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2026年05月の記事は以下のとおりです。

Pebbleの復活,そして届いたPebble Time 2

 覚えていますか,Pebble。いやいや,それやない,そうそう,スマートウォッチのPebbleです。

 今から15年ほど前,次はウェラブルコンピューティングだと様々なメーカーが参入したこの新しい商品は,実際に使ってみると電池寿命が短い,常時表示が出来ない,大きい,分厚い,と言う技術的な問題点が解決出来ておらず,飛びついた消費者を,1000円の腕時計にも劣るとがっかりさせていたのです。

 そんな中,2013年にクラウドファンディングで発売にこぎ着けたPebbleは電子ペーパーを使った常時表示と長い連続動作時間を両立し,しかも腕時計として小さく薄く違和感がないことが支持されて,スマートウォッチの理想型として知られた存在だったのです。

 Pebbleは,公式サイトからダウンロードすることで,重要な機能である時計の表示を様々に変更出来たり,アプリによって機能を追加する事が出来る,ユーザーがカスタマイズできる腕時計でした。SDKやAPIも公開されていて,自分でアプリを作ったりすることも出来ましたし,それを公開することも出来ました。だから自ずとそこに遊び心が宿るわけです。

 やがてスマートウォッチは,何でも出来る便利な腕時計であることを諦め,健康管理に特化したデバイスとして生きることに賭けます。アプリもインストール出来ず,自作も出来ません。デザインや素材もいかにもスポーツ向けという体裁で,普段使いも出来なければ,インドアの私のような人間には抵抗のある見た目です。醜悪です。

 しかし,Pebbleは第一世代のモノクロバージョンから,第二世代のカラー版であるpebble Timeと円形のPebble TIme Roundを投入,健康管理に軸足を置かないスマートウォッチのくせに普通の腕時計と変わらないサイズと着け心地に良く出来たOSで,唯一無二の存在だったと思います。

 順調に売り上げを伸ばすと思っていたPebbleは,一説によるとシチズンやインテルからの買収提案も断ってしまうわけですが,大量の在庫を抱えてしまい,一気に資金繰りに困るようになります。

 そして第三世代のモノクロモデルであるPebble 2の出荷が始まった2016年末,とうとう同業のFitbitに買収されることになってしまいます。Fitbitは健康管理に特化したスマートウォッチのメーカーでしたが,結局Pebbleは継承されず,2018年には公式サイトも閉鎖,公式アプリも配布されなくなってしまいます。

 そのFitbitも2021年に結局googleに買収されてしまい,これで完全にPebbleは死んだと思われたのです。

 しかし,ここで面白い事が起こります。

 Pebbleは,公式アプリを窓口に,サーバーにあるアプリやウォッチフェイスをPebbleにダウンロードする仕組みですので,公式アプリがないとなにも出来ません。
 
 そのサーバーと公式アプリを,有志が維持することになったのです。2018年に立ち上がったRebble.ioは,Pebbleを使い続けたいというユーザーの願いそのものでした。

 そして時は流れ2025年,googleはPebbleOSをオープンソース化します。これを受け,創業者であるエリック・ミギコフスキーはPebbleの復活を目指し,Core Device社を立ち上げます。

 同年,Core DeviceはCore 2 DuoとCore Time 2を発表し,予約注文を開始します。Core 2 DuoはPebble2を,Core Time 2は発売予定だったPebble Time 2をそれぞれベースに,タッチパネルや防水機能を追加したものになっていました。

 さらに追い風になったのは,googleがPebbleの商標を譲渡したことで,Core 2 DuoとCore Time 2はそれぞれ,Pebble 2 DuoとPebble Time 2という,本来の名前を取り戻すことに成功したことです。

 2026年には丸形のPebble Round 2の予約を開始,Pebbleは現在の技術で,本来なりたかった姿に着実に歩みを進めて再登場することになったのでした。

 しかし,良いことばかりではありません。消えそうになったPebbleを残し続けたRebbleとの確執です。Core Device社もRebbleをまるで無視してPebbleを立ち上げようとしていますし,Rebbleにしてみれば自分たちこそPebbleの命を繋いだという自負があるわけで,一番大変だった時期の貢献が正当に評価されていないと考えるには,無理もないところがあると私は思います。

 PebbleとRebbleが対立したまま,新しいPebbleが発売に至るわけですが,現在は互いに歩み寄りも見られるようで,Pebbleの公式アプリからRebbleにアクセス出来るようになっています。

 いい話ばかりではないんですね,やっぱり人間のやることですし,ちょっとした言動で誤解が生まれ,それが大きくなって一人歩きして,目指すものが同じなのに仲違いするようになるというのは,良くあることなのかも知れません。

 さて,前置きが長くなりましたが,私はPebble Time Roundを2016年に手に入れて楽しく使っていました。なにせ当時使っていた母艦がBlackberryQ10というアンドロイドですらないマシンで,散々苦労しました。

 とはいえ,メールやLINEがすぐに確認出来る便利さは他に代えがたく,電池を交換して長く使っていたのですが,コロナ禍で引き籠もるようになってから,使うのをやめていました。

 そのPebbleが,まさかの復活というのですから,これはもう注文するしかありません。今さらモノクロモデルを買う気も起きず,ここは迷わずPebble Time 2を2025年3月に注文したのです。

