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2021年08月の記事は以下のとおりです。

ニコンF2が復活

~前回のあらすじ~

 幕速測定を偶然行ったところ,F3に比べて速すぎるという結果が出たF2。このままでは壊れるかもしれないと慌てた私は,幕速をF3程度に落とす。

 すると低速側のシャッタースピードが全然合わないのでスローガバナー分解清掃を試みるも改善せず。原因は後幕のテンションを落としたことにあるとわかり,元の幕速に戻す。

 しかし,シャッタースピード高速側も低速側も壊滅的状態。調整を試みるも悪くなるばかりとなったF2の,それまで手を入れてなかった部分にも分解の魔の手が迫る。

 シャッタースピードダイヤルの中板を外され,何度も死線を彷徨うF2。なんとかシャッター幕が走るようになったとはいえ,もう二度とシャッタースピードが合うこともない。

 どうなるF2!


 ということで,幕のテンションを元に戻したのに低速側も高速側も調整出来ません。高速側は1/2000秒のカムのすり割りを迂闊に広げてしまったせいもあり,これを元に戻そうとカムを傷つけてしまったように思います。

 低速側は,ガバナーの音がおかしいので,壊れてしまったのかも知れません。機械式と系と同じ微妙な仕組みですので,壊れるのも無理はないです。

 そこで,私はとうとう最後の手段を考えました。別のF2から部品を移植します。

 私が手に入れたF2は最初期のF2で最初のフォトミックです。Ai対応のフォトミックAが欲しくてボディが壊れているジャンクを探したところ,ボディもファインダーも壊れているというハズレを引き当て,とりあえずフォトミックAファインダーだけ修理を行いました。

 ボディは右肩を強打し変形させていますが,動作そのものに問題はなく,製造時期も少しだけ後のようです。内部の機構も比べて見ると結構違います。

 このままボディごと交換してしまうことも考えたのですが,ぶつけているのはもうフレームに歪みが出ている可能性があると考えて,部品取りにおいてあったのです。

 ここから,まずは復活出来そうにないシャッタースピードダイヤルとカムを中板ごと移植します。最初バルブや高速側が全然動作しなくなったので焦りましたが,なんとか組み直して動くようになりました。

 これで1/2000秒が無理なく出ます。次は低速側です。

 低速側も全然合いません。これもあきらめて,ガバナーを移植します。するとまあうそのように,綺麗にシャッタースピードが合うようになりました。

 理由はともかく,これらの部品が私の分解によって壊れてしまったということです。最初に幕速など確認しなければよかった。シャッタースピードがきちんと出ているんだからわざわざ幕速をいじることなどなかったのです。

 ということで,数日かけて幕速を元の速度(さらにいうとこれは部品取りF2の幕速でもある)にあわせ込み,シャッタースピードを根気よく合わせていきます。

 上手くいったらペイントで固めます。

 そして以下の結果となりました。

1 1030ms
1/2 540ms
1/4 236ms
1/8 122ms
1/15 63.58ms
1/30 33.58ms
1/60 13.38ms
1/80 12.38ms
1/125 9.38ms
1/250 4.18ms
1/500 1.94ms
1/1000 1.17ms
1/2000 0.54ms

 なんか良い数字が並んでいますが,実は1/1000秒と1/2000秒は大きくばらつきます。1/2000秒は0.3msから0.8msくらいまで,1/1000秒は0.8msから1.3msくらいまで,特に違う速度から切り替えた一発目は大きく狂います。

 この数字は一応すべてJIS規格に入っていますので,これが安定して出ているなら満足なんですけどねえ。

 この前日に測定した結果を参考までに。なんと1/1000秒がJIS規格外です。

1 969.9ms
1/2 495.9ms
1/4 227.9ms
1/8 122.9ms
1/15 62.32ms
1/30 32.72ms
1/60 13.12ms
1/80 12.12ms
1/125 9.02ms
1/250 4.04ms
1/500 1.88ms
1/1000 1.34ms
1/2000 0.67ms
 
 さらに,いじる前の状況は以下だったのです。なかなか良いですよね。
結構安定して出ていましたし,中古で無保証のF2をなにもいじらずこれだけ出ていたんですから,大したもんですよ。つくづくいじらなければよかったなあと思います。

