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2009年06月24日の記事は以下のとおりです。

ああコダクローム

 いよいよこの時がやってきたという気がします。そう,コダクロームがいよいよ製造中止になるそうです。

 日本での販売中止の際にもちょっとした祭りになりましたが,それでも製造は継続しているし,アメリカでは手に入り,現像だってアメリカで出来ましたから,いざとなればコダクロームを使う事は不可能ではないと,一種の安心感を伴っていたことは間違いないと思います。

 しかし,今回は本当に終わりのようです。私が読んだ記事では,2009年で提供を打ち切る,現状の消費ペースでは今年の9月頃までは手に入るだろう,と書かれていました。また,世界で1つしかない現像所である米Dwayne's Photoは,2010年中は現像を受け付けるということでした。

 この表現がちょっと微妙だなと思うのは,今年いっぱいで提供をやめる,ということです。すでに新規製造は行わず,今仕込んでいる分を作り終えたらもうオシマイですよ,という意味で,残りの数は決まっているから,遅くとも今年中に売り切れてしまうだろう,という感じのニュアンスです。

 せめてもう1年続けてくれれば75周年だったのですが,もう1年維持することも難しいという事でしょう。報道では売り上げが下がってしまったということを理由に挙げていましたが,こういうケースでは製造設備の老朽化も原因だったりしますので,1年の延命というのはなかなか難しいものがあったりするのかも知れません。

 製造が難しく,バラツキも経年変化も大きなフィルムで,かつ現像も特殊で複雑ななプロセスを必要とする一方で,抜群の耐久性と保存性能の高さで貴重な記録を長く残せること,そして世界初のカラーフィルムとして登場以来世界中の光を取り込んで来た事で,どれほど情報の伝達と保存に貢献してきたかはかり知れません。

 以前にも書きましたが,コダクロームの欠点は工業製品としては容認できないものであり,それらが改良されて行くことは正しい進化の過程です。世の中見渡してみると,便利で性能の良いものが生まれれば,それ以前のものは淘汰されていくものです。

 しかし,コダクロームには,それら欠点を補って余りある魅力がありました。工業製品として,あるいは経済原理だけで判断されない,芸術や文化と言った側面にまで,コダクロームが根を下ろしている証拠でもあります。

 本来,外式の欠点を克服するために生まれた内式のリバーサルが登場した時に,外式であるコダクロームはなぜ消えることがなかったのか,また世界中で内式と外式の両方の製品を持ち続けたのはコダックのみだったのはなぜか,少し考えてみるよい機会なのではないかと思います。

 内式外式,ネガポジ,カラーモノクロにかかわらず,そもそもフィルムの使用量が激減し,いつなくなってもおかしくない状況にあります。文化と芸術に影響のある工業製品が淘汰されることが本当に容認されることなのか,だからといってメーカーだけが負担を強いられることが正しいのかも考えなければならないところまで来ているように思います。

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