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2010年09月の記事は以下のとおりです。

感謝とお別れ

 今日で9月も終わりです。

 私の背中側に座ってらっしゃる方が,今日をもって定年退職されることになりました。

 詳しいことは伺っていませんが,サラリーマンですから,それはそれは山あり谷あり,いろいろおありだったことと思います。

 ともあれ,1つのことをやり遂げる,それも短時間の努力や我慢で成し遂げられるようなものではなく,日々積み重ねていくことでしか完遂できない物事には,ゴールにたどり着いたという事実が,直ちに賞賛されるものとなります。

 個人的事情ですが,ちょうどふさぎ込んで,誰とも話をしようと思えなかった時に,その方が近くの席においでになり,なにかと話しかけて下さったことで,少しずつ話をするようになり,それが私という人間を周囲に認知せしめたという,とてもありがたいきっかけを作って下さった方でした。恩人の一人と言ってよい方だと思います。

 60歳で仕事を辞めて,そこから一体なにをして過ごすのでしょうか。はたまた,生活の糧はどうするのでしょうか。確かに自分の人生設計ですから,定年後,年金をもらうまでの間をどう生きるか考えておくべきというのは分かりますが,そういう心配をしなくて済むならそれが一番いいわけで,もう少しどうにかならんもんかな,とそんな風に感じました。

 私としては,この方が思っている以上に感謝をしているのですが,普段から肩肘張らない話を気楽にさせて頂いただけに,改まってきちんとお礼を申し上げていません。もうそんな機会が何度もあるとは思えず,焦りに似たような気分をここ数日味わっていました。

 それにしてもリアリティがありません。明日の朝,また職場にいる姿を見つけてしまいそうな気がします。

 特に感傷的になるものでもなく,入れ替わり立ち替わり,世話をした若い人や,同僚の方々が次々にお別れの挨拶にやってこられます。おかげで片付けがさっぱり進まないご様子ですが,さすが人望のある方だなと思います。

 私は,定年を理由に親しくして頂いた方とお別れすることは実は初めてです。悲しいことでも残念な事でもなく,めでたいことなわけですし,今生の別れとなるわけではありませんから,通過点の1つとして,私も捉えたいと思います。

 とても長い時間を過ごされた大先輩に,心から感謝したいと思います。ありがとうございました。そして,ご苦労さまでした。

ストロベリーリナックスのL/Cメータを作る

  • 2010/09/29 13:27
  • カテゴリー:make:

ファイル 410-1.jpg

 先日,日本橋のシリコンハウス共立で購入した,ストロベリーリナックスのL/Cメーターキットを作ってみたわけですが,その感想をば。

 Ver2になってからも結構な時間が経っている定番キットですので,その感想なぞ誰ももう期待しないと思いますが,遠慮せず書いてみます。

・キット?
 書き込み済みのAVR,LCDもCR類も揃っていて,ガラエポの両面基板にハンダ付けするだけのキットですから,とても気楽ですし楽しく製作できます。スイッチも基板上にハンダ付けするので,ケースに入れなければ使えないというものではなく,私のようにものぐさでケースに入れるのを億劫がる人でも,さっと使える実用キットだと思います。

・回路図?
 キットとして致命的というか,もはや言語道断なのは,回路図がないことです。AVRのソフトを公開せよ,といってるのではないですよ。純粋に,キットで回路図がないのは話にならない,ということです。
 なにか公開できない秘密でもあるんでしょうか。Ver1では公開されていたそうですから,別にストロベリーリナックスが意地悪をしているような感じではなさそうです。
 しかし,回路図がないと壊れた時に修理も難しくなりますし,実はキットの組み立ての段階でも,間違わずに部品を取り付ける重要な情報になります。
 それに,キットというのは,改造して性能アップを行ったり,使いやすくするということが日常的に行われるものですが,回路図がないと,それも難しくなってしまいます。
 どこが性能に影響するのか,なにか精度を左右するのか,その部品はどういう働きをするのか,そういうことが回路図には出ています。初学者が勉強になるのはキットのそういう所が優れているからですし,電子工作を実体配線図だけでやり遂げたところで,あまり意味がないのではないかと思います。
 私は,この事実で,ストロベリーリナックスという会社に,ちょっと疑問を感じるようになりました。

