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PC-386BookLに1GBの内蔵HDDを

 カラーLCDまで搭載してしまったPC-386BookL。ここまでくると,やはり内蔵HDDの40MBというのが窮屈で仕方がありません。

 かつてのPC-9801の世界では,ノート型が先鞭を付けた内蔵HDDのIDE化に対し,容量制限を突破することがマニアの間では常識でした。私も当時のバイト先がパソコンショップだった関係で,初のHDD内蔵の98NOTEであったPC-9801NSのHDDを,20MBから40MBにするサードパーティーのキットを販売したことがありますが,付属の特殊なフォーマッタがBIOSを騙して純正の20MBを越えて40MBを使えるようにしていた事例をよく覚えています。

 当時のNECはなにかと制限をかけたがるので,ハードウェアの柔軟性が削がれることが多かったのですが,これも今にして思えば動作の安定性を維持するという目的で理にかなっていたのかなと思います。(まぁ理にかなっていたことを実行出来たのも圧倒的なシェアがあってこそなんですが)

 で,我がPC-386BookLはどうかというと,純正では40MBまでが用意されてたみたいです。

 IDEのドライブをサポートする仕組みとしては,BIOSで内蔵SASIに見せかけて動かすという理屈ですので,SASIの制限である40MB以上のサポートはそもそも必要ありません。

 ですが,HDDのサードパーティーの雄であったICMから120MBあたりまで用意されていたことは覚えていて,ということは,PC-386BookLでも40MBの壁を越えることが出来るということです。

 しかし,具体的な方法については情報が全く出てきません。マイナー機ですし,内蔵出来るHDDも物理的なサイズの制限がありましたから,試みた人も少なかったのでしょう。

 とはいえ,小耳に挟んだ情報では,同様に容量制限のあるPC-386NOTEシリーズでも,容量制限のない別機種で一度フォーマットをかけて戻せば制限を突破出来るらしく,そういうことなら同系列のPC-386BookLでも可能性はありそうです。

 ということで,実は数年前も試してみたのですが上手くいかず,諦めていました。

 1GBのマイクロドライブを内蔵しながら,このうち40MBだけを使っての運用は,安定性という点ではなにも心配ありません。

 これでも決まった事をやるだけなからいいんですが,一番困るのはディスクイメージの書き戻しです。数枚組のゲームなんかだと,ファイルを解凍してFDに書き戻すのに10MBほど作業スペースがないとだめなのですが,もはやこの大きさを準備するのも難しく,カラーLCDになったときから,なんとかこの容量制限を突破出来ないかと,試行錯誤を行っておりました。

 そして先日,ようやく突破しました。PC-386BookLに,IDEモードで動く1GBのマイクロドライブを内蔵し,1GBフルを使うことが出来たのです。

 理屈はBIOSを騙すこと。これは他の機種でも原理的には同じなのですが,問題はPC-386BookLでそれが可能かどうかです。いろいろ試したところ,CLMODIFY.EXEというツールがバッチリ使えることがわかりました。(ありがとうございます>作者のかた)

 常駐型のツールで,BIOSを騙して設定したシリンダ数を返すツールです。このシリンダ数でフォーマットをかけてしまえば,あとは常駐させることなく運用することが出来ます。

 次の問題は設定するシリンダ数をどうやって調べるかです。当てずっぽうで試してみてもいいのですが,そこはやっぱり根拠が欲しいですよね。

 そこで,ICMのツールであるATFORM.EXEを使いました。IDEとして繋がっているHDDの情報を表示し,テストを行うことが出来るツールです。名前からフォーマットもできるんじゃないかと期待したのですが,そこまでの機能はありませんでした。

 この手のツールはいろいろあるのですが,PC_386BookLで動作する物がなかなか見つからなかったところ,どうもPackAシリーズに同梱されていたらしいという事で使ってみることにしたところ,上手く動作したというわけです。
 
 ATFORM.EXEで調べたところ,

2088シリンダ x 16ヘッド x 63セクタ x 512バイト/セクタ
= 1077608448バイト

 と出てきました。なるほど。

 PC-9801では,ヘッド数は8,セクタ数は17である事が知られています。なのでPC-9801でこのマイクロドライブを目一杯使うために設定するべきシリンダ数は,

1077608448 / 8/17/512
= 15475.76471

 となります。少し余裕を見て,CLMODIFYで15473をシリンダ数として登録します。

 この状態でICMのフォーマッタであるEXFORM.EXEを起動すると,計算通り1GBのマイクロドライブの全域を初期化することが出来るようになっていました。

 このまま装置初期化を選んでやると,結構長い時間がかかりますが無事に初期化が終了します。続けて領域確保を行いますが,私は純正のFORMAT.EXE(HDFORMAT.EXE)を使って領域確保を行いました。

 領域の確保は,使い勝手の問題から500MBのパーティションを2つ確保しました。

 DOS6.2をインストールする時にもCLMODIFYでシリンダ数を騙しておかないとエラーが出るので,インストール前に常駐させておけばあっさりインストールまで終了します。

 再起動を行えば,目の前に500MBの広大な海が広がっています。素晴らしい。

 起動も時間はかからず,全域が問題なく使えています。上手くいったようです。

 ちなみに,6GBのマイクロドライブでも試してみました。4GB分の装置初期化を行って,そのまま4GBのパーティションを作ったのですが,この場合起動にちょっと時間がかかってしまうようです。

 パーティションの大きさが問題なのか,4GBという装置全体の大きさが問題なのかはわかりませんが,どちらにしてもDOSのテンポの良さが損なわれるのは嫌ですし,DOSで4GBもあっても仕方がないので,1GBで運用することにしました。

 ということで,私のPC-386BookLは,前代未聞の1GBのHDD内蔵となりました。この当時,500MBのHDDでもデスクトップ機しかなかったんじゃないかと思いますし,私自身もDOSで1GBのHDDを扱う事は初めてです。

 そんなに容量があってどうするのよ,という話もありますが,ディスクイメージを保管しておくのもよし,当時容量不足で消したアプリケーションをインストールしておくのもよし,とにかく大きなHDDには心のゆとりも生まれます。もうこれで私のPC-386BookLに,HDDの容量の問題は完全になくなりました。

 さてさて,このPC-386BookL,Cx486SLCに換装済み,387SXも搭載し,メインメモリは2.6MB,FDDは2台あり,HDDも1GBに大容量になりました。カラーLCD内蔵でゲームも問題ありません。マウスだってUSBマウスが使用可能で,当時のPC-9801を完全に再現出来ています。

