ペンタブレット初体験
- 2007/02/19 15:47
- カテゴリー:散財
先日,CaptureNXで写真の加工を行っていたのですが,投げなわツールで範囲指定を行っていたところ,トラックパッドではどうにもうまくいかず,イライラすることがありました。
それでもマウスで範囲選択を行っていたときに比べると随文楽になったと思っていたのですが,マウスやトラックパッドの移動範囲を超えるようなケースの場合,ボタンを押しながらマウスや指を中央に戻すという作業が厄介であることは変わりません。ついつい辛抱しきれずにボタンから指を離してしまい,作業をまたやり直すことになることもしばしばです。
こういう事が起こらないように,本格的にフォトレタッチを行う人はペンタブレットを使うと聞きます。10年ほど前に5万円ほどした電磁式タブレットは,調べてみると1万円を切っているんですね。それなら試してみるか,とamazonで買ってみました。
買ったのは一連の商品の中でも最廉価になる,ワコムのFAVOでA6サイズ,CTE-440W0という製品です。
・第一印象
A6サイズのくせに,結構設置面積をとります。マウスパッドくらいは覚悟しておく必要があるでしょう。ただ,設置してからの安定感はよく,どっしりと机にへばりついてくれるおかげで,タブレット本体がガタガタしたり動いてしまうようなことは一切ありません。安くともこのあたりは手を抜いていないようです。
なお,心配していたCaptureNXでの対応ですが,筆圧機能も含め,きちんと動作しています。
・操作感覚
他のどんなヒューマンインターフェースデバイスとも似ていません。A6サイズのタブレットの表面が画面全部を投影する絶対座標系であることがマウスとは全然異なりますし,はたまたペンが接触したときだけ反応するPDAなどのタッチパネルとも全然違います。
ろくに説明書も読まずに触り始めたのですが,ペンをタブレットから浮かせて動かすとマウスカーソルの移動,ペンダウンで動かすとドラッグなんですね。ペンを浮かせて動かすという動作は,本物の紙とペンではほとんど行わない動作ですし,タッチパネルやトラックパッドでも行わないので,私はここに一番面食らいました。
どうしてもペンダウンをしてしまうクセがついてしまっていて,マウスカーソルをただ移動させたいだけなのについついファイルやフォルダをドラッグしてしまい,ファイルがあちこちに散らばってしまって大変な目に遭いました。
おそらく一番自然なのは画面の上に直接ペンを走らせるということなのだろうと思いますが,ペンでなぞる面と画面とが分離している今回のような場合,やはりペンを浮かせてカーソルを動かすという「不自然」な操作は,やはり避けようがないのでしょう。
これも慣れてしまえばなんと言うことはなく,慣れてからはペンを意識せず自然に操作することができ,快適に使えます。手首の移動だけでサクサクと操作できる感覚は非常に新しいものだと思いましたが,だからといってマウスとの比較で利点となるような部分が見あたらなかったので,常用することはやめました。
・筆圧
マウスやトラックパッドではどうやっても実現できない機能が,筆圧の感知です。私はイラストを描くわけでもないので筆圧機能を特に必要としていたわけではないのですが,せっかくですから試してみました。
これは実に楽しい機能です。筆圧で線が太くなったり細くなったりするというのはペンや筆がもつ価値の1つですが,これがコンピュータの画面上でも再現できると,確かにいろいろな事が出来そうです。
ただ,世の中にある筆記用具のうち,筆圧で表現を積極的にコントロールするものはそう多くなく,むしろボールペンやシャープペンシルのように筆圧による変化が少ないものを日常的に使うことが多いでしょう。だから,筆圧機能があるということを,私のような画を描かない人間はどうやって使うか,ちょっと考え込んでしまいます。
1つ,手書き文字があるかも知れません。言うまでもなく,筆圧によってはねる,はらう,とめる,を表現するには筆圧機能がなくてはなりませんが,試してみたところ実に見事に再現できるのです。
太さと色をうまく筆圧でコントロール出来ると,味気ない年賀状も一気に人間くささを取り戻すことが出来るかも知れません。
・問題点
MacOSXでの話ですが,一定時間が経過するとバックライトが消えるように設定してあっても,タブレットを接続しているといつまで経ってもバックライトは消えません。おそらくですが,タブレットの接続自体か,あるいはバックグランドで動作しているタスクが,操作していない時間をリセットしてしまうため,無操作時間がいつまで経ってもバックライトの消える時間に達しないせいだと思います。
同じ事は無操作で自動的にスリープに入るような設定をしているケースでも起こるのではないかと思うのですが,私はこの点も気に入らず,常用する気にはなりませんでした。
・マウス
電磁式のタブレットは,ペンの形を変えればマウスを作ることも簡単です。ということでこの製品には専用のマウスも付属するのですが,可もなく不可もなく,ただのマウスに過ぎない代物です。
操作感が良いとか,精度が抜群とか,わざわざ特殊な方式でマウスを実現しているのだからと期待をするのですが,使ってみると本当に1000円ほどで売っている,何の取り柄もないマウスです。
大きさも形状も使いやすいわけではなく,でも別に使えないわけでもないという中途半端なもので,おそらくタブレットをマウスパッドと置き換えた場合に,汎用のマウスが使えなくなることを想定して専用のマウスを同梱したのでしょうが,タブレットの上にマウスパッドを置けば済むことですし,それにノートPCのトラックパッドを使っている人には,まさに無用の長物です。
これを付属させないセットも「コミックセット」として用意されていますが,これにはマンガ用のソフトが付属しているので,通常のセットでマウスなしというものを用意してくれれば一番良いと強く感じました。
・結論
私の場合,常用はしない,写真の加工の時だけ使う,という使い方になりそうです。ひょっとしたら今度の年賀状で使うことがあるかも知れませんが,そもそも字が綺麗ではないからプリンタを使ってきたという現実に矛盾するので,おそらく使うことはないでしょう。
私のように絵心のない人間がタブレットまで揃えるとは全く考えなかったのですが,マイクロソフトもTabletPCを立ち上げていますし,MacOSXでも標準でタブレットをサポートしています。
紙と鉛筆という非常に身近なものにお手本を求めたユーザーインターフェースには長い歴史がありますが,これまで縁がなかった方にとっても,試せば面白い発見があるかもしれません。この値段はそういうきっかけを提供してくれるものもあると思います。
ただ,我々のように,紙と鉛筆を知っている人間がタブレットを使って感じることと,紙も鉛筆も知らずにいきなり学校でタブレットを触る子供が感じることには,随分と開きがあるのではないかなあと,少しだけ心配になりました。
なにもわざわざ不自由なメタファーを持ち込む必要は,オリジナルを知らない新しい世代には不必要なんじゃないのか,という気がしたということです。
筆圧だって例えばマウスを握る強さで変化がつくようにすればいいだけの話であって,我々がそれに拒否反応を示すのは,マウスという道具を「こんなもんだ」と決めつけているからに過ぎません。
握る強さで線の太さが変わるマウスと,押しつける強さで線の太さが変わるペンタブレットとの違いは,どちらも初めて体験する人にとって,純粋に使いやすいかどうかだけにかかってくるではないでしょうか。これから20年,30年と経過する中で,どういったインターフェースが生き残るのか,楽しみだなあと思います。