REALFORCE RC1でキーボードを巡る旅が終わりました
- 2024/11/28 15:32
- カテゴリー:散財
私がREALFORCEというキーボードを使うようになったのは2004年8月のことです。今でも仕事で使っているREALFORCE89Uという日本語配列のUSB接続テンキーレスモデルに出会って20年,もうそんなに経ったのかと感慨深いものがあります。今はなき秋葉原のクレバリーで2万円ほどで買いました。
そうそう,あの頃もメカスイッチのキーボードを買ったり,HHKB Liteを買ったりして,でも結局満足出来ず,HHKB Proを買う決心をして意気揚々とクレバリーに行ったんですよね。
いざHHKB Proを手に取ってレジに持っていくところで,間違えて無刻印モデルを持ってきている事に気が付き,交換しようと売り場に戻った時にふと目に付いたのがREALFORCE89U。
どういうわけだか直感的にこちらを手に取り,なんの迷いもなく会計を済ませて店を出た記憶があります。
そもそも英語配列が欲しくてHHKB Proを買いに行ったのに,結局日本語配列のREALFORCE89Uを土壇場で買うことになったことに,なんだか運命的な物を感じます。しかして,これで私のキーボードを巡る旅は終わりを迎えたのでした。
その後Macは本体キーボードの英語配列,Windowsは日本語配列で使うことにしたのですが,本当のクルマ好きは左ハンドルでも右ハンドルでも,MTでもATでも違和感なく乗りこなす物だと訳のわからない理屈で納得していました。
正直に言います,やっぱり英語配列の方がいいです。日本語配列のうちでも,レトロPCでもよくあるように,SHIF+2で"が出るとか,;と:が別キーになっているとか,そういうのは全然いいんです。エンターキーが大きいのはむしろ便利なくらいです。
一番だめなのはスペースキーの長さです。CやMの下はスペースであって欲しいし,コマンドキーやオプションキーの位置も微妙にずれてしまうのがどうも許せません,
とはいえ,当時のREALFORCEは英語版が国内販売されていなかったので,妥協するしかなかったのです。
時は流れ,2019年のコロナでテレワークが本格的になり,自宅用のキーボードを探すことになりますが,この時もあれこれ試した結果,結局会社のREALFORCEを持ち帰ってくることになりました。
その後会社とテレワークが半々になり,REALFORCEは会社に戻っていったわけですが,テンキーレスモデルでも大きいなあと思っていたことや,ちょっと感触に飽きが来ていたこともあり,折からのキーボードブームで選択肢が広がったメカスイッチのキーボードに浮気したりしました。
しかし,やっぱりなんだかしっくりきません。気に入ったはずのCherryMX2も,出社時のREALFORCEにはやはりかなわないのです。
キーの配列に確かに不満はあります。長年使うことで劣化し渋くなったキーもあります。それでもやはり,REALFORCEでした。
そんなある日,REALFORCEにコンパクトタイプが出たことを知ります。それってHHKB Proとなにが違うのかと思いましたが,キーの数を減らす(というより機種によって役割の異なるキーを隠す)目的で,Fnキーとの併用が必須となるHHKBは,さすがにプログラムだけを書いているわけではない私にはちょっと厳しいものがあったのです。
REALFORCE RC1は,カーソルキーやDeleteキーなどのよく使うキーは温存しながら,キーの数を上手く減らしたコンパクトキーボードです。私にとってはそれほど重要ではないのですが,ファンクションキーも12個完全に用意されているというのはありがたいと思う人もいるでしょう。
お値段は36000円。20年で約2倍になったREALFORCEですが,当時2万円を随分高価だと思ったものの20年も使えたことに気をよくして,今回も長く使うつもりでREALFORCEを買うことにしました。
買ったのは英語配列の荷重30gのもの。いろいろ触って分かった事は私は軽いキーが好きだということ。それでいてミスタッチも多いので,入力は深いところで入る物が好ましいという事でした。
先に結論を書いておきます。
買って良かった。というか,先にこれを買っておけば無駄な出費もなかったのに。(もっともそのころにはREALFORCE RC1は発売前だったのですが・・・)
そう,結局あれこれ巡ってみたものの,またもREALFORCEがゴールになってしまったということです。
・見た目
