これがまたなかな面倒です。

 いや,回路は簡単でした。74HC157を使って同じような回路を組みますが,74HC157のイネーブルを小数点のドライブ端子で動かしてやり,隣の桁のドライブ信号を入力してある74HC157の出力でそれぞれの桁の小数点を点灯させるだけです。

 ただ,LED基板を改造するのが急激に面倒になり,もう頭の中でシフトするからいいや,とあきらめてしまいました。

 
 ということで,特にどちらも必要性はなく,ただの思いつきで始めた改造だったので,失敗に終わっても簡単にあきらめてしまいました。測定周波数は上限よりもシームレスであることが重要ですし,小数点の移動などは,どうせ私しか使わないんだから別に必要ではありません。

 むしろあちこちいじりたいだけじゃないか,と言われればその通りで,ほかに面白そうなネタがあれば取りかかるかもしれないのですが,今のところこのカウンタで最大の問題は,低周波数の測定に時間がかかること,つまりレシプロカル方式ではないことが最大の問題ですので,もしかしたらちゃんとした周波数カウンタを買い直して終わり,ということになったりするかも知れません。

雨の秋葉原

  • 2014/08/18 15:58

 さる8月14日,友人が「一緒にアキバにいかないか」と声をかけてくれました。最近子供が大きくなったので夏休みも遊んでくれない,退屈しているので,一緒に行かないか,と言うことですが,aitendo大好きな彼は,どうもaitendoの現店舗の閉店セールがお目当てのようです。

 私はといえば,aitendoは安いんだけどもクオリティが低すぎ,たくさんの品があるんだけども本当に必要なものはない,というちょっとずれた感じが拭えなくて,なにより仕様書とか回路図とか,そういうデータ類を「WEBから落とせ」で済ませているあたりに,これらをおろそかにしている気がして,あまり好きにはなれません。

 秋月がなにが素晴らしいって,安いことも品揃えがすごいことも,個性的な商品があることもそうなのですが,それ以上に仕様書やデータシートがちゃんとついてくることがなによりよいことだと思うのです。

 昔はこうしたデータシートを入手することは,素人には絶望的な状況でしたから,秋月で買えば入手困難な商品とデータシートの2つが同時に手に入ると,大喜びでした。思えば,どんな部品屋さんでもデータシートを付けて売っているケースは希だったはずです。

 今はWEBから誰でもダウンロード出来る時代ですが,ずっと先々までダウンロードできるとは限りませんし,データシートがいつの間にか改版されていたりしたら,手元の部品と記述が食い違う場合も出てきます。しかしそれを確かめる方法はありません。

 キットやモジュールだとそもそもWEBに落ちていないので,やっぱり紙で付けていて欲しいと思うのですが,aitendoはダウンロードです。

 確かに安くもなるし手間も減るので売る側としてはありがたいことでしょうが,子供も対象にしたaitendoの「電子工作を愉しんでください」という主旨から考えると,楽しむよりも苦しむことの方が多いんじゃないかと思います。

 いやなに,ただダウンロードするだけなら別に構わないんですよ。ただ,そのダウンロード出来る資料というのが,ちょっと簡単すぎるし,不親切なんですね。秋月とはその辺が大違いだなと思います。

 つまりですね,データシートを軽く見る人は,あまりわかっていない人だということなんです。

 データシートは,全くの初心者は理解が出来ずに,あまりありがたがりません。上級者になればなるほど,詳しい情報が欲しくなるのですが,それはその詳しい情報で使いこなしを考えるものだからです。言い換えるとあまり情報を提供しない部品屋さんというのは,上級者を相手にしていないということになります。

 その割には,部品不良があったり回路の間違いがあったりするので,初心者や中級者にも難しいのがaitendoです。申し訳ないけど,中国ビジネスに慣れた人が,その人脈を生かして面白そうなものを買い付けて日本で売るという感じがしていて,電子工作や電子回路にそんなに詳しい訳ではないというのが,私のイメージです。

 とはいうものの,aitendoが人気を得ていることは事実です。確かに掘り出し物もあるので,私も一緒に行ってみることにしました。

 当日は東京も時折激しく雨が降るような悪天候です。暑いよりもましと思っていましたが,なんのことはない,蒸し暑く,すぐに汗だくになってしまいます。

 aitendoでは,半端物の処分で,1つ10円の半固定抵抗をまとめ買いしました。密閉型のサーメットなので,これは安いです。レジで「1つ30円」といわれて,じゃやめとくと言ったのですが,確かめに行ってくれて1つ10円で買うことができました。

