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2013年04月の記事は以下のとおりです。

ようやく現れたGR1の正統後継者

  • 2013/04/19 10:30
  • カテゴリー:散財

 リコーのGR1といえば,1眼レフを凌駕するレンズ性能と,マグネシウム合金を使って小さく,軽い銀塩カメラの名機です。スナップシューター御用達で,そのコンセプトは7年前に登場したGR Digitalシリーズに受け継がれています。

 かくいう私も,GR1の初代モデルを新品で買った人です。後に嫁さんとなる人がドイツへの出張をひかえており,ここに持って行くカメラとして思い切って買いました。

 当時の私はF3の中古を買い,それまで使っていたAsahiPentaxSPのようなレンズもない,オプションもない,自動化も複雑な操作も全然ないという,極めて「閉じた」カメラに慣れた体を,楽しみながらF3に合わせていた時期で,毎週のように新宿のカメラ屋めぐりをしていました。

 今はなき西新宿のカメラのドイで買ったGR1は,私自身の海外出張にも持って行きましたし,一眼レフを持ち込めないような場所で重宝したものです。それに,ポジフィルムを使ってみようと思わせるだけの,画質に対する信頼感がありました。

 GR1が私にとって完璧と思う理由はいくつかありますが,良く写るコンパクトカメラであることはもちろんのこと,絞り優先AEがあり,被写界深度の調整が撮影者の意志で出来る事が一番大きく,バックフォーカスの制約がないコンパクトカメラだからこそ出来た高性能な28mmレンズを自由自在に使いこなせる事が購入動機でもありました。

 パトローネの厚みギリギリまで薄くなった本体,マグネシウム合金による軽量化など,特筆すべき点はいくらでもありますが,やはりこのレンズをこの価格で使えることが大きいと思います。

 ただ,GR1のレンズは,そんなに解像度重視ではない印象があります。周辺光量も結構落ちますし,絞りを開けてボケを積極的に生かそうというレンズでもありません。カメラ全体としてみた場合も,AFの性能は今ひとつですし,レスポンスも良くないです。ですから,撮影していて楽しいカメラかと問われれば,そういうことはないと思っています。

 ですから,GRというコンセプトを継承してGR Digitalが登場した時も,いわゆるコンパクトデジカメがベースになっている以上,過度な期待は出来ないだろうとそんな風に考えて,それほど興味を持たずに来ました。

 そもそも私がGR1を買ったのは,F3を持ち込めない場合でも,制約の中で最高の写真を撮ろうと考えたからです。むろん,写真は被写体や撮影者の技量が支配的なわけですが,それはそれとして,ハードウェアの性能が被写体を殺してしまうような事があったら,とても残念でしょう。

 GR Digitalは,誤解を恐れずに言うと,GRの名前を借りた,ただの高価なコンデジです。なにより,センサーのサイズが一眼レフと違いすぎます。

 GR1は35mmフィルムを使って,あの画質とあのサイズを実現していました。GR Digialは画質の良さは認めますが,センササイズによって制約されるものは,どうしたって越える事が出来ません。

 ですから,せめてAPS-C,出来ればフルサイズのGR Digitalが出てくれば,それこそ真のGR1の後継といえるのではないかと,私はずっと待っていたのです。

 そして,ようやくGR1のデジタル版が登場してくれました。その名もGR。

 いやー,これはいいです。

 まず,APS-Cサイズのセンサは約1600万画素でローパスレスです。いろいろ憶測は飛んでいますが,K-01やK-30と同じセンサというのがもっともらしい噂です。

 レンズは35mm換算で28mm,F2.8というGR伝統の画角と明るさです。GR Lensと名乗るだけあり,その描写力は決して我々を裏切らないでしょう。MTF曲線も今どきのレンズらしく解像度重視で,最短距離が10cmと言うのも素晴らしいです。28mm相当でこれだけ寄れると,ぐっと表現の幅が広がります。

 9枚絞りにNDフィルターまで装備,シャッター速度は最高で1/4000秒,絞り開放から1/2000秒までいけるというのも,このレンズを骨までしゃぶって下さいと言わんばかりです。

 大きさは初代GR1と同じ。GR1が銀塩だったことと操作系が極めてシンプルだったことを考えると,APS-Cとはいえ,このサイズに収まっていることは驚異的です。

 すでにこれだけでGRが欲しくなるわけですが,起動やAFが高速だったり,AF-Cモードを搭載し4コマ/秒の連写が出来る事など,その高速性の高さはスナップシューターを意識しているようです。またペンタックスの伝統であるTAVモードを装備していることも,ペンタックスを買収したことのメリットでしょう。

