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猫がうちに来て3ヶ月

 うちに猫がやってきて3ヶ月がたちました。

 まだ3ヶ月。でも3ヶ月です。猫は我々に一律の態度を見せず,それぞれに違う態度を見せるようになっています。

 我々人間はすっかり猫がいる生活に慣れて,姿が見えないと心配になるようになったのですが,猫も同じように我々の気配がないと不安になるらしく,特に嫁さんの姿が見当たらないときには探し回ったり吠えたりします。

 自分との関わりも整理出来たようで,ご飯をくれる嫁さんの優先度が最上,次に娘,体が大きく声が低い私にはなかなか心を許さないという,よくあるパターンに定着しつつあります。

 触られることを嫌う猫なので,私も無理に触ったりしませんが,それほど活発な猫ではないくせに攻撃性は旺盛で,これは警戒心の強さの裏返しだろうと思っています。

 朝は人間が起き出すと足下を行ったり来たりしてすり寄ってくるのに,触ると怒る。しかもすり寄ってくるのは朝くらいで,おそらくそれは食べ物が欲しい時の合図で,それ以外では近寄ってくることすらありません。

 かまって欲しいそぶりも見せませんし,人間に甘えたりじゃれたりすることもほとんどありません。猫ってこんなんだっけな?

 ま,猫はみんな性格が違いますし,どんな猫もかわいいものです。媚びない孤高の猫もいいじゃないですか。そんな風に思って,遠くから眺めています。

 1つ気になるのは,人間の,それも私の手を怖がることです。嫁さんや娘の手は,嫌がることこそあっても,怖がることはありません。ですが,私の手は明らかに攻撃対象で,怖がっています。

 娘と話をしていたら突然手に傷みが走ったので,何事かと思って見てみると,猫が私の手をひっかいていました。もともと猫は私から50cmほど離れたところに座っていたはずなのに,わざわざ私の手を狙ってくるのです。

 襲われて手を引っ込め,また襲われて引っ込めを何度か繰り返していると,やがて怖がって遠巻きに1mほど距離を取り,テーブルの下からこちらを見ていたこともありました。

 大きな手になにか特別な警戒をしているようです。小さい時に,なにか恐ろしい目にあったのかも知れません。信用して近づいたらひどい目に遭わされた,大きな手で捕まれたなど,保護猫には手を怖がって当然の過酷な過去があるのが,割と普通です。

 ただでさえ自分よりも大きな人間に警戒心を持つのは当然で,女の人や子どもよりは,大きな男の大人からなにかされたら,一生の心の傷になるのは当然のことでしょう。

 そんなことを考えていたら,私の手のひっかき傷など全然大した事ではありません。残念ながら,私はこの体や声,手を交換出来ないので,いつも近くにいる私については危害を加えない安全な奴だと認識してもらえるよう振る舞うしかなく,そうやって少しずつ距離感を縮めていくことが,私と猫との目標になっています。

 まあ,私に対しても自分から足下にすり寄ってくることはありますから,私という人間を危険であるとは思っていないのだと思います。私がいても別に隠れることもありませんし,私のそばで寝ていることもあります。

 これから我が家で過ごす初めての冬がやってきます。思い通りにならないのが猫ですが,寒さや薄暗さが猫との距離感をどう変化させるのか,ちょっと楽しみだったりします。

 

X halfを高級トイカメラといってよいのか

 フジフイルムのX halfというカメラ,2025年に登場したときには随分と話題になり,賛否両論があったことを思い出します。私はと言えば,フジフイルムのカメラという事で眼中になく,今の今まで無関心だったのです。

 とはいえ,フジフイルムのカメラには1つ,とても羨ましい機能がついています。それはフィルムシミュレーションです。世界屈指のフィルムメーカーであり,Kodakの背中を追い続けて走り,いつしか先頭に躍り出たフジフイルムが,その財産である様々な自社のフィルムを文字通り「シミュレーション」して再現してくれます。

 ニコンにしてもキヤノンにしてもそうですが,綺麗な写真や美しい写真を本命に切磋琢磨してきましたから,モノクロしてもセピア色にしても古い写真っぽい色褪せた色にしても,所詮はお遊びの設定に過ぎなかったと思います。

 もちろん,カメラメーカーは本気でそれらを作り込んでいたかも知れませんが,フジフイルムが有利なのは,それらを実在するフィルムのシミュレーションとして実装できることにあります。

 考えてみると,かつてVelviaで作品作りをしていた本気のカメラマンがですよ,Velviaモードで撮影したビビッドな写真を,お遊びだとバカには出来ないでしょう。

 同じビビッドな写真であっても,それがフジフイルムによって,Velviaをシミュレーションしたものですと言われたものなら,そこに強烈な説得力が宿るわけです。私はここに,銀塩フィルムの文化的側面を見ます。

 1980年代中頃,それまであきらめていたネガカラーの発色が,Realaというフィルムで劇的に改善されたとき私はとても感激したのですが,今のデジカメの色の美しさはRealaやその後継であるReala Aceを遙かに凌駕しつつも,そこに記憶や感情といった,経験によるいわばノイズが入り込むことで,その人にとって特別な美しさになることを,私はとても豊かな体験ととらえています。

 ただ,フジフイルムは「わかっている」会社なので,フィルムの銘柄が記憶と結びつくことの出来る資産であることを理解していて,だからこそ他社との差別化の材料に積極的に活用出来ているわけですが,そのフジフイルムのカメラは,ニコンやキヤノンとは違った軸で勝負しているので,私の肌には(価格的なものも含めて)ちょっとあわないところがありました。

 なのでずっと興味を持たずにいたのですが,ある友人とフジフイルムのXシリーズについて話をしていて,急にフジフイルムのカメラが視野に入ってきてしまったから,もう大変です。

 X halfという個性の強いカメラがキャッシュバックで25000円戻ってくるという話,ヨドバシで50000ポイントもたまっているという話,娘が修学旅行で沖縄に行く話・・・どうせ買うなら安い値段の在庫があるうちにということで,X halfを昨日買いました。

 ええ,賛否両論,というよりネガティブな意見が多いことは重々承知しています。曰く,安っぽい,RAWがないのは致命的,トイカメの延長線上にある,カメラとしての性能がいまいちなのに高すぎる,などなど。

