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2022年12月の記事は以下のとおりです。

2022年の散財

  • 2022/12/26 12:02
  • カテゴリー:散財

 先日も書きましたが,2022年はレトロPCで遊ぶ年になりました。おかげで単価の大きな買い物は少なく,また精神的な問題もあって全く新しい事に興味が持てない状況でしたので,この1年の三山を振り返るという恒例行事も,珍しく低調なものとなりました。

 大きなものを買ったという記録を並べてみても5つほどで,何を書こうかと選ぶ必要がないというのも,さみしいものでした。

 さらに深刻だったのは,買ったものを使って喜んだり,不満を持ったりという「その後」がほとんどなく,買ったはいいけどなにもしない,ということがあったことです。つまりそれは,買わずにいてもなにも生活に変化をもたらさなかったということです。

 何度も書いているように,その代わりにレトロPCで遊んだり,AVRマイコンで工作したりと,それなりに楽しい時間を過ごしていたとは思います。しかし,音楽にしても写真にしても,感性に触れるような趣味を楽しめるほどのゆとりが,もうなくなっているのだろうと思います。

 閑話休題。

 2022年の散財を振り返ってみます。

・アラジンのトースター

 2022年一発目の散財はこれで,ヨドバシの夢のお年玉に含まれていたものです。たかがトースターじゃないかと侮っていましたが,劇的に美味しく焼けるトースターは毎日稼働する調理家電となりました。

 これ単体で買った方が実は良かったんじゃないかと思うほどよい買い物だったと思うのですが,これが自分の希望ではなくヨドバシのセレクションだったというのがミソで,実はヨドバシの夢のお年玉は,毎回良い経験を私たちにもたらしてくれます。

 残念なのは毎年買えるわけではないこと。抽選倍率が年々上がり,今では内容よりは当選したことだけで満足してしまうような状況です。2023年は抽選に外れてしまいました。残念。


・HELIAR40mmF2.8 ASPH L39

 40mmのレンズが流行っています。私はCLEで40mmを使っていますので昔からの付き合いですが,50mmでは大きすぎ,35mmでは小さすぎるという感覚を実は持っていたkとに気付かされたことを覚えています。

 ただこの40mmはMマウントでしたし,典型的なガウス型なので画質は50mmと似ています。もっと違う個性が欲しいなあと思っていた時に購入したのが,HELIAR40mmF2.8 ASPH L39でした。

 ASPHですからね,現代的な写りをします。開放から使える頼もしさも,色の出方も文句なく,それでいて小さく,ずっしりと重いこのレンズは,使っていて楽しいレンズだと思います。

 残念な事は,フィルムがもう使えないものになってしまったことでしょうか。

 話が逸れるのですが,今年はフィルムにとって節目の年だったように思います。ウクライナとロシアの戦争で,主要なフィルムの製造拠点である東ヨーロッパからの供給が滞りがちになりました。

 あおりをうけてコダックもフジもフィルムの供給が減り,買えなくなったばかりか値段が高騰しています。昔100円ショップで買えたカラーネガが,今や2000円ですもんね。

 話はこれで終わりません。コダックのアジア方面の生産を受け持っていた中国の工場がコロナと中米関係の悪化から撤退し,なんと日本国内の薬品の販売を終了しました。

 フジも大幅にラインナップを減らしていますので,以前のように仕上がりやフィルムに応じて現像剤を選ぶという表現手法が使えなくなっています。

 それでも手に入るだけましで,カラー現像はもう全く手に入りません。

 では高価なフィルムをどうやって現像するかと言えば,もう自家現像は無理で,写真屋さんに出すしかありません。カラーはそれでもいいでしょうけど,モノクロは自動現像機が使えませんので,時間もお金もかかります。

 昔はジャンク箱の肥やしで猫またぎ(猫が跨いで通るという意味で,誰も見向きもしない価値のないものという意味です)とも言われたコンパクトカメラが驚くような高値で売られていたり,ボケボケのレンズが「味」として尊ばれるレンズになったりしていますし,つい先日もペンタックスがフィルムカメラを開発するという発表を行ったばかりで,フィルムはまだまだ生き残りそうな印象を与えていますが,肝心のフィルムのメーカーから「がんばります」というメッセージが全くと言っていいほど出ておらず,もしかしてペンタックスはフィルムの供給問題をなにも考えずに話を進めているんじゃないかと,不安になっています。

 私はと言えば,Zfcでも使えるからとHELIAR40mmF2.8 ASPH L39を買ったものの,40mmは純正のレンズの写りが気に入って常用になっています。あ,APS-Cだから60mm相当か・・・


