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2023年02月の記事は以下のとおりです。

私に荷物が中国とアメリカから届いた話

 性懲りもなく無駄遣いをしてしまっているのですが,先日以下の2つを注文しました。

・Si5351A : Aliexpress(中国)
・ポケコン用LCD : Tindle(アメリカ)

 SI5351Aはここでも何度か書いていますが,SiliconLabのPLLです。秋月で安価に売られていたので喜んで使っていましたし,昨年末には専用の基板まで起こして私の「標準品」として格上げしていたのですが,昨今の半導体逼迫や円安もあって,秋月での購入も出来なくなりましたし,価格も随分上がってしまいました。

 せっかく基板を起こしたのに,これはもったいない。しかもSi5351Aは壊れやすく,これまでも何度も無駄死にさせています。(壊れやすいというのはちょっとミスで簡単に壊れるという意味で,正常に動作しているときに壊れるというわけではありません)

 こういう時はAliexpressです。ここにはなぜだか,ないはずの半導体が揃っています。しかも安価です。もちろん偽物も含むのでそのリスクは考えないといけませんが,おかげさまで私もこれまでに何度も助けてもらいました。

 以前は日本に届くまでに3週間も4週間もかかったものですが,最近は速い人では3日くらいで届くケースもあるといいますから,さすが中国企業らしい改善スピードだなと思います。

 速いだけではなく事故も減っているようで,届かないとか詐欺に遭ったという話も随分減ったように感じます。これは本気で日本市場に入ってくるかもと,私も期待しているところです。

 ですが,今回の買い物は結構心配しました。

 まず,発送がなかなか行われなかった点です。中国では1月末から2月の頭が旧正月でお休みですので,お願いごとはここを避けるのが鉄則です。ということでSi5351Aの注文も1月23日という旧正月の影響を受けないぎりぎりのところで注文をしました。

 中国を旧正月前に出てくれれば,あとは日本国内の話なので上手くいくだろうと読んだのですが,この目論見は外れてしまい,旧正月に入っても発送してくれていません。

 2月3日に念のために「私の荷物は発送してくれた?」とショップに取ったのですが,同日ショップから「送ったよ」と返事がありました。ステータスが発送済みにならないのでおかしいなと思いつつ,「じゃもうちょっと待ってみるよ」と返事をして待ってみました。

 すると2月5日にショップから「2月1日に同じ商品を買った別の日本の客に先に送ってしまった」と連絡がきました。先方が見せてくれたオーダーによると,私と名前がよく似ています。まあ,これは勘違いするかもな,と思いつつ,ここは厳しく文句をはっきり言おうと,「なんちゅうことをするんだよ,で結局あんたはどうすんだ?」と返事をしました。だって,あと5日で自動キャンセルになる期日を迎えるんですからね,そりゃこっちもムキになります。

 そしたら向こうもまさかの逆ギレ。「ならキャンセルするのか!」とけんか腰です。ほほー,さすがだな。

 ここは冷静に,「いや,キャンセルはしない,私がして欲しいことはすぐに発送してくれることだ。私はあんたを信用しているので,これ以上私を失望させないで欲しい」と返事。

 すると先方は「今日は祝日なんだが,出社して発送しようか?」というので,そこまではいい,お祭り(Chinese lantan Festivalとのこと)なんだから楽しんでね,と返事をしました。

 週が明けた2月6日にすぐに連絡があって「明日送るよ」,2月7日には「今日送るよ」,そしてこの日のうちにステータスが発送済みに変わりました。いいですね,こういうやりとり。

 先方は中国語しかできず,私は日本語,英語が少々という感じですので,本来コミュニケーションが上手くいくとは思えないわけですが,そこは自動翻訳の進歩で互いに英語でやりとりです。ただ,中国語というのはなかなかニュアンスの難しい言語のようで,同じ言葉でも相手の意思を問う(キャンセルするの?)ものになったり,自分の宣言になったり(キャンセルするぞ!)となったりするようで,でもこれって正反対の意味だったりしますから,きちんと前後の意味を考えて話さないといかんなと思った次第です。

