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スピーカーのエッジを交換する

  • 2008/11/27 00:51
  • カテゴリー:make:

ファイル 236-1.jpg
 私が社会人になった翌年だったと思いますが,小型のブックシェルフスピーカーが欲しくて,夏休みに帰省した際に買ったのがJ520MというJBLのスピーカーでした。

 2本セットで2万円か3万円かそんなもんで,JBLでもこんな値段で買えるんだなあと思って買ったのですが,音はやっぱり値段相応で,特に満足も不満もなく使っていました。

 今から7年ほど前,KT88シングルのアンプとこのスピーカ,そしてマランツのCD8000というこれまた安物のCDプレイヤーをセットにして,当時新築したばかりの実家にプレゼント(迷惑だったかも知れませんが)したのですが,母に聞くと時々は使っているようです。

 ところが,先日私が音を出してみると,どうも低音が細く,バスドラムにタイトさがありません。10cmのウーファーじゃなあ,と思っていたのですが,もしやと思ってよく見てみると,ウレタンでできたエッジがボロボロになっていました。

 いやはや,噂には聞いていましたが,これがウレタンエッジの加水分解ですか・・・

 音を出すとボロボロと崩れるような状態ではありませんが,指で押せば押したところがへっこんだままになりますし,ひっかけばめくれたようになって穴が空きました。

 考えてみれば購入して12年以上が経過しているわけで,そりゃダメになるわなあと考えた次第です。

 大したものでもないからこの際捨ててしまおうかと思ったのですが,このころのJBLって廉価版でも「Made In USA」なんですね。エンクロージャも結構しっかりと作られていて,10cmウーファーの2Wayにしては無理をしてないゆとりのある大きさです。

 ちょっともったいないなあと思って調べて見ると,やはりありました。交換用のウレタンエッジを売っているお店が。

 多くの機種に対応できており,その中からJ520Mに合致するものを選ぶのは大変そうです。サイズが少し違うんですがJ520Mに対応と書かれたものがいくつかあって迷います。

 しかしそもそもエッジを交換するということが特殊な事ですから,多少のサイズの違いくらいは気にしないのが醍醐味です。(といいつつ,実はこれがのちのち足を引っ張ることになるのですが・・・)

 外周の直径が112mmと124mmの2種類が用意されており,どちらにすべきか迷いましたが,112mmが1500円,124mmが1900円ということなので,112mmを買いました。1本400円の差ですから,2つで800円ですよ。この差は大きい。外周のサイズは小さくてもokと書いてあったので,大丈夫でしょう。

 専用の接着剤も一緒に買い,この週末,高校時代の仲の良い友人の結婚式に出席するのにあわせ,実家で作業にかかりました。

 まず,劣化したエッジを除去します。指でボロボロと剥がしていくのですが,思う存分スピーカーを壊せるという夢がかなった瞬間である一方で,案外やってみるとつまらない上,溶けたウレタンと接着剤でドロドロになったカスが指にこびりつき,気持ち悪いです。

ファイル 236-2.jpg

 フレームに残ったウレタンを彫刻刀で削ぎ,コーンの裏側に残ったウレタンと接着剤を丁寧に剥がしていきます。はっきり言ってここが一番苦痛です。

 コーンは基本的には紙製なのですが,表面は樹脂でコーティングされています。エッジを貼り付ける裏側は紙がそのままになっていますので,注意して剥がさないと破れます。

ファイル 236-3.jpg

 結局1時間以上かけて古いエッジを剥がし,いよいよ新しいエッジを取り付けます。ここまで来れば楽勝と思っていたのですが,接着剤を塗る前に試しにはめ込んで見たところ,どうもエッジがやや小さい上に,コーンの傾斜角度とエッジの角度が違っていて,密着してくれません。これはかなり難易度が高そうです。試しにオリジナルと違う,コーンの表面にエッジを貼り付けるようにしてみると,あつらえたようにぴったりです。しかし,オリジナルと違うことをしてしまうとろくな事はありません。

 なんとかなると見切り発車をしたのですが,やはり作業は難航。先にコーンとエッジを接着剤で貼り付けるのですが,エッジの内径がやや小さいため,コーンがかなり窮屈そうなのです。エッジを少し引っ張りながら接着すると,エッジが元の大きさに戻るときにコーンを歪ませたり,しわを寄せたりします。

 なにせ水性の接着剤ですので,コーンの裏面の紙から染みこみ,ふにゃふにゃになります。これも想定外でした。

 接着剤の乾きが遅く,くっつけてもすぐに浮いて隙間ができるのを指で押さえて,どうにかこうにか接着ができたのは,さらに1時間が経過してからでした。

 コーンにあたった光の反射を見てみると,明らかにコーンが歪んでいるのが分かります。きっとコーンへの応力も部分部分で違っているでしょうから,明らかにおかしな振動をしそうな感じです。