・ハンディオシロスコープHO102

 いきなり年末に飛びますが,毎年なんやかんやでamazonのブラックフライデーで無駄使いをしてしまいます。昨年はHIOKIのテスター,今年はハンディオシロスコープのHO102です。

 HIOKIのテスターは現在測定の主役として大活躍なのですが,HO102はちょっと失敗だったかなと思っています。

 テスターにくっついたおまけ,程度のハンディオシロは昔からありましたし,それに何度も裏切られて来た私も,HO102のスペックを見ると「これは本当にまともなオシロスコープがハンディになったのかもしれない」と手を出してしまいました。

 10:1のプローブが使えること,200MHzお帯域を持つこと,2CHであることだけでも十分なものだと想像出来たからなのですが,落とし穴は垂直感度が低いことでした。

 ノイズを見ることも,波形のちょっとしたトゲを見ることも難しいオシロは,いわば拡大率の低い虫眼鏡です。もうちょっと大きく見たいな,あるいはここに潜んでいるはずなんだけど,という私の期待には届かないものでした。

 テスターとしても中途半端ですし,オシロとしても結局ベンチ型の代わりにはなりません。操作性も悪く,もう少し考えて買えば良かったかなあと思った買い物でした。


・F(x)tecPro1x

 フルキーボード搭載のスマートフォンです。詳しいことは先日書いたばかりなのでその後の話を少し。

 背面のロゴのかすれについては,とりあえず言うだけ言ってみようと思って販売店のサポートに電話をしました。「こんなもんです」と言われれば引き下がるくらいの気持ちだったのですが,予想に反して交換か返金してくれることになりました。

 返金はちょっと避けたいところで,そうすると交換なのですが,完売のため交換品がありません。ロゴの分だけ割引するという選択肢もあったのですが,運良く在庫が見つかり,交換してもらう事になりました。

 交換してもらったものをワクワクして見てみると,ロゴこそ綺麗ではありますが,あちこちに先の尖ったものでこじ開けたようなキズがあるじゃありませんか。

 キーボードを出した状態で,左肩に3箇所,右肩に2箇所のキズがあり,塗装は剥げて地金が出ており,アルミは盛り上がって変形しています。これは未使用品どころの騒ぎではないと,翌日に電話をしました。

 もう交換品はないので返金しかないと言われたのですが,いやいや数日前に返した,もともと私の手元にあったものがあるでしょうと指摘すると,それとの交換は出来ませんとつれない返事です。

 せっかく手に入れた珍しい商品が不良品,交換したらそれがさらに悪いもので,交換品がまさにそこにあるのに交換出来ないなんて,そりゃ切ないでしょうと食い下がりましたが,交換はあくまで同じ価格の同じ程度のものとの交換であり,ロゴがかすれたものを同じ程度として交換することが出来ないという事でした。

 まあ,それもわかります。とはいえ,ロゴがかすれたものは一度不良と認定されたわけで,交換してもらうと不良としての扱いが取り消される形になるというのは,これで腑に落ちないものがあります。

 お店が出来ない事は出来ない,出来る事は精一杯やると言うスタンスだったのでいろいろ提案をして下さったのですが,結局今手元にある傷だらけのものを際査定し,これを値引き販売することで差額を返金してもらう対応で手を打ちました。

 金額を書くとなにかと問題があると思うので書きませんが,私としては想像以上に割り引いてくれたと思います。言い方を変えれば,それだけこのキズは大きな減額となるものだったのでしょう。返品されても売り物にならず,出来れば私に持っていて欲しかったということでしょうね。

 そういううがった見方はともかくとしても,お店の対応は荒っぽさがあるものの,お店として可能な選択肢を出し惜しみせずに複数提案してくれたことは,とても信頼出来るものだったと思います。お店の名誉のために書いておきますと,ロゴのかすれもキズも,未使用品として入荷した商品に最初からついていたものだったわけで,いわばメーカーの品質基準を満たした仕様です。

 それを検品でお店の基準による再評価ではじけなかったことに問題はありますが,誰の手にも渡っていないという意味での未使用品という表現に偽りはなく,メーカーの出荷基準に合格した良品であると強弁しても通ったと思います。(でも不良在庫の買い切りで流れてきた商品にメーカーのサポートはありませんから,全責任を負うのがお店のつとめです)