初期のREALFORCEは業務用然とした色や形が気に入っていたのですが,近年は真っ黒だったりカラーLEDだったりでちょっとズレてきた気がします。RC1も本体色が黒でキーがグレーという配色しか選べませんので,この点では不満があります。しかし,白やベージュでは黄変しますし,テカリも目立って来ますから,これはこれでありかもしれないです。
わざとかも知れないのですが,濃いグレーのキーに印刷された文字が見にくくて,特にキーの側面に印刷された物は目をこらさないと見えません。余計な情報を目に入れないという配慮かも知れませんが,それならそれで最初から印刷しなければいいわけで,なんとも中途半端な気がします。ちゃんとした大手のメーカーだったら,ユニバーサルデザインの観点で商品化出来なかったかも知れません。
・付属品
これは私も驚いたのですが,交換用のキートップが全く付属していませんでした。REALFORCE89Uはもちろん,私が買った多くのキーボードでCapsLockとCtrlを入れ替えるキートップは交換用の予備が入っていたのですが,rc1は全くなし。
確かにソフトウェアでアサインを自由に変えられることを考えると,特定のキートップだけ付属させるのは理にかなっていませんが,CapsLockを入れ換えない人がどれくらいいるのかを考えたら,高価なキーボードなんだしせめてこれくらいは付属しておいて欲しいと思いました。
・使い心地
30gの英語配列,しかも静電式という私にとっての完璧なキーボードですので,使い心地が悪いはずがありません。軽々打てて静かですし,APCも4段階に調節可能と,非の打ち所がありません。本当に最初からこれにすれば良かったと思います。
私の場合,やはりミスタイプが多いので,APCを大きめにするとミスが減ることがわかりました。その代わり深く打鍵しないといけないわけで,荷重30gというのはなるほど楽なわけです。
今,RC1で書いていますが,とにかくスムーズでスコスコと入力出来る心地よさが本当に素晴らしいです。今は引っかかりが気になるREALFORCE89Uも,ひょっとしたら昔はこうだったのかも知れません。だとすれば,いかに高耐久のREALFORCEでも経年変化にはあらがえないというでしょう。
Enterキーの右に余計なキーがないのもよいです。小指でEnterキーを押した時のミスがなくなるのがいいですし,加えて横幅を小さくするのに貢献していることも考えると,やはり余計なキーはない方がいいと思いました。
ファンクションキーも私は使用頻度は少ないのですが,Windowsでは時々F5やF3を使うことがあるので,あった方が便利というのは事実でしょう。キーボード本体を極端に大きくしないようにしながら,こういう場所を取るキーを残す選択というのはなかなか勇気がいったと思いますが,ここをHHKB Proとの差別化と考えたのであれば,大正解だと思います。
・使い勝手
これは不満があります。まず電源。
初期設定では,長時間キー入力がなかった場合にスリープには入らず30分で電源が切れるのですが,電源が切れるというだけあって,復帰するには側面の電源ボタンを押して電源を入れないとだめです。これはなかなか面倒です。
後述のソフトウェアでカスタマイズをすれば,長時間キー入力がなかった場合には無線をOFFするという設定が可能で,これがいわゆるスリープモードに該当すると思うのですが,そこからさらに時間が経過したあとに自動で電源をOFFにする仕組みはありません。
その無線OFF(スリープ)というのもちょっと困った物で,何かのキーを押せば再接続されるものの,そのキーは入力されず無効となってしまうのです。少しタイムラグがあってもいいので,そのキーがちゃんと送信されるなら許せるのですが,これはもう少し作り込みが必要なところでしょう。
一発で無線をOFFにする機能があれば,これをどこかのキーに割り当てることで離席の時には無線を切るとか出来るのですが,そんな機能はありませんし,FN+F11のECOキーの挙動はエコモードをサイクリックに切り替えるだけで,ECOモードに入ってくれるわけではありません(しかも説明書ではモード1->2->3->4->OFFの5パターンの繰り返しなのに,実機では1->2->3->4の繰り返しです)。これは使い物にならないです。
また,電源を切るときには長押しが必要というのも困ったものです。私はせっかちすぎて長押しという操作が大嫌いなのですが,おかげでこまめに電源を切るとか,積極的に通信を切るとか,そういうことをする気が失せてしまいます。
スライドスイッチを使えばONもOFFも手軽に出来るので自動化は必要ないと思うのですが,側面の押しボタンで,しかも電源OFFは3秒の長押しという面倒な方法を強いるのに,自動で電源が切れないというのは,技術的には簡単なはずなんですが,なんでやってくれなかったんだろうと思います。
