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2019年10月の記事は以下のとおりです。

Rollei35LEDその後

 Rollei35LEDですが,なかなかうまく進みません。

 先週の休みにはモノクロを1本通して,最終的な動作の確認とフードのケラれを確かめたつもりだったのですが,モノクロではどうもはっきりせず,わかりやすいカラーネガで再確認をしました。

 しかし今度は自家現像に失敗。温度が低かったようで,どうも綺麗に撮影出来ていません。

 フードのケラれですが,はっきりした結論を出すことは出来ないのですが,傾向はつかめました。

 まず,Rollei35とRollei35LEDで,フードの互換性はありません。Rollei35はケラれにくいのですが,Rollei35LEDは簡単にケラれます。

 Rollei35LEDでは,2つのメタルフードとUNのラバーフードのいずれの場合でも,フィルターとの併用は出来ません。

 そしてラバーフードは単体の使用でもケラれます。メタルフードは口径が大きくて浅いものと,口径が小さくて深いものを比べていますが,どっちも出たり出なかったりではっきりしません。

 そもそも,フードなしでも四隅が陰ることがあるので,これってケラれではなく周辺光量の低下かも知れないのですが,40mmF3.5のレンズで口径食ってのもおかしい話なので,よく分からないです。

 まあ,いろいろ見ていくと,口径が小さく深いフードだとなぜだかケラれが少ないようでしたし,ついでにいうとフードがファインダーの視野に入り込んでくる量がまだ少ないので,今はこっちを使っています。

 写りなのですが,このTriotarを皆が絶賛する理由がさっぱりわからないというレベルです。解像度も低く,シャープさがありません。コントラストも低いし,色も悪いです。周辺の画質の低下はひどいし,はっと見の印象は,トイカメラです。

 ただ,色とコントラストについては現像がまずかったので断言出来ません。解像度などの画質についても,撮影したのがF16のパンフォーカスで露出がアンダー気味と,F4で近距離で室内という悪い条件ですから,これでTriotarがダメだと言い切るのは可愛そうで,もう少しコンディションを整えて撮影しないと結論は出せません。

 トリプレットでかつフォーカスも前玉だけを移動させる方式ですから,近距離で絞り開放はちょっと酷なはずで,F11あたりまでしっかり絞り込んで2mから3mくらいの被写体をきちんと撮ってみたいと思いますし,F16まで絞り込んだらパンフォーカスで,きちんと露出を適正にしておきたいと思っています。

 とにかく,現状の画質では,これがTriotarの実力なのか,それとも私の個体の問題なのか,はたまたレンズ研磨のせいなのか,さっぱりわかりません。悪いなら悪いなりに,それでもまだ使えそうな条件を探し出したいわけで,なかなか骨の折れる作業になりそうです。

 そう,シャッタースピードをここに書いていませんでした。

 修理完成後になんどもシャッタースピードは測定しています。今回のRollei35LEDは,シャッターのスプリングは破断していて,これを同じ径のギターの弦で代用していますから,1/500秒に自信がありません。

 で,結果がこちら。


1/30 26.6ms
1/60 12.9ms
1/125 6.8ms
1/250 4.16ms
1/500 2.36ms

 この結果ですが,何度か測ったうちで,それぞれのシャッタースピードで良い数字が揃ったものを選びました。といってもばらつくのは1/500秒だけで,それ以外はまあこんなもんです。

 1/500秒は,ここでは2.35msとJISに入っていますが,2.5ms付近になることもざらですし,2.8msや3msを越える事もしばしばあります。遅めになることも問題ですし,値が大きくばらついてしまうことも問題です。

 ただ,今回の試写では1/500秒でのバラツキも分からない程度でしたし,ネガで使っている分にはもうこれでいいかもしれないと思っています。

 シャッタースピードが遅くなるほど安定していて,調速機構がしっかり動いてくれていることを実感します。1/500秒以外の数字はなかなかよくて,安定性もありますから安心して使えます。

