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2007年05月の記事は以下のとおりです。

VMS30mk2は蘇るのか

 さて,VMS30mk2のお話です。

 VMS30mk2は,これまでにも散々書いてきてた通り,オルトフォンのMMカートリッジです。厳密にはMI型と呼ばれるもので,オルトフォンはこれを「VMS型」とわざわざ呼んでいます。

 MMという方式はシュアーに多くのパテントを押さえられていて,多くの会社が回避のために似たような方式のカートリッジを作ったという過去がある(日本国内ではこれらのパテントが成立しなかったので,国内メーカーは国内に限ってMMカートリッジを販売していました。でも輸出はできなかったのです。オーディオテクニカはこの特許の回避にVM型を考案し,大きな顔で輸出していました)のですが,VMS型についてもその1つと考えてもらって構いません。

 VMS30mk2はVMS型における,1980年代の最高級カートリッジで,当時のカタログを見てみると35000円の値段がついています。針が楕円針をしのぐファインラインだったことも高価格の理由だったと思いますが,実際スペックは最高級にふさわしいものを持っていました。

 さて,私は高校生になっており,古いステレオ一式を格安で手に入れ,その中に含まれていたベルトドライブのレコードプレイヤーを,ようやくまともに動くレコードプレイヤーとして,不満がありながらも辛抱して使っていました。

 何から何までちゃちなプレイヤーだったのですが,カートリッジとスピーカーをいい物に変えると劇的に改善されると信じていた私は,付属のくだらないカートリッジではなく,私でも買うことの出来るような高級カートリッジがないものかと,探していました。

 そんなおり見つけたのはVMS30mkです。なぜか1万円で売られていて,喜んで買いに行ったことは以前ここにも書きました。

 しかし,今にして思えば期待していたほどの効果があったとは思えず,トーンアームやイコライザアンプなどが役不足であったことが理由だったのだと思います。

 中古でレコードプレイヤーをDP-2500に変えたときに,カートリッジをシュアーのME97HEにして,以来VMS30mk2の出番がなかったのですが,先日から様々なカートリッジを買うようになって,VMS30mk2も復活させたいなと思うようなったため。交換針を買ったのが少々前の話です。

 VMS30mk2の交換針は,純正は手に入らなくなった久しく,ナガオカのものもほとんど見たことがありません。JICOの互換品には対応品がなく,まさに八方ふさがりな状態なのですが,あるサイトで「VMS30Emk2用のものが使えた」とあるのを見つけ,私もVMS30Emk2の交換針である「D30E/2」を注文したのです。

 ところがこれは失敗でした。ひずみみが大きく,以前の針の方がずっといい音がします。また,少々レベルが大きいようで,これは互換性がないのだろうと結論しました。5000円が無駄になった感じです。

 そこでリベンジ。オルトフォンの海外サイトを見てみると,交換針の対応表が出ています。これによると,VMS20Emk2用の交換針「D20E/2」が,VMS20シリーズ全機種とVMS30mk2に使えるとあります。これは期待できると,早速注文しました。

 試してみますと,ひずみは激減しました。少なくともD30E/2よりは全然よいです。レベルは大きめなのですが,これが正解だったと胸をなで下ろしていると,別の場所がビリビリと歪みます。

 おかしいなと元の針に交換すると,歪みは出ません。

 一難去ってまた一難,やはりD20E/2もダメだったようです。

 純正と互換品を比べてみると,針の先端の位置がす故知違っていて,オーバーハングも違う値になってしまいそうです。歪みの原因がこれではないかと思いましたが,ずらして針を差し込んでも状況は変わりませんので,これだけが原因ではなさそうです。

 レベルが大きいのがとにかくおかしいと,針を手前に引っ張り出し,コイルと磁石の位置を少しだけ遠ざけることを考えたのですが,失敗すると怖いですから,どうせ使い物にならないD30E/2で実験です。

 結果は上々。不思議なことに,1mmほど針を引っ張り出すと,レベルもちょうど良く,歪みも減ります。まだ純正品には追いつきませんが,あれほどひどかったD30E/2がここまで良くなるのですから,期待大です。

 続けてD20E/2で同じ事を試みますが,不幸はここでおきました。ピンセットで針をアルミのパイプをつまむと,場所が悪かったのか,くちゃっとつぶれてしまいました。

 90度ずらしてつまんで復活刺せましたが,細かい作業ですので,針を保護するガードを外して,作業性を上げようとしたところ,手元が狂ってガードがくるっと回ってしまいました。

