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2021年03月09日の記事は以下のとおりです。

PENTAX SPのシャッターが鳴く


 先日,実家から食べ物が送られて来るときに,ついでにとアサヒペンタックスSP(以下PENTAX SP)とSMC Takumar2本を送ってもらいました。

 残念な事に私が10代の頃に使っていたものは壊れてしまい,今はありません。後になってわかったのは,これは初期型であったことです。

 ファインダーに蒸着の剥がれもあり,半分ほど見えなくなってしまっていただけではなく,シャッターも露光ムラがひどく,フィルム送りも安定せず重なることすらあったもので,壊れてしまってもそれは当然だったように思います。

 今回送ってもらったのは20年ほど前に購入した程度のよい中古品で,55mmF1.8込みで15000円と当時としてもそれなりにいい値段のものでした。

 後期型で使用頻度も少なく, なにより動作が滑らかで,当時新品を買えばこんな感じだったんだろうなと感動した記憶があるのですが,さすがに20年以上も誰も使わず放置されているということなら,もうダメかも知れないと思ったのです。

 果たして手元に届いたSPは,ミラーも下がらず,スローシャッターが動作しない完全な不良品に成り下がっていました。200mmF4と135mmF3.8の2本のtakumarは全く問題なったのですが・・・

 問題があるとわかってほっとくわけにはいきません。分解と整備です。もともとも程度が良かったことを知っているので,この時は簡単に済むと信じていました。

 ところが,これがとても大変でした。

 スローシャッターが不良の県は,ガバナーをとりだして洗浄,注油で解決しました。ミラーの件も注油で解決です。簡単にシャッター速度を見てみると,1/8秒だけ出ていないのでもう一度分解。

 ガバナーの取付位置を調整して解決(実は解決していないことが後で判明します),もう一度シャッター速度を全速で確認します。

 全体的に遅めですが,それなりに揃っていて実用上問題ないレベルです。

 あとは適当に注油を行い,ファインダーのゴミを取り除いて,露出計を調整します。簡単簡単。

 これで終わりかなと組み立てたのですが,1/60秒でシャッターが鳴くのです。よく聞いてみると1/125秒でも出ていますし,1/30秒でも出ています。しかし1秒やBでは出ないので,原因が先幕なのか後幕のなのか,特定出来ません。

 ああ,シャッター鳴きというのはこういうのをいうんだなと思ったわけですが,得にシャッター速度にも影響が出ないので,気にしないことにしていたのです。ところが徐々に音が大きくなり,黒板を爪でひっかいたような音になってきたので,これはさすがにまずいと,再度分解することにしました。

 まず音の原因を調べないと話が前に進みません。ですが,結論から先に書くと,結局この原因はわかりませんでした。

 あちこち注油したり指で動かしたりしてみますが,さっぱりわかりません。そのうちシャッターが正しく動かなくなったり,組み立てられなくなったりと泥沼にはまり始めました。

 もうあかん,そんな風に何度も思ったのですが,結局泣きは解決せず。

 そしていよいよ,シャッタードラムに手をかけます。そう,ドラムを外してしまうと,テンションを再調整しなければなりません。しかし私はそのための測定方法を持ち合わせていません。私にとっては禁断の分解箇所なのです。

 しかし,もうここしか残っていません。幕速を調整するネジを回してみますが,それでも鳴きは収まりません。いよいよ万策尽きて,ドラムを緩めます。そしてドラムの軸の周辺を徹底的に注油します。

 すると,あれほどしつこかった鳴きがやみました。しゅぱっとシャッター幕が動きます。結果オーライです。このまま組み立てましょう。

 しかし,一難去ってまた一難。すんなり前に進みません。また1/8秒が出なくなったり,1秒や1/2秒でガバナーがさっと戻りません。どうもガバナーのテンプをガンギ車から切り離す部分がおかしいようです。

 カムの動きを慎重に見極めますが,何度やっても上手くいきません。いよいよダメだとあきらめかけたのですが,カムの動きをガバナーに伝達するシャフトの調整がズレていることが判明し,ここを再調整し,なんとか解決です。

 シャッターブレーキのかかり具合でもガバナーの動きが変化するほどだったので,これでなんとかなりそうです。

 とりあえずシャッターの組み立てが終わったのですが,幕速を調整する仕組みをなんとか考えないといけません。適当に合わせてしまうと幕やドラムのバネが壊れますし,時間と共に幕速が変化してしまいます。