 露出計もまだよくわかりません。単体露出計と比較しても大きく違いませんし,Rollei35と比べても違いは出てきません。しかし,露出計の画角がどうも大きく違っているようで,少し向きを変えないと同じ値にならないときもあります。このあたりのクセを掴むのが大変です。

 無限遠が出ているかどうかも確かめたかったのですが,とにかくどこもかしこもボケボケで,シャープさがどこにもないので判別できません。ピントの調整に失敗しているのか,バックフォーカスが狂ってしまったのか,レンズ研磨に失敗したのか,組み立てに失敗したのか,掴みどころがありません。

 フィルムのジャミングも原因がわかりました。私の装填ミスです。フィルムのベロをスプールに差し込むとき,三角形のマークがあるところにしか差し込んではいけないのですね。

 私が使っていた一眼レフでは,スプールの溝ならどこに突っ込んでもよくて,突っ込んではいけない溝があるとは思っていなかったのでした。

 ということで,なにやら問題だらけで実用にはほど遠いRollei35LEDですが,比較のために撮影したRollei35の高画質に改めて感激したことを付け加えたいと思います。

 これ,本当にこの小さなカメラで撮ったのか?と思うほど精緻な画質です。さすがTessar,恐れ入りました。

 

 

TIのICが秋月で買えない

 何を今さら,という感じのニュースらしいのですが,たった今知った事なので私はとても驚いています。

 ついさっき,秋月電子のサイトでTIのオペアンプを見ていました。いつもは見る事のないQ&Aを眺めていると,9月と10月に追記されたものが目に付きました。

 ディスコンでもないのに在庫限りなのはなんで?

 ・・・え,どういうこと?

 秋月電子からの回答は,なんでも,TIがエンドユーザーを特定出来ないお店には販売させないという方針を取ったとのことで,これにより秋月では販売出来なくなったそうです。

 ちょっと待って下さい。

 TIはICの発明者を擁していたほどの半導体の老舗にして名門で,古くはシリコントランジスタで存在感を高め,74シリーズのロジックで世界を制覇,1990年代からDSPに軸足を移したかと思えば近年はアナログICに舵を切り,名だたるアナログICメーカーをことごとく傘下に収めた,超巨大半導体メーカーです。

 正直にいえば,私にとってのTIは廉価版オペアンプとセカンドソースのメーカーであって,安く安定して手に入る製品を用意してくれていることが最大の価値でした。

 個性が強い,超高性能なICは,TIには結びつきません。

 様々な機能を持つ面白いICが揃っていて,データシートを眺めているだけで楽しかったナショナルセミコンダクタ,オーディオ用のAD/DAコンバータで先頭を走り,強烈な性能のオペアンプに憧れたバーブラウンも,すでにTIに買収されてしまいました。

 TIの資金力と人材をもってすれば,ナショナルセミコンダクタもバーブラウンも主要製品は安定供給されるだろう,特にアマチュアにも優しかったナショナルセミコンダクタが安定的に存続することは大歓迎だと思っていたのですが,まさか市中の部品屋さんで買えなくなってしまうなんて,想像もしていませんでした。

 調べてみると,この方針が出始めたのは今年の3月頃。すでにこの頃から一次代理店以外の流通が止まりつつあることがわかります。特に我々アマチュアが親しんでいた秋月電子やマルツ電波からは,買えないものが出始めていました。

 根拠のない噂話ですが,事の発端はある中国の代理店が,最終製品に搭載すると見せかけて安く購入した部品を高い値段で流してボロ儲けしていたことにTIの幹部が激怒,その部品が誰の手にあるのかを完全に把握出来ないところには売らないと決めたらしいです。

 まあ,こういう面白い話には嘘も混じるものですが,特に中国の「偽物」にはどの半導体メーカーも顧客も頭を痛めているのが現状で,TIが手間暇かけてきちんと流通を管理するという今回の決定によって,偽物が一掃される可能性があります。