 が0度は引っ張り出してあった針を直撃し,あわれ,アルミパイプは真ん中から真っ二つに折れてしまいました。

 こうなると,もう諦めるしかありません・・・

 短くなったパイプに磁石を接着剤で接着したり,D30E/2の針にD20E/2の磁石を移植するなどいろいろ試してみましたが,どれもダメでした。

 そこで,純正の針をばらして,アルミパイプを切り出し,これでおれたパイプをつなぐという方法を考えたのですが,これも結局失敗。結果的に,純正1つと互換品2つの合計3つの針が全滅し,VMS30mk2は全く音を出すことが出来なくなってしまいました。

 さすがにこれはまずい。

 純正の針をとにかく元に戻そうと頑張ることにしました。切り出したパイプは短めだったので,磁石を差し込む時に接着剤を使えばなんとか固定できそうです。

 ダンパは黒く変色し,堅くなっているのがわかったので,D20E/2のダンパに交換です。VMS型にはサスペンションワイヤというリン青銅の細い針金が針のズレを防いでいますが,これは面倒なので使いません。

 なんとか組み立てて,ドキドキしながら音を出します。

 ?

 抜群にいいのです。伸びる高音,しっかりした低域,バランスの取れた中音域,もちろんひずみ波ほとんど感じません。抜群です。

 とりあえずなんとかなったということで,その日はもう遅かったので寝てしまい,翌日MJテクニカルディスクで性能を確認です。きっと悪いに違いありません。

 翌日テストしてみると,これがなかなか良いのです。高域は少なくとも16kHzはクリアしていますし,もともとVMS30mk2では良かったチャネルセパレーションについても,25dB以上確保できているようです。

 ダンパの柔らかさでも左右される共振周波数は8Hz程度で,うちでは普通の値ですし,レベル差もほとんどなく,なかなかよい成績であることがわかりました。

 ここで考えてみると,針が摩耗するのに約1000時間。LPレコードで1000枚以上に相当しますが,私が当時持っていたレコードは10枚程度。これをそれぞれ100回聞いてようやく針が摩耗するんです。

 どちらかというと,スタイラスクリーナーが流れ込んだり,経年変化でダンパのゴムが劣化していることが問題であることは以前から分かっていて,これを交換したことが今回の結果に繋がっているようです。

 何分素人のやったことですから,レコードを痛めてしまうかも知れません。だけど,少なくともこれだけいい音が出ているのだから,レコードに致命的な影響を与えるとはちょっと思えません。

 1万円を無駄にして,手元に残ったのはゴミとなりました。交換したダンパを提供してくれたことは褒めるべきですが,結局スタイラスチップはほとんど使われる事なく,捨てられてしまいました。もったいないことです。

 結果的に,VMS30mk2は蘇りました。かつて私が「いまいち」と思ったこのカートリッジも,今聞くと実に上品で,洗練された音がします。これを常用するのはちょっともったいないのでサブに置いておきますが,カートリッジを購入した金額の交換針を捨ててしまったことがちょっと悔しいところです。

 心配なのは,次に本当に針が悪くなって交換するときはどうしよう,ということなのですが,さすがにそれは当然先でしょう。その時には,もう諦めるしかないと思います。

 VMS30m2と先日の320Uを聞き比べると,似て非なる物という印象です。レンジの広さと解像度はVMS30mk2,しっかりした安定感は320Uの勝ちです。どちらも上品な音であることは同じなのですが,これだけ個性が見えると,面白いものです。

DL-103と320Uが加わった

 

 DL-103を買いました。

 とうとう買ってしまいました。なんか,散財しないと,じっとしていられないのです。

 土曜日,ちょっと体がだるかったのですが,一念発起して秋葉原の量販店に出向き,お目当てのDL-103を探します。ありましたありました。

 さらに,6月から値上げになる,オーディオテクニカのシェルも買っておきます。今までMG10という安物を使っていましたが,AT-LH13/OCCというちょっと高級なシェルを1つ試しに買ってみると,これがなかなか格好がよいのです。

 音は,正直わかりません。MG10でも十分と思いますが,高音がぼやけないようになったという感じがしました。まあ,せっかくMMとMCを使い分けるようになったのですから,とりあえずこのシェルも2つもっておきたいところで,それでついでに買うことにしました。

 店員さんを捕まえ,ガラスケースから出してもらうときに目についたのが,オルトフォンのMMカートリッジの在庫処分です。

 そういえば先日,オルトフォンが1980年代後半から販売していたMMカートリッジのシリーズを生産中止にした話が出ていました。

 オルトフォンといえばSPUシリーズに見られるMCカートリッジですが,私にとってはVMS型というMMカートリッジのイメージも強い会社です。オルトフォンが現行で持っていた2タイプのMMカートリッジ両方が終了となってしまうのは,ちょっと残念な話です。(DJ用途のMMカートリッジはあるのかも知れませんが,私にはあまり関係のない話です)

