年末に実家で使うと便利だろうと,ずっと迷っていたロジテックのSkypeフォン「LAN-WSPH01WH」を買ったことは,ここに簡単に書きました。
あれから3週間ほどの時間が経ち,それなりに使ってみたので感想を書いておこうと思います。
結論だけ先に書くと,これは実にいい。ただし決しておすすめはしない,という感じです。
・よい点
(1)やっぱSkype
通話品質,ややこしい設定が全く必要ない,コンタクトリストなどは端末ではなくサーバーに存在するなど,とにかく簡単で高品質なSkypeであることは,何にもまして重要な利点です。
通信や電話というのは,相手がいて初めて価値を生むものですが,Skypeはユーザーも多いために,結局かける先が見つからない,ということはなく,これが単なるおもしろガジェットに終わらないところでもあります。
(2)なんと言ってもスタンドアロン
PCがなくても,PCにSkypeが入ってなくても,とにかく無線LANさえあれば世界中のSkypeに電話をかけたり,受けたりできます。もし,屋外や他のお家で利用可能なネットワークがあればその活用範囲は非常に広がります。
仮に家の中だけだとしても,PCをいちいち立ち上げる手間はかかりませんし,Skypeはそれなりに重たいアプリですから,PCの負荷の状況で音が途切れたりします。そういう要因を完全に分離できるという気楽さは,スタンドアロンでしか味わえません。
よく似た製品に,ワイアードのハンドセットのケーブルを無線にした安価な製品がありますが,これは通話にPCが必要ですから,ワイアレスであってもスタンドアロンではありません。
(3)結構軽い
100gちょっとの重さというのは,携帯電話と比較しても十分軽い部類です。Skypeは無料通話が魅力なわけで,これが重かったり持ちにくかったりすると長電話をする気になりません。この点は心配していたことではありますが,1時間程度の通話については全く無理がありません。
(4)完全にワイアレス
最近よく見るUSBのハンドセットと違って完全にひもがなくなります。ケーブルっていうのは意外に重量を持っていますし,引っ張られる力に抗するため,腕には結構な力が入りっぱなしになっているものです。
このケーブルが何かに引っかかっていたりするともう最悪で,一見するとこうしたハンドセットは電話機のメタファーを持ち込んだ「良い商品」に感じるものですが,実際に使ってみるとなんとも中途半端で,悪い点ばかりが目につくようになるでしょう。
PCでSkypeを使うなら,蝶手がフリーになるヘッドセットを使うべき,です。
Skypeフォンは完全にワイアレス。電源さえも自己完結していますから,それがSkypeなのかどうかさえ忘れてしまうほど快適です。
(5)音響的な設定やトラブルから解放される
Skypeを使った人なら経験したことがあるとは思いますが,マイクの種類,位置やマイクのゲインの調整など,良い通話品質を確保するためになかなか面倒な設定が必要になります。
また,この手のマイクやヘッドセットには安価なものが多く,音を拾うという基本性能に老いてでさえも,当たりはずれがある実に難しい世界です。
また悪いことに,自分の聞こえている音を改善するには,相手の設定を調整してもらう必要があるわけで,結局妥協して使っている人が多いのではないでしょうか。
そこへ行くとこの商品,音響的な設定や調整はすでに最適な位置に固定されています。相手に対しても安心して電話をかけることが出来るというのは,手間を省くと同時に気分もいいものです。
(6)電池寿命なども実用性十分
連続通話が3時間,連続待ち受けが30時間というスペックです。人によっては短いと思う人もいるかも知れませんが,普通3時間もあれば十分でしょう。
(7)SkypeOutにも完全対応
Skype同士の無料通話だけでもそれなりに便利ですが,市内電話料金で一般の固定電話にかけられるSkypeOutというサービスにももちろん対応しています。ということは,無線LAN環境があれば,世界中のどこにでも市内電話料金で通話が出来るということです。
私は使っていませんが,SkypeInにも対応しますので,こうなると本当に電話と全く同じです。
・悪い点
(1)高い
実売で約2万円ですからね,確かに中身を考えると安いくらいだと思うのですが,Skypeは2万円出さないと使えないサービスではなく,マイク内蔵のPCを持っていれば,手持ちのイヤホンを用意するだけですぐに利用できるわけです。2万円対0円。それで結局出来ることは全く同じなわけですから,どれほど便利であってもおすすめできる代物ではありません。
(2)安っぽい
2万円という価格は,昨今なかなか価値ある金額になっていると言えて,特に日本では価格相応の質感や作りの良さが評価されるようになる価格です。
海外では許されても,日本でこの安っぽさが2万円,という点を不満と考える人は多いでしょう。私は全然気になりませんが。
(3)クレイドルが別売り
連続通話が3時間,待ち受けが30時間というスペックは十分であると思いますが,毎日使う人は最低数日おきに充電が必要でしょう。電池寿命の短い製品こそ,充電スタンドやクレイドルが必要で,本体には充電用の接点も用意されているにもかかわらず,別売り(少し前は別売りさえもなかった)というのはもはや論外でしょう。
私もクレイドルは買いましたが,これがあるのとないのとでは,まさに雲泥の差です。
(4)待ち受け時の電池寿命が短い
待ち受け時の電池が30時間しか持たないのでは,電源を入れっぱなしでは使えません。20時間待ち受けして通話を始めてしまったら,おそらく数分で電池が切れるでしょう。