 少なくとも,市場に流通している部品はすべて正規品と言うことになるので,顧客は安心してTIの製品を買うことが出来るようになります。これは大きなメリットです。

 でも,電子工作を楽しむ子供たちにとっては,そんなことは理解出来ません。

 TIの製品は,高価で超高性能なものばかりでなく,また特殊なものばかりでもなく,昔から汎用品として長く使われてきたものも多くあります。入手しやすい,安く買える,性能が間違いないということでTIを使ってきた製作記事の執筆者も多く,この方針変更はそうした信頼を根底から覆すものです。

 もっとも,そうした汎用品はTI以外からも販売されるので実害はないのかも知れませんが,他社を買収し市場を独占した会社は,その決定が与える影響を熟慮して欲しいのです。

 その上で,中小企業やアマチュアなどの弱者を救うのも,お金のある大きな会社の仕事の1つにして欲しいなあと思うのです。

 TIのケースでは,TI自身が直販サイトを立ち上げています。誰でも買うことが出来ますが,さすがに1個からというわけにはいきません。送料もそれなりにかかりますし,単価もあまり安いわけではなく,問題のは納期です。店頭でその場で買えるほどの迅速さは当然なく,1週間も程もかかってしまうようです。

 ならdigikeyなどのTIが認めたディストリビュータ経由で買えばいいんじゃないか,と思う訳ですが,クレジットカードと海外発送が前提になっていることを考えると,中学生くらいの子供が秋葉原でTIのオペアンプを2つ買って帰るということが出来なくなってしまうことはまず間違いありません。

 こうして,私にとっては子供の頃から馴染みのあったTIが,とても遠い存在になってしまうのです。残念でなりません。

 思えば,1980年代までの日本のメーカーの半導体がこんな感じでした。小さい部品屋さんはNECや東芝,日立といった巨大企業と直接取引できるわけはなく,代理店の商社が間に入って,小さな部品屋さんに卸していました。

 基本的に自社の最終製品のために半導体を作っていた日本のメーカーは,汎用品よりも特定用途向けの半導体に面白いものが多かったのですが,それゆえに代理店が扱わないものも多くあって,結局部品屋さんの店頭に日本のメーカーの半導体が並ぶことは少なかったのでした。

 だから,興味を持った製作記事に日本のメーカーのICが使われていると(そしてそれらの多くはキーデバイスだったりする),絶望的な気分になったものです。

 日本の半導体メーカーの力が落ちて,面白いものも安いものも海外のメーカーのものになって,ことアマチュアの半導体の入手は随分と楽になったと思っていたのですが,今回のように最大手のTIが部品屋さんに部品を売らせなくするという話になると,時代が逆戻りしてしまったように感じます。

 TIのように高性能アナログICをいわば寡占しているメーカーが,他に変わるもののないナショナルセミコンダクタやバーブラウンを買ったのですから,買った側にも一定の責任が発生すると私は考えています。

 資金力に任せて市場を独占した上で,市場をコントロールすることに問題があるという考え方は,各国の独占禁止法の根拠となっているわけで,今回のケースでは,TIという会社が中小企業を顧客と見なさないことに,企業の責任が問われるんじゃないかと思うわけです。

 データシートの配布については,著作物であるデータシートを勝手に配布していることに私は問題を感じていたし,公式のホームページに行けば手に入るものであればその方が安心だし確実なので歓迎すべきことだと思います。

 しかし,TIもそうなのですが,かつては日本語のデータシートを用意していても,今は日本語を用意しないことも多く,最新版をダウンロードしたら英語のみだったという事は頻繁に起こります。

 加えて,ディスコンになったもののデータシートもダウンロード出来ない場合が多いです。部品屋さんにしてみれば,自分達が今売っている商品のデータシートを提供出来ないことは確かに問題でもあります。

 ということで,TIのような最大手が流通に縛りを入れて来たことに私は警戒心を解くことが出来ません。他の会社が追随しないことを願うばかりです。

 

