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2013年10月の記事は以下のとおりです。

Z-PV1000の電池を入れ替えるのだが

  • 2013/10/31 17:03
  • カテゴリー:make:

 次世代コードレス掃除機選定委員会が選んだのは,ダイソンのDC45だったわけですが,しばらく使って見て思ったのは,これはもうサブ機ではなくメイン機だということです。

 20分以上の掃除をすることはなく,決まった時刻に掃除をすると言うよりは,ゴミが目立ち始めたら掃除をさっとする,という方法を考えると,どう考えてもDC45に分があります。

 カーペットの掃除については,DC45は自走しないヘッドなのでちょっと大変なのですが,そこはルンバの守備範囲です。ですから,DC45は単独メインと言うより,ルンバと共同でメインという位置付けになるでしょうか。

 まあその,ルンバもコードレス掃除機には違いないので,我が家ではコード付きの掃除機は完全に時代遅れとなりました。実のところ,掃除機というのは結構消費電力が大きいですから,省エネにもなって万歳かも知れません。

 さて,出会いがあれば別れもあります。

 これまで,サブ機として長く使っていた,ブラック&デッカーのZ-PV1000ですが,これは電池が寿命を迎えており,充電がほとんど出来ない状態でした。DC45があればもう必要はないということと,元々そんなに高価なものではなかったということで,捨てるつもりでいました。

 Z-PV1000は,Ni-Cd電池が10本内蔵されていて,12Vで動作します。それで吸い込み仕事率が26Wでしたから,結構派手な掃除機だったわけです。音も大きいですし,重いですし。

 で,仮に電池が1セル300円とすれば10本で3000円です。本体が5000円台で買えたことを考えると,ちょっともったいない気がしました。

 しかし,捨てるという言葉に異様に反応するもう一人の私は,「捨ててしまうのは一瞬でいつでも出来るから」と,あくまで電池の交換を主張します。

 とりあえず交換出来そうなNi-Cdを探してみます。探してみると,やはりNi-Cdは過去の電池になっていることがわかります。まともな形でNi-Cd電池を新品で買うことは,かなり難しくなっている印象です。

 Z-PV1000に搭載されている電池は,俗にSubCと呼ばれているサイズの電池です。電動工具では長く使われた定番のサイズですから,入手は難しくないはずですが,冷静に考えるとここ数年で電動工具もリチウムイオン電池に変わっていますので,使い道は限りなく限定されると言ってよいでしょう。

 とまあ,あきらめてかけていたところで,ふと電動ラジコン用のバッテリーパックの存在に気が付きました。しかも調べてみると,激安です。6本パックで1100円ですよ。これなら,2パック買っても2000円ちょっとです。しかも元々組電池ですから,タブが付いています。ハンダ付けも出来るわけです。

 私はラジコンはやらないのでよく分かりませんが,ヨコモというメーカーのNi-Cd電池パックです。在庫もそんなにないようで,私は関西の量販店から2200円で買いました。これで12本です。

 電池が届いた週末,早速交換してみました。

 Z-PV1000を分解します。分解して分かったのは,モーターと電池が一体化したモジュール構造になっているんですね。ビスを外してやれば,ポコッとモーターと電池が取り付けられたシャシーが外れて取り出せます。

 このサブシャシーには12本の電池が搭載できるスペースがあります。詳しくは知りませんが,Z-PV1000には14.4Vモデルもあるそうで,そのためのスペースなのかも知れません。

 さて,電池はボール紙に巻かれたSubCです。すべて直列につながっていて単純かと思いきや,プラス側から2本目の所のタブから,なにやら線が1本出ています。これがスイッチにも入っていて,どうもしっくりきません。

 見落としがあってはいけないと,真面目に電池の配線をみてみます。

 わかったことは,このまま交換して使うのはよそう,ということです。まず,Z-PV1000にはパワー切り替えが付いていますが,この切り替えはなんと,直列につながったセルの接続点の違いで,電圧を変えていることがわかりました。具体的には,強の時には10セルで12Vですが,弱の時は2セル減らしたところから電源を取り,8セル9.6Vでモーターを回します。

 しかしですね,これは御法度なのです。これだと,10セルのうち8セルだけ電池が減ってしまいます。この状態で充電を行うと,減った8セルはいいとして,減っていない2セルにも充電が行われてしまうため,これが過充電になります。

 また,弱で電池が減ったからと強に切り替えると,弱った8セルにも電流の出し入れを行うことになるので,8セルは過放電になったりして,かなり厳しい状態に置かれてしまいます。

 Ni-Cd電池は丈夫で,少々ラフな扱いをしてもへこたれません。が,直列に繋いだ電池は,均等に充放電をするのが鉄則ですから,こういう使い方はよろしくありません。

 次に,充電の問題です。どういうわけだか,充電中にかなり熱を持ちます。取説には熱を持っても心配ないよ,とありますが,一晩中暑いままというのは,ちょっとまずいようにおもいます。

 心配なので充電電流を計ってみました。すると,ざっと300mAです。この電池は1400mAhの容量ということですので,ざっと0.2Cということになりますね。取説には5~6時間程度で満充電とありますから,計算は確かにあいます。

 しかし,充電はスタンドに置いておくとずっと行われる仕組みです。いわばトリクル充電なわけで,それなら0.2Cは大きすぎますし,0.2Cで充電したいなら,充電を停止する仕組みが必要です。

 しかし,ここで考えました。Ni-Cd電池の満充電時の電圧は1.4Vです。ですから充電電圧が14Vになっていれば,満充電に近づくにつれて電流は減り,やがて停止するはずです。

 まあ,それくらいのことはないと困るわな,と入力電圧,電池の電圧,そして電流を計りますと,何時間経っても300mAから減りません。電池電圧は14Vを越えていますが,なにより入力電圧が21Vもあります。これじゃいつまで経っても充電は終わりません。

 こんな状態で放置したら,過放電になってしまいます。5時間おきに10分動作させて使う人ならこれでもいいでしょうが,そんな使い方をする人はいないでしょう。このままではまずいです。

 ACアダプタには,14V300mAと定格が書かれています。300mA流せば14Vになりますよ,という意味ですが,実際には20Vも電圧が出ていますのでこれは嘘です。

 ならば,これが本当だったら大丈夫なのかといえばそんなことはなく,300mA流れているときは14Vでも,100mAになれば電圧は上がります。上がれば電流は流れるわけで,やがてACアダプタと電池の電圧が等しくなったところで,ようやく充電が止まるわけです。

