今回はワンダースワンの話から少し離れて,うちのNAS(QNAPのTS-231P)についてです。
ちょうど今年のamazonのブラックフライデーが終わろうとしているとき,突如NASから警告メールが飛んできました。なになに,ドライブ2でリードエラーだと!
うちはいっちょ前にRAID1で運用していますので,エラーが出ても深刻なことにはなりませんが,この手のエラーというのは放置するとボロボロと壊れていくものです。ですが,これには思い当たる節もありました。
実は,この8TBのHDDは,WD BLUEなんです。そう,2台とも,です。
もともと,TS-231Pを導入したときには見栄を張ってWD REDの4TBを導入したのです。振動が異常なほど大きかった1台は初期不良という事で交換になりましたが,運用に入ってからはとても堅牢で信頼性も抜群,まだまだ使えそうな状況なのに,容量不足で6TBに交換することになりました。
この6TBもWD REDだったのですが,RAID1の最大の問題は,容量不足という「運用上の寿命」を迎えた場合には,一気に2台のHDDがゴミになることだなあと思いました。
しかし,この6TBも簡単に一杯になり,2023年の頭には残り容量が5%を切るようになってしまいました。次のamazonのセールで8TBに交換しようと思って迎えた4月,WD REDの8TBが思った以上に高額であることに私は迷いました。
これがWD BLUEなら1台14000円ほどです。安い。しかもCMRです。
せっかく倍のコストをかけてRAIDを組んで冗長性を確保しているのだから,安いHDDをどんどん交換して回して行くというのもありだよな,とWD BLUE導入に傾く私は,もともとWDのHDDが信頼性も高いし,もし3年も使えたら大もうけだぜウシシ,というスケベな気持ちも忘れてはおりません。
届いた2台のWD BLUEの8TBのうち,1台はまたも初期不良Niあたり交換しました。届いたものもかなり大きな振動があって,これはハズレだったなと思ったのですが,仕方がありません。
そしてその数日後,私は知らなかった事実を突きつけられます。WD BLUEはある機能の設定のために,NASで使うと壊れやすいという話です。
それは,IntelliParkという機能です。ある時間の間アクセスがないとヘッドを自動的に待避する機能だそうで,回転数も落とすので消費電力も下がるという事で,WDのHDDに特徴的な機能です。
問題はそのアクセスがなかったときの時間です。聞いた話だとREDが300秒なのに対し,BLUEはなんと8秒。8秒アクセスがなかったらヘッドを待避してしまうのです。
かなり極端だと思いますが,ホームユースならむしろ良いかもしれません。連続したアクセスがないなら,きっとその先のアクセスもないでしょう。それに24時間運転なんかやりませんし。
しかし,これをNASに使うとどうなるか。NASはアクセスが頻繁でしかも24時間運転です。8秒という時間は実に絶妙で,待避したと思ったらすぐにまたアクセスされるということが繰り返されるわけです。
こうなると心配なのは,ヘッドロードの寿命です。ヘッドのロードは機械物ですので当然寿命があり,30万回くらいと言われています。天文学的な数字と思いきや,実はそうでもなく,WD BLUEをNASに使って,160日程度で20万回に達するという話も耳にしました。
工業製品ですから30万回きっちりで壊れるものでもなく,100万回持つ物もあれば,10万回で壊れるものもあると思いますが,一応設計保証値は30万回でしょうから,IntelliParkはその30万回の寿命を削って消費電力の削減に割り当てたと考えてもいいでしょう。
回数はSMARTのロードサイクルカウントを見ればわかりますが,実は私のWD BLUEもそろそろカウントが0になりそうな感じだったのです。稼働時間は20.5ヶ月なので620日ほど。ということは15000時間ほどです。
さすがに8TBだと容量的にもまだなんとかゆとりもあり,せめて2年は使いたいなあと思っていたのですが,SMARTが信頼性を問題にして警告を出すのも間近というこの状況は,警告が出たらどんどん交換して行こうという作戦が,昨今の円安や値上がりも相まって決して成功とは言えなくなってしまいました。