 ただ,X halfの支持者が20代,30代の若い人であることや,発売当初は品薄だったことを考えると,声の大きいベテランたちが期待するものと,ずれているんじゃないかとも思ったのです。

 画質を云々する声があったとして,フジフイルムが本当に画質をないがしろにするのであれば,1インチのCMOSセンサを搭載することも,5群6枚非球面搭載のレンズを奢ることもなかったと思います。

 10万円のカメラですから,さすがにただのオモチャというわけにはいかないでしょう。そこはフジフイルムを信じて,買ってみることにしたわけです。もっとも安くフィルムシミュレーションを楽しむ方法でもありましたしね。

 とはいうものの,10万円から5万円のポイントとキャッシュバックを引き算すると25000円です。この値段なら失敗してもあきらめがつくなという事で買ったことは否定しません。

 てことで,レビューです。今回は先に悪かったところをあげつらいます。

(1)質感,外観

 軽いのは正義です。小さいのも正義です。しかし,なんというか,スカスカな感じがして,メカとしても凝縮感がありません。筐体がプラスチックであることはひとまず置いておいても,精密機械としての密度感って,フィルムカメラに目覚めた若い人たちにも重要な感触なんじゃないですか?

 なにががっかりって,絞りリングやフォーカスリングのしっとりとしたトルク感がないことです。コストの問題もあるんでしょうが,ここにこだわって欲しいと言う声は必ず上がってくるわけで,この程度で妥協して欲しくなかったです。

 塗装は美しく,デザインも悪くないのですが,シャッターボタンのストロークにこだわりが感じられないこともそうですし,売りの1つであるレバーも回転角が小さく,またフィルムカメラのそれとは似ても似つかない感触です。

 別に,ヒンヤリした感触が欲しいわけではないので金属製にとまではいいませんが,その代わりもう5mmほど薄くしてカバンやポケットに入れやすくすることは出来たでしょうし,レバーもついつい動かしてしまうような気持ちよさにこだわって欲しかったです。


(2)画質

 2:3の2000万画素1インチセンサを4:3で使い1774万画素にしたこのカメラ,実は結構いい画を吐き出してきます。コンデジやスマホのカメラと違ってダイナミックレンジもそれなりに広いので,それらとは明らかに違う画質に気が付きます。

 とはいえ,そこは所詮は1インチです。APS-Cやフルサイズに見慣れた目では,ゆとりのなさが気になります。

 それに,高感度領域が厳しいです。ノイズもそうですが,色の乗り具合から考えて,実質的にISO1600くらいが限度じゃないかと思います。これって10年以上前のカメラの水準ですよね。

 ISO感度の設定はオートが3種類あります。ISO200-800とISO200-3200,そしてISO200-12800の3つです。

 先程書いたようにISO1600までを限度としたい私としては,ISOオートの設定にISO1600までというのがないことがとても不満です。ISO800ではシャッター速度が足りずブレてしまい,かといってISO3200では画質が厳しいのです。

 Pモードのプログラムラインにも疑問があり,ISO3200にしてでも1/125秒をキープしようとします。そこはISO1600で1/60だろうと思うのですが,35mm換算で30mm程度の焦点距離でも手ぶれを防ごうと1/125秒を選ぶのだとしたら,手ぶれ補正がないことがこんな所にも影響しているわけで,とてもがっかりな話です。

 思い出して欲しいのは,銀塩フィルムが全盛の頃でも,手軽に手に入るフィルムはISO1600までだったことです。それに,ISO400の4倍増感でISO1600という方法も一般的でした。

 だから,X halfでフィルムカメラでの体験を1つの軸においたのであれば,ISO感度は1600までを一区切りとしたほうがよいと思うのです。もちろん,感度上限を任意に設定出来ることでもよいのですが,それだとフジフイルムのメッセージが伝わらない気もするので,ISO3200を上限とする設定をISO1600までに抑えて欲しいと思いました。

 私の記憶では,ISO3200のフィルムはフジフイルムからは出てなかったはずです。一方ISO1600は高画質なフィルムの開発に成功し,名機NATURAに詰めてストロボなしの撮影をNPモードとして積極的にアピールしていたはずです。フィルムカメラの体験を大切にしているなら,こういうところも思い出して欲しいです。


(3)UI

 まず物理的なUIから。電源スイッチの方向が反対です。右に動かすとON,左に動かすとOFF,もうこれは人類共通の認識です。わざわざ逆にされると本当に困ります。プロが使うカメラならあり得ない仕様だと思います。

 どうもレバーとの関連でこのような仕様になったらしいですが,本末転倒だと思いますし,そもそもフィルムのカメラでも右でONが普通でした。

 フジフイルムのカメラすべてが左でONだというならやむを得ないところもありますがそうではなく,X halfだけの仕様です。これは市場に出る前に誰かが止めないといけなかったんじゃないでしょうか。

 で,そのレバーですが,これもなかなか中途半端です。あのレバーは,カメラの象徴であり,どのモデルでも,そのカメラの主張が入る,流れるような美しい曲線で作られているものです。

 X halfのレバーはどうかというと,短い,角度が浅すぎる,トルク感がない,しかもトルクの変化がない,ということで,もう一度あのレバーの感触を楽しみたいからシャッターを切るという,フィルムカメラの操作への渇望の1つが,見事にそぎ落とされています。

 設定などのUIも混乱があります。LCDが狭いからと言うのもあるのでしょうが,情報が少なくて混乱しがちですし,左側の縦長のLCDとの併用も慣れないと厳しいでしょう。

 あと,UIにいれて良いのかどうか分かりませんが,オレンジ色の日付を映し込む機能は良いとして,ACROSで撮ったモノクロの写真でもオレンジ色というは頂けません。これなどはもはやバグでしょう。


(4)LCD

 縦長の異形のLCDを2枚というのはさすがに難しかったようで,フジフイルムの設計者は1枚の横長のLCDを,枠を重ねて2枚に見せることを選んだようです。そのせいもあってか,とにかく小さい,狭いです。操作も上手くいかないことがあり,イライラします。

