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2012年07月19日の記事は以下のとおりです。

D800に戸惑う私

 D800を買って約1ヶ月,外に持ち出す機会にも恵まれず,室内で細々とシャッターを切る毎日ですが,撮った写真をMacで拡大してみることも,印刷することもなく,Lightroom4で現像を行うことも,時間的に出来ずにいます。

 D800はかなり手に馴染んできましたが,それでもどうも慣れないところがあって,ちょっと困り気味です。前に使っていたD2Hとの比較をついついしてしまいがちですが,結局D2Hというカメラは優秀だったんだなあと,見直すことが多いです。

 D800でDXにクロップするとD7000相当ということで,D2Hの出番はもうないだろうと思っていましたが,二束三文で手放すくらいならサブ機,あるいは高速連写機として,残しておくことにしました。後述しますが,実はサンヨンを手配してしまったので,D800でも楽しみですが,D2Hでもどれくらいすごいか,楽しみなのです。

 
 ということで,D800について気になっていることをいくつか書いてみます。


(1)被写体に奥行きが感じられない

 とても不思議なのですが,被写体が立体に見えないのです。

 例えば円柱を撮ります。真横から撮影しても,D2Hならちゃんとそれが円柱だと分かるのですが,D800だと長方形が写っているように見えます。エッジに微妙な陰影がつかず,奥行き情報が薄まってしまうのではないかと思っています。

 そんな話を同じ時期にD800Eを買った友人に話してみると,被写体の原寸大ポスターを撮影したような感じになる,と言っていました。同じような印象だと聞いて,やはりそうなのか,と思った次第。


(2)のっぺりとした画

 ノイズを無理矢理に潰した「塗り絵」とは全く違うのですが,ザラザラとした荒い粒状感がないせいか,平面的なツルツルとした画という印象です。(1)とも共通するのですが,これが被写体の立体感を損なっているように思います。

 3600万画素という高画素は,フィルムを越えたきめの細やかさを持つわけですが,もしかするとこれを手放しに喜べないのかも,知れません。

 先の友人との話で,私はD2Hの画を「挽き割り納豆のような」と表現しました。D800はすり鉢ですりつぶしたドロドロの納豆です。


(3)色が偏る

 ニコンの傾向だと友人は言っていましたが,ナチュラルで淡泊な傾向はニコンならではだとして,どうも黄色や赤に,やや偏る傾向があるように思います。特に肌色が黄色に偏るために,色の白さが損なわれるように思います。

 これがD2Hだと,ほんのり桜色になった赤ちゃんの白い顔がちゃんと再現されていて,とてもよいのです。確かに,D2Hはニコンのなかでも異端であり,独特の発色はD1同様,好む人は好むという感じです。一時期女子カメラとして中古が注目されたことがありましたが,その時も発色(と安さ)が原因でした。

 やっぱあれですね,CCDとLBCASTとCMOSで,色や画質の傾向って違うものですね。


 ここまでが,出てくる画像についての気になる点です。D2Hでは,出てくる画が想像できますから,思い通りに撮影出来ますし,結果については大きく外すか,思った通りになるかの二択です。

 D800は,出てくる画が全く想像出来ず,「ちょっと違うんだよなあ」という感想ばかりです。高い基本性能と圧倒的な高画素に救われて大きな失敗はない代わりに,自分が見ている「伝えたい」シーンを取り込めずにいて,フラストレーションがたまるのです。


(4)AFがちゃんと動いてくれない

 ハードウェアとしてはこれが最も困っています。

 AF-Sモードでシャッターボタンを半押ししAFを動作させてロック,構図を決めてから全押しするのですが,シャッターが切れません。ほとんど場合,一発で切れてくれないので,シャッターチャンスを逃してばかりです。

 なんでだろうと思ってフォーカスインジケータをよく見てみると,ファインダーで合焦しているように見えた時,丸い合焦マークではなく,前ピンと後ピンのマークが両方点滅する状態でした。つまり,合焦していないのです。

 フォーカス優先の設定なので,フォーカスが合っていないからシャッターが切れないのは当たり前の話ですが,こんなに合焦しないものかと,D800のレンズを外してD2Hに付け替え,同じ条件で試して見ました。

 結果,D2Hはほとんど迷うことなく,合焦マークが点灯し,チャンスを逃すことなくシャッターがどんどん切れます。

 一瞬,前ピンと後ピンのマークが点滅することもありますが,すぐに修正が入ってあっという間に合焦します。AFの性能はD2Hが一番だと確信しました。今や秒間8コマは珍しくないですが,当時のニコンの高速連写に対する意気込みは,並々ならぬものがあったということでしょうね。あらゆる部分が高速連写向けにチューニングされてるわけです。そりゃ快適なはずです。