 ISO感度も25600まで設定可能ということで,冷静に考えると,スナップで人の視力を越えた写真が撮れるというのは,凄いことです。

 これで値段は実売9万円です。GR1が9万円だったことを考えると,決して高くはないと思います。

 ということで,非常に魅力的なGR。横に長い独特の形状のシャッターボタンを見ると,ようやくGR1を世代交代させることが出来るといううれしさのあまり,予約をしてしまいました。どうせ買うなら早い方が得だし,最近のデジカメは時間が経過したからと言って必ずしも値段が大きく下がるわけではないからです。

 話がちょっと逸れますが,D800も私は昨年6月に268200円で買いました。あれから10ヶ月経過しましたが,今の値段は228000円程度です。4万円ほどの値下がりは結構大きいなものではありますが,この10ヶ月で撮った写真を考えると,買って良かったと思っています。

 GRは,予約者に対してレンズの周りに取り付ける赤いリングをプレゼントしています。私は予約で買いました,熱烈なファンですよ,と言うラベルを配っているわけですが,案外この赤が似合わないので,正直どうかなと思います。

 楽しみなのは先着5000名のバッグのプレゼントです。この手の販促品はチャチか,あるいは小さすぎるか大きすぎるかで実用性は低かったりするのですが,今回のバッグはなかなか良さそうです。ちょうど今使っているカバンが古くなってきているので,これに置き換えようかと思っています。

 広角は寄れる28mmが一番で,被写体との距離で撮影者の意志をこれほど写真に出来る画角はないと思っていますが,GR1こそそのための道具でした。あれから17年を経て,ようやくGR1はデジタル化を果たしたわけで,今からとても楽しみです。


 

見せてもらおうか,パナソニックのGOPANの性能とやらを

  • 2013/04/15 17:06
  • カテゴリー:散財

 
 米からパンを作る事が出来るGOPAN。三洋電機が発売した画期的なホームベーカリーで,米からパンが出来るという唯一無二の特徴もそうですが,普通のパンはもちろん,お餅をついたりケーキが出来たりと,私が望むホームベーカリーの性能をほぼすべて満たしていたため,初代モデル発売と同時に速攻で購入しました。当時かなり話題になり,品薄になったことも記憶に新しいところです。

 当時5万円くらいしたと思うのですが,大きさ,重さに驚き,そして米を砕くミルの音に腰を抜かしたトンデモない商品で,この爆音で発売できるのは三洋だからだろうなあなどと,その牧歌的企業文化に羨望の眼差しを送ったものです。

 購入後半年ほどで一度壊れてしまい,電話をすると新品交換になりました。それ以後は故障知らずで,爆音に注意しながらも週末の米パン作りは,私の習慣となっていました。

 さすがに2年以上も使っていると,ミルの付いた羽根が怪しくなり,固着して動かなくなったり,ミルの回転が不安定になったり,パンケースのシャフトが固着してしまったりと,ここ半年ほどはまさに騙し騙し使っていました。

 それでもさすがにノウハウもたまるもので,米パンはグラハム粉を入れたオリジナル。小麦のパンもケーキも独自のレシピで美味しく食べることが出来ていました。

 引っ越しの際にはたくさんの廃棄物が出るので,もう壊れるまで時間の問題であるGOPANも一緒に処分したのですが,これは3月末に新機種が出ることを見越しての事です。そして先日,早速新型GOPANを買いました。

 GOPANのブランドを継承する正常進化形だと思いますが,そこは三洋のGOPANではなく,パナソニックのGOPANです。三洋のアイデアをパナソニックがどう形にしたのか,全然別物になったはずと期待と不安を交錯させながら,週末に米パンと小麦パンを1つずつ焼いてみたので,旧機種との比較を軸に,ちょっとレビューです。

 旧機種は三洋時代のSPM-RB1000,新機種はパナソニックのSD-RBM1001です。購入価格はネット通販で34800円でした。

・外観

 まず小型になったというのが新型GOPANの大きな特徴なのですが,奥行きについては実は大きくなっています。旧型が282mmなのに対し,新型は315mmと30mmほど大きくなっています。

 嫁さんはこのあたりに敏感で,予定していた収納場所の扉がギリギリであるのを見て,大きくなったのね,とつぶやいていました。さすが,女の人はこういうところはごまかされません。

 他のサイズは大幅に小さくなっていて,私はそのあたりですっかり騙されてしまいました。

 横幅は旧型が358mmに対し新型は240mm,高さは旧型の387mmとあまり変わらず新型は386mmになっています。横幅がかなり小さくなっているのは,モーターを2つ搭載しなくて済んでいるからなので,まあ勝手に小さくなったといえなくもありません。

