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AppleKeyboardをUSBでつないで,ああいい気分

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実家の整理をしたとき,古いMacintosh関連のものもいくらか出てきました。今にして思えばもったいないことをしたと思うのですが,当時はとにかく捨てないと,という気持ちが勝ったこともあり,なにを捨てたかよく覚えていないほどです。

 そんな中,奇跡的に生き残った物に写真のAppleKeyboardがあります。

 ある世代以前の方にはとても懐かしい物のはずですが,MacintoshSE,MacintoshIIが登場した時に用意された標準的なキーボードの,日本語版です。モデルナンバーはM0116Jです。

 1986年に登場,日本のアルプスが製造を請け負ったものなのですが,この,今で言うメカニカルキーボードはそんな経緯もあり,キースイッチはアルプス製です。接続はもちろん,ADBです。ADBはキーボードやマウスなどの今で言うHIDをデイジーチェイン出来るインターフェースで,ケーブルでごちゃごちゃする机の上を実にスッキリさせることが出来ました。国産機になれていた私は,当時この段階でアメリカ,そしてAppleの配慮にクラクラしたものです。

 この当時の製品にはありがちですが,紫外線による黄変が進んでおり,当時の美しさは失われていますが,それでもフロッグデザインによってデザインされたキーボードは,ただのキーボードを越えた美しさを放っています。

 さて,このキーボード,どうも私が最初に手に入れたMacintoshSEと一緒に買った物のようなのですが,大切に当時の元箱に入れてありました。ほら,白い段ボールに赤い林檎の印刷があるやルです。

 キーの配列も標準的で,コマンドキーが左右にあり,カーソルキーの配列も綺麗なAppleExtendedKeyboardIIに乗り換えるのはその後なのですが(余談ですがAppleKeyboardもAppleExtendedKeyboardもそれぞれIIに世代交代したとき,AppleKeyboardIIはメンブレン式になってしまったのに対し,AppleExtendedKeyboardはスイッチが変更になったもののメカニカルのままだったので,私はこちらに乗り換えました),乗り換え後も大切に元箱に入れて保管してあったようなのです。

 箱入りですから紫外線も浴びておらず,驚くほど美しかったのですが,実家から持ち帰るときに箱を捨てて中身だけで持ち帰ったことから,急激に黄変が進んでしまいこのざまです。

 捨てるに惜しいからと持ち帰ったはいいものの,ADBを持つ本体など捨ててしまって持っていませんし,今さら買うようなことも考えられません。そのうち中古で売ってしまうか,などと思っていた所,先日ぱっと閃いたのが,ADBをUSBに変換すればこのキーボードが現役に復帰出来るんじゃないのか,ということでした。

 世界中にADBのキーボードを愛する人がいるはず,今ならきっと感嘆に実現出来るはずだとサーべて見ると,iMateという私も知っている往年の変換器が高値で取引されているという話でした。

 もう少し調べると,キーボードの自作で定番化していたSwitchScienceのProMicroを使ったものが公開されていました。もともとArduinoですが,32U4を搭載したマイコンボードとして使うもののようで,書き込めばすぐに使えるバイナリも用意されています。

 ならこれを使ってみようと,ProMicroを早速手配。昔は安かったそうですが,今ではAliExpressで頼んでも1つ700円を超えます。送料を無料にしたかったので無理に3つ買い,届いたのが一昨日のことでした。

 まずはArduinoIDEをインストールし,初期不良がないか動作確認です。ちゃんと動作したので次に進んで,バイナリを書き込みます。これ,コマンドラインから書き込むのってなかなか面倒で,IDEが吐き出したバイナリのフォルダを探し出し,ここに書き込みたいバイナリをおいて,コマンドラインから書き込むのですね。

 試行錯誤を少ししましたが,無事に書き込めたようです。

 はやる気持ちを抑えられず,とりあえず部品集めです。ADBのコネクタはMiniDINの4ピンですが,ちょうどいい物が手持ちにありません。S端子のビデオケーブルを見つけましたが,悪いことに輝度と色のGNDが内部で繋がっているものだったので今回の用途には使えません。

 さらにジャンク箱をゴソゴソ探したところ,8ピンのMiniDINの壊れた奴が見つかりました。なにを思ったか端子が3本しか残っていません。残りの5本はどうしたんだよ・・・昔のわたし。