Rollei35LEDのレンズ研磨

 メカ,電気回路の修理や調整が思いのほか順調に進んだジャンクのRollei35LEDですが,レンズのキズだけは素人にはどうにも手に負えないという話をここに書きました。

 このキズ,なんだかよくわからないのです。問題の箇所は前玉の表側,おそらくカビがコーティングとガラスの間に入り込んで,それを無理に拭き取ったんじゃないかと思っているんですが,コーティングを剥がしてもキズが残るので,ちょっと違うかもなあと思ったりしています。

 しかし,コーティングの表面を指でそっとなぞってみても,段差を感じる事はなく,コーティングそのもののキズという感じもしないのです。

 コーティングの問題だけなら,フレアやゴースト覚悟で剥がしてしまうという手があるわけですが,今回はコーティングを剥がしてもキズは残ってしまったので,得るもののない残念な結果になりました。

 コーティングを剥がすこともしないでキズがあるままのレンズで使った方が結果は良かったんじゃないかとも思ったりしましたが,もう曇っているといっていいほどの大面積のキズでしたから,これが撮影結果に影響しないはずはありません。

 ここに至って前玉を交換するしか素人には残されていないわけですが,わかったのは,前玉を手に入れようにもこの廉価版Rollei35に搭載されているTriotarというレンズは良く写るレンズとして人気で,中古市場でも人気があり安く買えないということでした。

 ボディがダメでもレンズだけ外して,最近のミラーレスのマウントに改造してしまうことも行われているそうです。

 まあ,いずれ前玉だけ生きている個体を手に入れて交換するとして,当面この曇ったレンズでどうにかせねばなりません。

 ここで,私は素人厳禁,禁断の「レンズ研磨」に手を出すことを思いつきます。

 コーティングまではアルミナなんかの研磨剤で剥がすことが出来るのですが,さすがにガラスを研磨することは出来ず,酸化セリウムを使ったガラス研磨剤を使う事になります。そんな特殊な研磨剤,手に入るんかいな・・・

 ・・・ありました。

 自動車用品のうち,フロントガラスの頑固な水垢を取り除くケミカルとして,「キイロビン」なるものが,それです。

 これ,どこでも安価に買うことが出来る酸化セリウム入りのガラス用研磨剤として,自動車ファンだけではなくオールドレンズマニアも古くから使い続けられているものらしく,これを使って曇ったレンズを磨いて復活させる話が,チラホラでています。

 多くは波打ったように研磨してしまい,成功したんだか失敗したんだかはっきりしなような話だったりするのですが,ナノメートル単位の波長の光を扱うレンズですから,ちょっと厚みが変わったら光学性能が変化するのはもう自明です。

 ということで,私はこれを素人が手を出してはいけない禁断の技術と考えていました。

 しかし,目の前に曇ったレンズがあります。もうコーティングも剥がされています。失うものはありません。

 やってみましょう。

 キイロビンは500円弱で買えます。ガラスの研磨剤って私は初めて使うんですが,どれくらい磨いたらいいんですかね・・・

 そんなこんなで,22日の午前中に届きました。早速作業開始です。

 まず,前玉を外します。

 レンズを枠から外すのが一苦労で,プラモデルのポリキャップみたいな素材で出来た内枠を外枠に圧入し,レンズを押さえつけて固定していますが,この内枠を外すのが大変でした。再利用しますので,壊してしまったらだめですし。

 なんとか外してレンズを枠から外します。

 そして,研磨剤が裏面に回り込まないよう,マスキングテープを貼り,さらに固定するために両面テープでキイロビンの入っていたケースのフタに張り付けます。

 最初は指で,疲れてきたのでシルボン紙を丸めてレンズの曲率に近づけて,キイロビンを含ませ,レンズ全面を磨きます。

 15分ほども磨いたでしょうか。根気よく磨いて水洗いして様子を見ると,おお,見事にキズが消えています。波打ったような研磨にもなっていませんし,ぱっと見れば新品のレンズと違いません。

