常用レンズにZ 26mmF2.8
- 2023/11/29 15:50
- カテゴリー:散財, カメラに関する濃いはなし
Zfがやってきて1ヶ月ほど経過しました。発売日にはランキング一位でも翌週には圏外という,初回を売り切ったら在庫がないというニコンによくあるいつもの展開になっているようで,Zfを持ち歩くとどうしても自意識過剰になってしまいます。
それはどうでもいいことなのですが,この1ヶ月で困ったのはレンズの選択です。一言で言うと付けっぱなしにできる良いレンズがありません。
Zfcでも似たような状況が続き,キットレンズの28mmF2.8も,次に出た40mmF2も,どうも私の好みとは遠く,ようやく「これだ」と思ったのは24mmF1.7を手に入れてからになったのでした。
今考えても24mmF1.7は良いレンズで,聞けば50mmF1.2と同じ設計者が同じ思想で設計した物なんだそうです。そりゃカタログスペック以上のなにかが込められているはずで,妙に納得してしまいました。
Zfcを手放したときにこのレンズも一緒に売却したのは,それがAPS-C専用のレンズだったからで,もしフルサイズだったら絶対に残していたと思います。このレンズは安いのに,良く写ると言うこと以上のものがあるレンズでした。
Zfで使えるフルサイズ用のZマウントレンズでは,こういう思想のレンズはとても高価です。50mmF1.2はなんと30万円で,値段もそうですがまるでF2.8通しのズームレンズみたいな大きさで,これを常用しようとは思いません。
同じ理由でF2.8通しのズームは(まだFマウントを持っているので)買おうとは思いませんし,先日買った24-70F4ではF4という開放F値からくる制限が結構窮屈で常用には至っていません。
シグマが35mmF1.4あたりを用意してくれればそれがベストなんですが,残念ながら現時点でシグマはZマウントをAPC-Sしか用意してくれていません。
画角は35mm,明るさはF2よりも明るいものが理想で,これって先の24mmF1.7(フルサイズに換算すると36mm)がドンピシャだったとわかるのですが,Zマウントにはこういうレンズで手軽(大きさ的にも経済的にも)なものはないのです。
マウントアダプタを経由してFA43mmF1.9を使ってみたり,MマウントのHELIAR 40mm F2.8を使ってみたりしましたが,マウントアダプタの分だけ出っ張ってかさばるし,せっかくの強力なAFが使えない事のもどかしさもあり,数回でやめました。レンズ遊びはあくまで遊びであって,常用にはならないものです。
なら,新たに買うしかありません。私の常用レンズを探す旅は,まだ始まったばかりです。
候補を探してみると,純正ならSラインの巨大な(かつ高価な)ものしかありません。これはいきなり厳しい。
コシナからはAPO-LANTHAR 35mm F2が候補になりました。画質には心配はなく,価格も10万円程度ですからなんとかなります。しかしAFが使えないのでは常用にはなりません。これもだめか。
中華レンズにいくつか候補が見つかりましたが,リセールバリューを考えると安易に手を出せません。それにいつニコンがこれらのレンズでAF動作しないように仕込んでくるかわからないですから,やはり常用にはなりません。
うーん,ここで行き詰まってしまいました。
もう少し条件を緩くしましょう。そうすると1つ引っかかってきたのが,Zのパンケーキ,Z 26mmF2.8です。
私はパンケーキレンズには特に思い入れはなく,薄いことを売りにすることで肝心の性能や使い勝手に妥協を強いられるのが嫌で,むしろ避けていた感があります。(まあこれは思い込みに過ぎないのですが)
なので,Zでわざわざパンケーキというのもいまひとつピンと来ていませんでしたし,しかもその焦点距離が26mmという広角(しかも28mmよりも短いなんて)というのは,果たして使いこなせるのかとも思っていました。
加えて,どうも格好が良くないです。Zのレンズは総じて顔が大きいくせに前玉が小さい(その代わり後玉が大きい)ので今ひとつ可愛くないのですが,このZ 26mmF2.8も他例に漏れず,可愛くありません。
これが3万円ならちょっと試してみるか,と思えるんですが,さすがに6万円後半ということになると勇気がいります。
とはいえ,もうこのレンズ以外に,常用レンズの候補がないのも認めざるを得ません。ちょうどamazonもセールをやっていますので,思い切って買うことにしました。
63000円からポイントが3000ポイントで実質6万円というのも安いと思いますが,ニコンのキャッシュバックで7000円戻ってきますので,結局53000円です。昨今のレンズの値上がりは厳しさを増していますが,このレンズの私の値頃感はちょうどこのくらいの価格でした。
ということで,先の連休で手に入れたものを使ってみます。
(1)手に取った感じ
良くも歩くもZレンズです。Zのレンズはどのレンズもくびれがなく,寸胴です。私はそれが好きにはなれないのですが,パンケーキならそんな印象もありません。うーん,パンケーキと言うよりも回転焼きって感じですけど・・・
