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ワンダースワン復活の道~その3

 続けてワンダースワンのお話。今回のお話はほぼ私の愚痴です。

 まず1つ目です。ワンダースワンカラーのIPS化に失敗し,壊してしまったLCDを買い直したわけですが,あろうことかまさかの未着で泣き寝入りという事になりました。

 aliexpressではしばしばこうした未着のトラブルがあるそうですが,私はこれまで幸いにもこうしたトラブルはなく,すべて届いていました。

 しかし,今回はだめでした。それも,中国のお店の不手際や通関前の運送トラブルならまだあきらめもつくのですが,残念な事に日本の運送業者に引き渡されてからの問題でした。

 今回の荷物は,日本に到着し通関をパスしたあと,いつものように「エスポ便」なるものが私の家まで届けてくれることになっていました。追跡してみると,通関手続きの完了が12月13日の10時55分,日本の運送業者への引き渡しが同日11時55分となっています。ここまでは順調です。

 そして配達開始が翌14日の22時5分。おいおい,こんな夜遅くから配達開始かいな。そして配達完了はあけて15日の3時2分・・・こんな深夜に!

 エスポ便は置き配しかしないので,15日には朝から夜まで何度か玄関先とポストを見たのですが,見つかりません。ああ,荷物が行方不明になりました。

 最近はあまりなかったのですが,一頃荷物が続けて届かないことがありました。原因は一つ向こうに出来た,同じ名前の新しいお家に誤配されていた事でした。我が家とは違って,このお家は通りから見えていてわかりやすく,住所も似ているのでよくここに誤配されるのです。

 お互い様と思いたいところですが,彼らの荷物がうちに来ることはありません。明らかに誤配と知らされた事例以外でも私の荷物が時に数日遅れになることがあるのは,きっと誤配されたものがうちに再度配達されるからだったのでしょう。

 今回もその可能性があります。夜中ですからね,暗くて住所など良く確認出来るはずもないですし,写真だって撮れないし,寒いなか表札の名字をぱっと見て「おーここだここだ」とポストにでも突っ込んだんでしょう。

 一時期多かった誤配は,私まもちろん先方のお家にも迷惑がかかっていることを日本郵便やヤマト運輸にしつこく言い続けたことで,徐々に減っていきました。ヨドバシとamazonの配達員の方は優秀で,大手の配達業者から自社便に変わった後に誤配があったことはありません。

 ですが,今回のエスポ便,これまで上手く配達されたケースでは,すべて常識的な時刻に配達が行われていました。システム登録上の問題かも知れませんが,それにしてもこの時刻に誰かが端末を操作したと考えるのが普通ですから,やっぱりいつもと違います。

 そういった,いつもと違うシステムに乗ってしまった私の荷物は,(おそらくは)誤配というブラックホールに飲まれてしまったというわけです。(もっとも誤配じゃないかも知れませんが,紛失にせよ破損や廃棄にせよ,思うに誤配が一番罪が軽いんじゃないかと思いますよ)

 郵便やヤマト,amazonなどの誤配は,受け取った方が誤配であることを連絡する手段が簡単でした。amazonにしても郵便局にしても身近なものですし,話せばわかる相手です。しかしエスポ便の送り状には連絡先は書かれていません。仮にエスポ便をネットで調べてくださったとしても,その電話番号はナビダイヤルで高額な通話料がかかる上いつも話し中で繋がることは絶望的で,メールは100%無視されるでしょう。調べた限り,もしも話が出来ても「話にならない」そうですし。

 そんな状態で,誰が善意で私に荷物を戻してくれるでしょうか。そもそも,これまでもそうだったように,そのお家は誤配があっても私に声をかけてくれることも,ましてや持ってきてくれることなど一度もありませんでしたから,今回についても警戒されてゴミ箱行きでしょう。(シメシメとあけて,わけのわからんLCDが出てきてがっかりしているかも知れませんが)

 今回は本当に運が悪かったとしか言いようがありません。中国からの通販には届かないというリスクが付きもので,そういうことも楽しめないと使っちゃだめだと思うのですが,悔しいのは届かなかった理由が日本国内の,日本人によるもので,しかもおそらく半径100m騎範囲のどこかにあるだろうと推測されることです。いやはや,もう日本の宅配システムは信頼出来ないものになっているのです。

 よろしい,では紛争だ,とばかりにaliexpressに返金の手続きをするも,5秒で却下されました。配達完了になっている場合,もうaliexpressにもセラーにも責任はなく,配達業者にあるのでしらん,とのことです。確かに通関が済んでしまえば,もうそれは日本領内のお話ですしね。

 ということで,あえなく撃沈。置き配は信頼性の高さはもちろん,万が一事故が起きた場合の保証(と効率化によるコスト削減との天秤)によって成立しているものだと思いますが,エスポ便は連絡手段が実質的に機能しないことで逃げ切りが可能な,なかなか賢い業者と言えそうです。

 つらつらと思うに,責任を持つことからみんな逃げるようになりましたよね。責任にはコストがかかるわけで,そういうものを外部に出すことで,自分の責任の範囲を極小化してコスト削減を行うわけです。

 当然,仕事の範囲が細分化され,面倒な仕事ほど小さく切り取られて,立場の弱い人たちに押しつけられます。当然その人たちが最終責任を取れるはずもなく,それは本来彼らに仕事を出している大手が責任を取るものだと思うのですが,それはアウトソーシングという仕組みで回避することが出来るようになりましたaliexpressのようにです。

 でもですね,aliexpressなど通販も含めた小売業というのは,お客さんが支払ったお金を受け取り,品物を渡すことが仕事です。しかもそれは基本サービスで,そこから利便性やアフターサービス,気持ちの良い接客などを競うものだと思います。

 しかし,今回のaliexpressの考え方は,お金を集めて「出荷する」のが自分たちの仕事だとしていて,およそ小売業とは言えません。そう,それはECプラットフォーマーという仕事であることを,利用者である我々は忘れてはいけません。