 オルトフォンのMMは,500番台と300番台の2つがあり,それぞれに針のタイプの違いで3種類に分かれています。後で針だけ交換してアップグレードが出来るのですが,さすがに300を500にするわけにはいきません。

 処分価格を見てみたのですが,さすがに500番台のものは1万円を超えています。あたりまえの話で,それでも安いんですが,衝動買いにしてはちょっと高い。300番台ですと1万円までで揃っています。

 私が買ったのは320Uというもので,価格は3800円くらいだったと思います。交換針だけでも3000円ちょっとするので,なかなかお買い得だったとは思います。

 まあ4000円ほどのカートリッジですから,それほど期待もしないで帰ってきました。

 早速試してみたのですが,これがなかなか。MMだからとパンチのある音を想像していたらちょっと違っていて,MMらしくない繊細な音が出てきます。プラスチック製の高級感のかけらもない外側と,T4Pコンパチの本体を無理にネジ止めするアダプターのため不格好,加えて芋虫みたいな不細工な形と地味な色で随分損をしていると思うのですが,ある人はクラシックもいける,と言うほどのカートリッジで,確かにそれは言い過ぎではないと感じました。

 針の形状が変わると高域の出方も変わるのですが,320Uは300番台の最上位だけあって,ファインラインです。高域も22kHzまで出るんだそうです。見かけによらず,非常に上品な音ですね。

 困ったのは説明書です。OMシリーズやコンコルドと共通のものらしく,取り付け方やメンテの方法など一般的なことがちょこちょこと書いてあるだけです。スペックや交換針の品名など,個別のデータはどこを探しても見あたりません。

 そもそも,針圧をあわせるのに,昔もらってきたカタログを広げないといけないというのは,どういうことだと思います。これが始めてのカートリッジだったりすると,途端に困っちゃうんではないでしょうか。

 てことで,価格以上の性能で,とりあえず満足。

 続けてDL-103です。

 これまた,何も加えず,何も引かず,の音ですね。だからといって情報量が少ない訳ではありませんし,刺激の少ない音を出すので全然疲れません。

 私の持っているカートリッジの中出は大柄で,針も太いのが目で見て分かりますからあまり期待してなかったのですが,私の印象は「すばらしい」です。

 V15でしか味わえなかった,ボーカルの定位が,他のカートリッジで味わえたこともちょっとうれしいことでした。他のMM,他のMCでは全然こういうことはなかったので,長年生き残っているカートリッジにはそれなりの理由があるんだなと感じます。

 冷静に聞いてみると,この音はFM放送の音そのものなんですね。NHK-FMがDL-103を使い続けていることはよく知られた話で,業務用の信頼性と性能が,アマチュアにも長年支持されているのですが,CDが出てくるころからエアチェックに勤しんだ私としては,DL-103の音がとにかく懐かしく,里帰りをしたような気分になりました。いい買い物をしたと思います。

 新しいカートリッジが手に入ると,それが奏でる音の違いがやはり楽しみで,これを積極的に活用しようと考え始めるとさらに面白くなってきます。

 反面,数が増えると出番のないカートリッジも出てきますが,それも仕方がありません。

 これで当面カートリッジの増強はなしです。安物ばかりではありますが,このラインナップでカバーできないレコードはないでしょう。

 それで,実はもう1つ話があります。VMS30mk2の交換針の話です。先日D30Eという,VMS30E用の交換針がVMS30mk2に使えるらしいと言う情報を元に互換品を買ってみたところ,歪みが多く使い物にならないという結果に落胆しました。

 しかし,一応3万円を越える値段の高級MMカートリッジです。復活させたいと思う気持ちは変わらず,オルトフォンの海外サイトを見て使える針を探したところ,D20EというVMS20E用の仮が使えると書いてありました。

 使えなかったのは,選んだ針が違ったからだなあと,針を買い直したのですが,それが同時に届いていたのです。

 これも試してみたのですが・・・続く。

KAマウントに改造する

 レンズが揃っていない*istDLに,1つでも多くのレンズの取り付けて試してみようと思っていたわけですが,こういう場合におあつらえ向きなレンズとして,タムロンのMFレンズがあります。

 タムロンは随分昔から,マウントが交換できるようになっていました。レンズだけ買っても使えず,マウントも一緒に買わないといけないという面倒臭さはありますが,別のボディに取り付けたい場合でもレンズを買い直す必要はなく,必要なマウントに交換するだけで,手持ちのレンズがそのままの性能で利用できるというのは大きなメリットでした。

