MacBookProのキーボード修理とユーザー体験
- 2020/10/06 10:42
- カテゴリー:ふと思うこと, マニアックなおはなし
2016年の秋に購入したMacBookProは,もうすぐ購入後4年になります。
新しいアーキテクチャに切り替わるタイミングを今か今かと待ちわびて,予約までして購入したマシンですが,この4年間は十分に活躍してくれています。
この世代のキーボードにはあれこれと難癖がついていて,1つはバタフライ式キーボードの問題と,もう1つはESCキーがない事への不満です。
いずれの問題も後にユーザーの意見が通って変更されているので,Appleの設計者は悔しい想いをしていると思いますが,数の少ない高級機のユーザーの意見を,それまでにかけた開発費用を捨ててでも取り入れる誠実さ(とお金持ちっぷり)には,アップルらしさを感じます。
そのキーボードですが,使い心地は別にして,壊れやすいというのが深刻です。構造的にホコリを噛み込みやすく,その結果押し心地が大きく変わってしまう,何度も入力される,入力されない,というトラブルが高確率で発生します。
この問題はプロの道具としては致命的で,先にアメリカで問題になった後,リコールがかかっています。日本でも同様の対応が取られており,購入後4年を期限とし,減少が見られた場合には修理が無償で行われることになりました。
私のマシンは幸いにして深刻なキーボードの問題はなかったのですが,カーソルキーのdownキーが,半分くらいの割合で入力されないという問題が出るようになってきました。
以前から入力されないことはあったのですが,これほど確率で入力されないようになってきたのは最近のことで,作業効率が大きく低下して困っていました。
改めて調べてみるとそろそろ期限が切れるではありませんか。そこでアップルのサポートに問い合わせることにしました。
とりあえず電話しようと調べてみると,申し込みをすると先方から折り返してくれる仕組みです。すいていたようですぐに折り返しがありました。
話をするとあっけないくらいに修理の手続きが進みます。あれこれと疑われたり,ストレージの初期化からOSの再インストールをやれと言われたり,無償にならない場合があるという細かい説明を繰り返されたりといううんざりする定番のやりとりは全くなく,すぐに修理受付に進みました。
近くにアップルストアがあるのですが,コロナ禍という事もありますし,その場で修理が出来るわけでもないので,引き取りをお願いしました。
とても丁寧で気持ちの良い対応を頂き,こちらが恐縮したわけですが,最速でお願いした引き取りは翌日土曜日の午前中に,付属品も書類もなし,ただ本体だけをそのまま梱包もせず,ヤマト運輸の担当者に手渡して完了しました。
まあ,土曜日の午前中に渡しましたから,日曜日に到着しても作業は行われないだろうし,最短で火曜日受け取りかなあと思っていたら,なんと月曜日の9時過ぎに私の手元に戻ってきました。
まさか修理されていないじゃなかろうなという心配は杞憂に終わり,めでたく私のMacBookProのキーボードは完調になっておりました。
よく知られているように,このリペアはキーボードの交換だけでは済まず,トップケースとバッテリーも交換が必要になります。万が一有償になると6万円近くかかる大修理なわけですが,これがすべて無償です。4年も前に購入したマシンですからね,なんだか申し訳ない気がしてなりません。
もちろん気分良く使えていますし,見た目も新品に生まれ変わったみたいでうれしいのですが,それにしてもこのアップルの対応,すべてがこちらの期待を越えるもので,これまで受けたいろいろな会社のサービスやサポートのなかで,最高のものであったと思います。
きちんと修理されていることはもちろん,高額な修理費用が無償になったこと,電話の対応,迅速な手続き,土日に関係のない修理作業,,発送から返却までわずか50時間という驚異的な短さは,すべてがユーザーの不安を解消し,実害の発生を最低限にとどめ,それらに対する覚悟が肩すかしに終わるような,素晴らしい体験だったと思います。
日本はおもてなしの国だとかなんだとか言う人もいますが,日本のメーカー,それも日本を代表するような名だたるメーカーのサービス対応はとてもさみしい物で,ユーザーを疑うことから始まり,なかなか非を認めず,ごねた人には「特別対応」をして逃げ切るかと思えば,修理そのものも適当で直っていない,他を壊して戻すなども頻発しています。
購入後すぐに修理が必要になることも問題でしたし,修理期間が最低でも10日,私のケースでは3ヶ月もかかり,その間全く使えないことも当たり前だと開き直ります。
工業製品ですから完全を求めるわけにはいかないものですし,その結果安価に製品が買えているわけですから納得もするのですが,それでも結局誰が一番損をしているかといえばユーザーです。
さすがにUX先進国のアメリカだけに,製品を売って終わりということではなく,買う前からその商品を手放すまでの間のユーザー体験を最大化しようという発想が根底にあるんだなと,今回の事で本当に感心しました。
同時に,そうしたユーザー体験を提供するために,莫大な費用を用意出来るアップルという巨大企業の,お金の使いどころに恐ろしささえ感じました。
製品にお金を支払うというのではなく,その製品と共に過ごす時間を買うのだという意識は,日本のメーカーとだけ付き合っていては見えてきません。
amazonもここ最近,急激に使い心地が良くなっていると感じます。私はヨドバシの方が断然いいと思っていましたが,最近のヨドバシの劣化も相まって,amazonが本当に気に入ってきました。
かつてはサポートの電話番号も非公開ですぐに連絡をする方法がありませんでしたし,運送業者に渡してしまえばあとは知らんというスタンスでしたが,それも今では信じられません。
買うときのワクワクだけではなく,買うときの心配を取り除く工夫,買った後の後始末まで,マニュアル通りの対応ではなくそれぞれのケースで最善を尽くそうという方針に,これもユーザー体験を買っているのかも知れないなあと思うようになってきました。
アップルもamazonも北米の会社です。日本での対応は本国の許可が必要なはずですし,日本市場を重視するとは言え日本のメーカーや小売店を越える必要はありませんから,彼らのワールドワイドの方針に従っているのだろうと思います。
とすれば,それはグローバル化の1つ,ということになります。
日本の持っている物が良い場合(多くの場合その通りでした)において,グローバル化というのは後退を意味するケースもあったでしょう。しかし日本の持っている物は良くないものになっていたり,海外の方がもっと良いものだったりすることも増えていて,いつの間にやらそれらが「標準化」された結果,非常に良いものに改善されることが,日常的に起こっていると気が付きました。
もともと私は日本だ海外だと区別してものを考える事を不自然に感じる人でしたが,国内の状況が少しずつ悪くなって行くことは肌で感じていて,海外において行かれているなあという焦りのような物を感じる事も増えてきました。
それは発展の著しい国々の猛追だけではなく,もともと日本の先を走っていたアメリカやヨーロッパとの間が,また少しずつ開いてきているという実感です。
しかしながら,私は心配していません。日本国内の会社がだめでも,これまで通りアップルとamazonに頼めば済むだけの話なのですから。