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Optio RS1500のバックアップ電池

 娘が部活の合宿に出かけたおり,珍しくコンパクトデジカメを持っていくと言い出しました。スマホで撮った方がよほど綺麗だし写真の整理も楽だと思うのですが,撮影していて楽しいんだそうで,まあ私もわかる気がします。

 彼女のお気に入りは,PENTAXのOptio RS1500です。そう,12年ほど前のクリスマスの夜,会社の帰りに自宅の近所の量販店のワゴンセールで,わずか5000円でたたき売られていたものを救出して以来,うちのカメラになったものです。

 でもまあ,スペックのどこを見てもスマホに負けてますわな。これを使う理由は,スマホの電池を温存するか,親に時間制限をかけられたスマホを持たされている中学生が仕方がなく使うか,そんなところです。

 LCDが悪いので撮影時の画質が悪いように思いがちですがさにあらず,撮影された画像をPCで見てみるとなかなかよく頑張っていて,そこはさすがにデジタルカメラを名乗るだけあるとおもいます。

 大きさも手頃ですし,手に馴染むスクエアな形,操作もややこしくなく,電源とシャッターの2つのボタンで基本大丈夫というのも,なかなか魅力的です。

 マニアックなところでは,今やロストテクノロジーとなったCCDによる独特の色合い,smcPENTAX銘の4倍ズームレンズは非球面レンズを3枚も使った5群6枚(シリーズ最低のスペックなんですけどね),35mm換算で27.5mm~110mmまでと無理のない範囲で常用域をカバーしています。

 AFはいっちょ前に自動追尾に顔検出対応,シャッター速度も最高1/2000秒と十分で,メモリーカードを忘れたときでも21MBの内蔵メモリで急場をしのげますし,電池寿命はCIPA基準で210枚でと普通の使い方なら1回の旅行をこなせるでしょう。

 それから,PENTAXがHOYAの傘下にあったあの時代のカメラなので,機銘板はHOYAになっているところに,事情を知っている人は涙があふれるのを抑えきれないことでしょう。そんなカメラです。

 あ,着せ替えとか,そんなのはどうでもいいです。

 残念なのは,この時期のデジカメにありがちなある持病を,RS1500も抱えていることです。それは,時計や設定のバックアップ電池です。

 デジタルカメラは,一般に駆動用の電池を本体から外して充電しないといけないので,時計や設定をバックアップする小型の電池が内蔵されています。昔はコイン型のリチウム電池だったりしたのですが,電気二重層コンデンサで数分だけ持たせるようなものもありました。

 しかし,数分ではさすがに短いという事で,腕時計に内蔵するボタン電池と同じようなサイズの二次電池が2000年代後半頃から使われるようになりました。正極にリチウムとマンガンの複合酸化物,負極にはシリコン酸化物を使ったものだそうで,公称電圧は3V,サイクル寿命は100%充放電で100回程度,20%充放電だと1000回ほどOKという二次電池です。

 これだと丸一日のバックアップが出来るという事で,こぞってこの時期のデジカメに採用されたのですが,なんと言っても電池として機能する寿命が短く,僅か2,3年で死んでしまう電池が続出しています。

 従ってこの時期,そう,コンパクトデジカメ最後の時代ですが,現在まで生き残っているデジカメのほとんどは,バックアップが機能しないものとなっています。

 交換すりゃいいじゃないかと思うでしょうが,交換はメイン基板をごっそり交換することになるので高額です。というか,今はもうどこも修理などやってません。

 対象となるのはRS1500はもちろん,H90などもそうですし,なんとPENTAX QやK10Dだって含まれています。もう全滅と言っていいでしょう。
 
 とはいえ,バックアップが出来ないだけで,充電が終わった駆動用の電池を入れて設定し直せば撮影はなにも問題ないので,そのまま放置するのが一番という話もありますが,そうも言ってられないことが先日起きました。

 娘が合宿から戻ってきて,写真をみんなで見ていたときのことです。ある時刻から撮影日時がリセットされて2011年になっていました。これは悲しい。

 どうも,電池ブタに連動した電源カットのスイッチが誤作動して,電池が一時的に切り離されてしまったようなのです。そういうへんな仕組みを入れることも問題だと思いましたが,バックアップ電池が生きていたらこんな悲しい事は起きなかったでしょう。(本人はけろっとしていましたが)

 娘に聞くと,まだ使いたいとのこと。よろしい,ならば修理をするまでです。

 RS1500は,以前CCDにホコリがついたかなにかで一度分解して(しっかりストロボのコンデンサで感電しました)いますが,メイン基板を外すのは初めてでしょう。さっさと分解して基板を確認します。

 そこに,レンズ豆くらいの電池がマウントされていました。リフロー対応のタブがついたMS414GEというものです。直径4.8mmで高さが1.4mmと小さく,容量は僅か2mAhしかありません。サイクル寿命は100%でわずか50回です。

 外そうとしてハンダゴテをタブに当てたところ,電池にも熱が加わってしまったみたいで,なんと膨らんでしまいました。破裂すると厄介です。ここで作戦変更,まずタブと電池をニッパーで切り離し,電池が基板から外れてから,タブをハンダゴテで取り除くことにしました。

 手持ちの交換用の電池を探したところ,昔秋月電子で買ったMS621FEが見つかりました。直径6.8mmで高さ2.1mmとかなり大きくなりますが,容量は5.5mAhと2倍以上,サイクル寿命も2倍の100回です。(ちなみにこれを買った当時ならMS414GEも買えたようです。今は販売休止になっていますが・・・)

 ぱっとみたところ,なんとかこの大きさの電池ならおさまりそうです。ショートが怖いのでカプトンテープでしっかり絶縁して基板に取り付けます。正極についてはリード線でジャンパを飛ばします。

 基板をフレームに取り付ける時に,電池がフレームにぶつかってしまうので,フレームを削ってぶつからないようにしますが,強度が落ちてしまうことは覚悟しないといけないでしょう。まあ,仕方がありません。