 ですが,ADBは1選式のシリアルインターフェースです。実は3本あれば問題なく使えます。(もう1本はPowerKeyです)

 そこで急遽ピンを組み直し,MiniDINの4ピンのコネクタを作りました。1本足りませんが,ここを使わないPowerKeyにあてがえば3本で問題ありません。

 このコネクタに3芯のケーブルを繋ぎます。そしてProMicroのジャンパをショートしてVccに5Vが出るようにした上で,VccとGND,そしてDataを繋ぎます。

 Dataは32U4のPD0が割り当てられていますが,ProMicroでは3というシルクがあるランドに出ています。ここをVccから1kΩでプルアップして接続すれば完成です。

 中国からの荷物を受け取ってから40分ほどで完成。なんの問題もなくあっさり動いてしまいました。

 30年ぶりに味わう,AppleKeyboard。なんと心地の良いことか。

 コマンドキーとスペースの間に”`”キーが挟まっていて,ここがミスタッチを連発することになるかもなあと思っていましたが,やはり体は覚えているもので,ちゃんと親指がコマンドキーの真ん中をとらえていました。なにも引っかかる物はなく,とても快適に使えます。

 音は大きいのですが,しっかりした剛性感も,手に馴染む湾曲の具合も,またちょうどいい傾斜も,やっぱりからだが覚えているんだなあと思います。カーソルキーもストレスなく使えますし。

 今日の艦長日誌はこのAppleKeyboardを使って書いていますが,もう毎日使いたいキーボードです。当時は本当にいいキーボードが作られていたんですね。コストダウンばかりが能じゃないんだと思いました。

 とまあ,AppleKeyboardを絶賛するのは,過去の記憶や慣れの問題もあるので偏りがあると自覚しているのですが,それにしても昔のキーボードのなにがそんなに魅力的なのかなとつくづく考えてみました。

 スイッチについては,今も昔もCherryの同じ物が買えますので,スイッチが今と昔で変わったという線はないでしょう。ならやっぱり剛性感でしょうか,それも大きさから来る安定感や接地感でしょうか。

 気付いたことは,キートップです。キートップの肉厚が太く,重くてしっかりしているのです。私のAppleIIplusのキーボードも実に心地よくタイピング出来るのですが,やはりキートップが分厚く重く,押し込んだ時と離したときの慣性が,最近のキーボードとは違うと気が付きました。

 先日のワイヤレスキーボードも心地よかったのですが,これもキートップが重いものでした。一方d,今常用しているキーボードは,スイッチこそCherryのものですが,やっぱりキートップが軽くて完成が小さいのと,おそらく材質がABSではないせいで,音も軽いんだと思います。

 重さとバネの力からその物体の運動は定義されるわけですが,おそらくキーボードについても同じ事が言えて,わずかな違いであっても,人間の体はその僅かな違いを感じ取り,心地よかったりそうでなかったりという感覚を得るのでしょう。

 昨今キーボードブームなわけですが,ともすればスイッチばかりに目が行きがちちな中,形状も含めてもっとキートップにこだわってもいいのではないかと思います。

 ということで,うちのキーボードのもう1つ選択肢が増えました。しかも極上です。とはいえ,私の中では未だにPC-9801Rシリーズ用のキーボードが一番だという意識が残っており,これをUSBか出来たらいいなあなどと思っていますが,悲しい事にPC-9801のキーボードは捨ててしまって手元には残っていません。ああなんと残念な事か。

 私の当時のPC-9801のキーボードは,CTRLキーとCapsLockが左右に並んでいるというPC-9801の最大の問題点を改造で解消したもので,CTRLキーを大型化してありました。キートップはEWS4800のキーボードから移植したもので,使う事のないCapsLockは存在が消されているというキーボードです。

 とにかく快適に使うことにこだわったキーボードだったのですが,音もそんなに大きくなく,滑らかで1.5倍は速くタイプできる,良いキーボードだったと思います。そしてCTRLキーが大きくて使いやすくて,UNIXでも便利,カタカナ入力でも便利と,本当に捨てなきゃ良かったです。

 今回作ったADB-USB変換基板のファームウェアには,そのPC-9801のキーボードをUSBにするものも用意されています。もしPC-9801のキーボードが手に入ったら作って試してみましょう。

 

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