 そうなると,あと足りない物は・・・
 もしかしてFM音源・・・

2024年の散財を振り返る

  • 2025/01/15 14:36
  • カテゴリー:散財

 2024年は,娘の受験&進学や手術&長期入院があったりして,大変な年だったと思いますが,それでも自分の事を多少なりとも楽しむチャンスを家族が許してくれたので,ゆとりのない中でも面白い時間を過ごさせてもらうことが出来ました。

 散財については,欲しいものが見つかった時点で買うと言うよりも,amazonのセールに合わせて欲しいものをリストアップしておき一気に買う,そうでなければ発売日に手に入るように予約して買うという買い方が普通になったこともあって,衝動的な無駄遣いはあまりしなかったように思います。

 とはいえ,欲しいものを我慢したという記憶はあまりないので,欲しいものが少なくなったということがあるんじゃないかと思います。2024年は様々な物が値上がりしましたし,円安が強烈に進んだこともあって,単価も上がったと思いますが,例えばパソコンなどは40万円や50万円が普通だったバブルの頃に比べても,今はまだまだずっと安いので,物によりけりかと思ったりもします。

 ということで,毎年この時期にやっている「この1年の散財」,いってみましょう。

・楽器

 無駄遣いはしなかったと言いましたが,この段階でウソだったと白状します。ごめんなさい。楽器はいろいろ勝って楽しみました。

 まずSEQTRAK。少し前まで入手が絶望的と言われたヤマハの音楽制作ツールです。フレキシビリティに富み,音も良く,小さく持ち運びが可能で,その割には安いと言うこともあって大ヒットモデルとなったわけですが,私はピピッときて予約して買いました。

 しかし,結論をさっさと書くと,どうも肌に合わず,売却しました。この手の楽器としてはそれなりの値段で買い取ってもらえた(フジヤカメラにお願いしました)のは,新品同様だったことと品薄だったことがあると思います。

 あれこれかけるほど使っていないのですが,自分の思うように演奏することが楽器演奏の楽しみなのに,あれこれと制限がついてしまうのは,フラストレーションがたまる一方で私には苦痛でした。

 この手の楽器は,自由度と引き換えに制作の簡便さや楽曲の完成度の高さを目指したものでしょう。自分の頭の中で鳴っている音楽を再現したいと思っている人にとっては,あらかじめ用意されたパターンや音色から選んで配置しループさせるというものは,自分のやりたいこととの間のギャップを埋めるために大変な苦労をするものです。

 SEQTRAKは良く出来ているので,使えるパターンも音色も大量に用意されていますし,マニュアル操作で細かい演奏や編集が出来るようになっているあたり,さすがヤマハだなと思わせるものがありましたが,それくらいならリアルタイムでシーケンサーに打ち込めば早いわけで,結局私にはそれが一番楽しいのだと思い知りました。

 SEQTRAKをMIDI音源モジュールとして機能させる前提で,USB-MIDIのホストを持っていたなら手放さなかったと思うのですが,USBのデバイスしか持たないなら,必ずホストとなるPCが必要になってしまうわけで,それならもういいよ,となります。

 ミニ鍵盤の小さいMIDIキーボードと直結出来ると,音の良さだけで価値があると思うんですけどね。残念だったと思います。

 さてさて,次に買ったのはハモンドのM-soloです。バーガンディーが復活という情報を耳にし,初回に躊躇し買わなかったことを後悔した経緯から,今回は速攻で予約したのですが,久々に嫁さんの厳しい視線を浴びてしまいました。

 ただし,近年買った楽器で最も素晴らしい楽器だったと思いますし,安いとはいえ本物のハモンドオルガンを手に入れた喜びと,弾きこなすための学びには非常に新鮮な感激がありました。

 ハモンドオルガンって私が生まれるずっとずっと前からあるわけですよ。そしてシンセサイザやデジタルピアノのプリセットには必ず入っている音で,私もそれなり演奏して楽しいなと思う事も多かったのです。

 しかし,本物を演奏した経験は数えるほどしかありません。白と黒のキーを押せば音が出るという鍵盤楽器でありながら,実はハモンドオルガン特有の演奏方法やお作法は,やはり本物でしか知り得ないものです。

 上手いか下手かはちょっと置いておいて,これで私もハモンドオルガンを演奏していますと目をそらさずに言えるようになりました。本当に楽しい楽器です。

 それから,このM-soloを買った時のポイントを使うのに好都合だったのが,ヤマハのフィンガードラム,FDGP-30でした。

 とにかくヤマハとコルグとの相性が悪い私は,これらのメーカーの楽器に大きなお金を出すのが怖くて,フィンガードラム専用機というコンセプトにしびれても,上位機種を買うことは出来ませんでした。

 今にして思えば上位機種のFGDP-50を買えばもっと面白い事ができたのにと後悔している面もあるのですが,いやいやFGDP-30でも十分楽しいです。

 まず,音がいい。自分の指先からこれほどのドラムの音が出てくるとは夢のようです。それから,ちょっとしたニュアンスを指先で表現出来るのも素晴らしいです。もちろん,ドラムセットは全身で演奏する楽器ですので,指先だけで様々なニュアンスを表現するなど出来るはずもないのですが,これが電子楽器であるという前提でみれば,かなりの表現力を持っていると思います。

 惜しいのは,パッドの配置が練られすぎていて,私のように標準の配列では楽しく演奏出来ない困った人には,カスタマイズをしないと楽しくないということでしょうか。

 こういうのは新しい楽器として練習を重ねて弾きこなすのが正しいと百も承知ですが,それでも,右手でハイハット,左手でバスとスネアというキーボードドラムの人ってそれなりの人口がいると思うのです。私としては,ヤマハのFGDPという全く新しい楽器としての提案を受け入れると共に,一方ですでに他のレイアウトでフィンガードラムを楽しんでいる人を救う配慮があってもよかったかなと思います。

 少なくとも,レイアウトの編集結果が他のドラムキットにも反映されるような仕組みは欲しいです。今のように,ドラムキットごとにレイアウトを編集しないといけないというのは苦行です。

 ついでに書いておくと,RD-2000をRD-2000EXにアップグレードしました。円安が進んだ今となっては,やっておいて良かったと思いますが,そもそもRD-2000EXにしたところで希望アップしたところがほとんどありませんので,しなくても良かったかなと思います。

 もし,RD-2000EXとしてのアップデートが行われていれば,アップグレードはやっておいて良かったと思ったでしょうが,現時点でRD-2000EXのアップデートは一度も行われていませんからね。


