エントリー

2014年04月の記事は以下のとおりです。

最後のポケコンは新品で

  • 2014/04/18 14:37
  • カテゴリー:散財

 私が「キーのいっぱいついている」「小さな液晶画面」のついた機器が昔から大好きなことはここにも何度か書いていますが,冷静に考えるとどちらも時代に逆行しており,キーはなくなる方向に,画面は大きくなる方向に向かっているなかで,こうしたものを目にすることが,そもそも少なくなっているように思います。

 まず,家庭に電話機がなくなりましたよね。電卓もあまり見なくなりましたし,携帯電話からテンキーが消えて久しいです。

 せいぜいテレビのリモコンくらいかなと思いますが,あれだって歓迎されているわけではなく,みんな古くさいなあと思って見ているんじゃないでしょうか。

 そして,最もレガシーで絶滅寸前なのが,ポケコンです。

 関数電卓にプログラム機能が搭載されたのが1970年代の後半で,プログラムを記述する言語に当時わかりやすくて覚えやすく,そこそこ何でも出来る言語として人気だったBASICを搭載したものが1980年代初頭に登場しました。

 BASICを搭載してプログラムが組めれば,それはもう当時のパソコン並です。当時はBASICをはじめとする高級言語が走るコンピュータを個人で持つことが夢だった時代ですので,それが関数電卓の進化形であったという出自はさておき,小さく安く,そして電池で動いて,しかも電源を切ってもプログラムが消えないので高価な外部記憶装置がなくても便利に使えるポケットコンピュータは,それまでの工業高校や理系の大学生,専門家から一気に「パソコンが買えない人々」をユーザーにし,彼らを虜にしたのです。

 学生は言うに及ばず,専門家は計算をする道具としてポケコンを使いますので,それは目的でも楽しみでもありません。しかし,パソコン代わりに買ったマニア達は,それを触ること自身を目的として楽しんでいました。

 楽しんでいる人は強いです。ゲームなどのプログラムが多く作られ,内部解析が進み,マシン語によるプログラミングやハードウェアの改造や拡張が行われ,そしてその成果が当時唯一の情報交換手段であった雑誌に掲載されて,独特のコミュニティーを形成していました。

 小さい事,遅いことなどの,ポケコンにまつわる制約は,むしろそれを「登るべき山」と積極的に克服し楽しむ傾向が強く,高い技術力を持つ先駆者達が切り開いた新しい地平を,多くのフォロワーが共に進んでいたような時代でした。

 メーカーもそうした動きに好意的だったように思えて,ファンクラブを主催したり,機能強化した新機種を投入したりと,実質2社体制による競争原理と相まって,活気にあふれていました。

 しかし,ポケコンはあまりに制約が多すぎましたし,パソコンの進化とは別の道を進むことになってしまい,客観的に見て1980年代後半のポケコンのマニアは,ちょっと他のパソコンのマニアとは異質で,悪く言えば孤立したコロニーを形成していたように思います。

 マニアがポケコンを夢中で触っていた1980年代の後半,すでにパソコンの高級言語はBASICインタプリタからCコンパイラに移行し,そもそもプログラムを自分で作ることは一般的ではなくなっていました。

 自分がしたいことを実現するアプリケーションソフトを購入し,それを実行する環境として,パソコンが使われていた時代になるに至って,ポケコンの存在意義は徐々に薄れていきました。

 一方で,小さい事は通学の負担を軽く,安いことは教材として経済的な負担を軽く,わかりやすいBASICが即使える事は初心者がプログラミングを学ぶには最適であるという点が評価され,工業高校や専門学校の教育用の個人用コンピュータとして,使われる事が主流になっていきます。

 現在はどうかというと,すでにカシオは撤退,シャープも教材用に1機種のみを残すのみとなっていますが,これも登場からすでに5年ほど経過していますし,そもそもオリジナルは18年も前に出たもので,これをちょこちょことマイナーチェンジしたものが今も出ていると言う状況を考えると,教材を安易に廃止できないという社会的責任から細々と続けているという印象が拭えません。