 重さについては旧型が11kgに対し新型が8kgです。10kgを越えると急激に重たく感じるものですので,この軽量化は歓迎すべきですが,だからといってテーブルや家電ストッカーに置こうと思うほど軽い物でもありませんから,相変わらず床に置くことになりそうです。

 形はパナソニックのホームベーカリーと似たようなものに変更されていて,かつてのGOPANを思わせる物はなくなったようにおもいます。

 そうそう,フタに付いていたのぞき窓がなくなりました。中身が見えると安心だから,という三洋の考えは正しく,一方で熱が逃げるから廃止したというパナソニックの意見も正しいです。私は,かつてのGOPANで窓から中身を見ていて失敗に気が付いてやり直せたことがありましたから,窓がなくなってしまうことで失敗に気が付かないことが不安です。


・付属品

 旧型が細々とした付属品が多すぎたように思うのですが,新型も基本的にはこれを踏襲しています。ただし,スプーンは旧型がサイズごとに分かれていましたが,新型では集約が進んで数が減っています。ちゃんと使えればそれでいいのですが,慣れてくればいちいち計量しないで材料を投入しますから,スプーンくらいは前のままにして欲しかったなあと思います。

 スプーンで言えば,グルテン用のスプーンがいけません。旧型は1杯で50gになるような,大きなスプーンが付属していました。新型もグルテン用として専用の物が付属していますが,随分小振りです。

 これがいけないなと思うのは,このスプーンで50gを計るのが出来ないことです。スプーンを小型にするなら2杯で50gとか3杯で50gとかにしてくれても良さそうなのですが,2杯入れても3杯入れても全然関係ない重さになるのです。結局キッチンスケールの世話になる羽目になりました。

 これだったら,別に専用のスプーンなどいらないわけで,詰めが甘いよなあとがっかりしたところです。

 グルテンはGOPANに特有の裁量ですから,きっと専用のスプーンが付いてくると思っていたので,旧型のものは捨ててしまいました。こんなことなら捨てなければ良かったと反省することしきりです。

 生種を起こす器は,旧型が立派な瀬戸物,今回はプラスチックになっています。このあたりは結構なコストダウンに貢献していると思いますが,私はもともと生種を使うことはしませんでしたから,オプション扱いにしてくれても良かったくらいです。

 そうそう,付属品といえば,羽根です。

 米パン用の羽根は大幅に改良されています。まず,羽根そのものに可動部分がなくなりました。これがトラブルの原因だっただけに,歓迎される改良です。

 ミルについては,以前のような鋭利なカッターが高速回転するのではなく,押しつぶすような感じで砕いていく仕組みに変わりました。そしてカッター部分は取り外しが出来るようになり,掃除も楽,おそらく耐久性も信頼性も大幅に向上したと思います。

 そして,底面の部品です。旧型はここがバカになり,使っている内に簡単に外れてしまうようになるのですが,新型ではちゃんと金属製の板バネがついており,確実に装着が出来ます。これも信頼性は高そうです。

 グルテンケースは以前のようなアルミではなく,耐熱プラスチックです。フタだけはアルミですが,内側はフッ素コートされています。それより,ケースの大きさが以前よりも随分小さくなっていますね。グラハム粉は当分入れない予定でしたが,このサイズだとちょっと入らないかも知れないです。


・操作方法

 旧型は,米,小麦,調理と,モードによってキーが分かれており,それぞれのキーを押すと画面にどのメニューかが表示されていたので,慣れてくればマニュアルは見なくても大丈夫でした。

 新型は小型化のせいかも知れませんが,すべてのメニューを番号で管理し,しかもその番号を上下キーで選ぶ仕組みになりました。ですから,本体に番号とメニューの一覧表を示したステッカーを貼り付けるようになっているのですが,これがまたなかなか面倒なのです。

 番号ですから,間違いには気が付きにくく,いろいろ失敗しそうです。

 あと,パンケースの着脱ですが,旧型と違い,左に少しひねって取り出す構造に変わりました。これはこれでいいのですが,パンケースの足の部分が旧型よりも長くなっていて,取り出すときにいつも本体の縁にぶつけています。
 

・音

 音は,もう圧倒的に新型です。旧型のそれは,電動工具か道路工事か,ドライヤーや掃除機も真っ青になる爆音で,動作中は話も出来ず,とにかく設置場所から待避するしかないひどい物でした。