 ただ,縁に若干コーティングが残っており,ここにプツプツと白い点が出ています。まあ,これは枠に隠れてしまうので,放置します。

 うまくいったので,アルコールで汚れを落とし,枠にはめ込み,内枠を圧入します。これできちんと固定できました。

 少しキズも残っていますが,これまでとはもう雲泥の差。これ以上やると失敗しますので,このあたりで撤退です。

 それでも,これまで気になって仕方がなかったキズもクモリも消えていて,吸い込まれそうな透明で美しいレンズになっています。なんかすごいなあ。

 早速レンズとして組み立て,無限遠を出し,完成です。

 これだけ綺麗になれば,組み立てミスがあったり研磨しすぎて変形していない限り,光学的な問題はないと思います。ただ,メカ的な修理の不備があるかもしれず,まずは10年もののTRI-Xでテスト,その後カラーネガを使ってみようと思います。

 実は,ガラスの研磨剤として売られている「ガラセリウム」という商品も購入したのです。しかし,このキイロビンで十分であることがわかりました。

 さすがはオールドレンズ磨きの定番。先人達の知恵に脱帽です。

 しかし,私は別にオールドレンズファンではありませんし,コーティングを剥がしてまで磨きたいレンズは,このRollei35LEDのTriotar以外にありません。

 もしかするとくもった鏡とかに使えるかも知れないですね。ガラスのキズって意外にあちこちにあるものですから,便利に使えたりするかも知れません。

 

10年寝かせたTRI-Xは使えるか

 フィルムが高価なものになることは予想できていましたが,デジカメの高画質化が急激に進んで,一眼レフの多機能化が撮影者を支援するようになって,その結果が写真に反映されることを素直に受け入れるようになると,もうフィルムを使う事はないかなあと,思うようになりました。

 惜しいことに,5,6年前の引っ越しの時に大量のカラーネガフィルムを捨ててしまったのですが,これもナニワカラーキットが発売停止になってしまったことを無関係ではありません。一々写真屋さんに700円近い費用を支払って現像に出す事の手間を考えると,当時の私がもうフィルムは捨ててしまおうと思った事に,今の私も異を唱えることは出来ません。

 カラーネガ以上に深刻なのがモノクロフィルムです。

 もちろん,今でもモノクロフィルムは手に入りますが,1本1000円ほどもするというとても高価なものになっています。カラーはお金がかかるからモノクロという時代を生きた私には,考えられない変化です。

 かつての「仕方がないからモノクロ」から「モノクロでなければならないからモノクロ」の時代になったということなのですが,そんなモノクロのメリットの1つが,自家現像が簡単であり,今でも薬品が普通に調達可能であることがあると思います。

 カラーネガについては,ナニワカラーキットがあった時代はやる気さえあれば自家現像を行えました。しかしこのキットの入手が不可能になっただけでなく,カラー現像に必要な薬品類をバラバラに手に入れる事も事実上不可能なってしまったことから,もう外に出すしか選択肢が残っていません。

 モノクロフィルムはフジフイルムがそろそろ復活させるころだと思いますが,それにしても100ftの長尺はラインナップされないでしょう。自分でパトローネに詰め込んでやれば1本200円くらいで使えたので私も何度か買った100ft缶は,安価なものでも1缶7000円,TRI-Xだと15000円もします。

 そんなおり,今から10年ほど前にパトローネに詰め込んで,使い切れずに残ってしまったTRI-Xが5本ほど出てきたことを先日ここに軽く書きました。当時の缶も出てきたので確認すると使用期限は2008年とありましたので,実に11年も常温で放置されたフィルムということになります。

 さすがにもうだめだろうと,即座に捨てようと思ったのですが,昨今のフィルムの値段を見ると簡単に捨てるのも惜しく,修理したカメラのテスト撮影くらいなら使えるんじゃないかととっておくことにしました。