 CMOSのロジックICも,6個スポンジに刺されたものが3セットほど,30円の箱に入っていたのですが,6個ではなく1個30円とのこと。この手のロジックICが1個30円なら,別に普通に買える値段です。買わずに帰ってきました。

 7セグLEDを少し,時計キットを1つ買いました。7セグLEDは表示色が揃っていないとか,アノードコモンがないとか,小数点がついていないとか,微妙な品揃えで使い道が限定されそうですが,まあ安いからいいでしょう。

 時計キットはひどいですね。7セグLEDの輝度ムラがあって,これでは使い物にならないでしょう。校正モード付きとありましたが,これって結局時刻合わせが出来るだけというこのとようですし。なんだかがっかり残念なキットです。

 100MHzのオシロのプローブが2本で950円でした。これは確かに安いし,家に帰ってから試して見ましたが,一応ちゃんと使えるようです。お,これはお買い得かもと思ったのですが,プローブの先端のクリップを外して出てきた,針の先端が尖っていないのをみて,これじゃたぶん正しい測定は期待出来ないなあと思いました。まあ,プローブは消耗品ですから,割り切って使うことにしましょう。

 あとは定番のポリイミドのテープ。カプトンテープと言われていますが,この手の絶縁テープでまともなものは高価なので,aitendoで唯一といっていい,お買い得商品じゃないでしょうか。

 そうそう,299円のMP3プレイヤー基板も買いました。これなんかは,かつてのデジットを彷彿とさせ,由緒正しきジャンク屋という感じでうれしくなります。壊れているかもしれませんが,まあそれはそれとして,購入しました。

 で,あろうことか,4500円も買い物をしました。私もaitendo,大好きなんですね。

 ところで,この日は買い物を予定していた秋月電子が夏休みという事で,大幅に時間が余ってしまいました。友人と17時に飲み始めて,20時に解散したという事だけ,書いておこうと思います。

2SC1815のパチモン

  • 2014/08/11 15:41

 実は,先日買いだめしてあった2SC1815を眺めてみると,どうもマーキングが雑なんですね。

 レーザーマーキングになった東芝製と比べて見ると,書体の違い,レーザーの掘りの深さ,そして刻印の精密さが悪いなど,見た目に随分違うのです。

 その上パッケージの形も大きさもちょっと違うし,バリも大きく出ています。加工精度の悪さが一目瞭然で,ピンも東芝製とはちょっと違う感じしたので,もしかして他社互換品かも,と疑惑を持ったのです。

 おかしいなあ,互換品を選んだつもりはなかったんだけどなあと思いつつ,まあ無指定で安い2SC1815を買ったら互換品だったんだろうと,やり過ごしていました。

 ですが,艦長日誌のメンテをした際に,2SC1815で検索をかけると,この買いだめをいつ行ったのかがさっとわかりました。そこからメールを調べると,2011年の5月に,イーエレというところから200個600円で購入したことが判明しました。

 問題はここから先で,艦長日誌には「東芝製を選べるんですねえ」と,東芝製を指定できる事実がちらっと書かれています。購入時の明細を調べると,私はちゃんと東芝製と指定してありました。

 イーエレのサイトに行くと,すでに売り切れていますが,商品写真は間違いなく東芝製です。ここではっきりしているのは,少なくとも写真と違うものが私には送られていたという事実です。

 さて,ここで,写真とは違うが東芝製であるというイーエレと信じるか,ウソをつかれた,騙されたと思うかです。私は後者と思っています。思っていますが,もう時間もかなり経過したし,使えないわけではないから,もうあきらめることにしました。

 それにまあ,1つ3円で東芝純正が売られているわけがないかと,まあその,騙された私が悪かったと,そういうことでしょうね。

 ちなみに,イーエレには互換品も同時期に売られていましたが,どこで作られたかわかりませんと,誠にいい加減な書き方です。しかも商品写真はわざとか偶然か,ぼやけた写真で詳細が見えません。値段も東芝製よりさらに安いのですが,これが東芝製を指定してその価格で購入した客に送られているのだとしたら,これは悪質だなあと思います。