・カメラ関係

 カメラ関連の値段もべらぼうに上がりました。日本の製品なんだから円相場なんか無関係だと思っていたらそんなことなくて,ドルベースで価格が決まり,それをその時々のレートで日本円にして国内価格を決めるんだそうで,もはやニコンもキヤノンもフジも日本のメーカーだと思わない方が幸せです。

 内外価格差を小さくするためだと分かっているし,海外で転売されることを防ぎたい気持ちもわからないではありませんが,もっと円安だった1970年代や1980年代中頃まで
がこんな状態だったという記憶はありませんから,当時のように国内モデルと海外モデルを分けるなどの手を講じて欲しいです。

 そんな愚痴はさておき,今年はZマウントのレンズをZf用に2本買いました。Z24-120mmf/4Sと,Z50mmf/1.8Sです。どちらも大満足で,買って良かったレンズです。

 Z24-120mmは24-120mmというズーム域のレンズへの悪いイメージを間然に払拭した,私にとっての記念碑的レンズです。Zマウントのポテンシャルのたまものだろうと思いますが,ともかくもこれが1本あれば全く妥協することなく,一般的な撮影で不安もを感じることがない,安心の高画質がとにかく素晴らしいレンズです。

 一方のZ50mmf/1.8Sですが,これはこれで欠点のない完璧なレンズの1つだと言えるんではないでしょうか。切れ味は素晴らしく,画面の五個を見ても破綻はありません。ボケも自然でうるさくなく,背景処理もそつなくこなします。

 そんな完璧なレンズも,価格を思い出せば「そりゃそうか」と思ったりします。かつての50mmレンズと比べるのが間違いで,私は中途半端な性能の50mmを安くばらまかれるより,ちゃんとした50mmを必要な人に向けてきちんと売って欲しいと思っていた人なので,単純な値上げや高級路線とは違う意味を感じて納得していますが,当然これには反論もあり,それらの声に応えるものが,同じ50mmでもf/1.4のシリーズなのだと思います。

 それはそれとして,このZ50mmf/1.8Sは本当にいいレンズです。F1.8という控えめなところが少々残念ですが,開放から切れ味抜群,周辺の画質低下もなく,色もしっかり乗ってきます。絞ればここからさらに画質が上がり,もう惚れ惚れするくらいで,このレンズは,むしろ絞って使うのが正解なんじゃないかと思うほどの静謐さです。

 被写体ブレを防ぐためにも明るさは正義。感度だってISO200やISO400の画像の軽やかさ,ISO3200やISO6400の湿った画像とは比較になりません。やはり明るさは正義なのです。

 さてこのZ50mmf/1.8Sですが,ほぼ衝動買いです。きっかけはZ35mmf/1.4の登場です。シグマの35mmF1.4Artと同じようなレンズがZマウントでも欲しかった私は,Z35mmf/1.4に期待をしたのですが,試写してみたところ傾向が全然違うことがわかりました。

 もともと狙いが異なるレンズなので当然ですが,こうなってくるとZ35mmf/1.8Sが気になりだします。しかしここで私は35mmを捨て,50mmを選ぶ事になったのです。価格も要因の一つですが,同じf/1.8でも,50mmの方がよりボケるということが決め手でした。

 開放から絞るにしたがって,なだらかにボケが締まっていきます。もはやシグマの35mmとは関係ないところまで来ましたが,私はシグマの35mmが気に入った理由が,解放から普通に使えるレンズあったことに気が付いて,その延長で50mmを選んでみたくなったのです。

 ZマウントでしかもSラインですから画質にハズレなし。逆光にも強く,その時ニコンが考える理想がそこに詰め込まれています。その点での心配はありませんでした。

 Zマウントの登場時にラインナップされたレンズだけに設計がやや古くい上に,デザインも旧世代のものです。光学設計の古さは性能の問題と言うよりも,流行遅れの画質である事が問題となる昨今ですが,マウントによる強い設計制約から解き放たれた工学設計者の,ゆとりを謳歌するのびのびとした設計が感じられ,その画質は私にとって結果は大正解でした。

 このレンズは,1本目に選ぶZ24-120mmの次に2本目のレンズとして買うと,もう他にレンズを揃える必要がなくなると思います。その意味で,Zマウントはかえってお金がかからないマウントだと言えるかも知れません。


・キーボード

 キーボードと行っても楽器ではなく,PCの入力装置の方です。

 いや,昨今キーボードブーム(あろうことか自作までブームになっている)ので,それに流されたんだなと思うなかれ,私は昔から手に馴染む理想のキーボードを求めて彷徨っておりました。

 しかし,私がキーボードを探しているときには激しいコストダウンの並が押し寄せ,高級なキーボードが理解されなかった時代です。PC-9801RやDシリーズのキーボードなどは実に素晴らしいキーボードだと思うのですが,当時はそんなものも「昔は無駄に高かったよねえ」と嘲笑の対象だったのです。

 ただ,キーボードブームはキーボードにお金をかけることの正しさが浸透したことと,意外にニーズがあることがわかったため,各社が高級なキーボードやキースイッチを展開するようになったため,私のような人間にもおこぼれがくるようになりました。

 CherryMXの特許が切れて,互換品が安価に出回るようになったことも大きいです。

 また,テンキー付きのフルキーボードは大きすぎ,私が求めていた小型のキーボードの選択肢が増えたこともありがたい話でした。

 昨年はREALFORCE RC1を買って満足しています。20年前からずっと使っているREALFORCEを,もう一度買うことになったわけですし,また買って満足したということも20年前と同じですが,やっぱり使っていていい気分になるキーボードに出会えたというのは幸せな事だと思います。

 私のRC1は30gの軽い物で,US配列です。シンプルな刻印,スペースキーが長い,Returnキーが横長というのが私の好みの配列ですが,最近はこういうUS配列のキーボードも普通に買えるようになり,選択肢が増えたように思います。

 RC1の最大の欠点は,Bluetoothの再接続に時間がかかることです。中国メーカーのワイアレスキーボードは即座に再接続するので省電力のための切断が全く気にならなかったのですが,RC1では再接続に時間がかかる上,再接続のトリガになった入力が無効になるので,省電力のための切断が煩わしい物になっています。

 しかし,長時間の放置で電力を消費するというのももったいないことですし,内蔵の充電池だけに切れた電池を交換して作業を即座に続行できるわけでもないので,上手く使いこなさないといけないところでもあります。