 しかし,もしフィルムの感度が落ちきってしまっていたら,カメラが悪いのかフィルムが悪いのかわかりません。なので,フィルムの実効感度を確かめるためのテスト現像を行う事にしました。

 F3に詰め込んで,ISO400,200,100,50,25相当で撮影をし,カメラごとダークバッグに入れてフィルムを取り出し,タンクに入れます。

 そして現在でも安価に入手可能なフジのスーパープロドールで現像をします。スーパープロドールはTRI-Xでの現像時間が当然発表されていないので,ネオパンPREST400の現像時間で現像します。液温は18℃で5分ちょうどです。

 定着後,ネガの状態をみて実効ISO感度と現像時間を決めていきます。

 さて,10年経ったTRI-Xはどんなものか・・・ドキドキしながらタンクをあけます。

 お,うつってるうつってる,とりあえず生きています。

 ネガを見てみると,明らかにISO400では感度が落ちていて,薄いネガになっています。ISO200ではギリギリ,ISO100なら実用レベル,ISO50とISO25は明らかにオーバーです。

 しかし,ISO100はちょっと使いにくいので,ここはISO200にして現像時間をもう少し延ばすことにしましょう。なんと,ISO200のモノクロフィルムが5本も手に入ってしまいました。うれしい。

 ところで,スーパープロドールとスーパーフジフィックスは今でも購入可能なので,一応買っておきました。ですが,タンクやダークバッグを押し入れから引っ張り出したとき,やはり10年くらいまでに購入した薬品類もたくさん出てきたので,先にこちらを使う事にしました。

 まずスーパープロドール。懐かしい紙の白い袋で,裏面にはネオパンSSの現像時間も記載されています。

 3袋も出てきたのですが,どれも袋の端っこが茶色になっています。なんかやばそうだと思いつつ,30℃の水を1L用意して開封したところ,中から出てきたのはコーヒー豆かと思うほど真っ茶色になって,じとじと湿気を吸い込んだ変わり果てたスーパープロドールでした。

 これはいかんと,即座に捨てたのですが,他の袋も茶色くなっていることから,開けるまでもなく使えないだろうと思います。もったいないことをしました。

 仕方がないので,先日買ったばかりの新しいものを溶かして現像液の完成です。

 次は定着液です。これもスーパーフジフィックスを2袋とフジフィックスを1袋も買い込んであったので,先にこれをつかいます。当時のスーパーフジフィックスは,A剤とB剤の粉末を溶かして作るんですよ。(ちなみにフジフィックスは単剤です)

 なにやら古い砂糖の袋のようにカチカチに固まっていますが,まあ定着液はアバウトでいいのでなんとかなるでしょう。

 30℃の水を1.5L用意し,A剤と溶かします。がA剤は吸湿し溶けて,一部が変色しています。うわー,これはまずい。でも全量投入し撹拌,塊は手を突っ込んで握って砕いて根性で溶かします。

 B剤も同様に吸湿がひどく,一部液体になっていましたが気にせず全量投入,同じように握りつぶして撹拌しますが,かなり溶け残っている上,マッコリのように白濁していますし,しばらくすると硫黄のような黄色い,肉を煮込んだときに出るアクのようなものが浮いてきました。明らかにまずい。

 しかし,定着液はアバウトです。フィルムの切れ端を突っ込んで5分放置してみたところ,ちゃんと乳剤が溶けて抜けてくれました。多分使えます。長期保存性や画質への影響はあるでしょうけど,テスト撮影ですし5本だけですから,もうこれでいいです。

 娘は棒温度計に興味津々です。先端を指でつまみ,温度が上がっていくことを面白がっています。水銀ではなくアルコール式なのでまだ安心ですが,こういうアナログな温度計というのも,最近は珍しいからでしょうか。

 それにしても,フィルムの現像というのは楽しい時間です。1分ごとに10秒の撹拌を行う事にすると,気を抜けるのは50秒だけですから,ぼーっとする時間もありません。こういうインターバルがあるからこそ,なにか思索にふける時間として面白いと思えるのかも知れません。