それにしても,こんなに簡単にロードサイクルカウントが消費されるというのはまずいですね。一時期この機能をOFFにすることが世界的に流行ったみたいですが,私はすでにNASに組み込んで運用を開始してしまったので,そのままで使っていたのです。
もちろん,今回のリードエラーがIntelliParkと関係があるとは言えません。もともと24時間運転を想定していないHDDをNASで酷使したんですから文句は言えませんし,そもそもハズレだったのかも知れません。しかし,やっぱり2年持たなかったというのは残念です。
悔しいですが,ブラックフライデーが後数時間で終わるというところで警告が出たのも何かの啓示。さっそく8TBのWD BLUEを買うことにしますが,想像以上の値上がりに加えて,在庫切れ&納期は1月半ば。これでは話になりません。他社の8TBを検討するも,2万円超えで手が出せず,状況は思っていた以上に厳しいものであることを思い知りました。
この際10TBに増量するかと10TBのHDDを探してみると,これがまた高価。しかも2台ですので,とても手が出せません。
なんとかならんかとトボトボとamazonを彷徨っていると,10TBなのに18500円という激安のHDDが目に入りました。Ultrastar WD10EZAZという,ちょっと見慣れないものです。再生品なので安いというのはわかりますが,それにしてもこのいかつい外観はなんだ?
なになに,NASやデータセンターで使われていたヘビーデューティなHDDで,新品と同じ状態にした上で1年保証。
さらに調べてみると,もともとHGSTのデータセンター用HDD,Ultrastar He10の系譜で,あのヘリウム充填のHDDだというではありませんか。DC HC510の回転数を7200rpmから5400rpmに落としたものらしく,キャッシュは256MBと変わらず,耐久性も抜群です。
24時間運転を前提にしたプロ用HDDですので,堅牢で低消費電力,うちのNASにはもったいないくらいのお嬢様でした。
これなら2台買っても37000円。10TBになって信頼性も向上するなら出せない金額ではありません。しかも在庫ありで納期も早い。マケプレですがamazonの発送で,保証もあり,レビューも悪くはありません。
実質選択肢はこれしかないと,2台手配をしました。
さて,届いて確認したところ,2台ともシリカゲルの入った帯電防止袋に,きちんと密封されて届き一安心。リファービッシュ品であることと,2023年2月という日付がありましたが,これが製造を意味するのか再生を意味するのかはわかりません。ただ,見た目は新品とかわらず,とても綺麗です。
それから,HGSTのデータセンター用のHDDに有名な話で,電源ピンの一部の使用が変更されていて,リセット端子になっているそうです。サーバーの電源を落とさずにHDDをリセット出来るようにしたためということですが,この端子に3.3Vが繋がっている一般的な電源だとリセットが解除されず起動しないので,オープンになっているような電源ケーブルに変換して使う事が広く知られています。
このHDDにも対策用のケーブルが付属しています。NASへの組み込みでは関係ないので使わないことになるでしょう。
クッション材から出てしまっていたHDDを先に試すことにし,まずはNASを停止させます。そして問題となっていたドライブ2を抜取り,交換しNASの電源を再投入します。
なにも問題なく起動し,RAIDの再構築が始まりました。15時間後に完了ということで,翌日に確認するとなにも問題なく動作しています。異音もなく静かですし,振動もほとんどありません。WD BLUEの8TBはとにかくブーンと振動がうるさかったので,やっぱりハズレだったんですね。
簡単なテストを行ってNASをシャットダウン。いよいよドライブ1を交換して再起動しますが,様子がなにやらおかしいです。
まずカリカリという異音がおさまりません。それもかなり大きな音が出続けています。振動も大きいようです。なにより,NASがいつまでたっても起動しません。
