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2016年08月22日の記事は以下のとおりです。

子供用MP3プレイヤーを作る[その1]

  • 2016/08/22 14:31
  • カテゴリー:make:

 少し前の事ですが,5月のこどもの日の頃に,鯉のぼりのイラストが描かれたお菓子の空き缶を手に入れました。

 大きすぎず小さすぎず,手頃な大きさだったので「MP3プレイヤーでも仕込むか」などと話していたのですが,子供が大きくなり,自分で音楽を聴くという事に興味を持ち始めたこともあり,作ってみることにしました。

 対応フォーマットは使うMP3プレイヤーモジュールによって決まりますが,そんなにこだわっても仕方がないので,MP3のCBRに対応していればいいとしましょう。

 出力はモノラルで十分だと思いますが,それなりにしっかりしたいいフルレンジスピーカーを搭載したいです。

 アンプもモノラルでいいわけですが,電池駆動で1Wくらいを出したいと思うので,そうすると自動的にBTLのアンプになると思います。

 操作系ですが,これもモジュール次第になりますけど,出来るだけシンプルにいきたいです。ボタンは再生/停止,送りと戻しの3つで十分ですし,音量調整はアナログのボリュームでグリグリまわすものがいいと思います。

 表示もLEDが1つだけあればそれでいいです。

 電源は乾電池で,単三が4本の6Vでいきましょう。

 このくらいの緩い目標を決めて,部品集めです。

 自作がちょっと大変なMP3プレイヤーは,まだ現在の店舗に移転する前のaitendoに友人と出向いた折,その友人のオススメで安価に買ったものが手元にあります。MP3-SB16という型番のもので,今でも500円くらいで買えるようです。

 正直,今さらMP3というのもなあ,と思いますが,MP3くらいだからこそ,緩い工作が出来るというものです。

 ところでこのモジュール,電源は5V単電源です。またストレージはUSBで繋ぎますので,消費電流がどのくらいになるかはUSBに繋がったメモリ次第ですので,ちょっと見積もりにくいです。

 次に,またまた重要なスピーカーです。大きさが6cmから7cmくらいで,いい音のするフルレンジって案外ないものなんですが,随分昔の「大人の科学マガジン」で手に入れた,7cmのフルレンジスピーカーキットが1つ出てきたので,これを使います。

 スピーカーキットといえば,スピーカーユニットはすでに完成していて,これを入れる箱を作るというのがおきまりだったのですが,この学研のキットはスピーカーユニットを組み立てるキットで,フォステクスが作っていました。

 当時の私は驚いてしまい,思わず2つ買ってしまったことを覚えています。

 1つはキッチンにおいてあるFMラジオの高音質化で使い,もう1つ残っていた物に今回出番が回ってきたというわけです。ホワイトコーンでなかなかいい音がしそうな外観なのですが,接着剤のはみ出しもあり,とっても手作り感あふれるものになっています。

 次,アンプです。BTLでいくと決まっていますが,どんなICを使うか迷うところです。HT82V739は部品点数が圧倒的に少なく,抵抗は全く外付けを使いません。それでいて安く,音質にも定評があります。しかもトラブルがなく,一発動作できます。

 これにしようかなと思って部品箱を眺めていると,NJM2073Dが腐るほど出てきました。ステレオの小型アンプとしては定番で,確かBTL接続も可能だったはず。,もったいないから,これを使ってみましょう。

 ということで,まずはアンプの製作です。いくらモノラル,いくら子供用とはいえ,あまり程度が悪いものは避けたいところです。

 BTLで1W程度を出す回路をデータシートで確認すると,なにやら部品が一杯ついています。もともとNJM2073Dはゲインが高く,負帰還をかけてゲインを下げて使うことも普通に行われています。

 しかし,負帰還をかけることで発振しやすくなり,その対策にあれこれと部品が追加しなくてはいけません。今回はお手軽工作ですので,発振対策やノイズ対策に時間をかける暇はありませんので,データシートの通りに作ります。

 一応完成したのですが,まずサーッというノイズが大きくて,話にならないです。また,MP3再生中は0.5秒おきくらいにボツボツという音が出ていて,とても耳障りです(なおこのボツボツはアンプのせいではありません)。

 また,随分歪みっぽい音がして,聞いていて楽しくありません。1kHzの歪率を測定すると,0.1Wから1Wくらいまで,ほぼ全域で4%を越えています。

 波形を見たいのですが,BTLなのでオシロを繋ぐことが出来ず,方サイドずつ対GNDでみてみたところ,たくさんのノイズが乗っていて,。波形も崩れているのがわかります。

 とりあえず発振は対策で止めましたが,ノイズの多さと歪みの多さは無視できず,これを真面目に検討する時間もないので,NJM2073Dはもうあきらめました。

 そして本命,HT82V739を試してみます。回路は本当に簡単で,設計もなにも,指定通りにコンデンサを2つ繋ぐだけです。そして音を出してみると,これがまたなかなかいい音でなってくれます。測定すると1Wくらいまで0.04%以下の歪み率です。S/Nは70dBほどで,NJM2073に比べると10dBほど良い数値です。それでも70dBですから,ラジオ並みですが・・・