 せっかく縦長のLCDなのに,狭いせいで画像が小さいです。老眼の人の悲鳴が聞こえます。

 また,発色もそれ程良くないようで,フィルムのシミュレーションの違いがわかりにくいです。


(5)ファインダー

 ファインダーは0.38倍の逆ガリレオタイプで,目を近づけるとLCDがオフになる手の込んだものですが,ガラスになにもない素通しで,本体のなんの情報も得られません。

 せめてブライトフレームがあると,精緻な光学機器を触っている感触があったのになあと残念でなりません。また,ストロボのレディランプやAEの範囲を超えているなどのLEDがあっても良かったんじゃないかと思いますが,このあたりはベテランでないとのかも知れません。


(6)手ぶれ補正がない

 これもなにげに厳しいです。ISO1600までで室内で撮影すると,シャッター速度は1/15秒とか,それ以下になります。LCDが小さいので気が付きませんが,実は結構手ぶれしているものなので,2段くらいでもいいので手ぶれ補正が欲しかったです。


(7)小気味良い動作速度

 なんというか,全体としてもっさりとした動きです。GR IVのようなキビキビした動きまでを求めませんが,もう少しサクサクと動いて欲しいです。

 特にがっかりしたのは,撮影画像の再生です。画面を拡大すると,もやーっと甘いんです。これが0.5秒ほどするとシャキッとした画像に再描画されます。最初から再描画されたシャープな写真を出して欲しいです。

 シャッターのレスポンスも一呼吸ありますし,メニューなどのスクロールも遅くて指についてきていませんし,決定からの動作も遅いです。まるでチェキを触っているかのような感じです。


(8)ストロボ

 ストロボといってもキセノン管ではなくLEDです。キセノン管の瞬間的なエネルギー放射にLEDは叶わず,少し被写体と離れると全く使い物になりません。使い方をよく考えないと,ただ迷惑な人になってしまうでしょう。ここはキセノン管でいって欲しかったです。

 というのも,キセノン管の発光時間は1万分の1秒と非常に短く,暗い所では被写体を確実に止める事が出来るんですね。シャッター速度を遅くして動かない背景を長時間露光で,動く被写体はストロボの光で止めるというスローシンクロという手法が使えると,高感度に弱いX halfの活躍の場はぐっと広がったはずです。


(9)オプションの選択肢のなさ

 この手の趣味性の強いカメラって,いろいろカスタマイズをするのが楽しいんです。シャッターボタンにネジを切ってあるのはギリギリOKとしても,フィルターのネジを切っていないこと,専用のケースが出ていないことなどは,ちょっと問題だと思います。

 特にフィルターのネジについては,フィルターだけではなく,フードもいろいろ選べようになったはずです。もちろん,今どきフードなんかいらないという合理的な考えもわかりますが,ドレスアップの1つとしてフードを選ぶのは楽しいものです。


(10)高い

 カメラとしての完成度を考えた場合,とても10万円を越えて出せるものではありません。7万円,円高だった5年前なら5万円台が妥当なところなんじゃないかと思います。ただ,56000円くらいだと,その程度のカメラと逆に馬鹿にされたかも知れません。


 
 悪いところを列挙しましたが,X halfはとても良いカメラだという前提があっての話です。

 これ,本当にいいカメラだと思います。楽しいです。

 トイカメラと思わせて1インチ1774万画素,5群6枚非球面,F2.8の明るいレンズで高画質,フィルムシミュレーションは高級機とほぼ同じものでとても楽しく実用的です。(プロネガがないのはとても残念ですが)

 こうなるとRAWなどはむしろ邪魔とも言えて,JPEGのみという潔さはむしろその画質の完成度の高さを誇っていると解釈してもよいでしょう。私が常用するZfやGR IVとこれだけコンセプトが違うと,もう比較する気も起きません。

 チェキのプリンタと直接繋がるのも面白いですし,2in1も手軽に組み写真を手軽に楽しめます。

 縦長のフォーマットは縦位置を多用する私にはとても自然なフォーマットですし,絞りリングをAから数字に動かすだけで,PモードからAモードに移行するというUIは昔ながらのカメラのお作法です。

 MFにもさっと切り替えることが可能で,パンフォーカスもOKとくれば,スナップシューターとしても活躍するでしょう。

 そしてなにかと話題のフィルムカメラモード。最新のファームで12枚が選べるようになりましたが,1枚1枚レバーを動かす必要があったり,12枚撮り終えるとカウンターが巻き戻ったりと,なかなかにワクワクする仕様です。

 しかも現像が必要というのもなかなかストイックです。ただですね,現像がスマホだけというのはどうにも・・・PCでも現像出来るようになってほしいです。でないと,印刷までもって行けませんから。

 確かに現像するまで何が写っているか分からないのは正しいのですが,12枚撮影後にも本体で中身が見られないというのは,ちょっとやり過ぎかもと思います。メモリ容量が足りなくなって,撮影が続行できない場合に,なにを消そうか検討できないというのは,撮影機会を逃すことに繋がります。

 本物のフィルムカメラなら当然だろうという声が聞こえてきそうですが,不便と不可能は別次元の話です。不便は楽しめますが,不可能は悔しいだけです。


 キャッシュバックでユーザーが増え,そこにVer2.00の新ファームの投入です。まだしばらくはファームウェアアップデートによる機能追加を期待出来ると思いますし,後継機種にも期待したいところです。

 気軽に持ち出せ,偶然性と作り込みを両立するカメラって,案外ないものです。そういう需要が根こそぎスマホに持って行かれたのも事実ですが,そこはフジフイルムの資産であるフィルムシミュレーションで,ただ綺麗なだけのつるんとした画像とは違う,撮影者の意思を反映した画像を残す機材として,その役割を果たして欲しいと思います。

 

Z70-200mmF2.8Sの想像以上のすごさ

 Zfというカメラのポテンシャルの高さや使い勝手の良さを認めるに至り,メインマシンのD850の出番は少なくなってしまいました。このごろ,実質的なメインマシンはZfであり,それはボディの良さに加えてZマウントのレンズの良さにも原因があると思っています。