 友人は,D800のAFは迷う,最後にジジジと前後してから合う傾向がある,と言っていました。確かにそんな感じです。

 AF-Cを使ったり,AF-Sでもレリーズ優先にすればシャッターは切れますが,ほぼピンぼけです。すでに,AFセンサの分解能は,3600万画素のCMOSセンサの分解能を下回っていると言われますし,3600万画素ゆえに,AFの精度を追求した結果,最後の微調整のところで時間がかかってしまうのではないかと,私と友人の意見が一致したのですが,もしこれが本当に事だとしたら,3600万画素という圧倒的な画素数がシャッターチャンスを逃すというカメラとしては致命的な問題を引き起こすということになり,非常に深刻です。

 このこととは違いますが,D800のAFには問題があって,ようやくニコンもその問題を認めたと聞きました。ファームの更新で対応するのか,サービス対応となるのかは分かりませんが,製造過程の調整にミスをしていたということらしいので,面倒な話になるかも知れません。同時にAFの切れ味も改善されるとうれしいのですが・・・


(5)広角に戸惑う

 D2HはAPS-Cですので,広角が苦手なカメラでした。18-200mmの広角端は27mm相当ですが,そのために大きなレンズを持ち出すのも気が進まず,どうしても中望遠域で撮影するのが中心になっていました。

 しかし,D800では普通に28mmなどの広角レンズが使えます。50mmでも,当たり前ですが,本当に50mmです。

 その結果,被写体の周辺にぽっかりと空間が出てしまうことがあります。同じ50mmでもD2Hで使えば75mm相当ですので,ぱっとファインダーを覗き込めば,すでにある程度の構図の整理は済んでいます。同じレンズを使っても,50mmだと被写体は小さく,周辺に余計なものがいっぱい映り込んでいます。距離感と画角の関係を,フルサイズに合わせて再構築しないといけません。

 あれ・・・フィルム時代はみんあフルサイズだったはずなんだけどなあ。


(6)フルサイズに戸惑う

 (5)と同じ理由に帰結しますが,フルサイズゆえに,想像以上に背景がぼけてしまいます。D2Hのつもりでちょうどよいボケ具合だと想像して絞っても,結果は思った以上にぼけています。

 センサのサイズが違うのですから当たり前なのですが,APS-Cではついつい絞りを開けがち(逆の見方をすると,フルサイズのつもりで絞ればぼけにくい)ですから,その癖が染みついてフルサイズを使っていると,どうしても開けすぎてぼけすぎるのです。

 これもフィルム時代には結構鍛えたつもりだったのですが,慣れというのは恐ろしいです。


 ということで,D800を使うのは,ストレスとの闘いです。

 D2Hのつもりで手に取れば,手に取った瞬間の印象が大きく重く,ファインダーを覗けば遠く小さく見えて,AFはなかなか合焦せず,シャッターボタンを押してもシャッターは切れずにチャンスを逃してしまい,しかも出来上がった写真は黄色にかぶり,過剰にぼけた大きな空白が小さな被写体を取り囲んでいる・・・

 気を取り直してD2Hを使うと,思い通りに撮影出来ます。実に快適です。K10Dでも思い通りです。

 こんなに違うものなんですね。

 今さらD800を放棄するわけにもいきません。慣れていくしかないのですが,果たして自分の思い通りになるのは,いつのことか・・・

 ところでところで,最初にサンヨンを手配したと書きました。

 詳しいことは届いてから書きますが,手配したのは現行のサンヨン,AF-S300mmF4Dです。欲しかったのですよ,これ,数年前から。

 10年ほど前に発売された古いレンズですが,その分価格も当時のもので比較的安く,しかしその画質,光学性能は圧倒的,飛びものを撮る人には「これ以外はない」と言われる定番のレンズです。

 人気も高く,中古の買い取りもこの時代のレンズとしては結構高めのようで,新品が13万円ほどなのに,中古が10万円ほどということで,中古の値段が下がらないのは人気がある証拠です。

 300mmといえばサンニッパですが,まるで新興宗教のツボみたいな大きさと重さは機動性を大きく損ないますし,値段も目を剥くような高さです。あんな高価なものを外で振り回すなんて,わたしゃー気が知れません。