 音の大きさもひどかったですが,なにせ高速回転する物ですので,明らかに周波数が高いんですね。大きい上に耳障りで,よくもこれが製品化できた物だと思います。

 ところがこれが新型になると,普通のホームベーカリーと変わらないです。ミルの仕組みが変わったこと,これに伴いゆっくり回るようになったことが大きいのだと思いますが,グイーンという音から,ゴロゴロゴロというゆっくりとした低い音に質も変わり,これなら全然大丈夫です。

 実は,米パンを食べさせるとほとんどの人が「欲しい」というのですね。でも私は絶対におすすめしませんでした。いろいろ欠点はありますが,この爆音という点については,一般の人が常用する家電の域を超えるものです。

 しかし,新型は静かで,これならおすすめ出来ます。

 練りの行程も静かで,動作していることを忘れるほどです。

 そして,なにが感心したって,そのモーターの制御の巧みさです。旧型は2つのモーターを切り替えることと,それぞれのモーターをON/OFFするだけだったのですが。新型はモーターの制御がインバータによる実に精密な回転数制御を行っています。ミルのような力任せの行程でさえ,細かに回転数を制御しています。

 三洋は,アイデアは素晴らしいのですが,残念ながらモーターの制御技術でパナソニックに列ばなかったようです。パナソニックはさすがで,このモーター制御の素晴らしさには,感心しました。


・米パンの出来具合

 まずは取説通りに材料を入れて,米パンを作ってみました。ただし油脂についてはバターではなく,旧型で常用していたオリーブオイルを使っています。

 出来上がりは実に立派で,大きく膨らんでいます。美味しそうに焼けているので,最初からこれはさい先が良いなあと思っていたのですが,食べてみると何だか味は今ひとつです。

 美味しいには違いはないのですが,旧型の米パンに比べると,パンの耳の香ばしさもなければ,生地の香りも薄いです。

 米パンはチーズとハムのような塩味のものを挟むと実に美味しく食べられたのですが,今回の米パンはそんなことはなく,大変上品ですが個性のないパンになっているように思います。

 嫁さん曰く,米パンなのに普通のパンみたいといっていました。これは実は大したもので,米パンが普通のパンのような形,味になったと言うのは,米パンとしては最終目標かも知れませんが,一方で米パン独特の味をが支持されたことも初代機のヒットにつながっているわけですし,私も米パンらしい味わいを期待していただけに,まずくはないんだけど,期待した程でもない,というこの結果に,ちょっと残念でした。

 何だかんだで,旧型の米パンは2年半ほど,ずっと食べていても飽きることはありませんでした。それは,出来たての味の良さが素晴らしかったからですが,新型の個性のなさは,もしかすると食べ飽きるようになってしまうかも知れません。


・小麦パンの出来具合

 小麦のパンは,旧型で私が使っていたオリジナルレシピをつかってみました。強力粉の量が250gと,1kgの袋で4回作る事が出来るように工夫したレシピです。

 出来上がりはこちらも実に立派です。まだ食べていませんが,これも味が違っていたらどうしようかなと思います。


・まとめ

 なんといってもミルの音が小さくなり,そしてその質も変化しました。これならもう合格点だと思います。

 悪く言えば,三洋はこのあたりは凄く緩かったんだと思います。三洋の家電部門のうち,パナソニックに吸収されたのはGOPANの部隊くらいなものです。この引き取ったGOPANは,アイデアも特許も素晴らしいものでしたが,なにより音でパナソニックの基準を満たさなかったんじゃないかと思うのです。

 三洋なら発売できても,パナソニックなら無理。それで,とにかくこれを何とかしようと,得意のモーター技術を投入して誕生したのが,新型のGOPANなんじゃないでしょうか。

 取説もそうですね。三洋の取説は読みやすさに過剰な配慮がない分,慣れれば必要な情報にさっとアクセス出来る取説だったのですが,新型の取説は,GOPANの取説をパナソニックが作ったらこうなった,というそのままな感じです。

 いかにも主婦向けに作った物で,フルカラーでイラストも多いのですが,どうもわかりにくいのですね。うまく焼けないときの対策がとにかく丁寧に書かれていて,いかに旧型の再現性が低いものであったかがわかりますし,そのことで随分クレームが入っていたんだろうなと思います。

 しかし,プロセスまで変わってしまったことがちょっと気に入りません。失敗を防ぐためかも知れませんし,ミルの仕組みが変わった為かも知れませんが,焼き上がりまでちょっと時間がかかるようになったことと,何より味が変わってしまった事が問題だと思います。

 最後に,やっぱりスプーンですね。グルテンのスプーンは2杯で50g,あるいは1杯で50gになるようなスプーンにしてください。

 それとイーストも,専用のスプーンを入れて下さい。取説では1g単位のスケールを使えとありましたが,数gを計る必要があるイーストは,0.1g単位のスケールでないと誤差が大きすぎて駄目です。

