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2018年12月の記事は以下のとおりです。

BSプレミアムが映らない

 先日,PT3の動作確認をしようと思ってTVTestを立ち上げた時のことです。

 BSプレミアムだけ受信出来ないという現象がでました。他のチャンネルは全く問題ないし,EPGも取得出来ています。

 ほらそこ,BS再編の問題だろ,と言わない。

 それは5月末までに済んだ話で,11月にBSがようやく映るようになったうちは,すでに対応済みです。12月6日にはBSのすべてのチャンネルが映っていることを確かめているので,誰かがいじらない限り,これが原因でダメになることは考えにくいです。

 なにせBSプレミアムだけ映りません。エラーカウントがどんどん増えていきます。別の部屋にあるテレビ(レグザ)では問題なく映っていますし,アンテナレベルも十分です。

 google先生に聞いてみても「そりゃ再編だろ」と決めつけられてしまい,全然有益な上が出てきません。

 チャンネルの設定やスキャンに失敗している,PT3が壊れた,などなどいろいろ考えましたがどれも可能性は低そうで,唯一思い当たる原因があるとすれば,レベルが高すぎるという問題です。

 BSにブースタを入れる前はきちんと映っていましたから,ブースタを入れてれべるが上がった結果映らなくなると考えれば,レベルが高すぎると考えるのが自然です。

 他のチャンネルはギリギリ映っていて,BSプレミアムだけ限界値を超えたという可能性も無理がありません。

 ここでブースタのゲインを下げてみればすぐに答えが出るのですが,あいにく屋外ですし,暗くて寒い中で作業をゴソゴソやると危険ですし通報されるかも知れません。

 アッテネータがあればよかったのですが,それもあいにくありません。

 ならばということで,UHF専用の室内用ブースタをBS帯域のアッテネータ代わりに挟み込んでみます。このブースタ,高周波数帯のBSが映りにくくなる程度に減衰することがわかっているので来ないの用途にはもってこいでしょう。

 果たして結果は変わらず,BSプレミアム以外は問題なく,BSプレミアムだけダメでした。うーん,すっきりしません。

 そこで,もともと75Ωの高周波用ステップアッテネータを改造して600Ωのオーディオ用にしたものを探しだし,無理矢理挟み込んでみました。インピーダンスは全然あってないし,GHzでは損失が大きすぎて,ステップアッテネータとしては機能しませんが,スイッチによる減衰量の変化は起こるでしょう。

 結果ですが,やっぱりBSプレミアムだけ映りません。おかしい。

 こうなると,もうPT3やPCを疑うほかなくなってしまうのですが,レベルを大きく減衰させた時のエラーカウントの表示が,BSプレミアムのそれとほとんど一致している事に気が付いて,ひょっとするとレベルが低いんじゃないかと気が付きました。

 PT3へは,3分配器を経て分波器を通り入力されています。分配器からのケーブルが不良かも知れないと別のチューナー(FSUSB2)に繋がっているケーブルに差し替えて見たら,BSプレミアムがブロックノイズが出まくっている状態で映っています。

 チャンネル設定も大丈夫で,PT3もおそらく壊れていない事がわかったのですが,ケーブルで状況が変わるというなら,配線をやり直すまでの話です。

 そこで配線を見直したのですが・・・え,配線間違ってるやん。

 どういう理由で間違えたのかわかりませんが,入力と出力を間違って繋いでいます。入力端子がPT3に繋がって,出力がアンテナに繋がっています。BSプレミアムがちらっと映ったのは出力を繋いだ場合でした。

 そういえば,ブースタをいれて信号をパワーアップしたことをきっかけに,2分配器から減衰が大きい3分配器に交換し,FMチューナに繋ぐようにしたのでした。これがブースタの設置と同じ日だったので,ブースタを入れてから映らなくなったと勘違いをしたのでしょう。

 配線を直してやると,BSプレミアムも含め,すべてのチャンネルが綺麗に映るようになりました。アンテナレベルも強力になっています。ついでにいうとFMチューナのレベルもかなり改善しています。