 サンヨンは手で持てるサイズで値段も手頃ですし,冷静に考えてみるとF4とF2.8は1段しか違いません。言うまでもなくサンニッパは,シャープネスはもちろん,ボケの大きさや1段絞ってもF4というゆとりに凄さがあるのですが,手もとでISO感度をさっさと切り替えられるデジタル時代において,以前ほど1段のゆとりが現場で役立つシーンは,そんなにないように思います。

 安いレンズが高いレンズに画質で大きく見劣りするというのが世の常ではありますが,ニコンのAF-S300mmF4Dについてはちょっと事情が違うようで,サンニッパは別格としても,開放からびしっと決まる高画質で,ホントに悪い評判を全く聞かないのです。

 ズーム全盛の現代において,わざわざ単焦点のレンズを買うなんていうのは馬鹿にされるかもしれないですが,いかにズームレンズが単焦点に匹敵する性能を持つようになったとはいえ,それは最新のズームレンズに限った話。お値段も随分高くなりますし,大きく重たくなるものです。

 私の場合,ズームを使うのが下手くそで,結局ワイド端とテレ端の2箇所で使うだけだったりします。なら,70-200/F2.8VR買うよりサンヨンでしょう。

 私は銀塩の頃に,トキナのAT-X100-300mmF4というMFのズームを買って,今でも持っています。一応300mmでF4ですし,見た目に立派なレンズなので手もとに置いて,何も知らない知り合いを威嚇しているわけですが,これも15年ほど前にフジヤカメラで4万円の特価をしているときに買いました。

 特に300mmという望遠を使うシーンが日常的にあったわけではないのでそんなに出番はなかったのですが,望遠のMFがなかなか大変だったことと,ISO400程度ではシャッタースピードを稼ぎつつ絞ることも出来ずに,もやーっとした眠たい画質になりがちで,あまり良い印象があるレンズではありません。

 ですが,一眼レフの存在意義の1つに,望遠,超望遠レンズが使えるというのがあると私は信じていて,一眼レフを持っているからには300mmクラスは持っておくべきと思っているのです。

 この時代のズームはまだまだ単焦点にはかなわず,利便性によって画質が犠牲になることが当たり前でした。ですから,開放だと甘い画質ですし,色収差も派手に出ます。

 D2Hをメインに使っている頃,やはりレンズ類のてこ入れを行っていたとき,このAF-S300mmF4Dが欲しくて,かなり真剣に迷いました。ですが,300mmを今すぐ使うという状況でもなかったため,購入に踏み切らずに,今日まできてしまったわけですね。

 しかし,D800を買った今,思い切って買うことにしました。

 理由ですが,1つに娘が生まれて,これから出番が必ず出てくるであろうということ。遠方から狙うことも多くなるだろうし,D800に見合う望遠系のレンズで最も安いものは,おそらくこれしかありません。

 もう1つは,今を逃すと後々後悔するであろうということです。以前からこのレンズは手ぶれ補正がないことを指摘する声が高く,設計の古いレンズであることも手伝って,手ぶれ補正付きにリニューアルされることは間違いないと,ずっと言われ続けていました。

 同時に噂になっていた85mmF1.4などのレンズがGレンズになってリニューアルされたのに,不思議とこのレンズだけは現行のままです。

 これだけ長い間リニューアルされないのはきっと理由があります。説得力のある理由が,手ぶれ補正を入れてしまうと,今のレンズの性能に劣ってしまうため,と言うものです。

 昨今のレンズ設計技術に加えて,こなれてきた手ぶれ補正技術,そしてナノクリスタルコートを施せば,D800も一安心のサンヨンが出来る事は間違いないと思うのですが,おそらく倍近い値段になってしまうことは避けられない中で,性能を最低でも維持,出来れば向上させないといけないという大きな課題が突きつけられていて,これが非常に高いハードルになっているのではないか,というわけです。

 なるほど,手ぶれ補正の光学系を入れれば確実に画質は低下しますし,今のサンヨンは画質について特に不満も聞かれないほどの銘玉ですから,お値段が上がった分きちんと性能向上させないと,納得しません。それで時間がかかっているんじゃないでしょうか。

 とはいえ,リニューアルも一巡し,現行のサンヨンも随分古くなっていますので,大幅に光学系を見直した手ぶれ補正付き(ついでに絞りリングはなくなって)の高級レンズとして,登場することは自明でしょう。そうなったら現行のサンヨンは即座にディスコンです。

 そうなると,この光学性能をこの価格で手に入れる機会を失うことになります。そしてその時は,確実に近づいています。

 いずれ買うものなのですから,今買っておいたほうが良いです。

 ということで,結構簡単に購入を決めてしまいました。

 買い方も今回は新しい方法を試しています。このあたりも後日。

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