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2007年04月05日の記事は以下のとおりです。

B20を作る

ファイル 119-1.jpg

 2月末から取り組んでいたブラスキットが,ようやく完成しました。

 今度のキットもワールド工芸のもので,以前買い逃した国鉄の蒸気機関車B20型のNゲージ,今回はトップナンバーをモデル化したリニューアル品です。

 前回のキットは,欲しいときには既に完売となっており,どこを探しても見あたらない状態だったのですが,どうも今回のキットはかなり細部が改良されているようで,前回はロッドが動作しなかった(それでも自走するというのは当時としても驚異的だったといいます)のに対し,今回はなんとロッドが動作するというではありませんか。

 ワールド工芸というと,忠実なスケールに細かいディテール,そして美しいプロポーションにこだわるメーカーとしても知られていますが,あの豆タンク蒸機B20をどうやってそこまで再現するのか,興味は尽きません。

 3週間ほどの発売遅れがあり,ようやく手に入ったキットですが,価格が安いのでなめていたところ,とんでもない代物であることがわかりました。

 まず,部品が小さい。何かに固定してハンダ付けを行おうとしても,固定することすらままなりません。

 小さいということは熱がすぐに回るということで,先に取り付けた部品が,別の場所のハンダ付けの際にぽろっと取れてしまうこともしばしばです。

 なにせ指でつまんで位置を合わせながらハンダ付けを行うという作業が,熱がすぐに回って熱くて出来ません。そこで今回はマッハ模型から出ている耐熱指サックを導入します。もともと強力なステンレス用フラックスで指がボロボロになるを防ぐために,指サックは必要だろうなあと思っていたのですが,耐熱性がないとダメだからと見送りにしていたこともあって,ちょうど良かったと思います。

 この指サックの効果は絶大で,サクサク作業が進みます。大型の模型を作るときにはあまり意識しないかも知れませんが,これくらい小型になるとやはり雲泥の差だと思います。

 そうしてどうにかこうにか出来上がったボディがこれです。

ファイル 119-2.jpg

 大きさが分かるものを一緒に置いて撮影すれば良かったと思うのですが,そうですね,大きさとしてはメモリースティックより少し大きいくらいですかね。

 部品点数は多くないので,位置決めがきちんと出来れば時間はそんなにかかりません。

 続いて足回りを作ります。最近,模型用の超小型モーターが手に入るようになってから,ワールド工芸も積極的にこれを採用し,B20の細いボイラー内部にモーターを仕込むことが出来るようになりました。その代わりパワーはないし,過電圧で焼損する可能性もあったりして,一般向けには厳しいのではないかと思います。

 足回りもなかなか大変でした。

 まず,フレームと台枠を作るのですが,先にギアを取り付け(これは簡単),その後車軸を入れてから車輪を圧入します。私はここで万力を出すのをさぼって大きめのペンチで押し込んだのですが,そのせいで車輪に傷を付けてしまいました。後にこの程度の問題は気にならなくなります。

 車輪を押し込んだら,ホイール部分を圧入します。ここにロッドを取り付けます。

 このロッドが非常に細い上,加減リンクはステンレス製で,しかもハンダ付けを必要とするものだったりします。これはもうステンレス用フラックスを使うしかありません。

 細かいハンダ付けと,取り付け順序を間違わないように(間違うと先に進めず後戻りを余儀なくされます)作業を進めることに気が滅入りつつ,なんとかかんとか形にしました。

 モーター取り付け前の段階でスムーズに動作することは確認できたので安心してモーターの取り付けをします。ウォームギアをエポキシ接着剤でモーターのシャフトに取り付け,固定されるのを待ってから慎重に位置決めし,一気に高い温度でハンダ付けします。ここで温度を下げたハンダゴテを使うと,熱の回りが遅くなり,モーター全体を高熱にさらすことになり,失敗のもととなります。熱が拡散しないうちに,必要な場所だけさっと暖め,ハンダをのせるのがうまくいくコツです。

 そうそう,今回は初めて,温度調節機構付きのハンダゴテを使って製作をしています。偶然手に入れたもので,最初は使い慣れずに難儀していたのですが,なれてくるとハンダ付けを行う対象に応じて温度を調整することも出来るし,電源を入れて使えるようになるまでの時間も短く,なかなかよいです。

 モーターを電源器につないで回してみると,これもなかなかうまくいきます。そこで注油を行ってよりスムーズに回そうとしたのですが,この結果圧入したはずの車輪とホイール部分が空回りを始めてしまい,瞬間接着剤で固定をすることにしました。

 しかし,油が馴染んだ部分に瞬間接着剤を使っても意味はなく,結局予備の車軸に交換することになりました。この作業はかなり難しく,結局ほとんどの作業をはじめからやり直すことになってしまいました。

 そんなこんなで,出来上がったのがこれです。

ファイル 119-3.jpg

 実は,この段階では大きな問題に気が付いていません・・・

 さて,ここまできたら塗装です。蒸気機関車は黒がメインなので楽ちんですが,その分おもしろみにかけますね。

 いつものように中性洗剤で洗浄し,超音波洗浄機で細かい部分の油分やフラックスを落とします。続けてマッハ模型のブラスクリーンで錆を落とし,良く乾かしてからマッハ模型のメタルシールプライマーで下塗りをします。