 RC1についてはこれが最大の欠点で,あとは刻印が見にくいとか,CTRLキーのキートップ位は付属しておいて欲しいとか,そのくらいが気になるところです。

 現在,私はRC1にHHKBのキートップを一部転用しています。ESC,Tab,Ctrl,Return ,Fn,Alt,Spaceは,HHKBの白いキーに置き換わっています。統一性やデザイン性を考慮するならSpaceキーなどは標準のままであるべきなのでしょうが,汚れやテカリが出てくるのも嫌なので,余っているキーに交換した次第です。


・kobo Libra COLOUR

 とうとうE-INKもカラーの時代に,ということで,kobo Libra COLOURを買いました。もっとも,以前からカラーのE-INKは売られていましたが,現実的な価格ではなかったので自分に無関係と決め込んでいたのですが,kobo Libra COLOURは現実的な価格だったので買いました。

 さて,kobo Libra COLOURを日常的に使っていますが,結論を言うとカラーであることはあまり関係ありませんでした。私がカラーのコンテンツを読む機会がないという話ではありますが,表紙がカラーで出てきても読書体験としては大きな違いはありません。

 なので結局,モノクロのE-INK端末としてもっぱら使うことになっています。

 表示の品質はKindle oasisが最高で,kobo Libra COLOURは表示が奥まったところにあり,表面からの視差が気になる事(紙の上にガラス板がある感覚といえばわかって頂けるでしょう),加えてフロントライトがギラギラしていて見にくいこと(Kindle oasisは暗所での補助光と言うより,紙の反射率に近づけるためにフロントライトを使っているので見やすいのです)が問題で,読書体験としては1ランク落ちます。

 しかし,PDFを直接読み込めること,PDFでも高い表示品質を持ち,かつ動作速度が落ちないこと,表示範囲を調整して余白をkobo Libra COLOURでカット出来ることは,非常に良く出来ていると思います。

 kobo Libraでは,内蔵のフラッシュを交換する技があったらしいのですが,kobo Libra COLOURではそうはいかず,フラッシュはオンボードで交換不能です。確かに容量を増やせたら面白いなとは思いますが,居間の運用で大容量のストレージは必要ないですし,私はこのままで全く問題ありません。

 本命たるKindleのカラー版が海外では入手出来るそうです。日本でのアナウンスはまだありませんが,この円安ですから,かなり高価なものになると思います。確かにコミックはカラーだとうれしい場合もあるのでKindleがカラーになるのは歓迎ですが,5万円もするようなら私は見送ることになると思います。

 

・テレビ

 偶然ですがオリンピックの前に,OLEDのテレビに買い換えました。レグザの55X8900Lですが,その鮮やかさにすっかり目が慣れてしまいました。それでもテレビを見ることが楽しくなりましたので,生活を少しばかり変える力が合ったのだと思います。

 55インチのテレビは今どき大画面でもなく,いわゆる売れ筋です。ですが,黒の締まり具合,緑や赤の発色の素晴らしさ,そして実はとても薄いことがOLEDのメリットで,これらは買ってからでないとなかなかわからないものだと思います。

 その55X8900Lですが,購入後3ヶ月ほどして,画面の右下に小さい傷があることに気が付きました。小さいとはいえ深く,尖った物をぶつけたかんじで,表面が盛り上がっています。

 1mほど離れればわからなくなりますが,50cmも近づくと目に入ってきます。色が白いので目立つのです。パネルの表面はハードコードされているので擦り傷などは着きにくいと思うのですが,何かが刺さったようなキズには当然無力で,我が家は新品のテレビを僅か3ヶ月で非可逆的なキズを付けてしまうのかと,心からがっかりしました。


・自転車

 自転車といっても新しい物を買ったわけではなく,古い自転車を改造したり復活させたりしたという話です。

 とはいえ,この部品代でちゃんとした自転車が買えたかもなと思うので,成功だったかどうかは怪しいところです。

 自転車のメンテというのは,特殊な工具やノウハウが必要な世界で,ちょっと工作に自信があるとか,自動車いじりを昔やってた,と言う程度ではなかなか前に進みません。

 特に工具は,自転車専用で,しかもある作業を1つ進めるためだけに存在していたりしているので,一々揃えないといけないですし,とても効率が悪いです。

 その上技術的にも日進月歩で,古い規格の物はどんどん選択肢が少なくなってきています。そういう状況でも古い自転車をメンテし続ける事が得なのかどうかは,なかなか難しいところだと思います。

 その自転車ですが,作業が落ち着いた秋頃までは乗っていたのですが,寒くなってからは外に出ることすらなくなりました。一応タイヤの空気は補充していますが,次に乗るのは春になってからでしょう。


・家電,設備

 この家も10年が経過しました。家にいる時間が長いのでどうしても痛みが出ますが,電気関係の設備の劣化も進んでいます。

 昨年は食洗機を夏頃に交換しました。クリナップのZWPP45R21ADK-Eという商品をamazonで調達,自分で交換したのですが,このモデルはリンナイのRKW-405A-Bの同等品で,我が家に備え付けの食洗機の後継機にあたります。

 円安も進み,今後高くなることはあっても安くなる事はないだろうと,セールの時に買いました。

 交換手順は難しくありませんし,別に資格も必要ありません。最大の問題は大きくて重いことです。もちろん,重いといっても一人で持てないほどではありませんが,大きいので抱えるのに不自然な姿勢をしなくてはならず,腰を痛めることが心配でした。

 商品は早めに届いていたので,ある夏の夜に突如思い立って交換作業を結構しました。作業そのものはとても簡単で,本当に交換という感じに過ぎなかったのですが,やはり重量物を不自然な姿勢で取り回すことはなかなか大変でした。

 幸いにして腰を痛めたり怪我をしたことはなかったのですが,それだけのリスクをおかして食洗機を交換しても,メリットはありませんでした。

 もちろん,新しい物にすることで安心して使えることは事実ですが,洗浄力がアップしたわけでもなく,食器がたくさん入るとか,入れやすくなったとか,そういう改善はまったくありません。

 それどころか,時間が倍ほどかかるようになったり,操作スイッチが上部に来たため開かないと操作できないとか,短時間で洗浄するモードが削除されていたりと,従来の使い方をそのまま継承できないような改悪がいくつもあり,辟易しました。

 本当にこれでいいと思っているんでしょうかね,作っている人たちは・・・

 もう1つ,インターフォンも交換しました。VL-SWZ200KLと言う安価なものですが,親機がない部屋でも応対が出来るようにと,ワイヤレスの親機が使いたくて交換しました。