 Z24-70F2,8SのI型を型落ちで買った時,ようやくZfの真価が見られたと思ったわけですが,そうなると次に欲しくなるのが望遠ズームです。

 Z24-120F4Sという優れたレンズがある上に,AF-S70-200F2.8EにFTZで十分対応可能と言い聞かせてきましたが,それもZマウントの望遠ズームがとても高価だからでした。

 もちろん,ボディがZ8やZ9なら借金してでも買ったでしょうが,Zfだしなと思って,あまり気にすることもなく過ごして来たのです。

 ところが,娘の学園祭の演奏会で,毎年AF-S70-200F2.8EをFTZと組み合わせていくと,どうもしっくりこないことが引っかかっていました。さすがに望遠域だけあってZfでも確かに良く写るのですが,やはり本来の相棒であるD850での画質にはどうもかなわない感じがあるのです。

 もしかすると手ぶれ補正の問題かも知れませんし,AF精度の問題なのかも知れません。しかし最終的な取れ高という意味で,ZfとFマウントの望遠ズームには限界を感じてきたのも事実でした。

 そんな8月のある日,もしかするとZ70-200F2.8SのI型の価格が下がっていたりするかもしれないと,探してみることにしました。Z24-70F2.8Sと違ってI型があちこちで特価されているわけではなかったのですが,あるお店でアウトレット言う形で処分価格が出ていました。27万円。

 高いんですが,元の値段を考えたら,あるいは現行機種の値段を考えたら,もっと言えば中古価格を考えたら,もう二度とこの値段で大三元の望遠ズームを買うことなどないでしょう。(いろいろ意見はあると思いますが,これまでいろいろなレンズを買い方を含めて試してきた結果,結局ニコンに限っては新品の純正が最善ということになったので,中古は最初から考えていません)

 ということで,どうせ買うんなら,必要になる前にさっさと買っちゃえと,そのお店で買うことにしました。Z24-70F2.8Sと違って,I型とII型でレンズタイプが違うという大きな違いもなく,どっちかというと小型軽量に振ったII型を,今の私はそれほど魅力に感じません。むしろ望遠ズームらしい堂々とした長さがかえって望ましいと思ってさえいます。

 今回は,自分であれこれ調べるのではなく,AIとI型とII型の差について議論をしました。いわく,やはり手ぶれ補正の強力さがAF-S70-200F2.8EをFTZで使うのとでは差が大きいこと,また光学性能としてもAF-S70-200F2.8Eに比べて周辺の画質が高いという話も出てきて,使えばその差は分かるだろうというありがたいご意見も賜りました。


(1)大きさ,重さ

 比べたわけではありませんが,AF-S70-200F2.8Eとそんなに違いません。持った感じも同じですし,重心のバランスも良好です。当たり前のことを言えば,AF-S70-200と同じ長さであってもFTZの分だけ長くなるわけで,実はこの数センチのサイズアップが見た目にも持った感じにも,大きな影響があります。FTZがなくなっただけとは言いますが,それがものすごく大きいと言わざるを得ません。

 こうなってくるとII型の小ささに説得力も出てきますが,そのこととII型の価格が見合っているかと言われればそんなことはないように私は思います。人によりますかね,この辺は。


(2)見た目

 見た目はさすがにちょっと古くさいです。格好の良さはAF-S70-200F2.8Eが今でも上だと思っていますし,そもそもZマウントの初期のレンズの格好悪さはどうしようもなく,Z70-200F2.8S(I)の最大の欠点は,この格好の悪さかなと思います。特にフードと一体化したデザインが考慮されていなくて,せっかくEタイプのFマウントレンズで統一的なデザインがなされたのに,またフードがオマケ扱いになったような印象を持ちました。これはZ24-70F2.8Sでも同じ事です。

 そうそう,使うまではいらないなと思っていたOLEDの表示窓ですが,実はこれはこれで便利ですし,使い勝手も悪くありません。コストや設計難易度の問題からでしょうが,II型で落ちてしまったことは残念です。逆に言えばI型の特権ですね。


(3)画質

 画質は期待を越えてきました。AF-S70-200F2,8Eでも十分な画質で,ここからどうやって改良するのかと思っていましたが,画質の改良というよりは汎用性の高さ,制限の削減,そして高画質の方向性を吟味し始めた,と感じました。

 まず,全域で画質が均質化したことが大きいです。AF-S70-200F2.8Eでは,特に周辺で甘くなることがありました。これがトリミングの時に足を引っ張ることが多くて,どうにも使いにくかったのですが,Z70-200F2.8Sはどの画角でも,画面のどの場所でも,中央と区別のつかない高画質です。

 ということはですね,被写体をどの場所においても,どの大きさにとらえても,同じ画質のままという自由度があるわけで,画質の良し悪しを頭の隅に入れながら撮影するストレスがないのです。これは大きいですよ。

 暗部でも色はしっかり乗りますし,線の太さも変わりません。中央部の画質に差はないという評価が多いと思いますが,写真は中央部だけで成り立つわけではありません。


(4)手ぶれ補正

 これも予想を超えていました。AF-S70-200F2,8Eでも手ぶれ補正は効きますが,レンズ側のVRのみで最大4段なんだそうです。これがZ70-200F2,8Sだとレンズとボディの協調動作で最大5.5から6段まで補正出来るという事です。

 もともと私は手ぶれ補正には懐疑的で,被写体ブレを押さえられない以上は意味がないと思っていました。しかし今回わかったのは,動作の小さい,もしくは手先の一部だけが動くといった被写体というのは,標準域における普通のシャッター速度である1/60や1/30秒といったシャッター速度でも十分止まるという当たり前の事実でした。

 素直に1/30秒でこれだけビシッと止まるのはすごいなと思いました。ちょっと気を抜くと200mmだとどうしてもブレるものです。4段だと1/500秒相当ですが,私の腕だと200mmなら1/500秒でも油断すると甘くなります。

 これが6段になると,1/2000秒相当ですからね,そりゃどんなにラフでも止まるでしょう。こういうことの心のゆとりが,実際の現場でありがたいことに気が付きました。

 ということはですね,わざとシャッター速度を落として,動いているものと動いていないものとの動きのコントラストを強調した表現が気軽に試せるということです。現実の進歩が表現の幅を広げることは当たり前の事ですが,まさか失敗防止の技術であったはずの手ぶれ補正を積極的な表現力アップに使えるとは思ってませんでした。頭が固いのは嫌ですね。