 私は分配器の入出力を間違うと,全然映らなくなるもんだと思っていましたから,特定のチャンネルだけ映らなくなるなんてことがあるとは,考えつきませんでした。

 少しケーブルを整理し,BSでも問題がない程度のケーブルに交換するなどして,とりあえずこの問題は解決。予備のPT3に交換するという大げさなことを始めることも考えていましたので,ここでわかってよかったです。

 つくづくこわいのは,高周波はミスがあってもなんとか動いてしまう事があることで,こんなものかと思ってしまうとミスが見つかりにくくなります。本来ならこうあるべきだという正解をしっていればミスも見つかるのですが,それは経験で稼ぐものでもあるわけで,そのあたりが高周波やアナログの難しさなんだろうと思います。

 しかし,部屋が散らかり放題で,足の踏み場もありません。冬休みは片付けに費やされる予定です・・・トホホ。

 

右手の中指を脱臼

 右手の中指を脱臼しました。

 こんなことがあるのかと思ったのですが,なった経緯がうまく説明出来ません。直接の原因は,右手の親指で,中指を内側に強く曲げたからなのですが,ではなぜそんなことをしたのか,と言われると,良く覚えていないんです。

 たぶん,料理中にゴミか何かが中指について,これを払おうと中指を弾くように,親指を中指の第2関節あたりにひっかけて,曲げたのです。

 そしてピンと中指を弾こうとしたときに,なぜか親指が滑ってくれず,曲げられたまま中指が伸びようとして,ここで激しい痛みが出たというわけです。

 この時ですが,中指の第3関節の上を腱が曲がって避けて通るように見えて,そのまま強く引っ張られた時に強い痛みが出たように記憶しています。

 3時間程度の間に右手はひどく腫れ上がり,中指も曲がっていました。痛くて動かす事が出来ず,これはただ事ではないなあと思わせるに十分でした。

 一晩経って治まる方向に向かってなければと病院に行こうと思って寝たのですが,果たして状況は変わらないか悪くなっている感じです。「なぜすぐに来なかったのだ」と怒られるのも嫌だったので,とりあえず病院に行くことにします。

 先生は,脱臼していると言いました。腱が曲がって避けて通ることもある話だということで,私の見間違いではないという話です。ちゃんとした診断名は,ややこしいので覚えられませんでした。

 いわく,隣の関節との間にある筋が伸びきってしまっていて,完治するには手術が必要とのこと。冗談じゃない,そんな大ごとになっているなんて信じられない。

 まあ,この先生はいつも「手術だ手術」と,すぐに手術をしたがる先生なので,真に受けるとこっちが疲れてしまうんですが,よくよく聞いてみると,腱が曲がらないようにしている筋が伸びたので,今後は腱が曲がってしまうようになる,なのでその時に違和感があったりするけど,気にならないようならそのままで過ごす人も多い,といいます。

 要するにあれですね,実生活に支障がなければほっといていいんですね,と聞けば,まあそうですねとお返事。

 ただ,3週間は固定が必要で,固定には人差し指を副え木にして,テーピングを行うことと,指示がありました。3週間!そんなに!

 以前別の事(この時は右肩の脱臼でした)で先生に言われたのは,脱臼というのは骨と骨を繋いでいる腱が伸びたり切れたりすることで,基本的には骨折と同じ,長期間の固定が必要という,誠に説得力のある説明をされたことがありました。

 おもむろに先生は超音波エコーに手を伸ばし,左右の第3関節付近を見せてくれたんですが,右手の組織は見事にぐちゃぐちゃで,こんなものを見せられたら絶望的な気分になります。

 てなわけで,テーピングのやり方を教えてもらい,経過を見ましょうということになりました。

 そうして,腱が動くのを,別の機会に「先生,そういえばなんでこんな風になるんですかね」と尋ねる人もいるとか。例によって手術しか治らないよというと,いやいやそんなら結構ですと言う話になるんだそうです。

 まあその,半年ほど前は右手の握力が20kgほどになっていたので,自分の関節を自分の握力で壊せるほどに回復した(今は50kg近くに戻っています)ことをうれしいと思う一方で,手術しないと治らないような怪我がこんな簡単に起きるものなんだなあと,恐ろしくなりました。