 で,2月8日にようやく運送会社が引き受けてくれ,2月9日にはなんと中国を出発,早いですねー。

 翌日には日本に入り,2月11日には通関手続きまで終わり,国内の運送会社に引き渡されたんです。ならあと数日で届くと思いますよね。

 しかしここからが長かった。しかも不安でした。ここからステータスが全く動きません。荷物のトラッキングも出来なくなりました。日本での運送会社は佐川急便とということで,その連絡先も表示されています。しかし佐川ではこの荷物の番号は登録されておらず,それは手元に届いた現在も変わっていません・・・

 では誰が届けてくれたのかというと,なんと聞いたこともない「AZ Project」なる謎の会社です。ググっても大分の会社としか出てこず,天然水やらほかの商品やら出てくるような,運送会社ではなく運送も仕事の1つとしてやっているという,よくわからん会社のようです。

 2月19日,国内に届いてから8日も経過して,ポストに突っ込まれておりました。この間全く荷物は追跡できず,またこちらから連絡することも出来ないという薄氷を踏むような状態で待ち続けた8日間でした。

 うちは近所に同じ名字の人が住んでいて,そちらの方がわかりやすいらしく,とにかく私の荷物が彼らに渡ることが多いです。その都度私は大げさに文句いうようにして印象づけを行う努力をしているのですが,今回同じ事が起きたら,私は泣き寝入りになるところだったと思います。

 届いた荷物には,国内で改めて貼られたラベルがあって,ここには「荷物のお問い合わせ先」としてフリーダイアルの番号が書かれています。

 自分自身の備忘録として,ここにも書いておきましょう。

 AZ Project : 0120-437-327

 5chなどを見ていても,このAZ Projectはトラッキングが出来ない上に遅いという事でとかく評判が悪く,これまでなら佐川であっという間に持ってきてくれたのに昨年秋頃から時間がかかるようになったと,文句が出てくるようになっています。私もまさにこれにあたったみたいです。

 Aliexpressには届くまでに時間がかかる,届かないリスクもある,それでもチャレンジするかい?という覚悟が必要で,むしろそれらのトラブルを楽しむくらいの余裕がないとねと言われたものですが,それが中国側が原因ではなく,日本側が原因になるとは,夢にも思いませんでした。

 大丈夫か,日本?
 もうなにもかも中国に追い抜かれているぞ?

 さて,もう1つの注文はポケコン用のLCDです。これも2年ほど前に同じお店にお願いをしていて,見事にPC-1251とPC-1211を復活させることが出来ました。この時は本命のPC-1245のLCDはこのお店では作っておらず,日本のお店から買ったのですが,久々に覗いてみるとPC-1245はもちろん,PC-1246のLCDまで用意してくれていました。これはうれしい。

 PC-1246はPC-1245によく似ていますが,内部は全然異なっており,CPUは4bitですし,BASICからマシン語を使うことも出来なければ,メモリに直接アクセスすることも出来ません。マシン語を使えるから人気のあったPC-125xシリーズにおいてこれは致命的で,いくらBASICが高速でもねーと,当時は大変不評だったことを覚えています。

 しかし今となっては小さく高速で,わざわざマシン語を使う人もいないという事もあってか,それなりに人気が出ているようです。なのに,LCDの持病はPC-1245から引き継いで閉まっており,多数のPC-1246が再起不能になっています。

 かくいう私も縁あって2台持っており,どちらのLCDも真っ黒です。一時期PC-1245の代替機として常用していましたので,これも復活させたいところでしたが,ようやく願いがかなうことになりそうです。

 価格はわずか$20/枚。某オークションではこれを5000円で売る輩がいますが,なんで直接買わないのかなと思います。オークションでもリスクはありますからね。

 ということで,前回は本当に使えるのか心配だったこともあり数を減らしましたが,今回はちゃんと買うことにします。PC-1251用を1枚,PC-1211用を1枚でそれぞれ予備として,同じく予備としてPC-1245用を1枚とPC-1246用を修理用として2枚です。PC-1251用はすでに予備があるのでこれで2枚の在庫,PC-1211用は壊れた本体がもう1つあるので復活出来るでしょうし,PC-1245用は日本製の予備がもう1枚ありますが,これとはデザインが少し異なるようですので,比較検討の意味も込めています。

 PC-1246用は予備も含めて3枚にするかどうか迷ったのですが,これについては予備を持つ必要はないかもなあとケチってしまいました。送料までいれてしめて$119,地味に円安が効いてきますねー。