 そこへ行くと,amazonにしてもヨドバシにしても,小売業の本分を忘れていません。amazonは置き配を始めた会社でしたが,最終的に客が品物を受け取るまで,amazonが問題の解決を図ろうとしてくれます。その強力な力は公正取引委員会に怒られるほどですが,しかしなから彼らの視線は使命感と共に常に消費者に向いています。

 ヨドバシに至っては,配達も自社便で手渡し前提,再配達は電話でと,前時代的なほど客との対話にこだわっています。ヨドバシのクルマから降りてきたヨドバシの制服を着た人に,ヨドバシですと自分の買った物を手渡されれば,それはもうお店で購入したこととなにも変わりません。

 特に再配達の電話については,面倒という声があるのに対し,あえてお客様との対話を重視しているというインタビューが出ていました。通話料は無料で,人と人がきちんと話し合うことで問題を解決することにこだわる姿勢は,ヨドバシの店頭でも良く体験することです。

 店舗と通販に共通の考え方を押し通せることはヨドバシの強みだと思いますし,通販専門のamazonが,小売店の責任を消費者目線で全うしようとすることは,本当に頼もしいと思います。

 別にこれは日本の厳しい消費者の考え方ではないと思います。小売店は品物とお金を交換するのが仕事です。客の手に品物が渡るまでがその責任だと考えてくれているお店とお付き合いしたいものです。

 というわけで,aliexpressの荷物が届かなかった件で,私はモヤモヤとしていました。連絡はつかないし,ついたところで良い結果は出てこないだろうと思うので,その理不尽さをどうやって解決すべきか考えても考えても答えは出ません。

 しかし,そんな私の気持ちをスッキリさせる事実が発覚します。改めて注文した商品を見ていると,ちょっと違和感があります。手元にある壊れたLCDと見比べると,明らかにフレキの形状が違います。出ている向きも長さも違いますから,これきっと互換性はないでしょう。

 どちらもワンダースワンカラーのIPSキットとして売られていたものですが,コントローラ基板の違いで,フレキの形状に種類があるみたいです。私が壊した物はL字に曲がっていますが,交換用に買った物はストレートです。

 ああ,なんということか。注文の段階ですでに決着が着いていたとは。もし仮に届いていても,悲しみが広がるだけだったというわけです。

 事ここに至って,もうどうでも良くなりました。誤配で受け取った人がメルカリで売り払ったとしても,配達員の兄ちゃんが配達したことにして捨てたとしても,もういいです。好きにしなさい。

 L字に曲がったLCDは単独では売られていないようで,もしこのまま計画を進めるならばキット全部を買い直す必要があります。先々週から微妙に円安が進んだことで価格も上がってしまっているので泣きっ面に蜂ですが,やむを得ずキットを注文し直しました。今度はちゃんと届くといいなあ。


 1つ目が長くなりましたが次の話。モノクロのワンダースワンの話です。

 位相差フィルムで色を白/黒にしてあるのがオリジナルのワンダースワンのFSTN液晶です。位相差フィルムの劣化によって緑/青になってしまったワンダースワンが多いため,元の状態を記憶している人は少ないでしょうし,もともと緑/青だったゲームボーイの印象が強いこともあって,ワンダースワンの修理例のほぼすべてが,普通の偏光フィルムを使った緑/青のLCDへの修理です。

 私はこの白/黒のLCDにこだわりを持っていたので,出来れば位相差フィルムを使った偏光フィルムを手に入れたいと思っていましたが,これが絶望的に見つかりません。

 このままバラバラになったままよりは,とりあえず修理して組み上げた方がいいだろうと言うことで,私も普通の偏光フィルムを使って,緑/青で修理をすることにしました。

 向きを調整し,綺麗な緑色が出てコントラストが最大になるようにしてからカット,裏表を間違えて1枚無駄にしましたが,なんとか綺麗に貼ることが出来ました。

 見栄えは残念な緑/青ですが,試しにグンペイをやってみたところ,これが意外にちゃんと楽しめます。もうね,これでいいですよ。

 そして最後に,ゲームボーイアドバンスです。

 偏光フィルムが手に入ったのでさくっと交換するつもりが,えらいはまりました。

 まず,ゴミが入りました。諦めつつ組み上げても表示が出ません。フレキの差し込みを少しずらすと表示が出ることがわかり,ようやく組んだとおもって画面をみたら,偏光フィルムの端っこが浮いています。

 何度やっても浮いてきます。もう30回ほども組んでバラしてをやったでしょうか。結局,LCDを貼り付ける両面テープが偏光フィルムを剥がしているのですが,どうも初期ロットの筐体はLCDに変な応力がかかるみたいで,それで偏光フィルムが浮いてしまうようなのです。

 偏光フィルムをギリギリの大きさにカットしたり,両面テープの位置を調整したりと試行錯誤を繰り返しましたがどうにも浮いてしまいます。仕方がないので,浮きが出ている部分の両面テープにフィルムを貼り,粘着をなくして対処しました。

 ただ,風防の裏側のホコリを拭うのに,レンズを拭くのにも使われるシルボン紙を使ったところ,擦り傷がたくさんついてしまいました。表面に比べて裏面は柔らかくて傷がつきやすいみたいです。

 反射型のTFTは外光を取りこむ必要があるので,この擦り傷が妙に目に入ってきます。これは失敗しました。とにかく,いじればいじるほど,悪くなって行くというのがこの手の修理作業です。最初に緻密な計画を立てて,流れるように作業をするように心がけ,基本的にはやり直しなしの一発勝負だと覚悟して作業にあたらねばなりません。

 繰り返した対策から2日,今のところ偏光フィルムの浮きは出ていません。このまま収束してくれるといいなあ。


 ということで,ワンダースワンカラーの風防の交換を思いついて始まった泥沼。まだ道半ばで決着は着いていませんが,とりあえずモノクロとカラーを1台ずつ復活させることができました。