 とりあえずこういうのは初動が肝心。3週間の固定はきちんと守ろうと思いました。

 しかし,悪いことは続くものです。怪我から4日後の夜,晴れが引き始め,痛みも弱まって少しずつ動かせるようになってきた矢先,つい剥がれたテープをそのままにしたまま,食洗機に洗剤を入れたとき,中指に付いた洗剤を弾き飛ばそうと全く同じ動きを,やってしまったのです。

 ブチッという嫌な音がし,引きちぎられたような尖った強い痛みが走りました。これは切れたな・・・ただ事ではないなと感じ,痛みと後悔に,私は絶望したのです。

 せっかく4日間も不自由な生活を続け,良くなっていることを実感しながら,この調子なら実生活に支障がないままおわるんじゃないかと手応えを感じていたまさにその時の絶望ですのでそのショックは大きく,自分の不用心さとその結果起こることの最悪の可能性に震え上がりました。

 それからさらに3日が経過した今,腫れはほとんど引いていて,ぱっと見れば怪我をしているかどうかわからないくらいです。しかし,握ったり開いたりすると痛みがあり,腫れがないのに痛いという状況に,このまま固定するかもしれないという怖さが私を包みます。

 そう,日常生活に支障がなくても,私の人生は指で成り立っています。特に利き腕の指なら事は深刻で,箸は持ててもネジは回せない,ドライヤーは持てても電気ドリルは持てない,ピアノもギターもダメなら,マウスもキーボードもこれまでのように扱えず,重たい大きなカメラと長玉を振り回すことは当然難しくなるでしょう。

 いわば,私の楽しいと思う事の大半が奪われてしまうわけで,そこまで想像するともう絶望するしかありません。なんのために生きているのか,そこまで考えてしまったこともありました。

 まずは,先生の言うとおり,固定をすること,そして3週間でどこまで回復するかをみたいと思います。半年前の右手のしびれは,長い時間がかかりましたがほぼ完全に戻りました。人間の治癒力に驚いたのですが,今回もそうした回復を見せてくれるかも知れません。

 そして,日常生活をおくってみて,やっぱり痛い,不自由だという話なってしまったら,きっと手術を積極的に受けようと思うでしょう。整形外科の分野は,時間の進みが遅いです。私のようなせっかちには気分的にも辛いわけですが,ここで焦りはまずいので,あえて後悔はしないようにして,むしろなにも考えずに三週間を過ごすようにしたいと思います。

 しかし,このくらいで起きる指の脱臼ですが,もっとたくさんの人が経験するものと思っていました。調べてみてもあまり出てこず,手術までやったという話もほとんど見ません。

 年末年始の忙しい時にこんなことになるなんて,ほんと困った話ですが,もうこれ以上悪化させないように,おとなしくしておきたいと思います。

 

 

地デジとBSを安定して受信する作戦

  • 2018/12/10 10:16
  • カテゴリー:make:

 さて,さらに良好な受信状態とシンプルな配線で高い信頼性を得るために,アンテナまわりの改善を進めているのですが,ようやく決着しました。

 前回までは,地デジとBSを外で混合し,引き込んだケーブルに地デジブースタと15Vの電源を挟み込んで暫定運用としました。

 この問題点は,地デジブースタがBSを減衰させるので高周波帯でレベルが大きく低下して映らなくなる,電源が別の地デジブースタの付属品なので供給能力が低く,BSコンバータを安定して駆動出来ない,の2つです。

 そこで,地デジブースタを広帯域増幅器に置き換えて,地デジもBSもまとめてブーストする作戦を考えました。

 以前1000円くらいで買ってあったDC~2GHzの広帯域アンプ基板を引っ張り出し,地デジブースタの代わりに入れます。すると,地デジもBSもレベルは上がるのですが,ノイズも多いらしくC/Nが絶望的に稼げません。

 そこでこの案はボツ。基板上のMMICをかつて秋月で買ってあった高性能なSGA-4586に載せ替えてみます。SGA-4586は4GHzまでの動作を謳うMMICで,ゲインも高く,NFも優れています。

 すると,まずまずのレベルとC/Nです。これならいいんじゃないかと手応えを感じ,以前作ったFMブースタと中身を入れ換えました。ついでに15Vの電源を貫通するような仕組みもいれて,BSコンバータはテレビから給電されて動くようにします。