 交換してみて,画面が小さくなったこと,カメラが広角レンズでなくなったことで,確実に使い勝手は悪化しています。安い物に交換したので当然の結果だとは思いますが,もう少し考えて購入すれば良かったかなと思います。

 そしてワイヤレスの親機ですが,これもまだ本格的に活躍してはいません。冬と言うこともあり,他の部屋で長時間過ごすことがなくなっていることも原因ですが,近日中に活躍することがあると思います。慌てず応対が出来るように,慣れることも期待しましょう。

 掃除機も買い換えました。満身創痍なダイソンV7からV10 Fluffyへの買い換えです。

 ただ,これもなかなか微妙で,手放しに買い換えを喜べるようなものではありません。掃除中の取り回しの悪さは,慣れたとは言えやはり不自由しますし,ゴミを捨てるのに下からではなく前からになったことは想像以上に面倒になりました。

 一番面倒になったのはFluffyヘッドです。これ,なにかとすぐに巻き込むのでなんでかなあと思って調べてみると,先端のカバーが大きく開いていて,これまでの感覚でゴンゴンぶつけて障害物をヘッドでどけていると,簡単に巻き込んでしまうのです。

 おかげで掃除がしょっちゅう中断しますし,少し飛び出たもの,たとえば冷蔵庫のハイスを受けるトレイの出っ張りとか,少したるんだカーペットとか,そういうものさえも巻き込んでしまうのです。

 これ,改悪だと思います。以前のヘッドの方が掃除しやすかったですからね。ダイソンで新しい物に買い換えて良くなかったのって,今回が初めてでした。

 さてさて,届いたのが2025年1月なので厳密には昨年の買い物ではないのですが,手続きは昨年だったので書いておきますと,トースターをリプレースしました。

 アラジンのトースターで,今回もヨドバシの夢のお年玉で購入しました。前回は2022年1月でしたから,3年ほど使って買い換えたことになります。

 まだまだ十分使えますし,不満もないので同じ機種ならそのまま使うつもりでいたのですが,届いたものはグリル機能付きの上位機種でした。

 正直グリルはどうでもいいのですが,庫内が広いのが素晴らしく,食パンが4枚同時に焼ける,イングリッシュマフィンが3人分入る,チルドのピザがそのまま入る,というメリットは従来機種の唯一の不満点が解決するので,即交換となりました。

 今回のモデルは,網の位置を上げ下げできるようになっていて,焼き加減を選ぶ事ができます。1cmほどかさ上げできるので,上側はカリカリ,下側はしっとりという焼き方が出来るのですが,個人的には従来と同じように,上下が同じ程度に焼ける方が美味しいと思いました。

 設置面積は従来と同じで,ほぼ倍の処理能力ですから,これは画期的でしょう。これだけ広いと,もうオーブン機能付きの電子レンジを選ぶ必要はないかも知れません。


・オーディオ関連

 そんなに新しい事はやっていませんが,T50RPmk4はいいヘッドフォンだと思います。T50RPシリーズはもともと安価なモニターヘッドフォンで,初代に比べると随分値上がりしたように感じても,相場を考えるとこの音でこの価格というのはバーゲンセールかも知れません。

 さて,実はバカにして相手にしてこなかった,左右別体のイヤホンに手を出していました。完全ワイヤレスというのは利便性はこの上ない,人類の長年の夢だったわけですが,所詮はBluetoothですし音質的に期待出来ないわけで,少々の不便で音質への妥協を許せるほど私は寛容ではなかったのです。それに,高エネルギー源である電池を耳の知覚にはめ込むなんて,なんと恐ろしいことかとビビっていたにも事実です。

 ところがタブレットで動画を見るようになると,やはりTWSのイヤホンが欲しくなります。試しに使ってみたところ,これがなにより便利。これは使い方次第ではいいんじゃないかと気合いを入れて上位機種を買ってみました。

 ソニーのWF-1000XM5です。3万円以上の商品ですから,なかなか思い切った買い物になりましたが,これは便利なこと以上に,音質の良さに驚きました。コーデックがAACならそれほど問題にはならないだろうし,杯ビットレートのLDACが使えるなら音質への心配もほとんどなくなります。

 R3proはLDACに対応しているので,これとの組み合わせなら文句なし。MacやiPadとの組み合わせでも音質に不満はありません。こういうイヤホンって高音が伸びなくてかまぼこ型になっていたり,音質の悪さをごまかすためにドンシャリになっていたりとろくな物もないと思っていた訳ですが,WF-1000XM5はバランスも良く,自然な音でとてもよいと思います。モニター的と言ったら違うかも知れませんが,MDR-M1STに慣れた状態でも違和感なく使えています。

 電池の関係でずっと使える物でもなく,3万円が数年で溶けてなくなるというのはなんだか悔しいのですが,便利さと音質を両立したこの機種なら,多くの人に「使ってみたら」といえると思います。

 昨今,この手の商品も1000円前後から10万円近い物までまさに玉石混淆です。音質や安全性,接続性を検討するにはある程度のコストもかかりますから数千円は論外としても,2万円を越えると一般には十分な性能と音質であり,そこから先は価格の割に違いが小さくなると思います。

 TWSは着け心地も重要で,これは個人差があるので一概には言えませんが,WF-1000XM5は小さく角がないよい形状なので,おそらく多くの人の耳に違和感なく装着出来るのではないかと思います。

 ノイズキャンセル性能も非常に高いので,電子耳栓としても私は便利に使っています。前述のとおり,いずれ電池がダメになるわけで,そのあとこの便利さとこの音質を両立出来る商品があるのか,心配になっています。


 そんなわけで,2024年の散財を書いてみました。これ以外にも腕時計の修理とか,娘の入学&入院などでいろいろ支出はあったのですが,そういうのは散財とちょっと違います。

 これまでの調子で際在するわけにはいかないでしょうから,来年は果たしてどうなることやら・・・

 

PC-386BookLをカラーモデルとして復活させる

 ワンダースワンを手始めに次々に襲いかかる恐怖のビネガーシンドローム。偏光フィルムの交換以外に修理の方法がないこの問題は,交換可能な新品の偏光フィルムが手に入るかどうかという問題に始まり,ホコリや気泡を避けて一発で綺麗に貼り付けるという,非常に難しい作業に打ち勝たねばなりません。

 もちろん,それらの作業中にLCDそのものを壊してしまえば元も子もないわけで,フレキを切る,フレキがガラスから剥がれる,ドライバICが壊れる,ガラスが割れるなどに気を遣いながら作業をするのはなかなか難しいと思います。