 レンズマウントが共通になればなあ,と思った人は多いと思いますが,タムロンの方式はその答えの1つだと言えます。

 残念なことにAFレンズではこの仕組みは採用されず,他社と同じようにマウントごとにレンズも作り分けられるようになってしまいました。加えてMFレンズとマウントも製造中止になってしまい,既に過去の物となっています。

 交換式マウントであることが理由で,他のメーカーに性能面で劣っていては商売になりませんから,80年代の複雑なメカ連動にもきちんと程度対応していて,取り外し可能な機構と精度をよくも両立できた物だと感心します。

 私が持っているタムロンのMFレンズは,有名なマクロレンズで,SP90mm/F2.8です。

 昔からマクロレンズを使ってみたくて,F3を買ったときに購入しました。ちょうどこのレンズが出たときではなかったかと思います。

 ニコン用のAFレンズとMFレンズの両方がラインナップされていて,どちらにするか迷いましたが,マウントを交換できるということよりは,F3に使うレンズですから,MFレンズとして作られた物が欲しかったという理由で,MFを選びました。

 そもそも,マクロレンズでAFを使うことはないだろうと思っていましたが,ニコンの場合(他社の場合もそうですが),単純にAFが可能ということ以外に,レンズの情報をボディに電気的に伝える仕組みが用意されていることが大きな差になっています。

 それもボディがF3ですから,余り関係ないということで,MFを選んだのです。

 F3で使う限り期待通りのいいレンズだったのですが,一昨年から始めたカメラの修理によっていろいろなメーカーのボディを持つようになってから,マウントの交換を実際にやってみたいと思うようになりました,

 それで昨年,ES2で開放測光を行えるように,M42の開放測光対応のマウントを新品で買うことにしました。すでに量販店では在庫がなく,通信販売で在庫を探し回り,ようやく手に入れることが出来ました。

 そうこうしているうちに生産が終了,オークションでも高騰するようになってきました。

 *istDLを買った私は,手持ちレンズの少ないKマウントのレンズとして,このマクロレンズを使いたいと考えていたのですが,残念ながらKマウントは新品ではもう手に入りません。

 そこで,オークションで手に入れてみました。新品並みの値段になってしまったのですが,仕方がありません。

 手に入れたのは,KMやMXなどに使う初期のKマウントで,KAマウントには対応しません。一応タムロンからはKAマウントに対応できる物も併売されていたようですが,それは今回手に入りませんでした。

 しかし,*istDLには,KマウントとKAマウントの間に,大きな差があります。Kマウントだと開放測光が使えず,絞り優先オートやプログラムモードも利用できません。

 これはさすがに不便と考えて,手に入れたマウントを,どうにかKAマウントに改造できない物かと考えていました。

 KAマウントの仕様は原則非公開だと思われますが,自分で解析した人たちもいるにはいて,私もそういう先人達の財産を使わせていただきました。

 KAマウントには,たくさんの接点が用意されています。ところがこの接点の使い道は案外原始的で,接点がマウントと同じ電位になっているかいないかという2つの状態しか示していません。

 この方法を使って,2つの接点で最小絞りを,3つの接点で,開放絞りが最小絞りから何段開けたところにあるかをボディに伝える仕組みです。

 また,A/Mという接点があり,ここがマウントと同じ電位になっていれば絞り環がAポジションに,なっていなければそれ以外の位置にあることを示します。

 気が付いた方も折られるでしょうが,KAマウントは,単に電気接点が追加されただけではなく,絞り込みレバーの押し込み量で実際の絞りを正確に制御できる必要もあります。だから単純に電気接点の改造を行っても機能しないのです。

 とはいえ,タムロンのレンズは,ちゃんと絞り込みレバーの角度で絞りを制御するボディにも取り付る事が出来て,ボディによる絞りの制御も問題ありません。ということは,一応レンズ自体は対応可能だということです。

 今回手に入れたマウントは,絞りをボディから制御することが出来ないものですから,マウントに備わっている絞り込みレバーが正しい動作をする保証はありませんが,仕組みをつぶさに見る限り,レバーの押し込み量がリニアにレンズ側に伝達されているようなので,そんなに大きな誤差を持つとは思えません。

 さて,改造ですが,まずマウントを分解します。

 ボディに接する側のマウントに穴を開けるのですが,真鍮製だったので簡単員あなた空きました。ここに電気接点を用意するのですが,冷静に考えると,私の持っているレンズは1つだけ。このレンズ専用にしてしまえば,最小絞りF32,開放F2.8という情報だけを持たせればよいことになります。