 今にして思うと,販売店も逃げずに,自分の責任の範囲で十分に誠実な対応をしてくれたと思います。感謝ですね。

 キズも目立ちますし,塗装も剥げていますが,動きそのものは問題がないようです。実査に使ってみるとBlackberryKEYONEとはまた違った快適さがあります。OSはAndroid11と2世代も前ですが,セキュリティアップデートがGooglePlayで配布されるので実際に使える時間は長く出来そうです。

 あとは壊れないことを祈りたいです。外出先でスマートフォンが壊れるというのは,酸素ボンベがなくなるようなものですからね。


・STAX SR-507
 11月の初旬のことですが,STAXのアウトレットから入荷連絡がきました。私が使っているSTAXのイヤースピーカーはSR-303でもう年以上も使っているものです。

 イヤーパッドの交換は何度も行っていますが,スポンジがすでにボロボロになっており,音響的にもよろしくない状態だったことが気になっていましたが,この20年で価格が急激に高騰したことや,高級路線になってしまったことから,SR-303の後継としてSR-307あたりをアウトレットで探していたのです。

 あいにくその時は完売で手に入りませんでしたが,入荷したら連絡をもらうことにしてあり,それが忘れた頃にやってきたというわけです。お値段は26180円で,なかなか微妙な値段です。

 そこでふと,このSR-307がヨドバシでいくらで売られていたのかが気になり,調べたのがきっかけで,もう1ランク上げてみてはどうだろうと大人の発想が首をもたげてきました。

 アウトレットの在庫を調べてみると,SR-507が53900円です。Λシリーズの後継であるSR-L500が8万円を越える価格であることを考えると,現在はミッドクラス,当時のハイエンドをこの値段で買うチャンスはもう二度と来ないでしょう。

 同じクラスのものを2つ持っていてもつまりません。本革のイヤーパッドにも憧れがありますし,個々は少し背伸びをしてSR-507を買った,と言うわけです。

 届いて早速聞いて見ましたが,実は少しがっかりしたのです。SR-303は高解像度で,これまで聞こえなかった音が聞こえる魔法のヘッドホンでした。しかし低音はあまり豊かとは言えません。私はそれがかえって聞きやすく,好ましいものと思っていました。

 SR-507は低音が豊かになり,普通のヘッドフォンと同じ傾向になったと思います。その点では,コンデンサ型の弱点を克服したモデルと言ってよいのでしょうが,一方で解像度が落ちたように思えたのです。

 とはいえ,小さい音を聴きたいという気持ちから気が付いたらボリュームMAXという,音量のリニアリティのすごさとダイナミックレンジの広さ,大音量を破綻なくストレートに再現する能力はもちろん健在で,音が丸くなった分リスニングに疲れもなく,オーディオマニアにはこの方が受けるよなあと思った次第です。

 STAXはやっぱりあの角形じゃないと,というSTAX原理主義の私には,ΛシリーズこそがSTAXです。おそらく最後のSTAXになるだろうSR-507と,SR-303は併用したいと思います。


・ゲームの類い

 購入当時に書き忘れていたものがゲーム機で,AstroVisionMiniとMegadraive2mini,そしてゲーム&ウォッチのゼルダの伝説を買いました。

 AstroVisionMiniは正直期待外れで,あまり盛り上がらなかったように思います。一方のMegadraive2miniは,期待を越える収録数とラインナップ,そして遊べるクオリティで,期待を大きく越えるものでした。気合いの入れ方が全然違うと感じます。

 特にドッヂ弾平は噂通りの良ゲーで,あまりゲームに関心を示さない娘が楽しんでいました。値段以上に楽しめるので,スプラトゥーンに疲れた人は息抜きに買ってみてもいいと思います。

 本命はゲーム&ウォッチです。マリオは発売当時に買っていましたが,ゼルダはもともと興味がなかったので買っていませんでした。

 しかし,娘がPCで古いファミコンのゲームで遊ぶようになったのを見て,ゲーム&ウォッチにファミコンのエミュレータを入れれば手軽に遊べるのではと思い立ち,amazonのセールの時に買いました。

 買ってすぐ分解,事前にaliexpressで調達してあった64MbyteのEEPROMに交換して,先人達が切り開いた道をありがたくトレースさせて頂きました。

 ちなみにROMんも書き込みツールとしてSTMicroのST-LINKあ必要になるのですが,私は偶然Nucleoを持っていたので,これを使うことにしました。

 ゼルダから外したEEPROMをマリオに移植し,マリオは4MBのEEPROMを搭載したモデルとして改造しました。

 ゼルダはオリジナルのゲームが大きく,すべて外部フラッシュに置くため設定が消えないようですが,マリオはオリジナルの機能をCPU内蔵フラッシュに書き込むため,設定が消えてしまうと言う問題があるようです。

