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2016年08月29日の記事は以下のとおりです。

現実逃避に測定環境の改善プロジェクト

  • 2016/08/29 16:16
  • カテゴリー:make:

 ちょっと現実逃避したくて,簡単な改造と修理をやってました。

・周波数カウンタHP53131Aの主電源スイッチ増設

 先日,GPSDOが完成し,高精度な基準クロックを突っ込まれることで,ますますその制度に磨きがかかった周波数カウンタの標準器,HP53131Aですが,こいつの最大の問題は,常時電源が入っているということです。

 基準周波数の生成用に,標準で入っている水晶発振器もそうですし,特にオプションのOCXOを入れた場合には必要になるのですが,周波数が安定するには常時通電の必要性があります。HP53131Aも当然のように,電源スイッチをOFFにしても,発振器には常時給電が行われる仕組みです。

 と,ここまではいいんですが,そのための仕組みがまた大げさで,20年ほどの前の大きな(しっかりした)主殿減容のスイッチング電源から12Vと5Vを常時給電用に引っ張り出しているので,空冷用のファンがずっと回っているのです。

 ですので,電源スイッチをOFFにしていても,10W近い電力を消費しているのは間違いないと思います。

 すでに内蔵の基準周波数は使っておらず,GPSDOからの入力を使っているのですから,この常時通電は全くの無駄です。そのGPSDOが5Wくらいで常時運転しているのに,なにが悲しくて10Wも電気を食わせにゃいかんのか。

 かといって,いちいちAC電源を引っこ抜くのも美しくありません。

 海外には,フロントの電源スイッチを改造し,AC電源を切断するスイッチにしてしまう人もいるのですが,私はそこまで大げさなことをする気はありません。さてどうしたものか。

 考えたのは,リアにある,オプション増設用に用意されている丸穴を別のスイッチの取り付けに使うことです。そしてこのスイッチで直接AC電源をON/OFFします。ACコードを引っこ抜くのと同じ効果が期待出来ますし,背面ですから邪魔になりません。改造前に戻そうと思えば,いつでも戻せますし。

 とはいうものの,AC周りを改造するので安全性には気を遣わねばなりません。配線もそうですが,スイッチにもAC100Vを扱う事の出来るしっかりしたものを選ばないといけません。

 私の場合,真空管のアンプを作るためにいくつか買ってあった,2回路の大きめのトグルスイッチが見つかり,大きさ,スペックともばっちりだったので,これを使うことにしました。ミヤマの,えーっとなんだっけな。

 改造は,ACインレットからの配線をN側もE側も両方ともスイッチにつなぎ,ここからスイッチング電源に繋ぐという簡単なものです。

 簡単ですが,効果は絶大です。背面の廃熱ファンは低騒音の物に交換してありますが,それでも止まるとシーンと静寂が訪れます。これはいい。ほんのり熱が出ているのも収まりましたし,24時間265日ずっと通電すれば,やっぱりスイッチング電源の寿命のことを考えてしまいます。

 フロントのスイッチだけで電源が入ることはそれほど重要なことではなく,周波数カウンタの精度はGPSDOで担保されているわけですから,アマチュアの測定環境としては理想的だなあと,改造に至った動機を再確認した次第です。

 HP53131Aを使っている方,この改造は簡単で効果絶大です。ただし,オプションのOCXOを内蔵している方は,これをやってしまうと精度が出ませんので,やめてください。


・安定化電源器AD-8724Dの出力スイッチ増設

 AD-8724Dという安定化電源を13000円ほどで買って便利に使っています。今は16000円ほどになっているようなので,安いときに買えて良かったと思います。

 この電源器,購入時にも現場でよく使われている旧ケンウッドのPA18シリーズと性能比較をやっていて,AD-8724Dの惨敗という結果を「安いなりの物」と結論しているわけですが,PA18シリーズにはあって,AD-8724Dにはないもののうち,特に不便だなと思うのは,出力をON/OFFするスイッチです。