 しかし,その電圧は明らかに14Vではなく,最終的には充電電流がゼロになる20Vと言うことになるでしょう。そもそも1セル2Vまで上がるのかという話もあるし,仮に2Vになっても,それは完全に過充電です。


 そこで,以下のような対策です。

(1)まず,強弱切り替えは廃止しました。セルの充電度合いに差があることは避けたいので,弱を殺して,常に強で動くようにしました。

 実は,Z-PV1000は強ではうるさすぎて,私はほとんど使っていません。弱で十分ですし,出来ればこのモードを温存したいのですが,直列に抵抗を入れる作戦は抵抗の発熱が心配だし,手持ちに適当な定格の抵抗がありません。

 降圧回路で落とす方法も考えましたが,この手の掃除機は起動時に数十Aの電流が一気に流れるものなので,ちょっと難しいです。

 降圧に似たようなアイデアに,チョッパ回路を使って電圧を落とす方法も考えました。しかし,ピークで数十Aものトランジスタを探すのが面倒で,やめました。模型用のモーターとの違いを思い知らされた感じです。

 ということで,面倒だし危険なので,強だけで使う事にします。


(2)充電についても,真面目に充電回路を作ることを考えましたが,やはり面倒(面倒ばかりだなおい)なので,簡単な方法を考えます。

 とにかく,10本直列のNi-Cdは満充電が14Vですから,電流制限抵抗があろうがなかろうが,充電電圧が14Vになればもう電流は流れようがありません。

 電流制限抵抗がなくても,電流は300mA程度になることが分かっていますので,電圧を14Vに安定化すれば,満充電に近づくにつれ電流が減り,やがてゼロになってくれるでしょう。

 乱暴な方法ですが,充電はちゃんと止まるはずです。

 そこで,非安定のACアダプタの20Vを,安定化します。スタンドにもダイオードが1本入っているので,0.7Vだけかさ上げするとして,15Vで安定化すれば大丈夫そうです。

 7815を使うのが一番楽ですが,手持ちは1つだけ。心許ないので,腐るほどあるNJM2387Aを使う事にしました。R1に1.1kΩ,R2に12kΩを選べば,15Vになります。

 横着してコンデンサをつけなかったら発振してしまい,ちっとも電圧が安定しなかった話は恥ずかしいので墓まで持っていきますが,なんだかんだで組み込んだところ,すでに満充電近い状態では,12mA流れたあと,6時間後には2mAまで下がっていました。

 トリクル充電は0.02Cから0.03Cくらいの充電電流だそうですから,これを大幅に下回っています。充電をしていないのと同じですね,これだと。

 ということで,一応満充電になると,充電が止まることまでは確認出来ました。これでメデタシメデタシ・・・

 ああ,1つ大事な事を忘れていました。300mA流れるときの状態です。20Vから15Vを作っているので,NJM2387Aでのドロップは5Vです。ここに300mA流れますからざっと1.5Wの損失があります。

 そして,NJM2387Aの最大定格は1Wです。いやはや,定格オーバーじゃありませんか。

 しかもこれは無限大の放熱器をつけた場合の話です。私のように,ベークの安い万能基板に取り付けた場合,その半分も使えないんじゃないでしょうか。

 NJM2387Aにはサーマルシャットダウンがついているようですので,いきなり壊れてアウト,と言うことはないでしょうし,フの字特性の保護回路ですので,電流がバチンと切れてしまう訳ではないでしょう。

 などと,いろいろ考えていますが,電池を空っぽにしないと確認出来ません。さすがにみんな寝ている夜にあの爆音を10分間出すのは気が引けて・・・確認は時間のあるときにやるしかないですね。

 え,駄目だった場合ですか?

 入力にダイオードを3本ほど入れますよ。そうすれば2Vドロップして,300mA流れても1Wに収まります。いいですねこれ,この方法でいきましょう。というか,最初からこれをやっておきましょう。

 まてよ,最終的に20Vを15Vにするのに,差分を熱として放出することには変わらないので,NJM2387Aから出るか,ダイオードから出るかの違いだけで,結局熱になっちゃうんですよね。なんだか,バカバカしくなってきました。

 うーん,1Aクラスのスイッチング電源を組んだ方がよさそうです。

DC45でダイソンデビュー

  • 2013/10/25 14:49
  • カテゴリー:散財

 もう随分前の話になりますが,ブラック&デッカーのハンディクリーナーを買って便利に使っていました。しかし,もう充電池が寿命のようで,充電をしても満足な吸引力が得られません。

 共働きで掃除も行き届かず,そこへ子供が食べこぼすようになって,掃除機が手もとにないことで生活がすさみ始めたところで,これはやはり,手軽な掃除機を1つ買わねばなるまいと常々思っていました。

 ハンディクリーナーの買い換えですので,基本的にはコードレスです。しかし,どうも日本の掃除機メーカーというのは,コードレスのクリーナーにあまり熱心ではありません。いわく,吸引力至上主義で進化を遂げた「普通の」掃除機との性能差が大きく,コードレスの掃除機を「掃除機です」といって良いかどうか,悩むのだそうです。

 海外ではそういう話はあまりないようで,DysonにしてもElectroluxにしても,普段使いの掃除機としてコードレス掃除機を作っています。

 そうなんですよ,家電メーカーではなく電動工具メーカーから出ている,業務用のコードレス掃除機には,日本製でも強力なものもあるんです。だから,技術的に不可能という事ではなく,どちらかというと家電メーカーの掃除機に対する「思い込み」が最大の障害になっているんじゃないのかな,と思います。

 実のところ,モーターを高速で回転させる掃除機の充電池には,短時間で大電流を放電するのに適したNi-Cd電池が使われていました。リチウムイオン電池が充電池として理想的であることは誰の目にも明らかですが,そうした放電が求められる用途には,適さなかったのです。しかし,Ni-Cdにはエネルギー密度が小さいので,電池をたくさん搭載できません。ですから,ハンディクリーナーに使えば連続動作時間が短かったり,パワーが不足したりしました。

 しかし,ここ数年でリチウムイオン電池の電動工具への採用が急激に進みました。今やリチウムイオン電池を使わない電動工具を探す方が難しいくらいですが,これも電池メーカーが大電流放電に強い電動工具向けのリチウムイオン電池を開発してこの市場を開拓したからです。こうした高性能電池を使い,進化したDCモーターの制御技術をもってすれば,十分実用になるコードレス掃除機を作る事は,可能だと私は思います。

