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2010年02月の記事は以下のとおりです。

やっぱり速さは力

  • 2010/02/18 17:27
  • カテゴリー:散財

 私が愛用するUSBメモリは,GREEN HOUSEのPicoTurboというものです。高価なSLCタイプのNANDフラッシュを搭載するだけに,信頼性,耐久性,そして高速性といずれも高い次元のスペックを誇りますが,これがいよいよ寿命を迎えたようです。

 ここ数日,100MB程度のPDFファイルがいくつも壊れ,物理フォーマットを行った後でも改善されなかったという状況から,ちょっと信頼できなくなっていました。しかし定番ソフトののChkFlshでもエラーは見つからず,捨てるには惜しいしでも使いたくはないし,という困った状況にありました。

 騙し騙し使おうかと思いましたが,毎日のように酷使していましたし,2GBという容量もちょっと不便だと思うようになったこともあって,買い換えることにしました。

 ところで,昨年4月にSanDiskのUSBメモリをWindowsVistaのReadyBoost用に買った際,ベンチマークを取ったわけですが,SLCとMLCの速度差,特に書き込み速度の差は圧倒的でした。次もSLC採用のものが欲しくなります。

 そこで,先日会社の帰りに,そもそもSLCタイプのUSBメモリなぞ売っているのかどうかを調べるために,量販店に足を運びました。確かに売られてはいるのですが,8GBで1万円近くもするゴージャスっぷりです。千円台で売られているものと列んでいると,10倍近い差がSLCかMLCかの差にあると説明されても,首をひねる人が大半でしょう。

 絶対的な生産量はMLCの方が圧倒的に多いわけで,SLCは特殊なNANDフラッシュになっていることを遠い目で空を見上げてしまう私ですが,ふと視線を下げると,ワゴンの中にバッファローの4GBのUSBメモリが1280円で投げ売りされています。

 4GBで1280円ですから,正直安くはないです。それにこの量販店は私の期待をことごとく裏切るお店です。この店についていえば,安い商品には必ず裏があります。

 しかし,ちょっと様子が違っていたのは,古そうな箱の表面に「激速」と書かれていたことです。この「激速」,現行商品でも書かれているものですが,これは速度を売りにしたSLC採用の証です。

 箱をしげしげと見ますが,どこにもSLCとは書かれていませんし,転送速度も書かれていません。わかりにくいバッファローの製品名を全部頭に入れているはずもなく,ReadyBoost対応と書かれていることで,一定の水準をクリアしているであろうことだけは分かります。

 1280円ですし,ちょっとアルコールが入っていたこともあって,買ってみることにしました。

 大正解でした。

 家に帰って調べて見ると,SLCを採用して速度と信頼性を高めた高級モデルであること,すでに入手できない古いモデルではあるが当時はそこそこいいお値段で売られていたことがわかりました。

 さらに,TurboUSBなどという怪しげな高速化手法に対応したものらしく,外形デザインの最低さには目をつぶるとし,USBメモリとしてはお値段以上の価値があったこと,そしてベンチマークの結果次第でPicoTurboの後釜として抜擢できる可能性が出てきました。

 ということで,早速ベンチマークを取ってみます。PicoTurboと同程度なら体感上の速度差は感じないでしょうから,PicoTurboは引退することになるでしょう。

 ベンチマークは前回同様CrystalDiskMark 2.2を使います。マシンはVAIOのtypeGで,OSはWindowsVistaSP1と,前回と同じです。ただ,前回とは違う結果が出てしまったので,PicoTurboもベンチマークをやり直しました。

 結果です。まず,PicoTurboから。

GreenHouse PicoTurbo2GB GH-UFD2GTB

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転ばぬ先の杖

 新しい音楽メディアとしてCDが登場したのが1983年。今年で実に27年になります。生まれたときには既に身の回りにCDがあった人たちがすでに27歳になっているということも衝撃的ではありますが,ともあれお茶の間に「デジタル」という言葉とその先進性を持ち込んだ,記念すべきメディアであることは,改めて書く必要もありません。

