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ワンダースワンも死んだ,なぜだ!

 私がこれまでに見て来て,その生い立ちに共感したものの1つであるワンダースワン。先日のスワンクリスタルの電池液漏れ(とLCDのビネガーシンドローム),ワンダースワンカラーのLCD破損によりカラーモデルを失った私に,更に追い打ちをかける事実が発覚しました。

 ひょっとしてと胸騒ぎがして倉庫から出してきた初代ワンダースワン(クリスタルブラック)のLCDが,見るも無惨に死んでいたのです。グレーだったLCDはなぜか黄緑色に変色し,ひび割れています。こんなものでもビネガーシンドロームは容赦なく襲いかかり,その命を奪ってしまうのか・・・

 しかし,私はこれを割に軽く考えていました。モノクロ液晶でしょ,なら手持ちのモノクロ用の偏光フィルムに交換すれば済むよ,と。

 ですが,その考えは甘かったと言わざるを得ません。劣化したLCDを見て,あれ,ワンダースワンのLCDって緑色だっけな?と思ったのですが,これはきっと偏光フィルムが劣化しているからだと都合良く解釈して,自分の浅はかさを押し隠しています。

 分解してLCDを取り外し,酸っぱい臭いも強烈な劣化した偏光フィルムを剥がしてみると,見慣れたグレーの画面が出てきます。確かこのグレーに黒の表示だったと思うんだけど考えながら,手持ちの偏光フィルムを重ねてみます。

 すると,緑色に・・・これで動かしてみると,緑バックに青色で表示されました。ああ,なんと,昔々のゲームボーイか,昔々のワープロ,あるいは昔々のPC-98LTじゃないですか。

 だんだん思い出してきました。TFTのLCDが高価すぎて高嶺の花だった20世紀末,庶民にとっての現実解はSTN液晶でした。

 STN液晶はTN液晶の改良版で,どちらもパッシブマトリクス液晶の代名詞となっていますが,これは液晶の動作モード(ねじれ具合とでもいいますかね)の分類です。

 一方のTFTというのは駆動方式による分類であって,実は動作モードとしてはTNであることを,ちょっと液晶テレビに詳しい方ならご存じでしょう。

 TN液晶は,あらかじめ90度ねじってある液晶に電圧をかけると液晶の並び方が変化してねじれがなくなることで,表面の偏光フィルムを光が透過したりしなかったりすることで表示をします。しかし,90度しかねじる事が出来ないために問題がありました。

 それは,解像度を上げるとコントラストが下がる事。解像度と言うよりも走査線の数なんですが,パッシブマトリクスでは全ラインにまとめて電圧をかけることになるので,1ラインあたりの電圧はラインの数が増えるほど小さくなります。

 この小さい電圧で液晶をねじる必要があるので,少しの電圧でも急峻にON/OFFする特性がなければ,コントラストが下がってしまって,やがて何も見えなくなってしまいます。

 これを打破するために登場したのが,STN液晶です。

 SはSuperのSで,ねじる角度をアップして,なんと260度とか270度くらい(ただしねじりの向きはTNの逆です)です。

 TN液晶は単純なシャッターで表示を行っていましたが,STNではこのねじれのせいで生ずる複屈折による色の変化で表示が行われます。

 この結果,電圧の変化に対するON/OFFを急峻にすることができ,コントラストが向上しますし,解像度も上げられるというわけです。

 しかし,STNには致命的な欠点がありました。白黒表示ができないのです。TN液晶は文字と背景を白と黒に出来るのではっきり見やすいのですが,STNでは背景と文字が黄緑と青になってしまうのです。これは先程書いたように,STN液晶は複屈折を利用しているため,避けようがありません。

 この複屈折というのは,屈折する光が1つではなく,2つになることを言うのですが,2つがどれくらいずれるかは,その光の振動面にも物質にもよります。

 そして,ずれた2つの光には速度差があるので位相差が生まれます。これを最終的に1つの偏光板で合わせると,位相差によって色がついてしまうというわけです。

 色がついてしまうという事はカラー化は無理ですし,モノクロであっても見にくいですよね。初期のSTN液晶を搭載したワープロやラップトップPCに,黄緑色と濃い青の表示のものがあったのは,そういう理由です。

 そこで,もう1枚液晶を重ねる方法で白黒にする方法なんかも開発されたのですが,決定打になったのはFSTNというものです。位相差が原因で色がつくなら,その位相差を打ち消すような逆の位相差を生む複屈折を起こすようなフィルムを挟めばいいんじゃないか,という発想で生まれた技術です。

 プラスチックには大なり小なり複屈折性を示すものが多いので,都合のいい物を上手く選べばそんなに高価でもありません。これを偏光フィルムの前に置きさえすれば,あのSTN液晶が白黒で表示出来るんですから,こんな美味しい話はありません。

 このフィルムを位相差フィルムとか,補正フィルムと呼びます。偏光フィルムとLCDのガラスの間に挟んで使うとあら不思議,綺麗な白黒になってくれるというわけです。

 こうすることで見やすいモノクロLCDとして,あるいは安価なカラーLCDとして,一気に普及し始めます。カラー化したガラケー,小型のノートPC,ゲームマシンと,市場が望んだカラー表示の時代がやってきました。

 しかし,それもTFTが安くなるまでの話。応答速度が極端に遅く,角度によって色が大きく変わってしまう,発色もコントラストも悪いし,暗い所で良く見えないというSTN液晶を,今見る事はほとんどありません。ああ,ロストテクノロジー。

 さてさて,ワンダースワンのモノクロLCDも,実はFSTNです。だからきちんと白黒ひょうじだったのです。しかし,そのキーテクノロジーだった位相差フィルムこそが,実はビネガーシンドロームの張本人で,偏光フィルムを剥がした後にもガラス面に残って,酸っぱい臭いを放っているのです。