 え,なに?嫁さんのワンダースワンがどっかにあるはず,だと・・・

 

ワンダースワン復活の道~その1

 ワンダースワンのお話,まず第1話です。失敗というか,恥ずかしい話です。

 作戦その1として,とにかく動くワンダースワンの確保をということで,仮にオリジナルに戻せても実用性に乏しいワンダースワンカラーをバックライト付きの見やすく綺麗なIPS液晶に換装することにしました。

 これ,数年前から死んだワンダースワンカラーを復活させる方法としても,あるいは貴重なスワンクリスタルを越える実用機を手に入れる方法としても注目されている方法で,多くのワンダースワンカラーが実用機へと生まれ変わっています。

 中国生まれのこの画期的な改造について,私は残念ながら詳しいことをよく知りませんが,液晶そのものはゲームボーイアドバンスのIPS換装キットと共通で,ワンダースワンカラーもしくはゲームボーイアドバンスのLCD出力信号を変換し駆動するコントローラ基板を,本体基板とLCDの間に挟むことでIPS化を実現しています。

 もちろん,コントローラ基板は機種ごとに違っているのですが,ワンダースワンの特徴であるセグメントによるステータスアイコンを,画面の端っこにドットマトリクスで表示することも,このコントローラの役割です。

 コントローラ基板そのものはワンダースワンカラーもゲームボーイアドバンスの共通のようで,コントローラLSIが違うのか,あるいはLSI自身はFPGAで,その中身を機種ごとに変えてあるのかは不明ですが,どっちにしてもLCDは共通,コントローラ基板は機種別になっているようです。

 キットとして売られていてamazonだと12000円くらいなのですが,aliexpressだと8000円弱,特価で6000円程度で売られています。すでにaliexpressに抵抗のない私は,もちろんaliexpressに注文です。

 1週間ほどで届いたものをテストしましょう。本体とコントローラ基板,そしてLCDをフレキで繋いだだけではだめで,フレキの途中に出ている2箇所のランドに5Vと3.3Vを供給するため,DC-DCコンバータモジュールから2本ジャンパを飛ばします。

 電池を繋げてスイッチを入れると,鮮やかな表示が正常に行われました。いやー,この綺麗さはモチベーションが上がります。素晴らしい。フレキの途中にあるタッチセンサに触れると輝度が変わり,長押しでカラーと白黒が切り替わります。

 説明によると,バックライトへの電流が多すぎて問題がでているらしく。電流を減らすための抵抗が同梱されているのでコントローラ基板にある10Ωを51Ωに交換しておきます。

 さて,これを本体に組み込むのですが,ここからが地獄の始まりでした。

 まず風防(透明パネル)です。これ,先日某ゲームショップで買った物がもったいないのと,ガラス製で高級感があるので再利用を考えていたのですが,あいにく剥がしたときにアルコールで融けた両面テープの糊がベタベタとついていて,これを取り除く必要がありました。

 見た目に綺麗に取れたようでも,LCDを取り付けて見ると拭きムラが残っていたりと,とにかく綺麗にし切れません。静電気でホコリもつき始めて,すでに混乱気味です。

 そのうちLCDにもホコリがついたり,うっかり触って指紋がついて,これを拭き取ると簡単に擦り傷がついてしまい,またパニックに。

 かなり目立つ傷がついてしまったのでデジカメ用のLCD保護フィルムを貼り付けて傷を消しますが,キズは綺麗に消えるものの,微妙にサイズが小さくて一部そのままになってしまう部分もあります。不細工ですがやむを得ません。

 風防もガラス製の物は諦めて,今回のキットに付属していたプラスチック製の新品に変えることにしました。ホコリも傷もなく,綺麗に組み込めたので,最初からこうすれば良かった。

 ボタンと基板を組み込み,ケースをビス留めして完成です。

 しかし,いざ電源を入れてみると画面にゴミが出ています。画面の右に2本ほど,まるで天の川のような帯が縦に2つ出ています。綺麗な線ではないので最初はLCDの破損だとは思わなかったのですが,ルーペで見るとその帯は点灯しているピクセルの集まりでした。

 こまめに表示テストを行って作業を進めたので,最後の最後に表示不良が出ることにがっかりしたのですが,取り付けに失敗しているのかも知れないとLCDを剥がしてみますが,やはりゴミは同じ場所に出ています。

 まだLCDの問題だと断言出来ないので,フレキやドライバICをぐいっと指で押して表示の変化を見ますが変化なし。とはいえなかばLCDの破損だろうと思っていた私は,思わず不用意に指に力を入れてしまい,ペキッとLCDを割ってしまいました。

 万事休す。

 そもそもこの某ゲームショップのガラス製の風防には振り回されっぱなしです。サイズがやや大きいので取り付けに苦労し,そのせいでオリジナルのSTN液晶が死にました。今回もコイツのせいで何度も何度もLCDを付けては外し付けては外しを繰り返し,擦り傷を付けたあげくに割れてゴミです。時間も手間も費用も浪費してこの有様です。金返せー。

 とまあ,物に八つ当たりするのは筋違い。すべては私の鈍くささが真因です。ここに至って結局ワンダースワンカラーのIPS化は失敗に終わりました。私は悲しみあまり,倒れるように布団に入り,己の力のなさに打ち震えながら,意識が薄れていくのを待つほかありませんでした。

 しかし,このまま終わってしまうのは実に悔しい。そこでaliexpressでLCDだけを注文しました。3000円ちょっとだったので,合計でここまで合計9000円ほど。それでもamazonよりも安いのでなんとか納得していますが,一応小型機器の商品設計をやってきた私のプライドはすでにズタズタです。もとい,これは今の自分を冷静に見つめ直すチャンスとすべきでしょう。