1 1050ms
1/2 496ms
1/4 254ms
1/8 124ms
1/15 60.0ms
1/30 33.0ms
1/60 14.2ms
1/125 8.60ms
1/250 3.90ms
1/500 1.80ms
1/1000 1.00ms
1/2000 0.39ms


 ところで,今回の修理は改善がまったくなかった訳ではありません。

 1つは巻き上げレバーの予備角について。これまではロック状態から引き上げるときのトルクが小さくて,巻き上げ角一杯にレバーを巻いて,そこから指を離すと勢いでロック位置までレバーが動いてしまうほどでした。

 明らかにおかしいなあと思っていましたが,今回きちんと確認すると,ロック位置のバネを固定するネジの中板側に作られたネジ山が,なめていました。

 そのせいでバネが浮いて弱くなってしまったようです。なにせ中板のネジ山ですので巻き上げ部を全部交換しないといけなくなりました。しかし意を決して交換してみると,良い感触になりました。

 もう1つもやっぱり巻き上げレバーなんですが,ロック位置でレバーが止まらず,シャッタースピードダイヤルにレバーがぶつかっていたんです。そのせいでダイヤルを回すとダイヤルのローレットがゴリゴリとレバーの指あてを削っていました。

 ニコマートやFEでもカリッとロックがかかるのに,フラグシップのF2がこんなにルーズでいいんかいな,と思ったんですが,どうにもならないのでそのままでした。

 今回,結局原因はわからなかったのですが,ロック位置はシャッタースピードダイヤルの裾の部分にある飾り環と指あてがぶつかるところで決まるみたいで,今回は組み上げるとちゃんとロック位置が出ているようです。

 というわけで,幕速をいじらなければ,あるいはマーキングをしておいて引き返すことができれば,こんな大ごとにならずに済んだんじゃないかと思います。面倒くさがらずにマーキング,面倒くさがらずに写真を残す,これはとても大事なことだと思いました。

 部品取りのF2が役立ったのは事実ですが,やっぱり交換の必要が発生したのは私が部品を壊したせいでしょうし,いくらF2とはいえ製造後50年近くも経過したカメラですから,ちょっとしたことで壊れてしまうものなのでしょう。

 今回は怖かったのでいじりませんでしたが,シャッター幕やドラムや軸,テンションを出すスプリングもちょっと触れば交換しないといけないくらいになっていた可能性があります。今シャッタースピードがばらつくのは,それらがすでにおかしいからかも知れないと思っています。

 どちらにしても,完全メカ式のカメラとしての魅力あふれるF2を元にも戻せてなにより。結局幕速は謎のままになりましたが,もうこれ以上あれこれといじることは控えたいと思います。

 それでも,F2をかなり分解しました。シャッターが走る仕組みも概ね理解出来たと思いますし,それはよく出回っている某修理本やサービスマニュアルには書かれていないもので,しかもネットでも出てこないようなものです。おそらく修理屋さんの秘伝なんでしょうね。

 せっかく修理が出来たんですから,今度持ち出してみようと思います。

 

ニコンF2が大変なことに

 「勇者よ,本体のみ,ズームキット,28mm単勝単キットの3つから,好きな武器を1つ選べ・・・」

 私が選んだ28mmキットだけ発売延期になり,結局後の2つを選んだ人はスイスイ先に進んでいます。そう,Zfcの話です。

 そんなわけで,お盆にはZfcで遊べるだろうと思っていたあてが外れ,少し手が空いてしまいました。

 そんなおり,宿題となっていたレンタルサーバへの移行も落ち着き,記念に1つ新しい記事を作ろうと思って用意したのが,シャッター速度を簡単に測る,という記事です。

 作った治具は現在はバージョンアップしており,フォトトランジスタを2つ持ち幕速を測定する機能が加わっています。

 記事を作成する時に,幕速を測定する機能のきちんとした検証を行っていないとわかり,波形の写真撮影もかねて,F2とF3の幕速を測定したのです。

 どちらも横走チタン幕で最高速が1/2000秒というシャッターで,幕速もおそらくこの仕組みの限界値である10ms/36mmです。なので,F3とF2を比べたら,治具の確からしさと個体の調子が判断出来ると思ったのです。

