エントリー

2018年03月の記事は以下のとおりです。

拡大率1.0倍のDK-17Mを作ってみる

 ニコンの純正オプションに,DK-17Mというマグニファイヤーアイピースがあります。拡大率は1.2倍で,やや小さい倍率のファインダーを大きく見せるためのものとして非常に有効です。

 同種のものはニコンにも他社にもありますが,このDK-17Mは高級機にしか用意されない丸窓専用品で,価格は5000円近くもします。

 安いルーペ並みのお値段なので気軽に買えるような物ではないのですが,使ってみた印象は価格に応じたもので,歪みも少なく,非常に見やすくなります。

 欠点は素通しのアイピースに比べて厚みがある事で,当然アイポイントも遠くになります。厚みがあるのはその画質のために,結構分厚いガラスレンズを2枚も使っているからなのですが,この厚みがあるおかげで,鼻が背面に当たらなくなり,LCDが汚れないという点が私にはとてもうれしいのです。

 このアイポイントの違いというのは,些細なことではありながら,顔という敏感な部分にどこが触れるかという大きな違いを生むことになります。このことはDK-17Mを使っていたD800から,使わなくなったD850に移行して気が付いた事です。

 DK-17Mの厚みを持つアイピースがあればなあ,と思ってここまできたのですが,先日D300のアイピースをあれこれいじっているうちに,作っちゃえばいいんじゃないのか,と思い至りました。

 考えたことはとても簡単で,DK-17Mを分解し,レンズを抜き取って,通常のアイピースのガラスをはめ込むだけです。

 とはいえ,高価で使い道のあるDK-17Mを分解してしまうのももったいないし,通常のアイピースも壊してしまうわけですから,なかなかお金がかかります。それに,うまくいくとは限りませんしね。

 ですが,D300で使おうと思っていたDK-17Mが,もともとのファインダー倍率が高いことで使えなくなり,1つ余ってしまったことから,改造にチャレンジしてみました。

・必要なもの
 DK-17M
 DK-17F

 DK-17Mは鏡筒とレンズを固定する枠を使い,レンズは使いません。ですが,いつでも復活出来るように,順番と裏表が分かるように保管しておくことをおすすめします。

 DK-17Fは素通しのアイピースで,フッ素コーティングがされている高級品です。D850の付属品で,私はこの付属品を使ってみました。

 アンチフォグのDK-17Aはガラスではなくプラスチックらしく,ゴシゴシ擦るとコーティングが剥げてしまい,キズも付いてしまうらしいです。今回のような改造ではどうしても汚れたり傷が付いたりしますので,これは避けた方が無難です。

 ノーマルで一番安いDK-17でもいいように思うのですが,肝心なことはこのガラスが簡単に外れるようになっていることで,DK-17がガラスをどうやって固定しているかがわからないため,おすすめしません。

 というか,D850に使うんですから,本体標準以下の性能になったらだめでしょう。


・改造手順

(1)まず,DK-17Mを分解します。レンズの分解によく使うカニ目外しや分解コンパスを使って,表面の内側にある枠を左に回します。もし回りにくかったらアルコールを垂らしてしばらく放置して下さい。

(2)枠が回って外れたら,鏡筒からレンズを取り出します。上から凹レンズ,スペーサー,凸レンズという順番です。

(3)DK-17Aからガラスを取り出します。DK-17Aは枠にはめ込んだスプリングでガラスを押さえつけています。このスプリングは爪楊枝でちょっと内側に押すだけで簡単に外れます。

 なお,ガラスには裏表があり,フッ素コーティングは片面にしかついていませんので,これが外側に来るようにしてください。

(4)ガラスをDK-17Mにはめ込みます。ここが一番心配していたところで,もしガラスがレンズと同じ直径なら奥まで沈んでしまうので固定できません。

 ですが,幸いなことに,ガラスの直径は僅かにレンズよりも大きく,固定枠と同じ大きさでした。まるで最初から想定したかのように,このサイズのガラスをきちんと固定する仕組みが用意されているので,なにも工夫は必要ありません。

(5)DK-17Mに枠をねじ込みます。


 これで完成です。早速DK-19を取り付け,D850に装着です。おお,見慣れたD800のシルエットが甦ります。

 構えてみると,確かに鼻があたらなくなります。まあ,10mmほど離れただけでぶつからない鼻ってどんだけ低いねんと思う訳ですが,私はむしろ邪魔なので外してしまいたいくらいですから気にしません。

 しかし,鼻で呼吸すればLCDは曇るわけで,汚れなくなっても曇ってしまえば一緒です。生きるってつくづく面倒なものです。

 ただ,どうやら私は鼻がぶつかるのを避けるために,無意識のうちにD850を斜めに構えていたらしく,今回自然に水平に構えることが出来たことから,いつも少し上向きになっていたような感じです。

 肝心の見やすさについては,なにも変わっていません。D850はもともと見やすいファインダーですが,これを損なってはいません。アイポイントが少し遠くなったことでややケラれる傾向がありますが,メガネをしていない私には許容範囲です。視度補正も再調整する必要はありませんでした。

 とまあいうことで,アイポイントを1cmほど遠ざけるだけの,普通の人には存在意味が不明なアイピースが完成しました。費用対効果も最悪で,わざわざ拡大率を1.0倍にするなんて理解されないと思いますが,カメラのボディを顔にきっちり押し当てることが出来るメリットは大きいですし,使って見た感じは上々でした。

 他の機種でDK-17Mを常用している人にとっては共通した使い勝手になりますし,これでD850がもっと気分よく使えると思います。

 そうそう,D300ですが,DM-17Mを使わず普通のアイピースを使うことにしました。もともとNEPS1が分厚いので通常のアイピースでも鼻はぶつかりません。見やすさもこっちの方が上です。

 しかし,アイカップにどうも違和感が・・・よく見るとDK-3と書いてあるじゃありませんか。

 よく似ているのでDK-19だと思っていましたが,こりゃまたF3時代の古いものが出てきたものです。てなわけでDK-19を注文しました。

 

D300を丸窓に

 D300のファインダーを丸窓にするという計画は,私が初めて手にしたF3以降,ずっと使い慣れてきたファインダーに合わせるためで,人との界面は出来るだけ同じ物であって欲しいという基本的な方針から発したものです。

 F3と手に入れた理由の1つに丸窓への憧れがあったこともあり,その見やすさは汎用性から丸窓にこだわりたい気持ちは,なかなか強いものになってきました。他社のカメラに移行しないのも,これが理由の1つかも知れません。

 残念なのは,ニコンも丸窓を採用するカメラを高級機に限定していることです。丸窓は高級機の証だというメッセージも分からなくはありませんが,本当に良いものであるなら,可能な限り多くの機種に展開すべきものであるはずで,サイズは小さいですがかつての中級機種であるFEやFE2,FMやFM2もちゃんと丸窓でした。