 重い掃除機を引っ張り出し,鬱陶しい電源ケーブルを引きずり出して,あちこちぶつけながらゴロゴロと引き摺って使う事になる従来型の掃除機に対しての不満は潜在的にあるだろうし,アイロンなどコードレスの製品が実用性を持つようになると,一気に普及するという前例をみると,日本のメーカーがコードレス掃除機に本腰を入れる日は,そんなに遠くないとも思います。

 前置きが長くなりましたが,従来のハンディクリーナーでは吸引力と言うより,吸い込み口が小さい事で掃除がしにくいことが問題で,これを改善で出来るようなコードレスクリーナーを探していました。

 ある時,かのDysonのDC45という機種が,案外値下がりしていることに気が付きました。私のイメージでは5万円だったのですが,これが36000円ほどになっています。

 いくらDysonといえど,コードレス掃除機が常用可能な主力機になるとは考えにくく,あくまでサブであることを考えると,5万円は庶民には出せません。しかし,36000円なら,ちょっと頑張って見ようかと思わせます。

 気が付いたら,自宅にDC45が届いていました。

 こういう衝動買いは慎むように心がけていたのですが,必要性と趣味性が交差すると,人の心というのはかくも脆いものなのかと愕然とします。

 ささ,ということで,軽くインプレッションです。


(1)まずコンセプト

 コードレス掃除機で,しかも本体と吸い込み口が一体化したハンディクリーナーの進化形です。長いパイプの先にタービンブラシを取り付ければ,スティック型の掃除機として使うことが出来ます。

 面白いのは,スティック型の掃除機であることがどちらかというと標準の扱いで,つまるところメイン掃除機としてどんどん使って下さい,と言うメッセージを発していることです。

 DC45という機種の売りは,連続稼働時間が20分という点にあります。5分そこそこではやはりサブでしか使えませんが,20分動けば,一部屋二部屋くらいは掃除することが可能でしょう。(30分以上の掃除は時間の無駄で,きっとやり方がまずいんです)

 そうなると,過去のキャニスター型の掃除機を置き換えるだけのポテンシャルを持つ事になります。ただ,この20分という時間が,日本の家屋にとって実用になる性能と両立できるものなのかどうかが,今のところ当落線上にあるという感じなんじゃないでしょうか。


(2)吸引力

 さすがに今どきのキャニスター型の掃除機と比べるのは可愛そうですが,よくよく考えてみると,最近の掃除機は節電モードをを持っていて,床の状況を自分で判断してモーターの回転数を落としていますよね。

 だから,ピーク性能は高いですが,常用域としてはそんなに高い性能が必要ないシーンも多いはずです。そういう観点でDC45を使って見ると,これが実に絶妙で,全く問題がないのです。

 もちろん,強い吸引力は先端のブラシをラフに動かしても,それなりにゴミを吸い込んでくれます。DC45のようなギリギリの吸引力では,例えばタービンブラシを床から少し浮かせてしまうと,もうゴミを残してしまいます。

 だから,タービンブラシと床の間が小さくなるような設計にしてあるんでしょうね。これが最終的な使い勝手や,ゴミをどのくらい残すかという印象にきいてくると思いますが,少なくともフローリングでホコリを吸い取るという,最も頻繁な掃除についていえば,DC45で十分すぎるものがあります。

 もともと,こうした掃除に使いたいと思ったDC45でしたから,私の期待に対しては100%応えてくれそうです。

 吸い込み仕事率というスペックを見ると,通常モードで28W,強モードでも65W程度で,これは日本のAC電源の掃除機に比べて,1/10以下です。

 ただし,強い吸引力はそれだけ電力を食いますから,最終的に部屋が同じ時間で綺麗に出来るのであれば,吸い込み仕事率は小さい方がいいに決まっています。その点で言うと日本の掃除機は,強力な吸い込み力によって得られる爽快感も,メリットの1つになるのかも知れません。これは分かる気がします。


(3)重さと大きさ

 大きさは小学生の子供くらいの高さがあります。重さは本体のみ1.3kgで,フル装備だと2kg程になりそうです。

 この1.3kgという重さは,私は重いと思っています。重い重いと言われているデジタル一眼レフでも,実は1kg以下ですから,その持ちやすさ/持ちにくさから,特に重く感じます。

 また,長いパイプの先に重量物である大型のタービンブラシがある構造は,取り回しの悪さも助長します。床を掃除しているときは良くても,やはり持ち運ぶ時に楽だとは思えません。

 Dysonの掃除機は,高価なだけに,買った人のレビューや評価が「甘くなる」傾向があると私は思っています。実際に使ってみると,そこまでいいとは思えない事があって,こういう高級家電は好き嫌いもありますから,他人の意見は参考程度に考えて,実際に使って判断するしかないでしょう。

 別の所でも書きましたが,この大きさ,この重さにも関わらず,自立しません。頭部に電池とモーターという重量物があるため,非常に不安定で,倒れたときの危険度は非常に高いです。なのに,簡単に倒れてしまうことは私は重大な問題だと思います。

 特に小さい子供がいる家庭で,この掃除機はおすすめしません。


(4)音

 音は甲高く,かなり大きいです。少なくとも夜に使っていいものとは思えません。トリガ式のスイッチは便利なようで,ふいに触ってしまうことがあります。思わぬ形でモーターがきーんと回るので,驚くこともしばしばです。

 余談ですが,DC45を箱から出しているときに,興味津々だった娘は,てくてくと歩いてそばまでやってきました。しかし,私が本体を取り出すときに不用意にスイッチに触れてしまい,突如大きな音でモーターが回転したときにとても驚き,怖いという表情をして嫁さんの所に逃げてしまいました。子供が恐怖を感じるような音だということは,忘れないでいようと思います。


(5)使い勝手

 重心が高いスティックタイプの掃除機は,ただ立てかけてあるだけだと,転倒してしまいます。小さい子供がいると,なんだろうと触った拍子に倒れてきて,大きな事故につながる可能性があります。