 結果ですが,36mm換算でF3が8.96ms,F2は7.6msとなりました。

 F3はまあこんなもんでしょう。しかしF2はかなり高速側にズレていて,このままでは壊れてしまうような気がしました。少なくともF3と同じ程度にしないと・・・新たな宿題が生まれた瞬間でした。

・幕のテンションを下げる

 早速F2の底板を外しました。実は幕のテンションはこれまで一度もいじったことがなく,それで全速きちんとシャッタースピードが出ていたので問題ないと思っていたわけです。

 勇気を出してネジロック剤を除去してロックネジを緩めて,テンションを下げていきます。先幕も後幕も9ms程度の合わせます。簡単簡単。

 続けて高速側のシャッター速度を出していきます。これも先幕のテンションを微調整すれば簡単に合います。楽勝。

 しかし,悲劇はここから。低速側を確認すると,1秒が1.5秒と大幅に狂っています。他の速度も全滅で,全部かなり長くなっています。

 ここで私は重大な判断ミスをしました。きっとスローガバナーが悪くなったのだろう,と。


・スローガバナーを清掃

 というのも,思い当たる節があったからです。かつて分解清掃したミノルタオートコードのシャッターも,1年ほどしてからスローが遅くなったのですが,これはベンジンで清掃した後の注油が足りなかったせいでした。

 F2も時期的に同じような注油方法で修理したものだったので,きっとこれだろうと思い込んでしまったのです。

 そこで,ミラーボックスを取り外し,ガバナーを取り出しました。ベンジンで清掃,注油を行います。

 そして元の通り組み付けて動作確認を行いますが,状況は全く変わりません。

 仕方がないので,スローの調整を行います。シャッタースピードダイアルの近くに調整用の偏心ビスがあるのですが,これを回します。うーん,はじめて回すのでこわいです。

 調整は案外簡単に済み,きちんと1秒が出ます。しかし,1/4秒だけが全然だめで,ガバナーが動作していません。困りました。

 ガバナーの取り付けビスもネジロックが行われているので,その跡に従って組み付けたのですが,どうもこの取付位置も調整の必要があるという話ですので,なんどか位置を調整します。

 しかし上手くいきません。1秒が出るようにすると1/4秒が機能しません。1/4秒が動くようにすると全速遅めに出ます。

 さあ困った。

 ふとガバナーの音を聴いてみると,随分弱々しい音です。まてよ,ガバナーを回しているのは,なんの力だ?

 そう,後幕のテンションです。なるほど,これが弱すぎるせいでガバナーを回しきれず,速く回せないのでしょう。そこで1秒が出るように後幕を調整すると,もとの幕速に戻ってしまうのでした。


・幕速を戻して再調整

 そこで幕速を戻すことにしたのですが,馬鹿な私は元の位置をマーキングしていないばかりか,分解前の写真さえ残していません。こうなるともう手探りです。

 幕速を出して,まずはスローを調整します。調整ネジをいじった後ですので元の状態に戻せる保証はありませんでしたが,なんとか低速側は調整終了。

 今度は高速側ですが,こちらがボロボロです。そこでこちらも調整用のビスをいじって調整しますが,これがまずかった。

 もう手に負えないくらいに,ボロボロになっていきます。1/1000秒を合わせると1/2000秒が短くなりすぎです。

 1/2000秒の微調整は,カムのスリットにマイナスドライバーを突っ込み,少しずつ隙間を広げて調整するそうなのですが,広げると高速になるということですので,私の個体は広げすぎていることになります。

 分解なんかしなくてもスリットの隙間を縮めることが出来るに違いないと思いましたが,上手くいきません。


・シャッタースピードダイヤルの中板を外す

 こうなるともう,このカムを取り出すしかありません。そのためにはシャッタースピードの中板を外す必要が出てきます。これも初めての分解です。

 ビスを4本外してみたのですが,まだ何かに引っかかっているようで外れません。少し無理を外れたので,早速カムを押し込んで縮めたのですが,どれくらい縮んだかは組み立てるまでわかりません。