 KAマウントのボディ側の接点は少々飛び出しており,接点のないマウントを取り付けると無条件にマウントと同じ電位になります。ただし,A/Mという接点についてはくぼんでおり,接点のないマウントを取り付けた場合でもマウントと同じ電位にはなりません。

 ということは,ボディと同じ電位になって欲しくない接点の位置に穴を開けて,接点が接しないようにすることで,なんとか対応が出来そうです。

 早速穴を開けてみましたが,勘違いもあって,開けてはいけない場所に穴を開けて焦りました。真鍮ですからハンダで埋めることができ,穴をふさぐことでリカバーです。

 そしてA/M接点については,Aモード専用のレンズとして割り切ってしまえば,ずっとマウントに接してよいことになります。FAJレンズのような感じですね。

 前述のように,くぼんだボディ側の接点に確実に接するようにしなければなりませんから,ここには以前ジャンクのFAレンズをばらしたときに出てきたピンとバネを移植します。

 読みが甘くて,十分にピンが引っ込まず,ボディ側のマウントに傷を付けたりしましたが,一応Aモードであることは認識してくれたようです。

 めでたしめでたしと思っていたら,この状態ではMモードの絞り込み測光が出来ないんですね。絞り優先オートで絞り値をボディ側で制御して撮影したところ,結構露出にバラツキが出ました。絞り込み測光ならこうした問題は出てきません。出来れば両方に対応したいなあと考えた私は,A/M接点が,最小絞りの時だけマウントと同じ電位になるよう,さらに改造を行うことにしました。

 A/M接点をスリーブで周囲から絶縁し,ピンの後端にあるスプリングが接する部分に穴を開けます。

 この穴の下には,絞り環と連動するアルミの輪があって,これにスプリングが接するようにしておきます。

 アルミの輪の塗装を剥がし,最小絞りの位置以外はテープを貼って絶縁します。

 これで試して見たのですが,最小絞りでもAモードになってくれません。導通を確かめると,どうもスプリングが接するアルミの輪がマウントと同電位になっていないようです。そこで塗装を剥がしたりして導通を確保したのですが,それでも時々Aモードにならないことがあります。

 そこで根本的な対策として,アルミの輪に接する別の部品からスプリングを出して,ここにきちんと接するようにしました。

 これで試すと,完璧です。

 ようやく,SP90mm/F2.8がKAマウントに出来ました。

 この状態でいろいろ試してみましたが,以前に比べて露出の精度も上がっていて,絞り優先オートやプログラムモードでも実用的に使えそうです。

 90mmのレンズは*istDLでは135mm相当の中望遠レンズになります。それでマクロですから,結構面白い使い方も出来るでしょう。

 マクロレンズとしては切れ味がそれ程すごいわけではなく,柔らかい描写を楽しむ物なわけですが,デジタル対応ではないこともあって,D2Hで試したときはあまりいい結果は出ませんでした。

 *istDLでも同じような傾向なのですが,あまり肩肘を張らずに楽しむために買ったのが*istDLです。細かいことは気にしないで,優れたレンズがバリエーションに加わったということを,素直に楽しもうと思います。

MJテクニカルディスク第3集

  • 2007/05/21 15:59
  • カテゴリー:散財

 「MJ無線と実験」というオーディオ雑誌があります。なにかとオカルト色の強いハイエンドオーディオの世界ですが,自作中心の雑誌として長い間親しまれてきました。昨年1000号というたいへんな記録を打ち立てたことも,少しだけ話題になりました。

 で,ここがオリジナルのLPを出しています。その名も「MJテクニカルディスク第3集“月の光”」です。

 第3集と言うからには第1集と第2集があったのでしょうが,私が知るのは第3集です。それもかなり昔から広告が出ていて,ひょっとするともう在庫が底を尽きるのではないかと,不安に駆られて買うことにしました。

 テクニカルディスクと名乗るくらいですから,技術的なテストが可能な音が収録されていて,先日無線と実験のバックナンバーをPDFにしようとスキャンをしているときに,このディスクを使ってレコードプレイヤーをチェックする方法を特集しており,私も試してみたくなりました。なにせ,今私が使っているプレイヤーは,中古のジャンク品を格安で買ってきて,以来素性も分からずに使ってきたもですので,ずっと心配だったのです。

 なんでもショウルームに行けば直接買うことができるそうですが,面倒なので通販にしました。ちなみにレコード屋さんでは売っていません。

 一緒に同じようなディスクでCDもあるので,こちらも思ったのですが,誠文堂新光社のホームページからは,1回の注文で複数の商品を買うことが出来ないそうで,買う場合は連絡を別途よこせ,とあります。メールを送ったのですが,2週間以上放置されてしまったので,仕方がないからLPだけでとりあえず注文をすることにしました。