 最近,5000円未満で売られるホームベーカリーもありますが,それらは付属品が少なかったりするそうです。一応GOPANは高級機ですし,失敗のない確実なパンを焼くようにすることを目指しているなら,スプーンをけちったら駄目だと思います。


 てなわけで,まだ2つしか焼いていません。ざっとレシピブックを見れば,旧型のGOPANから極端に変わったレシピはないようです。であれば,私のレシピやノウハウも通用する可能性が高いです。とにかく米パンをもっと美味しく焼くこと,そしてケーキを作ること,小麦のパンはフランスパンを美味しく作る事が出来るように,目指していこうと思います。

 どちらにしても,GOPANのような特殊な商品が,パナソニックで継続していることが驚きです。もう次の世代はないかも知れないと思うと,この機械を使いこなさねばならないなあと思います。

停止の予告

 アナウンスです。

 引っ越しに伴い,サーバーを4月7日朝から停止するため,この艦長日誌も4月7日朝から見る事が出来なくなります。

 再開は4月10日を予定していますが,ずれ込む可能性もあります。

 

LEDシーリングライト考察

 昨日,LEDシーリングライトを買った話をしました。良い点も悪い点もわかって,LED照明を手放しに褒められない状況も見えてきました。

 特に消費電力については,LEDが有利という先入観に疑問はなく,よく調べもせずにLEDシーリングライトの問題点は価格だけだと思っていたわけです。価格が下がれば,自動的に蛍光灯は死滅するだろうと思っていました。

 しかし,それは本当なのか?と,昨日の艦長日誌を書いていて,気になりました。

 それで調べてみたのですが,ツインパルック蛍光灯(正確にはツインパルックプレミア蛍光管)の発光効率は,なんと100lm/Wを越えているんですね。今回のLEDシーリングは77.8lm/Wですので,実は蛍光灯の方が2割以上有利です。

 えーー,まじすか。

 なら,同じ明るさなら蛍光灯の方が消費電力を下げられることになりますよね。LEDのメリットって調色機能だけになるじゃないですか。

 ランプの寿命は16000時間です。LEDの40000時間に比べれば短いですが,LEDはランプの交換が出来ませんから,10年を機器そのものの寿命と考えると,1回か2回か交換するだけです。1つ2000円ほどですから,大したことはありません。

 えーー,まじすか。
 
 以前は,LEDの発光効率がもっと悪くて,かつ高価だったので,シーリングライトについてはLEDにしない方が良いといわれていたのですが,値段も下がってきたのでメリットが出てきたと言われています。だからこそ売れているのだと思うのですが,調べてみるとこういう結果になるんですね。

 うーん。

 調色機能は積極的に使えると面白いですが,現実的には昼白色と電球色のブレンドをして自然に見える色を作るものですから,良く出来た蛍光管を使えば必要のない機能ともいえますよね。

 そう考えると,消費電力,光の均質性から考えてLEDにメリットはないですよ。演色性もほとんど同じでRa84から85くらいですし,ランプ交換も1回か2回ですし・・・

 しかも,蛍光灯の究極最終形態である,スパイラルパルックになると,さらに発光効率が上がり,93Wタイプなら120lm/Wを越えます。寿命は20000時間にも達し,10年間で交換不要とされています。

 さらに,ツインパルックと同じ明るさを得るなら小さく作る事ができます。ツインパルックの100Wタイプは直径400mm,一方のスパイラルパルックは317mmです。

 スパイラルパルックは蚊取り線香のように渦巻きになっているものですから,ほぼ面発光です。昨今,有機ELが面発光の光源として注目されていますが,実はすでに実用化されていることになります。

 いや-,これはすごいわ。

 スパイラルパルックとLEDを比べてみると,発光効率はスパイラルパルックの方が4割近くも有利,面光源で理想的な照明に近く,寿命も20000時間とほぼメンテフリーと,LEDのメリットはほとんどふっとびます。

 いや,むしろ蛍光灯がすごいところまで進化していたということを意識してなかったということです。むむー。蛍光灯技術者の意地を感じます。

 ただし,一般に売られている丸いタイプの蛍光管の発光効率は50lm/Wから60lm/W程度です。しかも高周波インバータではないでしょうから,全体の消費電力もあんまり下がらないでしょう。この場合すでにLEDが逆転していますので,蛍光灯を選ぶ理由はありません。

 また,LED照明の発光効率は,駆動回路やセードによる低下分を含めた,機器全体としての発光効率です。一方,私が今回調べた蛍光灯の発光効率は,ランプのみの数字を使って計算しています。