 そして1年以上を経て,2026年5月20日,ようやく私の手元にPebble Time 2が届いたのです。


・お値段

 いきなりお値段ですが,結構しました。本体の価格は225ドル,送料が25ドルに税金が27.25ドルでしたから,合計で277.25ドルでした。1ドル160円として44048円ですか。こりゃー高いです。

 もともとの価格はそれほど高価でもないと思うのですが,やはり円安が厳しいです。

・サイズ感,質感

 箱から出すと,創造していたよりもずっと小さく,薄い,まさに腕時計そのものが出てきました。スマートウォッチだからと身構える必要はありません。ステンレス製のケースは質感も高く,スマートウォッチにありがちな安物っぽさや割り切りがありません。私は今でも信じていませんが,IPX8というのは本当かも知れません。

 ボタン類もしっかりしていて,普通の時計と同じ感覚で扱えます。かたまり感もあるので,身につけていて不安になることもありません。

 ベルトは22mmが適合します。純正のバンドも一緒に届きましたが,シリコンバンドがもともと嫌いな私は,手持ちのNATOバンドにしました。ブラックのケースにぴったりです。


・ディスプレイ

 伝統の電子ペーパーです。バックライトがないときの発色は見事で,美しいウォッチフェイスを見ているとワクワクします。一方でバックライトはマルチカラーでありながら,どうも発色が悪く,色の再現性が悪い上にコントラストも下がります。


・メモリサイズと電池寿命

 私が以前使っていたPebble Time RoundはRAMが256kB,ストレージが16MBでした。Pebble Time 2はRAMこそ同じですが,ストレージは32MBと倍になっているようです。そのせいかアプリもウォッチフェイスも一々母艦からロードせず,その場で切り替えが出来るインストール数が増えました。

 電池寿命も30日と驚異的です。Pebble Time Roundはもともと薄型モデルで,2日間しか電池が持たないモデルだったのですが,厚みがあるとはいえ十分許容出来る範囲なのに30日も電池が持つというのは,バランスとしてこちらの方が優れていると感じました。


・互換性

 従来のPebbleと全く同じと言っていいです。昔のウォッチフェイスもアプリもそのまま動きます。懐かしくてたまりませんよ。


・公式アプリ

 公式アプリは以前のものよりも安定性が増していますし,使い勝手も良くなっていると感じます。なんと言ってもセットアップがとても簡単になりました。

 特筆すべきは,本体の日本語化がサポートされたことです。以前は自分で日本語パックを印スールしないといけなかったのですが,ファイルのインストールする順番を考えたり,メモリサイズを考慮したりと面倒でしたし,OSのアップデートの度に入れ直しが発生して大変でした。

 しかし公式アプリでサポートされれば,なにも心配ありません。ただ,あくまで日本語の文字が正常に表示可能になったという話で,メッセージが日本語化される訳ではありません。日本語パックのなかには,メッセージも一部日本語になったものがあったのですが,もしメッセージの日本語化が必要なら,そうした日本語パックを自分でインストールする必要があると思います。


・まとめ

 懐かしいこともそうですが,10年の年月を経てハードウェアが格段に進歩しました。技術的な進化もそうですし,製造を行う中国の製造技術も格段に向上しているので,時計としての満足度も高いです。

 新しいウォッチフェイスもアプリも出てきましたし,懐かしさと新しさを,Pebble独特の遊び心で味わえると言うのは,本当に楽しいです。

 スマートウォッチというと,実質Apple Watchしか生き残っていないように感じますが,Apple WatchはiPhoneユーザーにとって便利である一方で,どうも私には馴染めない空気感があります。

 それに比べるとPebbleのゆるさは私にはぴったりで,気乗りしないような外出も少しだけ楽しみになっています。AppleWatchのような妙な存在感も威圧感もなく,かといってオモチャっぽい感じもありませんから,気兼ねせず身につけていられることもうれしいですね。


 さてさて,調子に乗った私は,Pebble Round 2も予約してしまいました。いや,本命はやっぱり丸形なんですよ,私としては。

 Pebble Round 2の予約が始まった時,Pebble Time 2の予約から切り替える事もできたんですが,この時すでに両方欲しかった私は,迷いつつも追加で予約することしたのです。

 気持ちが冷めてしまわないか心配していましたが,Pebble Time 2の満足度をk考えると,杞憂に終わりそうです。しかし,このまま円安が続くと想像以上に出費がかさみますねえ。


「ヨドバシ フジサワ カメラミュージアム」へいってきた

 行ってきました,「ヨドバシ フジサワ カメラミュージアム」。

 2010年,多くのアーティストがそのステージに上がった名門,東京厚生年金会館の土地と建物をヨドバシカメラが120億円で取得。カメラ博物館やギャラリーを開設するという同社の意向が当時報道され,ヨドバシカメラもなかなか粋なことをやるもんだと思ったものでした。

 その後どうなったのか話が出てこず,すっかり忘れた2019年にビルが完成,本社がここに移転します。しかしカメラ博物館やギャラリーが出来たという話はありません。やっぱりそういう施設は難しいんだろうなと思っていました。