 ともあれ,ゼルダは大容量ストレージを手に入れ,MasterSystemやPCエンジンのエミュレータまで取りこんで,レトロゲームマシンになりました。

 娘に渡してみると,喜んでファミコンのゲームでしばらく遊んでいましたが,気が付いてみるとちゃんとゼルダの伝説で遊んでいました。改造の必要などなかったというオチがつきましたが,クリスマスという事もあり,プレゼントしました。

 

 ということで,今年もいろいろ買いました。数は少ないながらも,実はレトロPCや電子工作関係で部品を買ったり,オークションに突っ込んだりと,単価は小さいながらも合計するとびっくりするような金額になっていそうな気がします。

 もともと,手持ちの部品を使って安く作ろうという同機で始めた工作も,結局手持ちがないという理由で買い足す羽目になり,結局部品が減っていない(それどころか増えている)という悪い状況です。

 来年は,自宅の修繕や子ども塾等で大きなお金がかかります。無駄遣いは慎まないといけないなあと思います。

 

2022年とAppleII

 さて,2022年もそろそろおしまい,今年は仕事面で10年に一度の挫折があり,5月頃から半年ほど毎日がとても苦しい年でした。今もってその状況は根本的には変わっておらず,気の持ちようとある種のあきらめで,なんとか平静を装っていられる感じですが,挫折の時こそ趣味のみに生きるのが私。

 これまでも,カメラの修理などがどん底から引き上げてくれた(もしくはそれ以上沈むことを防いでくれた)のですが,今回はそれがレトロPCでした。

 レトロPCというのは1970年代から1990年代にかけて発売されたパソコンのことです。各社まちまちのハードウェアで互換性など全くなく,むしろその非互換こそが他社との差別化に繋がっていたという,よく言えばエキサイティングな,悪く言えば消費者そっちのけだった,黎明期のパソコンたちです。

 私も当時を知る人ですので,実家から持ち帰った古いパソコンのうち,当時のものをレストアして当時のまま使うことは,とても簡単なことでした。しかしそれはすでに分かっている結論までのプロセスを,ただなぞるだけの行為に過ぎません。

 新しい発見は少なく,動いたという安心感だけが残るもので,おそらくすぐに触らなくなるだろうなあと,目に前に並ぶ実家からの荷物を見て思ったものです。

 しかし,新しい体験が伴うなら話は別です。1980年代当時,私は学生であり,百花繚乱だったわずか数年間を楽しむには幼すぎました。お金も知識も交友関係もです。

 分厚い雑誌の広告を見ては「いいなあ」「欲しいなあ」と思ったり,「すごいすごいとは聞いているけどなにがそんなにすごいんだろう」とか「いつかは貯めそう」と思って結局試せずにいたりしたものが,とにかくたくさんあります。

 おそらく,現在のレトロPCのブームは,当時を懐かしむことだけではなく,当時のものを現代の技術で拡張したり,現在の自分の能力で動かして,新しい体験をすることにも支えられているんじゃないかと思います。

 そう,大人となった今では,お金もあります。知識も技術もあります。新しい部品も手に入ります。そして多くの資料が手に入るようになっています。

 あたかも転生もののように,かつて出来なかったことを今楽しむこともそうですし,当時は手に入らなかった素晴らしい性能の部品を使って,当時は構想だけで終わっていたものや実現が難しかったものを現実にしたりと,シンプルなマシンだからこそ自由にいじることが出来るレトロPCで楽しんでいるんだろうと思います。


 私の場合,年齢が高くなってから触り始めたX1turboIIIは,やり残したturboZ-BASICの起動で興味が失せてしまったわけですが,小学生の時に触り始めて,いつかはフロッピーディスクで動かすんだと夢見ていた当時を,現実に堪能しました。

 しかし,もっとも楽しんだのはAppleIIです。私がパソコンに興味を持っていた頃はすでにAppleIIは日本国内でもマイナー機種になっていました。もちろん熱心なファンはたくさんいましたし,最初からマイナーだったマシンとは違い,AppleIIはこの世界のパイオニアでしたし,性能は当時も全く色褪せず,高嶺の花であり続けたマシンでしたが,それゆえに持っている人がほとんどおらず,お店で見かけることも少なかったのです。

 1970年代生まれのAppleIIは,その後隆盛を誇るMicrosoft BASICをROMに内蔵した多くのマシンとは異なる流儀で動かすマシンで,仮に当時AppleIIを与えられてもきっとなにも出来なかっただろうと思います。