 ということで組み立てますが,苦労して取り付けたのに,シャッターが走ってくれません。かといって巻き上げも出来ません。やばい・・・ロックしてしまいました。


・巻き上げ中板を外す

 巻き上げが出来ないか,シャッターがリリースされないのですから,さらに分解を進めるしかありません。まず巻き上げレバーの中板を外してみますが,こちらは異常なし。


・先幕リリース爪を探す

 そうなると先幕をとどめている爪を探していくことになります。どうも底部にあるようで,ここを勇気を出して分解します。するとすでにリリースされた状態になっていました。

 改めて幕を見ると,走った後の位置になっています。ならなんで巻き上げが出来なかったのかわかりませんが,もう一度試してみると巻き上げ出来るじゃありませんか。

 元のように組み上げて,ようやくシャッターが動くようになりました。しかし,低速も高速も破滅的に狂っています。


・そして今ここ

 泣きそうになりながらもがいてようやく,数日前の状態に戻りました。まだシャッタースピードは全然出ておらず,1/2000秒は時々開かなくなっています。

 幕速に疑問を持つことがなければ,以前のような完調のF2を使えたのにと後悔しても遅く,あちこちが連動して悪くなってゆく状況は,まさに高度な次元でバランスしているメカ設計のたまものなんだろうと思います。

 頑張っても最初の状態に戻すだけで,残ったものは私の分解の知識だけという状況に,どうもやる気も下がってしまいがちですが,F2を失う事に焦りを感じては,自分を奮い立たせて調整に挑むことにします。

 それにしても,サービスマニュアルに書いてある通りに調整が進みませんし,組み立ても難しいなと思います。

 F2の分解修理や調整は世界中で行われているはずですが,詳しい情報がなかなか見つかりません。素人さんがチャレンジしないせいなのか,プロがノウハウを秘密にしておきたいからなのか,販売されている修理マニュアルのような本でも,F2は分解される程度が浅くて,あまり参考にならないです。

 もう一台ある部品取りのF2は,現時点ではうちで一番程度のいいF2になっていまいました。もしかしたらコイツが主役に抜擢されることもあるかも知れません。


・すっきりしないこと

 すっきりしないのは,結局幕速はどうすればいいのか,です。治具がおかしいという可能性は大いにありますが,F3とF2が一致するようにするというのは正しいアプローチのはずで,それやるとガバナーを駆動出来ないというのは,何かがおかしいような気がします。

 良いか悪いか別にして,とにかくかつての完調の状態に戻すことを目標にしていますが,散々適当に分解した結果,そこにたどり着かないくらい精度が落ちているということを思い知らされています。

 なんとしないとなあ。

 

うちの近鉄を今どきのものに

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 さて,グリーンマックスの動力ユニット全車更新にしっかり反省したので,新車の導入です。ちょうどよいタイミングで再販された近鉄の新しめの車両が手に入ったので,これをDCC改造です。

近鉄6820系・・・シリーズ21の南大阪線仕様のものです。1編成2両だけが投入され,以後はどんどん古くなった6020系を淘汰していくのかと思いきや,一向に数が増えずに20年近い時間が流れています。せめて塗装くらいは新旧どちらかに統一すればいいのになあと思ったりします。
 どういう訳だか,私が帰阪したときには決まってあべの橋発藤井寺行きの普通電車に充当されているので,私は一度も乗ったことがありません。
 なので模型も買わずにいたのですが,ちょうどいい機会なので再販された9020系をベースに,6820系にしてみました。細かいところはわかりませんが,シリーズ21は全車共通の車体だと聞いたことがあり,それをなんとなく信じた結果です。
 動力ユニットは最新のコアレスモーター仕様,ここに新たに作ったワンコインデコーダを搭載します。非動力の車両もライトを点灯させたいので,モータードライバを省略したデコーダを小さく作り,ライトユニットと一体化して搭載します。
 ボディマウントTNカプラーは搭載不可となっているのですが,そんなことは気にしないで取付位置を細かく調整して搭載しました。
 ここまでやったらもう室内灯も欲しい所です。2両編成ですので費用負担も大きく内という事で,いつの間にやら出ていたグリーンマックス純正の室内灯を取り付けます。これ,へんに導光板を使わずLEDの多灯点灯を使っていますので,明るいし薄いし,思った以上に気に入りました。

近鉄16600系・・・16400系はウソ改造を行って配備しているので,ここは1つ16600系を導入しましょう。ちょうど再販されたものが手に入ったので,早速DCC化です。とはいえ,6820系と手順は同じで,一気に室内灯まで取り付けて終了。ウソ改造の16400系と並べてみると,模型そのものも完成度が上がっているんだなあと思いました。