 それから光沢具合を調整した特製セミグロスブラックを吹き付け,同じく特製クリアで仕上げます。

ファイル 119-4.jpg

 ところでこのB20にはウェイトが付属していません。しかしこのままでは軽すぎ,牽引力不足は当たり前,集電すらままならないという有様だそうです。そこで説明書にもウェイトを追加することが推奨されていますが,どこにそんなスペースがあるのかと首をひねってしまいます。

 こんな時は,やはりマッハ模型(マッハばっかりですねえ)のマイクロウエートの出番です。鉛を0.8mm位のボールにしてあるもので,これを溶かさずそのまま接着剤や塗料で固めて使います。ボール状ですので隙間に流し込み,そして固めることでどんな場所にもウェイトを積めるというのが素晴らしいです。

 私の場合,左右の水タンク,ボイラーの先端部に詰め込んでいます。キャブの後ろ側にも詰め込んだのですが,あとでDCCデコーダを組み込むときに邪魔になり,外してしまいました。なお,固定にはトミックスのシーナリーボンドを水で薄めて使っています。失敗してもやり直せるので気楽でいいです。

 さて,ボディと足回りの合体です。今回は比較的組み立て精度も良かったせいか,合体作業に問題は出ませんでした。問題がなさそうなことを確認し,DCCデコーダの取り付け用のリード線を長めに出しておき,合体させます。

 カプラーは付属のものではなく,IMONで売られている台湾製のカプラーを常用しているのでこれと交換しますが,カプラーのホルダーをビスで固定するときにビスをへし折ってしまい,ハンダ付けでごまかしました。急なカーブを曲がるときに,連結が外れてしまうかも知れません。

 さて,いよいよDCCデコーダの組み込みです。今回は特にスペースが厳しいのでDZ123しかありません。キャブに収まることは確認済みなので,配線をして黒いテープで絶縁し,なかば強引に押し込みます。

 そして最後の最後に,集電バネをビス留めして,完成!となるはずでした。

 DCCデコーダ組み込み後に車輪の左右がショートしていないかを確認すると,見事にショートしています。これはおかしい。原因はDCCデコーダ組み込みの失敗でしょう。分解して確認をしますが,ショートの原因はDCCデコーダではありません。

 ではどこだろう・・・答えは,足回り全体でした。

 私は,これはワールド工芸の設計ミスではないかと思っているのですが,シリンダとピストンのシャフトが絶縁されておらず,ここがショートするのです。

 シリンダは鋳造品で,ピストンのシャフトが入り込む空間はかなり大きめに作られています。実際にピストンのシャフトが触れるのは,これを支える真鍮製のガイドです。このガイドは直径0.5mm程なのですが,黒で塗装する部分なので,実は塗料によって絶縁されます。

 しかし,絶縁を意識した塗装ではなく,あくまで外観上の塗装に過ぎません。真鍮モデルを塗装しない人もいるのですが,そういう人はまずショートするはずです。

 私の場合,塗装が弱くなっている部分が作業中に剥がれてしまい,ここがショートの原因となっていたことに加え,精度の問題から一部シリンダの内部に直接ピストンが触れてしまう場合がまれにあり,これが原因でショートしていました。

 困りました。こんなに小さい模型ですから,可動部分を温存したまま効果的な絶縁をどうすればいいものか・・・今回ばかりはもうダメだと思いました。

 思いついた方法は,まずマスキングテープを直径1mm程の丸めてパイプを作り,これをシリンダ内部に差し込みます。その後細い針金で内径を広げ,ピストンのシャフトが抵抗なく前後できるように調整をします。これで絶縁は出来たはず。

 ほとんどショートはなくなり,DCCデコーダの動作も確認できたのですが,それでも時々ショートを起こします。ロッド類の細かい調整を繰り返しながら,なんとか連続運転が可能になるところまでだましだまし持っていきました。

 最後にナンバープレートを接着して完成です。

 そして試運転。

 結果は散々で,全く動作しません。集電不良を起こしているようです。集電能力を向上させるLOCOを使って徐々に走るようになってきます。

 走るようになると,足回りから赤い火花を出し,ショートしていることがわかるようになります。コントローラも頻繁に瞬間的なショートを起こしていることを示しています。

 確認すると,ロッドの遊びが大きく,これが車輪に触れてしまうことがあるようです。それでも左右の車輪がショートするわけではないので問題はないはずなのですが,やはりシリンダとピストンのシャフトの接触が起きているようで,片側が接触しているような時に車輪とロッドが接触すると,ショートが起こるような感じです。

 そこでロッドを少し曲げて,遊びが大きくなっても車輪に接触することがないようにしました。

 これで完璧。スローもきくようになり,思い通りに速度調整ができます。DCCデコーダのパラメータを設定し,このモーターの限界電圧である8Vを上限に設定,中間電圧を低めに設定して操作をやりやすくして完成です。

 30分ほどの走行試験を終えて,早速貨車を連結しました。軽いせいで牽引力は弱く,ワムくらいだと2両でうちの勾配は上れません。平坦線では5,6両は軽いと思うのですが・・・

 苦労はしましたが,最終的にいい感じに走る機関車に仕上がりました。作る作業そのものは部品も少なく大した手間でもなかったのですが,やはり小さいこと,そして電気系の問題に苦労したことで,このキットは上級者向きだと感じました。

 なんでもこのキット,大人気で発売と同時に完売したそうです。再生産が決定したらしく現在予約を取っているようなのですが,かわいいからとか,安いからとか,そんな軽い気持ちで取り組むと,思ったような結果が得られないかも知れませんよ。

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