 実際,1990年代前半にAppleIIを初めて手に入れた時には,電源を入れるところまでは出来ても,そこから先はなにも出来なかったことを覚えています。

 東レ時代の本物のJ-plusだということで捨てずに持っていましたが,それが実家にやってきてから,なんとか動かして見ようと思ったのが今年の2月頃のお話です。

 少しgoogleで調べてみると,AppleIIの情報は,それはもうザクザク出てきます。日本国内では海外製の高価なマシンだったAppleIIは,当然のことながら海外ではベストセラーモデルで,多くの人にとって最初の1台だったモデルなのですから,海外の情報に簡単にアクセスできなかった当時とは,見える色が異なるはずです。

 加えて円高。昨今円安と言われていますが,AppleIIのころは1ドル300円ですから,円は今の半分以下の価値しかなかったわけです。当時日本国内で36万円だったAppleIIは,今でも15万円くらい,最も安いときなら10万円くらいだったりするのです。
 
 そういう気持ちでAppleIIを眺めてみると,当時全く縁がなかったAppleIIを今当時のつもりでトレースすると,全く新しい経験を得ることになるんじゃないのか,もっと言えばあの時代にタイムスリップすることに等しいんじゃないのか,と思うようになりました。

 当時と違ってお金はほとんどかかりません。情報もあふれています。難しいのは当時のハードウェアを手に入れる事ですが,AppleIIは幸い数が出ているので,探すのは難しくありません。最悪自作も可能です。

 ということで,この10ヶ月ほど私はAppleIIにどっぷりでした。

 最初はとにかく電源を入れたところから先に進もうということでしたが,そのために必要になったのはディスクイメージをディスクに書き戻す手段です。これにはこの界隈でよく使われているツールを動かす必要がありますが,そのために16kBの拡張メモリが必要でした。

 メモリは,基本的な入出力仕様が当時のままなのに,中身は強烈に増えているという珍しい部品で,AppleIIの時代には4kBitだったSRAMは,今ではその1000倍以上のものが簡単に入手できます。

 手持ちの256kBitのSRAMを使って自作したあとは,AppleIIの扉が一気に開いたような面白さで,憧れた有名なゲーム,ツールを楽しみ,新しい技術や知識を得てまるで当時のようなワクワクした毎日を過ごしていました。

 DIskIIの修理もそうですし,Z80カードでCP/Mもそうです。CP/Mは,当時X1turboで少し囓りましたが,面白いと思えず,とても不便で面倒くさいという印象しかありませんでした。

 しかし今触って見ると,非力なZ80でよくここまでやるもんだなあと思うほど,良く動いてくれます。これが当時の世界標準だったのかと,その頃いかに無知だったのか,あるいは自分の少し外側には全く見た事のない輝くような世界があったことを知らずに過ごしていたのか,思い知ることになりました。

 AppleIIは何度も壊れてしまいましたが,その都度修理をあきらめなかったのも,まだやり尽くしていないという知識欲からだったと思います。それに修理が現実的だと思えるくらいの情報が入手出来ることも,カスタムチップが少なく部品の入手も難しくないことも,あきらめなかった理由だと思います。

 ということで,AppleIIでやりたいことはほぼやり終えました。ここから先は例えばAppleIIで音楽を作るとか,AppleIIGSを手に入れるとか,自分で6502のコードを書いてみるとか,そういうことをやるしないでしょう。しかし,当時私がそこまでやっていたかと言えば疑問で,詰まるところ歳を取っても私は私ということです。

 当時,こんなに面白い世界を楽しんでいた人たちがいたんだなあと,羨ましく思いましたし,とはいえ当時ここまでの環境を持っていてもきっと使いこなせずに終わっただろうなあと,美しいデザインのAppleIIを見ながら思います。

 同じ事をあの当時にやろうとすると,おそらく数百万円かかったでしょう。ほとんどがオープンになっていて,今なら無償で使えるソフトウェアを全部購入すると考えると,高級車が買えるほどの経済力がないと経験出来なかったでしょう。

 当時の価値観ではありますが,その楽しみは費用に見合うものだったはずで,楽しくないはずがありません。だから私にとって,それは懐かしいのではなく,新しい体験でした。

 残念な事に,新しい経験も済んでしまえば懐かしさにいずれ変わります。次から次へと試したいことが出てきたAppleIIの探検も,CP/Mが起動した時にもう掘り尽くした感じがしました。さみしいことですが,AppleIIの追体験という旅は,ここら辺で終わりのようです。

 