 ということで,修理が終わったばかりのRollei35LEDにこのフィルムを詰めて出かけたのですが,途中で巻き上げ出来なくなりました・・・

 数枚撮影したところで発生したトラブルなので,もう捨てることにし,そのままフィルムを取り出します。そして撮影済みのフィルムをはさみで切り離し,未撮影のフィルムの先端を整えて,もう一度Rollei35LEDに詰め込みます。

 どうも,巻き上げのスプールが動いておらず,スプロケットが無理にフィルムを送るので,フィルムがスプールの手前で折れ曲がっていました。

 しかし,フィルムを装填しないで巻き上げてみると,ちゃんとスプールは回っていますから,フィルムの装填の仕方が悪いのかもしれません。フィルムのベロが軸にお反対側からそのまま飛び出ていたせいで,フィルムが綺麗に巻き取れなくなっているように思いました。

 今回は丁寧に巻き,撮影再開です。

 しかし,今度は10枚ほどで巻き上げ出来なくなりました。

 うーん,結構いいカットを撮ったので,捨てるのは惜しいです。一度家に帰ってダークバッグ内で復活させることにしますかね。

 しかし,フィルムが悪いのかカメラが悪いのか,どっちにしてもこんな信頼性の低さでは外に元出せません。真面目に考えないといけない課題が増えました。

 そうそう,今さらながらに気が付いたのですが,Rollei35とRollei35LEDは,スプールの回転方向が違うのですね。Rollei35は右回りで乳剤面が外側に巻き取られますが,Rollei35LEDは左回りで乳剤面が内側に巻き取られます。

 右回りに巻く方が,スプロケットにしっかりかかりますので私は好ましいと思うのですが,別にどちらも問題はないと思います。特に今回の問題は,別のフィルムでは綺麗に巻き上げ出来ていましたし,きっとフィルムの先端の整形の問題だろうと思います。

Rollei35LEDの修理2

 Rollei35LEDの修理の続きです。ややこしい話は後回しにし,先にスムーズに進んだことを書きます。

 まず露出計です。これまでに動く事はわかっていたのですが,正しい数値になるかどうかはわかりませんでした。とりあえず本体に組み込み,トップカバーを被せて露出計を胴させてみましたが,どうも2段ほどオーバーです。余計に2段ほど絞らないと適正値になりません。

 基板を見ると,3つほど半固定抵抗がくっついているのですが,このうち取り付け状態でアクセス出来るのは基板の表面にある2つです。

 あいにくサービスマニュアルがないので正確なところはわからないのですが,基板の端っこにあるものが低輝度,中央にあるのが高輝度として調整を行うと,最終的に0.5段ほどのズレで調整ができました。

 測定の範囲もあやふやな露出計ですし,ネガフィルム前提で0.5段くらいならもう十分でしょう。後述する理由でモチベーションが下がっている現状では,このくらいでお腹いっぱいです。

 で,露出計の調整はトップカバーを付けたり外したりする必要がありましたし,ONにするにはシャッターボタンを押さないといけません。トップカバーを外せば電池もバラバラと飛び出てきますし,配線も切ってしまいますから,調整が大変です。

 そこで,私の場合は,基板から配線を引っ張り出し,安定化電源で電源を供給することにしました。スイッチはバイパスさせたので,露出計を常に動作させることができます。

 室内のEV9と,ライトボックスのEV15で調整を行いましたが,案外簡単に調整出来てしまったので,ちょっと拍子抜けです。

 次に無限遠出しです。これはいつものように一眼レフカメラにマニュアルレンズを取り付けて無限遠にしてオートコリメータをでっち上げ,Rollei35LEDにはフィルムの代わりに傷だらけのプラスチック板を張り付けて,無限遠を出して行きます。