 新しいLCDが届くのは10日ほど後です。ただ,この見た事もないようなまだらにピクセルが点灯して出来た帯は,明らかなLCDの破損で出てくる症状と違っているので,どうも解せません。LCDの問題なら新しいものが届けば問題は解決ですが,もしこれがコントローラ基板の問題なら問題は解決しないでしょう。

 昨日のうちにとりあえず1台が復活するかと期待しました。実際,あとは組み込みという所まで来ましたが,そこから急にゴールは離れていきました。いい夢を見られると思って頑張りましたが,慌ててやるとろくな事はありません。やっぱり作業そのものを楽しむくらいの余裕を持たないと失敗するなと,つくづく思った次第です。

 ワンダースワンの次の復活のチャンスは,数日以内に中国から届く,別の作戦用の部品です。実はこれが本命。しかしこれも一か八かの大ばくちですので,上手くいくとは限りません。作業前に詰む可能性も高いので,作戦から考え直す必要があるかも知れません。

 ともかくも,焦らず気長にやってきましょう。いやなに,どんくさいのはいつものことですし。

 

スワンクリスタルとワンダースワンカラーを失った週末

 ワンダースワン,今なかなか人気のある携帯型のゲーム機です。

 「枯れた技術の水平思考」を是としたゲームボーイの生みの親,故横井軍平さんが任天堂退社後に立ち上げたコトが開発,当時のバンダイから発売になったワンダースワンですが,安く,低消費電力で,手軽に買えて,だけど楽しく面白くを具現化したワンダースワンは,当時の私の商品設計に対する考え方に近かったこともあり,大好きなハードウェアとして,特別な思いがありました。

 今にして思えば初代が一番洗練されていて,バランスも素晴らしかったと思うのですが,市場はそんな設計者の思いなど知らずに,当然の如くカラー化を望みます。当時の技術ではカラー化によるコストと消費電力の増大が非常に大きく,登場したワンダースワンカラーは市場の要求に,なんとか折り合いを付けた妥協の産物であると,私には見えていました。

 それは乾電池1本で動作するという目標のために,徹底したパッシブ動作へのこだわりにも現れていました。バックライトはコストも大きさも消費電力も大きいので使わない,LCDも美しいが高価なアクティブマトリクスのTFTを使わずパッシブマトリクスのSTNカラーです。

 確かにこれでワンダースワンの目指した安く消費電力が小さいという優先度には矛盾しないものが出来ましたが,結果暗く発色も悪い,とても見にくい画面のゲーム機が出来てしまいました。見やすさだけで言えば,初代のモノクロ機にもかなわないでしょう。

 それでも私は発売前からコトが出した答えが楽しみで,予約して買いました。以後はガンダムのゲームを中心に持ち歩き,暇さえあればゲームを楽しんでいました。実家に帰る新幹線で3時間近くひたすらゲームをやったことも良い思い出です。

 これだけ持ち運んでいれば傷むのも道理で,風防(フロントパネルのことです)の真ん中に大きな傷を付けてしまい,ゲームに没頭できなくなってしまいました。ワンダースワンカラーはパッシブのLCDで,明るさだけではなく色味も改善しなければならなかったので,LCD表面のフィルムはもちろん,風防の表面の反射防止コーティングにもかなりのお金をかけていたように思います。

 それでもバックライトを付けるよりはいいと,パッシブにこだわったのでしょう。でも,もともと暗い所ではいかに反射防止をしても見えるようにはなりません。単三電池1本で動く事にこだわった結果,ワンダースワンカラーは,普通なら市場に出ないだろう形で販売された,珍しい携帯機器だったと思います。

 そして時は流れ,ワンダースワンというプラットフォームに終焉が近づいた時,ようやくワンダースワンの理念を満足な表示品質で実現出来るときが来ました。今ではすっかり珍しくなった全反射型のTFTを搭載した,スワンクリスタルの登場です。

 ようやく価格もこなれてきた鮮やかで見やすいTFT液晶を採用しながら,消費電力の大きなバックライトを使わない反射型にこだわり,画質と消費電力をバランスしたスワンクリスタルは,確かに劇的に見やすさを改善していました。

 名前に与えられた「クリスタル」が,とても誇らしく感じました。

 全反射型のTFTはゲームボーイアドバンスでも使われていたものですので,当時としては珍しい物ではありません。でも,やっぱり周囲の環境に左右されてしまう反射型が淘汰されるのは目に見えていました。

 バンダイらしく,版権物のキャラゲーが主力となった末期のソフトラインナップには興味はなくとも,ワンダースワンに共感し,ワンダーウィッチにも手を出していた私は,スワンクリスタルも迷いなく入手します。

 しかし,以後ソフトも出てこず,私も別の事に興味を持つようになり,私のスワンクリスタルはほとんど稼働することはありませんでした。しかし,自分の身内のように感じられたワンダースワンだけはすべて大切にしておこうと誓い,スワンクリスタルを含むすべてのワンダースワンは,大切に元箱に収納されて保管されていました。

 事が動いたのは実家の荷物をすべて引き上げるときです。当然処分されることなく自宅に運び込まれたワンダースワンですが,動作の確認のためと娘の興味を惹くかもと,電池を入れて動かしてみました。

 グンペイを遊んだのですが,娘は関心を示さず,私も30分ほど遊んでまた箱にしまい込んだのですが,この時私は重大なミスをしていました。

 また近いうちに遊ぶからと,電池をそのままにしてしまったのです。

 それから3年,先日の話です。

 あるお店で,最近人気が高まっているワンダースワンカラーの,交換用の風防が売られていました。ガラス製なのでキズもつきにくく,見た目にも綺麗なのでちょうどいいと手に入れ,これで20年越しの「キズ」に決着を着けることが出来ると喜んで交換作業を始めました。

 傷ついた風防を取り外すのですが,風防の裏面の印刷と両面テープが本体に残ったままになってしまい,これを取り去るのに随分手間がかかったのですが,どうもこれが良くなかったらしいです。

