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2023年11月の記事は以下のとおりです。

常用レンズにZ 26mmF2.8

 Zfがやってきて1ヶ月ほど経過しました。発売日にはランキング一位でも翌週には圏外という,初回を売り切ったら在庫がないというニコンによくあるいつもの展開になっているようで,Zfを持ち歩くとどうしても自意識過剰になってしまいます。

 それはどうでもいいことなのですが,この1ヶ月で困ったのはレンズの選択です。一言で言うと付けっぱなしにできる良いレンズがありません。

 Zfcでも似たような状況が続き,キットレンズの28mmF2.8も,次に出た40mmF2も,どうも私の好みとは遠く,ようやく「これだ」と思ったのは24mmF1.7を手に入れてからになったのでした。

 今考えても24mmF1.7は良いレンズで,聞けば50mmF1.2と同じ設計者が同じ思想で設計した物なんだそうです。そりゃカタログスペック以上のなにかが込められているはずで,妙に納得してしまいました。

 Zfcを手放したときにこのレンズも一緒に売却したのは,それがAPS-C専用のレンズだったからで,もしフルサイズだったら絶対に残していたと思います。このレンズは安いのに,良く写ると言うこと以上のものがあるレンズでした。

 Zfで使えるフルサイズ用のZマウントレンズでは,こういう思想のレンズはとても高価です。50mmF1.2はなんと30万円で,値段もそうですがまるでF2.8通しのズームレンズみたいな大きさで,これを常用しようとは思いません。

 同じ理由でF2.8通しのズームは(まだFマウントを持っているので)買おうとは思いませんし,先日買った24-70F4ではF4という開放F値からくる制限が結構窮屈で常用には至っていません。

 シグマが35mmF1.4あたりを用意してくれればそれがベストなんですが,残念ながら現時点でシグマはZマウントをAPC-Sしか用意してくれていません。

 画角は35mm,明るさはF2よりも明るいものが理想で,これって先の24mmF1.7(フルサイズに換算すると36mm)がドンピシャだったとわかるのですが,Zマウントにはこういうレンズで手軽(大きさ的にも経済的にも)なものはないのです。

 マウントアダプタを経由してFA43mmF1.9を使ってみたり,MマウントのHELIAR 40mm F2.8を使ってみたりしましたが,マウントアダプタの分だけ出っ張ってかさばるし,せっかくの強力なAFが使えない事のもどかしさもあり,数回でやめました。レンズ遊びはあくまで遊びであって,常用にはならないものです。

 なら,新たに買うしかありません。私の常用レンズを探す旅は,まだ始まったばかりです。

 候補を探してみると,純正ならSラインの巨大な(かつ高価な)ものしかありません。これはいきなり厳しい。

 コシナからはAPO-LANTHAR 35mm F2が候補になりました。画質には心配はなく,価格も10万円程度ですからなんとかなります。しかしAFが使えないのでは常用にはなりません。これもだめか。

 中華レンズにいくつか候補が見つかりましたが,リセールバリューを考えると安易に手を出せません。それにいつニコンがこれらのレンズでAF動作しないように仕込んでくるかわからないですから,やはり常用にはなりません。

 うーん,ここで行き詰まってしまいました。

 もう少し条件を緩くしましょう。そうすると1つ引っかかってきたのが,Zのパンケーキ,Z 26mmF2.8です。

 私はパンケーキレンズには特に思い入れはなく,薄いことを売りにすることで肝心の性能や使い勝手に妥協を強いられるのが嫌で,むしろ避けていた感があります。(まあこれは思い込みに過ぎないのですが)

 なので,Zでわざわざパンケーキというのもいまひとつピンと来ていませんでしたし,しかもその焦点距離が26mmという広角(しかも28mmよりも短いなんて)というのは,果たして使いこなせるのかとも思っていました。

 加えて,どうも格好が良くないです。Zのレンズは総じて顔が大きいくせに前玉が小さい(その代わり後玉が大きい)ので今ひとつ可愛くないのですが,このZ 26mmF2.8も他例に漏れず,可愛くありません。

 これが3万円ならちょっと試してみるか,と思えるんですが,さすがに6万円後半ということになると勇気がいります。

 とはいえ,もうこのレンズ以外に,常用レンズの候補がないのも認めざるを得ません。ちょうどamazonもセールをやっていますので,思い切って買うことにしました。

 63000円からポイントが3000ポイントで実質6万円というのも安いと思いますが,ニコンのキャッシュバックで7000円戻ってきますので,結局53000円です。昨今のレンズの値上がりは厳しさを増していますが,このレンズの私の値頃感はちょうどこのくらいの価格でした。