 さっさと組み立てて,駆動用の電池を入れます。バックアップ電池も2次電池ですので,駆動用の電池を入れてから丸一日かけて充電がなされ,その後ようやく24時間のバックアップが可能になります。

 翌日試してみると,5時間ほどはバックアップ出来ているようです。これなら便利に使えるでしょう。

 容量としてもサイクル寿命としても倍になっている電池ですので,あと数年は動いてくれる物とおもいます。その後はまた修理するか,いよいよ捨てるかという話になると思いますが,娘が持ち歩いている間だけでも,無事に機能してもらいたいものです。

 ところでそのMS621FE,現在秋月電子では在庫切れ。入荷予定はあるようですが,価格が120円と安かっただけに,値上がりは覚悟しないといけないでしょう。リフロー対応のMS621Rは1個150円とややお高いですが,まだ在庫はあるようです。

 もう壊れるまで使い続けることにした,PENTAX Qの皮を被ったPENTAX Q7も,同じ症状が出ています。いつか修理をしないとなと思っていますが,MS621GEが使えるなら,秋月電子で販売が再開されたら検討してみましょう。

 

D850を点検に出す

 新宿にあるニコンのショールーム,ニコンプラザにあるサービスセンターでの点検は,簡単なものであれば,かつては無償でした。手厚いサポートがニコンのありがたさで,他社のカメラよりも割高だったとしても,結局こういう所で安くつくというのがニコンファンの言い分でした。

 とはいえ,そんなうれしい話が続くはずもなく,点検が有償になるに留まらず,サービスセンターの相次ぐ統廃合,サービスセンター窓口の完全予約制に移行してから,ニコンプラザの雰囲気も随分変わったように感じます。

 いい意味でも悪い意味でも保守的(でも結構進歩的)なニコンのことですから,ただただサービスの低下でユーザーの心が離れてしまうことを良しとせず,実はニコンプラザに来た人を対象に,レンズやボディの購入で,有償で行っている点検パックの無料券を配っています。

 4000円近い点検パックが,内容そのままに無料になるというのですから,形を変えてかつての手厚いサポートが戻ってきたような物で,古いニコンユーザーの私としてもうれしいのですが,条件がなかなか厳しく,無料券をもらうための申込用紙をスタッフさんが日付を記入した形で受け取って,3ヶ月以内に新品のレンズかボディを購入,申込書にレシートと保証を一緒に持参してようやくもらえます。

 もらった無料券は当日から1年間有効なのですが,肝心の点検パックは完全予約制なので,当日いきなりその無料券で点検をしてもらおうという話には出来ません。どうしてもと言うなら,予約を事前にとって,その日に無料券を入手し,その日のうちに使うという作戦を立てる必要があります。

 まあ,そこまで必死にならなくても,ニコンプラザに新しい物を見に出かけてみたらなんかいいことありましたくらいの気分でいたらいいんじゃないかと思います。

 さて,私はこのサービスを最近まで知らず,こういうことを大々的に宣伝せずにこっそりやるところがまたニコンらしいんですが,今年買ったZ24-120mmF4Sで1枚,Z50mmF1.8Sで1枚の合計2枚のプラザ点検パック無料券を手に入れました。

 これでなにを見て頂こうかなと思案したところ,買って年月が経過したD850と,一番大切にしたいレンズであるAF-S70-200mmF2.8Eの点検をお願いすることにしました。

 土曜日の12時に新宿のニコンプラザに予約を取り,約3時間後に引き取ることになりました。さすがに2つですので時間がかかるのは仕方がありません。その間,新宿東口の北村写真機店に足を運んで中古カメラの数と値段の高さにクラクラし,西口のヨドバシでフィルムと薬剤が絶滅寸前になっていることをみて気分が沈み,なかなか潰れない時間に足を棒にしながら,3時頃に引き取りに再度ニコンプラザに。

 どれも問題なしですよ,と言って欲しかったのですが,残念ながらD850に1つだけ問題がありました。センサーに取れないゴミが2つほどあるという,なかなかショックな話です。

 どうもゴミが内側に入り込んでいるらしく。これを解決するにはセンサーの交換しかないと言うことでした。ちなみに交換の費用は15万円ほどらしいです。

 ただ,対応してくれた方が言うには,F16まで絞り込んでようやく見えるかどうかと言うところで,普通の撮影ではまず気にならないということです。

 何に気を付ければ防げたのかと聞いてみたんですが,これはもう防ぎようがないとのことで,そういうことなら気にしても仕方がないですし,実害がないなら正常だと思って使うことにしました。

 後は点検と清掃,フォーカスの調整をやってもらいました。フォーカスはあろうことか後ピン傾向にあったそうで,再調整をして頂きました。いや,購入当初から後ピン気味だったんですよ。それを微調整で使っていたのですが,これまでにも修理と点検を何度かお願いしていたのに,今回初めて調整してもらえたというのも,ちょっと複雑な気持ちです。

 レンズは全く問題なし。とはいえ,中古店への売却時の査定と違って重箱の隅を突っつくような確認はないでしょうから,写りに影響のあるゴミやクモリがないという程度に受け取ることにします。

 AF-S70-200mmF2.8EはAFも高速ですし,VRも搭載しているメカトロニクス満載のややこしいレンズです。こういうのはいつ壊れるかわかりませんから,それらが問題なく動作しているというのがわかったことだけでも有意義な点検でした。

 これだけ点検して頂いて無料というのもうれしい話で,帰宅後早速チェックしました。先にレンズですが,こちらは確かに問題なし。

 次にD850ですが,指摘されたゴミは私には見つけることが出来ませんでした。F16まで絞り込んで,白い壁を撮影したんですが,ゴミは全然見当たりません。仮に本当にゴミがあったとしても,このレベルであればゴミなどないのと等しく,気にする必要は全くありません。

 しかし,別の問題が・・・白い壁を撮影したから見つかったようなものなのですが,LCDにムラがありました。右側に丸い模様のような村が3つほどあります。違う画像でも同じ位置に出ますし,拡大しても変化がありませんので,画像にあるのではなく,LCDにあるムラだと思います。

