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2023年09月14日の記事は以下のとおりです。

Walkmanの修理~その3~WM-EX666編

 WM-805の修理が難航して,いよいよあきらめるかと思っていたときに私が取った行動は,別のWM-805を手に入れてニコイチを作る事と,比較的年式の新しいWalkmanを手に入れる事でした。

 WM-805は調子に乗って入札しまくったことで,修理が出来てしまったにもかかわらず2台(どちらも黒色)も手に入ってしまい,合計3台という陣容です。いずれも塗装は劣化しているのですが,1台は前オーナーが根性で塗装を剥がしたらしくシルク印刷もなくなっていますが,もう一台はベトベトがなくなるまで放置されていたもののようで,白く粉を吹いたような状態になっていますが,印刷は綺麗に残っています。

 メカの様子は先日修理した赤色のWM-805が一番程度が良く,sきあもピンチローラーも新品ですので,一番性能が出ているように思います。残りの2台はキャプスタンが錆びていたり,ピンチローラーに変形があったりするので,これを修理しても今ひとつかなとモチベーションも上がりません。

 年式の新しいWalkmanを手に入れたいと思うのは,同じように年式の新しいパナソニックのRQ-SX35が修理が楽だったからなのですが,そうして手に入れたWM-EX666は予想に反して修理に大変手間のかかるじゃじゃ馬でした。

 WM-EX666・・・私はどんなモデルかさっぱり知らなかったのですが,どうもベーシックモデルで価格を下げたもののようでした。メカはプランジャを使わない興味深いもので,モーターを逆回転させることでモード切替を行い,そのためにリバース再生時でもモーターを正回転させるようにしてあるという,当時の設計者の創意工夫が感じられるものでした。

 プランジャは高価な部品ですので,コストダウンを動機とした斬新なメカだと思うのですが,修理後に使ってみると,モードの切り替えも滑らかで上品ですし,動作音も実に静かで,いいメカデッキだなと思いました。

 ただ,そこはコストダウンを目的にしたメカデッキだけに,耐久性というか,経年変化が起こる部品を肝心な部分に使ったりと,長く使うことは考慮されていないように思います。当時のソニー製品ならどれもそんなもんかも知れませんが。

 さて,そんなWM-666の修理の記録です。

(1)塗装の問題

 ゴムっぽい風合いの塗装は加水分解でベトベトになりますが,1990年代から2000年代にかけて流行しました。このころの製品は何十万円もするカメラでさえもベトベトになってしまい,現在の価値を下げてしまっているわけですが,当時の技術者は本当にこうなることを知らなかったらしく。罪悪感と言うよりも自ら被害者という意識が強いんじゃないかと思うほどです。

 WM-666も一部にこの塗装は使われていて,操作ボタンの周辺のプラスチックと,下ケースと蓋の間に挟まれる枠にべとつきがありました。

 気持ち悪いのでなんとかしないといけませんが,WM-805のようにクリアラッカーで仕上げると傷に弱い塗装になるので常用は難しくなります。そこで多少の傷は仕方がないとして(クリア塗装をすると小さなキズは綺麗に消えます),重曹でべとつきを抑えた状態で使うことを考えました。

 分解して該当する部品を取り外し,重曹に2時間ほど漬け込んで水洗いしたのですが,なんと操作ボタンの周辺の塗装が一部剥げてしまい,とてもみっともなくなってしまいました。

 こうなるともうクリアを吹き付けるしかありませんが,そのために元々の塗装を綺麗に剥がす必要があります。1500番の耐水ペーパーで塗装を剥がすことにしましたが,BATTとREPEATと書かれた印刷もなくなってしまいます。でもこれはあきらめましょう。

 枠も多少剥げていますが目立たないのでこのままとします。デコボコしているので塗装が剥がしにくく,しかもぶつけやすいのでせっかくクリアラッカーで仕上げても剥がれてしまうだろうと思ったからです。


(2)ギアが外れてガリガリ

 クリアラッカーの塗装が終わったら内部の修理です。ゴムベルトは使えそうなものが手持ちにあったのでこれを使うとします。電池の液漏れもないので基板は無傷ですから,ゴムベルトだけ交換すれば済むだろうと思っていました。

 ところがそう甘くはありません。早送りや巻戻しをすると,テープエンドでリールが止まる時に,ギアが飛ぶ激しい音がガリガリとしてからストップします。壊れてしまいそうな音ですから,おちおち使っていられません。

 分解してメカを確認しますが,動作状態を見られないので手で動かして想像するしかありません。分かった事は,再生時のリールの回転はスリップリングで空回りできる仕組みがありますが,早送りと巻戻しはどのギアもきっちりかみ合うので,リールが止まってしまうとモーターまで止まってしまうという,よく分からない仕組みだったことです。

 これではホールセンサがリールが止まったことを検知するまでギアが外れてガリガリ音がするのは正しいですが,本当にそんな設計をするもんだろうか,と随分悩みました。

 もしかするとゴムベルトを緩くしてあって,ゴムベルトのスリップを使うのかもと考えて少し大きいものを試したりしましたがスリップするよりギアが外れる方が先で,どうにもなりません。

 そこで外れて音を出しそうなギアの取り付け高さを厳密に調整しようと考えて,ギアの台座の部分を少し削って高さを揃えました。この結果走行は安定しましたが,テープエンドでもっと激しくギアが外れるようになってしまいました。

 もっとよく観察すると,スリップリングを持つギアの高さが問題のようです。モード切替時,再生モードの時にはメカの一部の突起がこのギアの高さを下げてギアのかみ合わせをリリースし,このギアの下側のスリップリングを介した別のギアとかみ合うようになっています。