 ということで,先の連休で手に入れたものを使ってみます。

(1)手に取った感じ

 良くも歩くもZレンズです。Zのレンズはどのレンズもくびれがなく,寸胴です。私はそれが好きにはなれないのですが,パンケーキならそんな印象もありません。うーん,パンケーキと言うよりも回転焼きって感じですけど・・・

 極端に薄いわけではないこのレンズも,マウント径が大きいことで非常に薄く感じます。専用のフードを付けてしまえば,一眼レフ時代の普通の単焦点レンズの気分です。

 とはいえ,さすがにそこは純正。作りはしっかりしていますし,しっとりと手に馴染むのは気分がいいです。

 そのフードですが,やっぱりくびれや出っ張りがなく,装着時もつまらない円柱に見えます。このへんがZfとアンバランスなんだろうと思います。

 このレンズは,フィルターをレンズ本体に取り付けることが出来ません。先にバヨネット式の専用フードを取り付け,フードに切られた52mmのネジでフィルターを取り付けます。

 しかしこれだと,フィルターに入りこむ有害な角度の光線を防げません。フィルターとレンズの麺との間で反射も起きてしまいますので,フードの役割から考えると,やっぱりフィルターはフードの前に置きたいところです。


(2)写り

 写りは,実は大満足です。これは予想以上のものがありました。

 シャープネスもボケも色のりも期待通りで,常用レンズとして十分使えます。Z 28mmF2.8とは全然違っていて,そこはやっぱり価格相応なんだなと思った次第です。

 F2.8の開放から使えることはあまり期待していなかったのですが,少し(周辺は少しではないですけど)画質は落ちますが十分使えるレベルです。

 色は濃厚ではありませんが淡泊でもなく,見たままの感じですし,歪曲も補正されていて問題ないレベルです。線の細さはあまり感じませんが,下品な太さはありません。

 F2.8ですからそんなにボケないと思っていましたが,26mmですからもう一歩夜必要があり,それくらいの距離だと上品に背景がボケてくれます。私は背景になにが映っているのかわからないくらいのボケボケはどうも好きにはなれず,被写体に視線が自然に行く程度のボケが得られるのを理想としています。Z 26mmはちょうどよいと思います。

 ピント面とボケとの繋がりも自然ですし,コントラストも良好なので陰影も綺麗に出ます。常用レンズとしてはとても頼もしい画質だと思います。

(3)使い勝手

 パンケーキといいつつそんなに薄くないことに加え,この手のレンズとしては初体験のAFレンズですので,パンケーキであることは全然デメリットではありません。ピントリングも触りやすいですし,全体繰り出しですが鏡筒は伸びないので振り回すのも問題ありません。

 特筆すべきは「寄れる」ことです。26mmだから当たり前ともいえるのですが,20cmまで寄れるというのはかなり撮影自由度が上がります。とはいえ撮影倍率はたかだか.19倍ですので,そんなにパースを強調できるわけではありません。寄れば寄っただけ背景はボケるので,上手く使いたいところです。

 それから26mmという焦点距離です。かなりの広角だよなと覚悟していましたが,使ってみると案外自然です。よく考えてみると,昨今のスマートフォンのカメラが,このくらいの焦点距離なんだそうで,そういう写真を見慣れていることがあるのかも知れません。

 そうそう,このレンズはもちろん手ぶれ補正はありません。しかしZfの強力なボディ内手ぶれ補正と,レンズの小ささと画角のおかげもあって,手持ちで1/8秒も余裕です。

(4)ものたりないところ

 もう少し暖色で,色がしっかり乗ってくると常用レンズとしては申し分なしです。絞れば十分なシャープネスを得られますが,開放でもうちょっとだけ頑張って欲しいとも思います。

 それからデザイン。Zの寸胴体型はどうにかならんのかと思うのと,バヨネットフードってのはどうかと思いました。確かにフード病を押さえこむには有効なんですけどね・・・


(5)まとめ

 パンケーキレンズって,欲しいと言う人は多いように思うのですが,実際に売れたという話はあまり聞きません。ニコンでも,Ai45mmF2.8Pなんかはさっぱり売れず,中古価格も高いままという話を聞きます。

