実体顕微鏡を買う
- 2015/08/24 13:15
- カテゴリー:散財
実体顕微鏡なるものが,世の中にはあります。
何を今さらというなかれ,浅学ゆえ私は,少し前まで知りませんでした。顕微鏡など,小学校でタマネギの皮をみた,あの顕微鏡くらいしか知らないのです。
もちろん,お医者さんにいったりすると,両目で見るような顕微鏡も置いてあったりしますし,デジタルカメラがついている顕微鏡もあったりしますが,それはそれ,顕微鏡のバリエーションの1つだと思っていたのです。
それが,まさか実体顕微鏡なんて立派な名前がついているなんて。
私ももう年齢が年齢なので,小さいものが見えにくくなっています。昔なら得意の肉眼でどんな細かいハンダ付けも出来たし,どんな小さなクラックやブリッジも見逃さない自信があったものですが,今はもう全然だめです。
潔く老眼鏡という手もあるのですが,それよりはもっと根本的な対策として,その「実体顕微鏡」の導入を検討したのです。ほら,そこはあれですよ,ハルちゃんみたいな若い人でも実体顕微鏡が欲しくなるんですから。
実体顕微鏡の定義は,両目で見ることの出来る顕微鏡であることなのですが,同じ画像を両目で見るのではなく,左右の光路がちゃんと独立していて,ちゃんと視差があることが重要です。
こうして,左右で視差があると,凹凸が立体的に見えるわけですね。だから実体顕微鏡といいます。
思うに,普通の顕微鏡というのは,見たいものを薄くスライスし,光を透過させて拡大して見ます。薄くスライスしてスライドガラスにのせて,カバーガラスをかけます。この段階ですでに凹凸などなくなっていますから,両目の視差を利用する価値はなくなっています。
この手の顕微鏡を生物顕微鏡というそうなのですが,実体顕微鏡の特徴として,倍率は20倍から40倍程度であるということ,下から透過させた光を見るのではなく,上から反射させた光をみるということ,見たいものとレンズの間がとても広く,顕微鏡を見ながらの作業が容易であること,があります。
要するに,顕微鏡といいつつも,両目で見る虫眼鏡くらいに考えた方がよさそうです。
ただ,実体顕微鏡には大きなメリットがあります。もちろん立体に見えることもそうですし,顕微鏡を見ながら作業がしやすいこともそうなのですが,プレパラートを作る必要がないということも大きいでしょう。
普通の顕微鏡は,標本を薄くスライスし,ガラスで挟むという準備が必要です。スライス出来ないものはアウトですし,プレパラートを作る用意も環境もなかったら,そこでアウトです。
実体顕微鏡なら,なにも準備することなく,いきなり標本を拡大して見ることができます。ゆえに,山や川,海などのフィールワークで威力を発揮します。
考えてみると,電子顕微鏡は内部を真空にしないといけないし,標本をいきなり見る事が出来る顕微鏡は実体顕微鏡だけということになります。
こんな顕微鏡ですから,きっと専門的で高いのだろうと思っていたら,なんと1万円ちょっとからある事がわかりました。それも中国製のへんな輸入品ではなく,ケンコーやビクセンと言った,日本の光学機器メーカーの製品です。
まあ,光学機器というのは値段相応なものですから,1万円の顕微鏡は1万円なりのものですが,あるとないとでは大違いですから,これはぜひ手に入れなければなりません。
調べてみると,どうもビクセンのものがよさそうです。SL-30という形式のものですが,定番品らしく,ヨドバシやビックでも普通に在庫があります。
善は急げ,会社の帰りに寄り道して,買って帰りました。14070円でした。
私が買ったものは長期の不良在庫だったようで,箱は色褪せていて,おまけに入っていた鉱物標本は粉々になっていました。他の部分には問題がないので,こういうことは大目に見ます。
安い中国製のものなどは,左右で視力差があった場合に補正出来ないことがあるのですが,このSL-30はこれも配慮されていて,左右で独立で視度調整ができます。まあ矯正視力で観察すればいいだけの話で,実用上はなにも問題ないと思いますが,私のように裸眼で左右にちょっとした視力差がある人間にはありがたいものです。
ワーキングディスタンスは50mmと十分,倍率は30倍と,ちょっと難しい倍率です。しかし小型でかわいらしく,ライトもアームの途中に差し込むLEDペンライトで,明るさも角度もばっちりです。
左右の接眼レンズの間隔を調整し,早速覗き込んできます。
しかし,なかなか視野にきちんと入ってきません。油断していると,左右どちらかが真っ暗になってしまいます。
問題なのは,片側が真っ暗になっても,もう片側はちゃんと見えているので,気が付きにくいのです。立体的に見えず,左右別の絵に見えることもありますし,なんかぺったり平面的だなあと思っていたら,実は片側が見えてなかったとか,そういうことが良くおこります。
もしかすると,高価なものはこのあたりが良く出来ているのかも知れません。また。100倍くらいまでのズームがついているLCD搭載の顕微鏡も3万円半ばで売っていますから,そっちの方がよかったのかも知れません。
しかし,慣れてくると,まあ面白いこと。レーザーマーキングしたICの型番が手に取るように見えます。別に立体で見えないといけないものでなければ,片目で見てもよいわけですし,あんまり意地になることもありません。
ブリッジもクラックも簡単に見つかりますし,ピンセットの先端がこんなに大きく見えるなんてのもちょっと感動的です。