 それでも,かつてあの小さな液晶画面に広大な宇宙を見た私のようなオッサンは,ポケコンがまだ新品で買えると言うことを,とてもうれしく思うわけです。

 しかし,それも,もう風前の灯火という感じです。唯一の現行機種は2009年に登場したPC-G850VSで,これは1996年に登場したPC-G850のマイナーチェンジ版です。噂ではすでに生産は中止されており,在庫のみになっているという話です。

 ですが,経済的にいろいろ厳しい状況にありがちな高校生が,一人一台自由に使えて,しかも家でも学校でも持ち歩く事が出来るコンピュータを,わずか15000円で手に入れる事が出来るというのは非常によいことで,ポケコンならではのメリットがもう少し評価されればいいなと個人的には思っています。

 あと,あまりクローズアップされないのですが,ポケコンのBASICはもともと関数電卓だったなごりもあり,計算の精度が電卓並みなのです。当たり前と思うかも知れませんが,これがパソコンのBASICだと適当に丸められたりして,科学技術計算にはちょっと使えないような精度のものもあるのです。ポケコンは安くとも,そのあたりは完璧ですので,計算結果が黙って信用出来るという安心感は,特に教育用途には必須と言えるかも知れません。

 そんなわけで,ポケコンは主に工業高校の教材として教育機関系の販路でしか買えないものになっていますから,小売店では買えません。それに,大学進学率の向上と少子化の影響もあるそうで,この先市場は小さくなるばかりですから,新機種はもとより,現行機種もいつ買えなくなるかわかったものではありません。

 PC-G850Vという1つ前の機種は,PICマイコンのアセンブラを内蔵したことが売りの1つだった関係で,一部の電子部品屋さんでも店頭販売されていましたが,そのPICも今や時代遅れになり,現行機種のPC-G850VSでは機能こそ残っていますが,マニュアルの記載はほとんど削除されており,電子部品屋さんでの販売も見かけなくなっています。

 随分ポケコンと遊んできた私としては,今ここで最終機種を買っておかないと行けないだろうと,PC-G850VSを買うべく,行動を開始しました。

 解決策は案外簡単に見つかり,東京のある教材屋さんが在庫を持っていて,我々のような一般への小売りも応じてくれることがわかりました。ただ,前述のように製造中止の話も出ていたくらいですから,在庫がなければもうアウトでしょう。

 メールで問い合わせると,うれしいことに在庫ありです。値段もいわゆる定価に送料ですから,電子部品屋さんの店頭販売価格よりも随分安く買えます。

 グダグダしていても仕方がないので,速攻で注文,代金を振り込んだら,翌々日には手もとに届きました。

 早速,いつものようにレビューでもするか,と思ったのですが,昨夜ちょっと触った限り,特に取り立てて書くこともないんですね。確かにZ80を使ったポケコンであるPC-1600KやPC-E200に比べて進化していますが,ポケコンという本質が変わるわけでもなく,またオリジナルが10世紀生まれという古くささも拭えないので,あまり感動もないのです。

 大きさはもはやポケコンとは言えないくらいに分厚くなりました。下手をするとPC-1600K並の分厚さになっているんじゃないでしょうか。

 玩具にありがちな厚ぼったい感じは,学生の乱暴な使い方に耐えるための堅牢性追求の結果でしょうが,かつてのポケコンが持っていた凝縮感であるとか,洗練された感じは皆無で,使っていてもあまりうれしくありません。

 画面はフルグラフィックになりましたが,そんなことより6行表示が可能になったことが素晴らしいです。キーは大変使いやすく,これは満点を上げたいです。

 電池を入れるとPC-E200でよく見たリセットの画面が表示されますが,動き出せばそれはもうRUNモードとPROモードを切り替えて使うポケコンそのものです。

 それともう1つ残念な事は,これまでポケコンを買うと,メモリ増設などの改造を必ず行ったものですが,PC-G850VSについては全く改造の余地がないということです。

 PC-E500系のマシンなら,大容量メモリの搭載も可能ですが,Z80を内蔵するPC-E200はよく言えば素直,悪く言えば改造の余地のないマシンで,特にRAMは32kByteから全く増やすことが出来ません。