 理由はいろいろあるんでしょうけど,安くて手軽なパンケーキを求めることはあっても,高価なパンケーキを望む人は少ないんだと思います。その点でZ 26mmF2.8もそんなに売れるレンズではないと思うのですが,では6万円の価値のないれんずかと言えばそんなことはありません。

 ニコンらしく光学的に妥協はないし,質感も十分6万円のそれだと思います。ここで40mmや45mmを出してこなかったのはむしろニコンの戦略で,26mmというちょっと珍しいものをこの価格で出してきたところが,面白いなと思いました。

 使ってみると,出っ張らないことがとても快適で,もともと三次元的な凹凸の少ないZfには(デザインを除き)ぴったりです。写りも好みに近く,手軽に持ち出せ,絞りで画像をコントロールする面白さも持っている上,寄れるというのは,まさに常用レンズに持ってこいでした。

 とりあえず常用レンズを探す旅は,このZ 26mmF2.8で決着することができました。屋外でもっと試さないといけませんが,これがまだ手に馴染まないZfを身近に近寄せる原動力になってくれればいいなと思います。

Z 24-70mmF4を買う

 Zfは大変良く出来たカメラで。シャッターを切りたいという気持ちにさせてくれる良いカメラです。D850程の大げさな物ではなく,しかし妥協なく撮影出来るという点での心理的なゆとりも大きいと思います。

 ただ,私の場合はレンズのラインナップが貧弱で,D850におけるシグマの35mmF1.4ARTみたいな全幅の信頼を置ける「つけっぱなしレンズ」がないので,これからそれを探す旅に出なければなりません。

 Zfで期待出来たのは40mmF2という純正のレンズだったのですが,これはちょっと私の趣味には合いませんでした。なんというか,描写が甘いというのと,色の出方がちょっと汚いかなあ,という印象なのです。

 安いレンズですし贅沢を言うのは筋違いなのですが,Zfcのころからそういう傾向はあり,ちょっとためらいがちにつかっちました。それがZfではますます強く出てくる感じがしていて,試してみたけどやっぱり常用は難しいという結論になりました。DX用の24mmF1.7と同じような性格の40mmだったらよかったんですけどねえ。

 35mmから40mm程度のレンズはZ用でなくてもいろいろありますから,たとえばFA43mmF1.9とか試してみましたが,結果はともかくAFが動作しないことが問題で,カジュアルに撮ることも可能なレンズとしての条件を満たしません。

 新しく買うにしても,Zのレンズは選択肢が狭い(あくまでFマウントに比べてという意味ですが)ので,こういう時に悩ましいのですが,困った時に選ぶ1本すらないというこの状況を放置するのはあまりに不安なので,とにかく実用性重視で1本買うことにしました。

 とはいえ,高価なレンズは買えません。24-70mmのF2.8などはFマウントとZマウントの両方を持つことはさすがに庶民のアマチュアに許されたことはないと自覚しているので,ならばとF4の標準ズームを検討する事にします。

 候補に挙がったのは24-120と24-70のF4。どちらもSラインなので画質には不安はありません。となると利便性と価格で選ぶ事になるわけで,新品価格の差が小さい現状ではもう24-120mmの一択でしょう。

 でも,中古まで入れると話が違ってきます。24-70mmなら,中古で5万円前後なのです。新品の半額以下です。Z6とZ7のキットレンズだったこともあり,数は豊富ですし,投げ売りされやすい不幸なレンズといえます。

 Zレンズとしては最古のレンズでもあるのですが,とはいえSラインですから性能は問題なし,それ以上にZマウントを世に問う当時のニコンの混信の作品であり,実際にこのレンズの性能には否定的な意見を見た事がありません。

 最近の中古市場は全体的に値上がり気味なので,この24-70mmF4も以前よりは値段が上がっているそうですが,それでも私が見つけたのは53000円でした。これ,フードもケースも付属しておらず,その点では価格相応なわけですが,届いて見ると大きなひっかき傷がありましたし,レンズキャップも付属のものではなく,Fマウント時代の古いデザインのレンズキャップでしたから,正直よい買い物ではありませんでした。

 光学的な問題点がなかったことは幸いで,早速使ってみました。

 噂通り,Zマウントに対するニコンの考えがよく分かる,良く写るレンズです。F4開放から使い物になりますし,画角による性能差も小さいと思います。色のりも解像度もさすがと思わせるものがありますし,使い勝手も上々です。

