ES2復活までの道その1~修理編~
- 2006/08/28 15:42
- カテゴリー:カメラに関する濃いはなし
現在,うまく動いていないカメラがペンタックスのES2です。
先日調子が悪いと書いたのですが,どうも多臓器不全の様相を呈していて,なかなか手強そうです。そういう読みもあって,まとまった時間が取れないと手出しできないと思い,昨日まで手を付けずにいました。
今回の問題は,大きく2つありました。
(1)突然露出計が動かなくなる。
(2)メーターの指示と異なる速度のシャッターになる場合がある。
最初に発生したのは(1)の問題で,絞りリングを何度か回すと動くようになるのですが,一晩ほど経つとまた動かなくなっています。
「動かなくなる」というより,絞り込み測光のレンズや,レンズを取り付けないでシャッターボタンを押したように,メーターが振り切ってしまうのです。ですから,絞り込みレバーを上げれば,露出計がきちんと動作するようになります。
先日は軍幹部のカバーを外し,擦動抵抗に繋がるリード線をいじっているうちに現象が出なくなってしまい,とりあえず直ったことにしておいたのですが,数日後に再発,もう少し本格的に分解することにしました。
擦動抵抗に繋がっているリード線は屈曲していますので,内部での断線があるかもしれません。また,抵抗とのハンダ付けがダメになっているのかも知れません。そこでもう少し柔らかいリード線に交換することにしました。こうすることでハンダ付けのやり直しも出来るので,少なくともリード線に関係する問題はここで全部払拭できるはずです。
これも組み立て直してみると,一見して調子が良さそうに思えたのですが,なんのことはない,しばらくして現象が再現してしまいました。ここ数日はF16にすると確実に動作しなくなってきたので,擦動抵抗の皮膜が削れてしまって機能しなくなっている可能性もあります。あるいは擦動抵抗ではなく電気回路の問題かも知れません。そうなるともうお手上げです。
この修理の過程で,基板を取り付けるコネクタが割れてしまいました。交換しようと部品取りのES2を見てみると,こちらも割れていました。さすがに誕生から30年,月日を重ねてコネクタがパンくずのようにボロボロと崩れていきます。
やむを得ないのでコネクタではなく直接ハンダ付けを行うことにしました。部品取り用のES2は基板が壊れていることが分かっていて,基板を交換するような形での修理は当分しない(できない)だろうという気がしたからです。
しかしこの作業後も現象は出続け,結局何も変化はありませんでした。コネクタ破損による接触不良の可能性も消えました。
そして昨日,とうとう意を決して,真面目に修理することにしました。
まず,現状の把握からです。擦動抵抗の抵抗値を測定します。レンズを取り付け,絞りリングを回して各絞りの時の抵抗値を測定します。すると,F8くらいまでは安定しているのですが,それ以上にすると値がばらついたり,いつまでに収れんせず値がフラフラする,最後には数百MΩという値を示したり,無限大になったりします。右回しと左回しで値が変わるなども出てきてしまい,これはもう違いなく擦動抵抗自身の問題と確信しました。
実はほっとしたのです。ここが正常だったら,もう電気回路の問題以外になくなります。基板のスペアがない以上,修理は非常に困難になると予想されたからです。最悪のケースは回避されました。
さて,擦動抵抗を分解します。抵抗体の汚れを取り,もう一度組み立てますが改善せず。抵抗の被膜が完全に取れたのだろうと判断して抵抗体を部品取りから移植します。
移植して組み立て直してみると,確かに安定しています。F11やF16でも,規格値に近い値が出てきます。やはり擦動抵抗だったかと結論して,組み立てていきます。その過程でもう一度測定をしてみると・・・なんとまたあの現象が出ているではありませんか。
擦動抵抗を交換しても現象が出てきたということは,他に原因があるというのか。
もうお先真っ暗です。
絞りリングと一緒に動くブラシの接触圧が低いせいかも知れないと,少しブラシを起こして接触圧を上げてみます。しかしダメ。同じです。さてさて困りました。
ここでふと考えてみたのですが,この抵抗ってどことどこの間を測定しているんだろうか,実はきちんと追いかけていないんですね。片側はリード線なのですが。もう片側は回転側のブラシで,それが最終的にアースに落ちています。
