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2020年12月17日の記事は以下のとおりです。

M1というCPUがコンピュータの常識を変えたかもしれない

 12月9日に,中国からはるばる私の手元にやってきた,AppleSilicon M1を搭載した新しいmacBookAir。1週間ほど使ってみて,ようやく印象がまとまってきました。

 先に書いておくと私のMacBookAirは最も安い構成のもので,メインメモリは8GB,ストレージは240GBのものです。ただしキーボードをUSにしたのでBTOとなり,入手まで2週間ほど待たされてしまったわけです。

 メインメモリは跡で追加できませんので,こういう場合は16GBを選ぶものなのですが,今回は予算が許さず,また8GBで支障を来す頃には買い換えるんじゃないか(それはつまり8GBでもそれなりに長持ちするんじゃないか)という期待もあり,8GBで手を打ちました。

 そう,以前なら本体の価格が20万円近くもしましたからね,2万円ほど高くなってもメモリを増やすのは賢い選択だったと思います。しかし,本体が10万円そこそこでメモリを2万円出して増やしても,その増やした分が役に立つ頃には,メモリの価格が下がっていて数千円になっているでしょう。

 つまり安心感を買うにしては,本体価格の2割増しというのは割が合わないように思ったわけです。

 気になったのは,最低ランクのMacBookAirだけGPUが7コアになっていることです。ただ,これもGPUの話ですし,具体的にGPUを演算器として使う使い道も生活マシンでは薄いので,12.5%の性能低下は飲むことにしました。

 果たしてそれは正解でした。

 このMacBookAir,今回発売になったモデルではイチオシのモデルです。

 これまでの生活マシンはMacBookAirの11インチ,late2010ですのでもう10年選手です。パッチをあててヨレヨレになりながらCatalinaを動かす様は,涙無しには正視できません。

 NASにあるTimeMachineのバックアップから新しいMacBookAirに環境を書き戻してさくっと移行完了,2時間後には生活マシンとしての運用を開始していました。このスムーズさもMacならでは,です。

 そして,ATOK2017も含め,ほぼすべてのアプリケーションが問題なく動作することがわかり,拍子抜けしてしましました。

 インテルのコードは体感で3年くらい前のマシンで動かした感じです。ネイティブのコードは2倍から3倍ですので,10万円の最低価格のノート型マシンがたたき出す性能とは思えません。

 ちょうど昨日FirefoxがM1ネイティブになったのですが,使えば一瞬でわかるほど軽快になりました。素晴らしいです。

 気を付けないといけないのは,Rosetta2は最初はインストールされていません。アプリケーションを起動した時にRosetta2が必要ならばその時にダウンロードされる仕組みなのですが,ATOK2017はアプリケーションではないので,Rosetta2がないと動きません。

 やっぱり動かないのかなあと思っていたら,別のアプリを起動したときにRosetta2が入り,その後なら問題なくATOK2017が動くようになりました。引っかかる感じも全くなく,完全にRosetta2の存在を忘れてしまいます。

 いやはや,M1とRosetta2があれば,もう世界はインテルのCPUを必要としなくなるんじゃないでしょうか。


・なんやかんやいいつつ,動いてしまえば結局Mac

 これは褒め言葉です。目新しさを感じるとき,例えば自動車を買い換えた時,新しい部屋に引っ越したときなんかに感じるあの感激を,我々は非常にポジティブなものに思うかも知れませんが,冷静に考えてみると前後に大きな落差があったから感じるに他なりません。

 元の自動車が良いものであれば,新しいものも感激は少ないはず。次の部屋が良くない部屋なら,前の部屋の方が良かったと思うわけで,我々はついつい差分で考えてしまいがちですが,肝心なのは絶対値です。

 今回もつくづく思ったのですが,Macは使い心地が大変良く,やはりストレスフリーです。新しいマシンかどうかというのは主に速度の違いであって,使いやすさを決めるOSの良さは相変わらずであることを考えると,Macは古くても大丈夫な機械だということになります。

 もちろん,キーボードや筐体,LCDなどハードウェアに依存する使いやすさは大きな影響を与えますが,それもすでに良くまとまっており,完成度も高いので,新しいマシンにしたところで満足度が大きく下がることはありません。

 M1という新しいCPUを搭載することで,使い勝手が損なわれることを覚悟していた多くのユーザーは,それが杞憂に終わったことに最初は驚くわけですが,そのうちいつものMacを触っている感覚に支配されてしまいます。

 この,動いてしまえば結局Macという感覚はかつて初代のiMacを触った時にも感じた印象でした。Macを知らない人達の間でも話題になったiMacの使い心地を尋ねられた時,「動いてしまえばMacですし」と答えたことを思い出しましたが,まさにあれです。

 それはPowerPCからIntelに移行したときにも同じでした。(68kからPowerPCへの移行時には違和感がありましたが・・・)

 高い次元で変化がないなら,それは変化の前も変化の後も,良い仕事をしていたということです。Appleはスマートフォンの会社になったように思いますが,ちゃんとMacにも力を注いでくれていました。


・むしろBig Surに戸惑う

 うちのMacBookPro2016は,ソフトの互換性の関係からMojaveでアップデートを止めています。Big Surは初めて触るのですが,噂通りiPadに近くなっているので違和感がありました。