(4)AFとAF速度

 AF-S70-200F2.8Eも十分な精度と速度を誇っていましたが,これはあくまでFマウントボディでの話。Zマウントボディでも,メーカーはきちんと動くようにしてくれているとは思いますが,そこはやはり最後に入る微調整に差が出るだろうと思ってはいました。

 ただ,それが私の言う「なんか眠たい」の真因かどうかはわからず,あまり期待してはいなかったのですが,これも予想を超えてきました。

 特に瞳検出での性能差が圧倒的でした。まつげにピントをあわせる,最後の追い込みに妥協がなく,ほんのちょっとのズレをググッと追い込んでくれます。これはボディの検出精度が上がっていることだけではなく,その精度に応えるだけ制御能力をレンズが備えているのでしょう。

 動きモノを取ったわけではないのでAF速度の恩恵はそれほど感じたわけではなかったのですが,ストレスがない合焦速度に,追い込みを確実に行う精度の高さには,脱帽しました。


(5)まとめ

 AI(Gemini)はいうんですよ,AF-S70-200F2.8Eとの差は決して小さくなく,使えばその差に驚くでしょうと。いやまたこいつ適当言うてるわ,と思っていたのですが,今回についてはあらゆる点でその通り,こちらの予想を越えてきました。

 だって,広角ならいざ知らず,望遠ズームですからね,大口径マウントのメリットそれほど大きく出るとは思わないですし,純粋な光学性能だったらAF-S70-200F2.8Eの素晴らしさをD850で十分知っているわけですしね。

 そのAF-S70-200F2.8Eは本当に素晴らしいレンズで,三次元Hi-FiをFマウントの制限の中で具現化したその設計にはぐうの音も出ない(だってF2で使えちゃうんですよ)のですが,ボディが変わると同じレンズなのにこれだけ変わるのかと思い知らされました。

 Zマウントというと,バックフォーカスの短さや口径の大きさがすぐに取り上げられますが,CMOSセンサのカバー層の厚みが他のマウントに比べて薄いことだけではなく,我々が数値を目にすることのない電気的仕様や制御方法,通信プロトコルにも大きな違いがあって,これらが総合的に高い性能を生み出しているんではないかと,今回はそんな風に思いました。

 これらの性能は,確かに安価なレンズでは体感しづらいと思いますが,今回のように大三元を使ってみると,光学性能だけでは成し遂げられないはずの性能に驚きます。

 これってもしかして,Z24-120F4のような10万円ちょっとのレンズでも超高画質と言われてベストセラーになっていることの,本当の理由なのかも知れません。そう,光学性能以外で画質向上を実現出来るマウントだからこそ,10万円のレンズが15万円相当になるというわけです。

 なら,性能はそこそこにすれば,8万円のレンズの性能を4万円で実現出来るかも知れません。そうなったらもう,安さが売りだったレンズメーカーの安価ズームは存在価値を失います。(もともと今のサードパーティーは安価キットレンズをやってませんが)

 ひょっとすると,Zマウントでサードパーティーの参入が鈍いのは,これが原因なんじゃないかと勘ぐってしまいました。つまり,良く写るけど高いという純正レンズが,安いけど良く写るようになり,それを実現する技術は電気もソフトに波及していて高度で解析困難,こうなってくるともう戦えないという判断になったんじゃないのかと。

 一眼レフという難しい仕組みのカメラに比べて,ミラーレスは合理的な仕組みのカメラです。見たまま写る"はず"という一眼のレフレックスから,今見ているものをそのまま記録するミラーレスは,どう考えても正しい進化です。これに電気とソフトの進化が相まって,実はカメラっていつの間にやらとんでもない方向に進んでいたんじゃないかと,私はぞっとしてしまいました。

 だとしたら,もう完全移行すべきなのかも知れません。Zfも良く出来ていますが,Z9なんか,もうどんなカメラになっているのか,想像も出来なくなってしまいました。そして,それでもなおキヤノンやソニーのシェアがニコンよりもずっと大きいという事実は,それらがZ9を越えている可能性すら示唆していて,いったいどれだけすごいことになっているのかと,めまいがしました。

エレキベース,はじめました

 いやー,楽器って本当にいいですよね。電子楽器もいいですが,機械的な振動で音が出るアコースティックな楽器は,そのリアルタイム性にも,耳以外に振動が伝わる体験にも,やはり格別なものがあります。

 とまあ偉そうに言っていますが,電子楽器に傾倒している私がアコースティックな楽器の面白さを再認識することになったのが,先日のミニギターの購入にあったわけで,上手いも下手もごまかしが一切利かないダイレクト感が,かつて初心者だった頃に,夢中になって楽器を弾いたあの楽しさを思い出させてくれたのです。

 そんな時ふと思い出したのは,ベースという楽器への憧れでした。高校生になったばかりの春,私はベースをやるつもりで,軽音学部への入部を考えました。ですが,どうも雰囲気が自分に合わず,加えて軽く考えていたベースの演奏が実はとてもとても難しいことを知り,結局入部することなくフォークソング同好会に参加,トーカイのCAT'S EYEをぶら下げて歩いて回ることになるのでした。

 これはこれで楽しかったのですが,ベースを弾くチャンスはついぞ訪れることなく,憧れだけが残ったことがどこかに引っかかっていたのです。

 果たして,ベースに頼る以外に生成出来ないあの豊かな低音を自らの体で作り出すことはどれだけ楽しいのだろうか,音を出すタイミングと止めるタイミングを意識してリズムやグルーブを紡ぐのってどれだけワクワクするだろうかと,そんなことを夢想していたある日,ふと思い出しました。

 いやまてよ,うちにはベースがあるじゃないか。

 そう,あるのです。私が買ったものではないのですが,とても良いベースがあるのです。

 それは,嫁さんが若いときにベースをマスターしようと買ったもので,今もそのまま我が家に持ち込まれています。憧れはあっても熱意が足りなかったのか,ほとんど練習することもなく,今や存在すら忘れられて,死蔵状態にあります。