ATTiny10でSi5351Aを設定する

  • 2022/12/21 12:04
  • カテゴリー:make:

 ATTiny10でSi5351Aを設定するお話,先日の続きです。

 今回はKiCadで図面を書いて中国の基板メーカーに発注するということを1つの目的に,せっかく基板を作るんだからと小さなものを作ってみようと考えました。

 Si5351Aはどんな周波数でも作る事の出来る魔法のICです。これに周波数が変わらないTCXOを組み合わせれば,超高精度・超高安定な任意の周波数を(しかも動じに3つまで)作り出すことができます。

 以前も書きましたが,Si5351Aは25MHzか27MHzの水晶発振子を繋ぐことしか出来ないバージョンですが,安価に売られている26MHzのTCXOを突っ込む事に成功しています。

 これを使えば通常の水晶発振子の20ppmからTCXOの1ppmの精度を持つ,様々な周波数のb発振器を作る事が出来るわけです。

 ただ,設定には200近いパラメータをI2Cを通じて書き込む必要があり,それなりの大きさのマイコンが必要になるという点がシステム全体の規模を押し上げています。しかも一度設定してしまえばもうマイコンは不要になるので,これがなかなかもったいないのです。

 そこで安価な8ピンマイコンであるATTiny13Aをかつて使ったわけですが,それでも結構面積は大きく,20ピンのDIPくらいの大きさになってしまっていました。そこでATTiny10を使い,専用の基板を起こすことで,14ピンDIPと同じ大きさにして,良くある発振器とピンコンパチにしてみようと考えました。


 回路は出来るだけ部品点数を減らしています。I2Cのプルアップは内蔵で代用したので,抵抗はステータスを示すLEDのために1つだけしかありません。

 マイコンのATTiny10とSi5351Aは表面に配置,26MHzのTCXOは裏面です。TCXOは電源が2.8Vなので3.3Vから落とすためLDOが必要になりますが,これも秋月で売られていたBH28PB1WHFVを使いました。

 LDOには0.47uFのパスコン,Si5351には0.1uFのパスコン,それからTCXOの出力とSi5351の入力の間に0.1uFのコンデンサを挟んで,部品はたったこれだけです。

 基板を描いていたときには狭いなと思ったものですが,出来上がった基板を見るとスカスカです。

 20221219142605.jpeg

 早速実装していきますが,自分の回路は信用出来ないので,1つずつマウントして動作確認をして進めます。LDOの動作,TCXOの発振,ここまで出来たらあとは一気にSi5351AとATTiny10とLEDを取り付けて完成です。

 向きを間違えたりしましたが,動作は問題なし。違う周波数のバージョンをもう1つ作っておきましょう。

 20221219142606.jpg


 さて,測定です。

 まず1つ目は,デジタルオーディオの世界ではなにかと目にする,256fsという奴を3つ出すモジュールです。かつてサンプルレートコンバータを作った時,3つの異なる周波数が必要になり,1つ600円もする水晶発振器を3つも買った覚えがありますが,この時私がこのモジュールを作っていればどんなに安く簡単に作る事が出来たでしょう。

TCXOの周波数 : 25.9999683MHz(-1.219ppm)
12.288MHz : 12.2879856MHz(-1.172ppm)
11.2896MHz : 11.2895864MHz(-1.205ppm)
8.192MHz : 8.19199016MHz(-1.201ppm)


 TCXOの初期周波数偏差は2ppmですので十分規格内,それぞれの周波数もこれに準じた偏差となっています。成功ですね。

 次によく使う周波数を3つ出すものを作りました。10MHzや20MHzは測定器などのタイムベースでもおなじみです。

TCXOの周波数 : 25.9999754MHz(-0.946ppm)
10MHz : 9.9999912MHz(-0.880ppm)
12MHz : 9.9999894MHz(-0.883ppm)
20MHz : 19.9999823MHz(-0.885ppm)

 これもなかなかよいではありませんか。

 TCXOの安定度は1ppmから2ppmですので,普通の水晶発振子よりもヒトケタ小さいです。

 つくづく惜しいのは,Si5351が秋月で買えなくなってしまっていることです。かつてはなんと150円で買えましたが,今は基板とセットでしか買えません。Digikeyで探してみると1つ360円か・・・円安を考えるとそんなもんかも。

 Si5351Aは壊れやすいので,実験中に何度も壊しましたし,もっと買っておけば良かったと後悔しています・・・

 

 

ハンディオシロの盲点


 先日,amazonのセールでハンディオシロHO102を買ったと書きました。2万円という低価格でありながら,中級機並の実力があるので気に入っていると書いたのですが,前言撤回です。