 それが先日届いたのですが,2枚組で,1枚目は竹松舞というハーピストの演奏を収録したもの,2枚目はテクニカルディスクです。

 いやー,新品のLPなんて買うのは,何年ぶりでしょう。新品のLPを袋から取り出すときの感動を,久々に味わいました。

 2枚目には,溝を切っていないトラックがあり,ここに針を落とすと,インサイドフォースキャンセラーのチェックを行うことが出来ます。

 針は,レコードの溝に対してある角度で接していますから,ディスクが回転すると内側に引っ張られるような力が発生します。つまり,溝の左右の壁にかかる力がアンバランスすることになってしまい,これは好ましくありません。

 そこで,トーンアームには,外側に力をかける機構が用意されていて,内側にかかる力をキャンセルすることができます。この,内側にかかる力をインサイドフォースといい,これをキャンセルする機構をインサイドフォースキャンセラーといいます。

 私のトーンアープにもついているのですが,本当に正しく動いているのか疑問でした。

 試してみると,とりあえず正しく機能している様子です。インサイドフォースキャンセラーを0にするとスススーと内側に針が流れていきますし,インサイドフォースキャンセラーを増やしていけば,次第に針は外に流れるようになります。

 一般に,針圧と同じ重さにあわせるとされているインサイドフォースキャンセラーですが,それも針の形状による物らしく,確かに丸針のカートリッジならほぼ同じ設定で針の流れが止まります。しかし,楕円針やファインラインなどの特殊形状の針では,多めにかけないといけないようです。

 例えば,AT-F3/2では針圧の1.5倍ほど,AT7Vでは1.6倍ほど余計にかけないと,針の流れが止まりません。

 同時に針圧のチェックです。標準的な音量のトラックと,それより3dB大きな音の入ったトラックがあり,どちらも歪まないように再生できるならokというチェック法です。

 テクニカのカートリッジはどれも優秀で,標準針圧でどちらもクリアです。V15typeVxMRは少し重めの1.8gにしないと歪みました。面白いものです。

 手持ちのカートリッジで一通りこのチェックを済ませたあと,今度はトーンアームの共振周波数を見る事にしました。

 3Hzから20Hzくらいまでスイープする溝が刻まれたトラックがあり,ここに針を置くと,そのトーンアームの持つ共振周波数でシェルが大きく振動します。

 それを見てどうするのという話ですが,例えばレコードが反ってしまって,5Hzくらいの振動があったとします。もし,トーンアームが5Hzで共振すると,レコードのそりでトーンアームが大きく振動することになってしまい,音が途切れたり揺さぶられたり,ひどい場合には針が飛んだりするわけです。

 説明書によると,これが大体10Hzから13Hzくらいだとよいのだそうです。

 早速測ってみます。AT-F3/2やAT7Vは大体8Hzくらいです。V15typeVxMRで9Hzという感じです。ひどかったのはAT15Ea/Gで,5.5Hzでした。

 ところで,V15typeVxMRやME97HEはには先端にブラシがついています。これはホコリを取る,静電気を除去する,という目的以外に,レコードの反りなどで上下する振動をダンプするためのものとされているのですが,ダンパーとしての機能については目で見て確かめるわけにも行かず,あまり信用していませんでした。

 ところが,今回の共振の実験をすると,ダンパーのおかげでほとんど振動しないのです。確かに振動の方向が縦ではなく横なので効果的なダンピングが行われているとは思いませんが,それでも目で見て振動に気が付かない程です。

 この共振周波数を下げるには,トーンアームの重量を下げる必要があります。トーンアームそのものを軽くするわけにも,カートリッジを軽くするわけにもいきませんので,シェルを軽くすることになりますが,すでに私にシェルは軽いものですので,もう手がありません。AT15Ea/Gはちょっとひどいとしても,それ以外は8Hzくらいですので,諦めました。

 こうして素性を確認した上で聞き慣れたLPを聞いてみましたが,正直,あまり違いは分かりません。まあ,少なくともレコードに致命傷を与えないような状況であることが分かっただけで,よしとしましょう。

 で,1枚目をようやく聞きます。クラシックですので私にはあまり馴染みがありませんが,その割には楽しんで聞きました。特にB面のラヴェルは結構いいな,という感じでした。

 音そのものが余り良くないという評価をしている人もいますし,私もそんなに音の良さを感じたわけではありませんが,それでもLPでこれだけの音を録音しようというのは大変なことだろうと思います。


