洗濯機を買い換えました。
家事を効率的に片付けたい -> 乾燥機を常用 -> 斜めドラム という発想で選んだNA-VR5600は,当時のパナソニックの最上位機種で,2010年の4月に購入しました。
当時の記録を見ると,195000円にポイント21%だそうで,実質154000円。当時はたかが洗濯機に随分高い買い物だと思っていましたが,今にして思えば随分安く買っていると思います。
今のパナソニックの最上位機種はNA-VX8800というものらしいですが,これも家電量販店では随分安くなっているらしく,同じくらいの価格でなんとかなりそうな感じです。
しかし,今回はパナソニックはパス。
NA-VR5600が設計的に無理をしていると思ったからです。もちろん,今の製品は改良もされているだろうと思いますが,ホコリが詰まって壊れるなんてのは当時だって予想できたことですし,だからこそ空気の経路は短く,角を少なくするなんてのは素人でも考えつくことです。
しかし,何世代か経過したNA-VR5600でも,やっぱりそうした配慮が徹底しておらず,購入して3年もするとホコリに悩まされることになってしまいました。
繰り返しますが,この製品の次の世代から改良されているそうです。今の製品なら随分良くなっていることでしょう。しかし,改良されて良くなる以前に,どこが弱点になるか,その弱点を克服するのはどうするかを考えてくれない設計の製品を買うのは,やめておこうと思ったのです。
もう1つ,修理の問題です。パナソニックのサービスは悪くはありませんが,修理に来てもらった限りでは,今ひとつ融通が利かない感じがしました。洗濯機は,壊れたら即困るものです。なのになかなか修理に来てもらえないというのは,つらいものがあります。
世の中にはパナソニック以外にも,よい洗濯機のメーカーがあります。もうメーカーと言うよりも,設計者ですね。細かいところに気が付く気配り,気が付いた事を知恵と工夫で解決する技術力,入念な試験で品質を確かめる責任感という3つを持っている設計者が作った製品を選ぶ事が,買ってからの満足感に直結します。
洗濯機はすでに行き渡った家電製品ですが,それゆえに買い替え需要が確実に発生するため,数が読みやすい製品です。なので,未だに多くのメーカーが少しでも良いものを作ろうと頑張っています。
仮に8年単位で買い換えるとして,あと4回くらい買い換えられたら御の字でしょう。せっかくのチャンスですし,違うメーカーの,違う設計者の手による,個性的な製品を買って試してみたいじゃないですか。
そこで,今回はパナソニックを最初に外すことにしたのです。
さて,斜めドラムは大容量,衣類が傷みにくい,節水,乾燥が得意,洗濯物を取り出しやすいといったメリットがありますが,少なくともNA-VR5600を使った限り,私がいかんなと思ったのは,
・ホコリが内部に詰まって乾燥時間が長い,壊れる
・時間がかかる割には今ひとつ汚れが落ちない
・乾燥時間がさっぱりあてにならず,長い
・設定や洗剤量,水温や洗濯物の量などの最適化が手探り
・なんやかんやで電気代がかかる
・乾燥機を使うとしわくちゃ
・あちこち壊れる
ということでした。
パナソニックも,愚直にこれらを改善して,それをアピールしてくれれば私も考えたのですが,最近はやれスマホと連動などとおかしな方向にいってしまったので,もう背中を追えません。
ならどこがいいかなあと,乾燥の途中でエラーで止まるNA-VR5600を騙し騙し動かしながら考えていくと,ふとシャープはどうかなと思い当たりました。
シャープは数年前にどん底を経験しましたが,今は復活を遂げ,社員の士気も上がっているでしょう。白物家電の本拠地である大阪の八尾は私の実家の近くでもあり,川沿いの道路を走っていると,大きな工場が目に入ったものです。
勢いのある会社の製品は,きっと面白いはず。
現行機種を調べてみると,なにやらデザインにこだわったとかで,それも私に言わせるとちょっと古くさい感にする,あかぬけないデザインです。
こだわってこれかいな,と突っ込んだところで,技術的には設計者が頑張っているのがわかって来ました。
以下は現行の最上位機種である,ES-P110という機種についてです。
