ようやくGRがデジタルに
- 2013/05/29 13:57
- カテゴリー:散財
4月末に予約をしていたGRですが,お店がしっかりしていたこともあって,発売日に無事に入手することが出来ました。
GRは非常に前評判が高く,品薄になることは予想されたのですが,それでも国内だけで数千台が初回に用意されると聞いていたので,高価なカメラですし,そんなに入手困難になるとは思っていなかったのです。
ところが,連休が明けた頃にはすでに大手の量販店で発売日の引き渡しが出来ない事がアナウンスされていましたし,どうも予約が想像以上に多いという雰囲気になっていました。
そんな中で,私が予約したお店からは,発売日である5月24日分で割り当てできると連絡がありました。このお店からは,例えば予約特典である赤リングが,本体付属から別途送付になったとか,そういう情報もこまめに入り,とても安心して待っていることが出来ました。
確かに,待てば値段も下がるし,ファームのバグ対策や設計変更などで,商品の品質も上がっていることでしょう。初物に飛びつくのが損だというのは,納得出来る話ではあります。
しかし,この品薄状態ならそんなに簡単に値段が下がることはないでしょうし,すでに上がっているサンプル画像を見ている限り,設計そのものに起因する問題は(少なくとも致命的なものは)なさそうです。
ということでここ数日,その軽快なレスポンスを楽しんでいます。
そんなに触っているというわけではありませんが,レビューです。
(1)外観,質感
大きさは銀塩時代のGRと同じということですので,入手前にある程度イメージできていたつもりだったのですが,改めて手に取ってみると,どうしてだか「大きいなあ」という第一印象を持ちました。
確かに縦横厚みと,銀塩GRと同じサイズには違いないのですが,銀塩GRではレンズ収納時はツライチだったレンズ部分の飛び出しがあるぶん,見た目に大きいという気分になるんだろうと思います。
銀塩GRのソフトケースに入れて使うのも面白いかなと思っていましたが,このレンズ部の厚みが邪魔になり,断念しました。
仕方がないので,純正のソフトケースGC-5を手に入れて使う事にしたのですが,これがまた随分と大きい,分厚いなあと感じるのです。カメラはそんなに大きいわけではないのに,ケースに入れるとすごく大きくなるのは納得出来ないなと思いましたが,それもこれもレンズ部の出っ張りが原因なんでしょうね。
改めて銀塩GRを手に取ってみましたが,やっぱり小さいです。GRDigitalに慣れた人の印象はまた違っていると思いますが,銀塩GRを見慣れた人でも,今回のGRは大きいと感じるのではないでしょうか。
操作系は,当たり前の事ですが銀塩GRとは全然違っていて,銀塩GRではダイアルでモードと絞り値を設定出来たのに,GRではモードの切り替えだけです。絞り値は手前のコマンドダイアルを併用して設定する事になります。
この手のマニアックなカメラは,設定項目がやたらと多くて,いつも苦労させられるのですが,GRはよくまとまっていて,設定項目の過不足は感じません。設定を確認すると「あれ,もうおしまい?」と思うくらい少ないと思うのですが,なんでこれが設定出来ないのだ,と思うことは僅かで,無理をしていないなと思います。
メニューはヌルヌルと動き,レスポンスも良いので苦になりません。とはいえ,特にOKとキャンセルという,すべての項目で共通に使われるキーが項目によって違うキーにアサインされているので,OKを押す前に一瞬の確認が必要になるなど,決して洗練されているとはいえません。
想像以上に便利だったのはMYセッティングです。SnapShooterを掲げるGRですから,シームレスにスナップに適した状態になることを期待しましたが,残念ながら私の望むものにはなってくれず,スナップ向きの設定をMYセッティングに入れて解決しました。
Avモードで絞りはF5,6,MFにして被写界深度が無限大に届くような距離に固定します。これでモードダイアルからパンフォーカスになります。