 先に言い訳しておくと,当たり前過ぎて気にもせず,当然だろうと思っていた仕様が実は不十分だったということです。いやー,これは迂闊でした。

 その仕様というのは,垂直感度です。難しく書いていますが,早い話が測定電圧のレンジの範囲です。

 先日,HO102で小さな振幅の波形を測定しよう,垂直感度を上げていきました。しかし,普段の感覚なら当然見えるだろう波形がなかなか見えてきません。おかしいなと思って確認すると,最も感度が高いレンジでも100mV/divだというじゃありませんか。

 普段当たり前過ぎて意識しないことなので慌てて普段使いの54645DやTDS3054を確認しましたが,やはり10mV/divまでOKです。うーん,10倍も違うのか。

 10:1プローブを使っていますので本体の感度はそれぞれ1/10になりはしますが,1:1で測定することなど現実的にはありませんので,HO102は一目盛りたったの0.1Vなわけです。これじゃアナログ信号を扱えません。

 電源や波形ののったノイズも見えませんし,センサ系の微弱の信号はもちろんのこと,ロジックでもちょっとした信号の変動さえもつかまえられないでしょう。これじゃ水平軸の性能がどんなに良くても,使える範囲は限られてしまいます。

 かつて,測定器メーカーにお勤めだった方に聞いたことがあるのですが,オシロスコープで最もお金がかかっているのは,入力のアナログ回路,すなわち垂直軸なんだそうです。安いオシロと高いオシロの差,あるいはメーカーの実力の差というのは,垂直軸に出てくるということでした。

 垂直軸の性能は,周波数特性と感度に差がつきます。これってオシロスコープの基本機能そのものですよね。ここがきちんと作れるメーカーは,当時はそんなに多くはなく世界で数社,日本でも1社か2社かそんなもん,という話だったことを覚えています。

 デジタルオシロは多くがデジタル化されているので,きちんと組んでしまえばそんなに性能差が出ません。しかしアナログ回路は違います。性能を上げるには技術も必要ですし,コストもかかります。

 だから,その当時ボツボツ出てきた韓国や台湾,中国のオシロスコープのメーカーが,安価なものをラインナップするのは,実は高額なもの(それに見合ったアナログ性能を持つもの)を作れないのだ,という理屈です。

 近年,中国や台湾のメーカーも実力を付けていますし,アナログ部も汎用のICを組み合わせればそこそこの性能が出せるようになってきたので,かつて30万円だったものが10万円になっているというのは事実です。

 ぱっと見てみると,やはり2,3万円のものは感度最大で5mV/divでした。7,8万円になると1mV/divとかつての「普通」になってきます。そう考えるとHO102の10mV/divというのがいかに低レベルなものか,わかろうものです。

 やはり,2,3万円で売られているものはやはりそれなりのものだということを,特に初心者の方は考えておいた方が良いと思います。

 

F(x)tec Pro1xを買う

 私は未だに通話用とデータ通信用に携帯電話を分けていて,通話用に維持している3Gのガラケーを「メインだ」と言い張る変わり者です。

 更に悪いことに,もう携帯電話の世界にはついて行けないと興味を失い,仕方がないから持っているという状況に甘んじており,かつてザウルスとPHSでモバイル通信を日常的に行っていたり,海外からPalmTXを輸入して常用したり,twitterデビューがアドエスだったりと,すっかり過去の栄光が失われています。

 振り返ってみると使いやすいように自分でなんとかするということが必要なくなってしまって,それで結局興味を失うことが多いように思うわけですが,なにも手を汚さずとも普通に使える機器というのは楽ちんな一方で,少し外れたことをしようと思うととても苦労するか結局あきらめるかのどちらかになってしまうので,それで結局今日もを失うのだと思います。

 まあ,そういう目的のズレがある似たような傾向の方が世の中にはいらっしゃるようで,例えばキーボード付きのスマートフォンには一定のファンがいるようです。

 電池で動く小型携帯機器のフルキーボードというのは,PC-1245というポケコンに始まり,実際便利につかえることもあって,未だにその魅力にあらがえません。

 iPhoneやAndroidでキーボードがなくなり,タッチパネルでの操作が広く受け入れられるようになったわけですが,私個人は表示されている画面を直接触ると言うことにどうにも馴染めず,これまでもBlackberry KEYONEを使ってきました。

 Blackberry KEYONEはとてもいいスマートフォンでしたが,いかんせん古くOSも8.1止まり,動作速度以上にセキュリティに不安があり,手頃なキーボード付きのスマートフォンが出てきたら買い換えようと思っていました。