 PA18シリーズを始め,まともな安定化電源には,必ずといっていいほど,出力をON/OFFするスイッチが用意されているものです。電源器から回路に配線した瞬間に通電してしまうなんてことは危険ですし,かといって最初に主電源を切っておき,配線後におもむろにONすると言うのも,主電源を入れた直後は,安定化電源の出力が安定せず,せっかく作った回路が壊れるかも知れないだけに,恐ろしくて出来ません。

 それで私は,出力端子に繋いであるバナナプラグをいちいち抜き差ししていたわけですが,通電してショートがわかりあわててプラグを引き抜いたなんてことは,日常茶飯事です。

 こうしてあわててぬいたプラグが,どこかに紛れてしまったとか,そういう面倒な事が何度もあったりして,やっぱりスイッチが欲しいなあとなったわけです。

 外付けのスイッチボックスというのはお手軽ですが,収まりが悪いです。これはやっぱり内蔵でしょう。

 回路構成を考えます。スイッチはやっぱり押しボタンがいいです。出来れば主電源投入後は前回の状態にかかわらず初期状態は安全のためにOFF,押すたびにONとOFFを繰り返すのがいいでしょうね。

 でも,そのためには,プッシュONのスイッチにフリップフロップ,そしてリレーが必要です。大した回路ではないのでやればいいんですが,現実逃避の簡単工作にしてはちょっと重いかなと,再考することに。

 なら,オルタネート動作のスイッチを選びましょう。初期状態が前回の動作を保っているので,主電源ONでいきなり出力が出てしまう問題はありますが,そこだけ気をつけるようにします。

 そうすると,リレーを使わずいきなりスイッチでON/OFF出来ます。とても簡単にできそうです。

 しかし,DC30Vで3A以上の,信頼性の高いオルタネートの押しボタンスイッチなど手元にありません。オルタネートでなければ,いい物があるんですけど・・・

 ないものを探しても,見つかりません。あきらめて,手持ちのオルタネートを見てみると,HP53131Aを修理した時に買った,小信号用のスイッチが出てきました。感触も大きさも悪くないので,これを使うように考えてみます。

 問題はまず,このスイッチは基板取り付け型でパネル取り付けは基板ごと固定しないといけないということです。基板を固定する仕組みが用意されているはずもありませんので,自分で何とか工夫するしかありません。

 よく見ていると,電圧調整のボリュームと,電流リミットのボリュームの間にスイッチを付けるのによい場所がありそうです。そして,電流リミットのボリュームの背面に基板をばちっとハンダ付けし,この基板にスイッチを付ければ,高さも場所も綺麗にまとまりそうです。

 問題は強度です。基板はスルーホールの両面基板を使い,これをたっぷりのハンダでがっちり固定します。これだけでは心許ないので,電圧調整用の多回転ボリュームに引っかけるような形で,太めの銅線を基板にハンダ付けし,この銅線をエポキシ接着剤でがちっとボリュームに接着します。よし,この作戦でいこう。

 パネルにはあらかじめ6.5mmの穴を開けておき,ハンダを溶かしながら慎重に位置決めをします。位置が決まったら接着剤で固定です。

 一晩経ったあとスイッチを動かしてみましたが,想像以上の剛性感があり,スイッチ操作も全く不安がありません。素晴らしい。しかし,もともと鈍くさい私の事ですので,パネルに穴を開けるときに化粧ステッカーにうまく穴が開かず,カッターで整えたところ,ますますいびつな形になってしまいました。この辺が素人丸出しです。

 さて,このスイッチは小信号用ですので,3Aなどとんでもありません。そこでリレーです。5Vが電圧計用に出ている事が分かっていますから,5Vで動作する小型のリレーを引っ張り出します。

 定格をみると,30Vで2Aでした。2回路あるので並列に繋げば3Aくらいいくだろうと,さっさと配線です。出力端子が付いている基板は適当にパターンカットをし,電圧計が常に動作するようにしておきます。LEDも付けましょう。

