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訳あり品でスピーカーを作ってみた

 昨年は12月に入ると急に寒くなってしまい,思いつきで始めた工作が寒さとの戦いになってしまったのですが,無事に年内に終わってホッとしています。

 なんの工作?スピーカーですよ,スピーカー。

 何年かに一度,急にスピーカーが作りたくなって手を出すのですが,結局使い道がないまま押し入れにこっそりしまい込まれてしまう,可愛そうな奴です。

 ラジオ用の5cmのスピーカーをプラケースに入れただけのものを起点に,粗大ゴミのステレオセットから取り外したスピーカーを3mmの薄いベニヤで作ったエンクロージャーに入れただけの2ウェイで自らの木工技術の低さを思い知り,その後は大人らしくパイオニアのPE-101に専用のエンクロージャーをセットで購入,歴史に名を残すフルレンジの実力を堪能しました。

 大人の科学だっと思いますがスピーカーユニットの組み立ても面白がって試したし,その後雑誌の付録のユニットを使って,これも雑誌の付録だったバックロードホーンのエンクロージャーのキットを組み立ててみたこともありました。

 いつかは試してみようと思っていたバックロードホーンと,中学生の頃から買う機会をうかがっていたフォステクスのユニットを念願叶って買って作ったのはいいものの,やはりレンジの狭さや乾いた音に抵抗があって,結局押し入れに肥やしになっています。

 その間完成品のスピーカーもちょいちょい買ってみたのですが,結局B&WのCM1,KEFのQ350,それからJBLのSTAGE A120(これはペアで16000円以下とは思えない音がしました)あたりが結局生き残り,自作品は完全にしまい込まれています。

 しかし,自作品が期待通りの性能を出し実用品となることを目指して歩んできた工作人生,スピーカーでもなんとか「これならどうだ」と思うようなものを作って使ってみたいと思っていたところへ,偶然面白そうなユニットを見つけてしまいました。

 NFJという会社が「訳あり品」として激安で販売しているユニットに,ケブラーコーンの10cmウーファーを発見しました。これに組み合わせると面白そうなシルクドームツイーターも激安です。

 ウーファーは細かいスペックはわかりませんが,ケブラーですから安い物ではないでしょう。大きなマグネットもしっかりした低音が出そうな感じです。フレームにゆがみなどがあるという事で,お値段1つ1980円。

 分かっている範囲でスペックを書くと,コーンはケブラー,エッジはゴム,フェライトマグネットでインピーダンスは4Ω,定格入力は40Wで最大80W,口径は4インチで101mm,重さは955gです。

 一方シルクドームツイーターはキズがあるという事で1つ1280円。なんとデンマークの老舗Peerlessの物だそうです。ほんまかいな。

 高域は20kHzは余裕,正面なら40kHzもクリアするという特性が謳われていますが,なによりシルクドームならではのとげの刺さらないしなやかな高音が期待出来そうです。

 こちらのスペックはそれなりに公開されていて,口径は1インチ,シルクドーム,マグネットはネオジムでインピーダンスは4Ω,入力は80Wで最大160W,再生周波数は2.5kHz~20kHz,F0は1084.63Hzで能率87.8dB,重さは46gとのこと。

 ペアで揃えても6500円。これは安い。失敗しても悔しくないです。

 ということで早速購入,こういうものはスポット品ですので,欲しい時に買うのが鉄則です。(といいつつ随分昔から在庫があるようですが)

 手元に届いたユニットは,ウーファーがフレームのゆがみとエッジのへこみがありましたが音は正常です。ツイーターはキズがありますがこれは気にならない程度でした。

 どっちもいかにもいい音が出そうな感じです。

 しかし,ここで苦手な木工と向き合わねばなりません。私の場合,綺麗に切断できず隙間だらけになったり床と3点でしか接しないなんてことが起きてしまいますし,塗装も下手くそですのでいかにも素人の工作になってがっかりです。

 その前に材料の調達も大変です。近所にホームセンターもありませんし,かといって自動車もありません。材料が手に入らず加工も苦手と来ればもはや話にならないわけですが,そこで登場するのが我らが自作派の味方のフォステクスの「かんすぴ」です。

