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2019年02月の記事は以下のとおりです。

HC-20の修理~完結編

 HC-20の修理を先日行った話を書きました。LCDの一部に線が入るのに,深追いはせずそのままにした,ということにしたわけですが,やっぱり気持ち悪いので,きちんと時間を確保してから,仕切り直しをすることにしました。

 まあ,どうせ接触不良か接点の汚れ,ゴミを挟み込んだかなんかが原因だと考えていたので,分解して綺麗に掃除し,再度組み立てるだけですから,1時間もあればわると踏んでいました。

 さっさとばらして,LCDを基板に組み付ける金属のフレームの破損箇所を修理し,LCDのガラスや基板,ゼブラゴムの汚れを取り除きます。

 そして丁寧に再組み立てを行います。今回はうまくいきました。

 電源を入れてみますが,残念ながら,全く改善していません。同じ場所に,同じ長さで,同じ濃さの縦線がスパッと入っています。

 この縦線,中央よりやや左側,真ん中から縦1本だけ16ドット分(つまり我慢の下半分)の長さで入っているのですが,完全に表示が行われないわけではなく,ここだけ表示が極めて薄くなるのです。

 なにも表示しない状態だと背景他のピクセルとそんなに変わらないのですが,文字を奥津か表示するとどんどんその線だけ白くなり,文字が増えれば増える程白くなります。

 このラインの配線抵抗がほかよりも大きい場合にこういうことが起きるのですが,私はこれを,ゼブラゴムの圧着不足や端子の汚れのせいだと思っていた訳です。

 しかし,綺麗に清掃し,かつてないほど完全に組み立てたのに,全く同じというのはちょっと解せません。

 コントラストを調整すると,一応ピクセルが黒に点灯したりするので,LCDそのものが死んだわけでも,LCDコントローラが死んだわけでもないようですし,ここで行き詰まってしまうかと思われました。

 そんなとき,偶然基板のパターンをあちこち触っていると,あるところで線が消え,
綺麗に表示が行われる箇所が見つかりました。指を離してしまえば白い線が復活しますが,触っている間は完治するわけで,この段階でLCDやコントローラに加えて,ゼブラゴムや組み立て方にも問題がない可能性が高くなってきました。

 もしやと重い,触った場所のパターンを見ていくと,なにやら傷が付いて,切れそうになっているパターンが見つかりました。肉眼ではギリギリ切れていないよう思うのですが,万が一ということで,銅線でこのパターンをつないでみました。

 すると,白い線が消えて,見事に治っています。

 うーん,どうやら,パターンがほとんど切れてしまい,高抵抗でかろうじてLCDに電荷が流れ込んでいたということでしょう。LCDはいわばコンデンサで,高インピーダンスです。だから,こうしたケースでも完全に消えてしまわず,コントラストが著しく低下した部分として表面化するのでしょう。

 いずれにしても,これで修理が出来ました。

 本体を慎重に組み戻し,動作確認を行って完成です。

 途中,7歳の娘が寄ってきて,なんだこれは,と興味津々です。

 小さい画面に少ない文字数,その割には立派なキーボードを持ち,あげく小さなプリンタがギギギギと怪しげな音をたてて,文字を印刷するというのは,タブレットやスマートホンを見慣れた彼女の目にも,奇異に映ったことでしょう。

 カタカナであれこれと打ち込んでは印刷をして遊んでいますが,これが35年ほど前に登場した時には,電池で動く本格的なパソコンとして世界中で驚きの声が上がったことを,当然彼女は知りません。

 さて,そんなわけでとりあえずHC-20やX-07を含めた,小型コンピュータはすべて故障から解放され,良い状態で動態保存できるようになりました。

 完全にLCDが劣化してしまったシャープのポケコンは年を追うごとにダメになっていき,予備機のPC-1245はもちろん,PC-1251やPC-1246すらも,危険な状態になっています。PC-1211などは言うに及ばず,このままだとPC-12xxシリーズは全滅してしまうかも知れません。

 幸い,PC-1500シリーズやPC-1600シリーズは大丈夫で,この違いは何だろうと首をひねりたくなるのですが,現状では劣化したLCDを復元する方法はなく,かといって進行を遅らせるにも限度があるなかで,いつまでこれらの機種を残しておけるか,頭の痛い問題です。

 

HC-20の修理

 先日,思い立ってHC-20の修理を敢行しました。

 何が悪かったって,LCDの劣化がひどくなっていました。

 もともと,HC-20のLCDは表側の偏光フィルムがめくれてひび割れてしまい,剥がして交換したのですが,この時も表面がカサカサになり,酢酸の酸っぱい臭いがひどかったことを思い出します。