 そして土地の取得から実に15年も経過した2025年,いつものようにヨドバシ.comで買い物をしていたときに突然目にしたのが,「ヨドバシ フジサワ カメラミュージアム」というバナーでした。

 調べてみると2025年10月25日にオープンという事ですので,ビルの完成から7年近くも経過していました。とうとう出来たんだ,てっきり立ち消えになったかと思ってたけど,有言実行はさすがヨドバシ,などと思っていたのですが,その実態は私の想像を軽く超えていました。

 ヨドバシカメラの創業者である藤沢昭和氏が,世界有数のライカコレクターであることはよく知られていて,ヨドバシカメラのカタログである「ザ・ポイントネットワーク」にも,氏のコレクションが長期にわたって紹介されてきました。

 いくつかのライカをユーザーとして持っているという話ではなく,なんでこれが日本にあるんだ,こんなの実存してたんだ,という貴重なものをオークションなどで入手されており,単なる工業製品ではなく,美術品や骨董品,下世話な言い方をすると投機対象になるようなものを,純粋に集めていらっしゃいます。

 そうした膨大なコレクションをいよいよ一般公開するのかと胸が高鳴ったのですが,考えてみたら本業とは全く別の,趣味が高じたコレクションを,新宿の一等地に建てたビルのワンフロアをぶち抜いて並べてみせるなんて,なんという道楽か。もう下々の人間には想像も出来ない発想です。きっとあれでしょうね,江戸時代の紀伊国屋文左衛門とか,こんなスケールだったのかも知れませんね。

 なにせ創業者がカメラ大好き,ライカ大好きだったからこそ,ヨドバシカメラはカメラを大事にするのだろうし,カメラ売り場の店員さんは他の店員差とはちょっと違って,カメラを買いに来たお客さんを大切に親しみを持って扱ってくれます。(だからこそ先日のGR IVの対応にはがっかりしたわけですが)

 そんな人が自らのコレクションを広く公開するというのですから,単純な自己顕示欲の発露ではないはず。きっと公共性や学術性などもきちんと考慮した,有識者の意見を参考にした本格的な素晴らしいものになっているはずです。

 それは,入場料をみて確信に至りました。入場料3000円,要予約です。

 企業の施設博物館は概ね広報としての役割を担うので,入場料は無料か安価に設定されることが多いと思います。自社の歴史を紹介し,現在の立ち位置を示す施設として,社内には社員教育の場,取引先へは自己紹介を行う名刺代わり,一般には広告や広報の役割を果たすものとして期待される施設です。

 その企業が業界や産業界の歩みそのものだったりする場合には,その活動に学術的な意味合いを持つことも求められるわけで,この場合単純な収蔵だけではなく,研究も機能として持たねばなりません。

 まあ,最終的な収益の構造にはいろいろあると思いますが,それにしても企業の私設博物館の入場料が3000円ですからね,よほどの覚悟を決めないといけない金額だと思いました。

 あまりにすごいものが展示されていたり,ここでしか体験出来ないことがあるのかも知れません。

 あるいは,3000円というのは冷やかしや目的外の入場者を遠ざける目的で設定された金額であって,例えば最後に3000円相当の図録やヨドバシカメラで使えるポイントなどが戻ってくる仕組みになっていたりと,カメラが好きな人には価値のあるものが還元される仕組みになっているのかも知れません。

 しかし,昨年10月のオープン以来,この博物館の詳細は謎のままです。写真撮影は禁止,一部新聞や雑誌に紹介が出ている事はあっても,詳しく内容に触れてはいません。

 オウンドメディアであるフォトヨドバシにも見学記が掲載されていますが,これもいわは身内の宣伝ですし,そもそも雇い主の気に障るようなことを書けない人が書いた記事に,全幅の信頼なんておけないと考えるのは自然でしょう。

 頼りになるのは実際に見学した人によるSNSなどのネット上の見学記ですが,これが少ない上に,「見所たっぷり」やら「3000円は安い」といった,分かったような分からんような判で押した感想ばかりです。

 そこで意を決して行ってきたというわけです。

 3000円ですからね,なんと昼ご飯が2,3回食べられますし,会社の帰りに一人で飲んで帰る事だって出来ます。映画だってポップコーン付きで見ることが出来ますし,なんといってもジャンクワゴンの可愛そうなボディとレンズを救出できる金額です。

 かように日本では3000円で出来る事が山ほどあります。果たして「ヨドバシ フジサワ カメラミュージアム」は,どんなところだったのでしょうか。

(1)ざっくりと展示内容

 展示は大きく6つに分かれています。

 1つ目はライカのコーナー。歴史的で貴重なライカがゴロゴロしているだけではなく,その歴史も知ることができます。

 2つ目は国内のカメラ。ヨドバシカメラが多く商ったであろう国産のカメラがメーカーを問わず並んでいます。


 3つ目はフェリーチェ・ベアトの写真の展示です。フェリーチェ・ベアトは19世紀末にアジア諸国を撮り歩いた写真家なのですが,江戸時代の本当の様子を残した写真が展示されています。江戸の町中など,時代劇で見るそれとはかなり雰囲気が違うことがわかります。