 以前聞いた話では,それなりに良いものを買ったらしいと言うことでしたが,自分でメンテをすることもないような初心者が,そんなに良いものを買うわけがないと確かめもせずにいたのです。

 しかし,これは好機です。ベースは大きい楽器ですから,狭い自宅にものを増やすわけにはいかないわけですが,すでに家にあるなら,借りて使うことも許されるでしょう。もう20年以上放置されていることも,メンテのしがいがあるというものです。

 早速嫁さんに確認すると,使っていいよと快諾をもらいました。なら早速,お楽しみの第一ラウンドである,メンテです。

 今や嫁さんの魔窟と化した,子ども部屋の押し入れの隅っこに,そのベースはありました。立派なソフトケースに入っています。横には小型のベースアンプもありますね。

 しっかりしたソフトケースにはYAMAHAのロゴに,"HAND CRAFT LINE"と金色の文字が書かれています。うーん,なにやら高そうですよ,これは。

 恐る恐る本体を取り出して見ると,表面はくすんで艶を失っていますし,ペグなどの金属部分も錆びてカサカサになっています。加えてボディは結構当て傷がありますし,スタンドのゴムと接触していた部分はゴムが溶けてこびりついています。

 ロングスケールの4弦で,いわゆるJazzBassタイプ,サンバーストのフィニッシュにベッコウのピックガード,ボディはアルダー,ネックはメイプル,指板はローズウッドでフレットはほぼそのまま残っており,ネックの表には貝のYAMAHAロゴ,裏側にはwarmothのロゴがあります。しかし,どこにも型名はありませんし,シリアルナンバーも見えるところにはありません。

 さて困った,どんな素性なのかさっぱりわかりません。嫁さんに尋ねるも,20万円した,一緒に楽器屋についてきた友人が試奏して「これがいい」といったものをそのまま買った,という話。ソフトケースのポケットに領収書なんかがあるんじゃないかと探しましたが,出てきたのはYAMAHAのカードで,製作者のサインがありました。製作年は1999年ということでしたが,シリアルの欄には#29とあっただけで,もはやこれがシリアルなのかどうかもあやしいです。

 私はベースなど触ったこともない人ですし,販売店にいたわけでもないので,もうこのあたりで「ナイトスクープにお願いするか」とハガキを取り出したわけですが,もうちょっと自力で調べてみるかと最近AIを取り入れたgoogle先生に聞いてみると,なにやらヤマハのセミオーダーモデルのようです。

 さらに調べてみると,ちょうど1990年代後半から数年間だけ,ヤマハはベースのセミオーダーをやっていたみたいなのです。基本となるのはBB Limitedという,パッシブベースの高級モデルで,店頭でボディやネックの材料,ピックガードやカラーリングなどを選んで注文,完成後に受け取りというもので,価格は20万円だったそうです。(2001年のカタログによる)

 嫁さんにさらに聞いたところでは,その楽器店がセミオーダーして在庫していたものを買ったと言うことで,値段についてもこれなら辻褄が合います。ただ,どんな仕様なのかは分からないらしく,推測するしかありません。

 でも,大分分かってきました。ヤマハのパッシブベースの最高峰であるBB Limitedをベースにしてたセミオーダーで,20万円のベースですから間違いなく高級品です。シグネチャーモデルを除くとフラッグシップモデルといってもいいくらいで,ヤマハの工房で作られたもののようです。

 仕上げは音にも影響するといわれる,薄く上質なラッカー塗装。だからゴムがこびりついていたんでしょうね。ネックも握りやすいですし,手触りも抜群です。

 一般にタイトな低音と幅広いジャンルをカバー出来るキャラクターのジャズベースは私の好みでもあるので,ちょうどよかったと思う一方,ちょっともったいないなあとも思ったりします。

 ともあれ,このままでは演奏できませんから,初心者らしく謙虚に,メンテから学んで演奏出来るようにしていきます。


(1)掃除と磨き

 古い弦を取り外し,ピックガードやポットのツマミなど出来るだけ部品を外して,水拭きでホコリや汚れを取ってから,ワシンの木工用コンパウンドで磨きます。高級なラッカー塗装なので怖いのですが,水性ですし,ゆっくり磨いで綺麗にします。(とはいえ結構ゴシゴシやっちゃったので,摩擦熱で劣化しているかも知れません)

 ペグも同じコンパウンドで磨きますが,ピカピカにする必要もないですから,そこそこにしておきます。ツマミはピカールで容赦なく磨いてピカピカにしましょう。

 本当は指板もオイルなどで磨くと良いのでしょうが,専用のものがありませんし,素人が下手にやっちゃうと失敗しますので,水拭きで我慢します。

 ドキドキしたのは,やっぱり溶着したゴムを剥がす作業です。大まかに指で取った後,アルコールでゆっくり拭き取ります。ラッカー塗装はアルコールで剥げてしまいますから,これはもう本当に慎重にやりました。おかげで無事に剥がすこともできました。

 今回はくすんだボディの艶を取り戻すことを考えたので,当て傷の修復はやらず,細かい擦り傷もムキになって消しませんでした。その代わり,ピックアップも外してホコリやゴミを取りましたし,目に付くところ,手で触れるところは綺麗にしましたから気持ちよく演奏出来そうです。

 あ,ピックガードについては,トラスロッドのネジが隠れてしまうので,今は外したままにしておきます。


(2)弦の張り替え

 ベースの弦なんか,貼り替えたことなど一度もありません。弦にどんな種類があるのか,なにを基準に選ぶのか,さっぱりです。とにかくエレキギターでもお世話になっているダダリオの弦を選びましたが,ベースの弦って結構なお値段がするんですね。

 さて,弦が届いたので早速4弦から張っていくのですが,短くカットしすぎたことと,4弦のEってどんな音か分かってなかったこともあり,巻きすぎてしまいいきなり切ってしまいました。娘が横で笑っています・・・

 仕方がないので他の3本の弦を張り,4弦だけ後でバラで買おうと思ったのですが,なんとまあこの4弦が高いんですよ。最悪のことも考えて4弦のバラとセットを両方買いましたが,届いたバラの4弦も今度は問題なく張れて,これでようやく音が出せそうです。


(3)調整

 ネックの反りは,どの教本にも自分で直せと書いてあるんですが,これ,本当に見て分かるもんなんですかね。正直なところ私にはよく分かりません。

 とりあえず書いてあるとおり,一番左と右のフレットを押さえて,真ん中に少し隙間が出来るくらいにしようとするのですが,これってそもそも弦高が高いと反っていても気が付きませんよね?