 完成して設置をしたのですが,全然映りません。

 15VのショートやMMICの破壊など,いろいろなミスが重なって動かなかったのですが,どういうわけだか期待された信号レベルとC/Nを出す事が出来ず,このアイデアはボツになりました。悔しい。

 元に戻してつくづく考えたのですが,挟み込んでいる地デジブースタがBSの信号を減衰させ,15Vの電源を通さないことに問題があるんだからとシンプルに考えた結果,地デジブースタを地デジアンテナの直下に置く事にしました。

 電源が付属していたという地デジブースタは屋外設置用のもので,ゲインは小さめですがNFが小さく,C/Nは稼げそうです。しかし直下に置くものなので,高所での無理な姿勢による作業という大きなリスクがあります。

 しかし,もう家の中に閉じこもっていてはいけません。私は外に飛び出し,ブースタを取り付けて家の中に戻ってきました。

 しかし,地デジが映りません。混合器の電流通過スイッチをOFFにしていたせいで動かなくなっていました。スイッチをONにして電源を通します。

 すると無事に地デジもBSもまずまずのレベルで映るようになりました。電源供給能力の高いテレビからの15Vに切り替えて,これでシステム完成,と喜んでいました。

 しかし,どうも時々別の部屋に設置してある地デジPCが録画に失敗するようになりました。そうです,どうもテレビの15Vは,自分の電源がOFFになると15Vも止めてしまう仕様になっていたのでした。

 説明書を読んで常時給電にできないか調べてみましたが,出来そうにありません。暫定的に地デジブースタ付属の電源を挟み込みましたが,これは給電能力が低くて,危険です。

地デジPCからも電源を供給すればよいのですが。PT3からの供給にも不安があるし,それにテレビもPCも止まれば動かなくなるというのでは根本解決にはなっていません。

 それに,15Vの供給が2箇所から同時に行われるケースは,本当に大丈夫かわかりません。逆流防止用のダイオードがはいっていないなら,電圧印加を検出して自分の電圧を止める仕組みが必要ですが,そんな仕組みが貼っているとはどこにも書かれていません。

 そこで,電源供給のための電源器を探してみます。安いものは2000円ほどでありますが,ちょっと信頼性に不安があります。15Vで500mAほど供給出来ると安心なのですが,そうしたものはやはり5000円を超えます。

 実は強力な地デジブースタとセットの方がちょっと安いくらいとわかりましたが,さらに調べると,BSも地デジもまとめて強力にブーストするブースタが9000円で出ている事を発見しました。

 BSももともとレベルが高くなく,BSの受信機を増やせば厳しくなることは目に見えていたので,この機会に地デジもBSもしっかり増幅して,受信機の増設にも耐えられるようにしておくことに方針変更です。

 話が大げさになってきましたが,このブースタ「GCU433D1S」は,混合器に43dBという強力なブースタを内蔵した屋外設置対応品で,これを今の混合器に置き換えてやればすべての問題が解決しそうです。

 作業は屋外なので日中しかできず,土日にやるしかないのですが,先日ようやく作業がおわりました。

 結果ですが,信号レベルを上げるとC/Nが思った以上に悪化しますし,BSでは低い主波数より高い周波数の方がゲインが高いようで,低い方で上限ギリギリに合わせると高い方でオーバーしますから,何度かゲイン調整のために外と中を行ったり来たりする羽目にはりました。

 この際だからと地デジアンテナの向きも再調整し,気になる事は全部片付けてゲインの調整を行ったのですが,結果としてはレベルはしっかり稼げてもC/Nはそんなに改善されず,悪くないと言う程度におさまりました。

 分配器を1つ追加してもしっかりとレベルは稼げていますし,C/Nも安定していることをみると,ブースタの設置は概ね期待通りであったと思います。

 この系に,FMアンテナからのVHFもFMブースタで増幅してから混合器で混ぜてやり,分離せずそのままFMチューナーに突っ込んでいますが,分配器を増やしたせいか少しレベルが低下しています。しかし,チューナーのRFプリアンプをONにすれば問題なし。ノイズも小さく,良好です。