 それに,LEDとは違って蛍光灯は天井側も光ります。ランプ単体の発光効率の計算では,この部分の光束も計算に入れていますが,照明器具に入れればここは反射で下側に向けねばなりません。しかし100%反射することはありません。

 これらを勘案すると,最終的には2,3割程度割り引く必要があると思います。

 とまあ,ここまで考えると,ツインパルックを使ったシーリングライトの実質的な発光効率は80lm/Wくらい,一方のLEDシーリングもこのくらいですので,あまり変わらないということになるでしょうか。

 次に考えないといけないのは,LED照明の発光効率には,もっと高いものがあるということです。今回私が取り上げたものは80lm/W程度でしたが,世の中には100lm/W程度の物もあるし,実に120lm/Wを越える物もあるにはあります。

 ですから,一概に蛍光灯の方が優秀というわけにもいかないです。

 加えて,その究極最終形態たるスパイラルパルック搭載機器が軒並み生産終了になっており,現在パナソニックのWEBから商品を見つけることが出来なくなっています。

 お店に在庫はあるようですが,ツインパルックの機器には特設ページがあるくらいですので,スパイラルパルックはちょっと遅すぎたのかも知れません。20000時間も交換しなくて良いんですから,交換用ランプもそんなに売れてないと思いますし,店頭から姿を消す日はそう遠くないように思います。


 ということで,結論。

・最新の蛍光管の発光効率はLEDをしのぐ。
・ただし発光効率の比較は条件が違うのでよく考えること。実はあまり変わらない。
・蛍光灯はもともと面で発光するデバイス。影も柔らかく,自然に光る。
・蛍光灯は三波長型。特に昼光色の色がすばらしい。
・寿命はLEDの勝ち。でも蛍光灯だって10年でも1回か2回程度の交換ですむ。


 LEDはまだまだ進化途中です。ですが今後数年で,進化の止まった蛍光灯をしのぐことは確実です。現段階でようやく両者は列んだといえるでしょう。でも来年にはLEDは完全に蛍光灯を駆逐するんじゃないかと思います。

LEDシーリングライトを買ってみる

  • 2013/04/02 12:12
  • カテゴリー:散財

 引っ越しを目前にひかえ,現在使っている照明器具をどれだけ新居に持ち込むかを思案していたのですが,いずれすべてをLED照明に切り替えたいと思っていつつも,値段がまだまだ高いことと,今使っている蛍光灯もまだまだ使えるという気持ちから,追々考えようと思っていました。

 ところで,新居には小さいながらも畳を敷いた和室があります。ここに似合う照明はシーリングライトでも白木を使ったスクエア型だと思っているのですが,この手のLEDシーリングは高価なんですね。

 可能なら工事の際に取り付け済みにしようと思ってカタログを開くと,5,6万円もします。昨今の価格低下の速度を考えると,工事から入居までの半年の間でさえ,目に見えた値下がりがあるかも知れません。

 そんなわけで,和室の照明を引き渡し後に買うことにしたわけですが,先日検討したところ,選択肢が少ないながらも,メーカーを問わなければ結構安価に買えることが分かりました。

 さらに調べると,丸い普通のLEDシーリングについては,量販店の特価商材として6000円から7000円くらいで売られているケースもあるんですね。もはや蛍光灯タイプよりも安いじゃないですか。

 もちろん,安い物は安い物なりですし,そこはちゃんと考えないといけませんが,検討の余地はありそうです。

 もともと,作業部屋として作った4畳の狭い部屋には,現在リビングで使っているツインパルック蛍光灯搭載のシーリングライトを持ち込むつもりでいました。3年ほど前に購入した物ですが,良い蛍光管を使っているものだけに,まだまだ全然快適で,結構気に入っているのです。

 ですが,調光・調色機能まで搭載したパナソニックのLEDシーリングでさえ実売9000円ほどと知り,買ってみることにしました。工事の段階で取り付け済みのものは8畳タイプ,値段は実売で29000円ほどですが,同じようなものなら量販店では1万円以上も安いです。値下がりがすごいです・・・

 で,いずれ買う物ですし,4月は引っ越しシーズンということもあり,在庫切れになると悔しいし,引っ越し後の生活に支障が出るため,さっさと購入。初期不良を洗い出すことと新しもの好きの興味から,早速取り付けてみました。


・HLDCA0617(NEC,和風シーリング,16900円からポイント10%)

