ドットサイト照準器EE-1
- 2015/04/28 16:18
- カテゴリー:散財
4月24日に発売され,その筋で話題になっているものがあります。オリンパスから発売された,「ドットサイト照準器 EE-1」です。デジタルカメラのオプションで,ホットシューに取り付けて使うものです。お値段は実売で12000円くらいです。
正直に言いますと,私もこれ,全く知りませんでした。発売当日になって「おお,これは」と思ったくちで,それを昨日ようやく購入したというわけです。
そもそも,「ドットサイト照準器」ってなんじゃという話から始めないといけないと思うのですが,乱暴な言い方をすると,真ん中に印のついた素通しのガラスです。
照準器というだけあり,もともとライフルなど射撃に使われる,あの「ターゲットスコープ」のことです。
一眼レフは,撮影レンズを通した画像をファインダーで見る事が出来るのが最大の特徴であり利点です。被写体を探す「ファインダー」という機能に加えて,フォーカス,被写界深度,画角,フィルターの効果などを,撮影された画像と(ほぼ)同じ物がリアルタイムで確認出来ることが,高い汎用性と機動性を生んでいます。
いやー,レンジファインダーの時代に,超望遠レンズとかマクロレンズとか,厳しかったと思いますよ,本当に。
ですが,やってみればわかるのですが,望遠レンズ,それも300mmを越えたあたりから,あまりに画角が狭いことで被写体を見失うことが増えるのです。見失ったらもう最後,ファインダーを見ながらその被写体をとらえることはもう無理です。
だって,画角が狭すぎて見える範囲が小さく,フレームアウトしたらもうどこに行ったか全然解らないんですから,当然です。
そこで反射的にぱっと顔を上げて,被写体を探すことになるのですが,見つかったところで,それを望遠レンズでつかまえるのがとても難しいです。
だって,肉眼で被写体を見つけたところで,レンズをどの方向にどのくらい向ければいいのか,わからんでしょう。画角が狭い超望遠になればなるほど,困難になります。というより,素人には無理です。
ということは,どこが撮影されているかを示す印がついている,画角が肉眼と変わらないものがあれば,被写体を追いかけることが簡単になりそうです。
ここに気付いた人は,野鳥や飛行機といった「飛びもの」の撮影に心血を注ぐ人達です。さすがだなあと思うのですが,こういう便利なオプションはカメラ専用には存在しないので,先程のライフル用の照準器を流用することが,なかばその世界では常識になっていたそうです。でも,こんなの職務質問されたらいいわけが厳しいですよね・・・
近年,センサのサイズが小さくなっていることもあってか超望遠が手軽に楽しめるようになりましたし,その上ミラーレスやコンデジのように,光学ファインダーを持たず,背面のLCDで被写体を追いかける必要が出てきていることもあり,飛びものに限らず,一般撮影でも便利に使えるということで,少しずつ知られるようになってきていました。
こういう背景もあってでしょう,おそらくカメラの純正オプションとして始めて,オリンパスがこの照準器を製品化したのが,ものEE-1です。
EE-1はオリンパス純正という事ではありますが,別にオリンパスのカメラ専用というわけではなく,ホットシューがついているものなら,何でも使えます。他社の一眼レフ,コンパクトデジカメ,ビデオカメラでもかまいません。噂では,汎用品として使って欲しいという願いを込めて,「OLYMPUS」のロゴが薄めに印刷されているそうです。
EE-1は,素通しのハーフミラーを持っており,斜めから赤色のLEDを照射して,目印を「スーパーインポーズ」してくれます。あくまでハーフミラーですから,画角は変化しません。そして,このLEDによる目印(レティクルといいます)の場所と明るさは,調整が出来るようになっています。
外付けのファインダーでもいいんじゃないの,と思うかも知れません。確かにそれでもいいのですが,2つ問題があります。1つは,どこが撮影されるのか,印がないのです。中央でいいなら話は早いのですが,構図を調整したり,AFの測距点が真ん中以外に設定されていると,もうお手上げです。
しかも,後述しますが,被写体が近い時には大きな視差が生じてしまいます。
2つ目は,外付けのファインダーには,装着するレンズに応じた画角が設定されていることが問題です。前述のように素通しであることが望ましいわけですから,勝手に28mmとか105mmとか,そういう画角に調整して欲しくないわけです。
どんなものかはわかった,私にとってどうかを考えないといけません。
まず最初に考えたのは,PENTAX Q7に純正のKマウントアダプターを介してKマウントレンズを装着した場合の,撮影の大変さから解放されるのでは,という期待です。ざっと5.5倍の焦点距離相当になるQ7では,例えばFA77mmと付けると420mmという超望遠になります。以前これで撮影を試みたのですが,簡単に被写体を見失います。その上フォーカスがマニュアルですので,もう大変でした。
はっきりいって,最初に被写体がフレームに入っているかどうかは,私くらいの素人だともう運次第です。最初に入らないと,モタモタといつまで経っても撮影に入れません。
D800でも,300mmにテレコンを使えば400mmを越えますし,有益なアイテムになるのではないかと思います。
ということで,届いたEE-1を使ってみました。
先に結論を書くと,視差が小さくなる遠くの被写体を,ファインダーから外れてしまうくらい大きくとらえる場合に,革命的とも思える便利さを提供してくれそうです。
まず,視差が大きいと,EE-1を覗いた角度でレティクルの位置が大きくずれてしまうので,使い物になりません。十分遠い,少なくとも10mとか20mとか,それくらい離れた被写体でないと厳しいです。
そのくらい離れた場所の被写体なら,ファインダーでも十分追いかけることが出来るくらい小さく見えるかも知れませんが,被写体そのものが大きいとか,被写体が高速で予測不可能な動きをするとか,あるいは600mmを越えるような超望遠なら,有用でしょう。
思うに,このEE-1という照準器は,光学ファインダーともLCDとも,はたまたレンジファインダーとも違うもので,構造や原理の違い以上に,撮影手法を新しく増設するようなものだと,とらえるべきです。
ファインダーにせよ,LCDにせよ,構図とフォーカスを確認する目的が必ずあります。しかし照準器には,それらを確認することができません。構図を見るには画角が一致しておらず,フォーカスを確認するにはレンズを通した画像が出てこないからです。
ということは,構図については「ど真ん中にとらえる」ことをまず考え,フォーカスについてはAFを信じる,ということになるのではないかと思います。撮影者がやることは被写体を追いかけるだけ,それ以外は機械任せにするということです。
ファインダーを見ずにスナップする撮影方法がありますが,これに並ぶ新しい撮影方法と思える理由が,ここにあります。
そして,この撮影方法が使えるのが,超望遠で遠距離の被写体をとらえるとき,にほぼ限定されてしまうということです。
今のところ,この機材に出番はありません。しかし,いずれ出てくるでしょう。こういうのは,長く売られて定番化するという事が少ないでしょうから,買えるうちに買っておくのが望ましいです。