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2023年05月15日の記事は以下のとおりです。

ようやくPB-100を手に入れた

 中学生の時に選んだポケコンがシャープのPC-1245だったことで,今日に至るまでポケコンはずっとシャープのものを使ってきました。もう1つのポケコンメーカーであるカシオのものは,結局一度も使う事はありませんでした。

 1980年代のパソコンブームがやってきても,5万円も10万円も,もちろん20万円もするパソコンを大した目的もなく買ってもらえる子どもはそう多くなく,ゲームがやりたいなら15000円のファミコンが最善の選択肢になることは,子どもにとっても親にとっても必然だったと言えます。

 しかし,プログラムを作るという目的に目覚めた子どもたちは,どうしてもパソコンを欲することになるわけで,そこには価格と携帯性という2つの高い壁が立ちはだかっていました。

 この2つを一気に打開するのが,ポケコンでした。関数電卓に端を発するBASICでプログラムが出来るポケコンは,もともとビジネスツールとしての性格が強く,価格も高いし子どもたちが目にするような場所にはありませんでした。

 しかし,カシオがPB-100という革命的なモデルを発売したことで,子どもたちの選択肢が1つ増える事になりました。価格は14800円,文字通りポケットに入る小型のマシンであり,しかもカシオの電卓を売っているところならどこでも買えるという入手性の良さもあり,パソコンは無理でもこの値段ならと,買ってもらった子どもたちが多くいました。

 実はBASICの走るポケコンはシャープの方が早く,PC-1210がその第一号と言われています。カシオも追随してプログラム関数電卓の発展型としてfx-602pを発売するのですが,前者はビジネス向け,後者は理系学生やエンジニア向けという特殊なマシンで,子どもたちの目に触れることはありません。

 これが一変したのがPB-100で,子どもたちが目にする雑誌にも広告が掲載されたり,テレビCMが頻繁に放送されたりと,子どもに対するアピールが行われるようになったのです。

 ライバル機であるPC-1245を知らない子どもも多く,実際私もお店で買うまでPC-1245の存在を知りませんでした。

 私の親はPB-100を渇望していた私を無視し,やがてPC-6001,数年後にPC-1245を買い与えることになるわけですが,あのときPB-100を買っていたらマシン語で遊ぶことも,ハードウェアの改造を行うこともなかったわけで,偶然とは言えシャープのマシンを選んだことは幸いだったと思います。

 シャープのファンからみたPB-100は,とにかく安かろう悪かろうなマシンという印象です。PC-1245が17800円,PB-100が14800円で,その差は3000円もありましたが,この差はスペックの差を考えると十分おつりが来ます。

 メモリはPC-1245の半分しかなく,PC-1245並に増設すると6000円もかかります。しかも標準のメモリでは足りないシーンがほとんどで,増設しないという選択肢はありません。

 表示桁数はPC-1245が16桁あるのに対しPB-100は12桁です。電卓なら十分ですが,文字やゲームではかなり厳しいです。

 BASICの仕様についても,PC-1245あ上位機種のPC-1250とほぼ同じの強力なものを搭載していたのに対し,PB-100は命令数も絞り込まれていていましたし,PC-1245には上下キーがありプログラムの編集が楽に出来たのに,PB-100ではいちいちLIST命令でリストを表示させる必要がありました。

 PC-1245はVRAMへのアクセスが許されていたのでグラフィック表示が可能だったのですが,PB-100は完全なキャラクタベースのマシンでした。表現力が圧倒的に違いました。

 極めつけがマシン語です。PC-1245では非公式にマシン語が使えて,高速なゲームはもちろん,コンパイラやアセンブラなどの開発ツールも作られました。PB-100は基本的にBASICのみで動かすマシンでしたので,高度な使いこなしが出来ず,マシンの限界がすぐに来てしまいます。

 ハードの改造もそうです。PC-1245はメモリの増設や周辺機器の製作などがマニアの間で行われていましたが,PB-100にはそうした手を入れる余地がなく,ハードウェアを触ると言う文化が育ちませんでした。

 総じて,PB-100は電卓の延長,PC-1245はそれでもパソコンを踏襲するアーキテクチャを持つもので,PB-100の対抗機種としてPC-1245が17800円で登場したことは,その内容を考えるとかなりのお買い得だったと言えると思います。

 PB-100が優れていたのは,BASICで作ったプログラムが高速で動いたことでしょうか。PC-1245は当時から遅いマシンと言われていましたから,PB-100のサクサクとした動作は,初心者がゲームを作るには最適だったと思います。

 個人的には,MODEが整理されていないことが嫌でたまりませんでした。RUNとWRTがMODEに分かれていることはよいとして,なぜ小文字の入力やグラフィック文字の入力にMODEの切り替えが必要なのか,DEGやRADの切り替えがモードで切り替わることも納得が出来ず,とにかく雑多な機能の切り替えをただただ割り当てただけという乱暴な設計がどうにも馴染めませんでした。

 PC-1245はその辺が綺麗に整理されていましたから,悩むことも忘れることもありません。このあたりも計算機上がりのPB-100との違いだったように思います。

 そんなわけで,ポケコンの人気を二分するシャープとカシオですが,私はシャープのポケコンに不満を感じることなく,現在まで使い続けています。

 しかし,カシオのポケコンにもファンが多くいます。PB-100で育った人たちは今どんなポケコンを使うのか,そんなにファンが多いマシンなら,きっとなにか魅力的なところがあるに違いないと,新品でVX-4を買ってみましたが,やっぱり馴染めずにほとんど触っていません。