 さて完成です。案外うまくいき,出力は綺麗にON/OFF出来るようになりました。確かにオルタネートは面倒で,初期状態でOFFになってくれると便利だとは思いますが,これは仕方がありません。

 負荷をかけて,電圧計の指示がどれくらい狂うかも見てみました。リレーには接触抵抗がありますので,ここで電圧降下があります。内蔵の電圧計はリレーの手前に入っているので,実際の出力電圧とは,この電圧降下分だけずれてしまうことになります。

 確かに,リレーの後ろに電圧計を入れるというのも手ですが,これだと出力をOFFすると0Vになってしまい,電源を入れる前に電圧を設定出来なくなります。

 とまあこんな理由でリレーの手前の電圧を表示することにしたからには,どのくらいの差があるかを把握する必要があります。調べて見ると,数十mA程度では0.1V以下なのですが,2Aほど引っ張ると0.2V以上のズレが出ます。

 配線の抵抗まで含めて100mΩとすれば,2Aだと電圧降下は0.2Vです。リレーのスペックによると100mΩ以下とありますので,まあこんなもんではないでしょうか。

 でも気持ちが悪いですから,あまり活躍の機会がないケンウッドのDL-2050をAD-8724Dの電圧監視専用にあてがうことにしました。電源の電圧というのはとても大事な情報ですので,DL-2050の電源を入れるだけで電圧がぱっと表示されるよう,配線済みにしておくのは非常に助かるはずです。

 これで大幅に実験の環境は改善しました。

 ところでリレーの並列接続ですが,気になって調べたところ,禁止事項になってました。2回路のリレーでも,同時に接触するとは限らず,片側だけ接触している時間に大電流が流れてしまうのでまずいんですって。

 特に今回の使い方だと,電源投入時の突入電流が流れるでしょうから,ここは潔くパワーリレーに交換した方がよいでしょうね。接触抵抗も50mΩくらいになるものも,あるようですし。



・カード型テスターMT2000のレストア

 25年ほど前に1000円ほどでかったテスターで,当時私の弟が,ゲーム基板の収拾にのめり込み,電圧のチェックやハーネスの断線確認をするのに便利だろうと,プレゼントしたものです。

 ところが弟はこれを全く使わず,いつの間にやら私の所に出戻ってきたのですが,その後は車のメンテキットの一員として,長くバッテリーの電圧を測ることをしてくれていました。

 私が車に乗らなくなってしまい,活躍の場がなくなってしまったこのMT-2000というテスターですが,精度は先日標準電圧発生器で確認したとおり,そんなに悪くはありません。もともと3.5桁のテスターですから,精度を期待しても仕方がありませんし。

 最近は,安全性に関する規制が厳しくなったこともあり,どのテスターも感電防止のためにごっついんです。本当にカード型と呼んでいいような,小型で薄いテスターは安全性をうるさく言われることのなかった,この時代特有のものだといっていいでしょう。

 ということで,レストアです。

 フルークで使っていたテスターリードのバナナプラグがこわれてしまったので,棒の部分だけ使おうと思って取ってあったものを引っ張り出し,MT-2000にあてがいます。

 MT-2000を分解し,ロータリースイッチの汚れをアルコールで拭き取り,グリスで動きを滑らかにします。リードを付け替えて,フタを閉じるだけです。

 お,使い勝手がかなり向上しました。これならバンバン使えるんじゃないでしょうか。

 4.5桁以上で,更新周期が0.2秒以下の最近のテスターになれてしまうと,こういう旧式のテスターはしんどいものですが,昔はこのくらいのテスターでなんでもこなしていたんですよね・・・

 
 とまあ,3つの工作をさくっと済ませた土日でした。簡単な割には満足度の高い改造だったわけで,これが現実逃避でなかったら,どんなに素晴らしい事か。


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