それでも電池が死ぬほど長持ちすれば文句もいえないのですが,実際はその逆で,満充電からわずか1ヶ月しか持ちません。しかも内蔵の充電池ですから,さっと電池を交換して作業が中断しないように配慮されていません。
こうした配慮もそうですし,単4電池で十分な寿命を確保出来ることから,多くのキーボードが乾電池を採用しています。LEDのライティングがないキーボードなら,これで3ヶ月や半年の寿命を実現しているわけですし,内蔵の電池は便利なようでいて充放電回数の制限が製品全体の寿命を決めてしまうという致命的な問題もありますので,ここはもう少し考えて欲しかったところです。
個人的な希望としては,無線OFFを15分で,電源OFFを30分で自動で行ってくれること,無線OFFからは何かのキーを押すことで復帰(もちろん入力されたキーは有効),電源OFFからの復帰は側面の電源ボタン短押し,これをデフォルトにしておいて欲しいということと,マニュアル操作で無線OFFに移行するキーが欲しいということがあればと思います。
デフォルトは無理でも,無線OFFから電源OFFへ自動で遷移することはぜひカスタマイズで設定出来るようにして欲しいです。電源ボタンの長押しは勘弁して下さい。
あぁ,ひょっとしたら無線OFFと電源OFFの間の電力差が小さいのかも知れません。それだったら確かに今の設定に合理性はありますが,それならそれで,ちゃんと書いておいて欲しいと思います。
どうも,REALFORCEは省電力の作り込みが甘いようです。実装面もそうですし,どういう機能が必要かと言う点にもあまり興味がないように思います。でもそれは使い勝手に直結することですので,真面目に考えて欲しいです。
LEDの表示も非常にわかりにくいです。無理に1つのLEDにいろいろな意味を持たせているのでわかりにくく,マニュアルがないとrc1が私に何を訴えているのかわかりません。LEDを搭載する場所は他にも用意出来るはずですから,わかりやすさをもう少し考えて欲しいです。
それから,Fnキーが右側にあるのは最近のキーボードの当たり前なのですが,Macでは左下にあります。これがなかなか便利なんですよ。このあたりも考えて欲しいところだと思いました。
・カスタマイズ
私は最近カスタマイズを出来るだけしないように使うことを心がけているのですが,キーボードはある程度のカスタマイズをしないわけにはいきません。
しかし,そのためにソフトウェアの世話になるのは,製品の寿命を短くしてしまうので嫌なのですが,これも全体の流れですので仕方がありません。
私はMac版のソフトを使っていますが,お世辞にも使いやすいとはいえません。細かくカスタマイズが出来るのはいいと思うのですが,カスタマイズが細かく出来るという事は,それだけ変更点の管理をわかりやすい物にしないといけないわけで,どこを変えたのかわかりやすくすること,うっかり変更した箇所をすぐに元に戻せることあたりに,詰めの甘さを感じました。
ただ,カスタマイズしたマッピングを4つまで記憶しておいて切り替えはスタンドアロンで一発で出来るとか,APCも0.8mm,1.5mm,2.2mm,3.0mmをすべてのキーで調整出来るとか,エコモードのカスタマイズができるとか,そういう所は便利です。さすがトープレだと思いました。
・まとめ
ほぼ完璧なキーボードです。ほとんど我慢がありません。色とか予備のキーキャップとか,些細な問題だと思います。それだけにちょっとしたことが残念でならないのも,また事実です。
省電力については全然甘いと思うので,今後のファームのアップデートで改善されることを期待したいと思います。
高価とはいいながら,それでも36000円ほどで,キーボードに求めるあらゆる物があるという点で,私は高いとは思いません。確かにゲーミングキーボードのような「勝利する」ことにこだわったものではないですし,派手さもありませんが,キーボードでコンピューティングを行う人にとって,これ以上の選択肢はないと思います。
私は持ち運びませんが,このサイズならギリギリ持ち運びも出来るでしょう。REALFORCEはこれまで,どれほど気に入っても持ち運びが出来ないサイズでしたから,持ち運びを考えている人にとっては待望の商品になったのかも知れません。
本気のキーボードとしては昨今,ゲーミングキーボードかHHKBという感じがしますが,もう1つの本命であるREALFORCEも着実に進化しています。rc1はそれほど売れない気がしますが,私にはこれ以上のキーボードはないと断言して,これからの長い付き合いを宣言したいと思います。