 しかし,あまりに優等生過ぎて,つまりません。

 贅沢だなと思いますが,どれも平均以上の性能ゆえに,特に個性を感じないのです。これがF2.8のレンズだと背景のピントがあっているところと外れているところの繋がりのスムーズさに感動したりするんでしょうが,F4だとそういうこともありません。

 まあ,もともと24-70mmというレンジが感動の薄いレンジでもあるので,やむを得ない所はあるのですが,きちんと移るけど,それ以上ではなくて,ぱっと見てごく普通の写真に収まってしまうところが,つまらないのだろうと思います。

 それに,F4というのもやっぱりちょっと窮屈です。もう一段明るいとISO感度を上げられるので,ノイズ処理に歴然とした違いが出てきます。あるいはシャッター速度を上げられるので被写体ブレとおさらばできます。この差も大きいなあと思いました。

 いやね,Fマウントの24-70mmF2.8EもFTZ経由で使ってみたのです。これは確かに文句はないのですが,写りで言えば24-70mmF4と同等かちょっと悪いくらい,そのくせ大きくて重たい(さらにいうと高価なので気を遣う)ので,常用は無理かなあと思ったのです。

 で,結局24-70mmF4と40mmF2を交互に使っている(28mF2.8は好みに合わないので出番なし)感じなのですが,35mmF1.4あたりに結局落ち着くような気がします。シグマあたりから出てくれればうれしいんですが,それがダメなら純正かなあ。

古いテスターMD-150Cをレストア

 少し前の話になるのですが,古いテスターを手に入れました。サンワのMD-150Cです。

 1982年生まれですから実に40年も前のもので,わずか3.5桁,レンジ切り替えは手動ですし,導通チェッカーもブザーもありません。当然容量計もダイオードチェッカーもありませんし,高圧に対する安全規格が出来る前なので,カバーなどの対策もないくせに1000Vまで測定可能という恐ろしい仕様です。

 兄弟機としてMD-200Cがありますが,これはテスターの手前側にオプションを取り付けると,温度やhFEなどを測定する事が出来るという拡張性を備えていました。MD-150Cは拡張性がない代わりに,DC20uAのレンジを備えています。

 今のテスターが持っていないもので,MD-150CやMD-200Cが持っているのは,その薄型のデザインでしょう。私は小学生だった当時,MD-200Cをみて格好いいなあと思ったのですが,それが今でも心のどこかに引っかかっていたようで,同じデザインを持つMD-150Cを手に入れた時は,久々にワクワクさせられました。

 思えば,当時はアナログテスター最後の時代で,CMOSタイプのLSIによってデジタルテスターが作られるようになったこの時期,ようやく安価で実用の高いデジタルテスターが登場して,徐々に置き換わりつつありました。

 アナログテスターは測定器の定番として,プロも現場で使っていますから,その形や操作方法はどれも同じようなものになっていて,あまり代わり映えがしなかったように思います。(しかしサンワのBX-85TRのようなアナログテスターは,薄型で色も形も格好良かったです)

 しかし,デジタルテスターはメーターのような可動部がないので部品レイアウトの自由度も高く,高さに制約のある部品がなかったことから,大きさも厚さもデザインもいろいろ試せたんじゃないかと思います。

 それから40年,今見るデジタルテスターは,どれも同じようなものになっています。プロが現場で使うと,安全で確実なデザインになっていくということでしょう。

 MD-150Cは,そうした試行錯誤があった時代の製品です。なんと言っても厚さがわずか20mmしかありません。カード型のテスターならこれくらい珍しくもなんともないのですが,テスターリードが交換可能なテスターでこの厚さは今はもうないでしょう。

 LCDは数字しか表示されず,単位の表示さえないシンプルなものですが,文字の大きさは今のテスターと変わりません。余計な情報が出てこないだけ視認性は高く,当時のLCDらしい独特の下地の色がレトロっぽくて好印象です。

 レンジ切り替えは自動ではなく,アナログテスターと同じく手動切り替えです。しかしこのロータリスイッチは良く出来ていて,そのまま回せばクリック感がありますが,少し押し込めばクルクルと軽く回転するので,レンジ切り替えもスムーズです。しかも大きくて操作しやすいです。