 面白いのは画像が黒すぎても白すぎても見えなくて,明るめのグレーが一番目立ちます。とても気になり,LCDを拭いたり保護フィルムを外してみたりといろいろ試しましたが変わらず。これこそLCDそのものの問題で,交換しかないんじゃないかと思います。

 画面のど真ん中に出ているわけではないですし,他に修理すべきものが出てきた時に一緒に修理するつもりで,今はこのまま使うことにします。

 それから,AFが動作しないと言う問題が頻発するようになりました。時々AFが動作しなくなり,レンズを付け直したり,ボディ側のAF-Mを切り替えると動くようになることは元々起きていたんですが,今回はこの問題が頻発します。いよいよ壊れたのかも,と思っていましたが,数日の間に頻度は下がり,今は全く問題が出なくなりました。

 AFが効かない時,そのレンズはMFのレンズとして扱われるようです。マウントの電気接点の汚れが原因として指摘される症状ですが,清掃後も再現するのでおそらく内部の問題でしょう。嫌だなあ。

 ついでにいうと,電源OFF時にボディに振動を与えるとメモリカードのアクセスランプが転倒するという変な問題も見つけました。詳しく調べてみると,MB-D18を使っている時に限られ,どうもロックレバーの位置を検出するスイッチの接点の不良による誤作動ではないかと,そんな感じです。

 そもそも振動など与えるなという話ですので,これも様子見ですね。

 そんなわけで,まだまだ使えるD850だと思っていたら,さすがに初期ロットだけに完調というわけにはいかなそうです。かといって完全修理を行うとお金がかかりすぎますので,今回の点検で実用上は全く問題なしという結果を支えに,どんどん使っていこうと思います。

NIKKOR Z 50mm f/1.8Sを買いました


 長年使っているクレジットカードのポイントが随分とたまっていて,これをamazonのギフトカードに交換したところ,レンズが1つ買えるくらいになっていました。

 こういう臨時収入は,小出しに使うのではなくまとまった物を買うに限ります。ちょうどニコンのキャッシュバックが始まったこともありますし,最初からレンズを買うという前提で,なにを買うかを選ぶという贅沢を味わうことにしました。

 本命はZ35mmF1.4でした。発売前にニコンプラザで試し撮りをしたところそれなりに良い感触を得たのですが,これは早々に候補から外れました。

 確かに,F1.4という明るさには魅力がありますし,絞りの開閉で画質を操ることができるというのは実に面白いはず。Sシリーズではないとはいえ,Fマウント時代のレンズに比べてもずっと高画質という話もあって,好きな35mmという画角のレンズを最初は本気で買うつもりでいました。

 しかし,周辺の収差の大きさが結構あることが気になりました。これは誰でもそうだと思うのですが,主題を画面中央に置く事ってほとんどないですよね。高い画質になる中央をわざわざぼかして,絞らないと改善しない収差の大きな周辺に主題をおくということを意識しないといけないのは,ちょっと面倒かなと思ったのです。

 私はボケボケの写真を好みませんので,開放で撮ることはまずないのですが,それだったらF1.4にこだわることもありません。むしろ構図の自由度を優先したいです。

 もう1つ,これは根拠のない不安なのですが,ひょっとしたらタムロンの製造,あるいは設計と製造かもしれないという話も耳にしました。本当の所はわかりませんし,仮にタムロンがかかわっていてもニコンのブランドで出ているのですから関係はないのですが,私はどうもタムロンとは相性が悪く,これまで好感触を得たレンズは1本もありません。世間では絶賛されているレンズでもそうでした。

 これはタムロンの設計思想とも,製造の品質管理とも,相容れない物があることを意味していて,何度かがっかりした結果として,とにかくタムロンには近づかないことを誓ったのです。

 根拠のない憶測,噂に過ぎないので信じるのもバカバカしいのですが,万が一その画質が気に入らないときにタムロンじゃないかとモヤモヤするのは,やっぱり嫌だったのです。

 個人的には,DX用の24mmF1.7が本当にいいレンズで,予約して買って感激し,後日その設計者と設計思想を知って腑に落ちたということがありました。Zfcと一緒に手放しましたが,この設計思想がFXのレンズで実現した物として35mmF1.4が開発されたならいいなあと思っていたので,どうも違うぞと知った時に興味を失ったのです。

 ならその後出たZ50mmF1.4はどうでしょう。これもF1.4シリーズとして同じような傾向のようで,Fマウント時代のガウス型の50mmF1.4とし比べれば飛躍的な進歩があるとはいえ,価格を考えると周辺部の画質が低下することを「味だ」と納得するのも難しい気がしました。

 ついでに言うと,価格の安いレンズというのは,暗いときの発色やコントラストが今ひとつで,結局補助光に頼るしかなくなります。単にセンサの感度を上げれば良いというものでないと思っていて,そのレンズが実質的に扱える光の量は,やはり安価なレンズでは少なくなると言うのが私の考えです。

 そこで,F1.8Sシリーズに目を向けます。35mmも50mmもZマウントの初期ラインナップで,設計が古いです。新しいマウントですので設計のノウハウはまだ蓄積されていないでしょうし,当時の流行を反映しているので今後のレンズとして疑問もあります。

 一方で,Fマウントという呪縛から解放された設計者の高揚感のような物が画質やレンズ構成から感じられ,特に画質に妥協しないSシリーズには失敗がないだろうという安心感があります。

 同じSでも,Z24-70mmF4Sではあまりに普通過ぎてがっかりしました。同じ事が趣味性の強い単焦点レンズでも起こるかもしれないという不安はありましたが,キャッシュバック対象であることも鑑みて,35mmF1.8Sと50mmF1.8Sから選んでみましょう。

 どちらも登場から時間がたっていて,初期のZマウントレンズを代表するものだけに,画質に悪い評判はありません。実は発売が古いことで価格がこなれているというのもあり,実はちょっとお買い得感があります。