 2月2日に注文を出しましたが,このお店は月曜日にまとめて発送するそうなので,焦らず待ちます。米国時間の2月6日にUSPSで発送したとの連絡がありました。

 USPSの引き受けが2月10日,ロサンゼルス空港から飛び立ったのが2月11日,日本に到着したのが日本時間で2月16日ですから,郵便にしては上出来でしょう。

 良く2月17日には通関手続きが終わり,国際交換局である川崎東郵便局を出たのが2月18日,近所の郵便局に届いたのが2月19日で,本日2月20日の午前中に私の手元に無事に届きました。

 こちらは,USPSと日本郵便ですし,番号できちんと追跡が出来ますからなにも心配していませんでした。時間が少々かかるのは郵便だからですし,日本郵便は海外の郵便も土日に配達はしません。だから結局3週間もかかりましたが,1つ1つを見ていくと決して滞留していたわけではないとわかります。

 時間はかかってもよいので,荷物が追跡出来ること,そして何かあったときにこちらから連絡が出来る事というのがとても大事な事で,安心に繋がるものであるということを改めて感じたわけですが,それって確実に届けてくれるものであるなら本来必要のないものでもあるわけです。

 その点で言えば,後者のUSPSと日本郵便は追跡でなくてもむしろよくて,逆にAliexpressこそきちんと追跡ができないといけません。まして日本国内で追跡出来ないなんてのは,ちょっと話にならないと思います。

 一応,私は追跡可能という運送手段を選んであります。ですから途中から追跡できないことは想定していませんし,納得もしていません。ですので,Aliexpressのショップに,改めてお礼のメッセージを送ったついでに,途中から追跡出来なくなった,佐川に引き継いだといってるけど違うところがもってきた,文句をいったほうがいいよ,と言っておきました。

 さて,届いたものはまだ試せていません。Si5351Aも偽物かも知れませんし,LCDだって上手く交換作業が済むかどうかは私次第です。

 まだ寒いので作業をする気にもならず(ちょっと体調もよくありませんし),もう少し暖かくなったら作業を始める事にしましょう。

唯一無二のレンズ

 気になっていたレンズを,とうとう買うことにしました。

 厳密に言うと,変わったレンズだなと気になっていただけであり,買うか買わないかで気になっていたわけではなく,それこそ買おうと持ってから実際に購入鉄津起きに至るまでの行動は15分にも満たないものでした。

 AF Zoom-Micro Nikkor ED 70-180mm F4.5-5.6D,という長い名前のレンズです。

 Nikkorというほどですので,もちろんニコン。1997年生まれといいますから,ちょうど名機F5と同じ時期に投入されたレンズです。

 F5と同じく,高い理想を技術と材料で実現した贅沢なレンズと言えると思いますが,先に結論を書いてしまうとあまり売れなかったそうで,中古市場では幻のレンズになる一歩手前の印象があります。少なくとも,欲しい時にいつでも買えるレンズではないですし,同時に複数のレンズを比較して一番良いものを選ぶ事の出来るようなレンズでもないということです。

 ではなにが高い理想だったのか。それはZoomでMicroだったことです。

 1990年代の終わり頃というのは,まだまだズームレンズの画質が単焦点のそれには届かないものであるのが常識で,どちらかというとズームであることの利便性を訴求した商品が多数派だったと記憶しています。

 それは1本で広角から望遠までとりあえずカバーする便利ズームであったり,ボディとのセット価格を引き下げるためにとにかく安く作った標準ズームであったりしました。

 性能ではなく,それ以外で選んでもらえるレンズである事が,当時のズームレンズだったのです。

 この時期のズームレンズは,ビデオカメラの製品開発の過程で鍛え上げられたそうです。コンスーマー向けのビデオカメラの市場が大きくなり,開発競争が激しくなるにつれ,画素数が限定されるビデオの世界で倍率とコストで競争が起きるのは自明です。

 一方で,21世紀には当たり前になる,単焦点に迫る高画質ズームの萌芽もこのころで,それらは新しいチャレンジとして自ずと高額になる運命を背負い,しかし高額商品を手にできる「保守的なユーザー」の厳しい評価に挑み続けねばなりませんでした。