 そこで固定する仕組みが必要なのですが,DC45の場合は,壁掛けが出来るフックのようなものが付属しています。固定するためのネジは付属していませんので,自分で用意しないといけないのですが,これがまず減点です。自分で最適なものを選んで使えと説明書にありましたが,外れてしまうと事故になるものだけに,せめてどんなものを選べば良いかを書いておく配慮は必要でしょう。

 本体から伸びるパイプは,アルミで出来ていて継ぎ目はありません。軽く丈夫ですが,短くしたり折りたたんだりすることは出来ません。

 ちょっと感心したのは,この長さでそれなりの吸引力を持っていることです。ハンディクリーナーは動かす空気の量が少なくなるように,ノズルからモーターまでの経路が短くなっています。また,ホースやパイプのような細いものは抵抗が大きいので,コードレスのような絶対的なパワーが不足しがちな掃除機には,厳しいものがあるはずです。

 しかもDC45はトリガ式のスイッチです。常時ONではなく,使う時だけONという仕組みですが,これは電池寿命を延ばすには有効でも,長い経路に存在する空気の慣性を考えると,すぐに吸引力が発生しないために,不利な面も無視できません。

 ところが実際に使ってみると,確かに吸引力の発生にはタイムラグがあるのですが,モーター自身の回転数が急激に上昇するため,かなり短いのです。AC電源のキャニスター式だと,モーターも大きくて,その慣性もかなり大きいので,空気の慣性以上に回転数が上がりきるまでのタイムラグが問題になります。

 ということで,頻繁なON/OFFという節電と使い勝手を目指した解決策が,モーターのレベルで考慮されていることに唸ってしまいました。

 よく言われるように重心の位置が良くて持ちやすいとか,そういう印象は私はあまりありません。重心の位置をいかに工夫しようと,重いものは重いし,握っていないと使えないからには,握力もそれなりに必要です。しかも,トリガ式のスイッチは,ONの状態に固定できないので,ずっと押していないといけません。

 加えて,タービンブラシが自走しません。日本の掃除機では,中級機以上なら自走式のタービンブラシがあるので,手で添えるだけで動いてくれますが,DC45ではそこまでの機能はありません。

 床との細い隙間で強い吸引力を作り,重量のある大きなゴミはタービンでかき込んで吸い上げるという仕組みですから,日本の掃除機とはちょっと違うと思います。

 日本の掃除機は,あくまでゴミを吸引することがメインで,タービンブラシは絨毯などに絡んだ込みをたたき出すための,補助に過ぎない扱いです。だからあれだけの吸引力が必要なのかもしれません。

 ルンバもそうなのですが,海外の掃除機の吸引力はそれ程強くありませんが,その代わりタービンブラシが主役扱いです。吸引力というのは,タービンブラシでかき集めたゴミを吸い込む為のものなんですね。

 この考え方の違いは,掃除機の使い方や得意不得意という個性として表面化しますが,ひいては小型に出来るか,コードレスに出来るか,という製品そのもののあり方にさえ,影響します。日本の掃除機の考え方では,確かにコードレスは作れないでしょう。


(6)まとめ

 10点満点で,3点です。DC45はレビューを見る限り評判も良いし,最近安くなったとは言え,登場時は6万円近い値段で販売されていた高級機ですから,実は私はもっと期待していました。

 もちろん,目的はきちんと果たしてくれそうですし,その点で損をしたとは思いませんが,もっと細かいところに配慮がるか,もっと基本性能に高いものをもっているか,そういう良い意味での裏切られ方を期待していたのだと,気が付きました。

 ただ,あの仰々し大げさなデザインは私は嫌いで,このマイナスポイントを補ってあまりあるDysonならではのメリットの存在が前提だっただけに,そのメリットがごく普通の掃除機レベルであることをしると,この外観が実に気の滅入るものになってしまいます。

 そんなわけで,DC45に限って言えば,実際に使って見る事をおすすめします。店頭でちょっと触っただけでは,きっと分からないものがあると思いますから,出来ればこれを使っている友人知人の家に押しかけて,実際に掃除をしてみて下さい。

 うまくすると,ルンバとの併用で,キャニスター型の掃除機は全廃出来るかも知れませんが,ルンバも使いこなしが難しく,ムラの大きな掃除機ですから,私の結論はルンバと同格の,サブ機です。

 個人的感想で言えば,3万円なら買いかなと思います。6万円ならもってのほか,とてもがっかりするんじゃないかと思います。付属品を減らして,実売で27800円てところではないでしょうか。

新しいKindle Paperwhiteはどうですか

  • 2013/10/23 21:35
  • カテゴリー:散財

 9月末に新しいKindle Paperwhiteが出ると聞いて,即座に予約をしました。発売日は10月22日で,随分先だなあと思ったのですが,気が付いたら手もとに届いていました。時間の経過が早いことを,こういう時に痛感します。ああ,歳は取りたくないものです。

 今回のKindle Paperwhiteは,見た目にほとんど変化がないので,マイナーチェンジとされていますが,読書端末としては確実によくなっています。だからこそ買い換えを即座に決めたわけですが,私の期待と実際を少しまとめてみたいと思います。

 先に書いておきますが,2012年モデルについては3Gモデルを選びました。そして今回の2013年モデルでは,WiFiモデルにしました。

 2012年モデルの時は,amazonがいよいよ日本でサービスを始めるということから,その最大の特徴として語られる3Gを試して見たいと思ったから,迷うことなく3Gモデルを買いました。

 しかし,実際に使い始めてみると,これから読まねばならない本が常に何冊か入っている状態ゆえに,出先で本を買わねばどうにもならないシーンというのが,全くなかったのですね。

 もちろん,面白そうと思ってさっと調べて,その場で買うことは何度もありました。しかし,そうやってあわてて買っても,実際に読むのはしばらく後です。買ったという満足感や達成感はありますが,「やっぱやめときゃよかった」と思う本もしばしばあったりして,3Gは衝動買いを助長するだけの存在だなと思ったわけです。

 そう考えると,3Gというのは「欲しい」という衝動を即売り上げに繋げるための,amazonの必殺兵器と言えるかも知れず,だとすればそのためにユーザーが費用負担をするのも,なんか違うなと思ったのです。

 理屈をこねていますが,差額分の利便性がなかったというのが,簡単な理由です。とはいえ,同じ本を複数の端末で読んだときに,しおりを同期出来る機能はさすがに便利で,こればかりは3Gの威力を感じずにはいられませんでした。ただし,これもKindleを複数持っていて,日常的に使い分けを行っていることと,あくまで同期はamazonでダウンロード購入したコンテンツに限られるので,自炊の本を読まない人(つまり従順なamazonの信奉者)でなければ,ありがたくないでしょう。