 そのCDは,かつてのアナログメディアの欠点をことごとく克服したことでも「明るい未来」を印象づけたものであったのですが,その1つに寿命が半永久的,というものがありました。

 かつてのレコードは針が溝の上をなぞっていく仕組みなので,接触している以上寿命は有限であることは誰の目にもわかりやすかったのですが,CDはレーザーで信号を読み取る非接触型なので,接触することが原因で起こる劣化は,なるほど「ない」といえるわけです。

 しかし,子供でも分かることですが,形あるものはいつか壊れる,CDについても例外はありません。大事に保存しておいても,酸化,分解,という形で壊れていくものです。

 CDは誕生してまだわずか27年です。加速試験という方法で十分な長さの寿命を確認しているのは確かですが,どんなに古いCDでも27年以上の時間を経過したものは存在しないわけですから,これから先,一日一日が劣化との闘いになるように思います。

 実際に,すでに古いCDは大事に保管してあっても破損して読めなくなっていると言う話も耳にします。多くは反射層のアルミの蒸着の剥がれ,によるものだそうで,こうなるともう復活させる方法はありません。

 ついでにいうと,CDはそのアルミの蒸着が薄い保護膜で覆われているだけで,ほとんど露出に近い状態になっています。危なっかしいといつも思っているのですが,これがDVDだと貼り合わせという構造のおかげで,反射層が露出していません。反りにも強く,製造が大変というかつての欠点が克服された現在,なかなか理想的なメディアであると個人的には思います。

 話が逸れましたが,私が初めてのCDを購入したのが1987年。ですので今年で23年が経過しています。中古で買ったものを含めると,最古のものは25年が経過しているものもあるはずです。

 温度や湿度,光やガスなどの環境要因が多く懸念される私の住環境において,すでに劣化しているCDがあってもおかしくなく,それはもう刻一刻と現実のものになっているのではないか,という危機感がここ数年ありました。

 劣化したCDは工業製品ですので,また買い直せばいいように思うのですが,一方で著作物であるという性格上,廃盤になっているとお金の問題ではなくなります。私に限らず,大多数の方はCDという入れ物に入った中身に対してお金を払っているわけですから,器が壊れてしまう前に中身をきちんと保存しておく必要があります。

 そこでCDのバックアップを真面目に考えるようになりました。ディスクイメージで保存しておけば,オリジナルが劣化して失われても,CD-Rに復元することが可能になります。

 ところが,音楽CD(以後CD-DAと書きます)は,CD-ROMと違って完全なディスクイメージを作る事は難しいのです。

 1つには,CD-ROMに比べてエラーの発生率が高いこと。音楽のような連続したデータは仮にデータが訂正できずに誤っていても,前後のデータの平均を取ればそんなに外すことはありませんが,CD-ROMのような用途では1つ違っただけでもまずいわけで,元々強力だったエラー訂正能力をさらに高めてあります。

 もう1つは,これは実験するとわかった,という話で,理由は諸説あるし,私もなにが正解なのかよく分かりませんが,ディスクの先頭と末尾のデータの位置が,読み出すドライブによって異なる,というものです。

 これはオフセットという言葉で知られている話なのですが,正しい位置より前で読み出しても全体にずれるだけで問題なし,正しい位置より後ろで読み出してもほとんどの場合読めなかった部分は無音区間ですから,別に音楽として失われるものはありません。

 しかし,あるアドレスに入っている値を2つのドライブで比べてみると,全く異なる場合があるということになりますし,ごく希なケースとして先頭や末尾が無音でないようなCDの場合は,データがわずかとはいえ欠損してしまうわけですから,果たしてそれで正しく読み出せたことになるのかどうか,と聞かれればNoでしょう。

 もともとファイルシステムを持たず,連続したデータを実時間で取り出すことだけを考えて作られたCD-DAを,ファイルという形にパックして実時間に従わない形で扱おうというのですから,リッピングというのはいわばPCを使ってマイクで音を録音する行為と同じといってよく,アドレスがずれたり無音区間の長さが少し違ったりするのは当たり前で,気にすることなどないようにも思うのですが,やはり気持ち悪いのは確かです。

