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2006年10月の記事は以下のとおりです。

社内失業ということ

 こういう事は,なかなか扱いが難しい問題なので,基本的にここでは書かないようにしていました。しかし,私にとって結構大きな事件でもあるので,例外的に記録に残そうと思いました。

 実は,先週一週間,会社をお休みしていました。

 といっても,別に旅行に行ったとか,身内に不幸があったとか,そういう健全な理由ではありません。

 社内浪人とでもいうのでしょうか,社内失業とでもいうのでしょうか,とにかく,ここ数ヶ月仕事がないのです。

 仕事がないということは,誰とも関わりがないということ。朝来て夕方帰るまで,誰とも一言も話をしない一日を過ごすことが珍しいことではなくなりました。

 仕事がなくとも給料はもらえていますし,別に上司からの叱責があるわけではないので,考え方を変えれば気楽なことこの上ないのですが,自分の周りの人間が忙しくしている中,自分だけがポツンと取り残されたような気分になるのは,やはりなかなか慣れるものではありません。

 また,本当に失業なさった方々にすれば,私のように「ただ仕事がない」というだけの人間を自虐的に「社内失業」などという言葉で表現することに,納得できない感情もおありかも知れませんが,結果に対しての期待もされず,今起きてる問題解決に必要ともされず,のみならずこれまでに出した成果も全くあてにされない,そこにいる理由をどんなにこじつけても見いだせない状況に置かれているという点において,また別の苦しみがあることを私は知りました。

 なぜこんなことになったのかなと思うのですが,何度か起きた組織変更や体制の変更に巻き込まれたというのが1つ,自分がある程度の権限をもらって進めていたプロジェクトが中止になり,今やそのプロジェクトについて知る人も少なくなったというのが1つ,そしてやっぱり大きいなと思うのが,私の能力や適正が,今の職場においては余剰であるということではないかと思います。

 私自身がもっと器用であれば,どんな仕事でもこなせて社内失業などしなくて済むのかも知れませんが,あいにく私の能力にそれほどのフレキシビリティはありません。また,もういい歳ですから,いちから新しいことを覚えて「即戦力」になれるわけでもありません。

 ついでにいうと,使命感の問題もあります。どんな仕事でもそうですが,なぜこの仕事をやるのか,やった結果誰を幸せにするのか,ということが必ずあります。使われる側の一般社員にとって,この2つは動機付けという点で必要不可欠な入力条件ですし,モチベーションの維持にも必要なものです。

 それを見失ってしまうことが起こると,なかなか大変であることも今回分かったことです。

 組織に忠誠を誓えない,上司に忠誠を誓えない,お客様に忠誠を誓えない,それでもやってる仕事が楽しければいいかと,これまで過ごしてきたところもありましたが,する仕事がないという状況に至って,その最後の砦さえも失うことになりました。

 そのせいかどうかわかりませんが,やはりここ1ヶ月ほど体調が優れず,極端な体のだるさと睡眠不足が続き,朝会社に出るのが辛くて仕方がありませんでした。

 以前のように大事な仕事があれば,多少しんどくとも辛抱して出社する価値があるのですが,重い体を引きずって出社しても何もすることがなく,自分に関係のないメールをさーっと斜め読みして,業界関係のニュースをWEBでちょろちょろとチェックする程度を無理に仕事と思いこんで取りかかっても,そんなもの1時間もすれば全部片付いてしまうのです。後は本当になにもありません。

 果たして,無理をして頑張って会社に行く必要性があるのだろうか,合理的に考えて,私が出社してもしなくても,世の中何も変化が起きないではないか,そんななのに,なぜ私は無理をおして会社に行かねばならないのか。

 それが仕事なんだよ,と言われてしまえばその通りで,返す言葉もありません。だけど,本当にそれが仕事でしょうか。

 明らかに余剰という言葉がついて回る昨今の状況に耐えられなくなり,とにもかくにも私は2週間のお休みを上司にお願いしました。2週間はさすがに長すぎるということで1週間になったのですが,この1週間の楽なことといったらありません。

 自分に無関係な理由で騒がしいわけでもなく,自分の周りにあるものすべてが自分に関係する自宅にいるとほっとします。私がいて不自然にならない場所,私がいる理由がはっきりしている場所のありがたいこと。

 いつものように予定を立てず,その日その日を空気のように生きてみるということを初めてやってみました。1日一冊の本を読もうと思いましたが,それが半分程度のペースになっても慌てません。

 確かにそこに生きてはいるが,誰にも何にも影響を与えない存在(厳密に言えばただ生きているだけで地球を汚すし,お金も使うのですが)というあり方は,今の私の最後の逃げ場所になっていました。