 外部記憶装置についてもカセットの入出力も廃止になっていますし,本体内蔵RAMのバッテリーバックアップもなくなっていますので,かなり割り切って使う事になりそうです。

 BEEPも出ませんが,これは教室でみんながピーピーやるとうるさくてかないませんし,やむを得ないのかなと思います。

 PC-G850VSのC言語は,カシオのVX-4のようなインタプリタではなく,一応コンパイルをして動かすセミコンパイラ方式と呼ばれるものが搭載されています。とはいえ,C言語の文法をちょこっと覚える程度のものだという点ではそんなに違いはないように思いますし,これで実用的なソフトを書くということは,あまり想定されていないように思います。

 これは,CASLとZ80それぞれのアセンブラにも言えて,結局まともに使えるのはBASICだろうという話になりますが,メモリマップやシステム構成,BASICの文法を見てもそれは1980年代のマシンであり,悪い意味ではなく生きた化石と言えるような気がします。

 個人的には,結局1980年代から進化していないならば,もっと小さくもっと安く作ることが出来るんじゃなかろうかと思いますが,そこは教育向けで数の小さい世界ですから,仕方がありません。

 ということで,おそらくこれで私のポケコンコレクションは最後になると思います。PC-1245はすでに液晶が死んでしまってほぼ使い物になりませんし,X-07も同じように液晶が駄目になっています。

 10年ほど前にPC-1261などがとても高価な値段で取引されていたことがありましたが,そんなポケコンも液晶がもう軒並み死んでいるんじゃないかと思います。

 当時のマシンには素晴らしいものが多くて,私も欲しいとは思いますが,機能的にも思想的にもそんなに代わらないものが,新品で買えるということにまずは感謝し,日常的に使ってみようと思っているところです。

URL変更のお知らせ

  • 2014/04/08 09:48
  • カテゴリー:備忘録

 お知らせです。

 長い間無料で使わせてもらっていたDynDnsが,とうとう全面的に有償化されることになりました。

 あと30日で無料で利用出来なくなるというメールが届いています。

 まあ,年間25ドル払ってもよいのですが,他に無料のDDNSがありますので,残念ですがこちらに移行することにしました。

 よって,長年使って来たgshoes.dyndns.orgは,近日中に廃止されて,使えなくなります。

 新しいドメインは,

gshoes.no-ip.biz

 です。ホームページのURLは,

http://gshoes.no-ip.biz

 で,艦長日誌のURLは,

http://gshoes.no-ip.biz/mqv/

 です。

 すでに切り替えが済んでおりますので,以後はこちらでご覧下さい。

aitendoのDSPラジオ

  • 2014/04/04 15:03
  • カテゴリー:make:

 私の親しい友人の一人に,ラジオ好きが高じて電子工作に目覚めた人がいます。彼はもともと機械屋で,電気関係には抵抗がある人だったのですが,どういうわけだか自宅には立派なオシロスコープも鎮座してあり,いっぱしの電気設計者です。

 そんな彼がある時,aitendoなるお店の話をし始めました。私に知っているか?と尋ねるので,ああ,買い物をしたことはないけど知ってるよというと,ここで買ったラジオが動かなくて困ってるんだと,言い出しました。

 aitendoは,最近出てきた電子工作の部品を扱うお店なのですが,きちんとしたものを扱っていると言うよりは,なんだかよく分からない怪しげなもの(主に中国製)を,安価に売っているというお店です。仕様書とか説明書とか,そういうものはほとんど用意されておらず,かといって自力で調べる事が出来るほどまともな部品でもないため,まるでパズルを解くかのような非論理的な世界が,一部のマニアの心を鷲づかみにしているようです。

 彼の場合,年始にaitendoの福袋を店頭で買ったことが事の始まりだったらしいですが,とにかく謎だらけで,先に進まんとぼやいていました。そこで,私に助けを求めたという事のようです。

 私もラジオは好きですし,一応この道30年のベテランですから,aitendoくらいなんでもないと思っていますので,彼が特に困っているといっている,DSPラジオを買うことにしました。ポリバリコンの背中にすべての機能が収まった基板がくっついている,超小型のラジオモジュールですね。