 余談ですが,このオフセットが発生する原因について,よく言われているのがCD-ROMにはアドレス情報があり,CD-DAにはアドレス情報がない,というのがあります。確かにCD-ROMの場合,セクタから読み出すデータの中にアドレスが書き込まれていて原理的には,データと同時にアドレスを読み出す事も可能です。

 しかし,CD-DAにアドレスがない,というのは誤りで,サブコードのQチャネルに書き込まれた1曲目の先頭位置からの経過時間がアドレスとなります。そしてCD-ROMのセクタに書き込まれたアドレスというのは,この経過時間と同じ値です。

 1曲目の先頭の位置をどこにするかがドライブごとに違う,と言う意見もあります。1曲目の先頭位置からの経過時間がすなわちアドレスなので,先頭位置がずれればずれた分だけアドレスもずれるというのがその根拠のようですが,残念ながらCD-DAの場合でもQチャネルに書かれた経過時間の値そのものは変化しませんので,そのアドレスに書かれたデータは1つしかありません。

 また,CD-ROMのセクタには同期用の情報が書き込まれているが,CD-DAにはこれがない,という意見もあります。確かにその通りで,なかなか説得力もあります。CD-ROMの仕様が策定される際に必要がなければ追加されることはなかっただろうと考えると,これはちょっと否定しにくいです。

 信号処理,特に複数ブロックの読み出しが必要なC2エラーの訂正にかかる時間だけデータの出力が遅れるのが原因という意見もありました。だからドライブのメカの違いではなく,使っている信号処理LSIによってオフセットの値が変わるのだ,と言う主張です。

 これも説得力があります。前述のようにオフセットには個体差はなく,同一型番のドライブなら同じオフセット値を取りますし,違う型番でも同じ信号処理LSIが使われているとまったく同じ値になりますから,少なくともオフセットはバラツキで偶然発生するのではなく,発生するべくして論理的に発生しているようです。

 そこで話を少し前に戻します。CD-ROMの場合,エラー訂正を行った後のデータの中にも,アドレス情報と同期用のデータが含まれています。CD-ROMデコーダLSIは,データと共にそのデータのアドレスも正確に把握出来るようになっています。

 しかし,CD-DAの場合,アドレス情報についてはサブコードに書かれていますし,同期もテラー訂正前に取られることになるので,含めてエラー訂正前のアドレスしか残っていません。

 ですから,もしもエラー訂正に時間がかかってしまうと,同期もずれるしアドレス情報も狂ってしまうことになるはずです。

 オフセットがゼロのドライブもあるので,これらは処理時間がゼロなのか,というとそういうことではなく,処理時間を含んだ形でデータを出力するようにすれば解決します。

 起きている状況から考えて,CD-ROMでは正確である必要はあっても,音楽再生ではオフセットをゼロにする必要はないということから,リッピングの場合も再生された音楽のデータがオフセットを持ったまま出てくるようになっている,という風に考えた方が良さそうです。そして,オフセットゼロのドライブは,特別なケアを施してデータの同期を取ることで,リッピングの性能にこだわっているということでしょう。

 つまり,CD-DAにおいてもオフセットゼロにすることは可能なのだが,多くのドライブは音楽用のCDプレイヤーがそうであるように,オフセットをゼロにすることは面倒なのでやってません,ということになるというのが,私の結論です。

 さて,リッピングのためのソフトはオフセットをきちんと管理できるExact Audio Copy,通称EACを使う事にします。

 ドライブは,安かったと言う理由で購入した日立LGのGH20NS10を試してみようと思ったのですが,これは+637サンプルのリードオフセットと,+30サンプルのライトオフセットがあります。

 ところが,EACにこれらを設定し,リッピングして読み出したデータをCD-RWに書き込みリッピングし,オリジナルのデータとCD-RWのデータを比較すると一致しないのです。

 悔しいので徹底的に調べて見ることにしました。

 まず,先頭と末尾がゼロではないPCMデータをつくります。そしてこのデータをCD-RWに焼き,CD-DAを作ります。

 これをリッピングして,バイナリエディタで調べてきます。検証はノートPCに内蔵されていたパナソニックのUJ-852Sで行いました。UJ-852Sは,リードオフセットが+72,ライトオフセットが+60です。