 電源スイッチは側面のスライドスイッチなのですが,これがまた使いやすいです。オートパワーオフがないのもよいです。

 もう1つ特徴的なのは,抵抗レンジで印加される電圧を2種類から選ぶ事が出来ることです。Hiだと1.2V,Loだと0.35Vで,通常は精度と速度から1.2Vを使いつつ,回路に入ったままの状態で抵抗を測定するときや,定格電力の小さいものを測定するときなど,電圧を下げたいときにはLoに切り替えます。

 この機能は使う人も少ないのか,今どきのテスターには搭載されていませんが,使いこなしという点で私は今でも欲しい機能です。

 そしてなにより,この格好良さです。色はクリーム色で,僅か20mmの厚さに今のテスターに見慣れた目からは平べったく目に映る幅広のボディです。レンジ切り替えが手動ですから,機能ごとに淡い色でまとめられた,たくさんの文字がわかりやすく書かれたパネルが,いかにも測定器らしくてワクワクします。

 この時代の測定器ですから,調整や自分で出来るように配慮されていました。内部の2つのVRで,直流電圧と交流電圧を調整する方法が説明書に記載されていました。

 さて,手に入れたMD-150Cは随分汚れていて,触るのも憚られるほどでした。傷だらけでしたし,クリーム色の筐体はすっかり日焼けして茶色くなっていますし,パネルの文字も薄くなっています。テスターリードもありませんでした。

 電池をとりあえず入れてみると動くようなので,早速分解して洗浄しました。そしてこの忌々しい日焼けをなんとかするために,レトロブライトを敢行しました。

 結論から言えば今回のレトロブライトは失敗です。漂白の程度が上ケースと下ケースで違ってしまったので組み立てるとツートンカラーになってしまいました。

 それに,パネルの文字はますます薄くなり,特に赤の文字はほぼ消えてしまいました。SANWAのロゴも消えましたし,淡い色のグルーピングもすっかりなくなっています。

 かなりがっかりしましたが,これを対策するのは難しいので,LCDの上にかかっている風防を磨き,組み立てを済ませました。一通りの動作確認をした後調整を済ませて,精度の確認です。

 もともと3.5桁ですから精度もクソもないのですが,一応いつものようにHP34401との比較をやってみたいと思います。

 いつもの標準電圧発生器の出荷時の値は以下の様な感じです。

2.500V・・・2.50165V
5.000V・・・5.00302V
7.500V・・・7.50454V
10.00V・・・10.00533V

 測定日からすでに7年も経過しているので,ズレていても仕方がないのですが,あらためて現在のHP34401Aを調べてみますが,1年前の値と比べてもほとんど変わっていません。

2.5018V
5.0034V
7.5052V
10.0063V

 次にHP34401Aの現在の値と,MD150Cとの比較です。

2.50V -1.8mV -0.0719%
5.01V 6.6mV 0.132%
7.51V 4.8mV 0.064%
10.02V 13.7mV 0.137%

 桁数が少ないのでどうしても差が出てしまいますが,それでもこの精度です。HP34401Aを3.5桁に丸め込んだら5Vと10V以外はドンピシャ,十分実用レベルです。

 表示の更新速度はこの時代のものとしてはごく普通の2回/秒で,この点は少々残念ですが,連続した変化を読み取るにはアナログテスターを使えと,使い分けが当たり前だった時代であることを考えると,特に悪い物ではないように思います。

 使い勝手でいえば,繰り返しになりますが横にある電源スイッチが使いやすいです。ロータリスイッチを回すタイプの淵源スイッチが多い中,片手で電源を入れることが出来るというのはなかなか便利です。

 そんなわけで,制度面でも問題なく,電流を含めた豊富なレンジを持ち,使いやすく見た目も格好いいMD-150Cは出番が多くて,すっかり私の常用機になっています。これ一台で何でも出来るという絶対性能の高さはありませんが,ちょっとした測定に便利で,いつも私の手元においています。

 逆の言い方をすれば,テスターなんてのはこの程度の性能があればそれでもう十分なんじゃないかということでしょう。

 昨日,MD-150Cを使っていてふと思ったのは,高価でもこれを当時手に入れていれば,もしかしたら別の人生があったかもなあ,ということでした。高校生の時に手に入れた初めてのデジタルテスター(そして人生で2台目のテスター)であるRD-500も随分と活躍してくれましたが,これがMD-150Cだったら,もっと測定作業が楽しくなったんじゃないかと思ったのでした。

 

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