 一応,アナログプレイヤーの入り口くらいには来たでしょうか。あまり深みにはまるときりがありませんが,もう少しくらいは頑張って見たいところではあります。

 しかし,肝心のLPがなかなか手に入りにくい感じです。先日渋谷の中古レコード店に来ましたが,やはりそれ程の品数がないのと,全体的にお値段も高めでした。10年前なら,あるいは20年前なら,もう少しお手軽だったんだけどな思ったのですが,今度こそ本当にLPレコードは死滅するのかも知れません。

さようならニノミヤありがとうニノミヤ

  • 2007/05/18 14:47
  • カテゴリー:make:

 こないだの連休に帰省した折,日本橋のニノミヤで買い物をした話を先日書いたところだったのですが,そのニノミヤが事業廃止を決めたようです。

 唯一残る店舗である旧本店の「ホビックス」は5月16日にすでに営業を終了,地下一階の「パーツランド」も6月10日に営業終了の予定だそうです。

 「ホビックス」についてはすでに中古家電とホビー関連の販売会社に売却されており,処分セールなどは行わない方針だそうですが,「パーツランド」については処分セールを行うという事ですので,どこにも売却はされずに完全に廃業となるようです。

 本店の最上階にあったパーツ売り場がなくって久しく,パーツがあの場所に戻ってきて75年の歴史に幕を下ろすというのも,なんとなく帰巣本能っぽい感じがして,しんみりとしてしまいます。

 調べてみると,ニノミヤって老舗もいいところなんですね。1932年に電子パーツの卸売りとして創業(1945年に創業という話もあります),戦後の1947年には法人として改組し,高度経済成長期に家電販売で成長を続け,1987年に株式会社ニノミヤに商号を改めます。

 創業の地である日本橋と近畿を中心とした郊外に店舗を展開し,ピーク時の2001年には約964億円の売り上げをあげて,関西系の家電量販店では第3位の規模を誇っていました。そういえば私の実家の近くにもお店があって,1983年ごろには無線機もパソコンもたくさん列んでいました。もっと昔にはパーツも売っていたそうです。

 しかし,ビックカメラやヨドバシカメラ,ヤマダ電機など関東系の量販店の相次ぐ関西進出に加え,家電,PC販売の冷え込みとバブル期の過剰投資から急速に業績が悪化し,2003年頃には4割近くも売り上げを落として大ピンチに陥っていたそうです。

 そこで2003年に資本提携を含む支援先を探していましたが失敗,金融機関への弁済も滞るようになりました。2004年にはメーンバンクも貸出債権を外資系サービサーに譲渡するに至り,支援を打ち切られてしまいました。

 最終的に債権を手にしたモルガン信託銀行は2005年1月に会社更生法を申請し,日本橋を除く全店舗の閉鎖と同業者への譲渡を行いました。

 アメリカの投資ファンドローンスターがスポンサーとなり,日本橋でのみ4店舗を新装開店させるのですが,素人目に見てもかき入れ時にもお客はまばらで,雰囲気から真面目に復活を考えているようには見えませんでした。

 昨年にはえびす店も閉店して家電販売から完全撤退,ホビーの専門店「ホビックス」とパーツ販売の「パーツランド」だけ旧日本橋本店に集約され,大幅に規模を縮小して営業していましたが,昨日「このまま続けても負債が増えるだけ」と,営業の終了をホームページに掲載しました。

 ニノミヤといえばいろいろ書くべき事がある会社で,郊外に多数のお店を出店するというビジネスモデルで急成長した先駆けであったし,ソフトウェア販売の重要性に着目してソフト専門店を,ホビーとおもちゃに注目してホビー専門店をいち早く立ち上げるなど,実は業界のパイオニアでもありました。

 同社の顔として長年CMキャラクターを務めた林家小染さんの突然の事故死もありました。

 個人的にニノミヤは,近所のニノミヤと日本橋のニノミヤで違った印象がありました。

 近所のニノミヤは,日本橋が遠く憧れの地であった子供の頃に,その日本橋の空気を田舎に運んでくれる貴重な基地でした。前述の通り,田舎の商店街の外れにある小さなお店にも,PC-6001やPC-8001,X1やFM-7にMSXといったパソコンが所狭しと並べられ,ソフトや周辺機器の品揃えも随一でした。アマチュア無線機も列んでいて,同じお店が冷蔵庫や洗濯機を売っているとは思えないほど,ラジオ少年最終世代であった私には,夢の空間だったのです。

 中学生になった頃から日本橋にはよく行くようになったのですが,近所の店の数倍の規模のニノミヤがいっぱい点在する日本橋のパワーに圧倒された記憶がありますし,その専門性と規模からますます近所のニノミヤに好印象を持った覚えがあります。