 結果,このドライブでリッピングすると,先頭は完全一致しますが,末尾は72サンプル分のゼロが追加されていました。データの欠損はありませんが,データのサイズが72サンプル分だけ大きくなってしまいました。

欠損がないので問題ないといえなくはないのですが,問題は書き込みです。このCDを作る際に,CDRDAOを経由すると,ライトオフセットである+60サンプル分だけ,先頭がゼロで上書きされてしまいました。

 先頭の60サンプルなど普通のCD-DAは無音部分ですので,別にゼロが上書きされても実害のないのがほとんどだと思いますが,実際に今回のCD-RWをリッピングすると,オリジナルとは異なるデータ列になる事がわかります。

 むしろこれが問題です。私の持っているドライブで一番新しいGH20NS10はCDRDAOを経由せねば書き込みが出来ません。だから,ドライブを使った場合に考えられるのは,リード時は末尾に637サンプル分のゼロが追加され,ライト時は先頭の30サンプルがゼロで上書きされるのです。

 そこで,数年前に購入してほとんど出番のなかった,プレクスターのPX-W5224Aを引っ張り出します。オーディオ性能が高く,1万円程度で買える廉価版であり,しかもCD-Rドライブの最終世代という事で買うことにしたものですが,ほとんど使わずにいました。

 このドライブは,リードもライトもオフセットはゼロです。本当かと思って先のPCMファイルで調べると,確かにオフセットはなく,このデータをライトしたCD-RWをリッピングしたデータと,オリジナルとを比較すると完全一致します。

 ということで,リッピングはPX-W5224Aを使う事にします。

 さて,あとは圧縮をどうするか,と言う話になりますが,ロスレスのコーデックから,最も標準的であり,オープンソースで,バージョン間の互換性も高いとされ,様々なプラットフォームで動作するFLACを使う事にしました。

 FLACは圧縮率も高くありませんし,エンコードも高速ではありませんが,ソースが非公開だったり使っている人が少ない,あるいは現在も開発中というソフトだったりすると,いざというときデコードできる環境がなくなっていて困り果てることもあるかも知れません。なんとかFLACを使いこなしてみましょう。

 まず,圧縮率と速度の関係です。FLACは-0から-8までのオプションで,圧縮率を選ぶことができます。最高圧縮率の8では速度が随分遅くなるのですが,ならいくらならいいかを調べる必要があります。

 そこで,ある音楽をリッピングしたファイルを用意し,これを実際にエンコードしてみます。結果は以下のようになりました。

-8   12.14秒  圧縮率0.652
-8 -V 13.56秒
-7   8.75秒  圧縮率0.655
-7 -V 10.04秒
-6   3.85秒  圧縮率0.655
-6 -V 5.01秒
-5   3.57秒  圧縮率0.655
-5 -V 4.76秒
-4   2.87秒  圧縮率0.660
-4 -V 4.15秒
-3   2.44秒  圧縮率0.673
-3 -V 3.48秒
-2   2.66秒  圧縮率0.695
-2 -V 3.71秒
-1   2.42秒  圧縮率0.700
-1 -V 3.41秒
-0   2.24秒  圧縮率0.709
-0 -V  3.26秒

 -Vというオプションはベリファイを行うオプションで,エンコード時にデコードも行い,データの一致を確認するオプションです。

 これを見ると,-7と-8の間でわずか0.2%しか違わないのに,時間は1.4倍も増えています。割が合いません。しかも-7から-5まで同じ圧縮率なのに,時間は1.8倍も差があります。こちらも割が合いません。

 -4になると0.5%の差がありますが,時間は1.3倍になり,随分状況が変わってきます。-3では1.3%の差が1.18倍に時間差になっています。実は-2では時間がかえって増えてしまうという結果が出てしまい,あまりあてにならない数字になってしまいました。ディスクキャッシュの関係ではないかと思っています。