 交換作業は終わったのですが,おそらくその時に指で触ったりねじったりしたせいで,どうもLCDにまだら模様が残っているのです。電荷が残っているせいかもと思いましたが一晩経っても消えず,よく見るとピクセルにまたがっていますので電荷によるものではありません。

 ならば偏光板の劣化だろうと思ったのですが,ここはあまり深追いせず,ワンダースワンカラーはこのままとして,スワンクリスタルで遊ぼうと箱から取りだしました。

 するとなにやら,白い結晶のような物がパラパラと出てきます・・・

 何だろうと思って本体をよく見ると,本体の通信コネクタに結晶がびっしり,隙間からも透明とライトブルーの粉が出てきています。何だろうとしばらく考えて,まさかと思って電池ケースを外してみました。

 そのまさかでした。盛大に液漏れしていました。

 元の電池の形をとどめないくらいにぐじゅぐじゅに融けてしまっています。これほど強烈な液漏れは私も見たことがありません。さすが,電池1本にこだわって昇圧のDC-DCコンバータを常時動作させる電源システムを持つワンダースワンです。電源OFFでも微弱電流が流れ続けます。

 これまで多くの液漏れを見て来た私ですから,分解掃除をすれば大丈夫,仮に基板のパターンが切れるほどの液漏れがあっても,少し確認して修復すればまた元通りになると軽い感じで開けてみました。

 これまで,たくさんの液漏れを経験してきましたが,これほどひどい液漏れは初めて見ました。もう,手の付けようがありません。基板が腐食しているというよりも基板に結晶が盛り上げられているのです。チップのトランジスタは,まるで砂糖菓子に埋め込まれたゴマのようです。

 こびりついた結晶を剥がそうとしましたが,それも難しい位基板に一体化して成長していました。様子を見たいということで紙やすりで結晶をはがしていきましたが,パターンもスルーホールも,もう手の施しようがないほど切れていました。

 当然電池を入れてもうんともすんとも言いません。修理不可能です。

 LCDもよく見ると,中央部が膨らんでいます。空気が入ったドームのようになっているそれは,LCDの不良を示していました。

 取り外してLCDを見てみますが,電解液が付着した形跡はありません。ただ,表面の偏光フィルムを剥がしてみると強烈に酸っぱい臭いがします。そう,ビネガーシンドロームを発症していました。

 21世紀のLCDにビネガーシンドロームが発生するとは思わなかったのですが,もしかすると電池の液漏れによって発生したガスがその引き金になったのかも知れません。

 ということで,LCDも基板も,たった1本の単三アルカリ電池を取り外さなかったことで,死んでしまいました。

 突っ伏した私を,妻と娘は,かける声も見つからないと,心配そうに遠くから眺めていました。

 ならば,せめてワンダースワンカラーを復活させよう,これでギレンの野望特別編を完遂しようと意気込んで,まだらの原因である偏光フィルムを剥がして交換することにしました。今思えば,その発想は自殺行為でした。

 しかして,これも大失敗。偏光フィルムを剥がしてみても,まだらは消えませんでした。あわてた私は反射シートを剥がしにかかりますが,なかなか剥がせません。仕方がないので糊を綺麗にすることにしたところ,まだらが消えました。

 そう,原因は糊にありました。糊をアルコールで完全に剥がすと,ようやくまだらはなくなりました。

 私はホッとし,新しい偏光フィルムを用意して,貼り付ける向きを確認することにしましたが,どの角度でも全然画像が見えてきません。裏返してもだめです。ようやく見えると思った角度でも,よく見ると色が反転しています。

 そうでした,STNのカラーLCDは,発色に複屈折を利用するので,白黒のSTNやTNで使われるような偏光フィルムを使うことは出来ないのです。

 糊に原因があるなら偏光フィルムそのものは再利用できるかも知れないと脇に無造作に捨て置かれたフィルムに目をやりますが,もはや傷だらけで再利用できる状態ではありませんでした。

 ここに至って,我が家のワンダースワンのカラー対応機は全滅し,カラー専用のソフトはゴミになってしまったのでした。

 ああ,なんと悲しい事か。

 当時の雰囲気を良く伝える部品や基板,LCDを見ながら,今も愛されるワンダースワンを愛でることは,とうとうかなわなくなってしまったのか。他のゲーム機はともかく,ワンダースワンだけは持ち続けようと最初から誓っていたのに,こんな不注意でだめにしてしまったのか。

 そもそも,貴重なスワンクリスタルをくだらない理由で失ってしまって,私はレトロゲームを持つ資格がないのではないか,そんな風に自分を責め,再び突っ伏した私を妻と娘は遠巻きに眺めていたのでした。

 ワンダースワンの設計のうち,まずかったなと思うのが,この電池1本で動作にこだわった点でした。いや,別に電池1本で動作させることそのものは問題ないですし,それで20時間も持たせる技術はさすがだと思います。電池1本にこだわる技術者の心意気に私も当時共感した覚えがありますし。

 しかし,1.5Vから3.3Vや5Vに昇圧する回路は,効率も良くないですし,電源OFFでも僅かとは言え結構な電流が流れ続けます。この僅かな電流というのが液漏れを一番誘発するのです。

 当時の私も液漏れを強く意識した設計を心がけていましたが,ワンダースワンでも液漏れを防ぐ為に,DC-DCコンバータの入力側,つまり電池とDC-DCコンバータの間を物理的なスイッチで切断することにして欲しかったと思います。この方法だと電池が完全に切断されますから,常時電流が流れることなく,仮に液漏れがあったとしても小さな被害で済むのです。

 しかし,ワンダースワンは電源ボタンを押しボタンにして,ソフトで管理することにしました。そのせいでCPUに電源を供給する必要が生じ,DC-DCを電源OFFでも常時動作させることになってしまったのです。