 丸窓の最大のメリットは,目をすっぽり覆うアイカップ(ニコンでは接眼目当て)があることです。かつて,PENTAXのSPを使っていたころ,純正のアイカップSを使ったところ,目がすっぽりと覆われて周囲から光が入らなくなって,格段にファインダーに集中することが出来るようになりました。

 また,ゴムの変形をあてにして顔にカメラを押し当てることが出来るようになって,安定感も増しました。以後ずっとこのスタイルですが,目を覆わないアイカップのカメラは今も使いにくくて仕方がないと感じて,撮影に集中出来ません。

 そして悪いことに,D300は丸窓ではありません。D300SもD200もそうです。D500になってようやく丸窓になり,フラッグシップに昇格した感もあるわけですが,D300をちゃんと使っていこうと考えて,この丸窓の問題をどうするか,ちょっと考えていました。

 以前はあれこれと工夫して丸窓にしていたのですが,昨日書いたように,おととしあたりからニコンの純正で,角窓を丸窓にする部品が手に入るようになっています。NEPS1という部品がそれですが,これ,ニコンダイレクトからしか購入出来ません。

 まあ,数が揃わないとか,もともと別の目的で用意されたオプションでファインダーを丸窓にするアダプタとしては性能や強度がニコンの社内基準を満たさないからとか,そういう理由なんだと思いますが,ニコンのいい所はこういう細かいオプションが揃っていて,入手しやすく安価なことにもあると思うので,ぜひ量販店で買えるようにして欲しいです。

 D750では定番化している部品なので,私も早速1つ買ってみました。これに余っているマグニファイヤーアイピースDK-17Mと,接眼目当てDK-19を組み合わせれば,見やすく少々飛び出したファインダーが手に入るでしょう。

 昨日届いたので試してみました。

 サイズが合わないとか,なにかと干渉したりとか,そういうトラブルは全くなく,思惑通り取付が出来ました。好都合だったのは,DK-19の根っこに付けるハズレ防止の金属のリングをなくしていて,これなしでDK-17Mに付けていたのですが,NEPS1がDK-19の根っこをしっかり押さえつけてくれるくらい隙間がなく,ハズレ防止も兼ねてくれそうなことでした。もし金属のリングが手元にあっても,結局外さざるを得なかったのではないかと思います。

 DK-17Mの厚みのせいで,かなり背面から飛び出してしまいますが,LCDに鼻がぶつかって汚れるのを嫌う私にはありがたいことで,実際とても快適にホールドできます。

 しかし,あいにくとファインダーの見やすさは良くありません。

 まず,DM-17Mを使うとかなり周囲がケラれます。D2Hでもケラれますが,こんなにひどくなかったので意外でした。どうもD300はファインダー倍率がもともと高いらしく(D300は0.94倍,D2Hは0.86倍と小さい),そのせいで見にくくなっているように思います。

 また,よく見るとファインダーの窓が元々小さいんですね。丸窓にしても結局ここが大きくなるわけではないので,DK-17Mを使ってもあまり良い結果は得られないのでしょう。

 さらにいうと,DM-17MとD300の相性は悪いです。まるでフレアでも出たかのような白っぽい画像になりますし,ギラギラとしたものも見えるようになります。また,どういう訳だかD300の視度補正は私には今ひとつあわず,すっきりと見えないのですが,DK-17Mではそのぼやけた画像が拡大されるためか,どうも違和感が強く出ます。

 D850に持ち替えてファインダーを見てみましたが,いやはや,別次元の見やすさです。こんなに見やすいものとは思っておらず,改めてD850がファインダーに力を入れたカメラであるとい話を思い出しました。

 総じてD300は,フラッグシップといいながらも,コストやデザイン,大きさの制約からファインダーは今ひとつなものになっているという印象を持ちました。

 ということで,さらに工夫が必要です。

 NEPS1そのものについては,さすが純正で違和感なく取り付けできますが,プラスチックのテカリ具合が安物っぽく,D300には後付け感がかなり出ます。

 ネジの精度などは問題ないのですが,ニコンにしては作りが雑というか,細かいところに気を遣っていないというか,やや期待外れな所もありました。安い(といっても750円ですが)ので仕方がないところもありますが,送料が500円かかるので実質1200円以上の部品で,このクオリティは万人にお勧め出来ないと思います。

 さて,話は飛ぶのですが,今更ながらに大変なことに気が付いてしまいました。

 D300とD850で,露出補正のユーザーインターフェースが違うのです。

 D300で露出補正をする時は,ダイアルを左に回します。D850では右に回すので反対です。

 これ,私はあまり露出補正を使わない人だったので問題にしてこなかったのですが,ニコンの伝統で,露出補正は左に回すとプラス補正レベルメータも左がプラスなのです。

 右に回すと増えるが一般的で,プラス補正をすると明るくなるわけですし,メーターも右側がマイナスというのもおかしく,ここは昔から議論の的になっていたそうです。

 で,この問題はD4やD800の世代で,露出補正は右に回すとプラス補正,レベルメータも右がプラスがデフォルトに変更されたようです。ニコンとしてはダイヤルの回転方向を露出補正だけで変更出来るようにしたことで,過去機種のユーザーからの回避することにしたらしく,この問題は沙汰止みとなっています。

 私はD800から本格的にニコンの新しいUIに触れた人なので,実は昔のUIにはほとんど馴染みがありません。(D2HではAEロックを使っていました)

 ところが,D300ではまだこの問題に決着がついておらず,ダイヤルを左に回すとプラス補正,レベルメータも左がプラスで全く逆です。

 ならばと,左右を入れ替えて見ようと試みたのですが,レベルメータは左右を逆に出来ても,ダイヤルの回転方向の変更は露出補正以外でも変わってしまうので,絞りやシャッタースピードも逆になるのです。

 これらは私も日常的に使うものなので,変わってもらっては困ります。露出補正だけ入れ替える機能はD300にはまだ搭載されておらず,どうにもならないことがわかりました。

 今のところ,露出補正は慣れるしかないという結論になり,左回転でプラス補正で使うことにしました。レベルメータは左がプラスは許せないので,ダイヤルの回転方向と逆になりますが,我慢して右をプラスにします。

 D850の露出補正を左回転でプラス補正にすることはちょっと躊躇しているのでそのままです。どうも2台の常用機で回転方向が違うのは気持ちが悪いのですが,私の露出補正の重要度の低さを考えると,あまりここにこだわるのは得策ではないように思います。

 まあ,D850では露出補正の必要性がほとんどないほど,AEの精度が上がっているので,ここで回転方向を変えたとしてもそんなに問題はないと思うのですが・・・だからこそいざというときに失敗しないことも必要ですしね。