 しかし,慣れてしまえば良く出来ています。今思えばCatalinaが一番中途半端で熟成が甘く,しかもバギーでしんどいOSでした。

 CatalinaまでのOSは,少しずつ進めたiPadに近づく作業に躊躇があり,旧来のデスクトップコンピュータをなかなか否定できなかったのだと思います。

 それがBig Surでは,良い具合にiPadを取り入れることで,本当に使いやすくなっていると思いますし,また見た目もわかりやすく,古い感覚がかなり消えたように思いますし,Catalinaで不満だったところがちゃんと改善されているので,もう古いOSに戻りたくはありません。


・消費電力の低さ

 動き出せばいつものMacですが,ジワジワ効いてくるのが,電池寿命です。

 そろそろ充電かな,と思う頃にバッテリーの残量を見ると,まだ90%台だったりします。5時間おきに充電しないとダメだったのに,この調子なら3日たっても半分くらいしか電池が減らないでしょう。それも一切我慢することなしに,です。

 つまり,ACアダプタを使う頻度が数分の一になるということです。もう手元にACアダプタを常備する必要はなく,5日に一度充電専用の場所に持ち込んで寝ている間に充電しておけば,あとは気にせずどこでも使い倒すという,新しい使い方が出来るようになります。

 ほら,ノートPCってACアダプタを繋いで使い続けるイメージがあるじゃないですか。でも,iPadやiPhoneをACアダプタで使い続けるなんて,想像出来ないでしょう。

 そういうことです。Macも,もうACアダプタを繋いで充電しながら使うということは,しなくなるんじゃないでしょうか。

 そして,消費電力の低さから,シリーズで唯一ファンレスです。思い出して欲しいのは,初代Dynabookも,PC-9801Nも,PowerBook100も,どれも当たり前のようにファンレスだったという事です。

 ファンレスと言うだけの話ではなく,熱くならないのです。熱はエネルギーの墓場です。熱くならないことは,すべてにおいて良い結果をもたらします。

 M1の最大の恩恵は,この低消費電力にあると思います。明らかにノートPCが不連続な進化を遂げたといってよいでしょう。ゆえに,Mac miniではM1の真価は見えてきません。

・外側もmac

 動いてしまえば結局macというのは外側もそうです。剛性感の高いアルミの筐体は高い質感を備えていて,持つ事そのものへの満足感もあります。

 ただ,私はこの点を手放しに喜べません。剛性感は高まりましたが,手に取った瞬間のごつい感じ,そしてずっしりとした重さは,モバイルマシンとしてはちょっと考え物です。

 その点で言えば,10年前のMacBookAirこそ,Airの名に恥じない軽快さを持っていました。M1を使えばこの軽快さを復活させることは簡単だと思いますが,それはiPadProの領域になってしまったので,叶わない夢で終わってしまうでしょう。

 その割には,キーボードの熟成は今ひとつな感じです。やはり12インチのMacBookで採用され,MacBookProであきらめたバタフライキーに時間を取られたことが痛かったです。

 元のキーボードに戻したのですが,あまり快適だとは思えません。むしろmacBookProのキーボードの方がタイピングを楽しめています。(壊れそうなので気を遣いながらになるですが・・・)

 ストロークはこのくらいでいいので,グラグラと動く軸の柔らかさをなんとかして欲しいと思いますし,底打ち感がなくふにゃっとするのも楽しくありません。iPadProではなくMacをなぜ選ぶかと言えば,それはキーボードがあるからです。キーボードをしっかり作って欲しいと思います。

 しかし,トラックパッドは秀逸です。他のマシンはマウスが必須ですが,MacBookシリーズに関しては本当にマウスが必要なくなります。


 とまあ,こんな感じで,10万円という価格でこの性能のマシンが出てきた事で,完全にゲームチェンジが起きたと思って良いでしょう。10万円で買える物の基準が明らかに上がりました。他のPCメーカー,なによりインテルにとって,この状況は厳しいものであるはずです。

 そして忘れてはいけないのは,PCとの付き合い方が大きく変わるということです。デスクトップコンピュータから降りてきたCPUではなく,スマートフォンから上がってきたCPUだからこそ,この低電力性能を設計時にイメージ出来たのでしょう。

 出来上がったマシンは,ACアダプタを繋いで動作させることを全く考える必要のないものになっていました。電池でも動くではなく,ACでも動く,にコンピュータが変化したと考えると,実に感慨深いものがあります。

 そこになんの我慢もありません。従来出来たことはほぼすべて出来て,まだおつりが来ます。将来性も高く,それでいてACを給電しなくてもよいなんて,もう全く新しいコンピュータが突然生まれたとしか言いようがありません。夢だったといってもいいでしょう。

 繰り返しますが,M!を搭載したMacが引き起こす歴史的変化は,まさにAC電源からの解放です。Mac miniはよいマシンですが,残念ながらこの最大の変化を我々に気付かせてくれません。

 今回のモデルでmacBookAirがイチオシなのは,これが理由です。MacBookProとの差は小さく,価格差は本体価格を考えればそれなりにあります。少しでも小さく軽いマシンを,何も我慢することなく使うというのは,MacBookAirだからこそ出来る手に入る世界です。

 在庫で売られている一番安い10万円のMacBookAirは,これまでの「コンピュータ」との接し方を,我々に一切の我慢を強いることなく,大きく変化させるでしょう。何度も言いますが,「電池でも動く」ではなく「ACでも動く」に変わるのです。

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