 ES2の時は,幕速を出すだけでも2週間ほどかかってしまいましたが,今回はもっと上手い方法を考えたいところです。

 そこで,自作のシャッター速度測定器を改良することにしました。フォトトランジスタをもう1つ追加し,オシロスコープで時間差を測定し,幕速を出すのです。

 早速改造してバージョンアップします。2.54ピッチのユニバーサル基板を使って作りましたので,5穴分あけて新しいフォトトランジスタを取り付けます。こうすると12.7mmの間隔ができますね。

 PENTAX SPの幕速は,36mmを14msで走ります。先幕は後幕より0.1ms程速めに設定するのだそうですが,12.7msなら約4.9msですので,1/1000秒に設定してまず後幕から4.9msを出し,そこから先幕を少しだけ速めにしてから,1/1000秒のシャッター速度が出るように追い込むとよさそうです。

 この方法は面白いほど上手くいき,あっという間に幕速と1/1000秒が出ました。全速出るように調整ネジを使って調整を完了しましたが,一晩経っても狂っていません。

 上手くいきました。

 そこからは早いです。さっさと組み立てますが,ミラー上昇時にロックしないとか,ファインダーのゴミが何度も出るとか,しょーもない問題が出てはバラし,出てはバラしを繰り返して,ようやく完成。

 組み立て後,最終的なシャッター速度は,以下の様になりました。

1 910ms
1/2 484ms
1/4 244ms
1/8 117ms
1/15 58.0ms
1/30 32.8ms
1/60 16.9ms
1/125 7.2ms
1/250 3.76ms
1/500 2.42ms
1/1000 1.30ms

 もう一踏ん張りな感じもありますが,よく頑張っているんじゃないでしょうか。一応全速JISに入っていますし。

 PENTAX SPは,速度の調整を行う仕組みが事実上1つしかありません。その1つで1/1000秒から1/30秒まで全部合わせないといけないので,調整は楽な代わりに妥協も必要です。

 改めて空シャッターを切りますが,なんとすばらしいフィーリングなことか。

 PENTAX SPの巻き上げはゴリゴリとしか感じがあって今ひとつなのですが,かなり改善されています。ミラーの音もシャッターが吸い込まれる音もなかなかよくて,もう癖になる音です。

 途中一度だけシャッターがジャムってしまって,また分解することになったのですが,それはもう再現しません。

 実は,M42のレンズとして,SMCtakumar105mmF2.8を買ったのですが,M42なんて何年ぶりかなあという感じです。ファインダーを覗いた限り,良い写りしそうな予感がします。

 心配しているのは,なかなか鳴きが収まらず,丁寧さを欠いた注油のせいでシャッター動作で油が飛び散ってしまう可能性です。レンズの後玉が油で汚れているようだと要注意です。

 先日久々にフィルムを通したES2は,少し調子が悪かったのですが,何度か空シャッターを切っているうちに調子が戻ってきました。この時代のPENTAXはファインダーが絶望的に暗いのでちょっと遠ざかっていたのですが,それでもどうしてあんなに不満なく毎日のように使えていたのを考えるに,中央のマイクロプリズムが良く出来ていたからなんだろうなと思いました。

 同じように,F3でもマイクロプリズムに交換したのですが,あまりピントの山が綺麗に見えず,こんなもんだったかなあと思っていたのですが,改めてSPのファインダーを覗き込んでみて,これなら全然いけるな,と思い直しました。

 昨今のカメラ市場に拭く逆風にどう対処していくか,根本的な問題の解決がどのカメラメーカーにも課題となっています。紆余曲折を経てリコーの一部門になって久しいPENTAXもこのままというわけには行かず,なんらかの選択肢を選ばねばなりません。

 その選択肢がどういうものになるかは,ファンとしては見守るしかありません。カメラはヨーロッパの発明品ですが,フランスやイギリスのメーカーはほとんど消滅し,ドイツでもライカくらいしか残っていません。

 写真好きの日本人が育てたカメラが,今後どうなるのか,私も興味を持って見ていこうと思います。

 - 3月23日追記 -

  このSPで撮影したフィルムを現像しました。

 シャッタースピードもコマ間隔もバッチリ揃っています。1/1000秒も出ているようです。露出計も問題なく動作しており,光漏れなどのかぶりもありません。とにかく問題がなさ過ぎて,何も書くことがありません。いはやは,苦労した甲斐がありました。

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