 もちろん,位相差フィルムがなくても偏光板だけで表示は出ます。出ますが,コントラストは低いですし,色も緑と青になり,およそ見やすいとは言えません。某レトロゲームショップが公開しているワンダースワンの修理はこの方法なので,オリジナルから遠い,品質の低い修理方法と言えるでしょう。

 同じ理由でワンダースワンカラーも単なる偏光板では修理出来ません。スワンクリスタルが採用しているTFT液晶でも,見る角度によって色が変わることを防ぐ目的で位相差フィルムが使われていて,これがビネガーシンドロームの原因になっています。。

 つまるところ,セグメントやパターン,ポケコン程度の解像度のLCDの修理に使う偏光フィルムでは,STNやTFTのLCDの修理は出来ないという事になってしまうわけです。

 さて困りました。これで,我が家のワンダースワンは,カラー/モノクロを問わず,すべて死んでしまいました。グンペイもワンダースタジアムもギレンの野望もMSVSも,もう遊べません。

 なんと言うことか!

 某レトロゲームショップによると,ワンダーウィッチプレイヤーのカートリッジの買い取り価格が3万円だそうです。私,持ってるんですが・・・


 そんなわけで,全滅したワンダースワンたちが三枚おろしになって眼前に広がっています。どうすることも出来ない状態ですが,オリジナルの状態への復活は難しくとも,なんとか自分なりの方法で決着を着けねばなりません。

 ついでにいうと,昭代のゲームボーイアドバンスのLCDも,ビネガーシンドロームで死んでいました。一応表示は出るのですが,フィルムが浮いたり,ひびが入ったりしています。

 GBAについてはゲームボーイアドバンスSPがありますし,NintendoDSで代用が利くのでとりあえずいいとしても,ワンダースワンが全滅していることはかなり深刻な問題です。

 これは長期戦になるかもしれません。

ダイソンV10 Fluffyに買い換えました

  • 2024/12/05 14:33
  • カテゴリー:散財


 ダイソンのコードレス掃除機を最初に買ったのが2013年10月。当時36000円で購入したDC45という機種でしたが,それまで5万円を越えていたダイソンのコードレス掃除機が36000円で買えることをきっかけに,ハンディクリーナーとして役に立てば位の気持ちで買ったところが,コードレスのくせに家中の掃除に十分対応出来る能力がある事が判明,以後我が家の掃除という家事は根底からひっくり返ってしまったのです。

 それまでのキャニスター型を使った掃除の,あの重く大きな物をゴロゴロと引き摺る,果たして掃除をしているのか掃除機を運んでいるのかわからない重労働から解放されたことは,私にはとても画期的なことでした。(残念なのはその革命が日本の家電メーカーによるものではなかったことでした)

 大きく重たい本体が階段の上から転がり落ちてくることからも,突然ACコードにぐいっと引っ張られることからも,そして抜けたACプラグを再び刺しに隣の部屋に行くことからも,完全に無縁のものとなりました。

 実用的な吸引力と20分という稼働時間の実現は,ハンディクリーナーとの使い分けを考慮しなくてもよくなり,一気にACコードついたキャニスター型を追放することになりました。うちは以来ずっとダイソンです。

 ただし,主力機としてラフに使われると案外簡単に壊れてしまうあたり,さすがに日本製の頑丈な掃除機とは違って,消耗品と考えないといけないという気もしていました。

 DC45は致命的な故障で修理を何度か施しては延命,2019年3月にV7を28000円ほどで購入して入れ換えています。DC45はその後私の作業部屋で,集じん器として活躍しています。

 そのV7,パイプの破損で中国製のパチモンに交換,電池も互換品でしのいでここまで来ましたが,モーターヘッドもボロボロでしたし,パチモンのパイプも折れてしまって,時間の吸引力も落ちています。なので次に壊れたら買い換えることにしようと,タイミングをうかがっておりました。

 とはいえなにかとセールで安売りされる(最新機種とは限りませんが)ダイソンですので,なにも慌てる必要はありません。

 そうして迎えたamazonのブラックフライデーに,V10が33000円で出ているのを見つけました。ミニモータヘッドなどの付属品は邪魔なのでその分安くして欲しいところですが,5%のポイントがつくことを考慮して,このタイミングで買うことにしました。

 そう,V8までは安売りされるのですが,V10という,あのまっすぐになったタイプがようやく安くなってきたと思ったので,買うことにしたわけです。直販サイトでも38000円ほどで買えるそうですので,値下がりは以前からあったようですが,今回はそこから5000円ほど安く買えたことになりますか。

 正式には,Dyson Cyclone V10 Fluffyというやつです。型名はSV12 FF LF。本物のV12は一回り小さくなって軽い上,ゴミセンサで吸引力を最適化したり,LCDがついていたり,遠心力が向上しているらしいのですが,モーターは同じ物のようですので,私はこれで構いません。。

 2年保証も続いていますし,ダイソンはしっかり日本の市場に根を下ろした感じがします。いやはや,日本の家電メーカーはなにをやってるんでしょうかね。

 ということで,V10です。DC45も5年半使いましたが,V7も同じくらいの時間を使って買い換えということになりました。


・取り回し

 DC45とV7は同じような形状だったので違和感はなかったのですが,V10は全然形が違うので戸惑いました。これまでならぶつからずに振り回せたところでも,本体がぶつかりそうになります。慣れるまでは注意して振り回さないといけません。

 重量物の位置が変わったことも大きいと思います。モーターや電池の位置はそれほど変わっていないように思いますが,ビンが随分前方に伸びました。これまで,ビンは握った拳のすぐ先にあって,下にぶら下がっていたわけですが,V10ではパイプと同軸にありますから,拳の上側で,前方に伸びているのです。これは結構な差です。

 V8は手首とパイプが同一線上にありますから,手首をひねってヘッドを左右に回転させることも苦になりません。更にいうとその回転中心に対して地面側にビンがぶら下がっていますから,力を抜くと自然と自己復帰してニュートラルになります。だから手首も疲れません。