 ニコンは,回転方向もそうだし名称もそうなのですが,他社や慣例にならうことをせず,独自の道を突き進むことがあります。ニコンが面白いのは,そうした多勢に迎合しないことに,いちいちもっともらしい理屈をこねくり回すことにあって,そうした根拠に納得したり憧れたりする輩が,ニコンのロイヤルカスタマーになっている感があります。(納得出来ない人はさっさと他社に移行しますので,ますますその純度があがるわけですね)

 こうした,一般の人にはなかなか理解されないクセのある集団が「ニコ爺」と揶揄されていて,ともすれば一般の人達に立ちはだかる壁として機能し,閉鎖性の一端になっていると私などは思う訳ですが,そこはさすがに商売ですし,世界中の人を相手にする以上は,あまり高飛車な態度をとり続ける訳にもいかないでしょう。

 だから,ここに来て露出補正のUIを真逆に変えるという荒技をやることになったのだと思います。かなり内部で議論があったんじゃないかと思いますが,最終的に使いやすくなること,説明書を見なくても使える事,そして失敗を防ぎ機会損失を減らす事が最終的な目的である以上,変なこだわりは捨てて,多くの人が自然に使えるものを作って欲しいと思います。

 え,私?

 私は丸窓原理主義者のニコ爺ですよ。

 

今さら手に入れたD300

  • 2018/03/27 12:24
  • カテゴリー:散財

 今更ながら,D300を買いました。いやはや,これは完全に無駄遣いです。本当に思いつきというか,衝動買いというか,そういうレベルの話です。

 そして手に入れて,すっかり気に入ってしまいました。

 デジタル一眼レフも市場に出始めてから20年近くが経過しました。確かにその進化は劇的なものがあり,銀塩のカメラと違って古いデジタル一眼レフが現役で使えるかと言えば,それは疑問です。

 しかし,技術の進化は連続ではなく,突然大きく進化することもあります。大きな変化の後は比較的緩やかな変化が続くものなので,実はこの変化点の直後のカメラは,今でも十分使えたりするものです。

 もちろん,なにが進化したかを知っていて,そこを割り引いて使って問題ない使い方に限られますが,世代という言葉で区切られる技術的変化の枠の中では,値段が下がる,速度が上がる,画素数がちょっと増える,なんかの変化が中心となるので,割と妥協しないで済みます。

 ただ,そういうカメラは中古市場でもなかなか高価なんですね,当たり前の話です。

 しかし,いつの時代にも薄幸の機種というものがあり,不人気だったり数が多かったりして,値段の安い実用機があったりするものです。

 そんな機種の1つに,D300があります。

 D300は中級機種のあり方を定義したD200の後継です。かつフラッグシップモデルがフルサイズ機に移行したことで,APS-Cサイズでの最上位機種という役割も担うことになりました。

 フルサイズの頂点が名機D3,そしてデジタル一眼レフの歴史そのものであるAPS-Cの頂点がD300です。

 ニコンはD3が登場してから,特に上位の機種においてフルサイズに注力することで,APS-Cについては中級機種以下で展開することになってしまいました。D300の後継はD300Sですが,これはD300のマイナーチェンジモデルと行って良く,基本性能に大きな変化はありません。

 D300の発売が2007年11月,D300Sはその2年後の発売ですが,その後継機種は長く不在で,D500という正統後継者が登場したのが2016年でした。約7年の間APS-Cの頂点はD7000シリーズが担って来ましたが,私の目にはこれはかなり無理があり,なんといってもUIがプロモデルと全然違うことが最大の問題だろうと思っていました。

 考えようによっては,ということになりますが,D300SはAPS-Cの頂点として数年前まで現役,そして中身がほとんど変わらないD300はもしかすると今でも立派に通用するモデルなんじゃないかと思う訳です。

 10年前のモデルなのに現役と買わない性能を持つとすれば,これは中古でもお買い得かもしれないと考えて調べてみると,びっくりするほど安くなっています。

 D300は軒並み3万円を切っています。並品なら25000円です。入門機の新品を買うのが馬鹿らしくなる価格です。

 D300Sは結構高価で,4万円くらいします。それでも十分安いとは思いますが,4万円と25000円では全然違います。

 この値段差はどこから生まれるのかなと思っていると,一番大きいのは修理受付が終了したかどうか,だと分かりました。D300は修理に持ち込んでも,断られてしまうそうです。

 点検くらいはやってくれるでしょうけど,すでに部品がないD300では,分解を伴う修理中に壊してしまうと,現状での返却も出来なくなってしまうので,断るのが原則なんだそうです。残念な事ですが,壊れてしまったらそれっきりで捨てるしかない,だから安いのです。

 D300はAPS-Cの最上位機種らしく,最大8コマ/秒の高速連写も可能です。ゆえに消耗品と考えていいシャッターの寿命も早く尽きる傾向にあります。中古ではシャッターの回数は明記されないものなので,このあたりはバクチですし,販売者をどのくらい信用するかに依存します。こわいですね。

 まあそれも,25000円なら許せるかも知れません。

 もう1つ,バッテリーの関係があります。D300やD3のバッテリーは,日本の安全規格の法律が変わったことで,新規に生産できません。バッテリーはいずれ寿命を迎えるものですので,これが買い直せないということになると,D300を使えるのは電池が使える間だけ,という事になります。

 なかなか厳しいです。(ま,互換電池がありますし,実は電池は上手に使えば5年以上平気で使えますから気に病むほどではありません)

 で,結局D300を買ったわけですが,直接のきっかけになったのはサブ機が欲しいという気持ちからでした。

 うちのメインはD850です。D850は画質も連写も高いレベルであり,どんなシーンでも期待に応えてくれます。しかしそれでもレンズ交換は必要ですし,家の中ならともかくとして,野外での撮影にはちょっと抵抗があります。

 ぶつけたり落としたり,飲み物をこぼしたりと言ったハプニングも,自分の注意だけで防げないのもまた,こうした野外での撮影です。

 例えば運動会なんか,土埃が舞い,手も汚れてしまうので,一眼レフには厳しい環境です。一方で高画素である必要はなく,望遠に強いことが求められます。

 そうすると,ラフに扱っても惜しくない安価な中古の方が望ましく,望遠に強いAPS-Cで十分,光量が十分な屋外なら感度や画質への心配は減りますし,トリミングをしない前提なら画素数も1200万画素もあれば十分です。

 いや,これはもうD300を買えという,神のお告げですよ。

 D300ならさらに,8コマ/秒という動きものに対応出来る連写機能,多点測距のメリットを実感出来る51点AFを備えています。電池寿命も長く,予備電池を持つ必要もありません。

 それに,なんといってもD2シリーズの後を受けてAPS-Cの頂点を任されたモデルですから,そのシャッターの切れ味はD2H譲りです。大きなシャッター音は賛否両論ありますが,この音はもっと聞いていたいという麻薬的な音だと思います。