 4つ目は世界のカメラ。ドイツ,イギリス,アメリカ,中国といった外国のカメラが並んでいます。

 5つ目はカメラの歴史に関するもの。乾板や湿板を使った過去の技法や木製の大判カメラ,黎明期の写真に関する書籍やノベルティなどの実物を見る事が出来ます。

 6つ目は月へ行ったカメラ。アポロ15号の月着陸船で使用されたハッセルブラッドが月面の様子を壁と床と天井に張り付けた部屋に展示されています。ここだけは撮影可能になっていますが,調べてみるとこのハッセルブラッド,2014年に当時の価格で約9300万円で藤沢氏が落札したと報道されていますね。はぁ~。

 ミュージアムの外にはお店もあり,ここでしか買えないとされるTシャツなどがあります。ライカ売り場もありましたが,正直ライカはもういいや。


(1)すごいところ

 とにかく展示台数が圧巻です。特にライカは強烈で,希少性,台数共に圧倒的,途中から感覚が麻痺してしまい,全部同じに見えてきます。

 オスカー・バルナック自らが使っていたサイン入りのライカなど,どう考えても遺族やライカの本社が持っていないといけないものが誇らしげに並んでいると,すごいという一方でちょっと複雑な気分にもなりました。

 先程も触れましたが,月へ行ったハッセルブラッドは約9300万円。他にも貴重なカメラがわんさか並んでいます。とにかく実物が存在するというのが重要で,手に取ることこそ叶わずとも,見やすく展示されていることには感激します。

 日本のカメラは馴染みがありますが,例えば貴重なズノーだけではなく,粗末に扱われるせいで残っていないと思われるような安いカメラもちゃんと展示してありますし,そのキャプションもとても正確でした。

 また,展示されている写真も大変興味深く,私は個人的にフェリーチェ・ベアトの写真を始め,古い写真や文献に目を奪われました。

 とにかく台数もすごければ,1つ1つの価値もすごい。それらがとにかくわぁぁーっと広いフロアに並んでいます。


(2)足りないこと

 まず,展示品の選別や台数の絞り込みが足りないように思いました。子どもがどんぐりを集めてきて,それを大人に自慢げに並べますよね,あんな雑然とした感じがしたのです。

 いや,誤解のないように言っておきますが,このコレクションがどんぐりと同じと言っているわけでも,藤沢氏を子どもだと言っているわけでもありません。ただ,コレクターというのは貴重なもの,価値あるものを全部見せたいと強く思うもので,そうした欲求に藤沢氏でさえもあらがえなかったんだなあと思ったのです。

 また,一貫したテーマに沿った展示が行われているという印象はなく,ただコレクションを並べただけという感じがしました。なぜこれを集めたのか,なぜこれに価値があるのか,と言う,集めた人の想いばかりが語られていて,これを見る人に何を伝えたいのか,何を理解してもらいたいのか,という見る人の視線が足りないと思いました。

 これも,分かる人だけ見に来ればいいんだ,という理屈だろうとおもいますし,このすごさが分からない人は見に来なくていいと言う割り切りに繋がっているような気もしますが,ミュージアムというのは文化施設であり,公共性も(程度の差はあれ)求められるものです。分かる人だけを相手にする,分からない人を置き去りにした展示は,一見高度な展示を行っているように見えて,実は思考停止で雑然と貴重なものを並べただけに過ぎず,私設博物館にありがちなことではないかと思います。

 前述しましたが展示品の説明は正確でしたし,専門的でした。ただこれも,学術的というよりはマニアのトリビアという感じがしました。「なぜ集めたか」に対する説明のみで,なにを分かって欲しいかという視点を欠いたゆえといえるのではないでしょうか。

 国産機については,これがあるのにあれが展示されていない,と思う事も多くありました。ニコンでいえばD2Hという失敗作がありませんでしたし,D800やD850というその後のカメラのあり方を変えたようなモデルもなかったように思います。

 また,オリンピックといったビッグイベントで加速したカメラとレンズの開発競争や,フィルムの進化に応じたカメラの変化といった重要な流れが説明されておらず,これもただ雑然と懐かしいカメラが並んでいるだけという印象を持ちました。

 残念だったのは,2眼レフやライカのコピー,ニコンF2を壁一面に並べた展示でした。これは数がたくさんあることを示した展示だったのだと思いますが,そこの資料性やテーマを感じる事は出来ませんでした。数があるから面白い展示をした,というだけなら無垢でいいんですが,ちょっと趣味が悪く感じ,私はこの頃の国産機に対するミュージアムの視線を垣間見た気がしました。

 あと,実は落ち着いて見ることが出来なかったことを指摘しておきます。私が見学したのは平日のお昼前で,終始見学者は私一人でした。ゆっくり見ることができると喜んだのですが,警備員の目が厳しく,なんだか落ち着きません。

 もちろん私が見学するコースを邪魔しないように,遠くから私を見ることは徹底しているのですが,どんな時も必ず私が彼の視野に入るように動くところはお見事で,そんなに疑われているのかと窮屈さを感じました。ここまで厳重なのも珍しいでしょう。

 もっとも,時価総額を考えると無理からぬ事で,盗むは論外としても,触る,壊す,撮影するといった行為から貴重な品々を守ることも,社会がコレクターに与えた義務です。そこは理解しているのですが,それでも長居できない窒息感が拭えませんでした。