 一方のV10は,手首とパイプが同一線上にありません。手首をひねってヘッドを左右に回転させるのがしんどいのは,これが理由でしょう。しかもそのパイプの一部がビンになっているので,重量物が回転中心よりも上にあり,手首の回転で重量物が下に引っ張られるため,余計に回らないように手首にぐっと力を入れないといけなくなります。

 慣れていないせいかなあと,強く感じた違和感を良く考察してみると,こういう結論になりました。回転中心がズレてること,しかも重量物が上にあるので,落ちないように手首に力が入るというのが,違和感の正体でしょう。


・モーターヘッド

 うちはフローリングよりもカーペットが多いのですが,Fluffyという新しいヘッドがカーペットに不向きであることを知りませんでした。これって,フローリングに最適化されているんですね。知らんかった。

 一応,回転するブラシがあるのでカーペットでも使えそうなものですが,ゴミを集める能力は過去のモーターヘッドの方が高いらしく,これは失敗だったかも知れません。

 とはいえ,ダイソンとしてはこちらを標準と考えているようで,キットして付属するモーターヘッドを選ぶ事は出来ないようですし,両方ついてくるものは非常に高価だったりするので,どうしたものかと思います。

 で,吸引力の差もそうなのですが,Fluffyは前に進む力が強すぎて,前に出て行かないように押さえるのにまた力が入ります。自分で進んでくれるのは楽が出来そうなものですが,ヘッドを手前に引き戻すときに大きな力が必要ですので,私のように往復させて掃除をする人はかなりしんどいです。

 加えて,左右にヘッドを回すときの問題です。なんだか左右に簡単に首を振るようになってしまい,それを押さえるのにまた力がいるなあと思っていたら,Fluffyヘッドは関節が上下と左右の2軸になっていて,左右方向に簡単に傾くようになっていたのです。

 以前のヘッドでは左右ではなく,L字になった部分が回転するようになっているだけでした。だから,パイプを左右に回すことだけがヘッドを左右に動かしていたのですが,Fluffyヘッドはパイプの回転以外でも左右に首を振ってしまいます。つまり,ヘッドの首振りを手首だけで制御出来なくなってしまったわけです。

 それを防ぐのが前に進む力のアップなんでしょう。でも,変な方向に向かないように,かつ前に進みすぎないように,かなり手首に力が入ってしまいます。これは慣れの問題では解決しないかもしれないですね。


・吸引力

 V7もなかなか良かったですが,さすがにV10はその上です。最新のモデルはどうだか知りませんが,空気の流れが直線だと効率がいいというのは,V10が出た時のうたい文句でした。これはその通りだと思います。


・ゴミの捨て方

 V7なら出来た,パイプやブラシを外すことなくゴミを捨てることが出来なくなりました。私はどのみち外して捨てていたので問題はないのですが,一々外さずに捨てていた人にとってはとんでもない改悪でしょう。

 ビンが開くレバーの動きも渋いので,この点でもV7騎方が良かったなあと思います。

 加えて,ビンの底を開くときに本体を持つ右手が,V7の方が自然でした。マグカップを持つような握り方でゴミを捨てられたことは,V10のように拳の親指の方向からゴミが出ていく不自然に対し,どれだけ自然に思えることか。


・まとめ

 こうして改めて見ていくと,新しい物が必ずしもいいとは限らないんだなあと思います。V10は空気というそこそこ慣性のあるものをまっすぐに通すことにこだわった,掃除機の理想を追求したエンジニア魂あふれる物だと思いますが,そのせいで使い勝手を犠牲にしているように思います。

 Fluffyヘッドもそうです。柔らかい素材でフローリングに最適なのはわかりますが,柔らかいという事はそれだけ傷みやすいということです。掃除機で一番壊れるのは,はやり先端のモーターヘッド(とパイプ)ですから,ここを丈夫に作るのがまず先だと私は思います。

 V7の吸引力が落ちてきたと実感したので買い換えを考えたわけですが,これならモーターヘッドとフィルターを新調するか,もうちょっと安いV8を選ぶんだほうが史為替だったかもしれません。

 慣れてくれば印象も変わるかも知れませんし,高効率&駆動時間が長い,というV10のメリットを感じるほど使えば,手放せなくなるかも知れません。

スワンクリスタルとワンダースワンカラーを失った週末

 ワンダースワン,今なかなか人気のある携帯型のゲーム機です。

 「枯れた技術の水平思考」を是としたゲームボーイの生みの親,故横井軍平さんが任天堂退社後に立ち上げたコトが開発,当時のバンダイから発売になったワンダースワンですが,安く,低消費電力で,手軽に買えて,だけど楽しく面白くを具現化したワンダースワンは,当時の私の商品設計に対する考え方に近かったこともあり,大好きなハードウェアとして,特別な思いがありました。

 今にして思えば初代が一番洗練されていて,バランスも素晴らしかったと思うのですが,市場はそんな設計者の思いなど知らずに,当然の如くカラー化を望みます。当時の技術ではカラー化によるコストと消費電力の増大が非常に大きく,登場したワンダースワンカラーは市場の要求に,なんとか折り合いを付けた妥協の産物であると,私には見えていました。

 それは乾電池1本で動作するという目標のために,徹底したパッシブ動作へのこだわりにも現れていました。バックライトはコストも大きさも消費電力も大きいので使わない,LCDも美しいが高価なアクティブマトリクスのTFTを使わずパッシブマトリクスのSTNカラーです。

 確かにこれでワンダースワンの目指した安く消費電力が小さいという優先度には矛盾しないものが出来ましたが,結果暗く発色も悪い,とても見にくい画面のゲーム機が出来てしまいました。見やすさだけで言えば,初代のモノクロ機にもかなわないでしょう。

 それでも私は発売前からコトが出した答えが楽しみで,予約して買いました。以後はガンダムのゲームを中心に持ち歩き,暇さえあればゲームを楽しんでいました。実家に帰る新幹線で3時間近くひたすらゲームをやったことも良い思い出です。