 これでMP3とアンプ,そしてスピーカーは揃いました。あとは電池です。ニッケル水素電池を4本使うと,5.5Vくらいから4.2Vくらいまで出てきます。アンプはどの電圧でも動作しますし,MP3プレイヤーは4.2Vを下回ると動作しなくなりますから,バッテリー直結でもいいだろうと,このまま先に進めます。

 ところが大きな落とし穴です。単三4本を電池ケースにいれてブリキの缶に入れ,スピーカーと取り付けた蓋を被せても,スピーカーが電池にぶつかってしまい蓋が閉まりません。

 単三2本の電池ケースを2つ使ってあれこれと配置を考え,ようやく蓋が閉まるようになりましたが,そうするとボタンもボリュームも置けませんし,そもそも基板を置く場所がありません。

 単四にしても,そんなに状況は変わらないでしょう。そもそも電池ケースが手元にありません。

 詰みました。

 5分ほど考えて,これはもう,電池を減らすしかないという結論に達しました。単三2本に設計変更です。

 電池電圧が1.1Vから1.4Vまで変動するとして,アンプは動作電圧範囲ですから,直結でよさそうです。ただし出力が300mW程度に下がりますので,音量不足が心配です。

 次にMP3プレイヤーですが,これは全然動作しません。そこで昇圧回路を入れる事にします。昇圧型のDC-DCコンバータをブーストコンバータと言いますが,これは部品点数も多く,アマチュアには鬼門であるコイルが不可欠で,しかもコイルの性能と選択で成否がくっきりわかれます。部品屋さんでもコイルはなかなか選べません。

 当然スイッチングレギュレータの1種ということになるので,ノイズも多いし,使いこなしが難しいものですので,市販の電蓄銅製品の大半に入っている割に,電子工作の世界ではあまり目にすることがない不思議な回路でもあります。

 ですが,ここ数年でとても手軽なブーストコンバータ用のICが安価に手に入るようになりました。かなり適当にコイルを選んでもそれなりの効率が得られる優れものです。

 HT7750Aというがそれです。トランジスタと同じ3本足のTO-92に入っており,外にはコイルとショットキーダイオード,コンデンサ2つだけ取り付ければ,もうブーストコンバータの完成です。

 大きな電流は取れませんが,それでも200mAまで引っ張る事が可能で,CMOSであることからIC自身が動作するための電流が小さく,PFMであることから小電流出力時のロスが小さくなっていますので,特に低消費電力機器での使いやすさが売りです。

 私も数年前にこれをいろいろ検討しましたが,効率85%はウソではなく,以前評価したときは入力電圧が3Vから4.5Vまで,ほぼ全域で85%以上の効率をたたき出していました。(出力電流は30mAです)

 90%以上を目指すには,スイッチングのMOS-FETに性能の良いものを使い,かつ回路もな同期整流というものを使う必要があるのですが,価格も上がるし,回路規模も大きくなります。

 ですが,HT7750Aはこの価格でこの使いやすさで85%ですから,アマチュアにはうれしい選択肢です。

 早速作ってみましたが,あっという間に電池2本から5Vが生成できました。MP3プレイヤーに供給し,3Vでスピーカーから音楽を鳴らしてみたのですが,全く問題なしです。

 確かに,最大出力は下がります。しかし,もともとそんなに大きな音を出すようなものではありませんし,3V駆動でも実用上全く問題にはならないと思います。

 さて,次は実装です。

 アンプを作ったときに,少し大きめの基板に作り,余った部分をあとで切り取る予定でした。しかし,これだけスペースがきついと,基板を置く場所もよく考えないといけません。

 そこで,基板を立てて,スピーカーの端子を基板にハンダ付けすることにしました。マグネットを避けるように,基板の両端にアンプとブーストコンバータを配置します。

 さらに,MP3プレイヤー基板をこの基板と直交するようにアルミでアングルを作り,2枚の基板がL字になるように固定します。

 そしてこれをそのままスピーカーの端子にハンダ付けすると,見事にスピーカーの周りに基板が差し込まれたようになります。これで基板の置き場所を新規に確保する必要はなくなりました。

 ここまできたらしめたものです。ボタンを3つ,LEDを1つ,スイッチ付きのボリュームを1つ用意し,蓋に穴を開けてそれぞれ取り付けていきます。ブリキの缶は柔らかく,加工している間に変形したりして大変なのですが,文句を言っても始まりませんので,少し大きめの穴を開けては,接着剤で固定してなんとかしました。

 蓋にスピーカーや基板,スイッチまでも取り付けられたので,電池の交換やファイルの追加などメンテも楽ちんになりました。電池はスポンジに来るんで中に転がしておけばいいでしょうし。

 ということで,長くなったので続きは後日です。

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