 まあ,どのみち-2などは圧縮率の関係で使うつもりはありませんので無視させていただき,一番リーズナブルな感じがする-4を選ぼうかと思ったのですが,なにせファイルのサイズもあまり大きいもので試したわけではなく,圧縮率も出来るだけ小さい方がいいなあと思っているので,ここは-5あたりを選ぶことにします。

 実は-5というのはデフォルトの設定値であり,なるほどこのあたりが一番おいしいということなのでしょう。でももし,CD300枚をリッピングする時にファイルサイズが5%違ってくると,最終的には1.1GBも違ってきます。悩ましいところですが,
 
 あと,-Vオプションを使うかどうかですが,-5で1.3倍も時間がかかっています。ほとんどの場合,ベリファイをしなくても問題がないことを考えると,安心代として3割増しというのはちょっと高すぎる気がするので,やっぱり使わないことにします。

 あとは大きめのハードディスクを調達するだけで準備はOKです。

 しかし,多くのCDを全部リッピングするには,随分と時間がかかることでしょう。そこまでして価値がどのくらいあるのか疑問ではありますが,お金では解決しない問題ですので,辛抱してやり遂げようと思います。

大型裁断機に圧倒される

  • 2010/02/01 14:21
  • カテゴリー:散財

 2006年にScanSnapを導入した私は,自宅と実家にある雑誌や本,資料などをスキャンして,かなりのスペースを節約してきました。

 実際,一度読んだら二度と読まないものって実に多くて,そういうものは思い切って処分するのも手なのですが,そういう時に限ってもう一度読みたいとか,そんな風に思うものです。

 とりわけ,技術系の雑誌や本は資料的価値のあるものも多く,今必要でないとはいえ,ひょっとすると未来の自分を救うかもしれない,と思うと,やっぱり捨てられません。

 それで電子化するという作戦に出たのはいいんですが,問題は綴じて本になっている状態を紙にばらして,スキャンできる状態にすることです。想像すれば分かることですが,これが実に大変です。

 一枚一枚ちぎるなんてのは話にならず,普通のカッターナイフで切るのは仕上がりも効率も悪い上,怪我はするわ床を傷つけるわゴミは出すわで,なにひとつ良いことはありません。

 当時から,事務機メーカーの大型裁断機がScanSnapユーザーの間で売れていることは知っていましたが,これは3万円以上もする高価なもので,おいそれと買えるものではありませんでした。

 そこで,私は一度に30枚程度しか裁断できないペーパーカッターを購入し,分厚い本は何度かに分けて,裁断していました。例えばトラ技などでは3から4回くらいに分けて裁断をしていました。

 ですが,トラ技3年分とか,広告も含めてスキャンとか,そういう状態になるともう腕も肩も痛くなるほどです。実用レベルとはいえお世辞にも綺麗に裁断できているとは言えませんし,なんとかしたいなあとは思っていました。

 つい先日,その大型裁断機が1万円ちょっとで売られているという話を耳にし,探して見ると,10900円で中国製のものが販売されていることがわかりました。amazonでは14800円なので,そのへんはさすが中国製,同じものなのに実売価格がバラバラです。

 細かい製品名などは意味もないと思うので書きませんが,一応スペックは,

  大きさ 約38(縦)×53(横)×17.5(厚さ)cm
  重さ 17kg
  最大裁断厚 37mm

 と,まあなかなか勇気のいる仕様です。

 そもそも,37mmってコピー用紙で400枚といいますから,そんなの素人にはどう考えてもオーバースペックです。それにこの17kgってなによ。

 設置面積,重量を考えると,処分する雑誌の方が小さいくらいじゃないかと思うほどです。

 購入者のレビューとしては概ね好評で,細かい文句はあるにせよ,1万円なら文句も言えないという実にサバサバとした感想です。

 人気商品らしく,安い店はすでに完売。ところが数日後,偶然在庫のあるのを見つけ,かなり迷いましたがポチりました。いやー,17kgですよ・・・

 この週末に届いたのですが,まずもって目障りなほどの大きさです。もしも嫁さんがいたら,裁断機ごと家を追い出されるんじゃないかと思うほど,暴力的な感じがします。

 大きく重く,重機のような無骨さ満点で男心をくすぐりますが,作りの雑さはやっぱり中国製で,塗装は剥げている,汚れている,溶接が綺麗でない,無理に板金を曲げて部品を取り付けてある,使い道の分からないパーツが付属している,説明書はさっぱり役に立たない,などは覚悟しておく必要があります。