 一応2SC1815の互換品ということで売られているので,一般用の小信号トランジスタとして使うことは問題ないでしょう。しかし,2SC1815は一般用としてはもったいないくらいの超高性能トランジスタであり,それがこの値段で買えると言うことに大きな価値があるのです。

 東芝のデータブックを見ていると「PCT方式」という記述がやたら多いことに気が付くと思います。このPCTと言う方法は,東芝がシリコントランジスタで編み出した製造方法で,結晶の構造をうまくコントロールし,雑音を減らしトランジスタの高性能化を低コストで実現するものらしいです。

 我々はもうレガシーなトランジスタを,どこも同じようなものと考えてしまいがちですが,その昔トランジスタが主力商品であった頃には,多くの技術者や学者がその高性能化と低コスト化に取り組んで,特に生産技術面において各社競い合って,全体の性能向上が図られた事実があります。

 一部のオーディオマニアがトランジスタのメーカーや品番の違いによる,音質の違いを云々しますが,あれはあながち間違ってるとは言えず,同等品として知られていてもメーカーによって違いがあるのは当たり前だし,同じ品番でも製造時期によって違うのは,良し悪しは別にして当然の事と思っています。

 東芝はPCT方式によって,それまでなら高級オーディオ用として使われるほどの高性能な小信号トランジスタを,一般用として販売することが出来る程のコストと大量生産に成功したわけですね。大は小を兼ねます。2SC1815でカバー出来る領域が大きく拡大したことで,次第にトランジスタの淘汰が進んだというわけです。

 東芝は2SC1815を一般用として売りました。一般用ですから,一般用に使えるかどうかを判断するスペックが重要であり,耐圧やhFEなどが同じなら,2SC1815互換と自称しても,問題は起きません。しかし,オーディオ用として音質やノイズなどを見た場合,あるいは素子間のバラツキなどを見た場合に,そこが2SC1815と同じであるかどうか,我々は知る術がありません。

 もっというと,東芝独自であるPCT方式を他社が使っているかどうかわからず,PCT方式に相当する別方式があるとしてもそれで同じ特性を得られるかどうかもわかりません。大事な事は,2SC1815を名乗っていいのは,東芝製の2SC1815か,東芝製と同じ作り方をしている2SC1815だけということです。

 互換という言葉は,何を持って互換とすべきかが明確になっていないと行けません。違いがあるから互換なのであり,違いがないなら同一なのです。

 互換品がいけないと入っているのではありません。LEDのドライブ,リレーのドライブ,ラジオやロジックレベルの変換などに使うなら,互換品は全く問題なく2SC1815として動いてくれるでしょう。

 でもこれは,2SC1815を一般用としてつかうからであり,別に2SC1815でなくても構いません。私は,かつての高級なローノイズ品と同じ性能を実現した2SC1815を使いこなした回路に,互換品を投入する勇気はありません。

 そんなわけで,本当に市場から消えてしまう前に,東芝製の2SC1815を買う必要に迫られました。200個近くある疑惑の2SC1815の処遇は気の毒ですが,ここは使い分けでいこうと言う判断で,早速秋月で2SC1815-Yを100個と,2SC1815(L)-Yを50個調達しました。(ついでに2SC2458も100個買いました)

 やっぱ,東芝純正品はパッケージのモールドも綺麗ですし,ピンもしっかりしています。マーキングも深く綺麗で,フォントも東芝伝統のフォント(数字の5に特徴があります)です。イーエレで買ったものは,パチモン確定です。

aitendoの6石ラジオは超上級者向け

  • 2014/08/08 14:05
  • カテゴリー:make:

 aitendoで買い物をした際に,懐かしさのあまり6石スーパーラジオのキットを一緒に買いました。

 いや,懐かしさのあまり,というのは2つの点で誤りですね。1つは,私は6石スーパーを作った事がないし,子供の頃からあまり興味もなかったので,過去に作ったという懐かしさはありませんでした。

 もう1つは,20年前からずっと同じようなキットが今でも普通に買えるので,仮に懐かしいと思ったとしても,それがこのキットを買う理由にはなりません。

 細かい事はさておき,私は電子工作を趣味にしながら,ラジオをまともに作った事がないことが1つのコンプレックスにしていて,特に調整が必要なスーパーラジオを完成させたことがないことを,負い目に感じています。