 35mmもいいんですが,ちょっと高い。50mmなら安い上にF1.8という明るさを楽しめそうです。在庫も豊富ですし,キャッシュバックで7万円ほどになりますから,ほぼ登場時の価格になります。これはいいかも。

 ということで,前置きが長くなりましたが,新しいレンズの選定はZ50mmF1.8Sに決定です。

 amazonに在庫があるのでさっさと手配し,なんと当日に届いてしまいました。

(1)外観,質感

 さすがにZマウント初期のレンズで,気合いの入った質感です。ただ,これが好ましいかと言えばそんなことは全然なく,寸胴で不細工,コントールリングがない,フォーカスリングのローレットが金属製で指のかかりが良くない上に汚れが溝に入り込んで汚い,ということで,シンプル過ぎるデザインも悪ければ,実用面でも今ひとつで,ぱっと見た古くさささえも感じます。

 いってみれば,Zマウントレンズのノウハウというのは実はデザインじゃないかと思うほどで,比較的新しいレンズと並べてみると,新しい方が随分と格好がいいのです。確かに初期のZマウントはボディもレンズも不細工とさんざんに言われていましたから,その後の7年間で少しずつデザインを調整してきたんだろうと思います。Z6もZ6IIIと比べたら,よく似ているけど全然格好いいですよね。


(2)画質

 これはもう言うことなし。期待通りでした。中央部も周辺部も開放から使えるキレのある画質は,低照度での色やコントラストの低下も小さく,構図の自由度も十分です。

 グラデーションも見事ですし,ボケも想像以上に綺麗です。あいっかり色も乗ってきます。

 フォーカスアウトでじわじわと滲むような美しいボケではないのですが,主題をしっかりと浮かび上がらせる自然なボケが,前にも後ろにも出てきます。ニコンの言う三次元HiFiとはちょっと違う傾向かなとは思いますが,この解像度が画面全体で得られ,照度の差による画質の差も小さいという点で言えば,被写体との対話だけに集中出来るレンズだと思います。

 でも,こういうのって,10年ほど前のシグマのArtシリーズが先鞭を付けたんですよね。今,こういう傾向の画質ってちょっと飽きられているようにも思うので,ちょっとした古くささがあるのもまた事実です。

 Zが逆光に強いことはこの世代のZレンズが定着させたものだと思いますが,さすがにこの50mmの逆光に強く,フードは必要ありません。保護用として私は常用していますが,逆光に強いレンズというのはしっかり黒が沈みます。素晴らしいです。


(3)AF速度など

 特に低速とも高速とも思いませんが,今どきのレンズとしては当然達成しておくべき速度だと思います。その点で言えばなにも不満はありませんが,最新のレンズに比べるとやはり緩慢な感じがします。音もやや大きいですしね。

 ついでにいうと,フォーカスリングの滑らかさはこの価格の単焦点レンズに相応しい滑らかなもので,重すぎず軽すぎず,しっとりとした感触は往年のマニュアルレンズを彷彿とさせます。ですがあまり出番がないのが残念ですね。


(4)まとめ

 本当は像面湾曲とか各収差の検討もしたいのですが,像面湾曲は補正がかかるし,他の収差も目立ったものはないので,特に悪いとことが目に付かない,とても優秀なレンズだというのが結論です。

 こういう,場面も構図も選ばないレンズこそ,常用レンズに相応しいです。私はすでにZfにおけるボディキャップレンズの座をこのレンズに与えました。

 ただ,デザインの古さはいかんともしがたく,光学系はそのままに現在のデザインテイストに合わせた(ついでに価格も改訂して)II型にリニューアルされるんじゃないかと思ったりしています。

 私の場合,こんなふうにゴムリングを取り付けてみました。

 20241107141708.jpg

 このゴムリング,実はAF-S28-200mmF4-5.6の形見です。発売日に予約した高倍率ズームでしたが,下取りに出そうとすると壊れていて,ゴミになりました。内部のフレキを貼り付けてあった両面テープが浮いてしまって,ズームすると切れてしまったのですが,前玉やゴムリングだけ残してあったのです。

 前玉は高性能虫眼鏡としてつかっていますが,ゴムリングは,これがZ500F1.8Sにぴったりの大きさでした。

 左手の指が触る部分にゴムリングをまき,後はパーマセルテープで整えます。

 理想を言えば現行のZのレンズのリングがいいんですが,Fマウント時代のデザインのリングも悪くはないでしょう。見た目にも,感触も,実用性も,1つのゴムリングで解決するんですから,もっといろいろ試してみたいものです。

 さて,購入から数日,このレンズばかりで撮影しています。頭の中で描いた画像との違いが少なく,構図や光の加減を考えないというずぼらさから,このレンズの便利さを味わっているところです。

 ズームでカバーする画角ですが,F1.8が開放から使えることのメリットは大きいです。35mmと50mmで迷いましたが,今の私には50mmの方が楽しいですし,これは選んで正解だったと思います。

 んー? Z24mmF1/7のような楽しさがないのは,なんでかなあ?

素敵な17,PENTAX 17

 フィルムカメラを復活させるという,日本の大手カメラメーカーがやるようなことではないプロジェクトが立ち上がり,言葉は悪いですが半信半疑で眺めていた私は,先日そのプロジェクトが成就したことを知りました。

 PENTAX17の発売です。

 いやその,本気で驚いたというわけではなく,昨年の秋頃には多分出るだろうなあと思っていたのですが,こういうのって土壇場でコケたりするものですし,やっぱり発売にこぎ着けたことには素直に感動しました。

 うがった見方をすればですが,ちょいちょいプロジェクトの進捗状況を公開することで,上層部も含めて引っ込みがつかなくなくなるように,中の人が仕向けたのかも知れませんし,とはいえビジネスの現場は情でどうにかなるような甘いものでもないので,進捗状況の公開とそれに対する反応の良さがあったことは想像に難くないです。

 もちろん,一番頑張ったのは関係者で,それは技術的なことはもちろん,営業的な話,そしてなにより商品企画の話と,あらゆる面で逆風が吹く中,よくもここまでやる遂げられたと,拍手するしかありません。