 かんすぴは安価なユニットとエンクロージャーを組み合わせて自作のスピーカーを作るというありがたいシリーズなのですが,標準的なバスレフのエンクロージャーが大きさで何種類か選ぶ事が出来,しかも吸音材やターミナルまで取り付け済みという手軽さが素晴らしいです。

 登場時は本当に安くて心配になるほどでしたが,ここ数年は頻繁に値上げが行われていて,私が購入したP1000-Eはすでに1本3740円になっていました。それでも十分安いと思うのですが,これを年末のクーポンを使って直販サイトから購入しました。ちょっと容量が足りない気もしますが,まあなんとかなるでしょう。

 さて,ここからが本番です。

 まず,ユニットの動作確認です。音は出ることは分かっているので,エンクロージャーとの相性を見ます。仮組みしてウーファーだけをスイープでならしてみますが,60Hzあたりでもバスレフポートからバフバフと大きな音圧が出ています。これはなかなか良さそうです。DR-100mk2(PCMレコーダをです)でスイープさせた音のレベルを測定してみますが,上も4kHzくらいまでなら-3dBまで出ていそうです。

 ここにツイーターを3.3uFを介して取り付けてみますが,高音が出てくるだけで輪郭もはっきりしてくるし,みずみずしさも出てきます。多少耳障りな感じもしますが,ボーカルの定位も抜群で,期待度もうなぎ登りです。

 ツイーターの位置を前後させてウーファーとの干渉がないような位置を探すのですが,どうもツイーターの位相を逆にした方がバッフル面と同じ位置に出来そうで好都合です。低域カットのコンデンサは3.3uFにすべきか2.2uFにすべきがで悩みましたが,まずは3.3uFで進めることにします。

 さて,エンクロージャーを加工せず,ツイーターは上面に乗せておくだけというのも考えましたが,ここはもう少し手をかけましょう。ちょうどバスレフポートがツイーターの大きさとぴったりだったので,ここにツイーターを置くことにします。

 するとバスレフポートが潰れますので,これは背面に移設します。ウーファーを下に配置したいので天地をひっくり返すため,ターミナルも上下を反転させて取り付け直しましょう。

 全体の計画が見えてきたところで,早速加工開始です。まずエンクロージャーの中に手を突っ込んでポートを力尽くで外します。木工ボンドで接着してあるだけですので割に簡単に取れます。

 そしてもとのバスレフポートと同じ高さの背面に25mmの穴を開けます。MDFですのでサークルソーを使えば簡単です。

 穴が開いたらポートを裏側で接着しこのまま一晩放置。

 バスレフポートが完成したら,ウーファーの取り付け穴がこのままではちょっと小さいので加工します。ただ私はこういう時専用の工具も器用さも持ち合わせていないので,ゴリゴリとカッターで広げていくほかありません。

 このウーファーはフレームとエッジの間が狭く,あまり穴を大きくしすぎるとバッフルとの間に隙間が出来てしまいます。すり鉢状にして広げる必要があるのですが,そこはどんくさい私の事,真円にならず綺麗に仕上げることが出来ませんでした。

 気を取り直してツイーターです。これは元バスレフポートの穴がそのまま使えるのでここに取り付けることにしましょう。

 さて,ここまで来ればあとは配線の準備です。ターミナルから出ているケーブルを取り外し,ターミナル側の圧着端子にコンデンサをハンダ付けします。もう一方の圧着端子とコンデンサの足から配線を引っ張り出し,新しい圧着端子を付けてツイーター用とします。これで配線終了

 作業がやりやすいようにまずツイーターから取り付けます。先に圧着端子をツイーターにはめ込んでから,amazonで調達した木ネジでバッフルに固定します。

 そして重いウーファーを配線して取り付けて完成です。ターミナルをひっくり返すことも忘れずにやります。さあ,音を出してみましょう。

 アンプはかつて雑誌の付録になったラックスのアンプです。これ,ホントにいい音がするんですが,こういう場合にもってこいの手軽さも持ち合わせているので助かります。

 ・・・なかなか良いではないですか。

 P1000-Eは121x243x179mmで3.6Lという小さいエンクロージャーなのですが,このサイズには似合わないたっぷりとした中音域と,物足りないながらもタイトな低音,そして耳障りの良い伸びやかな高音が出てきます。ウーファーとツイーターの繋がりはいまいちなのですが定位感は抜群で,特にニアフィールドではまさに楽器が点で聞こえます。