 そう,フィルムで問題になっている,ビネガーシンドロームです。

 あれは,トリアセチルセルロースなるベース材が湿気や熱で化学反応して劣化するという現象なのですが,1990年代にはポリエステルやPETに変更されて,こうした現象は見られなくなってきました。

 ですが,HC-20は1980年代前半の製品で,光学フィルムだったこともあってか,当時圧倒的な使用量があった写真用フィルムと同じ素材でLCDを作るのが普通だったのでしょう。

 とりあえずこれでしのいだのですが,当然裏側の偏光フィルムや反射フィルムも同じようになることが予想されるわけで,いずれ修理が必要になるだろうなあと思っていました。

 昨年の年末,年末恒例の動作チェックと電池の充電で,いよいよLCDの劣化がひどくなっているのをみて,修理の準備をしていたのです。

 X-07の修理では,ここでも書きましたが,粘着性の偏光フィルムをガラスの裏側に張り付け,上からシルバーの塗料を吹き付けることで良い結果を得ました。同じ事をHC-20でもやろうと考えて,片面に糊のある偏光フィルムを購入しておきました。

 いざ,修理です。

 HC-20を分解し,LCDを取り出します。すでに何度も分解しているので,LCDの金属製の枠が金属疲労で壊れていて,基板に固定する部分がありません。

 LCD本体を取り出すと,あの酸っぱい臭いが強烈です。反射フィルムも偏光フィルムもいっちゃってます。

 この2つを綺麗に剥がし,同じ大きさに切った偏光フィルムを張り付けます。そして裏面を,シルバーで塗装します。

 ここで,ガンダムマーカーエアブラシシステムを,手持ちのコンプレッサー(タミヤのREVO)で塗装してみました。概ねうまくいったのですが,やはり圧力が足りないようでもあり,吹きつけにはかなりの時間がかかったことと,失敗を繰り返したことを書いておきます。

 出来たらLCDを組み直して,本体を組み立てます。が,どうもLCDの組み立てに失敗しているようで,LCDに筋が入ります。

 何度か分解して筋を消すのですが,なにせ筋が消えてうまく言ったかどうかがわかるのは,組み立てがほぼ終わってからですので,やり直しは時間もかかりますし,壊してしまう怖さがあります。

 完璧を求めると,本当にきりがなく,多少妥協できるところで今回はやめました。すでに2枚の基板を接続するフレキとコネクタの接触が怪しくなっていて,うまく起動しないときが出てくるようになっています。

 今のところ問題はないのですが,HC-20は手元に置いておくべき名機の1つであるだけに,今後も様子を見ていかねばなりません。

 

 

DM16で対数計算

 DM16は,ボタンの押し心地が悪くて批判的な意見も散見されますが,実際に触って見るとそのサイズ感がとても好ましく,手に馴染む電卓です。

 HPの電卓には,縦長のものと横長のものがあり,縦長が好きな人は手で持って操作できるので立ちながら使える事を主張しますし,横長が好きな人は格好良さと左右の手で操作できることをメリットにあげます。

 DM16のカードサイズというのは,実は立ちながら両手で操作できるという,双方のメリットを兼ね備えた大きさで,確かに机において使うと楽ちんなオリジナルのHP-10Cシリーズを立ちながら操作できるというのは,想像以上の進化と言って良いかもしれません。

 とまあ,これでボタンが改善される(ゴムキーでいいです)と文句なしなわけですが,持ち運びに苦痛なく,しかも強力なDM16はとても気に入っています。

 ただ,私が普段使うには,どうしても足りない機能があります。それは対数の計算です。

 電気電子分野において,日常的に使う対数は,まずdBの計算で常用対数を,コンデンサの充放電などで自然対数を使います。これらは足し算や引き算のように自然に使われる数学であり,「数学なんか何につかうのよ」という高校生に正面切って反論できるものでもあります。

 だから,DM16のオリジナルであるHP-16Cでlogやlnが落ちてしまったことが不思議でならないわけですが,かといってDM16とDM15の両方を持ち歩くのももったいない話です。

 幸い私はエンジニアであり,科学者ではありません。対数だって小数点以下2桁か3桁あれば事足りる世界の住人ですので,近似値を求めるプログラムをDM16に入れれば,それで問題は解決しそうです。