 もう一度書きますが,好きだからOKとか,熱意があれば大丈夫とか,情熱は他人を動かすとか,そういう話が日本人は好きですが,それをやって会社が潰れたらなんにもならんわけで,ビジネスの判断というのは実にシビアです。

 でも,それでも,会社は人の集まりで出来ています。人間が人間の熱意に動かされないわけはなく,それぞれの立場の違いはあれど,みんな同じ景色を見ていたことが,なんともよい話ではないかと私は思います。

 こういうとき,あまり話に上りませんが,説得される側,つまり経営判断をする側の人も,きっとこういう話って大好きなはずです。でも,それだけではダメな立場にある人は,なんだかんだと上手くいく理由を考えて,この話を形にしたのでしょう。

 さて,今回登場した奇跡の一台,フィルムカメラの新製品「PENTAX17」ですが,これがまた往年のPENTAXファンを唸らせる,そんな実にニヤニヤするカメラになっています。

 表向き(でもないか)若い人向けということになっていますが,PENTAXも若い人だけではなく,きっとお金を持っている年寄りが懐かしいといって買ってくれることを期待しているのでしょう。そんな年寄りにも刺さる工夫があります。

(1)デザイン

 いや,これ,やっちまった,というやつだなと最初は思いました。だって,ファインダーが中央部にあるんですよ,眉間にしわを寄せたようなデザインは,違和感があるだけではなく,被写体が怖がるんじゃないかと,私はちょっと嫌悪感を持ちました。

 ファインダーを中央に持つカメラは別に珍しいものではなく,GR1だってそうですし,一眼レフはほとんどすべてがそうです。でも,ことさらそれを注腸するのはどうかなと思います。

 カメラのレンズは,人間の瞳を連想させると言います。ファインダーはレンズではありませんが,ガラス製であり,その向こうには本物の瞳があるという点で,実はもっとも視線を感じる部分じゃないかと思うのです。

 それがこれだけ被写体に主張されれば,やっぱり緊張しますよね。私がこのカメラを向けられたら,申し訳ないけどぎょっとします。

 小型で手におさまるサイズ,上面から見るとSPなどのオクタゴン(8角形)ですし,PENTAXらしい張り皮,右側のグリップは80年代を彷彿とさせます。

 背面のフィルムフォルダーも実にキャッチーですし,なによりカメラらしくレンズが一番偉いという主張がたまりません。

 しかしなあと思うのは,肩がすぼまっているデザイン,これって80年代のPENTAXにも良くあったデザインですが,単純に好みの問題でこれは好きにはなれません。

 あと,色も今ひとつ。シャンパンゴールドみたいなカラーは,90年代や2000年代を思わせますが,このカメラってそれがテーマなんですか,と問いたいところです。

 ここは重厚な塗りのブラックか,梨地のシルバーです。と書いていて思いついたのですが,GR1へのオマージュなら,肩がすぼまっていてもマグネシウム独特の梨地も許せます。色はもちろん,GR1と同じ,グレーがかったシルバーです。

 あー,これなら欲しい。


(2)ハーフサイズ

 最初に触れないといけないのは,なんといってもフォーマットの話,そうハーフサイズというやつです。

 昔々,オリンパスPENやリコーオートハーフなどで一定の支持を集めたハーフサイズですが,もともとフィルムが高価だったことから,倍の枚数の撮影が出来ることでお得感があり,それでよく売れたんだそうです。

 ですが,フィルムの値段が下がってしまえばハーフサイズのメリットはなくなり,むしろ画質の問題というデメリットが目立って来ます。

 あと,これは実感としての話ですが,往時の同時プリントの代金というのは現像代の大体500円くらい)に,一枚30円のプリントです。36枚撮りならざっと1500円ですが,このうち1000円がプリント代です。

 これがハーフで72枚撮りなら,実に2500円。1本フィルムを現像すると,2500円かかるわけです。普通の人は,現像とプリントの違いを明確にはせず,プリントも現像の工程の1つと思っています。それに現像だけに出来ると知っても,ネガを現像したところで全く写真を鑑賞出来ないので,話になりません。

 確かに,フィルム代と現像代はハーフサイズでも同じですので,1枚あたりのコストは半分になりますが,プリントはハーフサイズでも1枚あたりの金額は同じですから,枚数が倍になったらプリントの枚数も倍,従って代金も倍です。

 私などは,ハーフサイズというのは,むしろお金がかかるという印象しかなく,また現実的に72枚もの写真を撮りきるのが難しいことから,現像に出したいがために無駄なショットを増やすことになるという点で,なにか大切なものを失っているんじゃないかと思った記憶があります。

 もちろん,これは80年代,90年代の話です。今は同時プリントはしないのが普通ですし,フィルムの値段も60年代,あるいは70年代に匹敵するくらい高価になっています。手軽に現像に出せる環境でもなくなっているので,フィルムと現像のコストが下がる事は,むしろハーフサイズ全盛期よりも大きな意味を持つようになったと思います。

 加えて,フィルムの性能向上でハーフサイズでも十分高画質であること,フィルムの給装方向から縦長のフォーマットが標準いになることは,今だからこそハーフサイズであることが強みになるといってよいでしょう。

 縦長,もう普通になってますよね。一番の功労者はスマートフォン(少し遡ってガラケーでもいいんですが)の写真でしょうが,チェキも大きな貢献を果たしていると思います。

 今だから欠点のない,むしろメリットばかりになるハーフサイズ。これは大正解だと思います。


(3)レンズ

 レンズは25mm/F3.5で,35mm換算だと37mmあたりになります。これも昨今ブームになっている40mm付近に持ってきたあたり,なかなか憎いです。私も40mmは大好きです。

 明るさはF3.5ですのでやっぱり暗いと思います。思いますが,これもフィルムの性能向上で,ISO400でも十分な画質ですので,F3.5でも困ることはないというのが判断にあったのかも知れません。

 しかしですね,40mmでF3.5はいかにも惜しいのです。開放で被写体を浮かび上がらせるには,やっぱりF2.8は欲しいです。明るさにしてもF2.8とF3.5の違いを意識させられるシーンは,夕方とか雨の人か,案外日常に転がっているものです。