 しかも,小学6年製の時に,3石スーパーを本を見て作ろうと部品を集めたのですが結局完成できず,部品も散逸してしまったことがあるだけに,失敗という汚名も背負っているのです。

 そんなわけで,この失敗という経験を思い出し,今こそリベンジだ,今なら調整も含めて完璧に仕上げられる,と息巻いて購入したと言うわけです。

 しばらく放置し,ようやく先日から作り始めましたが,これがなかなかくせ者で,とても大変なキットである事がわかりました。初心者お断り,中級者も妥協が必要,まさに定数の見直しだけではなく回路形式の変更も厭わないような。上級者向けのキットだと思います。


・回路図がない,配線図がない

 まずなんといってもこれ,回路図も配線図も,組み立て方を書いた説明書も入っていません。aitendoはコスト削減のためWEBからダウンロードせよ,といっていますが,やっぱりキットですし,子供も買うでしょうから,せめてこの手のキットくらいには,説明書を入れて上げられないものかなあと思います。

 ちなみに,私のキットにも,ケースに張り付ける周波数表示のシールが入っていませんでしたが,なんでもこれは注文時にお願いしないと,ついてこないんだそうです。なんか,そういう役所のような対応って,子供には厳しいと思いますよ。

 幸いにして,先人達の記録が広大なインターネットの海に漂っていて,google先生に聞けば探し出してくれます。私も回路図などの情報をネットから入手しました。


・ケースの仕上がりが悪すぎる

 これはもう中国のクオリティなので仕方がありません。気の毒だと思うのは,このクオリティしか知らずにいる,中国国内の人々だと思います。良いものを安く作ってみんなを幸せにするという大きな夢は,特にこれから頑張ることになる国や地域の人々には,ぜひ持っておいて欲しいものだと,私は思います。

 まあ,多少の事は辛抱する私ですが,これはひどいですね。自分でケースを探してきて加工した方がいいんじゃないかと思ったくらいです。


・回路と部品の仕様が不明

 回路図も説明書もないので当たり前の話ですが,部品の素性がわかりません。トランジスタも中国仕様,バーアンテナもバリコンもIFTも,トランスも全くどんなものかわかりません。

 基板のシルクを見ていれば組み立てられるように思いがちですが,なんとまあ低周波用のトランスは3ピンずつ合計6ピン出ているもので,どちらの向きにも取付が可能です。

 向きを間違えれば全く音が出ませんので,ここは初心者には厳しいでしょう。よくよく見ると,2次側に印付けておいてくれてあるので,これに気が付けばいいのですが,わかりにくいので向きを間違えて取り付けてから気が付く可能性は高いでしょう。

 もう1つ気が付いたのですが,普通IFTは,1段目から順番に黄色,黒,白の順番になっています。IFTの帯域は1段目が一番狭いので,調整は1段目から順に行うのが普通です。

 しかし,このラジオは,1段目が白,2段目が黒です。(中間周波増幅が1段しかないので,IFTは2つしかない)

 だから,調整も白が先,次に黒となりますが,なんで順番が違うのかなあと,不思議でなりません。

 私の場合,さすがにトランスの向きと,バーアンテナの線だけはテスターで導通だけ調べましたが,あとは行き当たりばったりで組み立てました。


・6石スーパーの標準回路ではない

 それでも,よく見かける6石スーパーの回路ならなんとか完成させることが出来るかもしれません。しかし,この6石スーパーは,6石とは言いながらも標準的な回路構成とは違っています。

 よくある6石スーパーは,局発に1石,ミキサに1石,中間周波増幅は2段で2石,検波はダイオードで行い,低周波電力増幅は2石でプッシュプルです。

 しかし,この6石スーパーは,局発に1石,ミキサに1石まではいいとして,中間周波増幅は1段で1石,検波と低周波増幅に1石,低周波s電力増幅に2石という構成です。

 なんで中間周波増幅が2段じゃないのか,なんで検波をトランジスタでやるのかなど,回路を設計した人に聞いてみたい(逆に言うと回路図からはそれらの必然性がちっとも読み取れない)です。

 特にぎょっとするのは,電力増幅段です。一見するとプッシュプルなのですが,トランジスタラジオによく見られた出力トランスを使ったプッシュプルではなく,トランスのないいわゆるSEPPです。