 そんな中で生まれたのが,このAF Zoom-Micro Nikkor ED 70-180mm F4.5-5.6Dです。

 今さら説明の必要もないでしょうが,随分昔に書かれた「ニッコール千夜一夜」の第18話に登場するこのレンズは,当時の記述らしく,この商品が持つ可能性や開発者の熱量を考えた時に,これが今の「ニッコール千夜一夜」に採り上げられていたら,と残念でならないほど,実にあっさりと,別の言い方をすれば禁欲的にまとめられています。

 曰く,花のマクロ撮影が流行していた,花の撮影こそズームが便利なはず,しかしズームとマクロ(マイクロ)レンズとは両立しない難しい技術,しかもフィールド撮影が目的なんだから持ち運び出来ないとダメだ,と言う制限のなかで,2年歳月を経て完成したのが,このレンズだとあります。

 14群18枚,重さは1kgを越える,まるでガラスのかたまりで,最終的な価格は168000円とあります。前述の通り1997年に発売され,2005年に販売が終了したという短命なレンズです。

 正確なことは分かりませんが,当時はまだニッコールという名前に厳しい基準があり,焦点移動があったらZoomを名乗れないとか,様々な性能の基準があるなかで,Zoomと歪曲収差があってはならないMicroとの両立は,さすがに困難だったのではないかと思います。

 そしてその性能は,70mmから180mmまでのズームをF4.5から5.6まででカバーし,全域で37cmまで寄れ,倍率は180mmでは1/1.32倍と立派なマクロレンズです。しかも通常のマクロレンズと違って被写体との距離によって露出倍数が変化しません。どこでも露出倍数は1なのです。

 ZoomでありMicroであるこの見事のレンズは,新しいマクロ領域の撮影方法を開拓しました。マクロ撮影を行った人なら経験があると思いますが,構図を先に決めるとフォーカスが合わず,フォーカスを先に合わせると構図が狂うということが多いです。

 構図の調整だけではなく,フォーカスも被写体との距離で調整することがあるマクロ撮影では,自分が動けなければ手も足も出ません。さらに相手が動く被写体ならまずます難易度が上がります。

 そこでズームです。ズームが出来れば構図も拡大率も思いのままです。ズームレンズは撮影者が動かずに済むため,多くの名のある写真家が単焦点レンズを使って「自ら動け」と若者を鼓舞した時代にあって,実は自ら動けないマクロ撮影こそ,ズームが欲しい撮影の代名詞だったというわけです。

 とはいえ,設計はとても難しいものだったそうです。噂に聞くに,メーカーを越えたレンズ設計者のとある座談会では「真似の出来ないレンズ」というお題でこのレンズが筆頭に上がったとか,似たようなレンズが他社から全く出なかったのは売れそうにないからというより,そもそも作れなかったからじゃないかとか。

 実際,このレンズは発売時にいくつかの賞を受賞していますし,学会発表では第一回光設計大賞という名誉ある賞も手にしています。このエピソードを聞くと,このレンズの設計は同業者を震撼させたレンズだったと言えそうで,写真家よりも設計者の心に響いたレンズだったということでしょう。

 しかし,一部の写真家はこのレンズの優位性に気付いており,もともと数が少ない上に分かっている人は手放さず使い倒しますので,中古市場にも出にくく,まして新品同様の程度のいいものなど期待薄なわけです。

 登場が1997年というのもまた問題で,18枚ものレンズに世代の古いコーティング,プラスチック製の鏡筒に塗装の劣化,華奢なスイッチやレバーの経年的な劣化と破損,VR非搭載は当然としてAFモータすら内蔵ではないと,明らかに旧世代のレンズなのです。加えてとっくの昔に修理可能な時期を過ぎており,つまり壊れたらもうおしまいです。

 かように厳しいレンズではありますが,世界初のズームのマクロレンズは,今のところ唯一のレンズでもあり続けており,これを使いたいならFマウントを選ぶしか選択肢がありません。

 とまあ,私の事情に話を移すと,やっぱりマクロ撮影は難しいのです。MicroNikkor60mmF2.8Gは性能は申し分ないのですが,いざマクロ撮影をやろうとすると思い通りにいきません。三脚を使えば大丈夫なのですが,小さい相手に大げさな準備というのも敷居が高く,だったらスマホで十分か,といういつもの結論に流れてしまいます。

 そんなとき知ったのがこのズームです。マクロ領域こそ望遠だ,と言うニコンの設計者の主張を頭の片隅に残っており,でも本当ならズームこそ最強なんじゃないかと,もしかしたらマクロ領域の撮影を根本から変えてくれるんじゃないかと,そんな風にストーリーが組み上がって,中古市場を探して回ることになったのです。