 電源スイッチをソフトではなく物理的なスイッチにするには,コストもかかるしデザイン面での制約もあります。でもですね,ワンダースワンには電池ケースが外れるのを防ぐスライド式のロックがあります。ここに電源スイッチを仕込んで主電源スイッチとしてくれれば,救えたワンダースワンもかなりあったんじゃないかと思うのです。

 あれこれ考えていてもどうにもなりません。

 スワンクリスタルは,基板とLCDの損傷。筐体は新品同様です。

 ワンダースワンカラーは,LCDが使えなくなりました。

 多数のカラー専用ソフトを楽しむために,今の私に出来る事は・・・

 続く。

右手の中指を脱臼

 右手の中指を脱臼しました。

 こんなことがあるのかと思ったのですが,なった経緯がうまく説明出来ません。直接の原因は,右手の親指で,中指を内側に強く曲げたからなのですが,ではなぜそんなことをしたのか,と言われると,良く覚えていないんです。

 たぶん,料理中にゴミか何かが中指について,これを払おうと中指を弾くように,親指を中指の第2関節あたりにひっかけて,曲げたのです。

 そしてピンと中指を弾こうとしたときに,なぜか親指が滑ってくれず,曲げられたまま中指が伸びようとして,ここで激しい痛みが出たというわけです。

 この時ですが,中指の第3関節の上を腱が曲がって避けて通るように見えて,そのまま強く引っ張られた時に強い痛みが出たように記憶しています。

 3時間程度の間に右手はひどく腫れ上がり,中指も曲がっていました。痛くて動かす事が出来ず,これはただ事ではないなあと思わせるに十分でした。

 一晩経って治まる方向に向かってなければと病院に行こうと思って寝たのですが,果たして状況は変わらないか悪くなっている感じです。「なぜすぐに来なかったのだ」と怒られるのも嫌だったので,とりあえず病院に行くことにします。

 先生は,脱臼していると言いました。腱が曲がって避けて通ることもある話だということで,私の見間違いではないという話です。ちゃんとした診断名は,ややこしいので覚えられませんでした。

 いわく,隣の関節との間にある筋が伸びきってしまっていて,完治するには手術が必要とのこと。冗談じゃない,そんな大ごとになっているなんて信じられない。

 まあ,この先生はいつも「手術だ手術」と,すぐに手術をしたがる先生なので,真に受けるとこっちが疲れてしまうんですが,よくよく聞いてみると,腱が曲がらないようにしている筋が伸びたので,今後は腱が曲がってしまうようになる,なのでその時に違和感があったりするけど,気にならないようならそのままで過ごす人も多い,といいます。

 要するにあれですね,実生活に支障がなければほっといていいんですね,と聞けば,まあそうですねとお返事。

 ただ,3週間は固定が必要で,固定には人差し指を副え木にして,テーピングを行うことと,指示がありました。3週間!そんなに!

 以前別の事(この時は右肩の脱臼でした)で先生に言われたのは,脱臼というのは骨と骨を繋いでいる腱が伸びたり切れたりすることで,基本的には骨折と同じ,長期間の固定が必要という,誠に説得力のある説明をされたことがありました。

 おもむろに先生は超音波エコーに手を伸ばし,左右の第3関節付近を見せてくれたんですが,右手の組織は見事にぐちゃぐちゃで,こんなものを見せられたら絶望的な気分になります。

 てなわけで,テーピングのやり方を教えてもらい,経過を見ましょうということになりました。

 そうして,腱が動くのを,別の機会に「先生,そういえばなんでこんな風になるんですかね」と尋ねる人もいるとか。例によって手術しか治らないよというと,いやいやそんなら結構ですと言う話になるんだそうです。

 まあその,半年ほど前は右手の握力が20kgほどになっていたので,自分の関節を自分の握力で壊せるほどに回復した(今は50kg近くに戻っています)ことをうれしいと思う一方で,手術しないと治らないような怪我がこんな簡単に起きるものなんだなあと,恐ろしくなりました。

 とりあえずこういうのは初動が肝心。3週間の固定はきちんと守ろうと思いました。

 しかし,悪いことは続くものです。怪我から4日後の夜,晴れが引き始め,痛みも弱まって少しずつ動かせるようになってきた矢先,つい剥がれたテープをそのままにしたまま,食洗機に洗剤を入れたとき,中指に付いた洗剤を弾き飛ばそうと全く同じ動きを,やってしまったのです。

 ブチッという嫌な音がし,引きちぎられたような尖った強い痛みが走りました。これは切れたな・・・ただ事ではないなと感じ,痛みと後悔に,私は絶望したのです。

 せっかく4日間も不自由な生活を続け,良くなっていることを実感しながら,この調子なら実生活に支障がないままおわるんじゃないかと手応えを感じていたまさにその時の絶望ですのでそのショックは大きく,自分の不用心さとその結果起こることの最悪の可能性に震え上がりました。

 それからさらに3日が経過した今,腫れはほとんど引いていて,ぱっと見れば怪我をしているかどうかわからないくらいです。しかし,握ったり開いたりすると痛みがあり,腫れがないのに痛いという状況に,このまま固定するかもしれないという怖さが私を包みます。

 そう,日常生活に支障がなくても,私の人生は指で成り立っています。特に利き腕の指なら事は深刻で,箸は持ててもネジは回せない,ドライヤーは持てても電気ドリルは持てない,ピアノもギターもダメなら,マウスもキーボードもこれまでのように扱えず,重たい大きなカメラと長玉を振り回すことは当然難しくなるでしょう。

 いわば,私の楽しいと思う事の大半が奪われてしまうわけで,そこまで想像するともう絶望するしかありません。なんのために生きているのか,そこまで考えてしまったこともありました。

 まずは,先生の言うとおり,固定をすること,そして3週間でどこまで回復するかをみたいと思います。半年前の右手のしびれは,長い時間がかかりましたがほぼ完全に戻りました。人間の治癒力に驚いたのですが,今回もそうした回復を見せてくれるかも知れません。