 それはそれで結構なのですが,NPNとPNPで作る純コンプリメンタリではなく,NPNだけで構成された回路です。これだと,片側はエミッタフォロワなのに,もう片側はエミッタ接地で動くので,どうしたってアンバランスが出ます。

 これを打ち消して補正するためにいろいろ回路的な工夫をして出来上がったのが,準コンプリメンタリという方法ですが,今は誰も使いません。

 そうかといって,このラジオが準コンプリメンタリかといえばそうではなく,入力にドライバトランスを設けてあって,位相反転をこれでやってるんですね。しかも,電力増幅にもかかわらず固定バイアスで熱暴走もどんとこい,という配慮のなさです。

 私の場合,おかしな改造はせず,一応設計者の意図を尊重して,出来るだけオリジナルで組み立てましたが,トランジスタはすべて入れ替えました。

 手持ちの関係で,電力増幅段の2つは2SC2120,残りはすべて2SC1815のYランクです。別にすべて2SC1815でも良かったのですが,2SC2120も売るほど持っているので,電気的に余裕のあるものを入れておこうと思いました。

 また,2SC1815についても,ランクを使い分けたり,hFEを実測したりしている方がいらっしゃるようですが,私はそんな面倒な事はせず,同一ロットでhFEが250前後のものを4つ使いました。


・感度がとれない

 これは他の方の検討結果なのですが,特に中間周波増幅段のトランジスタのhFEが低く,感度に影響が出るんじゃないかということでした。実測で100を切るようなトランジスタがわざわざ使われているようですが,ここに250くらいのトランジスタを選ぶと,かなり感度が上がるそうです。

 そういう話を事前に聞いていたので,前述のように2SC1815に入れ替えたのですが,あまりゲインが上がりすぎると,今度は発振するんじゃないかと思っていまして,そこは注意が必要な点かもしれません。

 
・部品の不良を疑わねばならない

 私の場合は幸いにして起こりませんでしたが,部品の不良が結構あるそうで,取り付け前にテスターで一応良品かどうかを確認しておくべきというのが,他の方からのアドバイスでした。

 これってね,初心者にはものすごく厳しいのですよ。部品の良否判定を,その部品を使う前に行うというのはとても高度な技術と知識が必要です。


・無駄な回路がある

 最たる例は,電源ONで光るLEDでしょう。ラジオですよ,音が出ていれば電源ONってわかるじゃないですか。もちろん音量を絞ればわからないかもしれないし,そのまま放置すると電池が切れてしまうかも知れません。

 しかし,それでも,電源が入っているかどうかを示すランプに,10mAも電流を食わせているんですね。そもそもこのラジオが動作する全体の電流が20mAほどなのに,何を考えているんだと思います。

 例えばですね,チューニングインジケータとかなら,まあ許せますよ。単なる電源ランプでも,1mAくらいならそれでも許せなくはありません。ですが10mAは無茶苦茶です。

 私?LEDを取り付けることをしないことにしました。無駄ですもん。


・このままでは熱暴走

 これは結構深刻です。組み立ててから気が付いたことで,他の方もあまり指摘されていないようなのですが,致命的な欠陥です。

 電力増幅段のバイアスは固定バイアスで,3Vの電池電圧を4本の抵抗で分圧して,約0.8Vを与えています。ですが,電源電圧の変動がもろにバイアス電圧と連動するので,トランジスタのベース電流が大きく変化してしまいます。

 ということは,動作点も大きく変わりますから,電池が減ると急激に歪みが出たり,電池が新品だと消費電力が増大します。

 私の場合,安定化電源器で音を出していたのですが,3.0Vなら20mA程度だった消費電流が,3.3Vにすると100mAを越え,3.5Vにすると200mAを越えます。この時電力増幅段のトランジスタはチリチリに発熱していて,やけどをするくらいです。

 電圧が上がるとバイアスが上がり,ベース電流が増えます。そうするとコレクタ電流が増え,温度が上がります。ところがトランジスタのVBEは正の温度係数を持っているので,温度が上がるとVBEも上昇し,ますますベース電流が増えます。そうするとコレクタ電流も増えて温度が上がって・・・を,トランジスタは壊れるまで繰り返します。これが熱暴走です。

 温度上昇がそれほど出ないような小さい電流の回路なら,バイアスの安定化だけで温度補償まではあまり気にしなくてもいいのですが,特に発熱のある電力増幅器で温度補償をしないのは自殺行為です。