 と,その前に,私が自宅用においたDM15Lには,4つのプログラムをいれてあります。電力のdB計算(10*log(x)),電圧のdB計算(20*log(x)),抵抗で消費される電力(P=x^2/Z),そして抵抗の並列接続(1/x + 1/y = 1/r)です。

 どれも大した計算ではありませんが,得られたデータを処理するのに何度も同じ計算をする必要があり,少しでもキーを押す数を減らせるとうれしいのです。

 で,この4つをDM16で計算できれば,DM16にもともと存在する2-8-10-16進数の計算機能とあいまって,最強の相棒を連れて歩くことができます。

 ということで,以下のプログラムを保存がてらに,ここに公開します。いずれも実数モードで使って下さい。

LBL A 電力のdB計算(10*log(x))
LBL B 電圧のdB計算(20*log(x))

 この2つはいいですよね。数値を入れて,GSB AもしくはGSB Bとすれば,画面に結果が出ます。ただ,後述するlogやlnの近似値の誤差があるので,小数点以下5桁が限度です。6桁目には誤差が入り込んできます。4桁くらいで使って下さい。

LBL C 抵抗で消費される電力(P=x^2/Z)

 私がよく使うのは,作ったパワーアンプの出力電力を測定するときで,ダミーロードを繋いで,その両端の電圧を測定し,出力電力を求めます。

 レジスタ9にSTO 9として負荷抵抗の値を先に入れておき,電圧の値を入れてからGSB Cとすれば,電力が出てきます。余談ですがHP-16Cってx^2すらないんですね。

LBL D 抵抗の並列接続(1/x + 1/y = 1/r)

 これも簡単な基本中の基本ですが,電卓で計算すると案外面倒です。普通の電卓では逆数がないのでややこしいですし,最後に出てきた答えをまた逆数にしないといけないあたりで,私などは心が折れてしまいます。

 なので,いつもは式を変形して「かけ算/足し算」で計算するわけですが,これも何度も繰り返すとさすがに手間で,一発で計算できるとどんなに便利かと,中学生の時から思っていました。

 1つ目の数値を入れてENTER,2つ目の数値を入れてGSB Dとすると,2つの数値の並列接続時の合成抵抗が出てきます。これ,数学的になんていう演算なのか,忘れてしまいました。


 さてお待ちかね,自然対数と常用対数です。

LBL E 自然対数 ln(x)
LBL F 常用対数 log(x)

 どちらも数値をいれて,GSB EもしくはGSB Fとすれば,それぞれの結果を表示します。近似値ですので,小数点以下5桁くらいが限度です。

 まず,ln(x)を求めています。これは自然対数の近似値を計算する数列をn=11まで計算しています。ちょっと時間がかかりますが,私が以前作ったループを使ったプログラムに比べると,速度も精度も随分上です・・・

 こうして求めたln(x)を,高校数学で習う底の変換公式を使ってlog(x)にします。ざっくり自然対数を2.3で割ればいいのですが,それでは精度が出ませんので,真面目にln(10)で割っています。

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DM15LとDM16をめぐる顛末

 DM15LとDM16が手元に揃って,気になる事がいくつか出てきました。


(1)DM15Lのキーについて

 私のDM15Lは,y^xキーのペコ板が2枚重なっていたことで,非常に固いキーになっていた事を先日ここに書きました。

 それで,ONキーのペコ板と交換したわけですが,このことでy^xキーは他のキーと同じ感触になったものの,ONキーはすでに柔らかくしてしまったペコ板のせいで,ヌルヌルとした頼りない感触になってしまいました。

 なんとかならんかとペコ板を裏側からあちこち突っついて変形させてみますが,硬さは調整出来てもクリック感がどうしても出せず,さじを投げてしまいました。

 で,ふと基板をみると,ENTERキーにペコ板が2つ付いていることに気が付きました。

 さらにみていくと,ENTERキーのキートップの裏側にある突起は,2つあるペコ板のうち1つだけを押しています。つまりもう1つのペコ板は全く使われていないのです。

 なら,このペコ板と交換すれば万事解決じゃないか!