 ちなみに,私の場合,ネジが1つ外れて転がっていました・・・大丈夫か,これ。

 安全ロックが付いているとはいえ,あくまでロックがかかってからは安全,と言う話に過ぎず,37mm厚の紙が入る隙間にはロックがかかってなくても手が簡単に入ります。長いハンドルがもし何かに触れて刃が下りたら,指など簡単に飛んでしまうと思います。

 大きな力のかかる,しかも危険な道具なので,取り扱いには細心の注意が必要ですが,この手の製品にはあると思われる,工場での検査を合格したという印が,どこにもありません。職人さんが手作りしてる感じが丸出しなだけに,力を入れて裁断を行った時に破損したりはしないか,と非常に不安です。
 
 ちょっとやばそうな雰囲気に及び腰になりながら,話の通り少々油で汚れているのでエタノールで綺麗に拭き取り,ともあれ裁断してみます。

 おー,これはすごい。確かに一刀両断です。しっかり本を押さえで固定しないと斜めに切れたりするのですが,切るときには全く力がいりません。切り口もきれいですし,なんと言ってもゴミが出ません。

 ということで,分厚い雑誌を裁断してみましょう。

 今やとても貴重なのではないかと思われる,1984年4月号のトランジスタ技術です。この時期のトランジスタ技術はトランジスタとは無縁の一般人からも「電話帳」と揶揄される専門誌だったわけですが,そのほとんどは購入直後に三枚におろされ,広告は捨てられてきました。

 私はこの号がどうしても読みたくなり,最近古本屋で買ったのですが,全部で約700ページという製本の限界にチャレンジした圧倒的なボリュームと,Japan As No.1時代の勢いに気圧されつつ,特に広告の懐かしさと面白さに本文以上の時間をかけて1枚1枚きっちり目を通してしまいました。

 例えばですね,今はT-ZONEと言われるお店が亜土電子だったころの広告が出ています。広告の内容は電子パーツとキットの広告ですが,なんと9ページもの広告です。今はなきダイデン商事が7ページ,藤商電子が6ページ,若松通商でなんと10ページです。

 90年代にはPC-9801用の周辺機器メーカーとして知られたグロリアシステムズはこのころApple][やPC-8001のデッドコピーの基板を売っていますし,IOデータ機器も1ページだけ,PC-8801用の拡張ユニットなどを広告しています。コンピュータリサーチや緑電子,ICMも広告が出ていますよ。懐かしいですね。

 お,本多通商の広告も見つけました。CP/Mですか・・・当時からマニアックですね。スーパービデオもあります。テレビ修理技術者募集って,応募した人たちは今どうしているんでしょうか。

 鈴蘭堂の広告もあります。コンパスオカモトの広告もあります。本州商会もCP/Mの広告を出しています。おお,キョーワインターナショナルの広告もあります。ロビン電子,イケショップ,広瀬無線,タンゴトランス,カホ無線・・・あれ,前が曇ってよく見えないや・・・

 求人広告もなかなか盛況ですね。九州松下電器,八重洲無線,タイトー・・・そう,80年代は,まだまだ日本人が普通に働く意義を見つけていた時期でした。

 当時のICの価格ですが,亜土電子の広告によると,74LS00で35円,74HC00が90円です。この辺のロジックICは驚くほどでもありませんが,Z80Aが580円,8086-2が18000円,68000-10が22000円ですか。uPD7220は8000円もします。TMS9918でも3500円ですか。うーん,高いですね。