 一方で,3Gを搭載することのデメリットもあります。電池の消費が結構大きく,せっかくeInkを搭載する専用リーダーなのに,1週間ほどで電池が切れてしまいます。かといって,機内モードにして3Gをオフにすると,電池は1ヶ月ほど持ちますが,同期もしません。

 どこでも本が買えることは確かに便利ですが,電池が切れて読めないことは致命的な損失です。

 それなら,もうWiFiで十分です。安いし,わずかとはいえ軽いし,2000円のクーポンも付いてくるし。それに,おそらくKindle Paperwhiteは消耗品です。毎日持ち歩くものですから,破損などできっと買い換えがおきます。なら,安い方が良いですよね。


 では本題です。

(1)外観

 見た目はほとんどいっしょで,並べておけばどっちが新しいのかわかりません。1年間持ち歩いた2012年モデルも,案外使用感が付かず,綺麗なまま出あることに驚きました。ちなみに2012年モデルは,嫁さんに使ってもらうことになっています。

 大きな違いは,背面です。2012年モデルには「Kindle」と書いてありましたが,2013年モデルは「amazon」と書いてあります。まあ,本を読むときには背面は見えませんし,盲牌のように指で触ってその違いに気が付くほど訓練していませんから,私はどっちでも良いのですが,ぱっとみた印象でいえば,Kindleの方がよかったかなと思います。

 重さは2013年モデルはWiFiモデルを買いましたから少し軽いのですが,これは数字上の話ではなく,実際に手に取って見れば違いが即座にわかります。


(2)動かしてみて

 まず,画面が随分違います。2012年モデルはフロントライトの色が青っぽい色だったので,フロントライトを強くすると色味も大きく変わってしまったのですが,2013年モデルはペーパーバックの紙の色を意識したのか,黄色みがかったいろになっています。これは2012年モデルに慣れた私からすると,読み始めた一瞬の違和感につながります。想像以上に大事なことなんですね。

 フロントライトは,画面の上(というか横)から光を差し込むものですので,どうしても奥行き感が拭えません。しかし2013年モデルはかなり改良されているので,文字がちゃんと画面の上に並んで見えます。これは良いと思います。

 明るさそのものはそんなに変わらないようです。2012年モデルと2013年モデルで,明るさの設定は同じになりました。

 動作速度は,公表されている25%どころではなく,もっと軽快に動くような感じです。キーの入力,タッチ操作によるメニュー選択,そしてページめくりも非常に軽快で,ダウンロードコンテンツならもはやこれ以上早い必要はないように思いますし,自炊コンテンツについてもほとんどストレスは感じません。

 この点で言えば,自炊の人にとってありがたい進化だったといえるでしょう。

 機能はいくつか変更や追加がなされていますが,もともとそれらを使っていたわけではないし,本を読むという基本機能さえしっかりしていればそれでよいので,私は真面目に評価をしていません。

 ただ,メニューやダイアログのメッセージは随分修正や変更が入っています。とはいえ,2012年モデルも,とりたてておかしな所はなかったので,別に大した問題ではないなと思います。

 そうそう,そんな中で,フォントが追加になっています。2012年モデルは明朝とゴシックだけでした。ところが2013年モデルには筑紫明朝が追加になっています。筑紫明朝はフォントワークスの製品なわけですが,流麗で人気があります。おお,これが選べるのかとこちらを試して見ましたが,線が細くて表示が薄くなってしまい,読みにくくなりました。

 Kindle Paperwhiteはフォントをユーザーの手で簡単に追加できるので,ヘビーユーザーには青キン明朝を使っている人も多いと思いますが,これもIPAのフォントをベースに,線を太くしたものです。

 オリジナルの明朝は太すぎず細すぎず,それなりに読みやすいので,私は従来通りの明朝でいこうと思います。これがKindle FireHDXなんかだと,また違うのかも知れませんね。


(3)ストレージ

 今回私が買い換えたのは,なんといってもストレージが大きいことです。2GBが4GBになりましたが,この結果ユーザーのほぼ2GB増えました。

 ダウンロードコンテンツ主体だと2GBモデルでも大丈夫でしょうが,自炊したコンテンツも読む私は,2GBではかなり厳しいのです。これが4GBになると,かなりゆとりが生まれます。

 私はコミックは読みませんが,聞けばコミックのような画像中心のファイルはサイズも大きく,2GBではかなり不便だったらしいです。本国では2013年モデルでも2GBのままだそうで,4GBになったのは日本人の声に素直に耳を傾けた結果なのでしょう。結果として自炊の人にも恩恵がありましたから,こういう話は大歓迎です。


(4)電源スイッチの感触

 些細なことだし,個体差かも知れませんが,電源スイッチの感触が随分良くなりました。2012年モデルは飛び出し量がやや少なく,指で探しても結局分からないことがあった上,ストロークも小さく,押し損ねることが度々ありました。

 しかし,2013年モデルは,飛び出し量も適当で,ストロークもしっかりあります。指で探して確実に押し込むという作業が,歩きながら確実に行えるようになったことは本当に助かります。


(4)まとめ

 2012年モデルを持っている人で,コミックや自炊が中心の人は,買い換えてもそんな気分にならないでしょう。2GB搭載と言ってもユーザーエリアは1.25GB程度で,これが4GB搭載になるとユーザーエリアは3.1GBになります。ほぼ2GBまるまる増えるわけですし,増加幅で言えば実に2.5倍です。これは大きいですよ。

 画面も見やすくなり,なんと言ってもレスポンスが大幅に向上,もうe-Inkであることを忘れてしまう軽快感です。見た目に変化がないというのは地味ですが,手に持った感触に変化がないということは,毎日使う道具としてはとても大事な事です。私は変化がなくてよかったと思います。

 2012年モデルの使用頻度が低い人は,無理に買い換える必要はないと思います。追加された機能はそんなにありがたいものではないし,追加されたフォントも私はKindleに適当なものとは思いません。そもそも,2012年モデルも十分に完成されたものだったと思います。基本機能に対してほとんど手が入っていないのが,その証拠でしょう。