(3)期待する事

 ミュージアムには,収集と研究の2つの機能があります。残念ながら,コレクターの博学さが尋常ではないため,個人的な知識によって支えられた展示内容になっており,体系的な展示も学術的な記述も足りないように思います。これではただの画廊や古美術商でしょう。

 知識に偏りがなく,カメラと写真の工学,産業,経済,美術といった複数の側面から探求できるキュレーターの存在も不可欠でしょう。実物があることはなにより大切な事ですが,これらを活用することで,足し算ではなくかけ算の成果を得ることもできるんじゃないかと思います。

 とりわけ,江戸時代の写真であるとか,戦前のドイツの工業水準を示す資料などは歴史的も貴重であって,例えばですが中学生や高校生の社会科見学コースになるくらいだと価値があるんじゃないかと思いました。

 あと,テーマに沿った常設展示と特別なテーマで行う企画展示が欲しいところです。今のところ常設展示のみで企画展示は行われていないみたいですが,常設展示にも一貫したテーマは必要ですし,テーマから外れたものを別のテーマとして展示するのに企画展示を行うと,さらに見学者の学びに繋がるでしょう。

 ぜひ言いたいことは,図録の発行です。特に企画展が行われると図録というのは必ず用意されるものですが,展示品に価値があるものであればあるほど,図録が欲しくなるものです。

 図録は,高度な撮影技術に印刷技術,学術的にも正確な説明が不可欠であり,また展示を企画した人の意思が込められたものになっています。記録として残すものであると同時に,見学者の復習に役立ちますし,記念にもなります。

 個人的には,図録は単体の書籍だととてもあの値段では出せないもので,展示会の予算の中から捻出されるためでしょうか,非常に良心的な価格で販売されることが多いです。来場者への特典ともいえるサービスで,私は常に買うようにしています。それゆえ,図録がないのはとても残念なのです。

 最後にミュージアムショップです。図録の販売はもちろん,オリジナルグッズや関連商品の販売は,ミュージアムの収益源です。なんと言っても来場者のテンションは上がってます。そんなときに目の前に関連するものがあったら,ついつい買ってしまうものです。あとになって,なんでこんなしょうもないものを買ったのかと反省したことは誰にでもあるでしょう。

 ですが,ここでしか買えないものは記念になりますし,お土産にもなります。それに,その企画やテーマが好きで足を運んだのですから,なにか買いたくてウズウズしている訳で,販売のプロであるヨドバシカメラのミュージアムらしく,お客の欲しいに応える商品を並べて欲しいと思います。

 あ,ショップは併設されてはいますが,ミュージアム内部にあるショップではなく,支店みたいな感じです。前述のようにここでしか買えないものもありましたが,もっと増やして欲しいですし,なにより店員さんが誰もいないのはまずいんじゃないかと思いました。


(4)どんな人が面白いと思うのか

 なかなか難しい所ですが,ライカのマニアなら間違いなく楽しいでしょう。数があるだけではなく,世界中でここにしかないもの,伝説的なものを目にして感動することは,選ばれた人にだけ許された特権的な体験です。

 国産機は,日本人ならどれか1つは必ず「懐かしい」と思うものが見つかるはずです。昔これ使ってたとか,かつて持ってたのはこれだったのか,とか,そうした自分の記憶とのリンクも,とても楽しいことだと思います。

 しつこく書いていますが,カメラ以外の展示品,特に江戸時代の写真は実に生々しく,リアリティがあります。歴史に興味があったり,撮影地である東京や長崎に土地勘のある方ならさらに楽しめると思いますし,コレクションされている戦前の文献に興味がある方にも楽しいのではないでしょうか。


(5)どんな人には厳しいか

 カメラに対する知識はそんなに求められないと思うのですが,特定のカメラに対する思い入れだけは必要ですし,収集癖に共感出来ないと遠くに感じてしまうのではないでしょうか。

 私がそうだったのですが,カメラに興味があっても,ライカに興味が強いわけではありません。マニアにありがちな製造時期によるちょっとした違いを云々するのは,仲間内では話題として花が咲いても,度が過ぎると一般人からは距離を置かれてしまうものです。

 ライカのちょっとした違いを説明されても,見比べるものがないので,結局よくわかりません。見比べようとあっちこっちをウロウロしますが違いが分からず,そんなことを何度か繰り返しているうちにどれも同じに見えてしまう瞬間がやってきます。

 そうなってしまうと,もうどれもただのカメラです。どのタイミングでそうなるかは人によると思いますが,気を付けないと置いて行かれてしまうと思います。

 あとですね,ヨドバシカメラに興味はあるけど,カメラにはそんなに詳しくない人には厳しいでしょう。私などはヨドバシカメラそのものに興味がありますし,もっといえば当時の商習慣をぶっ壊し新しいビジネスモデルで大成功した,小売業としてのヨドバシカメラをもっと知りたいと思っています。

 かつての商習慣がどうだったのか,それを打破するのに何が必要で,どんな抵抗があったのか,そうしたことを当時の時代背景と一緒に学ぶと,戦後の日本のエネルギッシュな空気感を追体験できるように思うのです。