・説明書?
 苦言を呈してばかりですが,なにせ説明書が読みにくく,よく読んでもいまひとつピンときません。ボタンは4つありますが,なぜ4つのボタンを用意したのか,4つのボタンにはどういう機能をアサインしたのかが体系的に書かれておらず,校正時にはこうしろ,コントラスト調整はこうしろ,ゼロ調整はこうしろと,機能を軸に説明をしてあるのですね。
 それでもいいのですが,結局使わないスイッチがあると,これってなんのスイッチだ,と言うことなるわけで,それを解決することも説明書の役割です。いかにも理系の人が書いたという感じがする説明書という印象で,悪意はないのですが,褒められたものではないでしょう。

・性能?
 誤差は1%と大々的にいってはいますが,誤差1%をキープできるのは,コンデンサでは10pFから0.01uFくらいまでです。もちろん,小さい方に浮遊容量由来の誤差があるのはわかりますが,フィルムコンデンサやセラミックコンデンサでも1uFを越えるものが普通に手に入る昨今,0.01uFくらいまでしかダメというのは,ちょっと厳しいです。
 さらに致命的(致命的な話ばかりですみません)なのは,0.01uFから0.1uFだと,誤差が3%くらいになると書かれているのです。
 いや,3%になるのは仕方がありません。しかし,問題は,1%をうたった測定器が,あるところで3%,それ以上の誤差を持つ事を書いてしまっていることです。では,1.2%はどこのあたりから,1.8%はどのあたりから,と,表示されている値をどこまで信じていいのか,わからなくなってしまうのです。
 これなら,1%を維持できる容量はどこからどこまで,3%ならどこからどこまで,と書くべきであり,この製品のように0.01uFから0.1uFで3%程度,では,あんまりだと思うのです。
 これを少し深読みして,0.01uFまでなら1%,0.1uFまでは3%と判断してもよいのですが,なら0.03uFならどうなのか,0.082uFならどうなのか,3%程度というのはどういうことなのか,使う人の想像力に任されてしまいます。測定器を名乗るなら,これはダメです。
 それと,0.47uFのコンデンサを測定してみたのですが,0.26uFと半分ほどの値を示しました。説明書には誤差が大きくて使えないとあるので文句は言えませんが,未知の値を測定するのに,倍近く異なる値を平気な顔をして表示するというのは,ちょっと不親切かなという感じもします。いや,これは使う人が気をつければよいということにしておきましょう。
 なお,インダクタはなかなか良さそうです。測定範囲は0.1uHから10mHですので,普通に使うものは十分測定可能ですし,コンデンサのようにテスタに測定機能があるわけではありませんので,この際コンデンサの容量計はオマケで,インダクタンスメーターとして割り切って使うべきだと思います。

・バグ?
 ゼロ調整ですが,どういうわけだか電源を切っても保存されるべきなのに,保存されずにもどってしまいます。
 一度,コンデンサを付けたままゼロ調整を誤って行って,大きくずれたオフセットが記録されてしまい,戻せなくなってリセットをかけたのですが,どうもゼロ調整は2回連続で行わないと,記録されないっぽいです。バグですかね。

・結論?
 とりあえず,容量計はあまり信用できません。小容量品の測定には威力を発揮しそうですが,私のように高周波に無縁な人には,あまり必要性がないといえるでしょう。1000pFとか,1%精度で追い込む人なんかにはありがたいかも知れませんが,そんな回路の設計なんて,正しい設計なんですかね。
 インダクタンスの測定はとても便利に使えそうです。スイッチング電源を自作することがホビーストにも求められる時代になりましたが,そこで活躍するのがインダクタンスメーターでしょう。ジャンク品の流用,実測値の測定,手巻きで作るなどなど,テスタで代用できないだけに,貴重な測定器だといえそうです。

・おすすめできる?
 難しいですね,インダクタンスを測定したい人は,4600円の価値があります。コンデンサの容量測定をメインにするなら,買わない方がいいでしょう。もう4600円追加して,よいテスタを買いましょう。
 1000pFくらいを1%で測定したい極端なマニアは,すでにこんなの持っていると思いますので,今から買おうかどうか考えている人は,ちょっと考えた方がよいように思います。
 決して使いやすいわけではないし,回路図もない,実用機器を作るだけのキットで,しかし案外実用度が低いとくれば,残念ですが積極的にはおすすめ出来ないなというのが,私の結論です。