 この大きさで,自作品,それも1万円ほどでここまでの音とは・・・素晴らしい。

 なにより,私が好む傾向の音です。これは何よりも代えがたい魅力です。ちょっとポンポンいいますし,高音も出すぎているのでドンシャリの向きはありますが,なにより位相が揃っているので定位は抜群,音の艶と言いますか,立体感も申し分なく,低音も無理をしないでしっかり出ているのでとても楽しいスピーカーです。

 しばらくならして当たりを付けたあと,ウーファーをツイーターの重なり部分を減らす目的で,コンデンサを2.2uFに減らしてみます。高音はやや引っ込みますが,ウーファーが担当する中域が広がりより自然に。

 よし,これでいこう。90cmのテーブルに並べて,1mほどの距離で2時間ほどいろんな音楽を愉しみました。硬めの木材を足にして浮かせてやれば,低音がぼやけずにしっかり出てきます。

 大きな編成のオーケストラはさすがに厳しいですが,楽器の分離がよいので5,6人までのジャズコンボにはその表現力で,ロックは元気の良さと中域の豊かさで楽しく,いつまでも聴いていられる音が出てきます。そしてボーカルの再現性がとても良くて,ちゃんと歌っています。市販品でもこれ以下のスピーカーなんていくらでもあるんじゃないでしょうか。

 ということで,今回のスピーカーの自作は大成功です。音の良さもそうですが,この大きさであることもとても重要です。見た目もケブラー特有の黄色いコーンが格好よくて,うまくまとまっていると思います。

 さて,今回つくづく思ったことが,スピーカーのサイズによってスピーカーの間隔が決まるということです。

 よくベストなリスニングポジションは,左右のスピーカーの間を一辺とする正三角形の頂点の場所だといいますよね,そこに座ってみると,スコッと真ん中が抜けてしまうことがあります。

 この時,スピーカーを大きな物に変えてみると抜けなくなるんですが,先程の抜けてしまったスピーカーがダメなスピーカーかといえばそんなことはなく,もう少し正三角形を小さくして近づいて聴けば,見事に立体的な音像が浮かび上がるわけです。

 違いはなんだといえば,それはスピーカーの大きさです。スピーカーからの距離が離れれば離れるほど,小さい口径のスピーカーでは点音源に近づいてしまい,中が抜けるのではないかと思います。

 だから,大きな部屋なら大きなスピーカーを,ニアフィールドなら小さいスピーカーを選ばないといけないんだと,ようやく気が付きました。

 あれほどいい音がするCM1をリビングに置くとどうもいい音がせず,Q350にすると定位が向上するのが不思議だったのですが,やっぱりスピーカーの大きさという単純なパラメータが影響しているように思います。

 また,特にウーファーの口径は,距離が離れるほど大きくないといけません。ヘッドフォンのドライバの口径が小さいこともそうでしょうし,小さいスピーカーも近くで聴けばしっかり低音が出ていることに気が付くのも,このことの証でしょう。

 そんなわけで,今回の自作は成功で,スイープで周波数特性を見た事,ツイーターの位置で位相を調整したこと,コンデンサを繋がりを調整したことなど,なかなか良い経験をさせてもらいました。

 結果,ケブラーコーンへの期待を裏切らない,実に良いスピーカーが完成しましたし,さらにいうとスピーカーの大きさとリスニングポジションの問題も関係性が見えてきたように思います。

 そして最後に,フルレンジにはフルレンジの良さがあるとは思いつつ,やっぱり小型スピーカーなら2ウェイだなあと思いました。

 とまあこんな良い成果を上げたスピーカーですが,やっぱり置く場所がないのでしばらくは押し入れの肥やしです。次に登場するのはいつになることやら。

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