私の場合,一気にシャッターボタンを押してAFを無効にする機能は,どうもボタンの押し加減がわからずブレが多くなるのでOFFにしました。
それと,親指の位置にAFに関係するボタンがあります。AFロックとC-AFをレバーで切り替えるアイデアは秀逸で,小さなカメラに一眼レフ相当の操作系を盛り込むには,なかなか素晴らしいです。このレバーのデザインも気に入っていて,背面にある鍵穴のようなレバーは,とても格好がいいと思います。
(2)撮影
シャッターボタンが銀塩GRと同じサイズ,同じ形で,ストロークや硬さもほとんど同じですので,銀塩GRでの動作を無意識に予想した私の脳みそは,キビキビとした動作をしているGRを目の当たりにし,良い意味での違和感を感じてしまいました。
秒間4コマの連写速度を支える全体の連携の滑らかさは,高級一眼レフほどではないにせよ,十分な心地よさを与えてくれます。
高速な連写速度を実現するには,ただただ速度を上げれば良いという話ではなく,それぞれの部分の動きが綺麗に無駄なく連携して動く事も不可欠で,撮影者はそうしたものをキビキビ感として受け取ります。
D800の時にも書きましたが,連写をする必要が全くないからといって,連写速度というスペックを軽く見ると,撮影感覚というところで差になるものです。GRは,銀塩GRにはない,キビキビ感をもっていると思います。
このキビキビ感を支配する大きな要素として,AFの速度があります。銀塩GRのAFはお世辞にも速い,賢い,というものではなかったです。全然合わずにあきらめることもしばしばですし,全然違うところにフォーカスが合っている写真が連発することもあって,私は信用していませんでした。
今回のGRはさすがにそういう鈍くさいことはありません。高速で,賢く,ストレスはありません。しかも結果はLCDにちゃんと出てきますから,銀塩GRのように後でがっかりということはありません。
とはいえ,暗いところでは結構AFは迷うんですね。それに,顔認識AFはAUTOモードでしか使えないようで,PやAモードでは駄目です。これもちょっとがっかりなのですが,基本的にはAUTOモードでもPモードとほとんど変わらない動作をしてくれますので,普段はAUTOモードで使う事になりそうです。ただ,AUTOモードが画像を勝手にいじるようなら,使えませんが・・・
(3)画質
GRの面白さは,光学性能を上げて,出来るだけ画像処理に頼らないようにするという大方針があることでしょう。小型化,低コスト化には,光学性能を割り切って,画像処理で補うことが有効ですし,コンパクトデジカメではそれがもはや当たり前です。
誤解を恐れずに言えば,デジタルの恩恵を受けない非合理的なレガシーな手法なわけです。ですが,センサーに入った段階で,すでに情報を失ったり,歪んだりすれば,それから作り出される画像は,所詮推測で作られた画像に過ぎません。
推測でも全然大丈夫な場合がほとんどでしょうが,ちゃんと情報を持っていれば推測などしなくてもよいわけです。ただ,そのために支払うコストが割に合わないので,みんなやらないだけです。
GRは,一声10万円のカメラです。こういう割に合わないことも出来たりするから,この高性能レンズが搭載可能になります。レンズにお金をかけ,画像処理の負担を減らすことは,高級なデジカメには望ましい選択肢でしょう。
果たして,その画像は,実に素晴らしいものでした。
絞り開放でも十分ですが,周辺光量とコントラストは,1段絞ればぐぐっと向上し,解像度も素晴らしく,まさに切れ味抜群です。歪曲収差もほとんどないし,周辺光量も落ちません。周辺のもやっとしたボケもなく,隅々まで透明感のある画像を出力してくれます。
その上,色の再現性が素晴らしいです。ちゃんと色が乗っていて,バランスもとてもよく,特に人の肌を自然に綺麗に移してくれます。
APS-Cのセンサは,さすがにゆとりがありますね。APS-Cで1600万画素のCMOSセンサは今最も美味しい旬のセンサで,性能とコストのバランスに秀でており,ノイズも少なく,圧倒的な情報量を吐き出してくれます。なにせ,画像処理エンジンの関与が他のコンデジに比べて小さいですから,人工的に作られた画,という感じがしません。素材性を重視した一眼レフに近い感覚で,とても好印象です。