 ということで,現在のうちの線区には,6820系と6400系の4両編成と,16400系の2両編成が走っています。コアレスモーターのスムーズな走りと,ヘッドライトとテールライトがよい雰囲気を出してくれていて,ニッチな車両を出してくれるのはいいが今ひとつクオリティがなあというグリーンマックスの弱点が,随分解消しているんだなあと思いました。

 でも,価格は随分高くなっています。グリーンマックスといえば貧乏モデラーの強い味方だったのですが,2両編成でなければ手が出ないほどに高価になった車両を見て,ちょっと続けられないなあとも感じました。

 別に,グリーンマックスが路線変更を行ったわけではなく,相変わらずエコノミーキットも再販してくれていますし,パーツの販売も積極的です。こうして幅広いモデラーの期待に応えてくれるのは,私は良いことだと思っています。

 

グリーンマックスの大改修

 私鉄,とりわけ近鉄や東急という私に馴染みのある車両の模型は大手の完成品ではなく,グリーンマックスのキットで具現化することが,太古からの習わしとなっています。

 というと大げさですが,今でこそカトーやトミックスから私鉄車両が出るようになっていますが,特に通勤車両についてはグリーンマックスのキット一択だった時代も長かったのです。

 それも,ズバリそのものではなく,近似した車両のキットを改造して「なんちゃって」で再現したりと,一工夫も二工夫も必要で,それがまた面白さの1つでもありました。

 思うに,鉄道模型というのは,非日常への羨望が,動機ではないかと。

 普段使うことがない長距離特急に人気があるのはそれが理由で,日常の足となる原液の通勤電車にはそれほど人気が集まりません。しかし,それが世代交代で過去の車両になると話は変わってきて,101系や201系,あるいは115系といったあたりに懐かしさを感じる人も多いでしょう。

 つまり,乗る事が難しいものほど人気があるという事です。ただし,それもその存在を正しく認知しているというのが前提です。知らないものは乗りたいと思えません。

 この点で,"現役"の"私鉄"の"通勤電車"という三重苦は,誠に不人気極まりないわけです。

 それでも,鉄道に興味があって足として使う鉄道には,一定の興味や関心がついて回るもので,それをなんとか自分の箱庭で再現したいと思うのは自然な感情でしょう。10年経ち,それらが現役を引退すると,懐古まで加わってさらに魅力が増します。

 私もかつて作った東急の8000系や8090系,近鉄の6020系や6420系は,当時の技術の未熟さから満足な仕上がりではないにせよ,雰囲気と当時の熱量を伝えるには十分だと思っていて,完成品よりも愛着が沸いています。

 そんなグリーンマックスのキットですが,動力車のモーターが不調で,メンテをした話をここに書きました。今は復活しているのですが,いつ壊れるかわからないので出来れば新品の動力ユニットに買い直しをしたいところです。

 しかし,グリーンマックスの動力ユニットは世代が変わっています。かつての社内を埋め尽くすようなごっつい動力ユニットは廃止され,今は室内が見える低床のもので,フライホイールのみならずなんとコアレスモーターまで搭載している最先端のものです。

 動力ユニットのみとはいえ,それなりに高価なものなので全部を交換出来ないと思っていましたが,22000系(改造して16400系)の2モータ仕様の動力ユニットだけは,交換したいと思っていました。

 早速注文,届いた21mm級の動力ユニットは今どきの薄型ですが,とても軽くて牽引力はあまり期待出来そうにありませんでした。

 分解はとても簡単で,構造もシンプルです。また,ギアは台車側に密封されていますので,ゴミやホコリに強いだけではなく,台車を取りはず際に壊したりバラバラになったりすることもないでしょう。信頼性の確保にはとても良い工夫です。

 新しい動力ユニットは,台車と床下機器が別売りになっていて,ユニットそのものは汎用性が高くなっています。しかし裏を返すと,台車と床下機器が発売されていなかったり,売り切れていたりするともうお手上げです。

 そこで22000系の床下機器と台車枠を探したのですが,ぴったりのものが見つかりません。入手することは可能だったようですが,今簡単に手に入るかものではないみたいです。