 ということで,少し離れて眺めてみて,湾曲していなかったらいいか,という曖昧な方法で反りを直しました。確かにトラスロッドのネジを回せば反りが変わりますし,握った感じも違いが出ます。サドルも調整しつつ,ビビリが出ないように高さと反りを調整していきました。

 そうそう,オクターブチューニングも初体験でした。私は開放弦と12フレットの音がオクターブできれいに揃うのを当たり前のことだと思っていて,そうならないのは楽器の作りがいい加減だからと決めつけていましたが,ここって自分で調整するものだったんですね,知りませんでした。

 そもそも,エレキギターも含めてサドルの位置を動かす事が出来る理由を深く考えたこともなく,本を読んで「なるほど」と思った次第。いやはやお恥ずかしい。

 でも,そうとわかれば調整するだけです。弦を張り替えたこともあり,どの弦も12フレットでチューニングが狂ったのですが,オクターブチューニングの調整でばっちりです。

(4)試奏

 幸いなことに,先日ギター用に買ったBOSSのKATANA:GOはベースモードに切り替えることが出来ます。これを通して音を出しながら試奏してみますが,ベースってこんなに太いしっかりした音が出せる楽器なんですね。基本的なパターンを覚えて弾いてみましたが,なかなか楽しいですよこれは。

 肝心の音ですが,素人の耳にも「こいつはいい音だ」と思うほど,伸びやかで輪郭のはっきりした,線の太い音が出ています。特に3弦と4弦はこれぞベースという音で,まるで自分がベテランベーシストになったような主張のある音が出てきます。

 左手も動かしやすくて,これまで私が触ったどんなベースよりも手に馴染みます。ボディもまるで体に張り付くような抱えやすさで,大きさから覚悟していた持ちにくさは杞憂に終わりました。



 ということで,高校生の頃に憧れたベースをようやく始める事が出来ました。ベースはハーモニーの基本を支え,またコードの進行を強く意識させる役割と共に,ドラム,特にバスドラムと同時にリズムを作り出す,とても大事な仕事を担っています。

 スケール,コード,そしてリズムというポピュラー音楽の3要素すべてに深く関係する楽器で,バンドにおいてこれほど重要な柱はいないんじゃないかと思います。

 そして個時的な印象では,ベーシストには全体の見える人が多く,また音に対する妙なこだわりが強くて,そういう点でも上モノをやってる私からは,ちょっと遠い存在でした。

 始めたばかりですが,そういう人と同じ輪の中に入ることが出来た事は素直にうれしいですし,なにより新しい楽器を始める事のワクワクを,こうして味わえることが幸せな事だと思います。

 誰かとアンサンブルというのもなかなか難しい現状で,しかもベースはそれ単独で成立するような音楽を作ることは一般的ではありませんから,どうやってモチベーションを維持するかが難しいところではありますが,なんといっても私が憧れたのはベースが歌っているように聞こえたからで,自ら歌うベースを弾けるようになるまで,頑張ってみたいと思います。


XTEINK X3をどう使うか

 先日,ネットを徘徊しておりますと,電子書籍&ガジェット好きという,どちらも20年前に味わって久しい香ばしい薫りに誘われ,XTEINK X3なる電子書籍端末にたどり着いてしまいました。

 名刺サイズで厚みは5mm,日本人なら大好きな手のひらサイズのこの端末は,好き嫌いが分かれるEinkを搭載した3.7インチの超小型端末です。

 大きさは98x64x5.1mm,重さ58gとハンドリングは良好,ディスプレイは480x800ピクセルで250PPIとなかなかの高解像度で,ストレージはmicroSDの16GBで,お値段は13000円ほど。

 それこそ一昔前は1万円で立派なKindleが買えたことを考えると円安が恨めしくなるわけですが,Kindleと違って赤字でもばらまくという戦略も大企業の後ろ盾もないガジェットが1万円でこうして世に出てくるだけでも大したものだと思います。

 Einkとは腐れ縁の私がこれを見逃すこともないと思い,実用に供するイメージがさっぱり沸かないにもかかわらず,文字通り衝動買いしてしまいました。折も折,amazonがセールをやってることもありましたし・・・うちの家訓は「買わずに後悔するより買って後悔しろ」です。

 調べてみると,3ヶ月ほど前から話題になっているものらしく,一部の感度の高い羨ましい人たちはaliexpress等で手に入れているみたいでした。ただ,日本向けと中国国内向けではファームウェアのポリシーに違いがあるようで,私がamazonで手に入れたX3は,ちゃんとファームを書き換えることの出来るものでした。

(1)第一印象

 名刺サイズと言うから覚悟していましたが,画面サイズが名刺サイズと言うだけで,案外大きめだと思います。手元にある(さりげなく自慢)のGR IVに重ねてみたのですが,長手方向がやや短いくらいで,あまり大きさは変わりません。いやいや,GR IVってどんだけ詰め込んでんねんな。

 持ちにくいほど小さい分けでもないですし,実用性はゼロだなと覚悟していたディスプレイもこれなら使い方を考えようという気にもなります。

 面白いのはタッチパネルではなく,すべて物理キーであることです。おかげでボタンだらけで,もう覚えられません。ああ,かつては小さいディスプレイとボタンが一杯ついている機器に目がなかったんですけどね。

 それから,ディスプレイがなかなか良いです。ディスプレイがベゼルの奥に沈んでいるものが今でもありますが,X3はいっちょ前にフラットです。覗き込んでいる感じがなくて見やすいですね。

 バックライトもフロントライトもありません。でもEinkなんだし,明るいところでちゃんと本を読みましょう。色や反射率を向上させる意味でのライトは否定しませんが,それならLCDやOLEDでもいいんじゃないかと私は思う偏屈ですので,パッシブな光で優しい読書を楽しみたいところです。