 これだけ持ち運んでいれば傷むのも道理で,風防(フロントパネルのことです)の真ん中に大きな傷を付けてしまい,ゲームに没頭できなくなってしまいました。ワンダースワンカラーはパッシブのLCDで,明るさだけではなく色味も改善しなければならなかったので,LCD表面のフィルムはもちろん,風防の表面の反射防止コーティングにもかなりのお金をかけていたように思います。

 それでもバックライトを付けるよりはいいと,パッシブにこだわったのでしょう。でも,もともと暗い所ではいかに反射防止をしても見えるようにはなりません。単三電池1本で動く事にこだわった結果,ワンダースワンカラーは,普通なら市場に出ないだろう形で販売された,珍しい携帯機器だったと思います。

 そして時は流れ,ワンダースワンというプラットフォームに終焉が近づいた時,ようやくワンダースワンの理念を満足な表示品質で実現出来るときが来ました。今ではすっかり珍しくなった全反射型のTFTを搭載した,スワンクリスタルの登場です。

 ようやく価格もこなれてきた鮮やかで見やすいTFT液晶を採用しながら,消費電力の大きなバックライトを使わない反射型にこだわり,画質と消費電力をバランスしたスワンクリスタルは,確かに劇的に見やすさを改善していました。

 名前に与えられた「クリスタル」が,とても誇らしく感じました。

 全反射型のTFTはゲームボーイアドバンスでも使われていたものですので,当時としては珍しい物ではありません。でも,やっぱり周囲の環境に左右されてしまう反射型が淘汰されるのは目に見えていました。

 バンダイらしく,版権物のキャラゲーが主力となった末期のソフトラインナップには興味はなくとも,ワンダースワンに共感し,ワンダーウィッチにも手を出していた私は,スワンクリスタルも迷いなく入手します。

 しかし,以後ソフトも出てこず,私も別の事に興味を持つようになり,私のスワンクリスタルはほとんど稼働することはありませんでした。しかし,自分の身内のように感じられたワンダースワンだけはすべて大切にしておこうと誓い,スワンクリスタルを含むすべてのワンダースワンは,大切に元箱に収納されて保管されていました。

 事が動いたのは実家の荷物をすべて引き上げるときです。当然処分されることなく自宅に運び込まれたワンダースワンですが,動作の確認のためと娘の興味を惹くかもと,電池を入れて動かしてみました。

 グンペイを遊んだのですが,娘は関心を示さず,私も30分ほど遊んでまた箱にしまい込んだのですが,この時私は重大なミスをしていました。

 また近いうちに遊ぶからと,電池をそのままにしてしまったのです。

 それから3年,先日の話です。

 あるお店で,最近人気が高まっているワンダースワンカラーの,交換用の風防が売られていました。ガラス製なのでキズもつきにくく,見た目にも綺麗なのでちょうどいいと手に入れ,これで20年越しの「キズ」に決着を着けることが出来ると喜んで交換作業を始めました。

 傷ついた風防を取り外すのですが,風防の裏面の印刷と両面テープが本体に残ったままになってしまい,これを取り去るのに随分手間がかかったのですが,どうもこれが良くなかったらしいです。

 交換作業は終わったのですが,おそらくその時に指で触ったりねじったりしたせいで,どうもLCDにまだら模様が残っているのです。電荷が残っているせいかもと思いましたが一晩経っても消えず,よく見るとピクセルにまたがっていますので電荷によるものではありません。

 ならば偏光板の劣化だろうと思ったのですが,ここはあまり深追いせず,ワンダースワンカラーはこのままとして,スワンクリスタルで遊ぼうと箱から取りだしました。

 するとなにやら,白い結晶のような物がパラパラと出てきます・・・

 何だろうと思って本体をよく見ると,本体の通信コネクタに結晶がびっしり,隙間からも透明とライトブルーの粉が出てきています。何だろうとしばらく考えて,まさかと思って電池ケースを外してみました。

 そのまさかでした。盛大に液漏れしていました。

 元の電池の形をとどめないくらいにぐじゅぐじゅに融けてしまっています。これほど強烈な液漏れは私も見たことがありません。さすが,電池1本にこだわって昇圧のDC-DCコンバータを常時動作させる電源システムを持つワンダースワンです。電源OFFでも微弱電流が流れ続けます。

 これまで多くの液漏れを見て来た私ですから,分解掃除をすれば大丈夫,仮に基板のパターンが切れるほどの液漏れがあっても,少し確認して修復すればまた元通りになると軽い感じで開けてみました。

 これまで,たくさんの液漏れを経験してきましたが,これほどひどい液漏れは初めて見ました。もう,手の付けようがありません。基板が腐食しているというよりも基板に結晶が盛り上げられているのです。チップのトランジスタは,まるで砂糖菓子に埋め込まれたゴマのようです。

 こびりついた結晶を剥がそうとしましたが,それも難しい位基板に一体化して成長していました。様子を見たいということで紙やすりで結晶をはがしていきましたが,パターンもスルーホールも,もう手の施しようがないほど切れていました。

 当然電池を入れてもうんともすんとも言いません。修理不可能です。

 LCDもよく見ると,中央部が膨らんでいます。空気が入ったドームのようになっているそれは,LCDの不良を示していました。

 取り外してLCDを見てみますが,電解液が付着した形跡はありません。ただ,表面の偏光フィルムを剥がしてみると強烈に酸っぱい臭いがします。そう,ビネガーシンドロームを発症していました。

 21世紀のLCDにビネガーシンドロームが発生するとは思わなかったのですが,もしかすると電池の液漏れによって発生したガスがその引き金になったのかも知れません。

 ということで,LCDも基板も,たった1本の単三アルカリ電池を取り外さなかったことで,死んでしまいました。

 突っ伏した私を,妻と娘は,かける声も見つからないと,心配そうに遠くから眺めていました。

 ならば,せめてワンダースワンカラーを復活させよう,これでギレンの野望特別編を完遂しようと意気込んで,まだらの原因である偏光フィルムを剥がして交換することにしました。今思えば,その発想は自殺行為でした。