 一方で巻き戻しや早送りの時はギアが上がり,スリップリングのギアは外れてギアが直結するのですが,直結の時の高さが足りずに高負荷時に外れてしまうようです。

 スリップリングが経年変化で薄くなり,摩擦が増えたり高さが低くなったりするのは良くある話なので,かさ上げを考えます。一番良いのはメカをいじってギアのリフト量を増やすことなのですが,それはちょっと難しいですから,スリップリングを分厚くする作戦を立てます。

 そこで,ポリイミドテープをスリップリングに貼り付けてかさ上げを試みます。何度かカット&トライをしてかみ合わせが確実になるようにしたのですが,それでも高負荷では外れてガリガリをイオンをさせますし,しかもスリップリングの摩擦が増えたことでワウフラッタが激増し,もう使い物にならないレベルです。

 疲れ果てた末に私が下した判断は,スリップリングのテープを剥がし,元の高さに戻します。さらにおまじないとして,別のギアの台座を少し削っておきました。

 ポリイミドテープは糊が剥がれてスリップリングに付着していて,これを剥がすのも一苦労です。何度も空回りさせて糊を剥がして,軽くスリップするようになったことを確認してから組み立てます。

 期待していませんでしたが,これで再生すると恐ろしいほどワウフラッタが消えています。負荷が軽くなったのでBATTランプも明るく点灯しています。

 さらに巻戻しと早送りも,高負荷時にギアが外れることがなくなりました。これはおまじないの台座を削ったことがきいているのか知れません。

 そして緊張のテープエンドです。テープエンドになると,即座にストップしました。以前のようにギアが外れる時間もありません。なるほど,本来はこういう動作でギアが外れたり異音がしたり,ギアの歯が欠けたりすることを防ぐ仕組みなんですね。上品と言えば上品ですが,ギア欠けはいずれ起きるような設計だと思います。

 それでも条件が悪いと高負荷時にギアが外れてガリガリいいますが,以前のように100%ガリガリいうことはなくなりましたし,テープエンドでも高確率で止まってくれるので,もうこれでいきましょう。

 おそらくですが,スリップリングを綺麗にした時に,高さも復活,摩擦も軽減されたんじゃないかと思います。この結果初期の状態を取り戻したことで,ギアが外れにくくなり即座に停止できるようになったのと,ワウフラッタが大きく軽減されたんじゃないかと思います。


(2)他の問題

 ガリガリ音がする問題で心身共に疲れたのですが,問題は他にもありました。ヘッドから出ているフレキをコネクタに差し込むのに,どうにも刺さりません。どうもフレキの厚みがこのコネクタにあっていないようです。

 このままではフレキを傷めてしまうと考えて,おそらく元の付け方だと思われる(悪いことに写真を撮り忘れていましたし,パッパと外したので覚えてもいません)方法で差し込みました。方法ではクランプがしっかり出来ず,外れてしまうように思うのですが,フレキを綺麗に曲げてテープ(ヒメロンといいます)で固定してあるので,これでいきましょう。

 実は無理に正しい差し込みにこだわり,コネクタを基板から剥がしてしまいました。外れただけだったのでハンダ付けをやり直せば済む話でこれは大した問題ではなかったのですが,パターンが剥がれてしまうのはまずいので,もう正しい方法にこだわりません。

 モーターのフレキも壊れかけました。もう何十回も付け外しをしましたので銅箔が剥がれてしまうのは避けられませんが,これもなんとか壊れる前に修理完了です。


(3)リモコンの改造

 跡で気付いたのですが,このモデルは標準的な3.5mmのヘッドフォン端子を持たず,リモコン対応のために特殊な9ピンのコネクタを採用しています。リモコンから直接ヘッドフォンが出ているので交換出来ないのが当時から不評だったことを覚えていますが,30年も前のヘッドフォンを使うことは考えられないので,途中でケーブルを切断し,ここに3.5mmのジャックを取り付ける改造をしました。

 ちょうどよいサイズの熱収縮チューブがなくて不細工な外観になったのが残念ですが,当初の目標はクリアしたのでまあいいとしましょう。


 ということで,WM-666もなかなか手強い相手でした。電気のトラブルと違って見えるものが相手ですが,基板の下に隠れている以上は見えない相手みたいなものですし,交換部品が有るわけではありませんから,修理は本当に難しいなあと思います。

 あのままガリガリいったままつかっていたら,いずれギア欠けが起きて再起不能になっていたかも知れません。ギアが外れないことを前提に,即座にストップをかけるという電気回路の工夫でメカの破損を防ぐ思想は,一瞬でも大きなトルクがギアにかかるわけで,いずれ歯が欠けてしまうんじゃないかと思います。

 しかし,前述の通りプランジャを使わないモード切替は滑らかで動作音も小さく,とても上品で心地よいものです。ワウフラッタも気にならないくらい小さくて,後年の低消費電力モデルに見られる,低トルクのモーターと低マスのフライホイールのせいでワウフラッタが原理的に問題になるようなこともありません。

 外観も比較的綺麗ですし,テープの収まりも精度良く,使っていて気分のいいモデルだと思います。個人的にはこれを常用機にしてもいいかなと思っているのですが,それはこの後に続く,修理待機品の仕上がり次第というところでしょうか。


 さて,ここまででRQ-SX35,WM-805,WM-EX666と3台復活してくれました。次はどれにしようかなあ。

 

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