 ですから,週明けの今日から会社に行くのが嫌で嫌でたまりませんでした。

 そんな状況になってまで,なぜその職場にしがみつくのかと思われるでしょう。社内で異動するなり,思い切って転職してみてはどうか,と。

 以前の私なら,そういうこともやっていたかも知れません。しかし,歳を取るという事は人間を臆病にします。なにをやっても今より悪くなることはないと分かっていても,年齢と共に背負い込むものも大きく重くなりますし,それなりの事情もしがらみもでてきてしまいます。

 なにより,そこで自分を必要としてくれるかどうか,全くわかりません。気分で転職して,失敗した人を私もたくさん知っています。転職で成功する人は,転職しなくても成功する人です。

 社内の異動もしかりです。今の組織は非常に大きいのですが,そこで余剰となる私が,他の部署で必要とされるかどうか,全く疑問です。

 動く前に決めてかかるのは愚かだと思われるかも知れません。でも,こういう時の直感というのは,意外にあたるものなのです。きっとうまくいかないなと思っているうちは,何もうまくいかないものなのです。

 もっというと,今の私は,かつての私に比べて能力が下がってしまいました。頭が凝り固まっているという実感があります。実際に昔なら解決できたことが,今だと全然思いつかないということも経験しました。

 こういうのは現場で日頃から養っておくべきものなので,何の仕事もない私がダメになっていくのは至極当然のことで,それを食い止めることは,なかなか難しいものだと感じます。

 だから,例えば明日から急に私に仕事がやってきても,それを以前のようにきちんとこなせる自信はありません。といいますか,どうやったらいいのか,右往左往することと思います。

 私が大学を出るとき,結局お世話になることがなかったある会社の常務の方に,「会社というのは高速道路と同じで,合流してしまえば流れに乗ってそれなりに仕事が出来てしまうもので,いかに合流するか,に尽きる」と言われたことがあります。

 なるほど,軽自動車だろうがトラックだろうが,若葉マークの初心者だろうが30年のベテランだろうが,高速道路に乗ってしまえば,すーっと走っていけます。でも,合流はそうはいきません。私は若いときに,この方以外にも多くのいい大人に出会うことが出来ました。

 私の背後にはこの春入社した新人がいますが,彼もすっかり高速道路の速度になれ,立派に仕事をこなしています。大したものです。

 この例えが非常に面白いのは,一度高速道路を降りてしまって,一般道の速度になれてしまった後に再度合流することの難しさをもきちんと包含していたということです。

 今の私は,さしずめ一般道をだらだら走っているか,もしくはパーキングエリアで居眠りをしているか,というところでしょう。しかし時間は公平で,どんどん残り時間はなくなっていきます。

 高速道路の合流に,誰かの助けがあるはずがありません。うまかろうが下手だろうが,自分でやるしかないものです。今の私がこの状況から復活するには,自分自身が合流することを望まねばなりません。

 しかし,その時は,未だ来ずです。

F70Dに張り皮

ファイル 52-1.jpg

 私が持っている唯一のAF一眼レフカメラがF70Dです。

 持っている経緯は以前にも書きましたので省略しますが,ここ最近の中古価格の高値安定傾向を見ると,再評価の波が来ているなあとつくづく思います。

 操作系があまりにアレなので敬遠される方にはとことん敬遠されてしまうのですが,慣れてしまえばなんと言うことはありませんし,軽く小さく静かで壊れにくく,基本的性能は十二分に持っている,実用機としては最高のモデルだと思います。

 ただ,欠点が,裏蓋のゴム塗装がべとべとになるという持病を抱えていることで,こうした中古は数千円という不甲斐ない価格で売られていたりします。

 これをうちのF70Dも徐々にべとべとがひどくなり,根本的な解決をしようと目論んでおりました。

 それは,張り皮を貼る,ことです。

 張り皮はクラシックカメラとは切り離せないもので,デザインと使い勝手を兼ね備える装飾です。80年代から90年代前半にかけてただの滑り止めのゴムに取って代わられましたが,最近ではただのゴムにもシボが施され,少なくとも見た目には原点回帰の傾向があるように思います。

 F70Dも全面的にゴムが使われたわけですが,強引に張り皮を張り付けます。幸い,張り皮はカメラ用のものが何種類か売られています。

 とはいえ,右側のグリップ部は造形が複雑であることや,ゴムである方が機能的であること,それとF3が実はゴムであることを考慮してそのままとしました。左側については張り替えます。