 ですが,2012年モデルが出た時に思った,自炊の人にはやや厳しい端末と評価したKindle Paperwhiteが,2013年モデルになって改良されたことは,とてもありがたいことです。amazonにとっては,自炊の人を幸せにしても儲からないわけで,積極的な対応をしないことは当然と私は思っていましたが,amazonの真意は別にして,自炊の人にもメリットの大きな改善が即座に行われ,しかも値段は実質据え置き(昨年に比べて円安になっているにもかかわらずです)ですから,大したものだと思います。


 ところで1つ残念な事があります。WiFiモデルは,2000円分のクーポンがついてくるはずでした。しかし,私にはまだ届いていません。この件,amazonからメールが来て,手違いで一部のユーザーにはクーポンが配布されなかったらしく,10月27日までに配布するので待って欲しい,と言うことでした。

 私は買いたいと思っていた本があるので,このクーポンを待ちわびているのですが,別に売り切れるわけではないし,すぐに読むわけでもないから,まあ待つことにします。でも,こういう手違いを飄々とメールで知らせるamazonは,失敗は少ないけど失敗したときの対応がいまいちな,近頃の若者のようなしますね。

 ああ,歳は取りたくないものです。

安定化電源器を買って速攻改造

  • 2013/10/21 12:29
  • カテゴリー:make:

 今年の春から,少しずつ(いや急激にといった方がいいか)整備を続けてきた測定器環境ですが,最後に残ったのが安定化電源器です。

 すべての回路のエネルギー供給を担う電源ですが,これほど手軽でこれほど身近で,しかしこれほど奥の深いものはないのではないかと思います。

 その範囲は広く,しかもそれぞれにノウハウが詰まった深さがあり・・・と語り出すときりがないのでやめておきますが,ここでいう安定化電源というのは,実験用の電源器で,平たく言えば電池の代わりになるものです。

 そう,我々日本人と電池の関わりは,本当に幼いころから始まります。存在を意識するのは,オモチャを動かすエネルギー源としてでしょう。動かなくなった理由が,電池切れであることから,ものを動かすには原動力が必要で,それは有限であることを学ぶわけですね。

 ところが,エネルギーを蓄えている電池が,そのエネルギーを放出して「ゴミ」になるのを見ていくと,一部の子供は疑問を感じるようになります。テレビや洗濯機はコンセントから電源を取るから電池交換が必要ない,つまりコンセントは「無限エネルギー」だ!

 これが大きな誤解であることはすぐに分かるわけですが,少なくとも小学生の私はそういう「夢」を,あのコンセントに投影していました。だから,電池から取り出せる電気を,コンセントから得られれば,もう電池交換から解放されると考えるのは,我ながら自然な事です。

 だから,我が家に最初のACアダプタがやってきたときには,まさにこれだと思いました。思えば,これが原点だったんですね。

 前置きが長すぎました。本題に戻ります。

 やがていろいろな機器に電源を供給することが出てくると,電圧の可変と3Aクラスの大容量が電源に求められるようになってきます。そうなるともうちゃんとした安定化電源器という装置が欲しくなってきます。これは自作の定番ですが,私は以前書いたように,小学校高学年くらいで手に入れた共立電子産業オリジナルの安定化電源器キットを買って,以来今まで使い続けています。

 0V付近から可変できる電源器は自作では希で,最大値は14V,3A近くまで出力が取れて,しかもサイリスタによる保護回路までついています。値段の張るトランスまで入って4000円ほどだったように思いますが,実はケースと放熱器という高価な部品が必要で,合計すると7000円近い値段になることを計算に入れてなかった私は,日本橋からの帰宅の途,カバンの重さとゴツゴツした放熱器の角があたる痛みに,打ちひしがれていたのでした。

 作ったときは2N3055の絶縁の仕方を間違えていて,動作しないばかりか一部の部品を壊していたことが,駆け込んだキット相談会で設計者に指摘されました。散々悩んで動かなかったものが動くようになったときのうれしさは格別でしたが,仮に動くようになっても予算の都合で電圧計も電流計もない電源器は,とても使いにくいものでした。

 しばらくして1500円の電圧計を取り付け,一応完成を見たわけですが,当時のことを思い出すと,このクラスの安定化電源器が8000円くらいなら,十分安いと言えたのです。

 使い始めて10年ほどしてから,放熱器をケースの中に置くこともテーマに置いて,新しいケースに入れ直しました。電圧計はデジタルにし電流計も装備して,さらに20年使い続けることになるのですが,長く使っていると問題点も見えてきます。

 1つは,案外安定度が低いこと。誤差増幅器のゲインが低いのが原因でしょうが,電圧の変動が結構あります。大電流を引くと,明らかに電圧が落ちますし,そこからの回復もゆっくりです。

 また,保護回路の仕組みがくせ者で,電流が増えると突然バシッと出力が0Vになるのです。すぐに切断されるので,突入電流でも切れてしまいますから,大きめの電解コンデンサを電源ラインに入れたりすると,さっと動いてくれません。

 そもそも,作ってからすでに30年ですから,そろそろ新しいものにしないと,危険かもしれません。それで,一昨年から秋月のキットを,今の電源器のケースとトランスと放熱器を流用することを考えていたのです。

 しかし,ここ最近,まとまった時間が確保出来ずに,ずっと棚上げになっていました。安定化電源器はちょっとした実験でも使うものですから,使えない時間は出来るだけ短くしたいと思う訳ですが,そんなことをいっていると,いつまで経っても取りかかれません。

 ですが,大人はお金で時間を買うことが出来ます。作る楽しみは逃してしまいますが,完成品を買ってしまえば問題は解決です。

 かくして,安くて使い物になりそうなものを,探してみることにしました。結果だけ書きますが,エーアンドディーのAD-8724Dを13600円で買うことにしました。この機種は16000円くらいが相場なので,安いと思います。

 いや,もっと安い中華製の物もあったのです。しかし,見るからに怪しいし,安いものにはそれなりの理由があるものです。一応国内の,測定器では有名なメーカーのブランドで売られていていますので,おかしなものではないだろうという期待もありました。

 AD-8724Dは,最大30V-2.5Aの電源器ですが,ファン内蔵で小さく安価なことが特徴です。その代わり出力をON/OFFするスイッチもないし,出力がGNDからフローティングされていません。電圧可変のボリュームは通常の1回転型で,やはりちゃんと作った電源器とは違うんだなと,カタログレベルでもわかります。

 ちょっと,仕様を他のメーカーのモデルと比較してみましょう。安定化電源器といえば,私は旧ケンウッドがお気に入りです。このうち,18V-2AタイプのPA18-2Aと比べてみます。

 まず,定電圧動作時の入力電圧変動ですが,AC100Vが±10%変動した場合の,出力電圧の変動は,PA18-2Aが1mVに対し,AD-8724Dは±(0.05%+2mV)です。比較のために18Vの出力をした場合,AD-8724Dは実に±11mVもの差が出ることになります。これはPA18-2Aが圧勝です。というか,差が大きすぎないか?