 ということで,もう作らなくてもいいかなあと思っていた容量計ですが,やっぱり作ろうと思います。

新生シリコンハウス共立と本の山

 昨日の続きです。そう,新しくなったシリコンハウス共立を目指して,北側にガシガシ歩いて行きます。眼前に,それらしいお店が見えてきました。

 私が初めて日本橋に足を踏み入れた頃は,すでに日本橋の南側に大きなパソコン専門店であるJ&Pテクノランド(かつてのテクノランドは今の半分ほどの大きさで,2階へは階段で上がるような感じでした)が存在し,中程にあったお店はメデイアランドを名乗っていました。メディアランドは小さく地味で,日替わり特価品などは最後まで残っている,いわば穴場でした。これが後にスーパーキッズランドにとなり,私も何度か鉄道模型やプラモデルを買ったことがあります。

 一方,シリコンハウス共立は恵美須町駅のそば,今はマクドナルドが入っている場所の2階と3階にあり,狭くて急な階段を上がると,狭い店内に電子部品が所狭しと並べられていました。余談ですが当時のシリコンハウスの店長さんが,後にデジットの店長さんとして,アルバイトで入った高校生の私を随分かわいがってくれました。

 そしてこの7月,スーパーキッズランドがシリコンハウス共立に生まれ変わったわけですが,いくら日本橋が変化する街とは言え,この変化を誰が予想できたでしょうか。

 かつてのパソコンのメッカ,かつてのオモチャと模型のお店として,何度も出入りしたこの扉をくぐるときの感覚の不思議なこと。案外広くて閑散とした印象があるのは,電子部品という小さなものを売っているからでしょうか。

 1階を一回りし,かつてのシリコンハウスの1階と似たような感じであることを理解して,用事のある2階に行きます。うー,電子部品を買うのにエスカレータを使うなんて,ニノミヤが元気だったころ以来です。

 2階に行くと,確かに広いし清潔なのですが,時間が経つにつれて「あれ」という違和感が強くなります。かつてプラモデルを売っていたフロアに電子部品があることが違和感というのではなく,売り場も大きくなったのに,売っているものがほとんど変わっていない,はっきりいうと品物がちっとも代わり映えしないという感じなのです。

 かつてのシリコンハウスになかったものが揃っているとか,そういう印象は非常に薄く,なんだかんだで昔と同じか,と言う残念な気分が支配的になると,もうそういうモードで見てしまうようになります。これはもしかすると,失敗の序章なのか・・・

 確かに,ストロベリーリナックスをはじめとするキットも充実しています。カウンタの中にあったIC類が自分で探せるようになりました。人とぶつかることもなく,ゆったり買い物が出来るようになったことも大変便利です。

 しかし,店が広くなっただけに,かえって寂しく見えるところもあるのです。例えばケース。テイシンやタカチといったメーカーはありますが,リードやアイデアルのケースは少ないか,あるいは全然ありません。そもそも,選ぶほどの品物がないので,相変わらずケースはシリコンハウスでは調達できません。ここは旧ニノミヤのパーツランドやマルツ電波の圧勝ですね。つまみも全然少なく,昔のシリコンハウスの方がいいものが買えました。

 3階はオーディオのジャック類やコネクタ,中古測定器のフロアなのですが,なぜ中古測定器を含む測定器や開発環境専門のフロアにしないのかなあと思いました。それだけ,中古測定器が面白いのですね。

 個人的には,キットと測定器は3階に集めてもいいと思うし,2階は電子部品を集めて,エース級店員さんを集中配備すべきではないかと,思いました。

 まあ,でも平日の昼間にもかかわらず,作業服を着た人たちを含め,結構な繁盛ぶりでした。これが休日や夏休みになると,どんな混雑になるんだろうと想像すると,ちょっとうれしくなりました。

 考えて見ると,日本橋にはこのシリコンハウス共立にデジット,パーツランドといった地元資本の老舗に加えて,マルツ電波に千石電商と,今やアキバよりも面白い街になっているような気さえします。(秋月がないのが致命的ではありますが,その秋月もかつての面白さを失っていますし,デジットと似たところもあるので,通販で補えるレベルだと私は思います。)