 6畳までのLEDシーリングライトで,調光・調色機能に,タイマーなどの多機能リモコンが付属しています。白木を一部に使ったスクエア型で,一応和風という触れ込みではありますが,アクリル製のシェードが妙に膨らんでいて,かなりなんちゃって感があります。

 ところで,このデザインはNECだけではなく,東芝やコイズミにも見られるものです。あくまで推測ですが,どっかの1社が作って,複数の会社にOEMで供給しているんでしょう。

 ただ,本体はNEC独自機能もありますので,シェードだけ供給してもらっているのかも知れませんし,あるいはNECから他へ供給しているのかもしれません。

 消費電力は最大42W,寿命は40000時間とこのクラスの物としては標準的です。リモコンはぱっと見でiPhoneのようなデザインですが,和室に取り付けられる照明のリモコンとしては微妙な感じですね。細かい事ですが。

 調色機能は多段階ではなく,昼白色,白色,電球色の3つからしか選べませんが,明るさは調整可能です。色温度は昼白色が6500K,電球色が2700Kで,演色性はRa85です。これはあまりよろしくありませんね。

 早速点灯してみますが,これはなかなか良いです。色も配光もなかなかよくて,LED特有のどぎつさや鋭い影が出にくく,非常に自然です。これなら和室でもくつろげるでしょう。光り方にムラもなく,全体的に光るので部屋の隅までよく光が回ります。

 電球色も良く出来た色ですので,違和感はありません。丸形のシーリングに比べると倍くらい高いですが,和風であることとこの性能なら良い買い物だったと思っています。

 そうそう,この機種にはNECが売りにしている「ホタルック」なるものが装備されています。もともとホタルックは,NECの蛍光管の機能で,蛍光塗料に長残光のものを混ぜ込んで,電源を切っても青緑の光がしばらくぼーっと光っているというものでした。

 蛍光灯って,あまり気が付かないかも知れませんが,普通の物でも電源を切ってしばらくは,青緑でぼーっと光っています。電源を切った直後は目が明るさに慣れているので見えにくいのですが,目を暗いところで慣らしてから電源を切った直後の蛍光管を見れば,よく分かると思います。

 で,これを明るく長く光るようにしたものなのですが,ちょっとしたアイデアで面白いものを作るなあと感心した覚えがあります。すぐに暗くならないというのは,電気を消して真っ暗になるのが怖い子供には良い機能だったと思いますし,目が慣れるまでの補助光と考えると,なかなか便利だったかも知れませんが,私個人は電気を消せばすぐに暗くなって欲しい人ですし,青緑というのがオシロスコープみたいで今ひとつだと思っていました。

 余談ですが,アナログオシロスコープのブラウン管も長残光ですので,しばらくぼーっと光っていますよ。

 前置きが長くなりましたが,LEDにするとこれがなかなか実現出来ません。蓄光塗料を塗るという作戦が一番良いように思うのですが,ちょっと芸がないです。だからかどうか知りませんが,NECはLEDを使って青緑の光をぼーっと光らせることにしました。

 ただ,リモコンで電源を切ったときだけ有効になる,という限定機能じゃ意味はなく,電源の供給を遮断してもしばらく光っていて欲しいわけですね。これはなかなか難問です。

 NECは「独自の電子回路で」と書いていますが,おそらくスーパーキャパシタを使って,数分だけ光るようなLEDを仕込んであるのでしょう。本体にはこの機能をOFFにするスイッチもありますので,その点での配慮はさすがですね。

 ただですね,色が「ホタルック」というのはちょっと青すぎて,ものすごく違和感があります。常夜灯と同じような色にしてくれたら良かったのにと思います。せっかく長残光の蛍光塗料の色という制約を抜け出せるのに,制約にならってどうすんですかと,ちょっと言いたいところです。

 
・HH-LC463A(丸形シーリング,パナソニック,9680円からポイント10%)

 6畳までの小ぶりのLEDシーリングです。調光・調色機能を持つパナソニック製にしては実質9000円未満という安さに惹かれて購入しました。

 実はもう一回り大きな8畳タイプが欲しかったのですが,売り切れ。しかし13000円くらいしましたので,4畳の作業部屋にはこっちの方がかえって良かったかもしれないです。

 ただし,上位機種の8畳タイプとはリモコンが違っています。この機種のリモコンは時計はなく,タイマーによる自動制御は出来ません。

 消費電力はやや小さくて36W,これで2800lmということですから,NECの和風シーリングと同じ明るさを,6Wも小さい値で実現している事になります。

 寿命は40000時間と問題のない値です。色温度は昼白色で6500K,電球色で3000Kですから,NECの方がより電球らしい色になっていると思います。演色性はRa85ですから,LEDのものとしては極普通ですね。