 この回路は,温度補償はおろか,固定バイアスですのでバイアスの安定化さえ行われていません。恐ろしい・・・

 本格的な温度補償をするのは面倒だし,そこまでしなくてもいいだろうと,とりあえずバイアスの安定化だけ行います。とても簡単で,それぞれのトランジスタのエミッタに直列に,22Ωの抵抗を入れます。これだけです。

 ベース電流が増えてコレクタ電流が増えると,エミッタの抵抗に流れる電流も増えるので,この抵抗に発生する電圧も大きくなります。

 するとトランジスタのVBEは下がるので,ベース電流も下がります。同時にコレクタ電流も下がります。こうして一定の状態を維持しようとするのです。

 ただし,抵抗を入れてしまうので,出力は小さくなります。かといって抵抗を小さくしすぎると一定の状態を維持しようとする力が弱まるので,ぽろっと安定状態から外れて暴走しがちです。

 ということで,とりあえず22Ωで電源電圧を振って試したところ,うまく制御出来ているような感じです。5V以上に振っても,電流が急激に増加するようなことはなくなりました。

 この時のVBEを測定してみると,0.62V弱です。ちょっと低めですね。

 確かに,このままの回路では電圧が低めで,ベース電流も小さめですから,分圧抵抗の値を調整して,少し高めにします。ここでは4本の分圧抵抗をすべて150Ωにしました。結果としてVBEは0.63V程度に少しだけ上昇しましたが,なかなか安定せず,ジワジワと上昇するので,不安があるのは確かです。

 きっとどこかで安定するはずなのですが,時間もなく安定するまで待てませんでした。肝心の音質ですが,あまり改善していません。もうちょっとベース電流を流してもいいかも知れませんが,もう面倒だからこれでいいです。

 ところでちょっと気になるのは,この分圧抵抗には,7mA近い電流が流れ込んでいるんですね。ラジオ全体の消費電流が20mA弱である事を考えると,3割4割がここで消費されているのです。もったいないと思いませんか?

 もっとも,電力増幅段のドライブにはそれなりのベース電流が必要で,抵抗でバイアスを作るならベース電流の10倍くらいはブリーダー電流として流さないと不安定です。だから仕方がないといえば,その通りなのですが・・・

 で,ここを改善しようとすると,電力増幅段をICに置き換えるとか,そういう大きな改造が必要になるので,今回はもうあきらめてこの回路のままにします。

 ところで,この22Ωにパラレルにコンデンサを付けると,インピーダンスが下がります。交流的には抵抗がないのと同じように見えるからなのですが,今回は気休めという事で,一応10uFを入れておくことにしました。ただし,あまり効果がないように思うので,コンデンサはなくてもいいかも知れません。


・調整について

 スーパーラジオですから,最終的に完成させるには調整が不可欠です。しかし,世の中なかなか良く出来ているもので,IFTもバリコンのトリマも,出荷時の状態でとりあえず音が出るように鳴っていることが多いです。

 調整無しでもそれなりに動作するようになっているので,調整をすることが出来ない人は,変にいじらない方がよいと思います。ただし,受信出来る周波数の範囲がずれていて,端っこの局が入らない可能性は高いですが,これは割り切ってください。

 それで,調整するための機材や知識がある人は,やっぱりトライしたくなるものだと思いますが,私はちょっと戸惑いました。

 聞いた話ですが,どうもかの国の中間周波数は455kHzではなく,450kHzなんだそうです。完成品はもちろんですが,IFTも局発コイルも,だいたい450kHz付近に調整済みで出荷されているような感じです。

 ですから,これを日本の標準である455kHzで調整しようとすると,大きく調整点が変わってくることになり,もしかすると部品の持つ調整範囲を越えてしまうかも知れません。