 しかして,これも大失敗。偏光フィルムを剥がしてみても,まだらは消えませんでした。あわてた私は反射シートを剥がしにかかりますが,なかなか剥がせません。仕方がないので糊を綺麗にすることにしたところ,まだらが消えました。

 そう,原因は糊にありました。糊をアルコールで完全に剥がすと,ようやくまだらはなくなりました。

 私はホッとし,新しい偏光フィルムを用意して,貼り付ける向きを確認することにしましたが,どの角度でも全然画像が見えてきません。裏返してもだめです。ようやく見えると思った角度でも,よく見ると色が反転しています。

 そうでした,STNのカラーLCDは,発色に複屈折を利用するので,白黒のSTNやTNで使われるような偏光フィルムを使うことは出来ないのです。

 糊に原因があるなら偏光フィルムそのものは再利用できるかも知れないと脇に無造作に捨て置かれたフィルムに目をやりますが,もはや傷だらけで再利用できる状態ではありませんでした。

 ここに至って,我が家のワンダースワンのカラー対応機は全滅し,カラー専用のソフトはゴミになってしまったのでした。

 ああ,なんと悲しい事か。

 当時の雰囲気を良く伝える部品や基板,LCDを見ながら,今も愛されるワンダースワンを愛でることは,とうとうかなわなくなってしまったのか。他のゲーム機はともかく,ワンダースワンだけは持ち続けようと最初から誓っていたのに,こんな不注意でだめにしてしまったのか。

 そもそも,貴重なスワンクリスタルをくだらない理由で失ってしまって,私はレトロゲームを持つ資格がないのではないか,そんな風に自分を責め,再び突っ伏した私を妻と娘は遠巻きに眺めていたのでした。

 ワンダースワンの設計のうち,まずかったなと思うのが,この電池1本で動作にこだわった点でした。いや,別に電池1本で動作させることそのものは問題ないですし,それで20時間も持たせる技術はさすがだと思います。電池1本にこだわる技術者の心意気に私も当時共感した覚えがありますし。

 しかし,1.5Vから3.3Vや5Vに昇圧する回路は,効率も良くないですし,電源OFFでも僅かとは言え結構な電流が流れ続けます。この僅かな電流というのが液漏れを一番誘発するのです。

 当時の私も液漏れを強く意識した設計を心がけていましたが,ワンダースワンでも液漏れを防ぐ為に,DC-DCコンバータの入力側,つまり電池とDC-DCコンバータの間を物理的なスイッチで切断することにして欲しかったと思います。この方法だと電池が完全に切断されますから,常時電流が流れることなく,仮に液漏れがあったとしても小さな被害で済むのです。

 しかし,ワンダースワンは電源ボタンを押しボタンにして,ソフトで管理することにしました。そのせいでCPUに電源を供給する必要が生じ,DC-DCを電源OFFでも常時動作させることになってしまったのです。

 電源スイッチをソフトではなく物理的なスイッチにするには,コストもかかるしデザイン面での制約もあります。でもですね,ワンダースワンには電池ケースが外れるのを防ぐスライド式のロックがあります。ここに電源スイッチを仕込んで主電源スイッチとしてくれれば,救えたワンダースワンもかなりあったんじゃないかと思うのです。

 あれこれ考えていてもどうにもなりません。

 スワンクリスタルは,基板とLCDの損傷。筐体は新品同様です。

 ワンダースワンカラーは,LCDが使えなくなりました。

 多数のカラー専用ソフトを楽しむために,今の私に出来る事は・・・

 続く。

REALFORCE RC1でキーボードを巡る旅が終わりました

  • 2024/11/28 15:32
  • カテゴリー:散財

 私がREALFORCEというキーボードを使うようになったのは2004年8月のことです。今でも仕事で使っているREALFORCE89Uという日本語配列のUSB接続テンキーレスモデルに出会って20年,もうそんなに経ったのかと感慨深いものがあります。今はなき秋葉原のクレバリーで2万円ほどで買いました。

 そうそう,あの頃もメカスイッチのキーボードを買ったり,HHKB Liteを買ったりして,でも結局満足出来ず,HHKB Proを買う決心をして意気揚々とクレバリーに行ったんですよね。

 いざHHKB Proを手に取ってレジに持っていくところで,間違えて無刻印モデルを持ってきている事に気が付き,交換しようと売り場に戻った時にふと目に付いたのがREALFORCE89U。

 どういうわけだか直感的にこちらを手に取り,なんの迷いもなく会計を済ませて店を出た記憶があります。

 そもそも英語配列が欲しくてHHKB Proを買いに行ったのに,結局日本語配列のREALFORCE89Uを土壇場で買うことになったことに,なんだか運命的な物を感じます。しかして,これで私のキーボードを巡る旅は終わりを迎えたのでした。

 その後Macは本体キーボードの英語配列,Windowsは日本語配列で使うことにしたのですが,本当のクルマ好きは左ハンドルでも右ハンドルでも,MTでもATでも違和感なく乗りこなす物だと訳のわからない理屈で納得していました。

 正直に言います,やっぱり英語配列の方がいいです。日本語配列のうちでも,レトロPCでもよくあるように,SHIF+2で"が出るとか,;と:が別キーになっているとか,そういうのは全然いいんです。エンターキーが大きいのはむしろ便利なくらいです。

 一番だめなのはスペースキーの長さです。CやMの下はスペースであって欲しいし,コマンドキーやオプションキーの位置も微妙にずれてしまうのがどうも許せません,

 とはいえ,当時のREALFORCEは英語版が国内販売されていなかったので,妥協するしかなかったのです。

 時は流れ,2019年のコロナでテレワークが本格的になり,自宅用のキーボードを探すことになりますが,この時もあれこれ試した結果,結局会社のREALFORCEを持ち帰ってくることになりました。