 次に負荷変動です。これも結構重要です。PA18-2Aは2.5mVで,AD-8724Dは±(0.05%+3mV)とあります。同じように18Vで計算をすると,±12mVですか。いやはや,結構大きいじゃないですか。なんかいまいちですよ。

 続けてリップルとノイズです。PA18-2Aは0.5mVrmsです。一方のAD-8724Dは±5mVrmsです。ヒトケタ違いますか・・・

 リカバリタイムは,PA18-2Aが50usec(typ)に対し,AD-8724Dは200msec以下とあります。これもPA18-2Aの圧勝。

 気を取り直して,定電流動作時です。入力変動はPA18-2Aが2mA,AD-8724Dが±(0.2%+2mA)です。比較のために2Aとすれば,AD-8724Dは±6mAとなります。
 
 むむー,では負荷変動はどうだ。PA18-2Aは10mAですが,AD-8724Dは±(0.2%+3mA)です。2Aで計算すると7mAです。おお,はじめてPA18-2Aに勝った!

 リップルとノイズは,PA18-2Aが1mArmsで,AD-8724Dが±3mArmsです。

 電圧計と電流計の精度については,PA18-2Aが0.2%+1digitと1.0%+2digitですが,AD8724Dは1.0%+2digitと2.0%+2digitです。まあ,これらは電圧のレンジが違いますので単純比較は出来ませんが,やっぱりAD-8724Dが負けているということです。

 総じて分かった事は,AD-8724Dはやっぱり安いなりのもんだということです。これなら,PAA18-2Aの中古でも探して,1万円そこそこで買った方が良かったかもしれません。正直,AD-8724Dがこの程度とは思っていませんでした。

 ま,新品が13000円ほどですので,これはもう部品代だと思って,買うことにします。

 届いたものは,そんなに悪いものではありません。2Aを越える電源器にしては小型ですし,放熱器が外に出ていない上,奥行きも小さいので,設置面積の小ささと相まって,置き場所には困らないように思います。(反面,放熱設計は大丈夫なんかいなと,不安になりますが)

 ケースは鉄製で,塗装は厚めですが,塗膜は柔らかくて,傷は付きやすいです。パネルはABS製ですが,デザインもいまいちですし,仕上げもよくありません。いかにも中華製という感じです。

 後述しますが,電源投入時に,一瞬大電流が流れることがあるようで,この時にトランスが大きく振動します。その時に「ブーン」と大きな音を出すのですが,ケースのビビリがあって,壊れたのかと思うほどです。これは対策しないと行けないですね。

 もう1つ,CVとCCの状態を示すLEDです。印刷を抜いた部分がLEDの光を通すようにしてあるシートがパネルには貼り付けられていますが,このLEDのあいた部分にも,両面テープが残っているのです。見た目にもどうも不細工です。

 電圧と電流の設定は,通常の1回転のボリュームで行いますが,このボリュームが16mmタイプのとても安価なもので,私のものは外側のカバーが錆びていました。密閉されたものでもないし,感触も悪く,ここの信頼性は電源の供給先を壊してしまう可能性に直結するわけですから,こだわって欲しかったなあと思います。

 お金のかかった電源器は,ここに多回転ボリュームを使って,10回転とか5回転で幅広い電圧幅を可変するようにするか,あるいは微調整用のボリュームをもう1つ用意するか,どちらかなのですが,そのどちらでもない電源器というのは,自作品の香りさえしますね。

 背面のファンですが,取説によると,温度が上がると自動的に回るとあるので,普段は止まっているのだと思っていました。ところが私のものは,電源を入れると同時に,ファンが回り出します。といっても,音がするほど回転するわけではなく,ゆっくり回っているだけです。内部の温度が上がると,もっと高速に回転するようになるのかも知れないですね。

 てな具合に,しげしげと届いたAD-8724Dを見ていると,やぱりもっと使いやすいものにしたいなと思うようになりました。maker:としては自然な感情ですが,問題はどこまでやるかです。


(1)多回転型ボリュームへの交換

 安定化電源器を自作する予定で,バーンズの多回転型ボリュームと専用のツマミを買ってありました。抵抗値も10kΩで交換可能なのですが,問題は物理的なサイズです。

 試して見ると,やはりパネル背面の基板にぶつかってしまいます。悔しいので基板を削って,うまく収めました。

 次にツマミです。ボリューム本体がパネル表面に取り付けられていることが前提で,シャフトの飛び出しがそれなりにないと取り付けられないのですが,今回はボリュームを5mmほど窪んだところに取り付けています。

 ツマミのイモネジがギリギリシャフトにかかるかどうか,というところでしたが,やっぱり駄目でした。このままでは取り付けできません。

 そこで,ツマミの台座ををはずし,高さを低くし,さらにツマミとパネルを密着しておくように,接着剤で外枠を貼り付けました。

 これでイモネジがシャフトに届いたのですが,接着剤で固定したが故に,ツマミの偏心を吸収することが出来ず,回転トルクにムラが出ます。これは操作感の悪さ以上に,ボリューム本体にも悪影響があるでしょう。

 これはまずいと,最後の手段です。

 ツマミが来るところに張り付けられている,パネルの化粧シートを丸く切り抜き,0.5mほど稼ぎました。そしてこの部分を遊びとし,接着剤を使わずに,回転防止のボス穴だけあけて取り付けました。

 結果は上々で,偏心をうまく吸収し,スムーズに回転するようになりました。残念なのは,このシートのくり抜きが下手くそで,真円に綺麗になっていないことでしょうか。まあ私は鈍くさい人ですので,こればかりはどうしようもないとあきらめていますが・・・