 そして,日常生活をおくってみて,やっぱり痛い,不自由だという話なってしまったら,きっと手術を積極的に受けようと思うでしょう。整形外科の分野は,時間の進みが遅いです。私のようなせっかちには気分的にも辛いわけですが,ここで焦りはまずいので,あえて後悔はしないようにして,むしろなにも考えずに三週間を過ごすようにしたいと思います。

 しかし,このくらいで起きる指の脱臼ですが,もっとたくさんの人が経験するものと思っていました。調べてみてもあまり出てこず,手術までやったという話もほとんど見ません。

 年末年始の忙しい時にこんなことになるなんて,ほんと困った話ですが,もうこれ以上悪化させないように,おとなしくしておきたいと思います。

 

 

ギックリ腰からの帰還

 誰が言ったか知らないが,9月の連休を「シルバーウィーク」と,世代間闘争に油を注ぐかも知れない不用意な名前で呼ぶようになり,そこはさすがに休みだからと闘争もお休みに入ったわけですが,私も自分の母親を自宅に招いて,のんびり過ごさせてもらいました。

 一応私は母親を招く「ホスト」にあたるので,食事の用意などは基本的に私の役割で,黙々とこなします。といっても,普段も同じ事をやっているので,一人分増えるだけのことでしたが・・・

 母は別に外に出かけたがるような人ではなく,家にいて孫の顔を見ているのが一番という人ですので,わざわざ私がおかしな企画を立案して外に連れ出し,結局誰もハッピーにならなかったという状況を作るような失敗をせずに済みます。

 実家では母が猫を飼っており,本来なら両者の利害は長期滞在で一致を見る(往復の時間と費用,その他にかかる種々のコストを滞在時間で割った値を最小化する)のですが,生き物がいる以上そういうわけにはいきません。
 
 例年,2泊で帰阪する母親に,今年は3泊にチャレンジしたらどうか,と提案してみました。母親が来ると誰かが必ず体調を崩すという失態を続けていた我々も,今年は体調も良く,楽しい時間が過ごせそうだという見込みがあったことも理由です。

 かくして,3泊して母親は無事に実家に戻っていきました。

 本題はこれからです。

 母親が帰り,連休最大のイベントが終わったことで油断をしたのでしょうか,それとも日頃の疲労の蓄積ゆえだったのでしょうか,木曜日の夕方に,俗に言うギックリ腰に見舞われたのです。

 木曜日の16時30分過ぎのことです。米びつのお米がなくなりそうになっていて,今日炊く予定だった4合に足りません。そこで買ってあった10kgのお米の袋をえっちらおっちら引き摺って,米びつに半分ほど入れました。

 この時鈍くさい私は,何粒か米粒をこぼしてしまったのです。

 いつもならそのまま「もうええわ」と放置するのですが,この日はなぜか気になり,ネズミが出たり虫がわいたりすると嫌だと考え,せっかくだから綺麗に掃除をしようと思い至って(私の場合概ねこういうことが動機となります),ハンディクリーナーで掃除を始めたのです。

 右手に持ったハンディクリーナーを屈んで引き出しに突っ込んで掃除をしていると,何か突然,腰に強烈な刺激がありました。あまりの衝撃に,一体何が起こったのか,わかりません。

 私もギックリ腰は何度かやっているのですが,まるで火箸で焼かれたような熱を感じる事もあれば,ブチブチという音がしたような気になることも,目の前にぱっと閃光が走ることもあるのですが,今回はそういうものは一切無し,ただなにかすごいことが起きた,と言うことだけがわかる感じです。


 しかし,すぐに強烈な痛みが襲い,崩れそうになる体を両手で何とか支えますが,痛みが治まる気配がありません。どうにか支え方を変えたりつかまったりしていましたが,この時すでにギックリ腰になったこと,それもかなり程度が悪いことを腰が焼けたように熱く感じた事と一緒に,理解していました。

 そうこうしているうちに,病院に行っていた娘と嫁さんが帰ってきて,階段を上がってきた娘が私の異変に気が付きました。私はなんとか,背もたれのない椅子に腹ばいになり,腰の力を抜いて移動する方法を見つけ,隣の部屋で横になりました。

 そこからがもう地獄です。1ミリも動けません。少しでも動けば激痛が走ります。そして一度痛みが発生すると,その痛みをカバーすべく背筋に力が入り,そのせいでまた痛みが強まり,さらに背中の筋肉に力が入って・・・を繰り返して,際限のない痛み地獄にはまり込みます。痛くない姿勢に戻しただけでは痛みは引かず,ここで深呼吸をして力を抜くことを覚えて,ようやく痛みから逃げられるようになりました。

 3時間も安静にしていれば,まあトイレに行くことくらいは出来るようになるだろうと,これまでの経験から思っていたのですが,痛みのひどさと経過の悪さから,それも難しいと分かってきたのは,2時間ほど経過してからでした。

 もしかすると,週明けも満足に動けず,私が担当している家事や保育園の迎えが出来なくなってしまうんじゃないかと,焦りが出てきます。

 結果から先に書くと,自分でも驚くほど急激に回復し,週明けにはほぼ痛みが取れ,元の生活に戻ることができました。わずか3日で普段通りの生活にほぼ戻ることが出来たその驚異的な回復速度は私も未体験で,ここに何をやったかをまとめておくと,次の約立つだろうと思った次第です。

9月24日 16時40分頃
ギックリ腰発生。過去最大の痛み,もはや痛い場所もわからない。とにかく仰向けに寝ているしかない。

9月24日 17時30分頃
お医者さんでもらったボルタレンをはる。

9月25日 19時半頃
食事。飲み食いすると当然出るものが出るわけで,食べないつもりだったがそうもいかず,おにぎりとおかず少々を食べる。嫁さんが食べやすいようにと作ってくれたおにぎりの美味しかったこと。ただし水は飲まないが,痛み止めとしていつも飲んでいる頭痛薬のエキセドリンを飲む。