 で,早速取り付けて見ました。これまでの蛍光灯タイプは本体が鉄で出来ていて,非常にしっかりしています。シェードも薄型ですし,天井に密着しているので天井の一部が明るくなることもありません。

 しかし,今回のLEDタイプは,本体がプラスチックで軽いです。これはまあ性能に影響はないと思いますが,シェードが分厚く,天井からの出っ張りが大きいので結構目立ちます。

 また,シェードと天井の間に数センチの隙間があるので,ここが輪のように光るのですが,結構目立つ感じです。やっぱ安い物は安いなりですね。

 肝心の光り方ですが,ムラもなく,普通の蛍光灯タイプとそんなに違いがあるわけではありません。しかし,実際に部屋を光らせてみると,随分これまでのツインパルックとは違う物だと感じます。

 まず,部屋の隅に光が回りません。部屋の隅っこがやや薄暗くなっていることと,自分の影がきつく出ます。また,物に当たって反射する光がきつくてまぶしいです。かといって明るさを落とせば手もとが暗く,どうもよくありません。いずれも,発光部の面積が小さく,かつ光が拡散していないから起こってる問題でしょう。

 もともとLEDは点光源で,これをぐるっと円形に並べているのがLEDシーリングです。この円の直径が大きいほど均質に光る訳ですが,その分LEDの個数を増やす必要があるわけで,当然高価になります。

 こういう低価格モデルは,LEDの個数を抑えるのが常套手段ですから,他の部材や配光を工夫して以下に自然に見せるかが勝負です。だから,6畳タイプにするか8畳タイプにするかは,単に明るさの差ではなく,器具の直径の差による,光り方の均質さにも大きな差があると考えるべきですね。これは蛍光灯とは違うところです。

 色はNECとは違い,昼白色から電球色まで多段階で調整が可能です。ただし,昼白色は青すぎて寒々しいくらいですし,電球色は暖かみがあると言うより黄色がきつく,まるでオレンジ色のライトをつけているような気分になります。色温度がやや高いせいかも知れません。

 この2つを混合して作る白色は,白色と言うには不自然な色で,なかなかうまい具合に調色できません。

 明るさについては多段階で調整が出来ますが,これは問題なしですね。

 NECのものもそうでしたが,昼白色のLEDが18W,電球色が18Wで,両方点灯させる白色の最大値が36Wです。だから電球色で36Wの明るさで光らせることは出来ないのですね。これは調光機能付きのLED照明では注意すべきポイントかも知れません。

 ツインパルック蛍光灯の消費電力が最大で約70Wでしたから,半分くらいで同じ明るさに出来るという事です。同じ消費電力ならその分明るく出来るということですので,そこはLEDのメリットでしょう。

 結論から言うと,いくらパナソニックとはいえ,9000円までのLEDシーリングに過度な期待は禁物です。予算が許すなら(今回は在庫があれば,ですが),実際の部屋のサイズよりも一回り大きな部屋用のものを取り付けて,明るさを絞って使うのがよいと思います。でもそれだと,消費電力で蛍光灯で調光した場合に比べて,あまり差が出ないかも知れないですね。

 まとめですが,シーリングライトのメリットである,天井直下から直接光で部屋全体を明るくすると言う特徴を期待するには,LEDライトの場合はそれなりに高価なものを選ぶ必要があります。安物は「光るだけ」と思った方がよいようです。

 NECの和風シーリングは,実は近所の電気屋で現物を見て買いました。だから失敗しなかったのかも知れないですが,パナソニックの丸形シーリングは現物を見ずに買いました。デザインにがっかり,光らせてがっかりだったわけですが,これは現物を見てからにすると防げた可能性が高いです。

 前述のように,LEDシーリングは,光り方がきつい印象を与えます。影も鋭く,色も不自然ですから,そういうところにこだわるなら,最新の蛍光灯タイプを買うのが良いかもしれません。

 LEDでも,本体の直径を大きく取って,発光面積を広げることで影のきつさを軽減できたり,部屋の隅々にまで光を回すようにするとよいと思いますから,1ランク大きなものを買って,暗くして使うのが蛍光灯タイプからの置き換えには適当ではないかと思います。

 LEDシーリングは最近値下がりが激しく,よく売れているようです。家電量販店でも力を入れている主力商品になっているようですが,残念ながら安いなりの商品がまだまだ存在する,過渡期にあるなあというのが感想です。

 LED照明は一度買えば,ランプの交換が必要ないために10年はメンテナンスフリーで使う事になります。少々高価でも,良いものを買っておくのが今は正しい買い方だと思った,今回の買い物でした。

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