ファイル 52-2.jpg

 裏蓋はどうしようか随分迷ったのですが,全面に張り付けるより,上下に少し余白を残して貼った方が見た目もいいだろうし,作業も楽だと考えました。

ファイル 52-3.jpg

 てわけで,もっとひどい仕上がりになるかと思って覚悟していたのですが,やってみると意外に綺麗に出来ました。持った感触もよくて,裏側は多少厚ぼったい感じはしますが,べとべとするよりはよっぽどよいでしょう。

 これで長く使い続けていけそうです。

ガチャガチャアダプタ2落成

 ニコマートEL復活記念に,懸案だった「ガチャガチャアダプタ」を作りなおすことにしました。

 「ガチャガチャアダプタ」とは,ニッコールレンズの象徴たるカニ爪を省略された悲運のレンズたちに取り付け,あの「ガチャガチャ」が出来るようにするオプションです。いわば翼を与えられなかった人類が,その代わりに獲得した航空機のようなものだといえるでしょう。まさに科学の勝利です。(大げさです)

 「ガチャガチャ」についていちいち説明など致しませんが,AI連動方式が登場するまでの間,ニコンのユーザー達が撮影に入る為に執り行っていた神聖なる儀式である,とだけ申しておきましょう。

 ニコンを抱えた人間は,それがプロであれアマチュアであれ,仕事であれ趣味であれ,とにかくマウントにレンズをセットした後,絞りリングを左にガチャガチャ,右にガチャガチャ回転させ,開放F値がボディに伝達された瞬間,カメラマンへと生まれ変わります。

 そこが戦場なら恐怖を全く感じなくなり,競技会場ならさながら野獣のそれと化した目が選手を一瞬たりとも見逃さず,そしてスタジオならはぜるような女の肉体を陵辱するに躊躇しない,いわば麻薬です。ニコンが残した写真には,このガチャガチャによる心理的影響が,少なからず含まれていると私は信じて疑いません。

 まあそんな話はどうでもいいのですが,今やその神聖なる「ガチャガチャ」は,オールドファンの趣味として,無形重要文化財のような扱いになっているのが現状で,それでもやっぱりニッコールにはあのカニ爪がないと,私は様にならないと思います。

 私がかつてペンタックスのユーザーだったころ,ニコンのレンズには不格好なカニ爪が例外なくついていて,一体これは何のためについているのか,さっぱり分からずにいました。ニコンのユーザーには,そういう「不思議なものを見る目」に晒されていることを,心地よく思う向きもあったのではないでしょうか。

 マニュアルフォーカスのレンズについては今でもカニ爪はついており,意外にごろごろと長玉が転がっていくのを防いでくれる便利な存在であることを,若い人にも知ってもらえるのはうれしい限りです。

 しかし,あろうことか最近のレンズにニコンはカニ爪をつけていません。それどころか,邪魔になるユーザーのために,わざわざ取り外すサービスを未だに続けている有様です。原理主義者から見ると,まことに許し難い愚行ではないでしょうか。(さらに恐ろしいことに絞りリングまで持たないレンズが登場するに至り,私はサイボーグ化された未来の人類の姿を見る思いがして,寒気がします。)

 ニコマートELもガチャガチャが必要なカメラです。F2はAI連動式のファインダーに交換できますが,ニコマートFTnやELはガチャガチャ以外に方法はありません。なのに,マニュアルフォーカスのレンズで,カニ爪がついていないレンズが手元にあります。

 AI-Nikkor45mm/F2.8Pです。

 1990年代後半にパンケーキレンズがちょっとしたブームになり,ニコンも柄にもなくそんなレンズをFM3Aとほぼ同時に登場させたのですが,テッサー型らしい収差を持ち,色も暖かく,私もとても好きなレンズです。一部に「ニッコールらしくない」という声があったほど豊かなその描写を,銀塩では使い慣れた標準レンズとして,デジタルでは70mm相当の中望遠レンズとして,堪能できます。生産がとっくに終わった現在でも,プレミア付きで新品が売られていますね。

 興味深いことに,このレンズはCPUを内蔵した珍しいマニュアルフォーカスのレンズで,最近のD80などでもきちんと露出計が連動しますし,ということはプログラムモードでも撮影が可能なのですが,パンケーキにこだわりすぎたのでしょうか,絞りリングが薄く,カニ爪が取り付けられません。

 AFレンズでさえカニ爪を取り付ける改造サービスを一時期行っていたニコンが,恐れ多くもニッコールを冠するマニュアルフォーカスのレンズにカニ爪をつけないという決心をしたのですから,それこそ断腸の思いであったろうと想像に難くないわけですが,おかげでニコマートELやニコマートFTnなどでは使えなくなってしまいました。これは困った。