 メーカーの公式な歴史には綺麗なことしか書かれません。しかし人のすること,必ず書きたくないことも出てきます。視点の違い,立場の違いで解釈が異なることもあるでしょう。小売店がメーカーよりも遙かに立場が弱い時代を駆け抜けた革命者だったからこそ,もう1つの公式記録として,ヨドバシカメラはその歴史を堂々と掲げて欲しいです。

 もちろん,展示にはヨドバシカメラの歴史も触れてはいます。しかし,あくまで年表形式であり,実物展示であるカメラに対する説明の域を脱していません。

 これはこれで,カメラの展示という主旨に沿うものですし,人によっては売名行為に走っていない,奥ゆかしい姿勢と好意的に受け取るかも知れません。

 しかし,私はヨドバシカメラ自身の歴史を見たいと思いました。少なくとも今の内容ではなりません。


(6)結局のところ3000円の価値はあるか

 きっぱり言いますが,多くに人にとって,3000円の価値はないと思います。

 もちろん,月にいった9300万円のハッセルブラッドを見たい人にとっては,金額など問題ではないでしょう。ライカのファンも同様です。

 しかし,ヨドバシカメラはライカの専門店ではないですし,ハッセルブラッドの専門店でもありませんし,航空宇宙開発に関連する事業を大々的に手がけているわけでもありません。

 一般の人にも浸透したヨドバシカメラのファンが,それを理由に訪れる施設としては,あまりにマニアックすぎました。目当てのものを決めて,それを見に行くという強い動機があるかどうか,3000円払う前にもう一度考えてからにすることをおすすめします。

 なお,書くのも恥ずかしいですが,3000円は冷やかし防止であって,最終的に3000円相当の何かをもらえるのではないかという読みは,見事に外れました。何ももらえません。見学が終わってゲートを出たら,誰とも話すこと無く,そのままビルから出ることになります。

 そうなると,この3000円には何の意味があるのかを考えたくなります。3000円はこのミュージアムの収益になります。

 運営費?本社に併設された施設ですから家賃はかからないでしょう。

 人件費?受付にはお歳を召した方がいらっしゃったので,おそらくヨドバシカメラのOBの方ではないかと思います。そうすると警備員の方の費用が必要ですが,一人分ですしね・・・

 利益?いや,確かに損をしてまでやることではないかもしれないですけど,多くの企業博物館が広報活動の一環で運営されているわけですから,これ単独で利益を上げることは考えていないと思います。それに,本当にミュージアム単独で利益を上げて運営資金を捻出することを考えているなら,見学者が一人きりというのは明らかにまずいでしょう。

 接待施設?取引先の接待に使う施設として,見学者を少なく保つ必要はあるかも知れません。なら非公開でもいいんじゃないかなあ。

 他の理由?うーん,巨額のコレクションにかかる相続税をごにょごにょ・・・いや,素人にはわかりません。

 とにかく,どうもこれまでに目にしたレビューは,ちょっと遠慮しているように思われたのですね。絶対に面白いとか,積極的な賞賛もないかわりに,面白くなかったというネガティブな話も不思議と出てきません。

 なかには招待された人もいるんでしょうし,なんらかの事情で悪いことを書けない人なのかも知れません。純粋にまだまだ見学者が少ないだけなのかもわかりません。

 ですが,確かに充実した展示品ではありましたが,それらを見たというだけで,学びを得たなど,充足した感じが見学後に得られる事はありませんでした。

 やたらと3000円にこだわりますが,商売人であるヨドバシカメラが設定する3000円だからこそ,その価値に私は敏感でありたいと思います。(ついでにいうと,入館料の3000円にはポイントがつきません!)

 お土産などはもらえず,帰りは手ぶらです。3000円の価値は,純粋に見学の時間でのみ感じなくてはなりません。自らの目で見る事に3000円出せるものが展示されているとはっきりしていない限り,がっかりすることになるでしょう。

 もう1つ付け加えると,まだオープンしてから数ヶ月しか経っていないので,まだまだこれから変わっていくのではと思います。とはいえ,ミュージアムの運営には思った以上のお金がかかるものなので,今は良くても状況や環境が変わったら,真っ先に手が入るのもこうした施設です。

 見学者の推移にもよるでしょうが,もしかしたら一般公開を取りやめてしまうかも知れません。そうならず,むしろさらに良くなった形で長く運営されるといいですね。

5月の修理びより その2 PENTAX Q7と防湿庫

 お次はPENTAX Q7です。

 モードダイヤルの接点が悪くなっているみたいで,モードの切り替えが不安定です。こういう場合は分解して接点をアルコールで拭いて汚れを落とすと簡単に復帰します。

 簡単にいかないのが分解ですが,これも30分ほどで分解。モードダイヤルの接点は黒く汚れており,これをアルコールで拭いて修理はできました。

 ついでにシャッターボタンの削れも見ておきましょう。PENTAX Qのシャッターボタンは筒の内側にすれて,メッキが剥げるという問題があります。もしかしたら汚れかもしれないと,分解して拭き掃除をします。

 しかし汚れはなく,やはりメッキの剥げでした。なすすべなく組み直します。

 修理出来たら動作確認です。モードダイヤルは完全復活です。他の機能も問題ありません。

 これでPENTAX Q7も元気になりました。


 最後は防湿庫です。

 私は20年ほど前に買った,乾燥剤式の防湿庫と,10年ほど前に買ったペルチェ方式の防湿庫の2つを持っています。高価なレンズを後者の防湿庫に入れているのですが,最近どうも湿度が下がりにくくなっています。