・ホコリが内部に詰まって乾燥時間が長い,壊れる
-> 乾燥後にホコリを自動で水洗いする
・乾燥時間がさっぱりあてにならず,長い
->乾燥時に機内を密封,湿度センサを使って正確な制御
外気温を測定したりして最短で乾燥
・時間がかかる割には今ひとつ汚れが落ちない
->35度のぬるま湯を使う
・設定や洗剤量,水温や洗濯物の量などの最適化が手探り
->最適な条件から外れた場合はなにがまずいかを教えてくれる
・なんやかんやで電気代がかかる
->ヒートポンプと電熱ヒータの併用で1回の洗濯にかかる電力量が560Wh
・乾燥機を使うとしわくちゃ
->脱水は軽く行って乾燥させるのでしわが出にくい
(NA-VR5600は乾燥を短くするために脱水を強烈に,かつ温風で行う)
・あちこち壊れる
->これはシャープだし覚悟の上
という感じで,なんともまあ,欠点を全部潰していて,しかも
それが全部理詰めです。久々に感動しました。
これ以外にも,トップレベルの騒音の低さ,最大消費電力が低い(910W),扉の内側のガラスにぶつけて洗浄力を高める設計で,しかも表面がデコボコと,私が好きな低消費電力と細かい気配り+創意工夫が見て取れます。
一番気に入ったのは,内部を明るく照らすLEDライトが付いていることです。洗濯物がグルグル回っているのを見ていると時間の経つのを忘れる私としては,せっかく中身が見える斜めドラムなのに,なんでライトがないのだろうと,以前から思っていたのです。
しかし,シャープややってくれました。ライトが付いています。
これ,私のような奇特な人でなくても,衣類の出し入れがとてもやりやすく,ドラム内部に洗濯物が残っていないかをぱっと確認出来るので,後述しますが嫁さんも絶賛していました。
よし,これにしよう,こういうのは直感だ,私はシャープの設計者からのメッセージを受け取った。
こういう大型配送商品は近所の電気屋で買うことにしている私は,娘が夜に熱を出し,翌日は休むだろうと思って看病のために休暇を取ったところ,すっかり元気になって学校にいってしまい,突然予期せぬ休日を過ごすことになった6月初旬のある日,思いつきでその家電屋さんに足を運びました。
正直言うと,ここはそんなに安くはないし,諸費用(配送費用やリサイクル費用)をまとめていくら,という考え方をしないらしく,きっちり別でとるので,最終的には随分高い値段になってしまうわけですが,まあ仕方がありません。
近所と言っても,結局遠方の配送センターから届くわけで,この量販店のグループならどこで買っても同じだったわけですが,何かあったときにさっと足を運べる便利さをありがたいと感じる事もあるかもしれません。
買う気満々でその洗濯機,ES-P110の展示を見ます。カタログも見ます。お店の人は今ひとつ積極的ではありませんが,最安値でなくてもそこそこの値段で頑張ってくれたら即決だと思って話を進めます。
値段はまあいい,しかし,どうにもこうにも,納期が悪すぎです。6月5日にお願いして,届くのがなんと6月27日です。さすがにこれはまずい。U91というわけのわからんエラーを頻発して,もう息も絶え絶えのNA-VR5600がいつ動かなくなるかわかりません。
支払いも済ませて,届くのを待っている間に壊れたら,安易にキャンセルでも出来ないし,今度は納期を最優先に機種選定をしないといけなくなります。それは最悪です。
でも,ないものはないです。ネットで調べても品薄のようで,なんとか壊れないことを祈って6月下旬まで待つか,と,支払いをするためにカウンターに座ります。
いざ,お金を出して支払うときに,ふと色違いがあるんじゃないのかと気になって「そういえば色違いはないんですか?」と聞いてみました。
答えはNo.この機種に色違いはありません。ドアの左右開きの違いはすでに確認済みで,どちらの納期も3週間でした。
やっぱりだめか,と思ったときに,カタログを見ていると,同じ形で色違いが目に入ってきました。そうだ,ES-G110という下位機種があるんだった。
ES-P110はシルバーで最上位機種,ES-G110は後に追加された下位機種でブラウンです。色の込みはこっちの方が私は好きです。
で,土壇場で店員さんに聞いて見ます。この機種だと,価格と納期はどうなっている?