 これも問題なし。うまくいったと思います。

 各部の注油を行って,楽しみながら組み立てていきます。張り皮も一度剥がし,綺麗にしてから張り直しです。

 ファインダーはよく見るとかなり汚れているので,壊さないように丁寧に拭き掃除を行います。多少のゴミは許します。

 とまあ,ここまでは驚くほど順調です。シャッタースピードも暫定で測定するとJISの範囲に入っていますから,調整の必要もありません。(調整箇所はあるのですが,触る必要なしです)

 しかし,3200円のジャンクがこんなにすんなりいくはずもなく,やっぱりどうにもならない問題が残りました。先日も書きましたが,レンズの傷です。

 よく見てもちょっとわからないのですが,キズというよりも前玉に生えたカビがひどく,すでにコーティングとガラスの間に入り込んでいたので,カビそのものを拭き取ってもキズがとれないという感じに見えました。

 改めて見ると,その範囲はほぼ前玉の全面に広がっており,かなり白っぽくなっています。いくら前玉のキズが写りに無関係とはいえ,これだけ広い範囲が白くなっていると,影響がないということはないと思います。

 そこで,このままにすることはしないで,ジタバタともがいてみることにします。最初に,あるホームページで「キズが消えた」と書いてあった,ケンコーのナノテクスーパーコートを試します。

 研磨剤を含まず,フッ素のコートを行う液体で,この手の商品は昔からあったのですが,この商品は扱いが簡単で,効果も大きいという事です。

 ですが,うちでは全く変化無し。まあ,期待してなかったですし。

 次に,オーディオテクニカから出ていた,CDリペアクリニカです。シリコーンオイルと超微粒子の研磨剤を持つもので,私が持つものとしては一番目が細かいです。

 試してみましたが,これも変化無し。

 最後に,腕時計の風防のキズを落とす,酸化セリウム入りの研磨剤です。・これで撮れないキズはないはず。早速やってみますが,やっぱりコーティングが剥がれています。

 コーティングを温存し傷だらけでいくのがいいか,コーティングを引き換えにキズが気負えるのがいいか,どっちも嫌なのですが,私は後者を選び,前述の研磨剤でゴシゴシ磨きます。

 案の定,コーティングは無残にも剥げてしまいました。素通しのガラス玉が見えています。はっと見ると綺麗なのですが,光を当てると,やはりモヤーとしたキズが前玉を覆っています。

 これ以上擦ると,レンズの曲率が変わってしまいます。もうここら辺で撤退です。

 コーティングという代償まで支払ったのに,結局キズが消えてくれないなんて,なんとも欲張りな神様なことです。・
 
 レンズのキズだけは素人にはどうすることも出来ない問題です。他がうまく修理出来ているだけに,悔しいです。

 かすかな期待を持ちつつ,テスト用のフィルムを通して見る日をうかがっているのですが,このレンズのクモリ方を見ていると,やっぱりダメだろうなと思います。


 さて,ここまでですべての修理が完了しました。改めてRellei35と比べて見ると,軽いこと以外に,どうもくにゃくにゃとした剛性感のなさがあります。気軽に使える実用機としては十分なのですが,その質感の悪さから,手に取って愛でるに適さないというのは,無理からぬことでしょう。

 シャッタースピードはも,1/500秒が遅めでばらつくこともわかってきました。1/500秒はガバナーが関係しませんので,シャッターの実力がそのまま出ます。それが1.5倍ほど遅くなるというのは,やっぱり自作のシャッタースプリングが悪かったのかも知れません。

 なんとか騙し騙しで,2.7msほどになってくれましたが,JISギリギリ(というかアウト)なので,このまま進めます。Rellei35LEDはレンズを外すとき,銅線まで引っこ抜かないといけないので,気軽に分解出来ません。

 ここまで出来たところで,あとはテスト撮影です。しかしレンズが悪いことがわかっているので,貴重なカラーフィルムを入れて現像する気にはなりません。発掘された古いTri-Xをオーバー気味で使う事にして,画質の評価をやってみようと思います。

 

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