VintageKeysの修理
- 2007/01/14 21:18
- カテゴリー:make:
私のお気に入りのシンセサイザーモジュールに,EmuのVintageKeysがあります。
ちょうど当時加入したばかりのバンドがハードロックバンドで,ハードロックなど縁もゆかりもなかった私が,とにかくハモンドオルガンの代わりになって,ギターの爆音に負けない音を出すモジュールとして探し当てたのが,このVintageKeysです。
かつての憧れであったEmuも,紆余曲折を経て,現在はかつての栄光を知る者も少なくなりました。
VintageKeysは,プロでも扱いには注意を要するアナログシンセサイザなどヴィンテージキービーボードの高品位な音色を,Emuの膨大なライブラリから選りすぐって組み込んだものです。その後音色数を増やしたアップグレード版のVintageKeysPlusが登場しましたが,私のVintageKeysは,6万円くらいしたアップグレードキットを組み込んであるので,VintageKeysPlus相当品です。
かくて私は生まれて初めて取り組んだハードロックを,このモジュールで乗り切ったのでした。
ところがこのVintageKeys,数年前からLCDの表示がおかしくなっていました。
こんな風に,LCDの中央にムラがあります。
特に音に影響があるわけではなかったので放置していましたが,先日秋葉原の秋月電子に行く機会があって,そこでふとこのことを思い出し,終了の新しいLCDモジュールを買ってきたのでした,
80年代から90年代初めのシンセサイザの表示は,こうした16文字x2行程度のものがほとんどでして,グラフィックなど一切出ず,文字だけであらゆる情報を我々に示していました。
それでもどうにかなっていたのでしょうが,このLCDというのは実は業界標準になっていて,表示させる方法も非常に簡単なんですね。
8ビットもしくは4ビットのパラレルで,フォントも内蔵しているので,コマンドを与えればすぐに表示が出来ます。
本来LCDの表示というのは,なかなか難しいのです。LEDのような直流で点灯するとあっという間に劣化してしまうため,交流で表示を行いますが,そのタイミングや電圧の制御など,自力でやるとそれだけで結構な手間になります。
それらをすべて組み込んで,外からはコマンドを与えれば表示が出来てしまうというモジュールを使えば,とても簡単に文字を扱うことができるようになります。生産台数が多い場合は手間をかけてもコストがかからないように自力でするほうがよいのですが,少ない場合はこうしたモジュールを買ってくるのが都合がよいわけです。
そして,そのLCDモジュールによく使われたICが,日立のHD44100とHD44780A00の2つです。この2つが面倒臭いLCDパネルの駆動を始め,フォントやコマンドの解釈,そしてマイコンとの接続インターフェースを提供します。
とても便利だったICだったので,非常によく使われるようになりました。結果,このICが使われたLCDモジュールには自ずと互換性が発生し,現在のような「業界標準」に至ったのだと思います。
それで,この標準的なLCDモジュールが,秋月電子に通常在庫として売られているのです。
最近は表示品質も向上し,バックライトを装備したものや安くなったものなど,いろいろ選べるようになったのですが,VintageKeysにもこれが使われているだろうと思いこみで1つ買って帰ることにしたのです。価格は1000円。昔はバックライトなしでも1500円ほどしたものなんですがねえ。
家に持ち帰って分解を始めました。はめ込むだけですので1時間もあれば済むだろうと思ったのが甘かった。
上が買ってきた新しいモジュール,下が元々ついていたオリジナルのものです。
まず外形数法が違いました。確かにねじ穴の位置が全然違っていますが,現物あわせをしてみるとねじ穴の外側で固定できそうです。
次に電気的な接続です。同じ14ピン,使われているICも同じですので,おそらくそのまま差し替えて使えるはずです。ちょっと不安もあったのですが,まあ大丈夫だろうと,元のケーブルを取り外し,新しいモジュールに付け替えて電源を入れてみます。
画面が真っ黒になったと思ったら,数秒のうちに「ぱちっ」と音がして,画面が消えてしまいました。慌てて電源を切り,もしやと思って裏側のICを触ると,かなりの熱を持っています。ICの表面は熱で焦げたようになっています。
やってしまいました。壊してしまいました。
こういう場合,おおむね電源の逆接続が原因です。しかもICの焼損は,当然ながら復活しません。
しばらく呆然としていたのですが,状況を冷静に判断して,もうどうにもならないということを認めました。
原因をよく調べてみたところ,やはり電源のVddとGNDが入れ替わっていました。他のピンは標準のままで,電源だけが逆。なんでこんなややこしいことにしたんだろうかと,謎が深まります・・・
まさかもう1つ買ってあったりはしませんし,どうするべきか考えていたのですが,昔購入したLCDモジュールがないか探してみました。
すると,1世代前に販売されていたものが2つ出てきました。しかし,これはあいにくバックライトがありません。電子楽器でバックライトがないのはステージで困ってしまうのでありえません。
ICが燃えたならICを交換すれば良さそうなものですが,実は最近のLCDモジュールはICが直接基板にボンディングされているので,交換が出来ません。
そこでオリジナルのLCDのムラが,何故出来てしまったのかを調べました,結論はバックライトのもの代でした。
バックライトの一部のLEDが点灯しておらず,その部分がムラになってしまっていたのでした。
そこで,焼損したLCDモジュールからバックライトを取り外し,オリジナルのものと交換しました。厚みが1.5mmほど違っていたため,板金の加工を行ってつじつまを合わせて,何とかうまくいきました,
電源の逆接続をすでにケーブルで入れ替えてしまった後だったので,オリジナルのモジュールの電源を基板上で入れ替えておきます。これでいつでも秋月のLCDモジュールと差し替えて使えるでしょう。(実際,バックライトなしのモジュールを試しに取り付けてみたのですが,ちゃんと表示が出てきました。)
結果は,ばっちり。
完全復活です。新品の頃の感激が甦ります。
もったいないことをしましたが,結果としては一番無難な方法で修理が出来たのかも知れません。1000円でバックライトを買ったと思えば良いだけではありますが,秋月電子が2月に店舗の改装のためしばらく閉店するので,もったいないことをしたという気持ちはあります。
それと不思議なことがあります。
今回購入したLCDモジュール,はじめて購入したと思ったのですが,同封の資料が1部,すでにファイルされていました。ということはこれで2つ目なわけですね。でも,これをどこかに使ったという記憶がありません。かといってしまい込んだ記憶もありません。
よくよく思い出してみると,QX5のLCDモジュールを交換したような記憶を思い出しました。その時に買ったものではないかと思うのですが,すでにQX5は実家にあります。確かめようがありません。
まあいいですよ。とりあえず直ったし。
このころのアメリカ製の製品は,ハンドメイドのにおいがぷんぷんするんですね。中国製品や台湾製品が多数を占める現在,かの国が日本のモノづくりをお手本にしている以上,出てくる製品は最終的には日本のそれになっていきます。
しかしアメリカは日本のモノづくりなど目指してこなかったですし,この種の製品は少量生産ですので,どうしても手作りな感じがあるのです。
私のように,工作を趣味としていると,その行き着く先にアメリカ製の製品を見るのです。工作の頂点,とでもいいましょうか。
考えてみると,Made in U.S.Aはもうほとんど目にしません。こんな所にも,工作のにおいが世の中から消えていくのかなあと,そんな風に思いました。