 シャッター耐久も15万回,操作系はプロモデルと共通であり,LCDも現行モデルと同じ大きさで見やすく,その剛性感も頂点に相応しく,グリップを握ると,握り替えされているような感覚に陥ります。

 いや,これはいい・・・

 早速品定めです。程度のいいものは3万円,並品で25000円という相場です。

 今回の用途で重要な事は,付属品はいらない,外観は汚くても構わない,でもシャッター回数は少ない方が良い,ということで,これを条件に探すとフジヤカメラで良さそうなものが見つかりました。

 程度はAB+で価格は23760円。付属品はバッテリーとチャージャーのみです。外観も綺麗ということですが,この程度ランクはシャッター回数で決まるところもありますから,きっと少ないだろうという期待もあります。

 付属品は私にとっては邪魔で,売却を考えないなら捨ててしまいたいくらいなのですが,最初から付いてこないなら好都合です。値段が安いのは付属品が揃っていないこともあるでしょう。

 実は購入を決定してからフジヤカメラから連絡を受けたのは,拡大ボタンのシルク印刷が擦れて剥げてしまっているということでした。届いてみればAF-ONボタンも印刷が剥げていたのでちょっと残念だったのですが,この値段ならそんなことは気にしません。

 ということでポチってしまいました。

 同時にバッテリーグリップも欲しかったので,中古で買う予定だったのですが,8コマ/秒を実現するためのEN-EL4を使うためにはバッテリカバーを別に買う必要があり,これが入手困難になっていることを知りました。

 なら,互換品でいいんじゃないのかと考え,amazonでMD-D10の互換品を3600円で買いました。バッテリーカバーも付いてきます。安いです。

 バッテリーは付属しているという事ですが,死んでいる可能性もあるので出来れば新品を調達したい所ですが,純正品はあまりに高く,半額以下で買える互換品を買いました。一応日本のメーカーのものなので大丈夫と思います。

 ただ,D300の頃はちょうど互換品に対する締め付けが厳しくなったときで,互換電池が認識しないなどの混乱があったことを思い出しました。

 あと,やっぱりファインダーは丸窓でないと,という変なこだわりがあり,もはや定番化しているニコン純正の丸窓アダプタ「NEPS1」を手配,これにマグニファイアDK-17MとDK-19を取り付ける予定です。

 そうそう,記録メディアはCFです。D800で使っていた64GBが使えれば良かったのですが,D300はD300Sと違って32GBまでという制限があるので使えません。余っている8GBを使うつもりですが,ちょっと枚数が少ないので,D2H用に用意したCF-SD変換に16GBのSDカードを入れて使うことにします。

 とまあ,いろいろ考えて届いたD300ですが,動作は全く問題なし。外観も綺麗ですが,前述のように拡大ボタンとAF-ONボタンの印刷が消えているのと,ラバーがベタベタします。煙草の臭いも少ししますので,前のオーナーは喫煙者だったのでしょうね。気持ち悪い。

 一通り動作テストをしてファームのバージョンを確認。1.03なので最新の1.11に更新します。

 さて,ドキドキしながらシャッター回数を見てみます。Exifから情報を見てみると・・・なんと11億回を越えています。

 そんなあほな。

 いくら何でも11億回もシャッターが動くはずはありません。似たような話があるんじゃないかと調べてみても全く引っかからず,もしかしたらフジヤカメラはこういう故障品をしれっと売りつけたんじゃないかと,背中に嫌な汗が流れました。

 正確な回数をとりあえず知りたいという一心で調査を続けます。シャッターを1回切るごとに増える回数を計算すると65536回です。ちょうと16bitですから,これはどうもオフセットが載っているようです。この11億回という数字を65536で割り算すると約17000となります。おそらくこれが正しいシャッター回数でしょう。

 さらに調査を続けます。撮影情報をみると,なんと絞りがF95となっています。

 F95?真っ暗ですやん。

 これはいよいよおかしいと,もう一度ファームのバージョンを確認したら,Bだけが1.11になっていて,Aは1.03のままでした。

 あれ,おかしいなともう一度ファームウェアアップデートのドキュメントを確認すると,AとBは別々にアップデートして下さいとのことでした。私はAとB両方をCFに書き込んで,1回だけアップデートを行ったのでBだけがアップデートされたようです。

 これが原因かもしれないとAも1.11に上げたところ,絞り情報も正常になり,シャッター回数も正しい値が得られるようになりました。約17000回でした。

 シャッター耐久15万回のカメラで17000回ですから,まあ良い方でしょう。中には4000回とか6000回とか,そういう非常に少ない数の個体もあるそうですが,そういうのは高価だと思いますし,3万回を越えていなければシャッターに関する心配はなにも必要ないと思います。

 ラバーのベタベタは,アーマオールを何度か塗り込んでごまかしました。交換してもらえるとうれしいですが,それはまあサービスセンターで相談でしょう。

 数日間使ってみましたが,レスポンスも良く,さすが頂点を極めたモデルだけに剛性感も高く,とても満足なフィーリングです。素晴らしいの一言です。

 音も素晴らしいですし,シャッターの切れ味も抜群です。AFも51点はD800と同じですし,アルゴリズムの古さとレスポンスの悪さは仕方がないとしても,多点測距と親指AFにちゃんと付いてきてくれます。

 問題の画質を検証します。1200万画素ですが,画素数よりも色のりやコントラストが気になるところで,これはちょっと古くささはあるとはいえ,全然問題のないレベルです。

 画素数が少ないのでトリミングは難しいですが,そうはいっても1200万画素です。D800のDXクロップが1500万画素であることを考えると,そんなに少ないとも感じません。

 感度についても,ISO1600が精一杯だろうと思いましたが,それはJPEGでの話。Lightroomでノイズ除去を行えばISO3200もOKです。色が褪せたりコントラストが下がってしまうことがISO3200でも少なく,ノイズさえ取ればいい状態なので,とても素性は良いです。

 APS-Cのレンズを持っていないので,手持ちの大三元とシグマの35mmF1.4で使ってみましたが,レンズの性能をきちんと反映する解像感とAF性能を持っていて,画質という面でも十分な手応えを感じました。

 ただ,過渡期だなと感じたところもありました・

 1つに,RAWの14bit記録を選ぶと,連写速度だけではなく全体のレスポンスが大きく低下してしまうことです。12bitなら8コマ/秒ですが,14bitにすると2.5コマ/秒まで落ちます。最初連写速度が上がらないので首をひねっていました。