この電池寿命なら,少なくとも常時充電の必要があるし,電池の充電サイクル寿命が1年程で尽きるわけですから,交換用の電池の供給もきちんとフォローしてもらう必要があります。
着信を考えないなら電源をいちいち切るというのが結局のところ最善ということになってしまいますが,後述のようにこれはこれでちょっと面倒なことがあります。
(5)バグ
仕方がないことですが,バグもあります。私が困っているのは,セキュリティに関する設定が電源OFFでリセットされること。電源を入れる度にセキュリティ設定をやり直さなければならないののは,ついうっかり忘れてしまうものです。
(6)音声通話以外の機能がない
これも早くから指摘されていることですが,Skypeにはチャット機能もあって,ユーザーも多いようです。それなりに使えるLCDとテンキーがあるのですから,携帯電話と同じ感覚で,チャット機能が利用できると私もいいなと思います。でも,日本だけで必要になるかな漢字変換の実装をしないと使い物にならないわけですから,実現性も低いでしょうね。
(7)起動に時間がかかる
電源を切らないと電池がすぐに切れるので,通話をするときだけ電源を入れるという使い方が一番自然だと思いますが,起動,ネットワークへの接続,Skypeへのログイン,コンタクトリストの取得という一連の流れが完全に終わるのに,下手をすると数分の時間がかかってしまいます。
話をする前にあらかじめ電源を入れておくか,潔く待つかしかありません。
あと,時間がかかる,ということとは違うのですが,デフォルトで接続されるネットワークの接続に失敗したり,途中でキャンセルしたりすると,同じネットワークに再接続したとしても,Skypeへのログインにパスワードを要求されるようになります。テンキーで入れるパスワードは非常に面倒で,いつも接続に失敗しないかと起動時には冷や冷やしています。
(8)角張っていて耳が痛い
ちょうど耳があたる部分が角張っているため,耳への当て方がまずいとかなり痛くなります。
(9)FONには対応しそうにない
なにかと話題のFONですが,これには対応しません。また,公衆無線LANについても,WEBから認証が必要なケースでは接続ができません。この問題はなかなか解決が難しそうなのですが,解決できると可能性が飛躍的に広がるので,なんとか検討してもらいたい点です。
(10)音質はいまいち
音質は,コーデックそのものの音質と,スピーカやマイク,筐体の音響性能によるところがあるのですが,この製品は後者について過度な期待は禁物です。携帯電話以下だと思います。
ですから,PCにいいヘッドフォンをつないでSkypeを楽しんでいた人なんかからすると,音の悪さにがっかりすることは避けられないでしょう。
まあでも,Skypeに音質の良さをどれくらい求めるのかと考えたとき,個人的には必要にして十分な音質であると思います。
(11)先々の不安
2万円の製品がゴミになる時はいろいろなケースが考えられます。Skypeのサービスがそもそも停止した場合は言うまでもありませんが,Skypeのバージョンが上がって,古いコーデックやプロトコルでは接続できないということが起こった場合も,徐々に使えなくなっていきます。
無線LANについても802.11bやgがいつまで使えるのかわかりませんし,WEPやWPAだって大きなセキュリティホールでも見つかると,あっという間に使えなくなります。
それに,電池の充電サイクル寿命が1年ほどで尽きることが分かっている以上,この電池が手に入らなくなってしまえば,ゴミ同然ですね。こういうマイナーな機種を手にした瞬間,いつまで使えるか不安になることは,それが便利な存在である場合は時に深刻な問題です。
(12)充電時間は結構かかる
実は充電時間も結構かかります。本当は2から3時間程度で満タンになってくれても良さそうなのですが,もう少しかかるみたいです。ですから,完全に空っぽになる前に,こまめな充電が便利に使うコツだと言えますが,その場合確実に充電サイクル寿命が短くなっていきますので,長く使うか便利に使うかのトレードオフだと言えそうです。
ユーザーにこういう心配をさせる製品というのはまだまだ発展途上で,携帯電話も世代が変わると必ずこういう選択肢をユーザーに突きつけてきます。その意味では,この製品もまだまだ発展途上です。
という感じです。
個人的には気に入ってますが,携帯電話との比較を自然にするだろう一般の人には絶対にすすめられませんし,ちょっと試してみたら,というような気軽な価格でもありません。
私は予備の電池とクレイドルを買って,より便利に,より安心に使えるようにしましたが,こういうものが手に入るだけましだと考えられる人だけが,使うような状態になることは間違いないと思います。
ただ,便利さは予想以上です。私の頭の中では,SkpyeがPCのアプリケーションから,電話へとカテゴリーの切り替えが起こりました。
もし,世界中でインターネットが利用できるようになり,無線LANでの接続に障害がなくなると,コミュニケーションの手段が劇的に変化するかも知れないと,そんな語り尽くされた当たり前の夢物語が,実はすぐそこまでやってきているという現実を意識させられた上に,その夢が大変に便利で,歓迎されるべき未来であることを,それまで懐疑的であった私のような人間でさえ認識する事となるのです。
かつて,電話といえば,交換機を介した電話が普通でした。その固定電話でさえもIP化される流れは止まらず,当時次世代交換機と呼ばれた交換機が,木枠を付けたままの未使用の状態でくず鉄としてアジアの某国に輸出されたことがあったらしいのですが,通信の世界で起こっていることは,私たち庶民の知ること以上に,大きなものになっているという,そんな一端を意識させられました。