 後述するように,ゾーンフォーカスという仕組みもF3.5になったきっかけのように思いますが,Rollei35にもF2.8の高級モデルがあるように,ここはF2.8にして欲しかったと思います。

 それと,レンス構成です。PENTAX17は,いわゆるトリプレットです。トリプレットは大変合理的で高画質なレンズ構成ですので,これで直ちにダメとはいいません。でも,やはりもう1枚増やしてテッサーにして欲しかったと思います。

 テッサーの高画質は,トリプレットとは別の次元といっていいので,ぱっと見の印象で違いがわかります。当然テッサーも検討したと思いますが,もしもフィルムだから,ハーフサイズだから,ゾーンフォーカスだから,若い人だから,のどれか1つでもトリプレットにした理由になったのだとしたら,その段階でPENTAX17は失敗作だったと断言してもよいでしょう。

 ということで,私個人は,やはりRollei35の経験から,テッサーであって欲しかったと強く思います。


(4)露出とフォーカス

 コンパクトカメラですので,露出は基本的にはオートです。それでも,絞り開放を優先するモードや低速シャッター速度を優先するモードなど,カメラの理屈を詳しく知らなくても多彩な表現が出来るようなモードを用意しているのはさすがだなと思います。

 欲を言えば,マニュアルモードがあったらなあとか,せめて絞り優先が欲しいなあとか思うかも知れませんが,そこはほら,コンパクトカメラですので,こうして複数のプログラムラインをダイヤルで選択できるというのは,とてもよい仕組みだと思います。

 フォーカスは繰り返しているようにゾーンフォーカスです。私,ゾーンフォーカスが苦手です。難しい操作はいらないし,速写性に優れているので,良い仕組みだとは思うのですが,私個人はゾーンフォーカスの歩留まりの悪さに閉口します。

 目測が下手くそだからに尽きるのですが,ハーフサイズにした理由が高価になったフィルムを大切に使うことになるのだとしたら,ゾーンフォーカスではなく距離計を持たせるか,AFにすべきだったと思います。そう,AFです,AF。

 昔のコンパクトカメラにもちゃんと二重像式の距離計が備わっていたことを考えると,PENTAX17でも決して無茶な話ではないと思います。全く個人的な値頃感で言えば,今回のPENTAX17お値段なら,距離計があったら即買いだったと思います。

 ですが,距離計連動型はなにかと難しいですよね。特に作るのは大変だと聞きます。だからこそAFです。思うに,フォーカスをマニュアルで操作することを,若い人はきっと楽しんでいないんじゃないかと思います。というか,そもそも写真を撮るのにフォーカスを合わせる必要があるとは思ってない人も多いんじゃないでしょうか。

 考えてみて下さい。チェキや写ルンですに,ピントを合わせるという儀式がありますか?

 80年代以降のコンパクトカメラでAFではないモデルって,ほとんどありませんよね。一眼レフなら言わずもがな,です。

 フィルムカメラが楽しい,というなかに,巻き上げやメカシャッターの感触,独特の色合いや粒状性があることは言うまでもありませんが,フォーカスが楽しいというのはマニアだけじゃないでしょうか。

 露出と言えば,シャッターです。絞り兼用のビハインドザレンズシャッターということですので,シャッター速度と絞りは独立して設定出来ないはずです。かつて多くのコンパクトカメラが採用したシャッターと同じであれば,絞らないとき(開放に近い時)は高速シャッター,絞った時は低速シャッターになるという原理的な性質をそのまま「プログラムモード」として利用していると思います。


(5)操作性

 操作性,もっというと上面のデザインは,これはもう最高でしょう。

 AOCoマークなどはちょっとうるさすぎるし,本来の意味を持たない,いわばWindowsマシンに貼り付けたリンゴのシールみたいなこっぱずかしいものだと思いますが,これを付けられるのはPENTAXだけですから,大目に見ましょう。

 巻き上げレバーはAuto110,巻戻しクランクはMEあたり(LXと言う人もいますがもうちょっと古いモデルのように思います),シャッターボタンはMZシリーズですね。個人的にはSFXもどっかに入れて欲しかったですが,まあマイナー機種ですので仕方がありません。

 あと,SPの美しさは,レンズが少し左に寄っているところにあると思うので,PENTAX17でも少し左よりにしたらSPのように美しくなっただろうと思います。

 まあ,デザインの素人の私がいうようなことではないですね,すみません。

 操作性とは違うのですが,あまり皆さん突っ込まないこととして,電池寿命が短いことを指摘しておきたいです。

 CR2という高容量のリチウム電池を使っておきながら,フィルム10本というのは,ちょっと寂しいです。いや,ハーフサイズであることを考えると,実質20本ですし,半分がストロボによる撮影ですから,ストロボを使わないならもっと持つのですが,CR2が高いこと,そして案外入手が難しことを,もう少し考えて欲しかったと思います。


(6)価格

 これも怒られることを覚悟で言いますが,やっぱりちょっと高いです。値頃感は6万円まで,欲を言えば5万円までなら,私も即予約したと思います。

 いや,実売88000円というのがこの時代では破格であることも十分理解していますし,新品で全国どこのカメラ屋さんでも買えて,保証もあって修理もメーカーで出来るという新品として当たり前の事をフィルムカメラでやると言うのに,この値段ではむしろ安いことも承知しています。

 でも,やっぱり,88000円で手に入る体験として,これはちょっと高いです。

 この値段なら,若い人はスマートフォンを買い換えるでしょう。

 円安が憎いですね・・・1ドル120円くらいだったら,あるいは69800円や59800円もあったかも知れません。


(7)戯れ言

 えとですね,私はレンズ交換式も少しだけ期待していたのです。技術的に難しい薄々分かっていますが,マウントはPENTAX Qと同じで,イメージサークルはハーフサイズという新しいレンズラインナップでPENTAX17を作ってくれたら,どんなに面白かったかと思います。

 可能なら,その新レンズはPENTAX Qでも使えたりするんですよ。ワクワクしてきませんか。考慮すべきはマウント径とバックフォーカス,そして電気接点です。

 これが出来たら,超小型レンズ交換式フィルムカメラが完成するわけで,もしかしたらレンズでも儲かる仕組みが作れたかも知れません。


(8)買うのか?