 のみならず,全体のレスポンスが落ちるとわかり,14bitでの使用は諦めました。レリーズタイムラグが大きくなり,シャッターチャンスを逃してしまう程だったのです。

 このあたりは処理速度の問題ですね。画像処理エンジンが14bitをサポートし切れていないのでしょう。12bitで使うカメラと割り切るしかありません。

 ファンクションボタンに割り当てられる機能も足りず,ライブビューも使い物になりません。カスタムメニューに登録出来る項目にも制限があるし,D850で設定出来ることが出来ないことに気が付いて,そういえば昔のニコンはこうだったなあと,そこでようやく古いカメラを使っていることを思い出しました。

 とまあ,操作感も見た目もレスポンスも画質も,どれも納得のD300です。そして,D300を手に入れたことで,完全にD2Hの出番がなくなりました。画素数,連写性能,感度,画質は言うまでもなく,AF性能も使い勝手も劣っており,剛性感やシャッター音も遜色ないD300に,D2Hはもはや勝ち目はありません。

 D850を買ってからD2Hはバッテリーを抜いて防湿庫に収まっていますが,ここに至ってもう二度と使うことはないでしょう。ありがとうD2H。
 
 さて,初めて購入したバッテリーグリップの互換品ですが,ほぼ問題なしです。この値段でこの感触なら,確かに純正品を買うのがバカらしくなります。

 しかし,そこはやっぱり中国製。ボタンの感触が大きく違っています。特にシャッターボタンは安物のカメラのそれで,クリックが大きすぎます。静かに絞るように押し込む私にとっては,クリックがあるとびっくりします。これはだめです。

 それ以外,特にバッテリーの認識などは全く問題なしです。

 ということで,EOS7Dシリーズが伝統を守り,D500で再認識されているAPS-Cの高級機ですが,私もD300を使ってみて納得しました。

 フルサイズの表現力とは別物で,撮りたい被写体をしっかり細くするのに,このサイズは最適です。難しい事を考えず,追いかけ回して撮影するのにフルサイズはむしろ邪魔かも知れません。

 安いので中級以下に使われるサイズのセンサではありますが,バカに出来ないポテンシャルを持っていると思います。


 それにしても,AF-S18-200mmが壊れたのはちょっと残念でした。まあフレキが切れしまったのでどうにもならなかったわけですが,もしちゃんと使えていたら,D300にあてがうことが出来たのになあと思います。

 こうなったら,APS-Cサイズのレンズを奢ってみましょう。

 本命はD850に大三元ですから,サブ機らしく便利ズーム1本で行くか,それともメインとの共通性を重視しF2.8通しのレンズで行くか。使い潰すための安いカメラに純正はもったいないので,好きなシグマを選びたいと思っていますが,F2.8通しの標準ズームがやや古いんですよねえ。どうしたものか・・・

 

結局大三元揃えてしまいました

 昨年秋から未解決のままだった超広角レンズ導入ですが,結局純正のAF-S14-24mmF2.8Gに買い換えました。

 タムロンのSP15-30mmF2.8で問題となっていた測距点によるAFズレは,やはり純正ではほとんど見られず,これまで散々悩んで辛抱してきたことがなんだったのかと思うほど,簡単に解決してしまいました。

 ここで単純に「やっぱ純正だよなあ」と言ってしまうと簡単すぎるので,もうちょっと書きたいと思います。

 このAF-S14-24mmF2.8Gは,中古品です。新品の最安値が現時点で約20万円のところ,中古の美品で168000円ですから,実は3万円出せば新品が買えるのです。

 でもあえて中古を選んだというのは,それなりに程度の良さそうな中古品が出たことと,ここで買うとSP15-30mmF2.8を結構な値段で買い取ってもらえるからでした。

 下取りという形を取ると,買い取り価格がさらに5500円ほど上がります。1000円の割引クーポンを併用すると差額は36000円まで広がりますが,これを安いと見るか高いとみるか・・・AT-X16-28mmF2.8を3万円で売却した私としては,これをなかったことにしてしまうほどの価格差は,ちょっと厳しいなあと言う気分でした。

 新品だって使った瞬間に中古になりますし,中古でも丁寧に使われていて,しかも極端に安いものでなければ,かえって安心な面もあります。新品の方が無難だろうと思っていましたが,新品には結構な確率で初期不良がありますし,メーカーとのやりとりに疲れてしまったところでもあり,すでに動いていて,目利きの人が「大丈夫」といってそれなりのプライスタグを付けているものなら,そんなに危ないものでもないだろう,と考えたのです。

 それにしても高い買い物です。恐ろしいです。

 お金の話が続くので先に経緯をまとめておくと,最初のAT-X16-28mmF2.8は71118円で購入し,キャッシュバックの1万円を差し引いて61118円で手に入れたものを,一度初期不良交換したのち,AF調整と絞りの故障で2度修理に出してからマップカメラで3万円で売却しました。

 次のSP15-30mmF2.8は77157円で購入し,2度の調整に出した後マップカメラで61050円で売却しました。

 そして今回AF-S14-24mmF2.8Gを167000円で購入したということになります。

 購入に支払った金額の合計から,売却で得たお金を差し引くと,214225円になります。ここに,昔購入してがどうもしっくりこず購入資金を作るのに売却したAF-S18-35mmで得た38000円を差し引くと176225円となります。

 これが私がAF-S14-24mmF2.8Gを手に入れるために,最終的に支払った金額となります。

 いやー,なんだか高い授業料を払ってしまいました。特にAT-X16-28mmF2.8の差額が3万円以上出たことが大きいです。このレンズは,他の店ならさらに1万円安く買えたので,差額は2万円までに圧縮できたのですが,甘かったです。

 一方のSP15-30mmF2.8は差額が16000円ほどと小さく,なかなかいい値段で買い取ってもらったと思います。助かりました。

 ということで,見方を変えると,トキナーとタムロンの超広角ズームを長期レンタルし,その結果純正のたどり着いたがおかげで新品を買うことが出来なくなってしまいました,という言い方も出来そうです。半年のレンタルが5万円近いというのもどうなんだと思いますが,その分純正は中古で我慢というのも,自分に貸したペナルティだと思っています。

 お金の話はこのくらいにして,早速揃った大三元ですから気を取り直してレビューです。

(1)大きさ,持ちやすさ,扱いやすさ

 大きいこと,フィルターが付かないこと,デメキンレンズで気を遣うことを真っ先に上げる人が多いのですが,大きいとは言え24-70と同じ程度ですし,見た感じの印象は華奢な感じがするというものでした。

 SP15-30mmに比べると一回り小さいですし,持ちやすさも構えやすさも純正の圧勝です。

 特に,ズームリングが細く,左手の親指と人差し指でつまんで回せることが私にとっては大きなアドバンテージで,いかにSP15-30mmが使いにくいかを思い知りました。

 これはAT-X16-28mmにもあるアドバンテージで,私がこれを売却して後悔したことの1つでもありました。

 
(2)画質

 さすが神レンズと呼ばれたAF-S14-24mmで,どの焦点虚位でも,どの被写体との距離でも,そしてどの絞りでも破綻のない画像を出してくれます。この信頼感は特にSP15-30mmではあり得ないことで,これがプロの選ぶ道具であると痛感しました。