 やはりマニア向けの製品になるので,どうしても聞いたことがないようなメーカーから,クラウドファンディングなんかで買うという形が多く,これも私にはちょっと抵抗がありました。

 そこへ飛び込んで来たのが,イギリスのF(x)TECHNOLOGYから出ていた,F(x)tec Pro1xという機種が未使用品で4万円で販売されているという話でした。

 この機種は2年ほど前にちょっと話題になったので私でも知っているのですが,画面をスライドするとキーボードが出てくるという,アドエスを彷彿とさせるモデルです。

 ただ,この手のギミックはやはりメカ屋が優秀な日本製が望ましくて,少々不安があったのですがこの機会を逃すと当分買い換えできないなと,なかば自分を騙すようにポチりました。

 届いてセットアップを行いようやく常用を始めたのですが,結論から言うと今ひとつで期待を下回るものでした。

(1)外観

 大きささはそれほどでもないですが,厚みはキーボード付きという事もあり,かなり分厚いと思います。重さもありますし,これをスマートフォンとしてみればやはりデメリットになると思います。

 意外にかっちりとした剛性感もありますし,青の本体色も綺麗です。しかし,キーボードのギミックには個体の問題かも知れませんが,右側にガタがあり,キーボードを出して画面にタッチするとカタカタと音がなります。これはダメでしょう。

 キーボードは意外によい感触で,独立したキートップを持つ押しやすいキーです。バックライトも持っているあたり,なかなかこだわっているなあと感心します。

 配列は前機種のPro1で酷評された配列を見直していますが,その結果私は何の不満もなく使えています。とはいえ,つくづくBlackberryのキーボードの使い心地の良さが懐かしく感じます。

 キーボードのスライドはちょっとコツが必要で,カメラのシャッターボタンや電源ボタン,音量調整ボタンに触らないように開くのはなかなか難しいです。結構な力を入れないとスライドしないので,ついついキーボードを使わなくなってしまいます。

 そうそう,私の個体の問題だと思うのですが,背面の「XDA」のロゴがかすれていました。本当に未使用であるなら製造時の不良でしょうが,もう面倒ですし,目につくものでもないのでこのまま使うことにします。

 
(2)使い心地

 CPUがミッドレンジ向けのものに変わってしまったのでパフォーマンスは良くないです。メモリも今どきのモデルとしては少なめですので,スマートフォンとしてみれば4万円の価値があるかどうかさえあやしいと思います。

 ディスプレイはOLEDでなかなか高品位だと思います。ただ別にLCDでもいいと思うくらい,LCDとの差が縮まっているのだろうと思います。

 ちょっとどうなのかなと思ったのは左右の端っこが曲面になっていることです。手に馴染むデザインには貢献するかも知れませんが,曲面に映る文字が見にくかったり,そこにタッチがしにくかったり,フィルムが貼れなかったりとあまりメリットを感じませんでした。

 キーボードはスライドが面倒に感じがちで,まず使おうという意欲が湧きにくい上,ATOKとの相性が悪く,横長の画面が使いにくいこともあり,縦画面のままキーボードが使えるBlackberryが圧勝です。

 
(3)その他

 セットアップを一通り済ませた後カメラをテストすると,カメラアプリがすぐに落ちてしまい,もう一度セットアップする羽目になったりしましたし,WiFiの感度が悪すぎて,勝手に切断されてモバイルネットワークに繋がっていたのにセットアップを続行してパケ死したりと,とにかく大変でした。

 ATOKとの相性が悪いことも問題で,横画面でソフトキーボードを消すと縦画面でもソフトキーボードが表示されずに詰むとか,Gboardも候補が画面に大きく表示されて邪魔になるなど,最大の売りであるはずのキーボードが使いにくいというおかしな事が起きています。

 Android11というのはなのでセキュリティのアップデートはGooglePlayで配信されるので安心感がありますが,これがなければKEYONEをそのまま使い続けていたかも知れません。


(4)まとめ

 わざわざ買い換える必要があったのか,という疑問を感じる買い物でした。ちなみに購入したディスプレイのフィルムは曲面をカバーしない中途半端なもので,画面が見にくくなるだけのものでした。国内の有名なメーカーの製品だったのですが,失敗だったと思います。

 専用のケースもありませんし,なにかと不便な思いをします。はっきりいって,ウケ狙いのアイテムだったと思います。

 素のAndroidであることは評価しますが,楽しさや満足感で言えばBlackBerryがやっぱりいいなあと,見直しました。

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