 早速試してみます。するとONキーも気持ちのいい感触に戻ってくれました。

 悪い感触のペコ板は使われない部分にあてがわれたので,普段は全然我々の目に触れません。一応,これで満足な状態になりました。

 本来なら2枚重なっていたことで,都合2枚分のペコ板が手元にあったはずが,2枚ともダメにしてしまうという悲しい状況ではありますが,まあとりあえず使う度にがっかりすることはなくなり,気持ちよく使う事が出来るようになったことを,喜ぶべきでしょう。

 その後,今度は"3"ボタンがきかなくなり,分解してアルコールで清掃して復活させました。これはなかなか手を焼きそうな電卓です。


(2)DM16の時計表示

 A + ONで,時刻と日付を5分間表示する機能があるのですが,DM15Lでは正常にカウントアップをするのに,DM16ではカウントアップをせず画面が止まったまま,しかも5分経過しても表示が消えません。

 実はDM15Lも気が付いたときには表示が止まるようになっていたので,こんなもんかなと思っていたのですが,うっかりRESETボタンを触ってしまい,その後カウントアップが行われるようになったので,その違いに気が付いたというわけです。

 DM16についても,RESETボタンで治るだろうと思っていたんですが何度やってもだめです。散々調べてもわからず,いろいろ試しても解決せず,バグかも知れないとDMシリーズを作ったMichael Steinmannさんに,メールを投げてみました。

 ダメモトで投げたメールでしたが,数時間後に返事が来ます。

 いわく,これはハードウェアのミスで,小型のモデルはRTCからの1秒ごとのパルスをCPUに入れ損なっていると,そういうことのようです。

 ハードウェアのバグなら,そりゃなにをやっても解決しないわなあと思いつつ,そんな単純なミスなら私が自分で改修できると気が付き,再びMichaelさんに,もし可能なら基板の改修方法を教えてくれないかとメールを出しました。

 そして数時間後,断られるかと思っていた返事は,実にわかりやすい図面と共に,君なら出来るよ,という励ましの言葉が添えられていました。

 うれしいですねえ。

 やるべき事は,1箇所のパターンカットと,1箇所のブリッジです。推測するにRTCからの1秒パルスを,謝ったCPUの割り込み端子に繋いでいたものを,正しい端子に繋ぎ直して割り込みがかかるようにする改修でしょう。

 改修はとても簡単で,10分もかかりません。ミスもなく,改修後にA + ONで無事に1秒ごとのカウントアップが行われています。当然5分後に自動で表示が消えてくれます。

 こうして私のDM16はちょっと特別なDM16になりました。SwissMicrosに感謝です。


(3)DM16の画面

 DM16の画面がちょっと見にくいなあと思っていたのですが,どうもこれは今ひとつ透過度も低く,平面性も悪い風防がかかっているからだと気が付きました。

 シートキーがそのまま画面にかかり,この部分だけ印刷を抜いてあるのですが,ふにゃふにゃの残量で画面を覆うのですから,そりゃ見にくくもなります。

 ちょっと傷が付いてしまい,焦らずコンパウンドで傷を消しにかかると,あろうことか余計に細かい擦り傷がたくさん付いてしまいました。これはいかん。

 一方のDM15Lは風防など全くない潔い仕様で,傷など全く付くことなく,とても見やすくなっています。なら,DM16も同じ仕様にしましょう。

 やるべき事は単純で,印刷されていない透明な部分をカッターで切り抜くだけです。しかし,外側から見える部分ですから,綺麗に切り抜く必要があります。

 こういうの,下手なんだよなあと思いながら,良く切れるカッターでなんとか切り抜きました。組み立て直すと実に見やすくなっています。

 代わりに汚れや液体に弱くなってしまいましたし,画面になにかぶつかればLCDが壊れてしまうでしょう。でも,この見やすさにはかないません。


 てなわけで,ようやくDM15LとDM16は,満足いく仕上がりになりました。こうして手間がかかることは正直面倒ではありますが,これも楽しみと思えばそんなに嫌な気分もありません。

 設計者とやりとりして改修をするなど,SwissMicrosの寛容さにはとても感謝していますし,おかげで面白い体験をさせてもらいました。

 ではこの両機を実戦に投入しましょう。

 

DM16も届いた

  • 2019/02/12 13:03
  • カテゴリー:散財

 DM15Lの使い心地にすっかり気をよくした私は,DM16Lが売り切れてしまって買えなくなっていることをつくづく残念に思ったのですが,そこは考え方をちょっと変えてみて,在庫のあるDM16を買うことにしました。

 DM16はクレジットカードサイズのHP-16C互換機です。オリジナルと同じ大きさ,同じ操作系のDM16Lに比べると見た目が全然違うことにがっかりするわけですが,なんと言ってもHPの強力な電卓がカードサイズに凝縮されるわけですから,それはかなり魅力的です。