 結局,シリコンハウスだけでは揃わなかった部品を探しにデジットに出向きます。デジットが近くなったのはありがたいですが,結局ここはさらに部品が少なくなっており,デジットでなければならない魅力が随分と薄れてしまった印象です。誇るべき店員さんのレベルも下がったなあと思わせることもあったりして,生まれて初めて,デジットを手ぶらで出ることになりました。残念至極です。

 ケースは結局,マルツで買いました。現品限り半額ということで,アイデアルのCL140というちょっと変わったケースを1000円ちょっとで買いました。これには,TA1100のアンプを組む込む予定です。つまみはパーツランドで調達。ニノミヤ時代の在庫を売り切ったら,この店は一体どうなるんでしょうか。

 あと,今回はフィルムコンデンサの入手が難しくなってきたと感じました。今年1月頃にはまだニッセイ電機の1%品が難なく買えたのですが,今回デジットに行って話を聞くとニッセイ電機は倒産したとのこと。調べて見ると今年5月に倒産したんですね,残念です。

 代わりということなのでしょうが,WIMAのコンデンサが入荷していました。でもデジットは種類も少なく,さすがにシリコンハウスの方が品揃えも豊富でした。在庫を切らしてしまうことは,私がデジットにいた頃は御法度だったんですがね。

 結局デジットからまたシリコンハウスに戻り,ここでコンデンサをいくつか買いました。そして,ちょっと気になっていたストロベリーリナックスのL/Cメーターキットを買って帰りました。

 これ,店頭には在庫がなかったのです。カウンターできいてみると,1つだけあるという話になり,それを買ってきたのです。

 このL/Cメーター,4600円とちょっと微妙なお値段で,AVRを使った無調整で高精度な今時の測定器キットです。容量計を作ろうかなと思っていたところでもあり,キットなら楽だろうと飛びついたわけですが,これについてはまた後日。

 さて,嫁さんの飛行機は離陸が30分ほど遅れたらしく,到着は15時をまわってしまいました。この日,大阪も強烈な暑さで,私は直射日光に顔を焼かれて,ひりひりしていたほどです。今年の暑さは,まさにあの日が最後だった,ということです。

 23日は8箱の本のうち,5箱の発送手続きを行ってからのんびりと過ごし,24日にこちらに戻ってきました。そして24日の夜には,5箱の本がちゃんと届きました。150kgをえっちらおっちらと自室に運び込んで,怖い目をした嫁さんのご機嫌を伺います。

 この土日で,Oh!Xの2年分をスキャンしました。実家の近くのスーパーで買った砥石で切れやんだ裁断機の刃を研いで,これから続く厳しい戦いに備えた後,Oh!Xを4冊まとめて,背を切り落とします。

 こんなに頑張ってスキャンしているのに,全然山が小さくなりません。途方に暮れながらも,しかしもうコツコツやっていくしかありません。

 記念に,その5箱分の本の山を,挙げておきます。

ファイル 409-1.jpg

 いやはや,心が折れそうです。

長い大阪での滞在

 9月17日に急に叔父が亡くなり,翌日から実家のある大阪に戻っていました。翌週は偶然にもお休みを取ってあり,他の用事もあって結局1週間まるまる,実家に滞在していました。今後,これほどの長期間実家にいることはもうないのではないかと思います。

 せっかくの長期滞在といろいろ予定を立てたのですが,そのうち大きなものは子供の頃から蓄積している大量の本や雑誌を,自宅に持ち帰り電子化するという作戦です。

 これまで,スキャンをしても紙を捨ててしまえばもうオシマイ,となかなか捨てられずにいたのですが,スキャンしたデータは必要に応じてプリンタで印刷することも,あるいはKindleやPCで読むことも十分可能であることがわかり,オリジナルの紙にこだわる気持ちもかなり薄れています。

 そうなると,実家もいつまでもあるわけではありませんし,今回の不幸のように,これから私の親にもなにか急なことがないとは限りません。その時がやってきてしまうと,もう本どころの話ではありません。今だから出来る事があるというわけです。

 まあ縁起でもない話をするのはやめときますが,年々紙で残す本の基準が上がり,余程の本でないと電子化を免れない昨今,改めて屋根裏部屋の本の山を眺めてみると,むしろスキャンした方がメリットがあるのではないかと思うような本がたくさんあることに気が付きます。