 その後会社とテレワークが半々になり,REALFORCEは会社に戻っていったわけですが,テンキーレスモデルでも大きいなあと思っていたことや,ちょっと感触に飽きが来ていたこともあり,折からのキーボードブームで選択肢が広がったメカスイッチのキーボードに浮気したりしました。

 しかし,やっぱりなんだかしっくりきません。気に入ったはずのCherryMX2も,出社時のREALFORCEにはやはりかなわないのです。

 キーの配列に確かに不満はあります。長年使うことで劣化し渋くなったキーもあります。それでもやはり,REALFORCEでした。

 そんなある日,REALFORCEにコンパクトタイプが出たことを知ります。それってHHKB Proとなにが違うのかと思いましたが,キーの数を減らす(というより機種によって役割の異なるキーを隠す)目的で,Fnキーとの併用が必須となるHHKBは,さすがにプログラムだけを書いているわけではない私にはちょっと厳しいものがあったのです。

 REALFORCE RC1は,カーソルキーやDeleteキーなどのよく使うキーは温存しながら,キーの数を上手く減らしたコンパクトキーボードです。私にとってはそれほど重要ではないのですが,ファンクションキーも12個完全に用意されているというのはありがたいと思う人もいるでしょう。

 お値段は36000円。20年で約2倍になったREALFORCEですが,当時2万円を随分高価だと思ったものの20年も使えたことに気をよくして,今回も長く使うつもりでREALFORCEを買うことにしました。

 買ったのは英語配列の荷重30gのもの。いろいろ触って分かった事は私は軽いキーが好きだということ。それでいてミスタッチも多いので,入力は深いところで入る物が好ましいという事でした。

 先に結論を書いておきます。

 買って良かった。というか,先にこれを買っておけば無駄な出費もなかったのに。(もっともそのころにはREALFORCE RC1は発売前だったのですが・・・)

 そう,結局あれこれ巡ってみたものの,またもREALFORCEがゴールになってしまったということです。


・見た目

 初期のREALFORCEは業務用然とした色や形が気に入っていたのですが,近年は真っ黒だったりカラーLEDだったりでちょっとズレてきた気がします。RC1も本体色が黒でキーがグレーという配色しか選べませんので,この点では不満があります。しかし,白やベージュでは黄変しますし,テカリも目立って来ますから,これはこれでありかもしれないです。

 わざとかも知れないのですが,濃いグレーのキーに印刷された文字が見にくくて,特にキーの側面に印刷された物は目をこらさないと見えません。余計な情報を目に入れないという配慮かも知れませんが,それならそれで最初から印刷しなければいいわけで,なんとも中途半端な気がします。ちゃんとした大手のメーカーだったら,ユニバーサルデザインの観点で商品化出来なかったかも知れません。


・付属品

 これは私も驚いたのですが,交換用のキートップが全く付属していませんでした。REALFORCE89Uはもちろん,私が買った多くのキーボードでCapsLockとCtrlを入れ替えるキートップは交換用の予備が入っていたのですが,rc1は全くなし。

 確かにソフトウェアでアサインを自由に変えられることを考えると,特定のキートップだけ付属させるのは理にかなっていませんが,CapsLockを入れ換えない人がどれくらいいるのかを考えたら,高価なキーボードなんだしせめてこれくらいは付属しておいて欲しいと思いました。


・使い心地

 30gの英語配列,しかも静電式という私にとっての完璧なキーボードですので,使い心地が悪いはずがありません。軽々打てて静かですし,APCも4段階に調節可能と,非の打ち所がありません。本当に最初からこれにすれば良かったと思います。

 私の場合,やはりミスタイプが多いので,APCを大きめにするとミスが減ることがわかりました。その代わり深く打鍵しないといけないわけで,荷重30gというのはなるほど楽なわけです。

 今,RC1で書いていますが,とにかくスムーズでスコスコと入力出来る心地よさが本当に素晴らしいです。今は引っかかりが気になるREALFORCE89Uも,ひょっとしたら昔はこうだったのかも知れません。だとすれば,いかに高耐久のREALFORCEでも経年変化にはあらがえないというでしょう。

 Enterキーの右に余計なキーがないのもよいです。小指でEnterキーを押した時のミスがなくなるのがいいですし,加えて横幅を小さくするのに貢献していることも考えると,やはり余計なキーはない方がいいと思いました。

 ファンクションキーも私は使用頻度は少ないのですが,Windowsでは時々F5やF3を使うことがあるので,あった方が便利というのは事実でしょう。キーボード本体を極端に大きくしないようにしながら,こういう場所を取るキーを残す選択というのはなかなか勇気がいったと思いますが,ここをHHKB Proとの差別化と考えたのであれば,大正解だと思います。


・使い勝手

 これは不満があります。まず電源。

 初期設定では,長時間キー入力がなかった場合にスリープには入らず30分で電源が切れるのですが,電源が切れるというだけあって,復帰するには側面の電源ボタンを押して電源を入れないとだめです。これはなかなか面倒です。

 後述のソフトウェアでカスタマイズをすれば,長時間キー入力がなかった場合には無線をOFFするという設定が可能で,これがいわゆるスリープモードに該当すると思うのですが,そこからさらに時間が経過したあとに自動で電源をOFFにする仕組みはありません。

その無線OFF(スリープ)というのもちょっと困った物で,何かのキーを押せば再接続されるものの,そのキーは入力されず無効となってしまうのです。少しタイムラグがあってもいいので,そのキーがちゃんと送信されるなら許せるのですが,これはもう少し作り込みが必要なところでしょう。

 一発で無線をOFFにする機能があれば,これをどこかのキーに割り当てることで離席の時には無線を切るとか出来るのですが,そんな機能はありませんし,FN+F11のECOキーの挙動はエコモードをサイクリックに切り替えるだけで,ECOモードに入ってくれるわけではありません(しかも説明書ではモード1->2->3->4->OFFの5パターンの繰り返しなのに,実機では1->2->3->4の繰り返しです)。これは使い物にならないです。