 振り返ってみれば,新築時に地デジだけ見れればいいやと,壁面アンテナを付けてもらって,最小限度の部屋に分岐しただけの最安のシステムだったものが,BSアンテナ設置にブースタによる送り出しとLNB電源の常時給電と,フルシステムになったのでした。

 BSアンテナも,もしかすると屋根裏に置く事になるかもと,少しでも高感度を期待出来る50cmを選びましたが,こうやって屋外に出し,しかもブースタを付けるなら安い45cmでも全然大丈夫だったはずで,これは失敗だったかも知れません。

 ブースタも,43dBのゲインを持つ,UHFとBS/CSに対応したものは本来3万円位するものですし,ゲインを調整出来る仕組みも本格的なものです。これが9000円だったのですからそこは満足で,それは結果にも現れています。

 これでしばらく大丈夫でしょう。そのうち,電波をアンテナでつかまえてテレビを見るなんて話がなくなると思いますし,作業そのものはなかなか楽しかったですし。

 これで年末年始は,テレビ漬けです。

 

 

もしかすると4K放送は流行るかもしれない

 さる12月1日,4K/8Kの本放送がスタートしました。放送技術史に残る大きな出来事だと思います。

 ほんの10年ほど前までアナログ放送を日常的に見ていたことを考えると,とても感慨深いものがあります。

 私が記憶に残っている放送技術の進化は,まず音声多重/ステレオ放送からでした。これはその必然性がさっぱりわからず,テレビも対応しないことから,長く体験することなく過ごしていました。

 中学生の時,生まれて初めてプリント基板をエッチングで作ったのが,音声多重アダプターだったことを思い出します。

 そこからしばらく間が開き,衛星放送がスタート,特にBモードステレオがCD以上のデジタル音声である事に驚愕しました。

 その後アナログハイビジョンがなんとか離陸,クリアビジョンはその恩恵をほとんど受ける事なく過ぎ去っていき,CS放送による多チャンネル時代がやってきます。

 やがて衛星放送は効率の良いデジタル放送に移行し,デジタルハイビジョン放送が始まります。そして日本独自のアナログの頂点であったアナログハイビジョン放送は終了しました。

 この流れが地上波放送にも押し寄せ,地上アナログテレビ放送は地上デジタル放送に,かなり無理矢理に移行していきます。かくして,VHF帯からテレビ放送が消え失せたのでした。

 そしていよいよ2018年12月に,ハイビジョンを遙かに超える解像度の4K/8K放送が衛星放送でスタートしました。

 こうしてみると,近年の進歩の速度が速いと言うことと,技術的な飛躍が大きくなっていることに気が付きます。放送は手元の機器を入れ換えれば済むと言うものではなく,インフラが入れ替わる必要があり,台数も費用も全く異なる送信側と受信側が歩調を合わせる必要があるところに難しさがあります。

 それだけにシステムの更新には大きなエネルギーが必要になり,そうそう気軽に変更したり修正したい出来ませんから,システムには高い完成度と将来性が求められます。

 こんなことをいう人は少ないかも知れませんが,アナログ放送の仕組みとして長く君臨したNTSCは実に50年も使われ続け,我々の日々の生活に根を下ろしていました。

 白黒テレビとの高い互換性と必要にして十分な性能を両立し,アナログ故の「無駄」な部分を適当に残していたことで機能拡張も可能になるなど,長生きするシステムの条件を満たしていました。

 当時としては最先端の技術で組み立てられ,電子工学を学ぶ人間が一度は完全理解に苦労するNTSCは,成功したシステムの最たる例であったと思います。

 まあ,それを言い出すとAMラジオ放送は100年の歴史があり,戦前のラジオは今でも立派に放送を受信出来るわけですから,それには全然かないません。ただ,AMラジオがまだまだ個人発明家や勘と経験に頼った技術開発が色濃い時代に完成したものであるのに対し,NTSCは数学的なアプローチで情報を以下に効率よく伝送するかを解決した技術であって,その緻密さと完成度は雲泥の差です。