 ただ,その画質のピーク性能はSP15-30mmよりも劣っていると思います。被写体を中央においてジャスピンで撮影すると,SP15-30mmの画像にはキラキラとしてまぶしささえ感じられますが,AF-S14-24mmには凡庸な画像しか出てきません。

 超広角ズームで凡庸というのはもはや褒め言葉なわけですが,SP15-30mmはそれをもしのぐ,高い解像度を持っています。純正のしのぐというのはウソではないと甘受いました。

 しかし,どの条件でも「凡庸」であることのすごさは特筆すべきで,私はSP15-30mmは使う人を選ぶと感じました。それだけ難しいレンズだということですし,ゆえに私は使いこなせなかったということでもあります。

 逆光については,特に難しい条件でなければほとんど気にならないレベルです。SP15-30mmも逆光には強かったと思うのですが,これと比べて優劣は付かないと思います。


(3)まとめ

 どんな条件でも均一な高画質の画像が得られ,得意も不得意もなく,すべての科目で平均点の高いレンズがAF-S14-24mmです。この手堅さ,この信頼性の高さこそプロの道具に求められるものであり,私が求めていたものはこれであったと,手に入れて確信しました。

 AF-S14-24は登場から10年以上が経過する,最近のレンズとしては設計の古いレンズです。今や当たり前となった手ぶれ補正もありませんし,さらに高解像度,さらに収差を取り除いた新しいレンズも存在します。

 実際,AF-S14-24mmの四隅の画質低下は有名ですし,SP15-30mmの輝くような画像は,AF-14-24mmの画像との比較をすればその差がはっきりします。

 SP15-30mmがこの画質を純正の1/3の値段でやってしまうことに腰を抜かしそうになるわけですが,そんなにすごいならAF-S14-24mmの価格が暴落し,みんなSP15-30mmに流れてしまってもいいはずです。

 しかしそうはなっていません。特定の条件で高画質であることも大事ですが,やはり平均して高画質である事に,この値段の価値があると多くの人が考えていると言うことだと思います。


(3)AT-X16-28mm,SP15-30mm,そしてAF-S14-24mmを使って思うこと

 高いお金をかけてこの3本を納得いくまで使う機会を手に入れた訳ですから,そのあたりを振り返ってみたいと思います。

 AF-S14-24mmF2.8Gは純正というプレミアム以外に,14mmスタートという独自の個性に加えて,何度も書いていますがどんな条件でも水準以上の画像を確実に出してくれるという手堅さがあります。

 この信頼性の高さと安心感こそが,この価格によって手に入る価値です。

 AT-X16-28mmF2.8は,純正と同じように手に馴染む鏡筒を持つことから,純正の背中を追いかけていることははっきり伝わって来ます。その上で,性能的な割り切りを全方位に行って,大幅に価格を下げることを狙ったレンズです。

 こう言ってはなんですが,AT-X16-28mmの開発では,AF-S14-24mmF2.8Gからどこをどれだけスペックダウンすれば値段が下がるか,を散々検討したのではないかと思います。

 大きさを変えないことを前提に,ワイド端を14mmから16mmにし,その代わりテレ端を28mmまで延ばします。AFもSWMではなく通常のモーターを使い,AF/MF切り替えもクラッチを使ってコストダウンしています。

 性能面でも対逆光性能には目を瞑り,色収差などの収差もある程度で割り切って,解像度もコントラストも全体的に落として決着させているように思います。

 こう書くと悪いレンズのように思いますが,このあたりの割り切りを上手にバランス良く行っているのがAT-X16-28mmで,出来上がったレンズは常用域において破綻のない画質を出してくれます。AF-S14-24mmの画質を平均的に下げた感じです。

 撮影者に強い制約を課すことなく,どんな条件でも整った画質を確実に出してくれることについては純正のそれに思想的に近いと思いました。

 ですから,AT-X16-28mmがAF-S14-24mmに勝る点は何一つありません。しかし,あらゆる条件で手堅くまとめてくる信頼感はAF-S14-24mm共通するものがあります。その点で,プアマンズ14-24といえるのではないでしょうか。

 一方のSP15-30mmですが,これはもうAF-S14-24mmをライバルとしてさえ見ておらず,独自路線で突っ走っているように感じています。特にAF-S14-24mmに指をくわえてみているだけのニコン以外のユーザーに対する唯一無二の存在感を前面に押し出し,比較されるなんてまっぴらだという,若者らしい元気の良さを見ました。

 キレキレの解像度の高さ,コントラストの高さ,そして色の鮮やかさはさすがに設計の新しいレンズでAF-S14-24mmを越えていると思います。手ぶれ補正も使ってみるととても気が楽ですし,何度もこれで救われていることを考えると,とても有用です。

 しかし,サードパーティのレンズの宿命である低コストという呪縛からは逃れることができません。最適化によるコストダウンには限界もあり,やはりなにかを犠牲にしないといけないわけで,SP15-30mmではその高いピーク性能をどの条件でも出せるようにすることを,割り切ってしまったようです。

 私の個体では,像面湾曲が大きく周辺と中央でのピント位置のズレが大きかったことと,周辺部でのAF精度がとても悪く使い物になりませんでした。

 像面湾挙が大きいことで周辺部のピントがズレてしまい,解像度が大きく低下し,さらに画像の流れも大きくなって,中央部と周辺部の画質さが大きいのも目立ちました。

 また,ズームによる焦点距離の変動による収差や性能の変化も大きく,それらを押さえ込んで平均化するには結局F5.6くらいまで絞らないとダメだったりします。

 15mmまでというワイド端と30mmまで伸びたテレ端,そして余りの個性的な太い鏡筒はAF-S14-24とあまりに親和性がなく,全くの別物としての覚悟を使用者に強いますし,やはり製造時のバラツキも大きいようで,こうしたところでのコストダウンも目立ちます。

 AF-S14-24mmに比べて価格を下げること,たくさん作ること(AF-S14-24mmの量産性ではコストは下がりません)を実現するために,AT-X16-28mmはAF-S14-24mmを平均的に性能ダウンしたのに対し,SP15-30mmはピーク性能の向上に重点的にコストを配分し,AF-S14-24mmを大きく下回る部分があってもそれは良しとするという「集中透過型」の思想です。

 従って,SP15-30mmには極端な得手不得手があり,このレンズが苦手とするところを使いたい私のような人に取ってはがっかりですし,得意なところではAF-S14-24mmを越える性能を発揮して絶賛されるのでしょう。