私はアースとをリード線の間の抵抗をはかっていたのですが,ちょっと試しにブラシのハトメとリード線の間を測定してみました。すると,実に安定して動作するじゃありませんか。
ということは,抵抗の皮膜ではないなあ・・・
ブラシの接触圧でもないなあ・・・
ところでこのブラシから先はどういう経路になってるんだろう・・・
調べてみないとなあ・・・
ということで,抵抗体を取り付けているビスを外してみようと,ドライバをかけました。すると,既にゆるんでいます。
原因はこれでした。抵抗体を取り付けているビスがゆるんでいたため接触不良が起きてしまい,アースされていなかったのです。
もしやと思い,最初からついていた方も確かめてみると,こちらもゆるんでいました。2つとも同じ場所が同じようにゆるんでいたため,同じような現象が出ていたのです。
絞りリングの回転によって接触したりしなかったりして,動作が不安定になっていたと考えれば,これほどしっくりくる理由はありません。
それに,このビスは絞りリングのストッパーも兼ねているため,頭が勢いよくぶつかります。そのせいでゆるんでしまったのでしょう。
これをきちんとしめて,最初からついていたものに戻して組み立てました。結果は上々。これまでの不安定さがウソのように,綺麗に抵抗値が変化していきます。基準値と比べてもほとんど差がありません。
原因が分かってきちんと修理が出来たと思われるので,最後までちゃんと組み立てました。軍幹部のカバーも貼り皮も元の通りに戻して,露出計が正常に動作することを確認しました。
いや,ほんと良かったです。
(2)の問題は,こちらもなかなか面倒な話でした。
8月初旬,(1)の問題で悩んでいた時ですが,露出計がきちんと動作している時でも,指し示しているシャッター速度よりも随分短い場合が度々出てきます。数ヶ月前にソレノイドの調整を行ったときも,時々シャッター速度が制御されていない事に気が付いて取りかかりましたが,結論から言うとソレノイドは最良の位置に取り付けられており,これが問題ではなかったのでした。
10回に3回くらいの割合で,シャッター速度が明らかに狂います。(1)と(2)が同じ原因で起きているのではないかと考えていたのですが,結果から言うとそれぞれ別の理由でした。
シャッター速度が狂うこの問題の解決までの顛末は,今月初めの艦長日誌に詳しく書いてあるように,メモリブロックの故障でした。交換するとこれもウソのように安定したスローシャッターが切れるようになりました。
ところが,この後どうも露出計の指示が狂うのです。感じでは1/3段くらいずれています。加えて,指針が1秒を示していても,実際のシャッター速度は1秒よりもずっと短いのです。
こうなった原因ですが,それはずばりメモリブロックを交換したからです。メモリブロックはFETとコンデンサで構成されていますが,シャッターを切る前はFETが露出の値をスルーするバッファアンプの役割を果たし,シャッターを切ってからはコンデンサに蓄えられた電圧を出力する働きをします。
このFETですが,IDSSに結構バラツキがあります。IDSSにバラツキがあればCdSの値が同じであっても,最終的な出力電圧にはIDSS分のバラツキがでてしまいます。ですから,メモリブロックを交換したら再調整が必要になるということなのです。
幸いなことに,私はES2のサービスマニュアルの一部を持っていて,調整方法については知っています。これによると,EV16,EV12,EV8のそれぞれで開放測光時のシャッター速度を合わせます。
ただ,私は基準光源を持っていません。ニコマートやCLEでは,グレーカードに蛍光灯を当てて,F3の露出計を基準に合わせていたのですが,ES2では明るさがはっきりした光源が必要で,しかも同時にシャッター速度の測定もしなくていけないのです。
ですから,根本的に調整環境を整えねばなりません。
ここから先は後日,となりますが,まずは修理がきちんと出来たことで,本当に安心しました。部品取りのES2をもう1つ確保しないと,もう復活出来ないかもしれないと恐れていたのですが,最悪のケースは回避されました。
先日再開したカラーネガの現像は,現在13本が終わって,現像液の能力から残り2本まで。しかも1ヶ月以内に使い切らねばならず,あと1週間ほどで現像液が寿命を迎えてしまいます。
あまりのんびりやっているわけにはいかないのですが,まずは一安心。