 ゆえに,AMラジオは手巻きのコイルとコンデンサ,ダイオードとイヤホンで作れるのに対し,NTSCはとても手作り出来るようなものではありませんでした。統一された規格によって大量生産が行われ,コストダウンが進んで行くことが普及の条件となるという,企業による研究開発と大量生産が前提となったまさに戦後型のシステムだと言えると思います。

 前置きが長くなりました。

 4K/8K放送の特徴はあちこちで書かれているので,わざわざここで書こうとは思いませんが,初めてインターレースによる400ライン表示を見たときの感動や初めてハイビジョンを見た時の感激を思い出すと,やはりテレビは解像度であって,チャンネルが増えるとかサラウンド音声になるとか,そうしたものよりもずっと直感的で派手な変化ゆえ強く訴えてくるものがあるんじゃないかと,密かに期待していました。

 この手の官製祭りには冷ややかで,のらないか,あるいは様子を見てようやく重い腰を上げるのが常な私ではありますが,夏に4Kチューナーを内蔵したテレビに偶然買い換えたことをきっかけにして,今回の4K祭りには最初からのってみたのです。

 東芝のレグザ55BM620Xに買い換えたのは,気に入って使っていた日立の43型プラズマの画面に致命的な傷を付けてしまったことがきっかけでしたが,予算内でできるだけ大きな画面のレグザを買おうという方針で選んだに過ぎません。

 下手をすると58型の型落ちを選んでいたかもしれず,これがすんでのところで売り切れてしまったことも,この機種になった理由の1つです。

 そもそもBSも見ていない私が,4Kチューナー内臓を理由に選ぶ事もないわけで,その意味では全く偶然だったといっていいかも知れません。

 もっといえば,テレビにはなにも期待しておらず,毎日とりあえずニュースと天気予報が見られればそれでよいと思っていたので,わざわざ手間をお金をかけて他の番組を見る気も最初からありませんでした。

 しかし,55型にしたことで,ちょっとテレビを見るのが楽しくなってきました。4Kパネルにdot by dotで表示される画像は綺麗だろうなあと言う期待もふくらみ,BSアンテナさえ付ければ4Kを見る事ができるなら,この際BSも見られるようにしたらどうかなあと思うようになったのです。

 実際,NHKのBSは面白い番組も多く,見たいなと思ったことも何度かあります。これはよいきっかけかも知れません。

 しかし,うちはもともとテレビを重視しない家です。BSはアンテナも配線もありません。

 ということで,11月の頭からBSを見るための設備を揃えることを始めたのです。

 電気屋さんに頼む,というのは一番楽で確実でしょうが,お金もかかるし立ち会いの時間も確保しないといけません。お金はともかく時間がとにかく厳しい現状では最善策ではありません。

 加えて,他人が家に上がり込んでくるという心理的負担も大きいです。

 そこで,この手の話は自前でなんとかすることにしています。

 そうなると,解決すべき難問は,BSアンテナの設置と,ケーブルの引込です。

 まず考えたのは,bSアンテナを屋根裏に置く事です。こうすれば危険な屋外の高所での作業がなくなり,ケーブルの引込も必要はなくなります。

 50センチとやや大きめのアンテナを購入し,屋根裏で受信を試したところ,受信は出来てもほとんど映らないくらいに微弱で,使い物になりません。

 屋根裏はさっさとあきらめ,今度はベランダに出します。ベランダの手すりに取り付ける方法は景観上もうれしくないので,エアコンの室外機の上に置きます。BSは横と言うより上から電波がやってきますので,アンテナを上に向ければ受信出来ますから,案外室外機に置くというのは良い方法なのです。

 これだとバッチリ受信レベルを確保出来ます。設置はこれで解決です。

 次にケーブルの引込です。

 まずBSのケーブルを地デジアンテナの引込口から引っ張り込む作戦を立てて実行しましたが,そんなに簡単にいくはずもなく断念しました。

 そこで,地デジとBSを混合する方法を考えます。混合器を設置する場所がないとか,地デジアンテナは片手を延ばしてやっと届く場所なので,高いところで怖い思いをするとか,心配な事はありつつもどうにか混合ができました。