 満身創痍で,次から次へと壊れていく状況に抗い,頑張ってここまで復活させたPC-386BookLを,先日LCDのフレキの切断で失った悲しみは大きく,どうしたものかとこの年末年始,考え込んでいました。

 外部ディスプレイを繋いでやればもちろん使う事が出来ますから,捨てるという選択肢はありません。しかし,HDDにFDD2機搭載という1990年代のフルスペックで,2MBのプロテクトメモリを装備した486(Cx486SLCですが)マシンがディスプレイまで含んだ「オールインワン」になっている,電源さえ与えれば即当時の環境が甦るというメリットは捨てがたいものがあります。

 加えて,今はもう世の中に存在しないDSTNのモノクロLCDには,なんとも言えない味わいがあり,私にとっては見にくさを越えた魅力があります。これを失ったことはなかなか残念なことでした。(青/白のLCDはまだちょっとした小さいディスプレイで使われていますが,200ラインを越えるLCDでSTNはもう見られないと思います)

 しかしこればかりは復活に同じ物を手に入れる意外に方法はありません。同じLCDを手に入れるのはほぼ無理,それこそ同型機のジャンクを手に入れるしかありません。一応ジャンクも探しましたがオークションには見当たらず,もし仮に出品されていても高くついたりLCDそのものがだめになっていたりする可能性も考えねばなりません。

 ここは1つ,古いLCDにこだわらずに,なんとか「オールインワン」を維持することを目指してみましょう。(あ,オールインワンというキーワードは,1980年代初頭のパソコンを知る人にとってはおなじみで,ディスプレイやデータレコーダまで搭載したMZ-80シリーズが他の機種との差を印象づけるものとして,強力にプッシュしていた言葉でした)

 以前から考えていたのは,入手しやすくなっている10インチクラスのLCDを移植出来ないだろうかということです。幸いにしてPC-386BookLの時代のLCDは厚みが必要でしたし,バックライトのインバータ基板も大きいので,蓋の部分にスペースがたくさんあります。

 なので,画面のサイズさえ適合すれば,あとはなんなく組み込めるはずです。

 とはいえこれはあくまで物理的な話。電気的な話がそもそも立ちはだかっています。もとのLCDの信号を使うことは絶対にと言っていいほど無理ですから,なんらかの方法で画像信号を用意し,LCDに表示させることはこの話の前提となります。

 適当な物がないかと探してみると,10.1インチのLCDモニターが使えそうでした。1024x600ピクセルという前時代的なTFTのLCDで,HDMIとVGA,それからNTSC/PALが入力出来るものです。お値段はamazonなら13000円ほどもしますが,あるお店で同じ物が7000円ちょっとで手に入りました。

 届くの少々時間がかかってしまいましたが,手元に来てまず試したことは,このディスプレイのVGA入力が24kHzのRGBに対応しているかどうかです。もし対応していればPC-386BookLの外部ディスプレイの信号をそのまま使うことが出来ますが,もしだめだったら変換基板を介する必要があります。

 さすがに変換基板まで組み込むのはもったいないので,一度VGA入力を外に出し,外部に変換基板を置く方法を取ることになります。オールインワンにはなりませんが,24kHzが日本以外で使われたことは希であり,海外製のディスプレイが24kHzに対応しないという事は今に始まったことではありません。

 果たして試してみるとなんと映りました。安い割に24kHzに対応していたみたいです。ならばと15kHzを入れてみましたが,これは未対応でした。残念。

 もしも15kHzのRGBまで対応しているというのであれば,それはそれで貴重なので組み込むのやめてしまう,あるいは組み込んでも一度VGA入力を外部に引っ張り出して汎用性を維持することも考えていましたが,24kHzまでしか対応しないだなんて,まるで今回の改造のために生まれてきたようなものじゃありませんか。

 これで覚悟は決まりました。組み込んで使いましょう。

 まず,LCDや部品の配置を考えます。画面を表示させて,表示内容が枠で隠れてしまわないような位置を探して固定するのですが,なんと上下がギリギリ。左右方向は問題がありませんが,表示サイズを調整出来ないディスプレイなので,危ないところでした。

 LCDを両面テープと接着剤で固定したら,ドライバ基板をLCDの上側に固定し,配線を取り回します。このLCDはVGA入力がUSBのMiniBを流用しているのでコネクタも小さく楽ちんです。

 これに電源のケーブルの2本を取り回して長さを揃えて切断します。その先に10ピン程度のコネクタをハンダ付けし,メンテ姓も確保しておきます。

 次に考えるのはディスプレイの操作キーです。電源のON/OFFはもちろん,入力切り替えや画質の調整で頻度は高くないものの必要になる操作キーは,PC-386BookLに穴を開けることになるので出来れば用意したくありません。

 幸いにもこのLCDには赤外線リモコンが付属していて,これですべての操作が可能です。受光部は操作キーの基板についているのですが,受光部だけはコントローラ基板に直接繋がっているので,特に操作基板の回路が必要になっているわけではなさそうです。

 なので,受光部を直接コントローラ基板に繋いで試すと,ちゃんと動きました。これで操作に関しては問題解決です。

 もとのLCDの明るさやコントラストを調整するスライダの一部に3mm程の穴を開け,スライドさせると穴が出てくるようにした上で受光部を固定します。

 スライダは動かせるように,もとのインバータ基板を外さず,ダミーで残しておきます。これで綺麗にまとまりました。

 さて,次はとうとう本体側の改造です。外部ディスプレイの信号を取りだしてVGA入力に入れるというのが作戦ですから,メイン基板から信号を取り出す必要があります。従って全バラシです。

 メイン基板にマウントされているD-SUBの15ピンから出ているアナログRGB信号から,RGBの各信号とHとVの同期信号の5本とGNDの計6本を,コネクタの足にハンダ付けして直接取り出します。そしてケーブルの長さを調整して端っこにコネクタをハンダ付け。

 電源は12Vから15Vまで入力可能だそうなので,電源の容量を考慮しなくていいようにACアダプタからの入力のところから取り出します。本体の電源スイッチに連動させるために本体の基板から12Vを探して供給することも考えましたが,安全性を考えるとこれがベストでしょう。

 長さを揃えてこちらもコネクタにハンダ付けし,テストを行うとあっさり表示ができました。

 あとは組み立てて完成です。取り回しによってはノイズで画像が乱れることもあるのですが,上手く取り回して回避します。

 気を付けないといけないのは,PC_386BookLの外部ディスプレイの信号は,初期状態では出力されないという事です。バックアップのための電池が切れると初期状態に戻ってしまうので,こうなるともう全く画面が見えなくなります。