仕方がないので強制的に電源をOFFし,問題のドライブを取り外して,別のケースを用意して単独で動かしてみます。
やはり状況は悪く,ずっとカリカリいってますし,Macに繋いでも認識しません。すでに夜10時半ですが,不幸にもまたも不良にあたった私は,大慌てでamazonに連絡です。
こういう場合は,電話で話が出来ると助かります。amazonは夜でも話が出来るのでとてもありがたいです。
交換にはメーカーの証明が必要になる場合もあるのですが,今回は異音がすると言えばすぐに返品の話になりました。交換を希望しましたがマケプレの商品だということもあり,一度返品して買い直すことになりました。
ブラックフライデーの時とは価格が違うんだけど,と話をすると,その場で差額をギフトカードで補填してくれた上に,返品の手続きもその場で済ませることができ,翌日に集荷してもらえることになりました。amazonすごいです。
実は,ポイントアップキャンペーンも補填してもらえないかとダメモトでお願いしたのですが,これは却下されました・・・
というわけで,こちらの不良という言葉を全く疑わずに信じてくれて,差額も補填した上で,返品の手続きまで済み,この間全く嫌な気持ちにならないという担当の方には,感謝しかありません。
実のところ,amazonでこうしたサポートを受ける度に,期待以上の対応を頂くのですね。丁寧だけど杓子定規なものでもなく,こちらの要望に出来るだけ応えようと臨機応変に提案をくれます。それがかつてのamazonを含めた通販業者のイメージ,いうなれば「自分は悪くない,客の落ち度だ,でも対応してやってる」という店側の心理と,これに由来する電話してくる客は面倒な客,という観念がなく,電話してくる客は困ってる客という当たり前の話と向き合った上で,その問題を出来るだけよい形で解決しよう,という気持ちからブレないんですね。
担当者によるのかなと思うとそうでもなく,これまで私が何度か相談した担当の方は皆,同様の気持ちの良い対応をして下さいました。はっきりいってこれ,日本一だと思います。
先頃,公正取引委員会にamazonは怒られましたが,これまでに何度か注意されたことも含めて内容を見てみると,決して消費者の不利になるような話から来ているわけではないんですね。どっちかというと,消費者が有利になるように,出品者に圧力をかけたりしていたことが問題になっています。
もちろん,不正は不正ですし,理不尽で不当な扱いに苦しむ出品者がいらっしゃったことも事実ですが,これまでの自らの利益のために不正を働いてきたことを咎められたケースとはちょっと違うなと,私はそんな印象を持っていました。
まあ,幻想かも思い込みかも情報操作かも陰謀かも知れませんが,少なくとも私が困った時に,amazonはいつもちゃんと私を助けてくれました。そんなことまでしてたら赤字で潰れるよ,と思うようなことを,amazon側から先に提案してくれるので,交渉など全く必要がありません。ついでにいうと,amazonは必要以上の謝罪はしません。謝罪で解決しようとするのではなく,最低限の謝罪で済むように問題そのものの解決を優先するからだと思います。
かくして,実に気持ちよく安心して問題の処理が終わりました。新たに購入したWD100EZAZは問題なく動作し,RAIDの再構築を済ませて現在何の問題もなく運用に入っています。
不良のHDDも翌日(そう,返品処理が夜10時半なのにです)にヤマトのドライバーが自宅まで引き取りに来てくれました。そして2日後に無事に返金されています。すべてがスムーズで,すべてが完璧です。
不良は仕方がありません。でもその後の処理は人がやるものだけに,お店で差が出ます。amazonは満点です。正直すごいと思います。
そんなわけで,HDDの不良によくあたる私ですが,amazonで買ううちはなにも心配なく変えるでしょう。20年前,当時のツクモに9GBのHDDを交換してもらう時に,散々疑われて散々ごねられ,ようやく交換してもらえたことがウソのようです。
海外からamazonが,日本の小売りの常識を変えています。日本のオモテナシとやらは,どこに行ってしまったんですかね?
あ,そんなもの,もともとなかったですか?