 そんなこんなで,現在の基準で残す,スキャンするを区別し,スキャンするものを躊躇なく自宅に送るのに,期せずして得たこの長い実家での滞在を利用することにしました。

 まず,Oh!X(mz)。1984年から休刊までほぼ揃っていますので,11年分ですね。130冊ほどありますが,ゆうパックで受け付けてもらえる30kgを1つの箱につめると,ざっと2箱分です。レア度の高い「それゆけX1」もスキャン決定です。

 1980年以前の古い古いトラ技も貴重という事で残してありましたが,むしろ電子化して手元に置いておいた方が面白いでしょう。これも1箱ほどあります。

 1980年代前半のI/Oの別冊も,今や技術的な価値はなく,技術史の資料としての側面が大きいでしょう。そうなると紙で残すべきなのですが,私は裕福ではないので,スキャンするのが限界です。だって,RANDOM BOXの総集編やら,8ピンドットプリンタの使い方やら,自作ワンボードマイコンのモニタプログラム集やら,そんなものがあっても,おそらくほとんど役に立たないでしょう?

 マイコンBASICマガジンは弟の管轄なので,今どうなっているのか分かりませんが,私たち兄弟が毎月買うようになった以前の記事は,BASICマガジンデラックスという別冊で確保しました。この別冊をVol3まで買うと,とりあえず創刊号からのプログラムが全て網羅されるはずですが,この3冊については私の管轄なので,私の判断でスキャンします。

 廣済堂出版のRAMも,今や伝説の雑誌です。1980年とか1981年とか,かなり古いものも数冊あるのですが,これは私が学生の頃こまめに古本屋に通って買ったものです。全然数が揃っていないので,ほとんど価値はないでしょう。同じ理由で電波新聞社のマイコンも,数冊しかないのでスキャンします。(1983年2月号は私が生まれて初めて購入したコンピュータ雑誌なのでちょっと惜しいのですが)

 エレクトロニクスライフは,かなり迷いました。1986年ごろから,面白い記事があると買うようにしていましたが,これもそんなに数が揃っておらず,その内容にこそ価値があるのは明白です。断腸の思いでスキャンすることにきめます。揃っていないとはいえ,休刊までの20年ほど間に,箱に半分ほどの量はありました。

 むー,バックアップ活用テクニックが大量に出てきました。Vol4からVol30くらいまであります。結構な分量です。個人的には,Vol5からVol20くらいまでが最も面白く,勉強(なんの?)になったと感じていて,それだけに思い入れもあります。

 実際,このあたりのバックアップ活用テクニックにはそれなりの値段が付いていた時期もあったそうで,そういう事情からもスキャンすることはしないでいました。しかし,ペンキをこぼしたりしてかなり程度が悪く,この状態では価値などありません。といいますか,そもそも現在はそんな高値ではありません。

 というわけで,バックアップ活用テクニックもスキャンします。

 あとは大人になってから買った本ですね。ハードカバーの本が2箱ほど,ブルーバックスをはじめとする新書のたぐいや文庫も大量にあって,これでまた1箱ほどありそうな感じです。

 ということで,2011年の基準でスキャンする本を集めたところ,30kgの箱に8箱出来てしまいました。合計240kg・・・よくもまあ,これを屋根裏部屋から降ろせたものです。

 こうして,紙で残すことになったものは,1982年から1984年までの子供の科学,1983年から1988年までの初歩のラジオ,そして1983年から1986年までのI/Oまでになりました。子供の科学と初歩のラジオはリアルタイムで毎月買っていて,数も揃っています。I/Oは後に古本屋でまとめ買いしたもので,これもかなり数が揃っています。これは今のところは残しておきましょう。全部で6箱ほどです。

 この,本と雑誌の選別と整理,そして梱包に,20日と21日両日をあてました。

 22日は嫁さんが短期滞在の予定で実家に来てくれることになっていたので,迎えに行きます。といっても,伊丹空港までは面倒臭いので,阿倍野までバスで来てもらうことにします。

 この時,もう1つの目的である,新しくなったシリコンハウス共立を見てみようと考えました。嫁さんの飛行機が到着し,阿倍野までやって来る14時頃まで,のんびり買い物をするため,11時半頃に日本橋に到着。

 するとなにやら,堺筋に面した小さいお店が騒がしいです。恵美須町駅のそば,かつてのシリコンハウスがあったあたりです。

 この街で働いていた人間にとって,シャッターが閉まったお店の前に人がワラワラいるのは,おおむね倒産や夜逃げです。集まった人たちには怖い人も混じっているので,目を合わせると取り返しが付かなくなります。

