デジットの味をご家庭で
- 2021/06/03 16:02
- カテゴリー:散財, マニアックなおはなし, make:
大阪日本橋の電子パーツのお店,デジットが6月で閉店することになりました。
閉店と言っても入居していたビルが老朽化のため取り壊しになり,移転することになったということなので心配することはないのですが,1980年代から変わらずあの場所で営業していた老舗ですし,私もよく通い,日本橋の巡回ルートに入っていたことはもちろん,あげくアルバイトまですることになったほどですから,感慨もひとしおです。
昔話は程ほどにしておきますが,当時は新品の部品などほとんどなく,訳ありのジャンク品が所狭しと並んでいて,まあ次に買うわと店を出たら最後,同じ物には二度と出会えないという,非常にスリリングで面白いお店でした。
折も折,ちょうど消費税が導入された時期ですが,同じ商品がシリコンハウスで買うと消費税がかかるのに,デジットで買えばかからないということで,消費税分だけ安く買うことの出来るというノウハウは,当時のマニアの間ではよく知られたことでした。
リースの終わった汎用機やオフコンからCRTやFDDを外してきて,これを安価に販売する貴重なお店でもありましたが,とにかく当時の店長さんがその道に詳しく,1つ1つの商品に技術的な根拠を持って売っていたことが思い出されます。
彼とは,それはもうたくさんのエピソードがあって,それぞれが10代だった当時の私の人間形成に大きな影響を与えていると思うのですが,秋葉原に行ったことがなく,もっぱら秋月電子で通販をすることを楽しみにしていた私に,昔の秋月はこんなもんじゃなかった,いつかうち(デジットですね)もあれくらいになれたらな,といっていたこともありました。
果たしてデジットは全国区の電子部品店となりました。
そんな私の知るデジットもこの6月でとうとうお別れです。そう,シリコンハウスも大きなお店になっていますが,私の知るシリコンハウスは東海電子の2階と3階であって,そこから移転してしまった現在のシリコンハウスは,私にとって新しく出来たお店に近いのです。
おそらく,新しいデジットはもっと大きくもっと小綺麗になるでしょう。それはそれでとても良いことですし,私も愉しみなのですが,私の「デジット」が永遠に消えてなくなることには,やはりさみしい気持ちが大きいです。ああ,歳は取りたくないですね。
とまあ,そんなデジットがファイナルセールを3月からやっています。いよいよ6月になり,セールも最終段階に入っているのですが,これまでもジャンク屋らしく,入っている数が多いかわりに,1つあたりは無茶苦茶安いものばかりが並んで,私もめぼしいものがあったときにはメモを取っていました。
そして先日,いつか出るだろうと思ってずっと待っていた商品が登録されます。そう,「デジットセレクション ランダム部品箱」です。
これぞジャンク屋の真骨頂。お値段は500円で,一人2個までの限定です。
まず,ジャンク屋というのは,精機の部品屋さんと違って,仕入れのルートが多彩です。正規ルートなら注文できないような部品も入荷したりします。
それから,訳あって廃棄されたものが流れてくることがあります。カスタム品などが大量に入ってきます。部品に限らず基板や完成品も流れてきます。
再生品や廃棄物からも,使えそうなものが商品になりますが,いずれも共通するのは,正規品よりも極端に安いと言うことです。
そんなお店の福袋ですからね,面白くないわけがありません。
他に欲しいもの,例えば500個入りのLED(500円)を3袋とか一緒に買って,今日その「デジットセレクション ランダム部品箱」が2箱届きました。
中身を細かく公開するのはルール違反なのでやめておきますが,少しだけ入っていたICやLSIについては,ちょっとここと紹介してもいいかなと思います。なかなか面白いものが入っていましたよ。
HD637B01X0P
日立の8ビットワンチップマイコンです。SDIPの64ピンで,多ピンのマイコンとしてはよく使われた68系のCPUです。ただしマスクROM品なので,自分でプログラムを書いて使うのは絶望的,残念ですがゴミです。
Z8 BASIC Z0867108PEC
これはあたりかも。Z8671,Z8 BASICです。Z8はザイログの8ビットCPUなのですが,ワンチップマイコンとしての印象が強いせいで私には馴染みがありません。そんな中でも異色なのはこのZ8 BASICで,内蔵ROMにBASICインタプリタを書き込んであり,RAMを繋げばBASICが動くそうです。
TC5054