余計な駆け引きなしで,もうずばっと出して下さいとお願いしたら,なんとまあ納期は10日,価格は15万円ジャストということでした。
もっと安いお店はあると思います。しかし,6月5日の時点で,この15万円はなかなかよく頑張った数字です。
さあ,ES-P110とES-G110の性能の比較です。4万円の価格差は妥当なのかどうか。
・温水洗浄がない
-> あるとうれしいけど,温水洗浄は90分もかかるから常用出来ない
・ハイブリッド乾燥がない
-> 乾燥時間が短く済み,フカフカになるハイブリッド乾燥はうらやましいが,どうせうちは大量の洗濯物を無理に乾燥させるので,ヒートポンプだけで十分。消費電力量は660WhとES-G110の方が大きいが,最大消費電力が680Wと低いことはメリット。
・センサが少ない
-> 足りないセンサは泡センサと水の透明度見るセンサ。いずれも洗剤の量が適当かどうかを見るもので,これも使い慣れたら必要なくなる。
・色が違う
-> むしろES-G110の方が好ましい
・風呂水ポンプが別売り
-> うちは風呂水は衛生上の問題で使わないから別売り大歓迎
・しゃべる
-> いらん
ということで,週末のまとめ洗いで,いつもの洗濯物の汚れがちゃんとおちて,ちゃんと乾いてくれれば,あとはあまり関係なさそうです。私が「シャープ頑張ってるな」と思った技術者の創意工夫は下位機種でもちゃんと備わっているので,こちらの方がお得だと思いました。
そこで,土壇場で機種の変更をしました。
その後搬入見積もりがあり,実際に設置されたのが先日の土曜日です。
早速使ってみましたので,軽くレビューです。
(1)大きさ,重さ
NA-VR5600に比べて,そんなに数字は変わらないのですが,高さが15cm程増えたことと,正面が平明になっていることで,随分と大きくなったという印象が強いです。
また,扉がフタだけではなく,パネルごと開くのでそれも大きくなったという印象を与えますし,事実,開くためのスペースがより大きく必要なので,お世辞にも同じ大きさですとはいえまえん。
重さは80kgもあり,どのみち一人で動かせるようなものではないので,もうどうでもいいです。
(2)デザイン
最近の洗濯機はこういうボクシーなデザインが流行のようで,確かに洗濯機らしからぬソリッドなデザインは悪くはないのですが,ハーフミラーのガラスとか青いLEDとか,もうそういうのはうんざりでした。
しかし,下位機種のES-G110はブラウン系のデザインで,扉の枠もES-P110のように安っぽくありません。いいですよ。
そして気に入ったのは,LEDです。ES-P110は白色LEDなんですが,ES-G110は電球色LEDです。これはちょっとレトロっぽくていいです。私もよく使います。
しかも,青や緑のLEDも,まるで電球を青や緑の透明プラ板を使ったかのような,黄色みがかった色になっていて,芸が細かいです。
こういう1980年代前半までの電球を使った表明や表示には独特の暖かさや見やすさがあり,私はもともと好きなのですが,まさかES-G110に採用されているとは思いませんでした。
(3)操作性
タッチパネルは思った以上に快適です。
快適なのですが,あくまで物理ボタンの置き換えに過ぎず,例えば洗濯コースの選択は直接触って選べず,洗濯ボタンを何度か押して選ぶことしかできません。
物理ボタンは誰が見ても押すものなので,そこを狙って押すと思うのですが,タッチパネルになるとどこでも押せてしまうわけで,押せるところの色を変えてもそこに支援を誘導するのはちょっと難しいのではないかと思います。
あと,チャイルドロックです。電源を切ってもロックがかかりますとあるので,私はてっきり電源を切っているときはいつでもロックされるものだと思っていましたが,違うんですね。ロック解除で電源を切れば,チャイルドロックでも扉は開いてしまいます。でも,この仕様だと子供の閉じ込め事故は起きてしまいますよね。
(4)消費電力
ワットメータで調べてみましたが,乾燥時でも300W程度です。時間はNA-VR5600と同じくらいかかりますが,消費電力が半分ほどですので,消費電力量としては半分近くになるんじゃないかと思います。
(5)洗濯
かなり綺麗になります。まあ,NA-VR5600はすでにシャワーが壊れていたので当てにならないんですが,それでもぱっとみて白くなったなとわかるくらいの差です。
そうそう,NA-VR5600は9kgだったのです。これが11kgになりましたので,かなり余裕があります。うちはちょうど10kgくらいだったので,11kgあるとありがたいです。
(6)乾燥