 しかしやり直せばさらにドツボにはまるものです。ここは涙を飲んで,フレームへの接着に進みます。

 もともとダンパーがしっかりしているので,センター出しの作業にはそんなに手間はかからないだろうと思っていましたので,軽く触ってボイスコイルが触っていないことだけを確認して,さっさと接着をしました。

 うまくいっていないと思っていたのですが,エッジとフレームは接着剤がなくても密着してくれているので一安心です。

 1つ目が苦労の末にそこそこのレベルになったのに気をよくしつつ,もう1つのユニットも交換を始めます。

ファイル 236-4.jpg

 ところが油断しました。劣化したエッジの除去まではよかったのですが,新しいエッジをコーンに接着するのに失敗し,ぱっと見るだけでコーンが変形しているのが分かるほどです。かなりの応力がかかっていることが手に取るようです。

 なんとか修正をしようと思いましたが,コーンがふやけてしまい,いじるほどコーンに歪みが出ます。そうこうしているうちに接着剤が乾いてしまい,びくともしなくなりました。

 まあ仕方がない。気を落とさずフレームに接着しよう。

 しかし,1つ1つの作業は丁寧にしないといけないですね。1つ目はエッジをフレームがぴたっと密着していましたが,2つ目は一部で浮いて隙間ができています。明らかにエッジが,ある方向に無理に引っ張られて変形しているようです。

 かなり失敗の空気が漂う中,作業を進めます。同じようにセンター出しをさくっと済ませて接着剤を塗り固定します。隙間が空くと空気が漏れるので,接着剤であなを埋めていきます。

 そして1時間ほど経過して,コーンを押してみます。ところが,ある部分を押したときだけ,「ガサゴソ」と嫌な手触りが伝わってきます。そう,ボイスコイルが触っているようです。

 つまり,エッジが変形しているのをそのままくっつけたものだから,ボイスコイルが斜めにストロークするようになったんでしょう。

 こりゃまずい。これは妥協できません。

 エッジとフレームを接着している接着剤を慎重に剥がし,さらに余計な接着剤を針で除去して,もう一度やり直しをします。こういう場合,私は大概コーンを破るとかしわを作るか,復旧不可能な致命傷を負い,再帰できなくなります。

 絶望的な,しかし失うものは何もない,という心意気でザクザク作業を進めたところ,奇跡的に成功。

 しかし,やり直しが可能になっただけのことです。次にうまく接着できるとは限りません。

 接着剤を塗り,慎重にセンター出しをしながら固定を試みます。やはりエッジが変形しているのがわかります。

 しかし,エッジを少し引っ張りながら,センターを出していきます。接着剤が乾き始める20分ほど格闘し,ようやく固定されました。

 乾いてから隙間を埋めて,さらに乾くのを一晩待ちました。

 翌日,幸いなことにしっかりと固定されており,センターも出ているようで,ボイスコイルの接触も見られません。ただ,2つ目はコーンの歪みが目立ち,どう考えてもオリジナルと同じ音が出そうにありません。しかも,左右で全然違う音が出てくることでしょう。

ファイル 236-5.jpg

 元のエンクロージャに取り付け,音を出してみます。

 まず,ビビリが出たり,歪みが出たりと,スピーカーとして動かないという状況はありません。音は普通にでます。

 エッジを交換すると,さすがに低音にタイトさが戻ってきますね。相変わらずナローレンジなスピーカーですが,以前のような「だらーん」とした音はしなくなっています。

 ただ,やはり左右で特性が違うんでしょうね,定位感が薄くなり,ちょっと散らばる印象です。まあ,リスニングポジションも良くないし,最初から期待する方が無理ではあるのですが,もうちょっとうまくできたはずと,残念でなりません。

 元々そんなに定位感のあるスピーカーではありませんでしたし,BGMとして鳴らす音楽なら,辛抱できなくないレベルですので,もういいです。3000円でこれだけの手間をかけて(都合5時間かかりました),それであまり良い結果が得られなかったので,大体最後にはどうにかしてきた私としても,今回ばかりは敗北を認めざるを得ません。

 真鍮の鉄道模型を作る私がこれだけ苦労するんですから,客観的にみてかなり難易度は高かったと思うのですが,そういうこともあって,これは他の人にお勧めできないと思いました。というか,これ,みんな成功してるんですか?うまくいったように見えて,実は結構無理をしてるとか,そういうことはないんでしょうか。

 元々安いスピーカーですし,特別音が気に入っていたわけではないので,そういう意味ではあまり悔しいわけではありません。だけど,はっきりいって,もう二度とやりたいとは思わない,そんな作業でした。

 まあいいや,とりあえず音がそこそこ出ていますし,もう5年くらいはもつでしょう。次ダメになったら,別の10cmのユニットと交換しますよ。

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