ReaderはLeaderになれそうにない
- 2010/11/27 00:44
- カテゴリー:ふと思うこと
艦長日誌にいろいろ書きたいことがあるのですが,ちょっと忙しくて困ったものです。私のように,暇な時間を長く過ごすと,忙しい事への憧れであるとか,充足感であるとか,そういうものが脳のシワからしみ出てくるものなのですが,それも限度があり,人間の脳みそというのは,本当に不思議なものだと感じます。
そんなことはどうでもいいのですが,電子書籍に注目してKindleを2つ買い,自炊の冊数が2000冊を超え,なおも実家から運び込んだ段ボール8箱分の書籍を日々スキャンし続けている私としては,ソニーのReaderが国内発売されるニュースを無視するわけにはいきません。
なにせ正規の国内販売です。Kindleもamazon.comが販売しているとは言え,輸入という形で入ってきます。サポートもamazon.comが行いますから,日本語によるサポートはありません。
ソニーという日本の会社が日本人向けに電子ペーパーを搭載した電子書籍端末を販売してくれることを心待ちにしている人も多かったと思いますが,果たしてその期待に応えてくれるものでしょうか。
欲しいと思っている人は,自炊をしている人,そして電子書籍を購入して読みたい人,の2つあるはずです。特に後者は北米でのKindleとそのサービスに憧れがあるはずです。
今回国内投入されるのReaderが,意欲的なものになっているなら,私もKindleを買ったことを後悔したかもしれません。しかし,それは杞憂に終わりました。大変残念なことに,ソニーはなーんにも分かっちゃいませんでした。
・パネル
5インチと6インチの電子ペーパーを採用したところは,まあ順当なところです。eInkはPearlという世代で,Kindle3と同じですから,光学特性などは同じと見て良いでしょう。ですから,ここはKindle3と同じです。
大きさ
5インチモデルは文庫本と同じとのことですが,文庫本というのはポケットに入る大きさでありながら,読むときは開いて2倍の大きさになることを,ソニーは忘れています。折りたたむことの出来ない電子書籍端末は,この2つの状態を両立せねばならないのです。
Kindle3は,ペーパーバックのサイズとほぼ同じで,持ちやすいものです。キーボードがあるから大きく見えますが,仮にキーボードを使わなくてもあのサイズは良くできています。
・質感
私は質感の高さを重視する人ではありますが,それも機器の性格によりけりです。電子書籍端末は,あくまで電子書籍の再生装置であり,根源的には本,あるいは紙といった従来の媒体のメタファーであることが,今は望ましいと思います。
その点で,Kindle3は,あのプラスチッキーな安物っぽさが,実に手に馴染むのです。考えてみて下さい。本が,手に取ったときヒンヤリしますか。
・タッチパネル
Kindleがキーボードであるのに,Reraderはタッチパネルです。しかも赤外線方式で,光学特性に邪魔をしません。これは大したものだと思いますが,私個人は必要がありません。
本にメモをすることは私はしないし,日本語を入力することも全くないからです。検索も出来ると便利かも知れませんが,むしろ英和辞書を引くにはキーボードの方が都合が良いのです。
それに,検索は電子書籍の最大のメリットですが,自炊する人はOCRをかけておらず,キーワードの選択が出来ません。この点でReaderを自炊の人が入手しても,せいぜい英語の単語を調べる程度のKindleとあまり変わらない使い方になると思います。
最初から電子書籍として購入したものは文字情報が入っているので問題なく検索の恩恵にあやかれますが,後述するようにReaderはこうした電子書籍の購入に対して,決定的とも言える後ろ向きな姿勢を示しているので,これも期待できません。
・通信機能
最大の問題は,この通信機能が一切ないことです。Kindleがなぜ支持されたのか,国内でわざわざKindleを使う人がなぜ絶えないのか,そこを全然わかっていません。
コスト的な理由もあると思います。国内でのサービスが充実していない現在,3Gを搭載することは無意味という判断もあったのでしょう。
では,サービスが充実したとき,最初にこのReaderを買った人々は,不便を強いられたままになるのでしょうか。kindleの理想が気高いものであったのは,ここに妥協がなかったことに尽きます。
Wi-Fiでもよかったのです。Wi-Fiだとあまり使い勝手は変わらないと言う人もいるでしょうが,Kindleは複数のKindleと,PCやその他のデバイス向けのKindleアプリに仕込まれたコンテンツの情報,例えばしおりを挟んだ位置などを,この通信機能で同期出来るのです。
私のように,通勤時はkindle3,寝る前の布団の中でKindleDXという人は,通勤時に読んだところをいちいちメモすることなく,続きが布団の中で開けるのです。これがどれほど便利なことか。
DRMの関係で複数の機器でコンテンツを共有出来ないかも知れませんが,私に言わせればそのことそのものが,もはや終わっています。Kindleが出来ていることを,なぜやらないのか。その段階で負けですし,やる意味などありません。
・コンテンツのハンドリング
Kindleは通信機能を持っていますし,マスストレージでマウントするUSB接続でコンテンツをさっと流し込めます。
Readerは,あろうことかPCでしか動かない専用アプリを入れないといけないそうです。まあなんと前時代的な。情けないですね。
このことをこれ以上揶揄しませんが,同じ事を言います。Kindleに出来ていることがどうして後発のReaderでやらないのか,あきれてものも言えません。
・価格は比べるべくもなく,Kindle3の方が安いです。自炊の人にはKindle3で十分,Readerの機能は無駄ですから安い方がいいです。購入の人はReaderを活用できるでしょうが,通信機能もないのに,誰がPCに繋いでわざわざ購入をするのでしょう。一体,誰がどういう使い方をするのかという観点における,一貫性がこれほど欠如している商品も,近年珍しいのではないでしょうか。
・まとめ
ということで,なにを考えて国内投入したのか,国内のどんな人をターゲットにしたのか,そのターゲットは今の,そしてこれからの電子書籍をどういう形で切り開いていく人々なのか,その辺をもう一度,頭を冷やして考えるべきです。
今回の導入は,かつてのLIBRIeを彷彿とさせるものがあります。端末はそこそこいい,電子ペーパーも見やすい,しかし誰に売ろうと思っているのかわからない,その人がどういう使い方を望んでいるのか分かっていない,そんなユーザーを愚弄する商品だったが故に,消え去りました。この失敗を,全く糧にしていないのです。
記者会見では,データディスクマンからの流れだと言っているそうですが,データディスクマンから電子辞書の流れというのは,もっとシンプルでもっと一貫性のある,少なくとも支持したユーザーを裏切るようなことはやっていません。同じにされて困惑するユーザーもいるのではないでしょうか。
次に期待しましょう。次があるかどうかは,私にはわかりませんが。