 うーん,買いません。

 理由は,ハーフサイズの高画質なカメラはすでに持っていることが大きいです。唯一無二の存在でないものに,やっぱり9万円は出せないです。

 PENTAXであることも引っかかっています。メーカーの修理が出来ることが新品としての価値の1つと言われていますが,PENTAXの修理ってそんなに胸を張っていいものでしたっけ?

 私は,PENTAXに修理を頼んでも,絶対に1回では片付かず,くだらないミスで再修理になることを何度も経験しているので,彼らの修理レベルには疑問を持っていますし,そのおかげでPENTAXという会社の製品に対する信頼もどん底にあります。

 よって,10万円近いものをPENTAXで買うつもりはありません。他人に勧めることも出来ません。

 もし,売れのこって3万円とか4万円で処分されるようなことがあれば,買うかも知れません。それは,修理が出来る事,保証があることに相当する金額を引いたお金しか出せないと思うからです。

 いまやPENTAXの修理が,リコーで行われるものではなく,すべて外部の業者に投げられていることを,どれほどの人が知った上でPENTAX17を賞賛しているのでしょうか。修理に出す度にその質が目に見えて低下して,一向に上向く気配がないことを経験した人が賞賛しているのでしょうか。

 発表から2日,すでに想像を超える売れ行きで予約を締め切ったという話を聞きます。予約出来ても発売日に手に入るとは限らないというアナウンスもメーカーから出ています。

 原因はきっと企画台数を小さく見積もったからじゃないかと邪推します。私のような人間がなびいていないのですから,まだそんなに数が出ているわけでもないんじゃないでしょうか。

 嫌な言い方をしますが,昨今の日本のカメラメーカーの商売の仕方を見ていると,飢餓感を煽ってるんじゃないかと,うがった見方をすればあるかも知れません。少し冷静になって,本当にこのカメラで幸せになるのかどうか,考える時間を持ってもいいんじゃないかと思います。

常用レンズにZ 26mmF2.8

 Zfがやってきて1ヶ月ほど経過しました。発売日にはランキング一位でも翌週には圏外という,初回を売り切ったら在庫がないというニコンによくあるいつもの展開になっているようで,Zfを持ち歩くとどうしても自意識過剰になってしまいます。

 それはどうでもいいことなのですが,この1ヶ月で困ったのはレンズの選択です。一言で言うと付けっぱなしにできる良いレンズがありません。

 Zfcでも似たような状況が続き,キットレンズの28mmF2.8も,次に出た40mmF2も,どうも私の好みとは遠く,ようやく「これだ」と思ったのは24mmF1.7を手に入れてからになったのでした。

 今考えても24mmF1.7は良いレンズで,聞けば50mmF1.2と同じ設計者が同じ思想で設計した物なんだそうです。そりゃカタログスペック以上のなにかが込められているはずで,妙に納得してしまいました。

 Zfcを手放したときにこのレンズも一緒に売却したのは,それがAPS-C専用のレンズだったからで,もしフルサイズだったら絶対に残していたと思います。このレンズは安いのに,良く写ると言うこと以上のものがあるレンズでした。

 Zfで使えるフルサイズ用のZマウントレンズでは,こういう思想のレンズはとても高価です。50mmF1.2はなんと30万円で,値段もそうですがまるでF2.8通しのズームレンズみたいな大きさで,これを常用しようとは思いません。

 同じ理由でF2.8通しのズームは(まだFマウントを持っているので)買おうとは思いませんし,先日買った24-70F4ではF4という開放F値からくる制限が結構窮屈で常用には至っていません。

 シグマが35mmF1.4あたりを用意してくれればそれがベストなんですが,残念ながら現時点でシグマはZマウントをAPC-Sしか用意してくれていません。

 画角は35mm,明るさはF2よりも明るいものが理想で,これって先の24mmF1.7(フルサイズに換算すると36mm)がドンピシャだったとわかるのですが,Zマウントにはこういうレンズで手軽(大きさ的にも経済的にも)なものはないのです。

 マウントアダプタを経由してFA43mmF1.9を使ってみたり,MマウントのHELIAR 40mm F2.8を使ってみたりしましたが,マウントアダプタの分だけ出っ張ってかさばるし,せっかくの強力なAFが使えない事のもどかしさもあり,数回でやめました。レンズ遊びはあくまで遊びであって,常用にはならないものです。

 なら,新たに買うしかありません。私の常用レンズを探す旅は,まだ始まったばかりです。

 候補を探してみると,純正ならSラインの巨大な(かつ高価な)ものしかありません。これはいきなり厳しい。

 コシナからはAPO-LANTHAR 35mm F2が候補になりました。画質には心配はなく,価格も10万円程度ですからなんとかなります。しかしAFが使えないのでは常用にはなりません。これもだめか。

 中華レンズにいくつか候補が見つかりましたが,リセールバリューを考えると安易に手を出せません。それにいつニコンがこれらのレンズでAF動作しないように仕込んでくるかわからないですから,やはり常用にはなりません。

 うーん,ここで行き詰まってしまいました。

 もう少し条件を緩くしましょう。そうすると1つ引っかかってきたのが,Zのパンケーキ,Z 26mmF2.8です。

 私はパンケーキレンズには特に思い入れはなく,薄いことを売りにすることで肝心の性能や使い勝手に妥協を強いられるのが嫌で,むしろ避けていた感があります。(まあこれは思い込みに過ぎないのですが)

 なので,Zでわざわざパンケーキというのもいまひとつピンと来ていませんでしたし,しかもその焦点距離が26mmという広角(しかも28mmよりも短いなんて)というのは,果たして使いこなせるのかとも思っていました。