 日本ではラジオは完全に旧世代の遺物で,新規開発はもう行われていないに等しいわけですが,実は海外では革命的な進歩が起きています。それが,DSPラジオです。

 従来のラジオはLC共振回路で作った同調回路で電波を選び,これをある周波数に変換してから,復調して音を出していました。もう何十年もこの方式です。

 ところがDSPラジオは,まず手当たり次第に電波を取り込み,A-D変換でデジタル化し,これをDSPに突っ込んで欲しい周波数の電波を選び,復調します。欲しい電波を選ぶ事も,復調することも,実はちゃんと数式で書くことが出来て,計算で行うことが出来ますが,複雑な計算をリアルタイムで,しかも安価に行う方法など存在せず,それらを行う部品を使って処理していたわけですね。

 いわば,数学的な処理が近似された特性を持っている部品を探してきたり作り出したりして,ラジオを作っていたわけです。

 話が逸れますが,これはアナログコンピュータとデジタルコンピュータとの違いのようなもので,微分をするのに,微分をする回路を作って電圧を測ったのがアナログコンピュータ,微分を近似して計算して求めているのがデジタルコンピュータです。

 単純な繰り返しの計算を猛スピードで行うことで,それなりの速度とそれなりの精度が得られるようになれば,値段も下がるし信頼性もあがるし扱いも楽になるしで,いいことずくめです。こうしてこの20年,我々の身の回りのものはデジタル化が進みました。

 ラジオの世界は,ここ10年ほどでようやくDSPの性能がラジオに使えるようになったことで,まずは軍用の無線からDSP化されるようになってきたのですが,民生用の短波ラジオくらいなら,もうDSPは当たり前なんですね。

 数学的に計算されるのが理想なラジオの世界を,近似した特性を持つ部品で代替していたのがこれまでの状況ですから,正確無比な演算で処理できれば,これに勝るものはありません。ですから,今回のDSPラジオも,500円で超小型で中国製で,回路もなにやら怪しいにもかかわらず,動き出せば実に高感度,高音質でビックリしました。

 受信周波数を選ぶプロセスも演算ですのでバリコンのような部品を使うことはないのですが,そこはチューニング=ダイアル=バリコンという固定観念があるのか,無理にバリコンを使っているような回路です。

 こんな最新のDSPラジオでも,音声出力は謎の仕様で,ステレオ出力時は左右で位相が逆になっています。これは,モノラルスピーカーの出力と兼用になっているからのようで,スピーカーの出力を稼ぐためにBTLになっているせいです。

 BTLの時には,片側の位相は逆にして突っ込みますが,ステレオのヘッドフォン出力の時には,GNDをコモンにしたシングルエンドでないといけないので,位相を戻さねばならないのに,さぼっています。

 ヘッドフォンの接続を逆にした,専用品を作ればこのままでもいいのですが,それでOKにしちゃう中国製品の思想に,私は驚愕しました。私は結局,ヘッドフォンによるステレオの受信はあきらめ,モノラルのスピーカー専用ラジオに仕上げました。

 小さいプラケースに詰め込み,なんとか形にしましたが,AMはもちろんFM,そして短波も受信出来る優れもので,大きな音がスピーカーから出てきます。

 日本にいると,ラジオが20年前からちっとも進化せず,もう終わった存在に見えてきます。しかし,世界的には完全に世代が移行した新システムが普及期に入っており,その性能の向上は圧倒的なものがあります。そしてそれらは,スマートフォンなどに内蔵されたラジオICに応用されており,実は我々は気が付かないうちに,DSPラジオのユーザーになっているのですが,誰もそんなラジオの事を気にかけるわけではなく,子供たちも興味を持たずに,古い知識だけが年寄りによって口伝されるという,悲しい現実が,まさに起きています。

ページ移動

  • 前のページ
  • 次のページ
  • ページ
  • 1

ユーティリティ

2014年04月

- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

ユーザー

新着画像

過去ログ

Feed