 小型という事もあってか,価格は2000円ほど安いです。

 問題は,Swissmicrosという会社が安全な会社なのか,と言う点ですが,これはamazon経由で購入したDM15Lが問題なく届いた(ただし製品にはそれなりに難ありですが)ことから,おかしな詐欺に引っかかるようなことはないでしょう。

 悪いことに,amazonではDM16は買えません。なので,直接彼らのサイトから注文をします。支払いはクレジットカードとPayPalですが,クレジットカードはさすがに怖いので,ここはPayPalで支払います。

 この間,DM15Lを触ってすっかりHP15Cの魅力に取り憑かれてしまったのですが,前回同様9日ではるばるスイスから,DM16が届きました。

 DM16については,今さら説明する必要もないくらい有名な電卓で,HPの伝統であるRPNを軸に,コンピュータエンジニアに便利な計算機能を搭載した,特殊用途の電卓です。

 私も詳しくは知らないのですが,もともとHP-11Cという関数電卓がこのシリーズとしては最初に登場し,金融関係の計算を搭載したHP-12C,複素数や積分などの複雑な数学機能を搭載したHP-15C,そしてコンピュータ関連の計算機能を搭載したHP-16Cが生まれたようです。

 このうち,関数電卓として使えるのはHP-11CとHP-15Cだけで,HP-16Cに至ってはlogもsinもcosもありません。コンピュータエンジニアとは言え,logくらいは使うと思うんですが,ここらあたりがHP-16Cが売れず,伝説のマシンになってしまった理由なのかもしれません。

 HP-15CはHPにより復刻しましたが,さすがにHP-16Cまでは復刻されず,今日まで高い値段で取引されています。

 HP-16Cみたいな電卓を何に使うんだという声が聞こえてきそうですが,私もかつては喉から手が出るほど欲しかった時期がありました。

 例えば,あるレジスタの特定のビットを変えたい場合,レジスタを読んだ結果が16進数で出てきたものをバイナリに変換,特定ビットを変更しもう一度16進数に戻す必要が出てきます。

 レジスタが8ビットくらいならなんでもないんですが,32ビットくらいになってくるとややこしく,ミスも出てきます。

 あと,0xe3a + 0d213をバイナリで求めるとか,そういうことも頻繁に起きます。

 こういう時,HP-16Cがあると一発なわけです。

 私はシャープのポケコンを使って当時をしのいだのですが。PC-125x系のBASICでは16進数を10進数にすることは出来ても,逆はできませんでした。その16進数も4桁までが限界でしたし,バイナリを扱う事は全く出来ませんでした。

 16進数とバイナリの変換は簡単だからいいとしても,42765をさっとバイナリにできるほど,私の頭はデジタル脳ではありません。

 そこでHP-16Cです。バイナリ,10進数,8進数,16進数を扱う事が出来,それぞれで普通の算術演算と論理演算が可能です。負の数も2の補数と1の補数を切り替えて扱えます。整数だけではなく実数も扱えるという本気の計算機ですが,前述のようにlogもsinもありません。

 そんなわけで,特殊な電卓だったHP-16Cが販売された期間はわずか数年。兄弟機であるHP-12Cが金融界でスタンダードに君臨し,30周年記念モデルが出るほどの長寿であることを考えると,無理もないなあと思ったりします。

 さて,届いたDM16をいじってみます。

 大きさは想像通り,ボタンの大きさは思ったほど小さくなく,押しにくいとは思いません。剛性感もあって,たわんだりへこんだりしません。

 しかし,キーの構造がペコ板の上にシートを貼り付けたもので,キートップがないことが押し心地を非常に悪くしていますし,裏面の両面テープののりがねちゃねちゃと嫌な音を立てます。このあたり,きちんとしたメーカーの製品なら考えにくい仕上がりだと思います。

 ファームはすでに最新のV27になっており,フォントを見慣れたものに切り替えます。

 そして16進数で計算をしたり,バイナリに変換したりと,しばらく遊んでしまいました。たかが整数の2-8-10-16進数を扱うだけの電卓ですが,これでもかと思うほどの機能を満載しています。

 そしてしみじみ,おそらく往年のHPの技術者が,この電卓を使ってHP9000やPA-RISCを作っていたんだなあと思うと,ちょっと感激しました。

 DM16はlogがないので,これだけで仕事が片付いてしまうわけではないのですが,コンピュータをハードウェアから扱う人にとって,DM16のような専用機を持つことはかなりの効率化を果たしてくれると思います。

 もっと早くに出会っていたかったなあと,つくづく思います。

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