極端に薄いわけではないこのレンズも,マウント径が大きいことで非常に薄く感じます。専用のフードを付けてしまえば,一眼レフ時代の普通の単焦点レンズの気分です。
とはいえ,さすがにそこは純正。作りはしっかりしていますし,しっとりと手に馴染むのは気分がいいです。
そのフードですが,やっぱりくびれや出っ張りがなく,装着時もつまらない円柱に見えます。このへんがZfとアンバランスなんだろうと思います。
このレンズは,フィルターをレンズ本体に取り付けることが出来ません。先にバヨネット式の専用フードを取り付け,フードに切られた52mmのネジでフィルターを取り付けます。
しかしこれだと,フィルターに入りこむ有害な角度の光線を防げません。フィルターとレンズの麺との間で反射も起きてしまいますので,フードの役割から考えると,やっぱりフィルターはフードの前に置きたいところです。
(2)写り
写りは,実は大満足です。これは予想以上のものがありました。
シャープネスもボケも色のりも期待通りで,常用レンズとして十分使えます。Z 28mmF2.8とは全然違っていて,そこはやっぱり価格相応なんだなと思った次第です。
F2.8の開放から使えることはあまり期待していなかったのですが,少し(周辺は少しではないですけど)画質は落ちますが十分使えるレベルです。
色は濃厚ではありませんが淡泊でもなく,見たままの感じですし,歪曲も補正されていて問題ないレベルです。線の細さはあまり感じませんが,下品な太さはありません。
F2.8ですからそんなにボケないと思っていましたが,26mmですからもう一歩夜必要があり,それくらいの距離だと上品に背景がボケてくれます。私は背景になにが映っているのかわからないくらいのボケボケはどうも好きにはなれず,被写体に視線が自然に行く程度のボケが得られるのを理想としています。Z 26mmはちょうどよいと思います。
ピント面とボケとの繋がりも自然ですし,コントラストも良好なので陰影も綺麗に出ます。常用レンズとしてはとても頼もしい画質だと思います。
(3)使い勝手
パンケーキといいつつそんなに薄くないことに加え,この手のレンズとしては初体験のAFレンズですので,パンケーキであることは全然デメリットではありません。ピントリングも触りやすいですし,全体繰り出しですが鏡筒は伸びないので振り回すのも問題ありません。
特筆すべきは「寄れる」ことです。26mmだから当たり前ともいえるのですが,20cmまで寄れるというのはかなり撮影自由度が上がります。とはいえ撮影倍率はたかだか.19倍ですので,そんなにパースを強調できるわけではありません。寄れば寄っただけ背景はボケるので,上手く使いたいところです。
それから26mmという焦点距離です。かなりの広角だよなと覚悟していましたが,使ってみると案外自然です。よく考えてみると,昨今のスマートフォンのカメラが,このくらいの焦点距離なんだそうで,そういう写真を見慣れていることがあるのかも知れません。
そうそう,このレンズはもちろん手ぶれ補正はありません。しかしZfの強力なボディ内手ぶれ補正と,レンズの小ささと画角のおかげもあって,手持ちで1/8秒も余裕です。
(4)ものたりないところ
もう少し暖色で,色がしっかり乗ってくると常用レンズとしては申し分なしです。絞れば十分なシャープネスを得られますが,開放でもうちょっとだけ頑張って欲しいとも思います。
それからデザイン。Zの寸胴体型はどうにかならんのかと思うのと,バヨネットフードってのはどうかと思いました。確かにフード病を押さえこむには有効なんですけどね・・・
(5)まとめ
パンケーキレンズって,欲しいと言う人は多いように思うのですが,実際に売れたという話はあまり聞きません。ニコンでも,Ai45mmF2.8Pなんかはさっぱり売れず,中古価格も高いままという話を聞きます。
理由はいろいろあるんでしょうけど,安くて手軽なパンケーキを求めることはあっても,高価なパンケーキを望む人は少ないんだと思います。その点でZ 26mmF2.8もそんなに売れるレンズではないと思うのですが,では6万円の価値のないれんずかと言えばそんなことはありません。
ニコンらしく光学的に妥協はないし,質感も十分6万円のそれだと思います。ここで40mmや45mmを出してこなかったのはむしろニコンの戦略で,26mmというちょっと珍しいものをこの価格で出してきたところが,面白いなと思いました。
使ってみると,出っ張らないことがとても快適で,もともと三次元的な凹凸の少ないZfには(デザインを除き)ぴったりです。写りも好みに近く,手軽に持ち出せ,絞りで画像をコントロールする面白さも持っている上,寄れるというのは,まさに常用レンズに持ってこいでした。
とりあえず常用レンズを探す旅は,このZ 26mmF2.8で決着することができました。屋外でもっと試さないといけませんが,これがまだ手に馴染まないZfを身近に近寄せる原動力になってくれればいいなと思います。