28mm相当のレンズはマクロモードで10cmまで寄ることが出来ます。広角レンズは寄れるようになっているとぐっと面白さが増すものですが,GRはその点でも合格です。
高感度特性は,抜群に良いという感じはないにせよ,ISO400くらいまでは全く差がありませんし,ISO800までは十分な高画質を得ることが出来ます。ISO1600くらいまでは,RAW現像の時点で工夫をすれば全く常用域ですが,ISO3200になると苦しいかなという感じです。
個人的な印象では,案外高感度特性は良くないなと思います。ISO3200くらいまでは実用域にあって欲しかったのですが,ノイズも多いし色もくすみ,コントラストも大きく下がります。これでは使えないという感じです。
ホワイトバランスについては,昔は太陽光に固定していたのですが,D800以降はオートにしました。オートでもそんなに外さなくなったのが一番の理由ですが,GRもそんなに外さないようなので,オートにしています。
RAWならホワイトバランスを手動で調整出来ますが,最近のデジカメでは当たり前になった動画撮影では,太陽光に固定すると室内でおかしな色になります。だからオートに出来るならその方が望ましいと思います。
発色については,私がリコーのデジカメを使ったことがないのでなんともいえませんが,ペンタックスの発色と大きくずれていないように思います。ペンタックスは過度な補正をせず,素材性をそれなりに残した処理を行い,色も自然な感じになっていますが,GRもこれに準じているので,安心です。
実は,DP1Sが気に入らないのが,ちょっと嘘っぽい発色なのです。FOVEONの素晴らしさは分かっていますが,データに含まれる色情報が原理的に少ない(言い換えると分離が難しい)ので,どうもくすんだ色になりがちです。これを無理に画像処理で補うので,私にとってのFOVEONは解像度は素晴らしくとも,色はさっぱり,と思っています。最新のDP1Mなんかがどうなっているのかは,とても興味があります。
GRは,ローパスレスであることもあって,解像度も抜群,色も自然と,全く不満がありません。すばらしいと思います。
(4)気になるところ
充電器が別になっていないので,充電中は本体が使えません。USBから充電出来る事はメリットのように思いますが,USBと本体との接続ケーブルは専用のもので,汎用のUSBケーブルではありませんから,どこでも充電出来るようにしたいなら,ケーブルを持ち歩くことになります。でも煩わしいですよね。
そこで,私は充電器と予備の電池を買いました。6500円ほどかかりましたが,なんとDPxMerrilの電池と充電器がそのまま使えるんですね。これだと半額くらいになるので,失敗したなあと思います。
あと,ソフトケースくらいは付属しておいて欲しかったです。出来れば銀塩GRと同じテイストのものが入っていると,思わずにやっとしてしまったんじゃないかと思います。
(5)まとめ
私が銀塩の初代GRを買った動機は,小さいコンパクトカメラなのに,絞り優先AEがあることでした。高画質をうたっていて,かつ小さく軽いというものポイントでしたが,実際に使ってみた感じでは,残念ながら一眼レフの足下にも及ばず,ちっとも楽しく撮影出来ませんし,撮影結果についても,あまり感心することはありませんでした。
ですから,後年GRが高い評価を受け,伝説の名機になっていることに驚きましたし,違和感もありました。熱烈なファンがいることも知っていましたが,コンタックスTやミノルタTC-1ならいざ知らず,GRの良さが私には分からずじまいでした。
ですが,デジタルカメラにようやく進化したこのGRを手にして,そのすべてに満足しています。ここまで来たか,という感慨もありますし,これを持ち歩けば最高ではないかも知れないが,私の期待に十分応えてくれるという安心感が心強いです。
ようやく,満足な結果が出る,どこでも使えるカメラを手に入れました。長く使っていこうと思います。