 4164(64kbitのDRAM)が1350円,27256(256kbitのEPROM)が48000円です。いやー,これは高いわ。

 MOS-FETで,2KS134と2SJ49のセットが2700円,特価で2SC1815が10本100円だそうです。

 こうしてみると,今でも秋葉原にはCPUもDRAMもグラフィックチップもフラッシュメモリも売っていています。当時これらの部品を買う人はハンダ付けも設計も出来る,それ相応の技術力を持っていたので,今のPCパーツとはちょっと違うかも知れませんが,相変わらず秋葉原は電子部品であふれかえっている街なんだなあと思います。

 横道に随分それました。

 さて,この貴重な1984年4月号のトラ技を裁断してみましょう。

 最初に,前部ハンドルを回して押さえを本に押しつけて,動かないようにしっかり固定します。

ファイル 353-1.jpg

 続けて後部ハンドルで本の後ろも固定します。そして注意しながら裁断レバーを押し込むのですが,この時ロック解除ボタンを押さなければ,レバーが下がりません。

 特に抵抗もなく,すっと刃がおり,あの分厚いトラ技の背表紙がころんと転がります。ああ,これはまさに断頭台・・・

ファイル 353-2.jpg

 そして,裁断された本体の様子です。綺麗に裁断されており,紙がさっとばらけてくれます。

ファイル 353-3.jpg

 あとはこれをスキャンするだけです。

 実際には,紙が薄いこと,静電気の発生があること,そして長年密着していたことで,重なって紙が送られたりするので結構手間のかかる作業なのですが,この分厚いトラ技をわずか数秒でばらせるというのは,なんと画期的なことでしょうか。


 それで,私個人としては,費用対効果で大変満足な結果なのですが,残念ながら他の人には全くお勧めできません。確かにこの性能が1万円で手に入るというのは画期的なことですが,あまりに欠点が目に付きすぎるのです。

・でかい,重い
 本をスキャンするために裁断する,と言うだけに,この設置面積とこの重さというのは,ちょっと普通では考えられません。家族の同意はまずもって得られないと思います。それに,常に使うものではありませんから,普段は邪魔なことこの上ないです。

・作りが雑
 別に雑でもいいんですが,安心感が失せるほど雑な作りは,使用中の破損が大事故に繋がるだけに,もう少し考えて欲しいと思います。

・はっきりいって危険
 大型裁断機なんて普通使ったことがない人が大半なわけですが,どこが動いてどこが危険だからどこを触ってはいけないとか,そういう話が一切わからないんですね。これが日本やヨーロッパのものなら,危険なところには手が入らないとか,あきらかに危ない部分には警告のシールが貼られているとか,そういう配慮があると思うのですが,これには全くありません。ごっつい刃が数センチもぐぐーっと下りてくるのを目の当たりにすると,背筋の凍る思いがします。

・ロック機構が簡単すぎる
 安全ロックがあるとはいえ,無理にレバーを押せば壊れて刃が下りてしまう位のものです。それに,レバーが下りないようなロックとはいうものの,ロックがかかるのはレバーを目一杯上に持ち上げた時ですので,途中の位置では上げ下げ自由です。これは危ない。

・案外精度が低い
 裁断面は綺麗ですが,慎重にしないと,すぐに斜めに切れてしまいます。

・中国製・・・
 中国製がいかん,ということではないのですが,例えばネジが1つ外れていたり,意味不明な部品が入っていたりと,もう少し品質に気をつけてもらわないと,本当に怪我をします。怪我をしたら,きっと大けがになるものだけに,自己責任で済ませるのではなく,そもそも事故が起きないような工夫をするべき商品だと私は思います。

 てな具合に,他の方には一切おすすめできません。かなり慎重に扱わないと,本当に恐ろしいことになるような気がします。

 私も恐る恐る使っていますが,私としてはこの半分の200枚の裁断能力でいいですから,もっと小さく,もっと軽い,そしてもっと安全な製品を15000円くらいで出してもらえないかと思います。普通の用途で400枚は多すぎますし,その性能のために大きく重くなり,しかも事故が起きたときの被害も大きくなりがちです。

 近いうちに引っ越しを考えているのですが,引っ越し前にこの巨大な荷物を増やした事への反省も込めて,こういう変なものを買うときには,注意しないといけないと思いました。

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