 テレビに分波器を用意してBSと地デジを分離し,BSコンバータに15Vを給電する設定を行うと,無事にBSと4K試験放送が見れるようになりました。レベルも十分です。

 しかし,地デジのレベルが低いです。少ないとは言え金堂と分離の際に損失があり,これが顕在化するくらい,もともとのレベルがギリギリだったようです。

 そこで,手元にあった地デジブースタをBSと地デジが混合したケーブルに挟み込みます。すると地デジは満足なレベルになりますが,BSがまったく映りません。

 冷静に考えると,15Vの電源がこのブースタで通過せず,BSコンバータが動作しなくなっている判明しました。そこで,別の地デジブースタに付属していた電源部をさらに挟み込み,BSも映るようになりました。

 しかし,BSのレベルが下がっています。地デジブースタと電源を通るときに減衰するのでしょう。特にBSの20ch以降という高い周波数で顕著で,釣りチャンネルなどはブロックノイズが出まくっています。(別に見ないからいいんですが)

 幸い4Kではレベルが稼げているのでこのままで一度作業を終えて,12月1日の放送開始を迎えました。

 まず4K。番組そのものが今ひとつだったりするので大した感想もないのですが,それでも4Kの解像度は想像以上です。画面に映っているという感じではなく,目の前にあるという感覚に囚われる時が,時々でてくるほどです。

 クラシックのコンサートなどは演奏者の顔と楽器がちゃんと見えるようになり,以前の放送のようにカメラの切り替えが必要なくなり,自分が注目するパートと楽器をずっと追い続けることが出来るようになりました。これはすごい進化です。

 あと,暗部が潰れない,色がはっきり出ることも素晴らしく,55型の大画面でも破綻が少ないので,画面に近づいて見ることができます。

 そうすると,視野のほとんどが画面という映画のような体験が出来るようになるので,その没入感に驚きを隠せません。

 なるほど,それまでの24bitカラーでははく,実に30bitカラーの情報量は確かにすごい。H.265というコーデックも優秀なのか,画像の破綻も少ないです。

 考えてみると,日本のデジタル放送は2世代前のMPEG-2が使われています。コーデックの世代は,圧縮率という「効率」で語られることが多いですが,圧縮率以外にもより自然に見えるような工夫が成されているので,コーデックは世代が新しいほど美しく自然に見えるものです。

 その点で,4K/8KのH,265はMEPG-2から2世代も進んでいます。私はこの点だけでも,4K/8K放送の進化は一足飛びだと言って良いと思っています。


 BSも見てみると,画像も美しいし,奇をてらわない楽しいコンテンツが一杯でした。4K//8K放送のために,BSは事前に前に再編が行われていますが,この時1920ピクセルの解像度が1440ピクセルに画素数が大幅に減らされていて,地デジ並みとなっています。

 伝統的に画質の優位性を謳っていたBS放送が地上波と同じではダメだろうと思っていましたが,唯一NHKのBSプレミアムだけは1920ピクセルを維持していて,さすがに一目でわかる違いがありました。

 今年は,年末年始向けのテレビガイド雑誌の売れ行きが好調なのだそうです。

 テレビ離れが叫ばれて久しく,今やテレビを見るのは年寄りばかりと揶揄されていますが,先日の受信料値下げの根拠が受信料収入の増加が見込めることだったりして,実はテレビに人が戻ってきているんじゃないかと思います。

 4K放送は価格も手ごろですし,出費以上の価値が得られたと感じるだけの感激があります。3Dテレビは店頭でパッと試せない事もあって体験もせずに終わった人も多いと思いますが,4Kは違います。店頭でちらっと見ればもうその違いは歴然です。

 次にテレビを買い換えればもれなく4K放送が見られるようになっていることを考えても,4K放送は想像以上にヒットし,普及が進むかも知れません。

 さて,話を私に戻すと,地デジのレベルが低く,BSの高周波帯の減衰が大きい現状は,すでにちゃんと映らないチャンネルも出ているし,アンテナを接続する機器を増やすと直ちに影響が出るくらい,ギリギリのレベルです。

 このまま放置すると,忘れた頃に問題を引き起こす可能性が高いです。現状は暫定として,より完璧な対策をやっていくことになるのですが,この話は後日。

 

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