 起動時にHELPキーでメニューに入っても,そこからの操作が全くできなくなるのは辛いので,ブラインド操作で外部ディスプレイの信号が出るようにしないといけません。

 簡単なのは,DOSをフロッピーから起動し,CTRL + HELP + Dを押すことです。フロッピーから起動しないといけないのは,初期状態だと内蔵HDDの設定が256バイト/セクタに戻ってしまうからで,こうなるとHDDからの起動が出来なくなるからです。

 一度外部ディスプレイの信号が出漁されればあとはHELPキーで起動するメニューでも操作ができますので,HDDの設定などを変更して再起動。これで大丈夫です。

 ここまで出来たらあとは実際に使ってみます。安い割にLCDの品質は良好で,最初のTFTモデル,PC-9801NCを見た時の感動が甦ります。

 PC-9801は登場時からカラー表示が前提のマシンでしたから,やはりカラーはいいものです。私は滅多にゲームはやりませんが,ゲームも楽しめそうです。(あ,FM音源がないか)

 確かに当時の雰囲気を存分に味わうことの出来るDSTNの表示も恋しいですが,カラーの鮮やかな表示は,これはこれで楽しいものです。本体の重量も手に持った瞬間にわかるほど軽くなっていますし,最終的にアップグレードされた形で復活するというのもありではないかと思います。

 で,ふと気になったので調べてみると,PC-386BookLには,BookLCとBookLXというカラーモデルがすでに出ていたんですよね。LCがTFT(エプソンとしてはTFTとはいってませんが),LCがSTNモデルではないかと思いますが,それぞれメインメモリが2MB追加されているので,今の私のPC-386BookLと同じ状態です。

 そういう意味では,Bookタイプという今となっては存在価値のないプラットフォームにおける完成形として,当時既にカラーモデルが位置づけられていて,その価格にもかかわらず市場に投入されたという事でしょう。存在が空想の物ではなく,実際にカラーモデルが少数とは言え作られていたわけですから,私のPC-386BookLはオリジナルの価値や魅力を損なう物ではない,ということにしておきましょう。

 レトロマシン,ヴィンテージマシンのレストアは,オリジナルに戻すことが基本です。勝手な改造やアップグレードは御法度ですが,今有る部品で当時の状態を取り戻すことは十分に認められると思います。

 ということで,今度こそだめだと思われたPC-386BookLですが,まさかのカラーモデルとして復活を遂げました。これで本当にレストアが終わればいいなあ。

 

PC-8201のLCDを復活

 1983年,PC-8001,PC-6001,PC-8801でまさに帝国を築こうとするNECがハンドヘルドコンピュータとして世に問うたマシンがPC-8201です。

 A4サイズ,単三電池4本で駆動,デスクトップ型と全く同じキーを備えたキーボードに大画面のLCD,そしてN-BASICと互換性のある強力なBASICという本気のマシン。

 その上レッド,アイボリー,シルバーという,どれも従来のパソコンとは一線を画す3色の本体色で,当時中学生だった私には,138000円という価格もあって,とてもまぶしく見えました。

 PC-8201に搭載されたN82BASICもマイクロソフト製のBASICですが,このBASICこそ,ビル・ゲイツが最後に書いたコードをを含んでいることでも知られています。

 さらに,PC-8201にはタンディとオリベッティに兄弟がいて,すべて京セラのOEMだったということもエピソードの1つです。

 そんなPC-8201ですが,単三電池で動かすためにすべてCMOSのICで構成することになります。Z80は当時まだCMOSでは手に入らず,CMOS化で先行していた沖電気の8085が搭載されています。

 このころの電池で動くマシンのCPUの選択肢には制限があって,PC-2001に至っては8080系でさえありません。そういう過渡期のマシンというのも,実は結構面白いものだと思います。

 さて,そんなPC-8201ですが,私が入手したのは随分後です。とはいえ入手から30年も経過しています。当時既に傷んでいましたが,この30年でさらに劣化が進んでしまいました。ケースもすでに塗装が剥げてしまっていますし,黄変も見られます。

 その劣化のうち,最も深刻なのは先日発覚したLCDのビネガーシンドロームです。発見したときの悲しさといったら・・・

 表示は正しく出ていますが,画面の中央に色の違う楕円が浮き出ていて,いかにもLCDがだめになっている感じがします。こうなると時間の問題で,分解してLCDを取り外しきちんと確認してみると,ビネガーシンドロームに特徴的な,すでに斜めのキズのような物が浮き出ていました。

 ここまで来るともう偏光フィルムの交換しかありません。PC-386BookLのLCDの修理に失敗した悲しみが癒えないまま,私はある一面ではPC-386BookLよりももっと大切なマシンの修理に進むことにしたのです。

 作業そのものは簡単。ますはLCDの端っこをめくって,手持ちの偏光フィルムが使えるかどうかを試してみます。悲しいかな,このLCDは先日入手したA4サイズの偏光フィルムを斜めにしないとコントラストが最大にならず,結局1枚の偏光フィルからは斜めに1枚分しか採ることが出来ない,無駄の多い結果となってしまいました。

 大きさを測って切り出した後は,元の偏光フィルムをLCDからエイやっと剥がしてアルコールで綺麗にします。

 あとは覚悟を決めて,新しい偏光フィルムのシールを剥がして貼り付けます。少々大きめに切り出しておくと,少し斜めになったくらいで失敗したりしないのでオススメです。

 書くと簡単ですが,ホコリは入る,気泡も入る,斜めになって端っこが張り切れないととにかく失敗の可能性が高い作業です。しかも偏光フィルムの糊は一度貼ると使えなくなるので,チャンスは一度きりです。それでも偏光フィルムが複数枚とれればまだ安心なのですが,前述の通りA4の偏光フィルムから1枚しか採れない以上,本当に一度きりです。

 こういう時大体失敗知るのが私なのですが,今回はホコリは入らず,気泡も数カ所で済みました。強く指で押すと気泡は消えるものなのですが,押しすぎるとガラスが割れてしまうので注意が必要です。

 しかし,3ヶ所の気泡が消えず,うち1ヶ所が黒ずんだ謎の気泡です。しかし,これを深追いするとろくな事がないと,これまでに痛い経験を重ねてきたもう一人の私がやめておけとブレーキを踏んでいます。