 ニノミヤはさすがに電子パーツで始まった店だけあって,当時は本店と北側に位置するエレホビー,そしてパーツだけを扱う専門店であったパーツ店の3つがパーツの販売を行っていました。

 パーツ店は1フロアの小さいお店で,私は一度行ったきりでなくなってしまいましたが,本店とエレホビーのパーツフロアはずっと営業を続けていました。本店のレジのお姉さんがとても綺麗だったことは以前書いたとおりで,その人が小さな部品を価格表など見ずにすごい速度でレジをうっているのを見て,大変に憧れたものです。

 始めて本店のパーツ売り場に足を踏み入れたときの感動は忘れません。地元のスーパーよりも広いフロアのすべてが電子パーツで埋め尽くされ,右を向いても左を向いてもキラキラと輝く宝物が所狭しと並べられています。種類ごとに列んだ棚がフロアの端まで整然と続き,初歩のラジオでしか見たことがなかったパーツが手に取れる所にあることに,日本橋のパワーを見せつけられました。

 夏休みには優待販売のチラシが届き,パーツや模型,測定器や無線機などが特価で販売されたりして,まるで近所のスーパーの食料品のチラシのような勢いで,滅多に安売りされない品々が並んでいることに,子供だった私はワクワクしていたものでした。

 そういえば,日替り限定販売で,デジタルテスターが980円で出ると知って,弟と日曜日の朝に本店に列んだりしました。結局私は惨敗,弟は自分の目の前で最後の1つを買われたという屈辱的な結果になり,10円だったカッターナイフをそれぞれ買って,すごすごと帰ったことがありましたね。いい思い出です。

 そのうち本店のパーツ売り場はエレホビーに集約されてしまったのですが,同業のジョーシンが1番館でのみ行っていたパーツ販売を取りやめるに至って,ニノミヤも時間の問題と思われていたのですが,一向にやめる気配もなく続いていました。

 というのも,実はニノミヤのパーツ売り場は各店舗に属しておらず,本社の法人営業の部門に属していたからです。

 在阪の電機メーカーなど,大手を長年にわたって顧客として持っていたパーツの法人営業は非常に安定した事業であって,現在に至るまでずっと黒字だったそうなのですが,これをもしやめてしまうと50年以上にわたる顧客に対する信用の問題もあったりして,やめるという事はなかったようです。

 確かに,ケースやスイッチなど半導体以外の部品において,シリコンハウス共立とニノミヤでは取り扱いメーカーに格段の差がありました。ニノミヤの方が有名メーカーのものを多数持っていましたから,やはり大きな会社は違うんだなあと思ったものです。

 今でこそシリコンハウス共立は規模も大きく,品揃えも豊富になっていますが,20年ほど前は実質1フロアで,限られた物しかありませんでしたから,ニノミヤと共立の2つでようやくすべての部品が揃ったものです。だから,ニノミヤは私にとっても欠かせないお店でした。

 それに,半導体から抵抗からコンデンサからケースやスイッチまで,すべてのものが一箇所で揃うというお店は秋葉原でも珍しく,ニノミヤは便利で貴重なお店だったのです。

 どんなに大きくなっても創業の地である日本橋で創業の業種である電子パーツ販売を続け,それが子供にも優しい良心的なものであったことは賞賛されるべきことで,特に知識が必要な代替品を中心に探すことになるシリコンハウス共立とは違って,雑誌に出ているそのものの部品が(高価でも)手に入ることは,初心者にはとてもありがたいものであったはずです。。

 今年が2007年ですから,創業から75年。最後まで電子パーツの販売を続けたことはえらいなあと思います。

 日本橋から思い入れの深いお店がまた1つ姿を消しました。風前の灯火で,こうなることは既に想像していたことなのですが,実際になくなってみるととても寂しく,1つの時代の終わりを強く感じます。

 これで日本橋でもシリコンハウス共立とデジット,そしてマルツ電波の3店舗に電子パーツ店が集約されることとなりました。

 連休に,本当は共立で買う予定だったポケットベンダー(小型のアルミ板折り曲げ器です)を立ち寄ったニノミヤのパーツランドのポスターで見かけ,店員さんに問い合わせて買ったのが最後の買い物となりました。

 この時もらったロゴ入りの買い物袋を,なにか胸騒ぎがしたので捨てずに残してあったのですが,偶然とはいえお別れになってしまうことに,やはり悲しい思いがあります。

 私が一番楽しかった時代を共に過ごしたニノミヤに,お礼を言いたいです。ありがとうございました&ご苦労様でした。

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