 加えて,どうも格好が良くないです。Zのレンズは総じて顔が大きいくせに前玉が小さい(その代わり後玉が大きい)ので今ひとつ可愛くないのですが,このZ 26mmF2.8も他例に漏れず,可愛くありません。

 これが3万円ならちょっと試してみるか,と思えるんですが,さすがに6万円後半ということになると勇気がいります。

 とはいえ,もうこのレンズ以外に,常用レンズの候補がないのも認めざるを得ません。ちょうどamazonもセールをやっていますので,思い切って買うことにしました。

 63000円からポイントが3000ポイントで実質6万円というのも安いと思いますが,ニコンのキャッシュバックで7000円戻ってきますので,結局53000円です。昨今のレンズの値上がりは厳しさを増していますが,このレンズの私の値頃感はちょうどこのくらいの価格でした。

 ということで,先の連休で手に入れたものを使ってみます。

(1)手に取った感じ

 良くも歩くもZレンズです。Zのレンズはどのレンズもくびれがなく,寸胴です。私はそれが好きにはなれないのですが,パンケーキならそんな印象もありません。うーん,パンケーキと言うよりも回転焼きって感じですけど・・・

 極端に薄いわけではないこのレンズも,マウント径が大きいことで非常に薄く感じます。専用のフードを付けてしまえば,一眼レフ時代の普通の単焦点レンズの気分です。

 とはいえ,さすがにそこは純正。作りはしっかりしていますし,しっとりと手に馴染むのは気分がいいです。

 そのフードですが,やっぱりくびれや出っ張りがなく,装着時もつまらない円柱に見えます。このへんがZfとアンバランスなんだろうと思います。

 このレンズは,フィルターをレンズ本体に取り付けることが出来ません。先にバヨネット式の専用フードを取り付け,フードに切られた52mmのネジでフィルターを取り付けます。

 しかしこれだと,フィルターに入りこむ有害な角度の光線を防げません。フィルターとレンズの麺との間で反射も起きてしまいますので,フードの役割から考えると,やっぱりフィルターはフードの前に置きたいところです。


(2)写り

 写りは,実は大満足です。これは予想以上のものがありました。

 シャープネスもボケも色のりも期待通りで,常用レンズとして十分使えます。Z 28mmF2.8とは全然違っていて,そこはやっぱり価格相応なんだなと思った次第です。

 F2.8の開放から使えることはあまり期待していなかったのですが,少し(周辺は少しではないですけど)画質は落ちますが十分使えるレベルです。

 色は濃厚ではありませんが淡泊でもなく,見たままの感じですし,歪曲も補正されていて問題ないレベルです。線の細さはあまり感じませんが,下品な太さはありません。

 F2.8ですからそんなにボケないと思っていましたが,26mmですからもう一歩夜必要があり,それくらいの距離だと上品に背景がボケてくれます。私は背景になにが映っているのかわからないくらいのボケボケはどうも好きにはなれず,被写体に視線が自然に行く程度のボケが得られるのを理想としています。Z 26mmはちょうどよいと思います。

 ピント面とボケとの繋がりも自然ですし,コントラストも良好なので陰影も綺麗に出ます。常用レンズとしてはとても頼もしい画質だと思います。

(3)使い勝手

 パンケーキといいつつそんなに薄くないことに加え,この手のレンズとしては初体験のAFレンズですので,パンケーキであることは全然デメリットではありません。ピントリングも触りやすいですし,全体繰り出しですが鏡筒は伸びないので振り回すのも問題ありません。

 特筆すべきは「寄れる」ことです。26mmだから当たり前ともいえるのですが,20cmまで寄れるというのはかなり撮影自由度が上がります。とはいえ撮影倍率はたかだか.19倍ですので,そんなにパースを強調できるわけではありません。寄れば寄っただけ背景はボケるので,上手く使いたいところです。

 それから26mmという焦点距離です。かなりの広角だよなと覚悟していましたが,使ってみると案外自然です。よく考えてみると,昨今のスマートフォンのカメラが,このくらいの焦点距離なんだそうで,そういう写真を見慣れていることがあるのかも知れません。

 そうそう,このレンズはもちろん手ぶれ補正はありません。しかしZfの強力なボディ内手ぶれ補正と,レンズの小ささと画角のおかげもあって,手持ちで1/8秒も余裕です。

(4)ものたりないところ

 もう少し暖色で,色がしっかり乗ってくると常用レンズとしては申し分なしです。絞れば十分なシャープネスを得られますが,開放でもうちょっとだけ頑張って欲しいとも思います。

 それからデザイン。Zの寸胴体型はどうにかならんのかと思うのと,バヨネットフードってのはどうかと思いました。確かにフード病を押さえこむには有効なんですけどね・・・


(5)まとめ

 パンケーキレンズって,欲しいと言う人は多いように思うのですが,実際に売れたという話はあまり聞きません。ニコンでも,Ai45mmF2.8Pなんかはさっぱり売れず,中古価格も高いままという話を聞きます。

 理由はいろいろあるんでしょうけど,安くて手軽なパンケーキを求めることはあっても,高価なパンケーキを望む人は少ないんだと思います。その点でZ 26mmF2.8もそんなに売れるレンズではないと思うのですが,では6万円の価値のないれんずかと言えばそんなことはありません。

 ニコンらしく光学的に妥協はないし,質感も十分6万円のそれだと思います。ここで40mmや45mmを出してこなかったのはむしろニコンの戦略で,26mmというちょっと珍しいものをこの価格で出してきたところが,面白いなと思いました。

 使ってみると,出っ張らないことがとても快適で,もともと三次元的な凹凸の少ないZfには(デザインを除き)ぴったりです。写りも好みに近く,手軽に持ち出せ,絞りで画像をコントロールする面白さも持っている上,寄れるというのは,まさに常用レンズに持ってこいでした。

 とりあえず常用レンズを探す旅は,このZ 26mmF2.8で決着することができました。屋外でもっと試さないといけませんが,これがまだ手に馴染まないZfを身近に近寄せる原動力になってくれればいいなと思います。

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