 とはいえ中古は縁のものです。いいものがなければ諦める予定だったのですが,幸い自称Aランクの中古がキタムラの地方のお店に安価に出ており,クモリもなく大きな傷もなく,フードも付いているというので買いました。マップカメラではフードなしの使用感あり,でこれよりも高い値段がついていました。

 しばらくして届いた個体は,Aランクと言うよりBランクという感じの使い込まれた1本で,細かい擦り傷も多いですし,プラスチックのテカリもあるし,スイッチも動きが渋く,値段相応だなという感じです。でもいいんです,私も使い倒すつもりで買いましたから。

 幸い小さいホコリはあるものの,クモリもなく,性能も出ているようです。光学的には問題なく,実用品として使うにはなんら問題はありません。

 ただ,そもそもD850のお奨めレンズリストからには記載がない(これはこのリストが作られた当時にすでに販売が終了していたからかも知れませんが),そんなに高解像度なレンズでは覚悟しておくべきだとも思います。

 試写してみましたが,まずマクロ領域では申し分ないです。解像度も十分,歪曲などの収差も問題なく,なにより撮影が想像以上に楽ちんです。撮影倍率が変化しないことも想像以上に便利です。

 一方でAF-S MicroNikkor60mm2.8Gのような切れ味はありませんし,あと一歩寄りたいというところで限界を迎える点で,やっぱ等倍撮影というのはいいなあと思い直した次第です。

 AFが遅いことはなにも問題はありません。確かに静物ならAFは便利ですが,相手が動くならもうMFであわせた方がずっと楽です。

 絞り開放のF5.6でもF8でもF11でもそんなに画質に変化はありませんから,確かに絞り開放から使えるというのは嘘ではありませんが,F11まで絞ってこれか,というがっかり感があるのは事実です。

 ということで,VRがない事を加味すると,F8くらいで撮影するのがこのレンズの良い使い方ではないかと思いますが,総じて本来のマクロ領域の撮影については期待通りです。

 ではもう1つ,一般撮影ではどうでしょうか。実はマクロレンズというのは一般撮影でも好ましい結果を得られることが多いです。やや暗いので敬遠されがちですし,一般撮影用にはもっと良いレンズがたくさんありますのでわざわざマクロレンズで撮影することもないのですが,ボケ味といい解像度といい色のりといい,なかなか高い次元でバランスしているのがマクロレンズです。

 MicroNikkorを名乗る事の出来るほど収差が補正されているズームですので,私はかなり期待していました。しかしこの期待には少々届かなかった様です。

 まず,全体に眠いです。解像度が不足し,線が太いです。それから若干ハレ気味で,白く飛びがちです。またコントラストも今ひとつで,このあたりは当時のズームレンズらしい個性を引き摺っているように思います。

 これらは絞れば改善しますが,F11あたりまで絞ってしまえばVRがないこのレンズではかなり撮影可能な状況が限定されてくるでしょう。歪曲収差がソフトウェアによって完璧に補正される現代において,光学的に補正することに主眼を置いたこのレンズの出番は,もうないのかも知れません。

 とはいえ,ボケはなかなか良好です。自然ですし,滑らかです。そしてちゃんと光を読めば立体的な表現も十分可能なレンズだと思います。

 ちなみにAIですので,F2にも使えます。実際撮影してみましたが,まったく問題なく使用することができました。

 でもさすがに25年前のレンズですね,これを現代にも通用する等とはちょっと言えないですし,はたまたこれに10万円の価値があるかと言えばないと思います。マクロ撮影はセンサのサイズが小さくても構わない撮影領域ですし,持ちやすいことやブレの防止,拡大率やフォーカスの合わせやすさという点が重要ですから,実質的にもうスマホに任せるべき世界なのかも知れません。

 Fマウントが徐々に終わりの時を迎える中で,これは私が買うおそらく最後のFマウントレンズとなることでしょう。実際の稼働率は上がらないとは思いますが,なにより技術的に大変興味深い唯一無二のレンズですし,また評価が大きく分かれるレンズとして,おそらく最後まで持っているレンズになるんじゃないかと思います。

 春になったら外に持ち出してみます。

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