東芝のTC5000シリーズのCMOSで,4桁の10進カウンタ/7セグデコーダ/ドライバです。東芝はRCAのCD4000シリーズが出た当時,独自のCMOSプロセスにC2MOSという名称を与え,大々的に展開をしていました。モトローラがMC14500シリーズというオリジナルを開発したのと同じように,東芝はTC5000シリーズをオリジナルとして開発していました。TC5000シリーズはCMOSらしく大規模なLSIを揃えていたのですが,TC5054もその1つ。10進のカウンタを4桁,ダイナミックスキャンの7セグメントLEDのデコーダとドライバを内蔵し,ワンチップで4桁のカウンタを作る事が出来たLSIです。
TMP47P440AN
東芝の4ビットワンチップマイコンです。正確なことは調べていませんが,型番からおそらくワンタイムPROMを内蔵したものだと思います。類似品種を調べると32kbitのROMらしく,2764と同じ方法で書き込みが出来るとあります。
HM62256LP-12
言わずと知れた,日立のCMOS SRAMです。256kbitですので,1980年代中頃にはとにかく目にすることの多かったSRAMです。
TC8801N-0903
東芝のASSPで,なんと音声合成LSIだそうです。内蔵のマスクROMに書き込まれた音声データを再生するものなのですが,名前の「-0903」が示すとおり,どこかの製品用に音声データを書き込んだ訳あり品です。音の出し方はわかったので再生してみても面白いかも知れません。
LH52256N-90LL
これも256kbitのCMOS SRAMです。シャープ製のSRAMも当時はよく見ました。これはフラットパッケージのものなので,同社製のポケコンでもおなじみです。
TC9217
東芝のラジオ用のICで,データシートにはPLLとあります。おそらく海外のデジタルラジオ用じゃないかと思うのですが,よく分かりません。
T3605
東芝の時計用のLSIです。デジットではかつて,専用のVFDとセットにして販売していたことがあるようです。自動車用の時計に採用された定番品らしいです。たくさん入っていたのですがVFDがないので,使うには一工夫が必要でしょう。ただ,この手の時計用ICは絶滅していますし,7セグメントのスタティックドライブが出来るものは特に貴重です。
MB74LS30
SN74LS32
HD74LS145
SN74LS74
HD74121
DM7414
TTLですね。特に注目するようなものはありませんが,ナショナルセミコンダクタのDM7414が懐かしいパッケージで出てきたのが,個人的には興味をそそりました。
TC35300
DTMFレシーバです。プッシュホンのデコーダも1980年代に流行って,電子工作の定番だったものですが,今どき若者はDTMFの音など聞いたこともないでしょう。
MB88331
富士通のNTSCシンクジェネレータです。かつて秋月電子の定番キットの1つ,ブルーバックジェネレータにも使われていたので知名度もあると思います。しかし,アナログテレビが絶滅し,NTSCの信号もほぼ消えた現在,このICにどれほどの意味があるのか疑問です。
TC74ACT02
東芝の汎用ロジックで,ACシリーズです。まあ,ACとはいえ汎用のCMOSロジックですので,なにかに使えるでしょう。
TL497
TIのスイッチングレギュレータICで,定番中の定番です。これは5つ手に入りました。
S2924
メーカーは不明ですが,シリアルEEPROMです。おそらく128ビットでしょう。
PC725V
シャープのフォトカプラです。通信用ではなく,スイッチングレギュレータに使うような絶縁用のようです。
PIC12C509
PIC12シリーズです。名前の通りワンタイムROMです。20年ほど前はホビーストの間でもよく使われた8ピンのPICですが,今はもう全然見ませんね。私もPICは16F84ばかりでしたので,PIC12は使った事がないのですが,そもそもこのPIC12C509,書き込み済みだったらただのゴミです。
というわけで,とても楽しく部品の仕分けをした結果,IC/LSIは以上のものが入っていました。もちろん,これ以外の部品もたくさん入っていましたし,値打ちのあるものはむしろそれ以外だったりしたのですが,見た目では判断出来ない半導体は意外なお宝だったりするかもしれないというワクワク感が楽しくて,これを肴に飲み会をやったら盛り上がるだろうなと思いながら,仕分けをしていました。
使ってみようと思ったのはZ8 BASICとT3605,そしてTC5054くらいで,強いて言うならどんな音が入っているのかを確かめるためにTC8801を一度動かす位のものでしょうか。
でも,この感じがデジットです。あのデジットの味をご家庭で,なのです。いやはや,満腹になりました。