 そこで,ちょっと残念ではあるのですが,もとの動力車から移植を考えます。当然元の動力車は再利用できません。

 肝心のモータはコアレスモータです。コアレスモータにしては大型で,トルクもしっかりあります。

 まず床下機器ですが,これは加工せず,そのまま新しい動力ユニットに接着できそうです。

 問題は台車枠です。これは元の動力ユニットの台車から切り取って,新しい台車に接着します。この場合,前述のように元の動力ユニットは使えなくなってしまいます。それだけではなく,接着による強度の問題に加え,台車枠を取り付ける事によってしっかり固定される集電金具がグラグラして集電不良を起こしてしまうので,その対策も必要です。なにより,そんなに器用に台車枠を切り取れるのかどうかもわかりません。

 幸いなことに,切り取りは上手くいきました。車輪のピボットを納める集電金具の膨らみが入り込む内側のへこみもドリルでさらって作りました。

 今回は台車側に0.4mmのプラ板を貼り付け,かさ上げしたところに台車枠を接着して完成させましたが,やはり集電の問題が出てしまいました。そこでペンチでカシメ手動かないようにして,安定した集電が出来るようになるまで調整を繰り返しました。

 そうそう,うちはDCCですので,自作したワンコインデコーダV6を搭載します。両面に実装した超小型のものを運転席のすぐ後ろあたりに立てて取り付け,ヘッドライトとテールライトもデコーダから配線します。

 それから,この際ですのでワンコインデコーダからモータードライバを省いたファンクション専用のデコーダをさっさと作り,これを後部側の車両にも搭載しました。モータードライバICが110円ですので,400円ほどでファンクション専用のデコーダが出来上がったことになります。

 ということで,とりあえず22000系は更新工事が完了。コアレスモーターはDCCとは相性が良く,超スローな運転も可能ですし,静かでスムーズです。フライホイール付きですので加速率を設定出来ないワンコインデコーダでも問題はなく,とても好印象です。

 この印象の良さによって,私はグリーンマックスの車両の更新工事を全車輌にすることを決断しました。

近鉄6020系冷房なし旧塗装・・・台車枠はKDタイプ,しかし床下機器は該当するものがありません。そこで元の動力車から移植を考えるも,大きさが異なるためそのままでは取り付けられません。そこで切って削ってを繰り返し,どうにか上手く取り付ける事が出来ました。


近鉄6020系冷房改造新塗装・・・旧塗装の6020系と同じな訳ですが,そもそも旧塗装の床下機器が実車と同じかどうかと問えば,どうもそれはウソのようです。もともと車体が同じという前提で2410系のエコノミーキットを流用しているので,床下機器は6020系のものではありませんし,やたらとならんだ抵抗器は2410系としてもエラーなんじゃないかと思います。
 そこで,ちょっと他の車両と食い違うのですが,台車枠と同梱されていた床下機器をそのまま使って見る事にしました。
 ところで,この4両もともと全部非動力で作ったものでした。旧塗装に連結したり動力ユニットを使い回すことを考えていたのですが,もうせっかくだからこの編成だけで自走できるようにしました。

東急1000系・・・かつての池上線を再現したものです。先頭車の動力ユニットを更新しますが,台車枠も床下機器も販売されていません。そこで,床下機器と台車枠も移植します。
 元の動力ユニットは2モータ仕様のものなので,床下機器はそのまま取り付け可能です。問題は台車枠ですが,今回はプラ板でかさ上げしなくても済むように,台車を切り離す時に,少し厚めに切り出して削って合わせ,直接接着しました。

東急8090系・・・これもエコノミーキットキットです。幸い専用の床下機器と台車枠セットが買えましたので,楽勝のはずでした。
3両目に動力ユニットを仕込んであったものを交換するだけなのですが,床下機器が全然違います。どうもこの床下機器は2両目もしくは4両目のパンタグラフのある車両用のもののようです。
しかし,実車とは全然違っているので,私はここで間違っているもので統一するか,1両でもいいから正確なものを使うかの選択を迫られました。ここは河口が面倒という理由で,後者を選択。
しかし,もともと動力ユニットだった3両目を4両目にしたので,3両目をトレーラにしなくてはいけなくなりました。この作業はなかなか面倒で,床下機器の交換が必要です。手間がかかりましたが,なんとか交換出来たので,DCCの配線を行って完成です。