 ないものは自分で作るのが私の信条。そこで作ったのが「ガチャガチャアダプタ」なのです。

ファイル 51-1.jpg

 これは初代ガチャガチャアダプタです。某巨大掲示板でもちょっとだけ話題に上ったのですが,大げさな工作をしたくなかったのと,カメラやレンズに傷を付けるのが嫌で,加工のしやすさと適当な弾力を持つ1.2mm厚のポリカーボネートで作りました。

 AI連動の爪に引っかけてセットし,カニ爪の位置に開けた穴に連動ピンを通してガチャガチャします。後日指摘されるのですが,この方法ではニコマート専用となってしまい,F2フォトミックでは使えません。

 ところがこれは先日の撮影で壊れてしまい,割れた部品もなくなってしまいました。よって二階級特進です。

 そして彼の死を無駄にすまいと今回作り直したのが,「ガチャガチャアダプタ2」なのです。

ファイル 51-2.jpg

 厚さ0.6mmのアルミの板を加工して作りました。仕組みは前回のものと同じですが,取り付けや使用の際に本体やレンズと擦れて傷を付けないように,細心の注意をしてあります。また仕上げは1500番のサンドペーパーで磨いて,アルミならではの美しさも引き立たせています。

 うむ,さすがは金属ですね。のびたり縮んだりすることもなく,正確に動作します。

 本体に取り付けたのがこの写真。

ファイル 51-3.jpg

 露出計の指示も問題はなく,これでまた45mmがニコマートで使えるようになりました。私はニコマートELにこの45mmというのはベストマッチと思っていまして,なんで最初からこういうものをニコンが用意してくれなかったのかなあと,疑問に思っています。

 あ,このアルミ製のガチャガチャアダプタ2を原型にして型を取り,プラリペアで量産したらどうだろう・・・全世界のニコマートユーザーが救われるのではないだろうか・・・


 

ニコマートELとELWの関係について

 先日,かねてから探してたニコマートELの不動品ジャンクを手に入れました。価格は3100円だったと思います。送料が結構かかったので約4000円というところでしょうか。

 このニコマート,ぱっとみの程度は今ひとつで,不動品であるのも無理はないと思わせるものでしたが,届いてから電池を入れてみるとちゃんと動きます。露出計も問題はありませんし,スローシャッターも切れていますので,一通りの動作はするのではないかと思います。

 そもそもこれを手に入れたのは,今私が持っているニコマートELを完全復活させるための部品が欲しかったからです。特にCdS。これはもうCdSの裸特性をそのまま利用している以上,互換品を探すのは無理と考えていました。

#その理由は以前にも書きましたが,露出計とシャッター速度制御がそれぞれ別の回路になっているせいで,一方にあわせ込んだらもう一方が調整範囲を超えてしまうという問題もありましたし,CdSのγだけではなく絶対値に依存した形で回路が構成されているため,調整でなんとかなるようなものではないわけです。

 欲しい部品はもう1つあって,それは露出計のメーターの指示板です。かつて修理を行うときに指示板を傷つけてしまい,非常に不格好になってしまったことから交換をしたいなと思っていました。

 もう1つ,手に入れたかった理由は,底面に存在するはずの基板が私のニコマートには存在しておらず,調整が不可能になっているのはその基板が何者かによって抜き取られているからではないか,という不安からです。

 とにかくもう1台手に入れてみて,それが基板なしならそういうものだと,基板ありならその配線を見てみて,自分のものと比較してみようと思ったのです。

 かくして,今回のニコマートの分解がはじまりました。

 わかったことは,どうもニコマートELにも,前期型と後期型があるようだということです。そして,私が現在所有しているものは後期型であり,今回届いたものは前期型であるということでした。

 何が違うかと言えば,前期型が資料や写真などでよく見かけるものであるのに対し,後期型はニコマートELWとの共通化が随所で図られているということです。

 ニコマートELWは,ニコマートELにワインダーの取り付けが可能になったモデルで,外観も構造もほとんど同じと言われていますが,巻き上げレバーで電源を入れたりする仕組みはワインダーとの両立が出来ずに変更されていますし,底板にモーターのカップリングや電気接点が追加されたことで,それなりの変更があったことは容易に想像できます。