(2)質感

 今どき中国製を悪く言う人などいないと思いますが,これも良く作ってあります。本体の精度も十分ですし,持った感じの密度感も素晴らしいです。ボタンの押し心地だってよく考えてくれていますし,これを大量生産して1万円で売るんですから,本当に大したものだと思います。

 とはいえ,円高時代を知っている私としては,これならやっぱり6980円かなと思いました。

 そうそう,大切な事を1つ。XTEINK X3はスマートフォンの裏側に貼り付けることも(全く余計な事ですが)想定しているみたいで,強いマグネットが背面に仕込んであります。

 蓋の開閉認識程度の磁力なら別に気にしないのですが,さすがにスマートフォンに貼り付けるくらいの磁力ですので,注意が必要かと思います。

 最近,磁気を利用したものって減っていますのでついつい忘れがちですが,滅多に買わない電車の切符とか,街の図書館のカードとか,少し古いシステムがそのまま残っている場合は要注意かと思います。


(3)日本語化

 実のところ,このガジェットが懐かしいのは,そのままではなにも出来ないからです。もちろん本体だけで電子書籍を読む事は可能なのですが,どこかのストアと連携するわけでもありませんからコンテンツは自分で調達する必要がありますし,単機能の端末ですから他の使い道で遊ぶことも出来ません。

 対応している電子書籍の汎用フォーマットはEPUBくらいのもので,独自フォーマットかバラバラのBMPを表示することくらいしか出来ません。JPEGですらないし,zipやcbzのようなアーカイブも未対応です。いわんやPDFなど論外です。

 OSというかファームウェアがオープンソースのCROSSPOINTですから,これをもとにした日本語版のファームに入れ換えるのが,まず最初にしないといけないことなのですが,ここで前述の中国語版かどうかが効いてくるわけです。

 私のようにamazonで日本国内版を正規に買えば一番楽ちんで,Google Chromeから直接付属のケーブルを使ってファームを書き換えることが出来ます。たった2分で終わる作業です。

 そうすると設定項目も増えて,丸で別機種のような近い心地に変わります。そして,以後のファームウェアのアップデートはOTAで可能。もうPCとつなぐ必要もありません。

 正常に再起動したら,ネットワークの設定です。標準のOSではMACアドレスがわからないのでネットワーク設定に困る人もいると思うのですが,日本語版ではMACアドレスが表示されるので心配無用。

 こうして無事に繋がったら,日本語フォントをダウンロードします。BIZ UDゴシックとBIZ UD明朝,そしてNotoSansJPをとりあえずダウンロードします。端末から直接ダウンロード出来るのはなかなか便利です。

 終わったらみんな大好き青空文庫から試しにコンテンツを入れてみます。こんな小さい端末から直接,作者や作品を選んでダウンロード出来るなんて,ちょっと新鮮な感じがします。もう,青空文庫専用端末でいいや。

 そしていろいろ設定をいじって,個人的に見やすくした結果が以下の写真。

 20260903145832.JPG

 夏目漱石の「こころ」の冒頭部分です。私は文字がぎゅっと詰まったページが好きですし,そのためならルビもいらない人なので,こういう画面にしました。


(4)WebUIによる設定

 実はこのCROSSPOINTですが,設定などをWEBから行うことが出来ます。WEbUIという仕組みなのですが,本体からチマチマ設定を行うだけではなく,コンテンツの転送やスリープ時の画面なども点灯できるので,なかなか便利です。でもあまり詳しい説明をしているサイトは見当たらないんですよね。

 やり方は簡単です。ネットワークに繋がる状態になっていることが前提ですが,ホーム画面からファイル転送を選ぶとQRコードが出てきます。これをスマホで読み取っても良いですが,ここに出ているIPアドレスか,もしくはcrosspoint.localにhttpでアクセスすると,ブラウザに設定画面が出てきます。

 コンテンツファイルの転送も出来ますし,設定の変更も楽です(ただしすべての設定をここで変更出来るわけではありません,残念)。でも一番便利なのは,スリープ時の画面を簡単に設定出来ることでしょう。

 手動でやるには,画面サイズである528x792ドットのBMPファイルを用意し,microSDのルートに「sleep」というフォルダを作って放り込みます。設定でスリープ時の画面をカスタムにしておけば,これで毎回スリープでオリジナルの画面が出てくるというわけです。

 とはいうものの,JPEGもいちいちBMPに返還しないといけないし,リサイズもモノクロ化もいるということで,なかなか手間がかかるのです。

 WebUIからだと,一連の作業が全部自動です。使いたいJPEG画像をドラッグすれば,トリミングや拡大を指定して,リサイズとモノクロ化,そしてBMPへの変換を自動でやってくれます。これはなかなか便利ですよ。

20260903145833.JPG

 私はこんな風に,自分が世話になった本屋さんのブックカバーを入れているのですが,複数入れておくとスリープする度に順番に出てきます。今日は紀伊國屋かという感じで,本当に文庫本を持ち歩いているような楽しい気分になります。


(5)使ってみて

 物理キーは慣れるまで面倒ですが,慣れてしまえば画面を触るよりも快適だったりします。もともと私はKindleでも物理キー派ですから,不便はありません。

 レスポンスははっきり言って遅いです。ESP32ということですからさもありなん,という気もしますが,PDFもZIPもだめで,一画面に出る文字数が少ないのに,レスポンスではちょっと集中力が削がれる気がします。

 個人的には文庫本と同じサイズが良いので,ひょっとしたら上位機種のX4の方が向いているのかも知れませんが,仮にX4であったとしても自炊したPDFが直接開けないことも,解像度が300PPIに届かないことも,やはり本家のKindleやKoboには届かないなあと思います。

 そう考えると,イメージで読まないEPUB専用で,直接ブラウズして読む事の出来る青空文庫専用端末として,胸ポケットに入るこのサイズは実に魅力的に見えてきます。

 といいつつ,持ち歩く端末はもう決まっています(大きさと画質でKindle Vogaer)ので,これを持ち歩く事はないだろうと思いますが,本当に自炊した文庫本が読めないかどうか,PDFをBMPに変換して試してみたいと思います。案外いけるんじゃないですかね。

 

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