東急8000系・・・これもエコノミーキットです。8090系と同じ方針でいくのですが,この系列は動力ユニットを最初から2両目にしてあったのでほとんど加工は必要ありませんでした。これは楽勝。

近鉄12400系・・・塗装さえしっかりやればぱっと見でばれないだろうと安易に考えて16010系に改造したものですが,屋根上や窓が全然違うので,ちゃんとした16000系が出た今となっては恥ずかしい作品です。塗装も未熟で人前に出せるものではないのですが,手間と時間をかけたので愛着はありこれも動力ユニットを更新しました。6020系と同じく台車と床下機器が問題になりましたが,もともといい加減な改造を行ったものですので,もう気にしないことにします。

近鉄6620系・・・動力ユニット付きの4両編成のキットだったのですが,これも動力ユニットを交換します。台車と床下機器の問題はマッチしたものが売られているので解決,問題なくスムーズに走っています。


 勢いで全車更新となったわけですが,いちいち正方形型のDCCデコーダを作ったりしているうちにえらい時間がかかってしまいましたし,お金もかかったように思います。

 古い動力ユニットも予備をあわてて手配したのですが,それも含めると結構な出費になりましたし,さすがにちょっと反省です。

独自ドメインで甦った艦長日誌・私的記録 DS9

 長年自分のホームページを自宅のサーバーから公開することを続けていましたが,いよいよレンタルサーバを契約して自宅のサーバーの公開をやめました。

 そもそも,20年近く前に私が夢にまで見た常時接続の環境を手に入れた時,せっかく双方向でインターネットに繋がっているわけだから,WEBサーバーで公開しないと面白くないなという技術的興味から始めたことがきっかけとなり,ここまで続けてきました。

 当初は自宅にB5サイズの中古ノートPCにWindowsを動かして標準のWEBサーバーで公開を始めました。ダイナミックDNSやらNATやらIPマスカレードという言葉を覚えたのもこのころです。

 自分のドメインを持つにはどうすればいいのかなあと調べてみて,その壁の高さにため息をついたことも思い出されます。

 その後セキュリティの問題や信頼性の問題,パフォーマンスの問題もありLinuxに移行,懐かしいVineLinuxを同じノートPCにインストールしてApacheで運用を始めました。

 以後マシンを買い換えたりして同じ方法を続けていましたが,QNAPのNASを導入したことをきっかけに,NASから公開することにしました。コンテンツのバックアップも信頼性もメンテも格段に楽になりました。

 ずっとこれで来たのですが,自分のサイトでお金儲けを全く考えておらず,面白半分でやっていたのでお金はかけられません。自分のドメインを取るなど全く考えられず,ダイナミックDNSさえも無料のものばかり使っては,サービス終了の度にURLが変わるという面倒くさい話に付き合わされてきました。

 SSLについてもそうで,証明書は最初は有料のものを使いましたが,契約が切れてからは無料のものを使っていました。

 すべて無料のものですのでサポートはなく,何かある度に試行錯誤で徹夜なんてのは当たり前,なにかあっても自己責任です。

 しかし,昨年末に光ファイバに移行,IPoEで繋がっているのでIPv4で外にサーバを公開出来なくなってしまいました。IPv6でなら公開出来るので騙し騙しやってきましたが,繋がらないという文句もあちこちからもらうようになりましたし,実際googleも検索対象と見なしてくれなくなって,すっかりさみしい状態になっています。

 光ファイバに移行するときにすでにこのことは覚悟していたので,レンタルサーバにかかる費用は光ファイバへの移行費用として考えていましたから,あとはいつ契約するかという話になっていたのですが,IPv6環境でルータに穴を開けるのも怖いですし,夏休みの自由研究としてWEBサーバをレンタルサーバに置き直すことを計画しました。

 さて,どこのレンタルサーバにお願いする課という話から始めないといけないですが,繰り返すようにあくまで趣味のページですし,お金儲けをすることもないので,出来るだけ安くないと継続出来ません。