 なんとかしないとと思う気持ちを抑えて,今回はこのままでいきましょう。余った端っこを少し切り落とし,LCDは一応完成。本体に組み込んで組み立てれば作業終了です。

 劣化した偏光フィルムを交換したのですから,視認性も向上。非常に見やすくなりました。ますます愛着がわいてくるから不思議です。

 問題の気泡は,なんと小さい物は3日ほどで,黒ずんだ物でもどういうわけか5日くらいで綺麗に消えてなくなりました。やはり深追いは禁物でした。希望については神経質になることはなかったということです。

 そんなわけで,今回のビネガーシンドロームには勝利。PC-8201は無事に復活することができました。登場から40年以上ですからね,自分でメンテ出来る人しかレトロマシンを所持してはいけないと,そんな風に自分に言い聞かせて,今後も維持していこうと思います。

PC-386BookLもビネガーシンドロームの餌食に

 LCDに確実に発生する,そしてとても恐ろしい現象,ビネガーシンドローム。ある時期に生産された映画や写真のフィルムに頻発し,一度発生すると修復の手段はなく,情報を救い出す方法はありません。

 見た目の悲惨さに加えて,その強烈な臭いはまさに死の臭い。どれほどの関係者が心を折られてきたかわかりません。

 そしてその恐ろしいビネガーシンドロームは四半世紀を経て,LCDにも発生しています。言うまでもなく,LCDは機器の小型化と低消費電力化を高い次元で達成させて立役者ですが,同時にその機器の寿命を決定するものにもなったというわけです。

 汎用の部品と違い,LCDはほぼカスタムメイドです。劣化したLCDは交換以外に方法がなく,従ってLCDが劣化した機器を救う手立てはほぼありません。

 ビネガーシンドロームで劣化するのは主に偏光フィルム,それものり付きの物ですので,これを交換することで復活させることが出来る場合もあります。しかしそれは運が良ければの話です。ゲームボーイのように数が出ていて,かつ今でも需要があるものは偏光フィルムが手に入るのですが,多くのLCDでそれは望めないでしょう。

 私の場合,ワンダースワンシリーズすべてと,ゲームボーイアドバンスがビネガーシンドロームの餌食になっていました。一説では,ビネガーシンドロームが1つ発生すると,周囲のLCDにも伝染するらしいので,結果的に全滅になるそうです。

 これは偏光フィルムを交換,あるいはLCDを最新のIPAに交換することで解決したわけですが,コロナの間に失血を注いで復活させたPC-386BookLが,まさかのビネガーシンドロームにやられていました。

 ビネガーシンドロームに特徴的な,あの酸っぱい臭いと共に,なぜか斜めに入る傷のようなものが見つかったので,先日勇気を持って分解しました。

 予想は的中し,派手なビネガーシンドロームに蝕まれていました。

 PC_386BookLのLCDは640*400ピクセルのSTNのモノクロです。DSTNというちょっと珍しいタイプで,画面の上下を分割し,200ラインのLCDを2枚同時に駆動するという形で400ラインを実現します。

 なんでそんなことをするかといえば,STNは200ラインくらいが駆動限度だからです。
STNでピクセル数の多いLCDを作る必要がなくなった現代において,完全にロストテクノロジーになったと言えるでしょう。

 偏光フィルムは通常のSTN用の物で十分なので,試しに手持ちの偏光フィルムで端っこを剥がして見てみると,綺麗に表示が出ます。容易に手に入る偏光フィルムで修理可能です。

 喜んでA4サイズの偏光フィルムを注文,届いた時点で早速作業開始です。

 LCDを分解し,偏光フィルムを剥がします。面積が大きいため,ビネガーシンドロームで発生する酸っぱい臭いも尋常ではありません。思わずむせてしまいました。

 あらかじめサイズを合わせて切っておいたフィルムを綺麗に貼ります。ホコリが入らないように,汚さないように貼るのですが,想像以上に綺麗に貼ることが出来ました。

 ここまで実にスムーズで,ウソのようです。

 仮組みして動作テストを行うと,悲しい事に左の縦2ラインが表示されていません。どうも壊してしまったみたいです。

 どうせ,フレキがLCDのガラス面から剥がれたんだろうと,最近手に入れたフレキを熱で溶着する真鍮製のコテ先を取りだし,交換したハンダゴテでフレキに熱をかけました。

 試してみると・・・なんということか,さらに状況が悪くなっています。左は縦に?ライン,中央に8ラインが2本,これはもう完全に死んでます。

 おかしいなあ,こんなところ触っていないんだけどなあ,と改めて確認すると,なんとフレキが切断していました。熱を加えるときに他のフレキも含めて曲げたのですが,フレキの劣化が進んでいて,一度折り返しただけで切れてしまったようなのです。

 万事休す。

 こうなると,もう手はありません。フレキはドライバIC(フリップチップ)の基板の一部として出ていますので,この部分だけを交換したり,手配選するのはどう考えても無理です。

 仮に手配選できても,このフレキはポリイミドに銅箔のタイプではなく,フィルムにカーボンのタイプです。ハンダ付けなど全く不可能です。

 ああ,なんということか。

 ゴミも入らず,綺麗に貼れて,しかも今出ている下半分の表示は非常に綺麗で,STNならではの味があります。これで使える事を夢見ていたので,とてもがっかりしました。

 そもそも,このPC-386BookLも,これまでとても頑張って死の淵から甦らせてきたものです。ほとんど意地と言ってもいいほどで,今の私に同じ事をやれと言われても,絶対に無理だと思います。

 その修理範囲に,LCDも入っていました。LCDの駆動回路はCRT用とは別に用意されていて,パターン切れで清浄な画面が出ない物を波形を追いかけて修理しました。LCD用の電源も壊れていたので修理,LCD自身もキズがあったのでフィルムを貼って対策しました。

 これだけやったのも,あのSTNの表示が見たかったから。1990年代の雰囲気は,あのコントラストが低く,視野角の狭い,青と白色のLCDに宿っているのです。

 しかし,とうとうビネガーシンドロームに屈しました。

 ジャンクのPC-386BookLを探してみましたがあいにくありません。仮にあってもLCDは同じように劣化しているはずで,今回と同じように鳴ってしまうことも避けられないでしょう。

 仕方がありません,オリジナルのLCDを使うことは諦めます。

 なんと恐ろしいことか,ビネガーシンドローム。私から大好きな物をどんどん奪っていきます。

 そして,その恐ろしい魔の手は,PC-8201にも・・・続く。

 

 

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