 そーっと眺めていると,報道用のテレビカメラ,大きな一眼レフに腕章と,完全に報道関係の人たちのようです。怖そうな人はいないようですが,なにやら騒然としています。こういう場合,おおむね火事なわけで・・・

 しかし,それも違うようです。50cm程上がっただけのシャッターの隙間にカメラを突っ込み,中の様子を撮影している人もいます。これは結構大きなニュースのようです。

 その日の夜のニュースで,それが違法無線LANを売っているお店の摘発だったと知ります。この手の摘発としては全国初とのことで,NHKの9時のニュースでもちらっと放送していましたので,びっくりしました。もしかしたら私が写っていたかも知れません。

 長くなったので,続きは明日。シリコンハウス共立での買い物のお話からです。

ネットワークオーディオが変えるハイエンドオーディオの世界

 ここ最近,ちょっと大きな変化が来ていると感じていることがあります。

 それは,ハイエンドオーディオの世界で起きつつある,ネットワークオーディオへの脱皮です。

 私はハイエンドオーディオの所有者でもないし,それほど興味があるわけではありませんが,ディジタル技術に対しては比較的保守的と言える姿勢の人々に対して,各メーカーがこぞってネットワークオーディオ機器を用意していることに注目をしています。

 CDの売り上げが下がり,配信による売り上げが大きくなっていることはすでにご存じのことと思いますが,これは携帯電話で音楽をダウンロードし,そのままそれを聴く,あるいはiTunesStoreで音楽を買い,それをiPod/iPhoneで聴く,と言うスタイルの定着によって起きていることであり,つまるところオーディオのカジュアル化がさらに進んだ結果であると,考えられる傾向があるようです。

 私もそう考えていました。つまり,CDは大規模店でないと買えなくても,ダウンロード販売ならいつでも1曲単位で買えるという利便性が支持されているのだと信じていたわけです。利便性と引き替えに失ったものは音質であり,圧縮された音楽は,およそHi-Fiとは言えないものであって,面倒な事でも「儀式」として尊び,全ては音質のためにというハイエンドオーディオには,およそ無縁だと思っていたのです。

 しかし,ハイエンドオーディオがネットワークオーディオに舵を切っている事は事実です。これをオーディオのカジュアル化という文脈で捉えようとすると,失敗するように思います。

 これらハイエンドオーディオをターゲットにしたネットワークオーディオ機器の特徴は,USBによるマスストレージに記録されたファイルと,DLNAなどネットワークで運ばれるファイルの再生を行うもので,その点ではカジュアルなオーディオ,あるいはゼネラルオーディオとなんら変わらないように思えます。

 しかし,これらの機器が,24bit/96kHzといったフォーマットにちゃんと対応していることを見逃してはいけません。16bit/44.1kHzでさえも,あれだけの物量を投入するマニアの人たちですから,情報量が2.5倍にも膨れあがる24bit/96kHzに対しては,それを上回る高音質化を行わなければ納得しないでしょう。

 私が先日購入したZoomのH1も,1万円そこそこで24bit/96kHzの録音と再生が可能です。しかし,潜在的に多くの情報を含むデータから,その情報を余すことなく再生するシステムを組み上げるのは尋常ではありません。

 ここでふと気が付きます。つまり,音楽を聴くことに大きな価値を感じてお金と時間を投入するマニアをして,すでにCDやSACDといったパッケージメディア見限ったのではないか,ということです。

 CDは30年近く前のフォーマットで,制作現場で使われている24bit/96kHzに対してあまりに器が小さすぎ,かなりの情報を削り落として押し込んでいます。SACDは音質には定評がありますが,いかんせん新譜が少なく,供給という点で問題があります。

 ハイエンドオーディオのマニアが,これらのメディアに対して長年不満を募らせていたことは事実で,その中で出てきた1つの流れがLPレコードへの回帰だったと言えるのかも知れません。

 このままパッケージメディアに頼っていては,スタジオで鳴っている音には永遠にたどり着かない,そのことに気付き,焦り始めたマニアが,自然に目を向けるようになったのがネットワークオーディオだったとすると,それはとても自然です。