 ということで,まずは調整の手順です。どうも発振気味なので,ちゃんと調整出来なかったことを先に書いておきます。

(1)バリコンの局発側の端子をピンセットでショートし,局発を止める。
(2)SGを455kHzに設定し,アンテナコイルの端子のどれかに適当に信号を注入する。
(3)IFTの白と黒を交互に回して,発振音がなんとなく出るようにしてから,IFTの白を回して音が最大になるようにする。
(4)IFTの黒を回して,発振音が最大になるようにする。これでIFTの調整は終わり。
(5)次に局発の調整。ショートしたピンセットを外し,SGを531klHzにセット,インダクタを繋いでアンテナコイルに結合して,ラジオの受信周波数を最低にしてから,赤いコアの局発コイルを回して,発振音が大きくなるようにする。
(6)次にSGを1602kHzにし,ラジオの受信周波数を上限にして,バリコンの局発側のトリマーを回して,音量が最大になるようにする。これを交互に何度か繰り返す。
(7)SGを531kHzにして,ラジオのダイアルを下限にしてから,バーアンテナのコアを抜き差しして,発振音が最大になるようにする。
(8)SGを1602kHzにして,ラジオの受信周波数を上限にしてから,バリコンのアンテナ側のトリマーを回して,発振音が最大になるようにする。これを交互に何度か繰り返す。
(9)バーアンテナが動かないように,接着剤なりロウで固めて終了。


 実は,なかなか最大点って見つからないし,調整というのは結構難しいものです。ですが,入ってみれば調整範囲が広いと言うことでもありますから,性能は出にくくても厳密に調整を追い込む必要もないということで,そこそこのところでやめても,そんなに性能差は出ないんじゃないかと思います。

 私の場合,調整がいまいちなときには,受信種は数の下限に近いNHKのラジオ第一が受信出来ませんでした。性能云々ではなく,明らかに受信出来ないというのは問題で,放置できません。

 それと,私はうっかりアンテナコイルのリード線をギリギリの長さに切ってしまったので,コイルを動かして調整をすることがあまり出来なくなってしまいました。コアを動かす方法で逃げようとしましたが,ケースにぶつかってあまり大きく動かせません。これから作る人は,少し余裕を持って切った方がよいと思います。

 それにしても,以前修理と調整を行った松下のポケットラジオは,調整もとても楽だったんですね。調整点がわかりやすく,追い込むのも簡単でした。中間周波増幅が1段しかないからなのか,トランジスタを交換して不安定になっているのかわかりませんが,とにかく今ひとつな感じでした。


・結論として

 最終的に,音質はともかく,十分な音量と実用的な感度で,ラジオを完成できました。消費電力も小さく出来たし,安全性もそれなりに確認出来たので,実用機として使う事ができるでしょう。

 受信出来る局も,関東の主要局はすべて入っています。ラジオは,趣味で聞くのも楽しいですが,一番活躍するのは災害時でしょう。災害時には,故障や電池切れ,その時々で入手出来る電池の種類が限られることから,いくつか,何種類か持っておくとよいと思っているので,このラジオの一応も動作する状態にしておいて,いざというときに役立つことを期待しています。

 それにしても,2日ほどあれば完成できると思っていたのに,5日もかかってしまいました。なかなか手強いですね。

 これ,ほんとに皆さん完成できてるんですか?

またまたURLの変更のお知らせ

 またまたURLの変更です。

 再びno-ipのお世話になることにしました。今後は

http://gshoes.no-ip.biz

 でアクセスをお願い致します。

 先日,no-ipがマイクロソフトによって使用不能に陥った際に,代替DDNSを探したのですが,切り替えるつもりだったdhsが実は有料だったという話と,no-ipがとても迅速に事態の収拾に取り組んでくれて,現在は元のサービスを復活させてくれていることで,もう一度使わせて頂くことにした次第です。

 dyndnsが有料になってからと言うもの,なかなか落ち着かないのが実情なのですが,今は過渡期だから仕方がないなあと思います。独自でドメインを取る事も考えましたが,私はこのURLで一銭のお金も得ていませんし,今はgoogle先生のおかげで覚えやすいURLである必要もなかったりするんですね。

 実のところ,このサイトも以前は日誌が私の周囲の方々にも読まれる機会があると耳にしていて,そのためにも維持しないといけなかったのですが,今はそうでもなさそうで,日誌は自分の為という性格が強くなってきましたし,加えて日誌以外の自分の為に用意した他のサービスのために維持している側面もあります。

 ちょっと脱線しますが,日誌とか日記とか,そういうのは長く続けると良いものだなあとつくづく思います。過去にやっていたこと,興味を持ったこと,自分に怒った環境の変化などを思い出すきっかけになりますが,そういえばあの家電はいつ買ったかなとか,この回路を設計したのはいつだっけ,とか,この時はどういう改造をしたんだっけとか,そういう記録が残っていることは,結構便利なのです。

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