 また,電源を切るときには長押しが必要というのも困ったものです。私はせっかちすぎて長押しという操作が大嫌いなのですが,おかげでこまめに電源を切るとか,積極的に通信を切るとか,そういうことをする気が失せてしまいます。

 スライドスイッチを使えばONもOFFも手軽に出来るので自動化は必要ないと思うのですが,側面の押しボタンで,しかも電源OFFは3秒の長押しという面倒な方法を強いるのに,自動で電源が切れないというのは,技術的には簡単なはずなんですが,なんでやってくれなかったんだろうと思います。

 それでも電池が死ぬほど長持ちすれば文句もいえないのですが,実際はその逆で,満充電からわずか1ヶ月しか持ちません。しかも内蔵の充電池ですから,さっと電池を交換して作業が中断しないように配慮されていません。

 こうした配慮もそうですし,単4電池で十分な寿命を確保出来ることから,多くのキーボードが乾電池を採用しています。LEDのライティングがないキーボードなら,これで3ヶ月や半年の寿命を実現しているわけですし,内蔵の電池は便利なようでいて充放電回数の制限が製品全体の寿命を決めてしまうという致命的な問題もありますので,ここはもう少し考えて欲しかったところです。

 個人的な希望としては,無線OFFを15分で,電源OFFを30分で自動で行ってくれること,無線OFFからは何かのキーを押すことで復帰(もちろん入力されたキーは有効),電源OFFからの復帰は側面の電源ボタン短押し,これをデフォルトにしておいて欲しいということと,マニュアル操作で無線OFFに移行するキーが欲しいということがあればと思います。

 デフォルトは無理でも,無線OFFから電源OFFへ自動で遷移することはぜひカスタマイズで設定出来るようにして欲しいです。電源ボタンの長押しは勘弁して下さい。

 あぁ,ひょっとしたら無線OFFと電源OFFの間の電力差が小さいのかも知れません。それだったら確かに今の設定に合理性はありますが,それならそれで,ちゃんと書いておいて欲しいと思います。

 どうも,REALFORCEは省電力の作り込みが甘いようです。実装面もそうですし,どういう機能が必要かと言う点にもあまり興味がないように思います。でもそれは使い勝手に直結することですので,真面目に考えて欲しいです。

 LEDの表示も非常にわかりにくいです。無理に1つのLEDにいろいろな意味を持たせているのでわかりにくく,マニュアルがないとrc1が私に何を訴えているのかわかりません。LEDを搭載する場所は他にも用意出来るはずですから,わかりやすさをもう少し考えて欲しいです。

 それから,Fnキーが右側にあるのは最近のキーボードの当たり前なのですが,Macでは左下にあります。これがなかなか便利なんですよ。このあたりも考えて欲しいところだと思いました。


・カスタマイズ

 私は最近カスタマイズを出来るだけしないように使うことを心がけているのですが,キーボードはある程度のカスタマイズをしないわけにはいきません。

 しかし,そのためにソフトウェアの世話になるのは,製品の寿命を短くしてしまうので嫌なのですが,これも全体の流れですので仕方がありません。

 私はMac版のソフトを使っていますが,お世辞にも使いやすいとはいえません。細かくカスタマイズが出来るのはいいと思うのですが,カスタマイズが細かく出来るという事は,それだけ変更点の管理をわかりやすい物にしないといけないわけで,どこを変えたのかわかりやすくすること,うっかり変更した箇所をすぐに元に戻せることあたりに,詰めの甘さを感じました。

 ただ,カスタマイズしたマッピングを4つまで記憶しておいて切り替えはスタンドアロンで一発で出来るとか,APCも0.8mm,1.5mm,2.2mm,3.0mmをすべてのキーで調整出来るとか,エコモードのカスタマイズができるとか,そういう所は便利です。さすがトープレだと思いました。


・まとめ

 ほぼ完璧なキーボードです。ほとんど我慢がありません。色とか予備のキーキャップとか,些細な問題だと思います。それだけにちょっとしたことが残念でならないのも,また事実です。

 省電力については全然甘いと思うので,今後のファームのアップデートで改善されることを期待したいと思います。

 高価とはいいながら,それでも36000円ほどで,キーボードに求めるあらゆる物があるという点で,私は高いとは思いません。確かにゲーミングキーボードのような「勝利する」ことにこだわったものではないですし,派手さもありませんが,キーボードでコンピューティングを行う人にとって,これ以上の選択肢はないと思います。

 私は持ち運びませんが,このサイズならギリギリ持ち運びも出来るでしょう。REALFORCEはこれまで,どれほど気に入っても持ち運びが出来ないサイズでしたから,持ち運びを考えている人にとっては待望の商品になったのかも知れません。

 本気のキーボードとしては昨今,ゲーミングキーボードかHHKBという感じがしますが,もう1つの本命であるREALFORCEも着実に進化しています。rc1はそれほど売れない気がしますが,私にはこれ以上のキーボードはないと断言して,これからの長い付き合いを宣言したいと思います。

 

D850を点検に出す

 新宿にあるニコンのショールーム,ニコンプラザにあるサービスセンターでの点検は,簡単なものであれば,かつては無償でした。手厚いサポートがニコンのありがたさで,他社のカメラよりも割高だったとしても,結局こういう所で安くつくというのがニコンファンの言い分でした。

 とはいえ,そんなうれしい話が続くはずもなく,点検が有償になるに留まらず,サービスセンターの相次ぐ統廃合,サービスセンター窓口の完全予約制に移行してから,ニコンプラザの雰囲気も随分変わったように感じます。

 いい意味でも悪い意味でも保守的(でも結構進歩的)なニコンのことですから,ただただサービスの低下でユーザーの心が離れてしまうことを良しとせず,実はニコンプラザに来た人を対象に,レンズやボディの購入で,有償で行っている点検パックの無料券を配っています。