 言うまでもなくハイエンドオーディオのマニアたちの執念は強烈で,1mあたり何十万もするケーブルに一喜一憂し,スピーカーの位置を1cmずつ動かしてはその変化に聞き耳を立てる人たちです。どちらかというとディジタルオーディオに懐疑的な人種でありながら,フォーマットの優劣はケーブルくらいでは越えられないこともまた良く承知している聡明な人々でもあるので,彼らが本気になってネットワークオーディオに取り組み始めた時には,もうその流れを止めることは不可能でしょう。

 数年前から,24bit/96kHzなどのフォーマットをPCとUSBオーディオ機器を使って高音質再生するという試みが一部のマニアの間で検討されていましたが,オーディオ用にチューニングされていない機器を使いこなすのは難しいことであったようですし,そもそも高音質フォーマットによるソースの供給が少なすぎて,主流にはならなかったようです。

 そこへ,ネットワークオーディオに特化したハイエンドオーディオ機器が,きちんとしたチューニングとD共に相次いで登場して来たことを,見逃してはいけません。

 この流れの一番乗りは,イギリスのLINNというハイエンドオーディオメーカーです。

 高級オーディオ機器のメーカーとして知られるLINNは,2009年の年末をもってCDプレイヤーの生産を取りやめました。なんだかんだでオーディオソースの主役であるCDをラインナップから外すという英断に,私は当時大変驚いたのですが,2007年ごろから彼らが注力してきたネットワークオーディオ機器,LINN DSシリーズに対するユーザーの反応が,この大きな決断の背中を押しているわけです。

 LINNがいうには,2009年度はワールドワイドの売り上げのうち,ネットワークオーディオ機器が売り上げ全体の30%を稼いでるというのです。しかもCDプレイヤーの売り上げは前年比4割減です。もうそんな時代になっているのかと驚かれるのではないでしょうか。

 CDも,その長い歴史の中で高音質化が行われてきましたが,やはりフォーマットの壁はいかんともしがたいわけで,アナログ放送の地上波が,どれだけ高画質化しても根本的な情報量に絶対的な差のある地上デジタルのハイビジョン映像には全く歯が立たないのと同じ話です。

 ネットワークオーディオにはフォーマットへの縛りが緩いという特徴もありますし,駆動系がなく音質にも有利,しかも信頼性も高いです。PCとの親和性も高く,利便性にも優れています。中身と器を完全に分けたというのも現代においては必須の概念でしょう。

 利便性によって普及したネットワークオーディオは,ここに至ってオーディオ史上最高音質という能力を身につけ,一躍ハイエンドオーディオ向けの最重要ソースになりつつあります。

 LINNの勇気ある決定に続き,ここ最近数十万円クラスのハイエンドオーディオ機器にもネットワークオーディオが用意されるようになりました。日本のメーカー重い腰をあげてようやく参戦しつつあります。LP,CDに続く,ソースの主役に君臨する日は,もうすぐそこです。

 自宅にネットワークが張り巡らされ,サーバーには24/96を含む可逆圧縮のオーディオデータが収められて,これが数百万円のアンプとスピーカーを鳴らし切る,そんな時代がすぐそこまで来ています。これは,音楽を聴く人にとってはもちろんのこと,音楽を作る人にとっても,極めてエキサイティングなことだと思います。

 しかしながら,CDはおそらく消えません。音楽を詰め込んだパッケージには,最新の音楽を高音質で配布するという役割だけではなく,文化と歴史の担い手という非常に重要な役割があります。

 SP盤は音質としては決して良いとはいえません。しかし今でも愛好家がいますし,むしろ貴重な録音,貴重な記録という文化的側面が強いわけです。LPもしかり,CDもしかり。いずれも,これほど多くの資産を持つメディアですから,そうそう簡単に消えはしないでしょう。メディアが担う役割の比重は,年々変わっていくのです。

 ならば,ネットワークオーディオの時代になると,供給される音楽はどういう形でアーカイブされ,文化として次代に引き継がれることになるのでしょうか。

 そう,趣味性の強いハイエンドオーディオにおいては,その音質で主役になることは間違いないでしょうが,パッケージメディアが持つアーカイブという能力が欠如していることについての議論は,まだまだ浅いのではないかと思います。

 LPレコードの再生に数百万円の出費を厭わないマニアだからこそ,今の音楽を次にどうやって残していくのかを,一緒に考えてもらいたいものだと,私はそう思います。

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