 電圧の可変も10回転型ですので気分良くできます。使い勝手も向上し,信頼性も上がりました。これは良いです。


(2)電源スイッチの交換

 電源スイッチはよくあるサイズの波動スイッチです。しかし,感触も見た目も悪く,これはいやだと体が拒みます。

 そこで,手持ちの国産のスイッチにしました。とはいえ,長く使っていないものなので,端子が酸化して黒くなっています。ハンダゴテを当てすぎて熱で壊れたのですが,捨てるのも惜しいので,もう片方の回路を使って逃げました。情けない。

 感触もよく,見た目もよいので,小さな改造ですが,満足ですね。


(3)バックライト

 純緑のバックライトは品がないので,アンバーにしようと思いましたが,バックライトの交換はLCDまで分解しないといけない構造になっていたので,やめました。


(4)トランスのうなり

 トランスのうなりは仕方がないのですが,これが筐体を振動させるのがどうも許せません。特に,上ケースと下ケースのつなぎ目の部分にある隙間で,ビビリが出ているのは看過できず,ここにスポンジを貼りました。

 まだどっかがびびっていますが,かなりましになりました。このくらいでもういいことにします。


 ということで,これで一応電源器の改造はこれでおしまい。使い勝手はかなり向上しましたが,いかんせん基本性能の低さは解決が難しいので,このままにしたいと思います。

パーツランド,よく頑張ったよ

 日本橋のパーツ店は,どういう訳だかここ数年で数も増え,充実したものになっています。シリコンハウス共立は大きなビルに移転,関東からは千石電商がなぜか進出,福井に本拠を置くマルツ電波が日本橋にも店を設けています。

 小さな部品屋が閉店し,ジョーシンがパーツ販売から手を引いて,ニノミヤが廃業して,すっかり寂しくなった日本橋の自作環境が,なぜこんなに盛り上がってきたのか,アキバと遜色ないレベルになってきたんじゃないかと,そんな風にさえ思います。

 そして,そのノニミヤから独立した部品屋が,パーツランドでした。

 過去形なのは,パーツランドが10月14日の営業を持って,破産したからです。

 パーツランドは私にも,思い入れのあるお店でした。ニノミヤのパーツ売り場は,大昔は郊外のお店にもあったそうですが,私が部品を買うようになってからは,日本橋のお店になっていました。それでも,本店,エレホビー店,そしてパーツ店と3つで扱いがあったほどです。

 パーツ店は規模も小さく,私も1度行ったくらいで閉店しましたが,本店とエレホビー店は長く残っていました。バブルがやってきて,本店からはパーツ売り場が消えてしまいましたが,エレランドと名前を変えた日本橋の北の端にあったお店は,価格も安く,非常に充実した品揃えで,私は部品を買うときには必ず立ち寄っていました。

 そのうち,ノニミヤ自身が怪しくなりました。買収,破綻と続いてニノミヤは消えてなくなりましたが,法人需要がしっかりあったパーツ部門の業績は良く,いわば巻き添えを食ったような感じになったようです。

 しかし,凄いのはここからです。パーツ売り場の有志が,その資産を譲り受け,パーツランドを立ち上げました。ニノミヤ時代から顔をよく知っている人が,パーツランドにいた時には,ほっとしたような気分になりました。

 2007年に日本橋にオープンしたパーツランドですが,当初は什器も在庫もニノミヤ時代のままでした。随分落ちぶれたとはいえ,大阪のど真ん中の賃貸料は安くないはずで,とてもたいへんだったろうなと,思います。

 すると,ジャンク専門店が2つ目の店としてオープン,儲かっているんかい,と思っていたら,このお店を統合して大きな店舗に移転,2010年から営業を続けていました。

 店のカラーは相変わらずニノミヤ時代の赤。品揃えは相変わらず,ナショナルブランドのケースや測定器,機構部品に強く,キットも豊富にありました。

 日本橋という地域の凋落が進む中で,もともと専門性が高く需要が限られている電子部品販売において,新規のお店がいくつも開店したり,より大きなお店に改装があったりと,競争は厳しくなっていったように思います。

 パーツランドは,堺筋に面した良い場所に店がありましたが,それでも厳しいものがあったのではないでしょうか。

 ネット通販がここまで進化し,部品の値段に比べて送料が高くて割が合わないと,最後までリアル店舗での買い物が主流になっていた電子部品も,最近は通販が普通になってきました。

 こうなると,もう全国区のお店が圧倒的に強く,知っている人だけ知っているというお店は,淘汰されていまいます。パーツランドのように,リアル店舗が日本橋のど真ん中にあって,そこそこの規模を誇っていても,通販を利用する人がここを使うかどうかは,純粋に知名度の問題だと言えるからです

 かくして,パーツランドは資金繰りに行き詰まり,破産しました。

 9月頃からセールをやってたそうですので,そのころからすでにやばかったのでしょう。最後まで店舗移転のためのセールと言っていたので,最初は小さいお店に移転するか,通販に特化するかの対応を考えていたように思いますが,10月に入ってからはセールの割引率が大きくなり,最終日には7割引とか,そんな状態だったそうです。

 そして今はシャッターに破産したと張り紙が貼られていますので,途中から破産することが決まっていたんじゃないかと思います。

 私は内部事情を全く知りませんが,パーツランドはもっと堅実にやっていく方法があったんじゃないかと思います。せっかく立ち上げ時には資産を継承することでうまく離陸できたのに,その後調子に乗ってお店を増やしたり,大きな所に移転したりしたのは,無駄遣いだったように思います。ここは,存続を第一に考えて,最初の狭いお店から動かず,通販と法人を開拓すべきだったのではないでしょうか。

 少なくとも,私はパーツランドに特有に個性をちゃんと感じていました。そこをアピールすることは,マニアックな顧客を惹きつける力になったように思えてなりません。


 自作PCのパーツ店がアキバでも閉店することが珍しくなくなりましたし,電子部品についてもアキバの原風景たる,ガード下のラジオストアが閉店します。それぞれ理由は異なりますが,自作のための部品を売る店がなかなか成り立たなくなっているということは,事実でしょう。

 シリコンハウス共立が大きくなり,マルツが全国にパーツ店を展開するという,私にはちょっと首をかしげるような動きがあったこの10年ですが,日本橋の名門ニノミヤを源流に持つ貴重なパーツ店が,奮闘むなしく終焉を迎えたことが,寂しく,残念でなりません。

 大阪を離れて,私も日本橋で買い物をする機会は激減しました。帰省すれば必ず立ち寄った日本橋ですが,どんどん枯れていってしまうような気がしてなりません。

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