 先入観で結構かかると思っていたのですが,調べてみると安いものは1ヶ月100円程度でいけそうです。競争が激しいんですねえ。

 結局あれこれ探して,大手で老舗のロリポップにお願いすることにしました。Wordpressがちゃんと使えるようなプランでも3年契約なら1ヶ月200円ちょっとと,趣味で公開するブログでも負担は大きくありません。光ファイバの接続料が200円余計にかかったと思えば納得です。

 で,話はこれで終わりません。なんと独自ドメインまで無料で使える事がわかりました。もちろん審査が必要なco.jpなどはダメですが,.comや.netなどは無料で取得可能,しかもサーバ契約期間中は更新料も無料というサービスなので,私は驚きました。

 独自ドメインがとうとう我が手に・・・

 思い起こせば,大学でインターネットを体験し,電子メールにもう物理的距離も時間的制限もなくなったと感激,netnewsとgopherとftpで多くの情報とソフトを味わってから,いつ個人で使えるようになるのかなあと心待ちにしていた30年前・・・

 インターネットの商用利用が解禁されてIIJが先頭を走り,当時のniftyがインターネットのメールのやりとりが可能になり,その後雨後の竹の子のようにインターネットプロバイダが乱立して行く時代になりました。

 ダイアルアップでも自分にIPアドレスが付与されるなんてすごいなあと感激してプロバイダと契約,とはいえ付与されたIPアドレスは実は他の人たちと共用で自分専用ではありませんし,ドメインもそのプロバイダのものを使うだけで,自分のドメインなど夢のまた夢という感じだったわけです。

 それがです,毎月わずか200円でサーバとドメインを用意してくれる時代になったんですね。すごいです。

 サーバは自分でメンテをやっていればわかりますが,速度は出ないしトラブルで動かなくなるし,あちこちからアタックされて穴を塞ぐのも大変,バックアップも必要になるしそもそも設備にお金もかかるしで,個人で自宅に持つもんじゃありません。

 なんといってもルータに穴を開けることの危険性を考えると,なんでも自分でやってみたいという人以外はやるべきではないし,仮にトライするなら知識と経験は言うまでもなく,それを受け止めるだけの機材も必要でしょう。

 加えて,自宅にWEBサーバを置けば,自宅のローカルアドレスからアクセスする時と,外部からグローバルアドレスでアクセスする時でIPアドレスが変わりますから,ローカルアドレスを返す自宅専用のDNSまで立てないといけなくなります。

 うちはRaspberryPiでローカルDNSを立てていました・・・いよいよ,これも停止出来るんです。

 ということで,ずっと止まっていた私のwebページも,新しい場所で公開することが出来ました。

 しかも,ドメインはg-shoes.netです。とうとうここまで来たんだなあ。
 
 さて,せっかくだから全部Wordpressで作り直そうかなあとも思ったのですが,過去のこのブログを移行させるのが大変で,結局CMSであるfreoごと引っ越しすることにしました。

 別にfreoに不満はないし,Wordpressも今は盤石ですが10年後どうなっているかわかりません。過去記事の検索の便利さもあるので,今後もfreoでいきましょう。

 ただしトップだけではWordpressで設定します。そこからfreoはリンクで飛ぶ感じです。なんか美しくないし,新しさも感じませんが,趣味でやってることですのでこれでいいんです。

 方針を決めたらさっさと移行作業です。

 freoは新規インストールを行ってからコンテンツのフォルダを丸々コピーすればとりあえず動くようになります。画像などのリンクが切れるので,これはデータベースを一度エクスポートし,エディタで一括変換しインポートして対応です。

 ただ,どういうわけだかサイトマップの生成がうまくいかないので,既存の記事は手動でgoogleに登録,新規の記事はRSSを使って登録することにします。

 大した作業をしていないのに,ここまでで1週間。ようやく独自ドメインにSSLも使えるようになって,いよいよ切り替えです。ルータの穴を塞ぎ,NASのサーバの公開を停止,サイトマップをせっせと登録して,これで一段落です。

 自分のサイトを他者のサーバを使って公開する以上は,相応の責任が発生します。独自ドメインを使って公開しているのですから,「なんじゃこりゃ」と思われうようなサイトでは恥ずかしいですしね。

 そんなこんなで,人並みにレンタルサーバで復活した「艦長日誌」。

 もうG-SHOESは死んだんじゃないか,と訝しんでいた皆さま,ちゃんと生きていますので,これからも見に来てやって下さい。

 

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