 4000円近い点検パックが,内容そのままに無料になるというのですから,形を変えてかつての手厚いサポートが戻ってきたような物で,古いニコンユーザーの私としてもうれしいのですが,条件がなかなか厳しく,無料券をもらうための申込用紙をスタッフさんが日付を記入した形で受け取って,3ヶ月以内に新品のレンズかボディを購入,申込書にレシートと保証を一緒に持参してようやくもらえます。

 もらった無料券は当日から1年間有効なのですが,肝心の点検パックは完全予約制なので,当日いきなりその無料券で点検をしてもらおうという話には出来ません。どうしてもと言うなら,予約を事前にとって,その日に無料券を入手し,その日のうちに使うという作戦を立てる必要があります。

 まあ,そこまで必死にならなくても,ニコンプラザに新しい物を見に出かけてみたらなんかいいことありましたくらいの気分でいたらいいんじゃないかと思います。

 さて,私はこのサービスを最近まで知らず,こういうことを大々的に宣伝せずにこっそりやるところがまたニコンらしいんですが,今年買ったZ24-120mmF4Sで1枚,Z50mmF1.8Sで1枚の合計2枚のプラザ点検パック無料券を手に入れました。

 これでなにを見て頂こうかなと思案したところ,買って年月が経過したD850と,一番大切にしたいレンズであるAF-S70-200mmF2.8Eの点検をお願いすることにしました。

 土曜日の12時に新宿のニコンプラザに予約を取り,約3時間後に引き取ることになりました。さすがに2つですので時間がかかるのは仕方がありません。その間,新宿東口の北村写真機店に足を運んで中古カメラの数と値段の高さにクラクラし,西口のヨドバシでフィルムと薬剤が絶滅寸前になっていることをみて気分が沈み,なかなか潰れない時間に足を棒にしながら,3時頃に引き取りに再度ニコンプラザに。

 どれも問題なしですよ,と言って欲しかったのですが,残念ながらD850に1つだけ問題がありました。センサーに取れないゴミが2つほどあるという,なかなかショックな話です。

 どうもゴミが内側に入り込んでいるらしく。これを解決するにはセンサーの交換しかないと言うことでした。ちなみに交換の費用は15万円ほどらしいです。

 ただ,対応してくれた方が言うには,F16まで絞り込んでようやく見えるかどうかと言うところで,普通の撮影ではまず気にならないということです。

 何に気を付ければ防げたのかと聞いてみたんですが,これはもう防ぎようがないとのことで,そういうことなら気にしても仕方がないですし,実害がないなら正常だと思って使うことにしました。

 後は点検と清掃,フォーカスの調整をやってもらいました。フォーカスはあろうことか後ピン傾向にあったそうで,再調整をして頂きました。いや,購入当初から後ピン気味だったんですよ。それを微調整で使っていたのですが,これまでにも修理と点検を何度かお願いしていたのに,今回初めて調整してもらえたというのも,ちょっと複雑な気持ちです。

 レンズは全く問題なし。とはいえ,中古店への売却時の査定と違って重箱の隅を突っつくような確認はないでしょうから,写りに影響のあるゴミやクモリがないという程度に受け取ることにします。

 AF-S70-200mmF2.8EはAFも高速ですし,VRも搭載しているメカトロニクス満載のややこしいレンズです。こういうのはいつ壊れるかわかりませんから,それらが問題なく動作しているというのがわかったことだけでも有意義な点検でした。

 これだけ点検して頂いて無料というのもうれしい話で,帰宅後早速チェックしました。先にレンズですが,こちらは確かに問題なし。

 次にD850ですが,指摘されたゴミは私には見つけることが出来ませんでした。F16まで絞り込んで,白い壁を撮影したんですが,ゴミは全然見当たりません。仮に本当にゴミがあったとしても,このレベルであればゴミなどないのと等しく,気にする必要は全くありません。

 しかし,別の問題が・・・白い壁を撮影したから見つかったようなものなのですが,LCDにムラがありました。右側に丸い模様のような村が3つほどあります。違う画像でも同じ位置に出ますし,拡大しても変化がありませんので,画像にあるのではなく,LCDにあるムラだと思います。

 面白いのは画像が黒すぎても白すぎても見えなくて,明るめのグレーが一番目立ちます。とても気になり,LCDを拭いたり保護フィルムを外してみたりといろいろ試しましたが変わらず。これこそLCDそのものの問題で,交換しかないんじゃないかと思います。

 画面のど真ん中に出ているわけではないですし,他に修理すべきものが出てきた時に一緒に修理するつもりで,今はこのまま使うことにします。

 それから,AFが動作しないと言う問題が頻発するようになりました。時々AFが動作しなくなり,レンズを付け直したり,ボディ側のAF-Mを切り替えると動くようになることは元々起きていたんですが,今回はこの問題が頻発します。いよいよ壊れたのかも,と思っていましたが,数日の間に頻度は下がり,今は全く問題が出なくなりました。

 AFが効かない時,そのレンズはMFのレンズとして扱われるようです。マウントの電気接点の汚れが原因として指摘される症状ですが,清掃後も再現するのでおそらく内部の問題でしょう。嫌だなあ。

 ついでにいうと,電源OFF時にボディに振動を与えるとメモリカードのアクセスランプが転倒するという変な問題も見つけました。詳しく調べてみると,MB-D18を使っている時に限られ,どうもロックレバーの位置を検出するスイッチの接点の不良による誤作動ではないかと,そんな感じです。

 そもそも振動など与えるなという話ですので,これも様子見ですね。

 そんなわけで,まだまだ使えるD850だと思っていたら,さすがに初期ロットだけに完調というわけにはいかなそうです。かといって完全修理を行うとお金がかかりすぎますので,今回の点検で実用上は全く問題なしという結果を支えに,どんどん使っていこうと思います。

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