 AT-X16-28mmは特に苦手なところはなくても純正を越えるような目立ち方はしないので全体的に評価は低いのだと思いますが,実は万能選手であり,とても使いやすいレンズと言えます。

 そして,高性能をすべてのシーンで発揮出来るのがAF-S14-24mmです。得手不得手が少なく,安定して性能を発揮出来る代わりにとても高価です。

 逆に言えば,使い方が決まっている人で,それがSP15-30mmでカバー出来るなら,AF-S14-24mmは余計な部分にお金のかかったもったいないレンズという事になるわけで,そこにこそSP15-30mmの存在意義があります。

 もしも,タムロンが20万円の実売価格で超広角ズームを作ってくれたら,すべての点で軽くAF-S14-24mmを越えたレンズを作った事でしょう。そんなレンズを見てみたい気がしますが,そこも含めて純正かサードパーティーかの差なのだと思った次第です。

 今回,トキナーとタムロン,そして純正という3つのレンズを使い,メーカーとのやりとりを含め様々な経験をさせてもらいました。

 性能の差,バラツキの差というよく言われること以上に,設計思想,あるいはコストの配分に対するこだわりにこれほどの違いがあるとは思っておらず,純正との価格差は純正というプレミアムの有無と,製造時のバラツキくらいだろうと思っていた私には,もっと積極的に真面目にレンズ選びをしないといけないことを突きつけました。

 純正至上主義ということではなく,自分の欲しい性能はなにか,どういう使い方をするのかをよく考えて,レンズを選ばないといけない事が,この高い授業料で得た教訓です。

 しかし,ペンタックスの超広角はSP15-30mmのOEMだと言われているのですが,こんなに尖ったレンズで純正を謳って大丈夫なんですかね?すべての条件で確実なレンズを純正で用意出来ないとまずいんじゃないかと,ペンタックスが大好きな私などは心配になってしまいます。(ついでにいうとペンタックスの15-30mmの高価な事!)

 ついでに,AF-S18-35mmについてです。

 このレンズ,AF-S14-24mmに匹敵すると言われるほどの高性能ぶりと,小型軽量,フィルターも使える利便性を持ちつつ,純正のくせに価格も安いためベストセラーになっているレンズです。

 私もこれで広角域を埋めようと思ったのですが,何度使ってもしっくりこないし,面白くないのです。性能面では問題ないはずなのに,どうも期待している画像が出てこないので,自然に防湿庫の肥やしになっていました。

 原因はいろいろあり,ワイド端が18mmというのが物足りないからか,35mmまで伸びたテレ端のせいで結局28mmから35mm程度の「使いやすい焦点距離」に逃げてしまい出来上がりの普通っぽさに幻滅するせいかのか,あるいはそもそも暗いレンズなのでファインダーを見た時にがっかりするからなのか,絞りを開けられないからボケも少なく主題をうまく整理出来ず,構図だけで勝負するには自身の力不足が露呈するせいなのか,シャッター速度も上げられないので被写体ブレも増え,その上感度も上がりがちで画質も下がってしまうからなのか,思い当たることはたくさんあります。

 他にも気が付かない理由があるのでしょうが,いずれにしても,そのポテンシャルを発揮させることが出来なかった私には,使いこなせなかったということでしょう。

 
 さて,長々と書きましたが,結局数年かかって大三元が揃いました。1つ20万として60万円。ボディまで入れると100万円です。あああ,恐ろしい。

 売れば半分くらいは戻ってきますので50万円くらいの負担だとはいえ,カメラにこれだけのお金をかけることが怖いですし,最近のカメラとレンズは高くなった物だなあと,つくづく思いました。

 気が付くと,14mmから200mmまでと300mm,そしてマクロ撮影は純正で揃えていました。一方で常用しているのはシグマの35mmF1.4ARTです。これで思ったのは,まずはあらゆる条件で平均以上の結果を残すことが出来る純正で一本筋を通しておき,どんなシーンにも対応出来る準備をした上で,それ以外のレンズでは個性を味わうことをしないとダメなんだなあという事でした。

 ということで,うちは,

AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II
AI AF-S Nikkor 300mm f/4D IF-ED
AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
AI AF-S TELECONVERTER TC-14E II

 で大半の撮影域をカバーしました。このラインアップでは,解像度やコントラスト,色合いなども統一されており,最高画質とも言える高画質が幅広い撮影域でカバーされます。

 EレンズではなくGレンズなのは,買い換える必要性をあまり感じないことと,D2HやF100でも使えるようにしておきたかったこともあります。

 ここからさらに個性が欲しいところでは,

SIGMA 35mm F1.4 DG HSM Art 開放からキレキレの今風の写真
AI Nikkor 45mm F2.8P 1970年から80年代の週刊誌のグラビアっぽさ
AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G 小型軽量で取り回し抜群
Ai Micro-Nikkor 55mm f3.5 解像度を重視したカチカチの写真
Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZF いわゆるガウス型を堪能,絞りによる画質の変化を楽しむ

 といったところを選んで使います。自然によく使うレンズとそうでないレンズに別れるわけで,今のところ私は取り回しと画質が気に入ってSIGMAの35mmF1.4が付けっぱなしになっています。

 欲を言えば,FA43mmF1.9Ltdもここに加えたいくらいですがそうもいきません。望遠域を400mmくらいまで伸ばせれば安心というのもありますが,それはそれで難しい投資です。(今気が付きましたが,300mmF4にテレコンで420mmF5.6,これをD2Hで使えば35mm換算で630mmになるんですね,こいつはすごい)

 まあとにかく,ここから先のレンズへの投資は必要性が下がり,趣味性が強くなっていきます。お金をかける前に使いこなしていこうと思います。

コリコラン買いました

  • 2018/03/15 10:29
  • カテゴリー:散財

 パナソニックから,「コリコラン」なるものが昨年秋に発売になりました。

 名前からピンとくる方も多いと思いますが,あの「パナコラン」の正統後継者です。

 パナコランはバブルの頃に発売された,家庭用の高周波治療器です。9MHzというよくわからん周波数の高周波を患部に当てて血行を促進しコリをほぐすという,れっきとした医療機器です。

 2014年までは販売されていたものですので,奇跡の復活とかリバイバルとか,そういう大げさな言い方はあたらないと思うのですが,こういうややこしい医療機器が改良されて後継機が出るというのは,ちょっと意外でした。

 私は2015年の2月に,保守用の本体のみを購入し,充電器を自分で作って使っていました。素人が作った充電器は信頼性に乏しく,最近はうまく充電が出来ないようになっていた上に,充電しっぱなしだと充電と放電を繰り返してしまいますし,かといって充電しないでおいておくと過放電になってしまいますから,ここ1年くらいは全く使っていませんでした。