 それでもPB-100は評価の高い大ヒットモデルです。VX-4がPB-100から(UIやアーキテクチャ,設計思想などひっくるめて)建て増ししてきたことから使いにくくなっているだとしたら,PB-100なら楽しく使えるかも知れません。なにより,評価の高い大ヒットモデルで,私自身もあれほど欲しかったマシンです。一度はきちんと使ってみなければ,その実力を公平に測ることはできないでしょう。

 そこで出来ればオリジナルをと,PB-100を探してみました。程度の良いものは少ないですし,値段もやや高めで,カシオの人気というのも根強いものがあるなと感じました。

 ふとしたことから,某オークションで2台落札,先に届いた1台は程度が悪く,動作試験をするも裏側を軽く抑えないと表示の一部がかけてしまいます。

 嫌な予感もしますが,分解掃除を行います。再度組み立てますが,表示されない部分が更に増えています。

 何度も組み直しを行っているうちに,どんどん表示されない部分が広がっていきます。もうどうにもなりません。もったいないですが,廃棄することにしました。

 なんとまあ,脆弱なことよ。シャープのマシンはこのくらいの分解掃除でダメになったりすることはあり得ません。今回の破損の原因はLCDと基板を繋いでいるカーボンフレキの断線です。切れやすく,交換不可能,基板だけ,あるいはLCDだけを再利用することも出来ず,本当に困った部品です。

 このあたりも電卓上がりなんだよな,と悪態をつきつつ,私はふと高校生の時に同じような失敗をしたことを思い出しました。

 友人が,PB-80を私に譲ってくれたことがありました。なんでも一部のキーが効かず,捨てるというので周できるかもともらってきたものです。

 PB-80はさらにコストダウンを行ったモデルで,キーはフィルムキーです。これが壊れているなら,もう修理方法はありません。

 この時は効かないキーを銅箔テープかなにかで動くように出来たのですが,LCDのカーボンフレキを傷つけてしまい,結局廃棄したのです。その時もPC-1245に比べて壊れやすい,分解したらもうおしまいだ,と言う印象を持ったのです。

 同じことを30年も経ってから思い出すことになりました。つくづくカシオのマシンには縁がないものです。

 気を取り直してもう一台のPB-100が届くのを待ち,こちらを本命としました。

 届いたもう1台のPB-100は非常に程度が良く,ソフトケースも付属してきたことから,いつもケースに入れて使われてきたんだろうなあと思わせるような,綺麗さでした。

 そもそも,このソフトケースも綺麗で,傷んでいません。ということはあまり使われなかったのかも知れないですね。

 ただ,LCDの偏光フィルムは劣化が進んでいるようで,中央部だけ色が変わっていますし,コントラストも下がっています。

 分解前に動作確認をしますが,全く問題ありません。そこで早速分解,丁寧に作業を行い,まずはRAMを移植します。さくっと作業を済ませてテストをすると,ちゃんとRAM容量が増えています。これでOR-1内蔵のPB-100になりました。

 続けて分解してハンドソープで洗浄します。キーの程度も良くて日焼けがほとんどありません。いやー,気持ちのいいものです。

 すべてを洗浄し終えたら今度こそ慎重に組み立てて完成。今度は問題なく組み立てることができました。

 ソフトケースも若干臭いがあったので洗浄したので,これで気持ちよく使えるようになりました。

 さて,実際にPB-100を使ってみると,まず処理速度が速いことにびっくりします。これだとアクションゲームをつくることも確かに簡単です。

 計算の精度については,PB-100の方が上という声もあるようなのですが,どちらも基本的には電卓ベースですし,内部は当然BCD演算ですので違いがあったら困ります。表示文字数の関係で表示桁数に違いがあるのは確かなようですが,内部の演算はどちらもきちんと行われているはずですので,私は同じようなものだと考えています。(でも,有効桁数を設定して四捨五入を行うことができるのはPB-100の勝ちですね)

 それから慣れないと面倒だったプログラムエリアの考え方ですが,これも慣れてしまえば結構便利です。SHIFT+数字キーですぐに実行可能,異なるプログラムエリアからジャンプしたりできることも便利,ただし変数はグローバル変数というのが悲しいですが,バッテリーバックアップでメモリが保存され,電源ONですぐ動かせるというポケコンの特色は,小さい便利なプログラムをさっと使える事にあるわけで,これが10本も登録出来るというのはなかなか便利な仕組みでしょう。

 もちろんPC-1250でもこうした運用は可能なのですが,プログラムエリアという考え方がありませんので,単一のプログラムのジャンプ先をキーに割り付けることで一発で実行するという仕組みを取ることになります。どっちも結局同じようなものなのですが,どっちが便利かというと実は私はPC-1250の方が便利だと思っています。

 とまあ,カシオらしい独特のキーの押し心地が実は一番気に入っているんですが,12桁しかないLCDでこれだけ面白いゲームが出来ているというのもすごいことで,もう少し真面目に使い込んでみようと思っています。

 その際に必要になるのは,やはり外部との通信手段です。せっかく打ち込んだプログラムが消えてしまう,PCからプログラムを流し込みたい,雑誌のプログラムもOCRで一発!という話は,PB-100が外とやりとりが出来るようになっていることが前提です。

 そこで必要になるのが,カセットインターフェースです。PB-100の12ピンの拡張端子に差し込むオプションですが,PC-1250のようにレベルコンバータだけの簡単なものではなく,専用のLSIが乗っかっています。高価なのはそのせいです。(余談ですが,PB-100の拡張メモリは汎用の非同期SRAMではなく,特殊なプロトコルのメモリで,端子数は少なくて済むのですが,高価でした。PB-100は本体価格が安いのに,オプション類が高価だったのは,こういう理由があるのだと思います)

 しかし,世の中にはこのカセットインターフェースを解析してUSBでPCと繋いでしまう人もいるんですねえ,すごいです。私も手持ちのAVRを使ってさっさと作ってしまうことにしました。続きは後日。

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