 ペルチェは寿命があるので,いずれダメになるとはきいていましたが,さすがに10年ですから劣化も進んでいるのでしょう。

 分解して通電すると,ちゃんと冷えていますし,結露も出ています。一応機能しているのですが,その能力が低いのは事実です。予防的な意味も込めて,ペルチェ素子を交換しておく事にしました。

 外したペルチェ素子には,TES1-4902という刻印があります。この刻印をそのままamazonで検索すると,全く同じものが出てきました。20mm x 20mm,6V2A,6.5Wという小型のペルチェ素子ですが,1つ1300円ほどと思っているほど安いものではありません。

 この刻印,私は知らなかったのですが,型名というよりはスペックに由来した記号のようなものらしく,メーカーや作り方が違っても同じ刻印になるそうです。とはいえ主要なスペックは同じなわけですから,互換性はあると言えるでしょう。

 翌日に届くのがamazonの素晴らしいところ。届いたペルチェ素子に交換し,念のためパッキンも新しくして組み直して通電すると,湿度がどんどん下がります。

 これまで頑張っても36%だったものが,26%まで下がるようになりました。下げすぎもまずいので30%程度に調整して修理完了です。元通りFマウントの大三元を心して収納し一段落です。

 ペルチェ素子は10年もすると交換しないといけませんから,予備をもう1つ買っておきました。ここから20年持つ計算ですが,先に私がくたばるかも知れないなあ。

5月の修理びより その1 PIXUS PRO-100

 5月に連休は,普段出来ずにいた修理やメンテを一気に行う絶好の機会です。滅多に使うものではなくても,壊れていることが分かったら,そしてその原因がなんとなくつかめていたら,修理して元の状態に戻したくなると言うのが,これ人情というもの。

 なにかと理由をつけては後回しにすることが増えてしまった昨今,重い腰を上げていろいろ気がかりだったことを片付けてみました。

 今回はCANON PIXUS PRO-100です。

 慢性的に発生していたヘッドの目詰まりがいよいよひどくなり,復活にはクリーニングを繰り返して何本ものインクを無駄にするという,私のフォトプリンタであるPIXUS PRO-100。

 すでに12年もの間使い続けているプリンタですが,コストが高いという問題はありつつも,いちいち写真屋さんやコンビニに行かなくてもいいですし,紙を選べばもっと高画質で印刷でき,しかもA3ノビまで好きなサイズで印刷出来ると言う素晴らしさ。

 もはやこれなくして私の写真生活は成り立ちません。最近は手ごろな価格で高品質な写真用紙が手に入りにくくなってきつつありますが,ILFORDの写真用紙などは安いのに画質も良いので,ぜひカラーインクジェットプリンタをお持ちの方は,ちょっとだけ奮発した写真用紙で2Lサイズを印刷して飾ってみて下さい。生活が賑やかになりますよ。

 PRO-100はプロ用のフォトプリンタで,今なお名前の挙がる名機です。プリンタの市場そのものが大幅に縮小している今日,その選択肢は年々狭まるばかりですが,プロ用のプリンタについてはキヤノンもエプソンも,数機種のラインナップが残っています。ありがたい事ではありますが,価格は大幅に上がってしまい,ちょっと無理すれば買えるというレベルを超えていると感じます。

 また,印刷可能な紙の大きさや画質も重要ですが,プロ用のプリンタに大事なことはソフトウェアやワークフローです。ちゃんとLightroomから16ビット印刷が出来るかどうか,カラーマネジメントはどうなっているか,おかしな色補正を勝手にやらないかなど,作者の意図が正しく反映され,その作業を邪魔しないものになっているかどうかが,本当に大事なことです。

 私が思いきってPRO-100を買って良かったなと思うのはまさにここで,勝手なカラーマネジメントを行われて画面と印刷の色調が大きくズレてしまうことがなくなったことで,どれほど気分良く写真を楽しめるようになったか分かりません。

 そんなPRO-100もさすがに10年を超えたあたりから,もう今回限りかもと思うほどのインク詰まりを繰り返しては,クリーニングでどうにか復活という綱渡りで印刷をしていました。クリーニングで大量にインクを無駄にする上,時間もかかるので困っていました。

 年末にはいよいよ黒が完全に出なくなってしまい,何度クリーニングを繰り返しても全く治らなくなってしまいました。黒が全く出なくなったということは,すべてのノズルが詰まってしまったという可能性だけではなく,ヘッドそのものがダメになった可能性も出てきます。だとすれば,このままクリーニングを繰り返しても回復する見込みはありません。

 そこで思い切って,ヘッドの交換を検討しました。aliexpressでは安いものは1万円程度,高いものだと4万円程度で売られています。箱に入った純正部品の新品もあれば,新品と言いつつも明らかな再生品だったり,なかには梱包時にヘッドを保護するカバーがなさそうなものまであり,まさに玉石混淆です。

 aliexpressではリスクが大きすぎて腰が引けた私は,amazonで買えないか調べてみました。PRO-100もしくはPRO-100Sのヘッドの型名は,QY6-0084といいます。しかしamazonでは高めのものしか見当たらず,安いものは見るからに怪しい物でした。