 ところが先日首と肩を痛めたときに,ふとパナコランを思い出して使ってみると,これがなかなか効き目があるじゃありませんか。

 しかし,すでに3年が経過したパナコランは動作時間が短くなっていて,1日持ちません。

 激しい痛みに藁を掴む気持ちで買ったのが,コリコランです。

 もともと,パナコランが再販売されたり後継機が出たら買うつもりでいたので,きっかけとしてはちょうど良かったと思いますし,ひょっとするとコリコランの充電器でパナコランも充電出来たりするかもしれません。うしし。

 調べてみると,本来が2個のものと4個のものがありました。幸いなことに4個のものが2個のものに近い値段まで値下がりしていたので,4個入りを買いました。29000円ほどだったと思います。

 当時も,2個入りのパナコランが22000円ほどだったようですので,4個入りでこの値段なら納得です。

 1週間ほど使ってみたのですが,簡単なレビューです。

・パナコランから変わったところ
 常時充電台にセットしておくこと,テープで貼り付けるか枠でシャツやストラップに挟む込んで取り付けること,9MHzの高周波であることなどの基本的な使い方はなにもかわりません。

 変わったところは,まず大きさです。直径は同じですが,高さは大幅に増えています。パナコランはとても薄くて,背中に張り付けても仰向けに寝ることが出来ましたが,コリコランではさすがに違和感があります。

 分厚くなったのは電池が変わったこと,電源系の回路が増えたことにあるのではないかと想像しますが,その結果見える場所に取り付けられることが増えると考えてか,デザインが大きく変わっています。

 パナコランはいかにも治療器という色使いのデザインに「PANACORAN」と書かれており,やっぱり年寄り臭さが否定できません。

 コリコランは金色のメッキにダイヤカットが成されており,遠目に見ると高級なチョコレートのように見えます。

 正直,これでも堂々と人目に付くところで使えるとは思えませんが,WATS医の娘などは「かわいい」といっていました。

 LEDは,パナコランが赤一色の点滅でしたが,コリコランは赤と緑の2色LEDになり,動作中の緑の点滅だけではなく,電池が減ったときに赤に変わることと,充電中二緑の点灯になる機能が追加されています。

 充電端子はパナコランと全く同じ形状で,充電台にもパナコランは装着出来るのですが,公式ホームページにもあるように充電仕様が変わっているため,充電は出来ませんでした。

 電池の変更は,おそらくかつてのVN1616という電池が入手できなくなり,今手に入る電池に合わせたところ,サイズが大きくなったり電源回路に手が入ったりしたのだと思いますが,電圧の安定化が行われるようになったようで,従来のパナコランが電池の残量に応じて出力も下がったのに対し,コリコランは最後まで出力が一定になったそうです。確かにこれは効き目の持続で実感します。

 以前のパナコランはフル充電で2日間動作するという事ですが,コリコランも同様です。ただ,3時間充電で24時間使えることも謳っており,24時間使える程度の充電が行われているかどうかがわかるようになっているところが新しいです。

 また,ACアダプターが付属しており,充電器の電池が切れて本体もアウト,という事態が防げるようになっていますし,装着用のテープは医療用のかぶれにくいものに変わっています。


・使ってみて

 なにせ,分厚くなったのがマイナスです。48時間使えるくせに,背中に貼って寝るとゴロゴロと痛いというのは,途中で睡眠を取ることを想定していないのかと思います。このあたりの配慮はパナコランの勝ちです。

 ですが,その効き目はパナコラン以上かもしれません。張り付けた時にホカホカと熱を感じますが,そのホカホカがなくなってしばらくすると,痛かったところや凝ったところを押しても,痛みを感じなくなっています。

 気のせいかとおもって,別の痛みのあるところにコリコランを張り直してみると,今後は以前の部分の痛みが戻ってきて,新たに貼った部分が楽になっています。

 それと,使用中に出力が下がる事がなくなったもの実感します。パナコランでは,一晩経つと張ったことも忘れてしまうくらい効き目が弱くなるのですが,コリコランでは一晩経っても痛みが取れている実感があり,これが本当の実力だったのかと驚くくらいです。この点だけでももうパナコランには戻れません。


・気に入らないところ

 やっぱダイヤカットで金ぴかのデザインでしょう。格好悪いを越えて悪趣味です。こんなの,普通にグレー一色とか,半透明とか,そんなのでいいと思いませんか?

 ああ,スケルトンはいいですよね,面白いしくせに無難で,年齢性別を問いません。

 それと,相変わらず本体だけでON/OFFができないのが気に入りません。充電台に置いておくと,満充電から徐々に電池電圧が下がり,また満充電になるというのを繰り返します。ただ,充電台にある時は動作しないようになっているので,これはそんなに問題になりません。

 問題なのは,本体だけでON/OFFできないことです。

 たとえば,コリコラン本体を保守で買い増しした場合は,過放電状態で放置しなければなりません。出先で充電器がないとき,できるだけ電池寿命を延ばして使おうとする時はこまめにON/OFF出来た方がいいです。

 うっかり外れたり浮いてしまった場合にもずっと動作していて,気が付いて張り直しても数時間しか動作しないという状況は結構悔しいものです。

 予備で本体だけ持ち歩けると,結構便利ですよ。

 それに,本体がOFFになる条件である充電台に置かれた状態でも,通電していることが必要ですから,充電台はACアダプタ運用か,電池のこまめな交換が必要になります。でも,これって煩わしいです。

 思うに,タッチセンサの応用で,装着検出を組み込めば済むと思うのです。充電台にある時と,体に接触していないときはOFF。これだけです。

 でも,タッチセンサを動かすのと,動作しているのと,あまり消費電力が変わらないのかも知れませんね。そういうことなら仕方がないか・・・

 もう1つ,根本解決していないのは装着の問題で,シールはすぐになくなるし結構高いし,それ以外ではどうにもうまく固定できないので,もうちょっと考えて欲しかったなあと思います。

 
・まとめ

 まず,コリコランを眉唾と思っている人がいたら,私のように効いている人がいて,とても助かっていることが事実である事を,知ってもらってもいいと思います。

 高価なものですし,効き目や快適かどうかには個人差もあるので一か八かになるのは避けようがありませんが,一応治験の上で効果があるとされ,医療機器として認証されていることを考えると,コリコラン以上に怪しいものは,世の中にいくらでもあります。

 こと個人的な感覚で言えば,コリコランはパナコランよりも効くと思います。コリも痛みも軽減しますし,24時間以上確実に動作する信頼性も心強いです。

 価格もこなれてきているので,プレゼントにも悪くないと思います。ただ,こういう健康機器に抵抗がない人向けになるとは思いますが・・・

 

 

ページ移動

  • ページ
  • 1
  • 2

ユーティリティ

2018年03月

- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

ユーザー

新着画像

過去ログ

Feed