しっかり乾いています。NA-VR5600と同じくらいの量を詰め込んで,同じくらいの時間ですが,フカフカに乾いています。乾きムラもありませんし,臭いもありません。シワも少ないです。
ところで,乾燥終了時間ですが,さすがに密封に湿度センサだけあって,表示される予定時間の精度は高いです。
(7)洗剤の量
いろいろ考えてみましたが,NA-VR5600と同程度でよいことがわかりました。もともと記載量よりも少なめにしていますが,それでも十分です。
(8)ホコリ取り
NA-VR5600に比べてホコリを取るのが楽になりました。NA-VR5600は外れるフィルタは開かないとダメでしたし,2つ目のフィルタはそもそも本体から外せません。しかしES-G110は2つとも外せて,しかも開かずそのまま掃除機で綺麗に吸い込めます。楽ちんです。
(9)困った事
NA-VR5600では,ナノイー機能がありました。ES-G110にもプラズマクラスター機能があるのですが,NA-VR5600はドラム回転で使えるので,外干しの花粉やホコリを落とせるモードとして重宝していました。ところがES-G110はドラムを回転させて風を送り込むモードがなく,外干しの花粉やホコリが落とせません。
どうしてもヒートポンプが動く乾燥モードになるので,短時間だけ運転するという方法で対応するしかないです。
ところでこのプラズマクラスターを使った機能に消臭コースがあるのですが,これはなかなかよく効きます。臭いを水に吸着させて流してしまうと言うのも強力なのですが,そのせいで湿ってしまうのが難点です。
そうそう,子供の靴下が内蓋とパッキン隙間にはまり込んで,ずっと洗濯されないままになっていました。仕方がないので一度止めて,手で取りだしてドラムの中にもどしましたが,放っておけばこのまま洗濯されずに残っていただろうと思います。
(10)静かさ
同じ部屋にいるとNA-VR5600とそんなに変わらないなあと思ったのですが,階下の部屋にいると全然違うとわかります。ES-G110の方がずっと静かです。NA-VR5600だと夜中の洗濯は無理だったのですが,ES-G110ならなんとかなりそうです。
(11)ライト
さあ,私が一番期待した内部を照らすLEDライトです。もう少し内側を照らしてくれればよかったのですが,それでも洗濯物がグルグル回っているのがとても楽しく,ずっと見とれていました。
残念なのは,ずっと点灯したままにする設定がなく,いちいち消えてしまうことです。ずっと点灯させておけばいいのになあと思います。
(12)まとめ
3回ほど使ったに過ぎませんが,期待が大きかった分だけ,あまりに普通の洗濯機なので拍子抜けしました。NA-VR5600を大きく上回る新機能や仕上がりがあったわけではなく,それゆえに大きな感動もなかったのだと思います。
しかし,普通に汚れが落ちて,普通に乾いていることが,11kgという容量で起きていること,通常運転時に300W程度に過ぎないことを頭に入れると,この普通に洗濯が終わっていることが,どれほどありがたいことかと思います。
実は,全自動モードでは乾燥機能の上限である6kgまでなので,9kgほどある洗濯ものを突っ込むとエラーになります。
それでも続行すると4時間半もかかると出てきますが,結果はムラもなく良く乾いていて,フカフカです。よく頑張っているなあと思います。
電気代が目に見えて下がってくれるとうれしいですが,そういう期待を持たせるほど消費電力が小さいので,あとは耐久性の問題に気をい付けておこうと思います。
てなわけで,新しい洗濯機は同じ設置面積で11kgと2割も容量が増えて,消費電力は2/3に低下し,それでいて今まで以上の結果をもたらしてくれます。
いろいろなコースがあるのは便利ですが,一番いいのは「標準」を選べばいつでも最良の結果が得られることであって,ES-G110はその理想に近づいているなあという印象を持ちました。
洗濯中のドラムの回転を見ていると,そんなにブンブンまわすんかいなとおもうくらい,勢いよく回しています。NA-VR5600では「落とす」ことに重点が置かれていたようで,回転数は低めだったのですが,ES-G110はかなり勢いよく回します。
その分,洗濯物が良く撹拌されていますし,内蓋のガラスにもよくぶつかっています。もしかすると,同じドラム式とはいえ,汚れが落ちる仕組みには,パナソニックとシャープで少し考え方の違いがあるのかも知れません。
いずれにせよ,普通に綺麗になり,普通に乾くことのうれしさを,久々に思い出しました。もっと安く買えたかもしれないES-G110ですが,機能的には満足で,これからの梅雨と真夏の時期に,学校で暴れる子供がバンバン生み出す汚れ物をにへこたれないで,処理してくれることを期待したいと思います。
そして,簡単に壊れないことを願っています。