 それで,まずこの写真。

ファイル 50-1.jpg

 これは巻き上げレバーとシャッターレリーズボタンの周辺の写真で,左が前期型,右が後期型です。

 丸で囲った部分の黒い突起ががレリーズボタンなのですが,後期型が丸であるのに対し,前期型は欠けており,半月のようになっています。

 それで,巻き上げレバーをたたむとレリーズロックがかかる仕組みも違っていて,前期型はこのレリーズボタンの切り欠きに金属のレバーが被さって,シャッターボタンが押せなくなります。この金属のレバーは向かって左側から右側に倒れてきます。

 一方後期型はレリーズボタンの左側にある金属のレバーが右側に飛び出してきます。レリーズボタンに切り欠きがないので被さることはありませんが,上カバーに取り付けられているシャッターボタンをロックするようになっています。

 特にロック用に金属のレバーの動きが逆向きになっているので,このあたりの機構は新しい設計になっているとみてよいでしょう。

 これは,ニコマートELの後期型はELWと共通化されているということの証ではないかと思います。

 次の写真。

ファイル 50-2.jpg

 これは底板を外した写真で,上が前期型,下が後期型です。

 前期型にはある基板が,後期型にはありません。前期型の基板につながる赤いケーブルは,後期型ではそのまま中に戻されています。よく見ると基板でも赤い配線は基板のパターンでつながっており,戻されている後期型の配線でも問題はありません。

 また,基板につながる緑のケーブルは,そもそもそれが後期型には出てきてきません。基板上ではトランジスタにつながっているのですが,これはきっと後期型では他の部分に移されたのでしょう。

 今度は巻き上げ機構を見てみます。写真の左側がそうなのですが,前期型が非常にプレーンな形状であるのに比べて,後期型はねじ穴など,明らかにワインダーのとカプラーを取り付けるための仕組みが用意されています。

 この点においても,やはりニコマートELの後期型はELWとの共通化が図られています。

 露出計のメーターには,製造か調整かを行った日付が刻印されているのですが,前期型には昭和50年の,後期型には昭和51年の刻印がありました。それぞれ1975年と1976年ですから,後期型はELWの発売と同じ時期であることがわかります。

 ということで,私のニコマートELは後期型であり,基板がないのは当然,製造時期は1976年以降ということがわかりました。

 このくらい古いものになると1年くらいの製造時期の差が程度の差につながることはありませんが,ELWになるにともなって設計変更が行われた際に,ELで懸案になっていたポイントを改良したという可能性は高く,その意味ではやはり完成度が高くなっていることは間違いないでしょう。

 そこで,どちらも完動品であることを考慮して,ひょっとしたら前期型をベースにすることも考えなくてはと思っていましたが,やはり後期型で修理することにしました。

 そんなわけで,修理レポートはまた後日。先に行っておきますが,実はもう修理が終わっています。試写が出来ていませんので,本当に直っているかは分かりませんが・・・

本日のディナー

 久々に胃を壊して,昨日は吐き気のためほとんど寝ていないことを友人に伝えたところ,ありがたいことに何か食べ物を持って行ってやると言ってくれました。

 買い物に出る元気もなかった私にとっては非常にありがたい申し出だったので,お言葉に甘えて「鍋焼きうどん」をお願いしました。

 ところが,アルミの鍋に入った鍋焼きうどんは売ってなかったらしく(というかそんなスーパーは駄目だろう),代わりに冷凍のうどんを買ってきてくれました。

 大げさな袋に入った,京風のうどんとのこと。そのまま鍋に入れて火にかけるとできあがりだそうで,水を入れたり,具を袋から出す手間もかかりません。

 そもそも,京風のうどんというのはどんなものか,関西人である私は恥ずかしながらさっぱりわからないのですが(大阪で京風のうどんというのは,探さないと食べられないんじゃないかと思います・・・),それはともかく,甘みがあってコクのある,でもあっさり味のうどんであることは間違いなさそうです。

 外側の袋を開封し,中をのぞき込んで,私はその美しさに絶句しました。

ファイル 49-1.jpg

 日本人の文化は,箱庭文化であると,何かの本で読んだ覚えがあります。日本人にとって箱庭というのは愛すべき存在。日本庭園は自然界を小さな面積に表現するものであり,その世界観と美意識は日本人の根底に横たわっているとかいないとか,まあそんなたぐいの話だったように思います。

 さてもこの冷凍のうどんの美しさたるや。まるで,うどんの箱庭です。

 とはいえ冷凍ですので,このまま愛でているわけにはいきません。いつもの鍋に入れたところ,まるで計ったように収まりました。

ファイル 49-2.jpg

 この5分後,うどんは大変においしく仕上がり,私の胃に,大いなる満足感を与えてくれたのでした。

 今度は自分で買ってこよう。

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