 とはいえ,詰まった私のヘッドよりもずっとましだろうと,16000円ほどのものを注文しました。数日後に届いたものは,銀色の真空パックに入ったヘッドユニットでした。

 寒いときに開封して交換して無事に直ったとしても,また詰まるかも知れません。そもそも黒は消費量の少ないインクです。使わないと詰まりがちなインクの中でも,最も目詰まりを起こしやすいので,暖かくなるのを待って修理することにしたのです。

 で,4月30日,いよいよ暖かくなってきました。時間もあります。写真も溜まってきました。

 意を決して交換作業です。

 真空パックを開封して見ると,傷だらけのヘッドユニットが出てきました。ヘッドの保護カバーはありませんが,綺麗に清掃されていて,保護液もちゃんと染み込ませてあります。

 交換前にテスト印刷をしますが,黒だけ全く出ない状況は変わりません。インクを取り外し,ヘッドを外して新しいものに交換して電源を入れます。

 ドキドキして待っていますが,あいにくエラーが出ています。調べてみるとB200というハードウェアに関するエラーで,修理するしかないという絶望的なエラーの1つです。海外でも困っている人がいます。

 ヘッドを古いものに戻すとエラーは出ません。ということはヘッドが認識されていないという事になります。うーん,これはやられました。

 いろいろ手を尽くしましたが改善しません。aliexpressに出品されているヘッドのレビューを見ると,B200エラーが出て使えないと言う評価を頻繁に目にします。ということは,私のヘッドもダメな奴かも知れません。

 このままではにっちもさっちもいきません。ヘッドを買い直す(もっと高価で箱入りの純正と銘打ったものを選ぶ)か,その値段で買えそうな別機種の新品を買うか迷います。

 新しいプリンタを買うことにしようかと考えると同時に,私は壊す覚悟でさらに修理を試みます。ヘッドを分解し,フレキの裏面にあるEEPROMを発見。なるほど,ここに書かれた情報で正規品以外のヘッドを排除するのでしょう。

 ならばEEPROMを移植するまで。さくっと移植して組み直し,これでいけるだろうと余裕で電源を入れますが,まさかのB200エラーです。EEPROMが原因ではないということか・・・とよく見ると,フレキが切れていました。

 分解時にくしゃくしゃになっていたのですが,大丈夫だろうと気にせずいたところ,ルーペでよく見ると切れていました。私が切ったのではないのですが,切れてしまっていてはこれはもうただのゴミです。

 ここまでくると,意地でも古いヘッドを蘇生しないといけなくなりました。アルコールをヘッドに注入し,指で圧力をグイグイかけて,インクを溶かします。さらにシリンジからアルコールを押し込み,ノズルからアルコールが出るようになるまで根気よくインクを溶かして行きます。最初は全く出てこなかった黒のインクですが,徐々に出てくるようになりました。

 ということは,ヘッドで詰まっていたということですね。もちろん可能性としてヘッドにインクを供給する経路でも詰まっていたことも考えられますので,これは新しいヘッドユニットから転用します。

 組み上げたところB200エラーは出ません。クリーニングを何度か試してみると,黒のノズルがいくつか開通していることがわかりました。この調子です。ガンガンクリーニングを行いましょう。

 そしてめでたく全部のノズルが開通。元のように綺麗なテスト印刷の結果が出てきました。

 早速写真の印刷を行いますが,いつも通りの綺麗な結果です。4700枚以上の印刷を行ったプリンタですが,まだまだ画質に影響するような劣化はないようです。

 ということで,めでたくPRO-100は復活しました。このプリンタの復活は本当にうれしくて,買い換えの結果が必ずしも良いものではないかも知れないという状況から考えると,原状復帰こそが最善だっただけに,もうしばらくこの理想的な写真環境が維持出来て,ホッとしました。

 ところでインクについて。インクはクリーニングで大量消費します。さらにキヤノンのインクカートリッジは,実際のインクの残量を見ているわけではなく,何回噴射したかという回数を数えて,インクが空っぽになったことを検出する仕組みです。

 なので,ノズルの詰まりが解消しなければクリーニングを繰り返してもインクは満タンのままだったりしますが,にもかかわらず空っぽになったと言い出して,インクの交換を迫ってきます。

 私はこのことで何千円ものインクを満タンのままゴミ箱に入れてきましたが,これ,なんと回避する手段があったんですね。知りませんでした。

 インク切れの警告でエラーランプが点灯し,印刷が中断したら,エラーからの復帰ボタン(リセットボタンと言うらしいです)を5秒押すと,インク検出を無効に出来ます。その代わりインクが本当に空っぽになってもそのまま止まらず印刷を続けてしまうので,空気を噛み込んで故障する可能性が出てきます。

 こまめにインクの残量を自分で見ればなんとかなるわけで,これを知っていればインクを無駄に捨てることはなかったのにと,後悔しました。

 残念ながら,クリーニングの時にエラーを無効化することはできないのですが,テスト印刷を含む通常の印刷時には無効化出来るので,今後はこの方法でインクを有効利用しようと思います。というか,正常に動作するようになった今,現在使っているインクが空っぽに出来たら,あとは無効化する必要もないのですが。

 とりあえず,よかった。

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