9月24日 20時30分頃
全く改善せず。痛みで動けず,這うのが精一杯。おしっこが我慢できず,やむなく嫁さんに2Lのペットボトルを加工して急ごしらえの溲瓶を作ってもらい,これでなんとな乗り来る。嫁さん曰く「はじめてあなたの下の世話をしたわ」

9月24日 夜
22時頃にもう一度おしっこをとってもらい,そのまま寝ることにするが,痛くない姿勢の範囲が狭く,ちょっとしたことで痛みが走り,その都度深呼吸が必要になるので,ほとんど眠ることが出来ない。当然風呂にも入れず,自分の布団にもいけず,カーペットの上という,健康なときでも背中が痛くなる状況で,寝返りも姿勢を変えることも許されずに,まさに地獄のような時間を過ごす。寝たきりになると,こういうしんどさがあるんだと思う。

9月25日 8時ごろ
家族が起き出して活動開始。私はまだ動けない。しかし,寝返りが打てるようになっていて,朝目が覚めたときの改善具合に驚く。

9月25日 9時ごろ
軽くお菓子を食べ,ロキソニンを飲む。ボルタレンを貼り替えてみるが,大きな改善はなし。

9月25日 9時30分ごろ
意を決してゆっくり動き,中腰のままではあるが立ち上がることに成功。このままよろよろと歩き,3階にあるトイレにいって久々に自分で用を足す。寝室に向かうが,嫁さんの使っている敷き布団が低反発ウレタンのもので,腰が楽という話から,これを借りることにする。

9月25日 17時頃
腰痛の時には最初の48時間はとにかく動かずじっとする,その後は出来るだけ動くようにすると,回復が早いと聞いたことがあり,実戦する。24時間が経過し,少しは動けるようになってくる。ロキソニンのせいで胃と腸を壊してしまい,下痢をするがそれがまた腰には厳しく,大変な思いをする。

9月25日 19時頃
夕食は2階に降りてみんなと一緒に食べられそうだったので,椅子に座って食べる。ただし長時間は無理で,さっさと食べてまた寝室に戻る。この時にはなんとか立って歩けるようになっている。ロキソニンに加えて,ナボリンも飲む。

9月25日 21時頃
シャワーに入る。なんとか体を洗って,そのまま寝る。

9月26日 8時頃
活動開始。なんとこの日は朝から背筋を伸ばして歩くことが出来るようになっていた。しかし,痛みはあるので,無理せず朝食後にすぐ寝る。

9月26日 17時頃
48時間が経過,ほとんど回復。絶っている状態から座ると痛かったり,座っている状態から立ち上がると痛いという状況すら,もうほとんど出なくなっている。
ただし無理はしない。この日の夜から,自分の薄い布団で寝る。

9月27日 8時
活動開始,起き上がるときにも,寝るときにも,もう痛みをほとんど感じる事なく,生活に支障はないレベルに改善。下痢がひどいのでロキソニンをやめる。

9月27日 10時30分頃
自転車に乗って,来週分の食材を買いにスーパーへ。それまで体が不自由だっただけに,自転車で走ることが楽しくて仕方がない。問題なく帰宅。以後は用心しつつ,出来るだけ普段通りの生活をする。

9月28日 7時
出勤。痛みはないが,ずっと寝ていたせいで筋肉が弱っているらしく,電車で立っていると,非常に腰に疲れを感じてだるい。しかし午後には元通りになり,以後はちょっとした痛みを感じつつも,普段の生活に完全に戻る。


 てなわけで,48時間ひたすら寝る,と言う初動によって,急激に状況を改善させることに成功しました。ナボリンも効いているのだと思います。また,消炎剤としてロキソニンが大きな貢献をしているはずで,この結果として徐々に痛い場所が特定出来るようになり,やがて痛みが気にならなくなったのでしょう。

 また,ボルタレンは強い効き目があるとは言え,貼り薬ですので,そんなに深い場所には入っていきません。ボルタレンで痛みが取れたなあと実感出来るようになるには,かなり痛みが弱まっている必要があり,48時間の安静とロキソニン&ナボリンは,そのことにも大きな貢献をしているはずです。

 だから後日,ボルタレンを貼る場所がずれてしまった際に,弱い痛みが一日続いたんだと思います。

 長々と書きましたが,48時間で家の中で生活出来るレベルに復活し,72時間で普段通りの生活にほぼ戻ることが出来るというのは,かなり画期的な成果でした。これまで,この手のギックリ腰はどのくらいで動けるようになるかさっぱり分からず,自分の周りも予定が立たないので,それがますます焦りを生んでいましたが,今回ほどのひどい痛みでも,3日で復活出来ることがわかれば,かなり負担を軽減できるでしょう。

 こういう話をすると,ご自分の「腰痛自慢」する人ばかりになってしまうので,私はあまり周りにこういう話をしませんが,少なくない自慢話を聞いていると,復活するのに2週間とか,1ヶ月とか,そのくらいのスパンでかかったと言う人が多いです。数日という人は,まずいません。

 2日で動けるようになり,3日で復活出来るなら,ギックリ腰ももう怖くありません。私は4回目になりますが,普段から気をつけて生活することも大事ですが,不幸にもギックリ腰になったとしても,慌てず騒がず焦らずいられるようになったことは,大きな転換点だと思います。

 ポイントは4つ。

(1)48時間はとにかく寝る。起きるのはトイレだけ。出来ればトイレもいかない。
(2)ナボリンとロキソニンを毎食後に飲む。
(3)貼り薬はボルタレンを使う。
(4)48時間経過後は無理のない範囲で起きて動く。変にかばわない。

 ちなみに,パナコランも併用していますが,外す段階で電池が切れていることがほとんどで,効いているんだかいないだか,はっきりしませんのでここには書きません。

 

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